JP3898441B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光色の色純度が高い、発光特性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記することもある。)は、電界印加時に、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
【0003】
イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによって積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W.Tang, S.A.VanSlyke, Applied Physics Letters,51巻,913頁、1987年など)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。
【0004】
Tangらは、発光層としてトリス(8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を、正孔輸送層としてトリフェニルジアミン誘導体を用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めることができる、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めることができる、発光層内で生成した励起子を閉じこめることができる等を挙げることができる。この例のように、有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送性発光層の2層型、又は正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層構造型の有機EL素子では、注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や各層の形成方法の工夫がなされている。
【0005】
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、例えば、スターバースト分子である4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンやN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等のトリフェニルアミン誘導体や芳香族ジアミン誘導体が特開平8−20771号公報、特開平8−40995号公報、特開平8−40997号公報、特開平8−53397号公報、特開平8−87122号公報等に開示されている。
また、電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が知られている。
【0006】
また、発光層に用いられる発光材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られている。そして、これら発光材料によって、青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが、特開平8−239655号公報、特開平7−138561号公報、特開平3−200889号公報等に報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年、高輝度、高発光効率の有機EL素子が開示あるいは報告されている。しかしながら、高輝度、高発光効率の有機EL素子においては、電子輸送層等の発光層以外の層からの発光が観測される場合があり、その結果、発光色の色純度が低下することがあった。
この問題は特に、青色発光素子において顕著となっている。例えば、これまで、純青色発光を示す発光材料はいくつか報告されているが、純青色発光を示す発光材料により発光層を構成した有機EL素子では、発光材料からの発光に電子輸送層からの発光が重なり、結果として青色発光が得られないことがあった。
【0008】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発光色の色純度が高い、高輝度、高発光効率の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、陽極と陰極との間に、連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物を含有する有機薄膜層を形成することにより、発光帯域(発光層)以外の層からの発光を抑制することができ、発光色の色純度が高い、高輝度、高発光効率の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができることを見出した。また、連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物は良好な電子輸送特性を有し、この化合物を含有する有機薄膜層を電子輸送層の代わりに設け、電子輸送層の機能を持たせることができることを見出し、以下の本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を発明するに到った。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、一層又は複数層の発光層からなる発光帯域を含む一層又は複数層の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層の少なくとも一層が下記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有することを特徴とする。
【化3】
(但し、式[I]において、aは0または1、X1は縮合多環式炭化水素からなる1価もしくは2価の連結基、A1とA2はそれぞれ独立に下記一般式[IV]で表される置換もしくは無置換のポリフェニレンユニット(但し、式[IV]において、bは0以上18以下の整数)である。また、式[II]において、XNは2乃至4価の連結基で、(Y)nはそれぞれ独立に式[I]で表されるn個の基(但し、nは2から4の整数)である。また、式[III]において、Y1およびY2はそれぞれ独立に一般式[I]で表される基である。)
【化4】
【0011】
前記一般式[I]において、X1はナフタレン、フルオレン、フェナンスロリンのうちいずれかから、水素原子を2個除いた2価の連結基であることが望ましい。
また、前記一般式[II]において、XNは非環式炭化水素、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、橋かけ環式炭化水素、スピロ炭化水素、環集合炭化水素のうちいずれかから、水素原子を2乃至4個を除いた2価乃至4価の連結基であることが望ましく、これらの中でも特に、フルオレン、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アダマンタン、シクロヘキサンのうちいずれかから、水素原子を2個除いた2価の連結基であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域と陰極との間に、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を設けることが望ましく、本発明者は、このような構成とすることにより、発光帯域以外の層からの発光をより抑制することができ、発光色の色純度をより向上させることができることを見出した。
【0013】
また、本発明者は、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域以外の層からの発光としては電子輸送層からの発光が顕著であることを見出した。そして、電子輸送層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光帯域と電子輸送層との間、若しくは電子輸送層と陰極との間に、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を設けることにより、電子輸送層からの発光を抑制することができ、効率よく発光色の色純度を向上させることができることを見出した。
【0014】
また、本発明は、特に、発光帯域が陽極に隣接している場合に有効であり、発光色の色純度をより向上させることができることを見出した。
