JP3898389B2 - 抗健忘作用を有するペプチド - Google Patents
抗健忘作用を有するペプチド Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の機能性ペプチドを有効成分として含有する、経口投与にも適した健忘症の予防及び/又は症状改善剤や、特定のペプチドを有効成分として含有する、機能性食品素材として摂取することができる健忘症の予防及び/又は症状改善用食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高齢化社会の到来を迎え神経系の機能を保護し、老人性痴呆を防ぐ機能を持った食品成分や医薬が注目されている。従来、抗健忘症作用を有する物質として、鎮痛、麻酔等のオピオイド活性を有するペプチド(特開平9−227590号公報)、プロリルプロリン誘導体(特開平8−3132号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有するストレプトミセス属微生物の発酵生産物BU−4164EA及びB(特開平6−339390号公報)、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有する複素環化合物(特開平6−279413号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有するエンジュラシジンA(特開平5−301826号公報)、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有し、スコポラミン誘発健忘症モデルに対して活性を有するキノリン誘導体(特開平5−279355号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有し、ミクロビスポラ属微生物の発酵生産物であるペプチドSNA−115(特開平5−262795号公報)等が知られている。
【0003】
他方、種々の疾病の予防あるいは治療に有用な機能性ペプチドについての様々な報告も近年数多くあり、本発明者らも配列番号1(Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg)で表される、米の蛋白質に含まれる機能性ペプチドであるオリザテンシン(oryzatensin)が抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、インターロイキン−1産生促進活性をもつことを報告した(特開平7−258288号公報)。また、本発明者らは、牛乳カゼイン(κ-casein)のトリプシン消化物から得られ、補体C3aのC−末端配列に高い類似性をもち、補体C3aレセプターを介して回腸収縮活性、免疫促進活性を示す、抗オピオイドペプチドとして知られている、配列番号2(Tyr−Ile−Pro−Ile−Gln−Tyr−Val−Leu−Ser−Arg)で表されるカソキシン(Casoxin)Cの側脳室内投与によって、オピオイドの鎮痛作用を抑制すること、またスコポラミン誘発及び脳虚血による健忘に対して改善効果を示すことを報告した(Opioid Simposium 17,Supplement,1996,96-100)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記カソキシンCと同様に、補体C3aも側脳室内投与によってスコポラミン誘発及び脳虚血による健忘に対して改善作用を示すことがわかったが、これらカソキシンC及び補体C3aはいずれも経口投与では健忘に対して改善効果を示さなかった。本発明の課題は、経口投与あるいは機能性食品素材として摂取しても、健忘症の予防や症状改善作用を有する有用な機能性ペプチドを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、コメアルブミン由来のC3aアゴニストである前記オリザテンシンのC−末端側に存在するTyr−Pro−Leu−Pro−Argは、補体C3a活性に必要な疎水性残基−X1−Leu−X2−Argという構造を有し、補体C3a活性を示す最も短いペプチドであり(図1参照)、またペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argは、プロリン残基を2個含むことからプロテアーゼに抵抗性であると予想された。しかし、該ペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Arg(YPLPR)は、経口投与の際に意外にも抗鎮痛活性ではなく鎮痛活性を示し、またオピオイドレセプターに親和性(affinity)を有することが分かった。オリザテンシンとペプチドYPLPRのオピオイド活性を表1に、マウスにおけるペプチドYPLPRの鎮痛活性を図2にそれぞれ示す。なお、図2(A)は側脳室内投与を、図1(B)は経口投与の場合を示している。
【0006】
【表1】
【0007】
ペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argが、上記のように鎮痛活性やオピオイドレセプター親和性を示したことは、N−末端にTyrをもち、オピオイド活性を示したためと考えられた。そこでペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argのオピオイド活性を除くためオピオイド活性に必要なTyrを他の疎水性残基に置換したペプチドを合成し、合成ペプチドの活性をモルモット回腸アッセイ系又は補体C3aレセプターアッセイにより検討した。補体C3aレセプターアッセイには、125IでラベルしたC3aとC3aレセプター遺伝子を発現したRBL−2H3細胞を用いた。置換ペプチドの回腸収縮活性とレセプターアフィニティの結果を表2に示す。かかるアッセイの結果、ペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Arg(WPLPR)が最も強いC3a活性を示すことがわかった。
【0008】
【表2】
【0009】
また、本発明者らは、補体C3aの側脳室内投与により、スコポラミン誘発健忘(図3A参照)や、脳虚血による健忘(図3B参照)が改善されることを見い出したが、前記のように、経口投与では健忘に対して改善効果を示さなかった。そこで、ペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Arg(WPLPR)等を経口投与した場合におけるスコポラミンや脳虚血により誘発される健忘の改善作用について調べたところ、これらペプチドが優れた健忘症状改善効果を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善剤(請求項1)や、一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項1記載の健忘症の予防及び/又は症状改善剤(請求項2)に関する。
【0011】
また本発明は、一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善用食品(請求項3)や、一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項3記載の健忘症の予防及び/又は症状改善用食品(請求項4)に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の健忘症の予防及び/又は症状改善剤や、健忘症の予防及び/又は症状改善用食品は、配列番号3で示されるX−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Argを有効成分として含有することを特徴とする。なお、これらアミノ酸はいずれもL−体である。また、かかる一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドは、血中コレステロール上昇抑制作用を示すことが本発明者らにより明らかにされている(特願平10−17797号)。
【0013】
一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドは、どのようにして調製したものでも使用できるが、例えば次のようなペプチド合成法でも調製することができる。ペプチド合成に通常用いられる方法、即ち液相法または固相法でペプチド結合の任意の位置で二分される2種のフラグメントの一方に相当する反応性カルボキシル基を有する原料と、他方のフラグメントに相当する反応性アミノ基を有する原料とをHBTU(2-(1H-Benzotriazole-1-y1)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate)等の活性エステルを用いた方法、カルボジイミドを用いた方法等を用いて縮合させ、生成する縮合物が保護基を有する場合、その保護基を除去することによって製造することができる。
【0014】
この反応工程おいて反応に関与すべきでない官能基は、保護基により保護される。アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、p−ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)等が挙げられる。カルボキシル基の保護としては、例えばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基が挙げられるが、固相法の場合、C末端のカルボキシル基はクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、P−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合している。縮合反応は、カルボジイミド等の縮合剤の存在下にあるいはN−保護アミノ酸活性エステルまたはペプチド活性エステルを用いて実施する。
【0015】
縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相法の場合はさらにペプチドのC末端の樹脂との結合を切断する。合成後のペプチドは、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等、通常の方法に従い精製され、エドマン分解法でC−末端からアミノ酸配列を読み取るプロテインシークエンサー、GC−MS等で分析される。
【0016】
本発明の一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはTrp−Pro−Leu−Pro−Argは、健忘症の予防及び/又は症状改善剤、あるいは健忘症の予防及び/又は症状改善用食品として有用であるばかりでなく、また健忘の作用機作を研究するための医薬品開発のためのリード物質としても用いることができる。以下医薬品や機能性食品として用いる場合について説明する。
【0017】
