JP2005325066A - 学習記憶増強剤、学習記憶を増強させる方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルツハイマー病等による記憶・学習障害の改善に有効な、学習記憶の増強作用を有する物質を得ることが本発明の課題である。
【解決手段】Leu−Pro−Tyr−Pro−Argは学習記憶の増強作用を有している。よって本発明により学習記憶増強剤として有用な機能性ペプチド、および上記ペプチドを用いて学習記憶を増強させる方法が与えられた。本発明のペプチドはアミノ酸残基が短く、かつ大豆由来であって特殊なアミノ酸も含まれていないから安価に調製することができ、安全性が高い素材であるという利点も有する。
【選択図】図1
【解決手段】Leu−Pro−Tyr−Pro−Argは学習記憶の増強作用を有している。よって本発明により学習記憶増強剤として有用な機能性ペプチド、および上記ペプチドを用いて学習記憶を増強させる方法が与えられた。本発明のペプチドはアミノ酸残基が短く、かつ大豆由来であって特殊なアミノ酸も含まれていないから安価に調製することができ、安全性が高い素材であるという利点も有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、学習記憶増強剤として有用な機能性ペプチドに関する。更に本発明は、上記ペプチドを用いて学習記憶を増強させる方法に関する。
社会の高齢化に伴い、アルツハイマー性の記憶・学習障害の患者は今後30〜40年の間に3倍に達すると言われている。そこで、その様な疾患を治療ないし予防するための手段が求められている。そのような状況の下で、学習記憶機能を増強する機能性ペプチドについてこれまでにいくつかの特許出願が行われている(特開平9−12597号公報、特開平9−227590号公報)。
しかし特開平9−12597号公報に係るペプチドは酸性線維芽細胞増殖因子の1−29アミノ酸残基フラグメントの16位アミノ酸システインが他のアミノ酸で置換されたペプチドフラグメントであり、アミノ酸残基数が長い。更に特開平9−227590号公報に係るペプチドは、Xaa−Tyr−Tyr−Pro−Thr(式中XaaはD-AlaまたはD-Ser)で表されるペプチド、D-Ala−Tyr−Tyr−Pro−Thrで表されるペプチド、及びD-Ala−Tyr−Tyr−Proで表されるペプチドであり、アミノ酸がD体であることが必要である。そこでこれらのペプチドには、合成が困難であり、また高価であるという問題点があった。
更に他の関連する知見として本発明者らは、内因性の摂食調節ペプチドであるエンテロスタチン(Val−Pro−Asp−Pro−Arg)およびそのフラグメントがスコポラミンにより誘導された健忘症の予防・改善と血清コレステロール低下に有効である事を見出し、その知見について特許出願を行っている(特開2002−80393号公報)。
ところで、上記のエンテロスタチンの他に、大豆蛋白質が血清コレステロール降下作用を有することが知られている。そこで本発明者らは食品蛋白質の消化物に由来するペプチドの生理活性を検討したところ、いくつかのペプチドが補体C3aレセプターを介して作用することを見出した。そのような検討の中で、米蛋白質に含まれる機能性ペプチドであるオリザテンシン(Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg)を基にして設計したC3a低分子アゴニストLeu−Pro−Leu−Pro−Argは、コレステロール低下作用を有することが見出された。そして、このペプチドと1残基のみ異なり、大豆グリシニンA5A4B3サブユニットに存在するペプチドであるLeu−Pro−Tyr−Pro−Argも、コレステロール低下作用を有しており、更には中性脂肪低下作用及び摂食抑制作用を有することが報告されている(吉川正明ら、大豆たん白研究Vol2,1999年 125−128頁)。
学習記憶機能を増強するペプチドについて、特開平9−12597号公報、特開平9−227590号公報及び特開2002−80393号公報などの知見があるにも関わらず、アルツハイマー性あるいは非アルツハイマー性の記憶・学習障害の病態やその発現態様には個人差が大きい事を考えると、かかる病態を改善することができる活性を有する物質が更に求められている。また、老人性疾患に有効な物質は長期間服用することが必要であることを考えると、かかる物質は安全性が高く且つ経口投与が可能であることが望ましい。よって、そのような利点を有する学習記憶機能増強ペプチドを提供することが本発明の課題である。
そこで本発明者らは、大豆グリシニンA5A4B3サブユニットに存在し、血清コレステロールを低下させる機能を有する上記のペプチドLeu−Pro−Tyr−Pro−Arg(LPYPR)に注目し、そのペプチドが脳の機能に及ぼす影響を検討した。その結果、LPYPRで表されるペプチドは学習記憶の増強に有効であることが見出された。当該ペプチドは、学習記憶の増強作用と血清コレステロール低下作用を併せ持つために、高齢化社会において上記のペプチドの有用性は非常に大きいと考えられる。