【0015】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物(連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物)を含有する有機薄膜層には金属をドープしやすいこと、前記化合物を含有する有機薄膜層に金属をドープすることにより、前記化合物と金属との相互作用により、発光帯域以外の層からの発光をより一層抑制することができるとともに、前記化合物を含有する有機薄膜層の電子輸送特性を向上させることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性(輝度や発光効率)を向上することができることを見出した。
【0016】
なお、一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層にドープさせる金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba、Raのアルカリ土類金属、Al、Ga、In、Tlのうち1種若しくは複数種を用いることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の有機薄膜層に含有される化合物は、下記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される構造を有する化合物である。
【化5】
【0018】
但し、一般式[I]において、aは0または1、X1は縮合多環式炭化水素からなる1価もしくは2価の連結基、A1とA2はそれぞれ独立に下記一般式[IV]で表される置換もしくは無置換のポリフェニレンユニットである。但し、式[IV]において、bは0以上18以下の整数である。式[IV]のbが18を超えると、化合物の合成、及びこの化合物を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造が困難になる等の理由のため好ましくない。また、一般式[I]において、X1はナフタレン、フルオレン、フェナンスロリンのうちいずれかから、水素原子を2個除いた2価の連結基であることが望ましい。
【0019】
また、一般式[II]において、XNは2乃至4価の連結基で、(Y)nはそれぞれ独立に一般式[I]で表されるn個の基(但し、nは2から4の整数)である。一般式[II]において、XNは非環式炭化水素、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、橋かけ環式炭化水素、スピロ炭化水素、環集合炭化水素のうちいずれかから、水素原子を2乃至4個を除いた2価乃至4価の連結基であることが望ましく、これらの中でも特に、フルオレン、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アダマンタン、シクロヘキサンのうちいずれかから、水素原子を2個除いた2価の連結基であることが望ましい。
また、一般式[III]において、Y1およびY2はそれぞれ独立に一般式[I]で表される基である。
【化6】
【0020】
一般式[IV]で表される置換もしくは無置換のポリフェニレン化合物における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコキカルボニル基、アミノ基等が挙げられる。
【0021】
置換もしくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノt−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0022】
置換もしくは無置換のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基等が挙げられる。
【0023】
置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
置換もしくは無置換のアルコキシ基は一般式−OKで表される基であり、Kとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨードt−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0025】
置換もしくは無置換のアリールオキシ基は一般式−OLで表され、Lとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4’’−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0026】
置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基は一般式−COOMで表され、Mとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノt−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0027】
置換もしくは無置換のアミノ基は一般式−NR1R2で表され、R1、R2としては、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0028】
以下に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物例として、化合物(1)〜(11)を挙げるが、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。なお、化合物(1)〜(11)において、一般式[I]で表されるのは化合物(1)〜(6)、一般式[II]で表されるのは化合物(7)〜(9)、一般式[III]で表されるのは化合物(10)〜(11)である。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0029】
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の構造について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に、発光帯域を含む一層又は複数層の有機薄膜層を挟持した構造を有する。
【0030】
以下、図1〜図6に基づいて、本発明の有機EL素子の構成例について説明する。図1〜図6は、本発明の有機EL素子の概略断面図であり、同じ構成要素については同じ参照符号を付している。図1〜図6において、符号1は基板、符号2は陽極、符号3は正孔輸送層、符号4は発光帯域、符号5は電子輸送層、符号6は陰極、符号7は上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物(連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物)を含有する有機薄膜層をそれぞれ示している。なお、本発明の有機EL素子において、正孔輸送層、電子輸送層は有機薄膜層から構成され、発光帯域は一層又は複数層の有機薄膜層(発光層)から構成されている。
【0031】
本発明の有機EL素子は、図1〜図6に示すように、基板1の表面上に陽極2と発光帯域4と陰極6とを順次積層形成したものを基本構造としている。
図1に示す有機EL素子では、陽極2と発光帯域4との間、陰極6と発光帯域4との間に、それぞれ正孔輸送層3と電子輸送層5を設け、発光帯域4と電子輸送層5との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
【0032】
図2に示す有機EL素子では、陽極2と発光帯域4との間に正孔輸送層を設けず、陰極6と発光帯域4との間に電子輸送層5を設け、発光帯域4と電子輸送層5との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
このように、発光帯域4と電子輸送層5との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を挟持させる構成を採用することにより、電子輸送層5からの発光を抑制することができ、発光色の色純度が高い有機EL素子を提供することができる。
【0033】