本発明で使用するペプチドの投与方法としては、経口投与、非経口投与のいずれでもよいが、経口投与が好ましい。また、投与量は投与方法、患者の症状・年齢等により異なるが、通常1回1〜1000mg、好ましくは10〜300mgを1日当たり1〜3回投与することが好ましい。そして、経口投与する場合、通常、製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられ、具体的には、乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン界面活性剤、プロピレングリコール、水等を例示することができる。
【0018】
また、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等を具体的に例示することができ、これらの製剤は常法に従って調製され、特に液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形態とすることもできる。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。これらの製剤は、上記ペプチドを0.1重量%以上、好ましくは0.5〜70重量%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。
【0019】
本発明の一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはTrp−Pro−Leu−Pro−Argは、健忘症の予防及び/又は症状改善用食品素材として、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜へ配合し、機能性食品として摂取することもできる。これらの食品は、上記ペプチドを0.01重量%以上、好ましくは0.1〜10重量%の割合で含有することができる。
【0020】
(実施例)
次に本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例等により限定されるものではない。なお実施例中「%」とあるのは断りのない限り重量%を意味する。
参考例[ペプチドの合成]
市販のFmoc−Arg(Pmc)−A1ko樹脂(置換率0.5meq/g)0.8gをPS3型ペプチド合成機(Protein Technologies社製)の反応槽に分取し、以下のように合成を行った。ここで、Pmcとは、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン6−スルフォニル基を示す。
【0021】
まず、上記樹脂を反応容器に入れて、1mmolのFmoc−Proと、活性化剤として、1mmolのHBTUを、0.4MのN−メチルモルフォリンを含むジメチルフォルムアミドに溶解したものを10ml反応槽に加え、室温にて20分攪拌反応させた。得られた樹脂を20%のピペリジンを含むメチルフォルムアミド20ml中で、Fmoc基を除去処理し、ついで上記のFmoc−Proをカップリングさせた方法と同様にC末端から順次Fmoc−Leu、Fmoc−Pro及びFmoc−X(XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)をカップルさせて、X−Pro−Leu−Pro−Arg(Pmc)樹脂を得た。該樹脂を10mlの脱保護液(82容量%トリフルオロ酢酸、5容量%チオアニソール、3容量%エタンジチオール、2容量%エチルメチルスルフィド、3容量%フェノール、5容量%水)中で室温にて4時間攪拌し、ペプチドを樹脂から遊離させた。
【0022】
ここに40mlの冷エーテルを添加し、ペプチドを沈殿させ、さらに冷エーテルにて3回洗浄して粗ペプチドを得た。これをODSカラム(Cosmosil5C18−AR,φ20×250mm)による逆相クロマトグラフィーにより0.1重量%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配にて展開して精製し、X−Pro−Leu−Pro−Arg(XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)の配列を有するペプチドを得た。これら5種類のペプチドをプロテインシーケンサー(アプライド バイオシステムズ社製477A型)により分析して、それぞれの組成であることを確認した。
【0023】
実施例
[学習実験]
学習能に対するペプチドの効果を step-through 装置を用いた受動的回避実験により検討した。マウスを明暗2室に分かれた装置の明室に入れると、マウスは暗いところを好むことから暗室に入る。暗室に入ると床から電気ショック(28−29V、5 sec duration)を与えて、暗室が危険なことを教育する。24時間マウスを再び同じ装置に入れ明暗に止まっている時間を測定する。
【0024】
訓練試行30分前にスコポラミン0.1mg/kgを腹腔内に投与することにより(スコポラミン健忘)、または訓練試行3日前に両側総頚動脈を10分間遮断すること(脳虚血健忘)によってマウスに健忘を誘発させた。訓練試行直後にペプチドを側脳室内または経口投与し、24時間後テスト試行を行った。
【0025】
[抗健忘作用]