よって本発明は、LPYPRで表されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする、学習記憶増強剤を提供するものである。更に本発明は、LPYPRで表されるペプチドを投与することにより、学習記憶を増強させる方法も提供するものである。
LPYPRは学習記憶の増強作用を有している。よって本発明により学習記憶増強剤として有用な機能性ペプチド、および上記ペプチドを用いて学習記憶を増強させる方法が与えられた。本発明のペプチドはアミノ酸残基が短く、かつ大豆由来であって特殊なアミノ酸も含まれていないから安価に調製することができ、安全性が高い素材であるという利点も有する。
上記で述べたように本発明は、Leu−Pro−Tyr−Pro−Argで表されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする学習記憶増強剤と、そのペプチドを投与することにより学習記憶を増強させる方法を提供するものである。本発明のペプチドの学習記憶増強剤を用いて、医薬品、機能性食品、栄養補助食品(いわゆるサプリメント)を開発することが可能である。ここでLeuはロイシン、Proはプロリン、Tyrはチロシン、Argはアルギニンを示す。かかるアミノ酸はいずれもL−体である。
本発明のペプチドは、ペプチド合成法で取得することができる。即ち、ペプチド合成に通常用いられる方法である液相法または固相法で、ペプチド結合の任意の位置で二分される2種のフラグメントの一方に相当する反応性カルボキシル基を有する原料と、他方のフラグメントに相当する反応性アミノ基を有する原料とを、2-(1H-Benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate(HBTU)等の活性エステルを用いた方法や、カルボジイミドを用いた方法等を用いて縮合させることができる。生成する縮合物が保護基を有する場合、その保護基を除去することによっても製造し得る。
この反応工程において反応に関与すべきでない官能基は、保護基により保護される。アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc),p−ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9ーフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)等が挙げられる。カルボキシル基の保護剤としては例えばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基が挙げられるが、固相法の場合は、C末端のカルボキシル基はクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、P−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合している。縮合反応は、カルボジイミド等の縮合剤の存在下にあるいはN−保護アミノ酸活性エステルまたはペプチド活性エステルを用いて実施する。
縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相法の場合はさらにペプチドのC末端と樹脂との結合を切断する。更に、本発明のペプチドは通常の方法に従い精製される。例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
合成したペプチドの合成はエドマン分解法でC−末端からアミノ酸配列を読み取るプロティンシークエンサー、GC−MS等で分析される。
合成したペプチドの合成はエドマン分解法でC−末端からアミノ酸配列を読み取るプロティンシークエンサー、GC−MS等で分析される。
次に医薬品として用いる場合について説明する。本発明で使用するペプチドの投与経路としては、経口投与、非経口投与、直腸内投与のいずれでもよい。本発明の抗脱毛症剤は、経口的あるいは非経口的に投与することが可能である。本ペプチドの投与量は化合物の種類、投与方法、患者の症状、年齢等により異なるが、1日あたり通常は0.1mg/kg〜1000mg/kg、好ましくは1mg/kg〜100mg/kgである。本発明のペプチドは通常、製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられる。
具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。尚、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解または懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