また、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7は良好な電子輸送特性を有するため、電子輸送層5を設ける代わりに、上記化合物を含有する有機薄膜層7を電子輸送層として機能させてもよい。
電子輸送層5を設ける代わりに、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を電子輸送層として機能させた有機EL素子としては、図3、図4に示す構造のものを例示することができる。
【0034】
図3に示す有機EL素子では、陽極2と発光帯域4との間に正孔輸送層3を設け、陰極6と発光帯域4との間に電子輸送層を設けず、発光帯域4と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
また、図4に示す有機EL素子では、正孔輸送層と電子輸送層を設けず、発光帯域4と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
【0035】
また、電子輸送層5と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を挟持させる構成を採用することによっても、電子輸送層5からの発光を抑制することができ、発光色の色純度が高い有機EL素子を提供することができる。
電子輸送層5と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を挟持させた構造の有機EL素子としては図5、図6に示す構造のものを例示することができる。
【0036】
図5に示す有機EL素子では、陽極2と発光帯域4との間に正孔輸送層3を設け、陰極6と発光帯域4との間に電子輸送層5を設け、電子輸送層5と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
また、図6に示す有機EL素子では、陽極2と発光帯域4との間に正孔輸送層を設けず、陰極6と発光帯域4との間に電子輸送層5を設け、電子輸送層5と陰極6との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7を設ける構成としている。
【0037】
本発明は、図1〜図6に示した有機EL素子の中でも、特に、発光帯域4が陽極2に隣接している構造のもの、すなわち陽極2と発光帯域4との間に正孔輸送層3を設けない構造のものに有効であり、発光色の色純度がより高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0038】
また、図1〜図6に示す有機EL素子において、電荷注入特性の向上や絶縁破壊の抑制あるいは発光効率の向上を目的として、弗化リチウム、弗化マグネシウム、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等の無機の誘電体、絶縁体からなる有機薄膜層、有機材料と電極材料または金属との混合層、ポリアニリン、ポリアセチレン誘導体、ポリジアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体等の有機高分子薄膜層などを、陽極2と陰極6との間に挿入してもよい。
【0039】
以下に、発光帯域4、正孔輸送層3、電子輸送層5、陽極2、陰極6を構成する材料の具体例について説明する。
発光帯域4に用いられる発光材料は特に限定されるものではなく、通常、発光材料として使用されている化合物であればいかなる材料を使用してもよい。発光材料としては、例えば、下記のトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)[21]、ビスジフェニルビニルビフェニル(BDPVBi)[22]、1,3−ビス(p−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾールイル)フェニル(OXD−7)[23]、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(BPPC)[24]、1,4−ビス(N−p−トリル−N−4−(4−メチルスチリル)フェニルアミノ)ナフタレン[25]等の低分子発光材料、あるいはポリフェニレンビニレン系ポリマー等の高分子系発光材料が挙げられる。
【0040】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0041】
また、発光帯域4は、電荷輸送材料に蛍光材料をドープした層により構成することもできる。電荷輸送材料に蛍光材料をドープした層としては、例えば、前記のAlq3[21]などのキノリノール金属錯体に、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)[26]、2,3−キナクリドン[27]などのキナクリドン誘導体 、3−(2’−ベンゾチアゾール)−7−ジエチルアミノクマリン[28]などのクマリン誘導体をドープした層、あるいは電子輸送材料であるビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノール−アルミニウム錯体[29]にペリレン[30]等の縮合多環芳香族をドープした層、あるいは正孔輸送材料である4,4’−ビス(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル (TPD)[31]にルブレン[32]等をドープした層等が挙げられる。
【0042】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0043】
本発明における正孔輸送層3に用いられる正孔輸送材料は特に限定されるものではなく、通常、正孔輸送材料として使用されている化合物であればいかなる材料を使用してもよい。正孔輸送材料としては、例えば、ビス(ジ(p−トリル)アミノフェニル)−1,1−シクロヘキサン[33]、TPD[31]、N,N’−ジフェニル−N−N−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPB)[34]等のトリフェニルジアミン類、スターバースト型分子([35]〜[37]等)などが挙げられる。
【0044】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0045】
本発明における電子輸送層5に用いられる電子輸送材料は特に限定されるものではなく、通常、電子輸送材料として使用されている化合物であればいかなる材料を使用してもよい。電子輸送材料としては、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(Bu−PBD)[38]、OXD−7[23]等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体([39]、[40]等)、キノリノール系の金属錯体([21]、[29]、[41]〜[44]等)などが挙げられる。
【0046】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0047】
本発明の有機EL素子における陽極2は、正孔を正孔輸送層3に注入する役割を担うものであり、陽極材料としては4.5eV以上の仕事関数を有するものが好ましい。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が挙げられる。
【0048】
また、陰極6は、電子輸送層5または発光帯域4に電子を注入する役割を担うものであり、陰極材料としては仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極材料としては特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が挙げられる。
【0049】
本発明の有機EL素子における各層の形成方法は、特に限定されない。各層の形成方法としては、従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法などを用いることができる。また、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層7は、上記化合物を基板上に蒸着する真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、あるいは上記化合物を溶媒に溶解させた溶液を塗布するディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法などの公知の方法により形成することができる。