スコポラミンは0.1mg/kgで有意な健忘作用を示したことから、スコポラミン誘発健忘に対するペプチドWPLPRの抗健忘作用について検討した。結果を図4に示す。図4から、30nmole/mouseの側脳室内投与(図4A参照)または300mg/kgの経口投与(図4B参照)で、スコポラミン投与によって誘発された健忘に対してペプチドWPLPRが有意に改善作用を示すことがわかった。スコポラミンはムスカリン性アセチルコリンレセプターアンタゴニストであること、また補体C3aはモルモット回腸アッセイ系においてアセチルコリンの放出を促進することから、ペプチドWPLPRの抗健忘作用は脳内C3aレセプターによるアセチルコリンの放出によるものと考えられる。
【0026】
また、脳虚血処置したマウスでは有意な健忘が見られたことから、スコポラミン誘発健忘の場合と同様に、脳虚血誘発健忘に対するペプチドWPLPRの抗健忘作用について検討した。結果を図5に示す。図5から、ペプチドWPLPRは、60nmole/mouseの側脳室内投与(図5A参照)または300mg/kgの経口投与(図5B参照)で脳虚血健忘をコントロールレベルまで改善した。
【0027】
【発明の効果】
コメ由来のオリザテンシンを基にして、ペプチドWPLPR等の経口投与で有効なC3aアゴニストをはじめて設計したところ、これらペプチドはスコポラミン健忘及び脳虚血によって誘発した健忘に対して改善効果を示した。このように本発明によると、経口投与あるいは機能性食品素材として摂取しても、健忘症の予防や症状改善作用を有する有用な機能性ペプチドを提供することができる。また、WPLPR配列を遺伝子の部位指定変異により米アルブミンまたは他のタンパク中に導入することにより経口で有効なC3a活性を内在するタンパク質を得ることもできる。
【0028】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】補体C3aとコメ由来のオリザテンシンとの間のホモロジーを示す図である。
【図2】マウスにおけるペプチドYPLPRの鎮痛活性を示す図である。
【図3】補体C3aの側脳室内投与による、スコポラミン誘発健忘(A)や脳虚血による健忘(B)に対する抗健忘作用を示す図である。
【図4】側脳室内投与(A)及び経口投与(B)によるスコポラミン誘発健忘マウスに対するペプチドWPLPRの抗健忘作用を示す図である。
【図5】側脳室内投与(A)及び経口投与(B)による脳虚血誘発健忘マウスに対するペプチドWPLPRの抗健忘作用を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の機能性ペプチドを有効成分として含有する、経口投与にも適した健忘症の予防及び/又は症状改善剤や、特定のペプチドを有効成分として含有する、機能性食品素材として摂取することができる健忘症の予防及び/又は症状改善用食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高齢化社会の到来を迎え神経系の機能を保護し、老人性痴呆を防ぐ機能を持った食品成分や医薬が注目されている。従来、抗健忘症作用を有する物質として、鎮痛、麻酔等のオピオイド活性を有するペプチド(特開平9−227590号公報)、プロリルプロリン誘導体(特開平8−3132号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有するストレプトミセス属微生物の発酵生産物BU−4164EA及びB(特開平6−339390号公報)、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有する複素環化合物(特開平6−279413号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有するエンジュラシジンA(特開平5−301826号公報)、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有し、スコポラミン誘発健忘症モデルに対して活性を有するキノリン誘導体(特開平5−279355号公報)、プロリルエンドペプチダーゼ阻害作用を有し、ミクロビスポラ属微生物の発酵生産物であるペプチドSNA−115(特開平5−262795号公報)等が知られている。
【0003】
他方、種々の疾病の予防あるいは治療に有用な機能性ペプチドについての様々な報告も近年数多くあり、本発明者らも配列番号1(Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg)で表される、米の蛋白質に含まれる機能性ペプチドであるオリザテンシン(oryzatensin)が抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、インターロイキン−1産生促進活性をもつことを報告した(特開平7−258288号公報)。また、本発明者らは、牛乳カゼイン(κ-casein)のトリプシン消化物から得られ、補体C3aのC−末端配列に高い類似性をもち、補体C3aレセプターを介して回腸収縮活性、免疫促進活性を示す、抗オピオイドペプチドとして知られている、配列番号2(Tyr−Ile−Pro−Ile−Gln−Tyr−Val−Leu−Ser−Arg)で表されるカソキシン(Casoxin)Cの側脳室内投与によって、オピオイドの鎮痛作用を抑制すること、またスコポラミン誘発及び脳虚血による健忘に対して改善効果を示すことを報告した(Opioid Simposium 17,Supplement,1996,96-100)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記カソキシンCと同様に、補体C3aも側脳室内投与によってスコポラミン誘発及び脳虚血による健忘に対して改善作用を示すことがわかったが、これらカソキシンC及び補体C3aはいずれも経口投与では健忘に対して改善効果を示さなかった。