これらの製剤は、本発明のペプチドを0.01%〜100重量%、好ましくは1〜90重量%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま或いはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤、あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま或いはグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
経口投与用の液状製剤を製造するには、有効成分と白糖、ソルビトール、グリセリンなどの甘味剤とを水に溶解して透明なシロップ剤、更に精油、エタノールなどを加えてエリキシル剤とするか、アラビアゴム、トラガント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを加えて乳剤又は懸濁剤としてもよい。これらの液状製剤には所望により矯味剤、着色剤、保存剤などを加えてもよい。
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ぶどう糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
皮膚用外用剤を製造するには、有効成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合した後ポリアルキルなどの不織布に展延してテープ剤とする。
更に本発明の学習記憶増強剤を、機能性食品や栄養補助食品(いわゆるサプリメント)の形で投与することも本発明の一態様である。本発明の学習記憶増強剤を一般に飲食されている物や調味料などの中に配合することが可能であり、そのような飲食物は通常の方法で製造されるものであって特に限定されるものではない。
次に実例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。しかし下記の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
(ペプチドの合成)
市販のFmoc−Arg(Pmc)−Wang樹脂(置換率0.50meq/g)0.60gをPS3型ペプチド合成機(Protein Technologies社製)の反応槽に分取し、新規ペプチドについて以下のように合成を行った。
市販のFmoc−Arg(Pmc)−Wang樹脂(置換率0.50meq/g)0.60gをPS3型ペプチド合成機(Protein Technologies社製)の反応槽に分取し、新規ペプチドについて以下のように合成を行った。
まず、上記の樹脂を反応容器に入れて、1mmolのFmoc−Proと、活性化剤として、1mmolのHBTUを10mlの0.4M N−メチルモルフォリンを含むジメチルフォルムアミドに溶解したものを反応槽に加え、室温にて20分攪拌反応させた。
得られた樹脂を20重量%ピペリジンを含むジメチルフォルムアミド20ml中で、Fmoc基を除去し、ついで上記のFmoc−Proをカップリングさせた方法と同様にC末端から順次Fmoc−アミノ酸をカップルさせて、Leu−Pro−Tyr(oBzl)−Pro−Arg(Pmc)−樹脂を得た。該樹脂を10mlの脱保護液(82容量%トリフルオロ酢酸、5容量%チオアニソール、3容量%エタンジオール、2容量%エチルメチルスルフィド、3容量%フェノール、5容量%水)中で室温にて4時間攪拌し、ペプチドを樹脂から遊離させた。
ここに40mlの冷エーテルを添加し、ペプチドを沈殿させ、さらに冷エーテルにて3回洗浄し粗ペプチドを得た。これをODSカラム(Cosmosil 5C18−AR,20×250mm)による逆相クロマトグラフィーにより0.1重量%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配にて展開、精製し、Val−Pro−Tyr−Pro−Argを得た。本品をプロテインシーケンサー(アプライド バイオシステムズ社製492A型)により分析した結果、上記の組成であることが判明した。
(学習促進作用)
学習能に対するペプチドの効果を、ステップスル−装置を用いた受動的回避実験により検討した。ddyマウス(オス、体重24±2g)を明暗2室に分かれた装置の明室に入れると、マウスは暗いところを好むことから暗室に入る。暗室に入ると床から電気ショック(28−29V、5sec duration)を与えて、暗室が危険なことを教育する(訓練試行)。訓練試行直後に本発明のペプチド(Val−Pro−Tyr−Pro−Arg:LPYPR)を20または10nmol/マウスの用量で側脳質内投与、あるいは100または30mg/kgの用量で経口投与し、24時間後にテスト試行を行った。即ちマウスを再び同じ装置に入れ、明暗に止まっている時間を測定することにより、本発明のペプチドの有無におけるマウスの学習能を比較した。