【0050】
本発明における有機EL素子の発光帯域4、正孔輸送層3、電子輸送層5の膜厚は、特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり発光効率が低下するため、通常は数nm〜1μmの範囲が好ましい。
【0051】
なお、本発明は図1〜図6に示す有機EL素子に限定されるものではなく、陽極と陰極との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を少なくとも一層設ける構成とすればよく、このような構成とすることにより、発光帯域以外の有機薄膜層からの発光を抑制することができ、発光色の色純度が高い有機EL素子を提供することができる。
【0052】
ただし、発光帯域と陰極との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を設けることが望ましく、このような構成とすることにより、発光帯域以外の層からの発光をより抑制することができ、発光色の色純度をより向上させることができる。
【0053】
また、発光帯域以外の層からの発光としては、電子輸送層からの発光が顕著であるため、発光帯域と電子輸送層との間、若しくは電子輸送層と陰極との間に、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を設けることが望ましく、このような構成とすることにより、電子輸送層からの発光を抑制することができ、発光色の色純度を効率よく向上させることができる。
【0054】
また、本発明の有機EL素子において、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層に金属をドープすることが望ましく、このような構成とすることにより、上記化合物と金属との相互作用により、発光帯域以外の層からの発光をより一層抑制することができるとともに、上記化合物を含有する有機薄膜層の電子輸送特性を向上させることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性(輝度や発光効率)を向上することができる。
【0055】
なお、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層にドープする金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba、Raのアルカリ土類金属、Al、Ga、In、Tlのうち1種若しくは複数種を用いることが望ましい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を、実施例をもとに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
(化合物1の合成)
100ml三口フラスコに4−(p−セキシフェニリル)ホウ酸7.5g(15mmol)、2,6−ジブロモナフタレン1.0g(7mmol)、トリエチルアミン4.2ml(30mmol)、酢酸パラジウム0.067g(0.3mmol)、トリフェニルホスフィン0.16g(0.62mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド40mlを入れて100℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧で留去し、残査にジクロロメタンと10%アンモニア水を加えた。有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物(1)を合成した。
【0057】
(実施例1)
図1に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[33]を真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を形成した。次いで化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次いで、発光層の上に化合物(1)を真空蒸着して、化合物(1)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次いで、この有機薄膜層の上に化合物[38]を真空蒸着して膜厚25nmの電子輸送層を形成した。次に、電子輸送層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、13,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0058】
(実施例2)
図2に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次に、発光層の上に化合物(4)を真空蒸着して、化合物(4)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次いで、この有機薄膜層の上に、化合物[38]を真空蒸着して膜厚25nmの電子輸送層を形成した。次に、電子輸送層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、12,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0059】
(実施例3)
図3に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[33]を真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を形成した。次いで化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次いで、発光層の上に化合物(6)を真空蒸着して、化合物(6)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次に、この有機薄膜層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、10,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0060】
(実施例4)
発光層の上に、化合物(6)とCs(サエス・ゲッター社製Csディスペンサーを使用)を共蒸着して、化合物(6)とCsを含有する膜厚15nmの有機薄膜層を形成した以外は実施例3と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、8,500cd/m2の青色発光が得られた。
【0061】
(実施例5)
図4に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次に、発光層の上に化合物(1)を真空蒸着して、化合物(1)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次に、この有機薄膜層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、8,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0062】
(実施例6)
発光層の上に、化合物(1)とCs(サエス・ゲッター社製Csディスペンサーを使用)を共蒸着して、化合物(1)とCsを含有する膜厚15nmの有機薄膜層を形成した以外は実施例4と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、7,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0063】
(実施例7)
図5に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[33]を真空蒸着して膜厚50nmの正孔輸送層を形成した。次いで化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次いで、発光層の上に、化合物[38]を真空蒸着して膜厚25nmの電子輸送層を形成した。次いで、電子輸送層の上に化合物(4)を真空蒸着して、化合物(4)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次に、この有機薄膜層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、11,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0064】