本発明の課題は、経口投与あるいは機能性食品素材として摂取しても、健忘症の予防や症状改善作用を有する有用な機能性ペプチドを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、コメアルブミン由来のC3aアゴニストである前記オリザテンシンのC−末端側に存在するTyr−Pro−Leu−Pro−Argは、補体C3a活性に必要な疎水性残基−X1−Leu−X2−Argという構造を有し、補体C3a活性を示す最も短いペプチドであり(図1参照)、またペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argは、プロリン残基を2個含むことからプロテアーゼに抵抗性であると予想された。しかし、該ペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Arg(YPLPR)は、経口投与の際に意外にも抗鎮痛活性ではなく鎮痛活性を示し、またオピオイドレセプターに親和性(affinity)を有することが分かった。オリザテンシンとペプチドYPLPRのオピオイド活性を表1に、マウスにおけるペプチドYPLPRの鎮痛活性を図2にそれぞれ示す。なお、図2(A)は側脳室内投与を、図1(B)は経口投与の場合を示している。
【0006】
【表1】
【0007】
ペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argが、上記のように鎮痛活性やオピオイドレセプター親和性を示したことは、N−末端にTyrをもち、オピオイド活性を示したためと考えられた。そこでペプチドTyr−Pro−Leu−Pro−Argのオピオイド活性を除くためオピオイド活性に必要なTyrを他の疎水性残基に置換したペプチドを合成し、合成ペプチドの活性をモルモット回腸アッセイ系又は補体C3aレセプターアッセイにより検討した。補体C3aレセプターアッセイには、125IでラベルしたC3aとC3aレセプター遺伝子を発現したRBL−2H3細胞を用いた。置換ペプチドの回腸収縮活性とレセプターアフィニティの結果を表2に示す。かかるアッセイの結果、ペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Arg(WPLPR)が最も強いC3a活性を示すことがわかった。
【0008】
【表2】
【0009】
また、本発明者らは、補体C3aの側脳室内投与により、スコポラミン誘発健忘(図3A参照)や、脳虚血による健忘(図3B参照)が改善されることを見い出したが、前記のように、経口投与では健忘に対して改善効果を示さなかった。そこで、ペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Arg(WPLPR)等を経口投与した場合におけるスコポラミンや脳虚血により誘発される健忘の改善作用について調べたところ、これらペプチドが優れた健忘症状改善効果を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善剤(請求項1)や、一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項1記載の健忘症の予防及び/又は症状改善剤(請求項2)に関する。
【0011】
また本発明は、一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善用食品(請求項3)や、一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項3記載の健忘症の予防及び/又は症状改善用食品(請求項4)に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の健忘症の予防及び/又は症状改善剤や、健忘症の予防及び/又は症状改善用食品は、配列番号3で示されるX−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはペプチドTrp−Pro−Leu−Pro−Argを有効成分として含有することを特徴とする。なお、これらアミノ酸はいずれもL−体である。また、かかる一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドは、血中コレステロール上昇抑制作用を示すことが本発明者らにより明らかにされている(特願平10−17797号)。
【0013】
一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチドは、どのようにして調製したものでも使用できるが、例えば次のようなペプチド合成法でも調製することができる。ペプチド合成に通常用いられる方法、即ち液相法または固相法でペプチド結合の任意の位置で二分される2種のフラグメントの一方に相当する反応性カルボキシル基を有する原料と、他方のフラグメントに相当する反応性アミノ基を有する原料とをHBTU(2-(1H-Benzotriazole-1-y1)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate)等の活性エステルを用いた方法、カルボジイミドを用いた方法等を用いて縮合させ、生成する縮合物が保護基を有する場合、その保護基を除去することによって製造することができる。
【0014】