学習能に対するペプチドの効果を、ステップスル−装置を用いた受動的回避実験により検討した。ddyマウス(オス、体重24±2g)を明暗2室に分かれた装置の明室に入れると、マウスは暗いところを好むことから暗室に入る。暗室に入ると床から電気ショック(28−29V、5sec duration)を与えて、暗室が危険なことを教育する(訓練試行)。訓練試行直後に本発明のペプチド(Val−Pro−Tyr−Pro−Arg:LPYPR)を20または10nmol/マウスの用量で側脳質内投与、あるいは100または30mg/kgの用量で経口投与し、24時間後にテスト試行を行った。即ちマウスを再び同じ装置に入れ、明暗に止まっている時間を測定することにより、本発明のペプチドの有無におけるマウスの学習能を比較した。
LPYPRを側脳質内投与(10nmol/マウス、20nmol/マウス)することによる影響を検討した(図1)。即ち、ケージの明室へ入れられたマウスが暗室へ移動するまでの時間(step−through latency:sec)を指標として、上記ペプチドの学習促進作用を検討した結果を図1に示す。マウスは暗室へ移動する性質を有しているが、学習により暗室が危険である事を記憶していると明室に留まるので、マウスが学習した場合にはstep−throughlatencyが長くなる。
図1の結果より、LPYPRを投与することによりstep−through latencyは延長され、よって本発明のペプチドを投与することによりマウスの学習能が増強されていることが示された。図1においてn=12であり、600秒を本実験におけるカットオフ値とした。マン アンド ホイットニ−(Mann and Whitney)法によりU検定を行ったところ、コントロール群の中央値(カラムで示された値)は276であり、1/4値は110.5であり、3/4値は518であった。またLPYPR10nmolを側脳質内投与した群の中央値は559.5であり、1/4値は369.75であり、3/4値は600であった。またLPYPR20nmolを側脳質内投与した群の中央値は600であり、1/4値は376.5であり、3/4値は600であった。
ここで中央値とは、step−through latencyの数値(秒)を数値の大きさの順番に従って並べた時に、中央に位置する値である。また1/4値は数値の順番において低い方から1/4の順位に相当する値であり、また3/4値は数値の順番において低い方から3/4の順位に相当する値である。LPYPRを10nmol投与した群においても、20nmol投与した群においてもP値は0.05以下であり、コントロール群と比較して両群とも5%の危険率で有意差が認められた(P<0.05)。
更に、LPYPRを経口投与(30mg/kg、100mg/kg)することによる影響を検討した(図2)。図2の結果においても、LPYPRを投与群においてstep−through latencyは延長され、本発明のペプチドを投与することによりマウスの学習能が増強されていることが示された。図2においてn=17であり、600秒を本実験におけるカットオフ値とした。マン アンド ホイットニ−(Mann and Whitney)法によりU検定を行ったところ、コントロール群の中央値(カラムで示された値)は292であり、1/4値は63であり、3/4値は517.5であった。またLPYPRを30mg/kg経口投与した群の中央値は518.5であり、1/4値は216であり、3/4値は600であった。またLPYPRを100mg/kg経口投与した群の中央値は600、1/4値は236であり、3/4値は600であった。LPYPRを30mg/kg投与した群においても、100mg/kg投与した群においてもP値は0.05以下であり、コントロール群と比較して両群とも5%の危険率で有意差が認められた(P<0.05)。
既に述べたように、内因性摂食調節ペプチドであるエンテロスタチン(Val−Pro−Asp−Pro−Arg:VPDPR)はコレステロール低下作用と抗健忘作用を有するが、正常マウスに対して学習促進作用は示さない。エンテロスタチンと本発明のペプチドであるLPYPRは一部類似しているが、LPYPRにおいては摂食抑制作用と抗鎮痛作用は認められなかった。よってエンテロスタチンと本発明のLPYPRは異なったメカニズムで作用していると考えられる。
LPYPRは学習記憶の増強作用を有している。本発明のペプチドはアミノ酸残基が短く、かつ大豆由来であって特殊なアミノ酸も含まれていないから安価に調製することができ、安全性が高い素材であるという利点も有する。よって本発明のペプチドは、医薬品、機能性食品、サプリメントとして利用される大きな可能性を有するものである。
Claims (5)
- Leu−Pro−Tyr−Pro−Argで表されるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする、学習記憶増強剤。
- 請求項1記載の学習記憶増強剤を有効成分として含有する医薬品。
- 請求項1記載の学習記憶増強剤を有効成分として含有する機能性食品。
- 請求項1記載の学習記憶増強剤を有効成分として含有する栄養補助食品。
- Leu−Pro−Tyr−Pro−Argで表されるペプチドを投与することにより、学習記憶を増強させる方法。
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