(実施例8)
発光層の上に、化合物(4)とCs(サエス・ゲッター社製Csディスペンサーを使用)を共蒸着して、化合物(4)とCsを含有する膜厚15nmの有機薄膜層を形成した以外は実施例5と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、9,500cd/m2の青色発光が得られた。
【0065】
(実施例9)
図6に示した構造の有機EL素子を作製した。
まず、50mm×25mmのガラス基板(HOYA製、NA45、1.1mm厚)上にITOをスパッタリング法によって、シート抵抗が20Ω/□になるように成膜し、陽極とした。陽極の上に化合物[24]を真空蒸着して、膜厚60nmの発光層(発光帯域)を形成した。次いで、発光層の上に、化合物[38]を真空蒸着して膜厚25nmの電子輸送層を形成した。次に、電子輸送層の上に化合物(1)を真空蒸着して、化合物(1)を含有する膜厚5nmの有機薄膜層を形成した。次に、この有機薄膜層の上にマグネシウム−銀合金を真空蒸着して、膜厚200nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、11,000cd/m2の青色発光が得られた。
【0066】
(実施例10)
発光層の上に、化合物(1)とCs(サエス・ゲッター社製Csディスペンサーを使用)を共蒸着して、化合物(1)とCsを含有する膜厚15nmの有機薄膜層を形成した以外は実施例6と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、10,500cd/m2の青色発光が得られた。
【0067】
(比較例1)
比較例として、発光層形成後、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層の形成を行わず電子輸送層を形成する以外は実施例2と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電圧を7V印加したところ、7,000cd/m2の青緑色の発光が得られた。
【0068】
(比較例2)
比較例として、発光層形成後、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層の形成を行わず電子輸送層を形成する以外は実施例3と同様の操作を行い、有機EL素子を作製した。この有機EL素子に直流電流を7V印加したところ、6,500cd/m2の青緑色の発光が得られた。
【0069】
以上説明したように、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を形成した実施例1〜10では、発光色の色純度が高く、純青色発光の有機EL素子が得られたのに対し、上記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層を形成しなかった比較例1、2では、発光色の色純度が低く、純青色発光の有機EL素子が得られなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、陽極と陰極との間に、連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物を含有する有機薄膜層を形成することにより、発光帯域(発光層)以外の層からの発光を抑制することができ、発光色の色純度が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物を含有する有機薄膜層に金属をドープすることが望ましく、このような構成とすることにより、前記化合物と金属との相互作用により、発光帯域以外の層からの発光をより一層抑制することができるとともに、前記化合物を含有する有機薄膜層の電子輸送特性を向上させることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性(輝度や発光効率)を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略断面図である。
【図2】 図2は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のその他の例を示す概略断面図である。
【図3】 図3は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のその他の例を示す概略断面図である。
【図4】 図4は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のその他の例を示す概略断面図である。
【図5】 図5は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のその他の例を示す概略断面図である。
【図6】 図6は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子のその他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 正孔輸送層
4 発光帯域
5 電子輸送層
6 陰極
7 連結基として縮合多環式炭化水素を有する特定の化合物を含有する有機薄膜層
Claims (8)
- 陽極と陰極との間に、一層又は複数層の発光層からなる発光帯域を含む一層又は複数層の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層の少なくとも一層が下記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光帯域と前記陰極との間に、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する前記有機薄膜層が挟持されたことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記有機薄膜層として電子輸送層を有するとともに、前記発光帯域と前記電子輸送層との間に、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する前記有機薄膜層が挟持されたことを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記有機薄膜層として電子輸送層を有するとともに、前記電子輸送層と前記陰極との間に、前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する有機薄膜層が挟持されたことを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光帯域が前記陽極に隣接していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式[I]、[II]、[III]のいずれかで表される化合物を含有する前記有機薄膜層が更に金属を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記金属がLi、Na、K、Rb、Cs、Frのアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba、Raのアルカリ土類金属、Al、Ga、In、Tlのうち1種若しくは複数種であることを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式[II]において、XNが非環式炭化水素、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、橋かけ環式炭化水素、スピロ炭化水素、環集合炭化水素のうちいずれかから、水素原子を2乃至4個を除いた2価乃至4価の連結基であることを特徴とする請求項1から請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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