この反応工程おいて反応に関与すべきでない官能基は、保護基により保護される。アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、p−ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)等が挙げられる。カルボキシル基の保護としては、例えばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基が挙げられるが、固相法の場合、C末端のカルボキシル基はクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、P−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合している。縮合反応は、カルボジイミド等の縮合剤の存在下にあるいはN−保護アミノ酸活性エステルまたはペプチド活性エステルを用いて実施する。
【0015】
縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相法の場合はさらにペプチドのC末端の樹脂との結合を切断する。合成後のペプチドは、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等、通常の方法に従い精製され、エドマン分解法でC−末端からアミノ酸配列を読み取るプロテインシークエンサー、GC−MS等で分析される。
【0016】
本発明の一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはTrp−Pro−Leu−Pro−Argは、健忘症の予防及び/又は症状改善剤、あるいは健忘症の予防及び/又は症状改善用食品として有用であるばかりでなく、また健忘の作用機作を研究するための医薬品開発のためのリード物質としても用いることができる。以下医薬品や機能性食品として用いる場合について説明する。
【0017】
本発明で使用するペプチドの投与方法としては、経口投与、非経口投与のいずれでもよいが、経口投与が好ましい。また、投与量は投与方法、患者の症状・年齢等により異なるが、通常1回1〜1000mg、好ましくは10〜300mgを1日当たり1〜3回投与することが好ましい。そして、経口投与する場合、通常、製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられ、具体的には、乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン界面活性剤、プロピレングリコール、水等を例示することができる。
【0018】
また、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等を具体的に例示することができ、これらの製剤は常法に従って調製され、特に液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形態とすることもできる。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。これらの製剤は、上記ペプチドを0.1重量%以上、好ましくは0.5〜70重量%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。
【0019】
本発明の一般式X−Pro−Leu−Pro−Arg(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)で示されるペプチド、好ましくはTrp−Pro−Leu−Pro−Argは、健忘症の予防及び/又は症状改善用食品素材として、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜へ配合し、機能性食品として摂取することもできる。これらの食品は、上記ペプチドを0.01重量%以上、好ましくは0.1〜10重量%の割合で含有することができる。
【0020】
(実施例)
次に本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例等により限定されるものではない。なお実施例中「%」とあるのは断りのない限り重量%を意味する。
参考例[ペプチドの合成]
市販のFmoc−Arg(Pmc)−A1ko樹脂(置換率0.5meq/g)0.8gをPS3型ペプチド合成機(Protein Technologies社製)の反応槽に分取し、以下のように合成を行った。ここで、Pmcとは、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン6−スルフォニル基を示す。
【0021】
まず、上記樹脂を反応容器に入れて、1mmolのFmoc−Proと、活性化剤として、1mmolのHBTUを、0.4MのN−メチルモルフォリンを含むジメチルフォルムアミドに溶解したものを10ml反応槽に加え、室温にて20分攪拌反応させた。得られた樹脂を20%のピペリジンを含むメチルフォルムアミド20ml中で、Fmoc基を除去処理し、ついで上記のFmoc−Proをカップリングさせた方法と同様にC末端から順次Fmoc−Leu、Fmoc−Pro及びFmoc−X(XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)をカップルさせて、X−Pro−Leu−Pro−Arg(Pmc)樹脂を得た。該樹脂を10mlの脱保護液(82容量%トリフルオロ酢酸、5容量%チオアニソール、3容量%エタンジチオール、2容量%エチルメチルスルフィド、3容量%フェノール、5容量%水)中で室温にて4時間攪拌し、ペプチドを樹脂から遊離させた。
【0022】
ここに40mlの冷エーテルを添加し、ペプチドを沈殿させ、さらに冷エーテルにて3回洗浄して粗ペプチドを得た。これをODSカラム(Cosmosil5C18−AR,φ20×250mm)による逆相クロマトグラフィーにより0.1重量%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配にて展開して精製し、X−Pro−Leu−Pro−Arg(XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。)の配列を有するペプチドを得た。これら5種類のペプチドをプロテインシーケンサー(アプライド バイオシステムズ社製477A型)により分析して、それぞれの組成であることを確認した。
【0023】
実施例
[学習実験]
学習能に対するペプチドの効果を step-through 装置を用いた受動的回避実験により検討した。マウスを明暗2室に分かれた装置の明室に入れると、マウスは暗いところを好むことから暗室に入る。暗室に入ると床から電気ショック(28−29V、5 sec duration)を与えて、暗室が危険なことを教育する。24時間マウスを再び同じ装置に入れ明暗に止まっている時間を測定する。
【0024】
訓練試行30分前にスコポラミン0.1mg/kgを腹腔内に投与することにより(スコポラミン健忘)、または訓練試行3日前に両側総頚動脈を10分間遮断すること(脳虚血健忘)によってマウスに健忘を誘発させた。訓練試行直後にペプチドを側脳室内または経口投与し、24時間後テスト試行を行った。
【0025】
[抗健忘作用]
スコポラミンは0.1mg/kgで有意な健忘作用を示したことから、スコポラミン誘発健忘に対するペプチドWPLPRの抗健忘作用について検討した。結果を図4に示す。図4から、30nmole/mouseの側脳室内投与(図4A参照)または300mg/kgの経口投与(図4B参照)で、スコポラミン投与によって誘発された健忘に対してペプチドWPLPRが有意に改善作用を示すことがわかった。スコポラミンはムスカリン性アセチルコリンレセプターアンタゴニストであること、また補体C3aはモルモット回腸アッセイ系においてアセチルコリンの放出を促進することから、ペプチドWPLPRの抗健忘作用は脳内C3aレセプターによるアセチルコリンの放出によるものと考えられる。
【0026】
また、脳虚血処置したマウスでは有意な健忘が見られたことから、スコポラミン誘発健忘の場合と同様に、脳虚血誘発健忘に対するペプチドWPLPRの抗健忘作用について検討した。結果を図5に示す。図5から、ペプチドWPLPRは、60nmole/mouseの側脳室内投与(図5A参照)または300mg/kgの経口投与(図5B参照)で脳虚血健忘をコントロールレベルまで改善した。
【0027】
【発明の効果】
コメ由来のオリザテンシンを基にして、ペプチドWPLPR等の経口投与で有効なC3aアゴニストをはじめて設計したところ、これらペプチドはスコポラミン健忘及び脳虚血によって誘発した健忘に対して改善効果を示した。このように本発明によると、経口投与あるいは機能性食品素材として摂取しても、健忘症の予防や症状改善作用を有する有用な機能性ペプチドを提供することができる。また、WPLPR配列を遺伝子の部位指定変異により米アルブミンまたは他のタンパク中に導入することにより経口で有効なC3a活性を内在するタンパク質を得ることもできる。
【0028】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】補体C3aとコメ由来のオリザテンシンとの間のホモロジーを示す図である。
【図2】マウスにおけるペプチドYPLPRの鎮痛活性を示す図である。
【図3】補体C3aの側脳室内投与による、スコポラミン誘発健忘(A)や脳虚血による健忘(B)に対する抗健忘作用を示す図である。
【図4】側脳室内投与(A)及び経口投与(B)によるスコポラミン誘発健忘マウスに対するペプチドWPLPRの抗健忘作用を示す図である。
【図5】側脳室内投与(A)及び経口投与(B)による脳虚血誘発健忘マウスに対するペプチドWPLPRの抗健忘作用を示す図である。
Claims (4)
- 下記一般式(I)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善剤。
X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)
(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。) - 一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項1記載の健忘症の予防及び/又は症状改善剤。
- 下記一般式(I)で示されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする健忘症の予防及び/又は症状改善用食品。
X−Pro−Leu−Pro−Arg …(I)
(式中、XはLeu、Ile、Met、Phe、Trpのいずれかを表す。) - 一般式(I)におけるXがTrpであることを特徴とする請求項3記載の健忘症の予防及び/又は症状改善用食品。
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