JP3897675B2 - 加圧ボールペン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧ボールペンに関し、更に詳しくは、優れた筆記性を有し、透明なインキ収容管内部にインキが付着しやすくインキが残っていないのに残っているかのような錯覚を与えない、いわゆるインキ直読性に優れた手書き筆記用に好適な加圧ボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボールペンには、ボールペン先とインキ収容管及びそれに充填されたインキからなる重力式(大気開放型)と、インキ充填後のインキ充填管内に窒素ガス等の加圧ガスを封入するか、インキ充填後のインキ充填管を収容し閉鎖された容器内に窒素ガス等の加圧ガスを封入した、いわゆる加圧式ボールペンが知られている。
【0003】
この加圧式ボールペンは、上向き筆記や特殊機能を持たせたインキを流出させることができるといった利点はあるが、インキが充填されたインキが常に加圧されているために、ペン先から少量のインキが漏れ出す虞れがある。
これを防止するためには、インキの見かけ粘度を高くしなければならず、これによって、筆記感が重くなる等、また、インキ収容管にインキを充填するのに時間を要するといった問題点、更に、インキ収容管内部にインキが付着しやすく、いわゆるインキの直読性に劣るといった等の問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決した、加圧した筆記又は標記器具としては、ボール周りにインキ又は流体を流出させない筆記具とすることを主眼とし、該筆記具の書写用流体は少なくとも1種の溶剤及び着色剤と、上記溶剤に可溶性であって書写用流体の他の成分と共に該流体に粘弾性、強凝集性、強粘着性、流体抵抗性及びフィルム形成性を与える少なくとも1種のポリマーとよりなり、該書写用流体は100000cps以上の粘度(ブルックフィールドLMT粘度計に第5円筒形スピンドルを用い、25℃、0.3rpmにおいて測定して)を持つことを特徴とするボールペン筆記具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、加圧ボールペン用インキとして、高級脂肪酸石鹸を含むチキソトロピックなインキ、並びに、そのインキ粘度は実施例から600000cps〜800000cpsとするインキが知られている(例えば、特許文献2参照。)。更に、50000cps以上の粘度に設定した、金属光沢を有するインキ組成物が知られ(例えば、特許文献3参照。)、また、プロツターに使用される加圧ボールペン用インキの粘度を40000〜500000cpsの範囲とするインキが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特公昭47−48565号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】
特開昭50−096336号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】
特開昭60−186574号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】
特開昭62−7775号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜4に開示される加圧用ボールペンインキ組成物等は、その粘度が高いため、機械に筆記させるプロッターペンおよび金属製のリフィールを用いたボールペンとしては適していても、インキの残量を確認出来る通常のボールペンとしてはインキ直読性に劣るといった等の点に課題があるものである。
逆に、インキ組成物を比較的低粘度にした場合には、インキ直読性の他に、インキ吹き出し、長期保存安定性に欠けるという課題が発生する。
【0008】
一方、インキ直読性について対策を講じた技術として、インキ組成物以外の要素による対策を講じているものが知られている(例えば、特許文献5及び特許文献5参照。)。
また、ボールペンリフィールの構造、インキ組成物への添加剤とインキの粘度範囲が比較的低い領域に調整することにより、加圧ボールペンにおけるインキ流出をコントロールする技術が知られている(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9参照。)。
更に、インキ収容管にシリコーンオイル等のインキ反撥性液・皮膜を形成させ、インキ直読性を確保しているインキ収容管が知られている(例えば、特許文献10参照。)。
【0009】
【特許文献5】
実開昭49−53846号公報(考案の詳細な説明等)
【特許文献6】
特開平8−108679号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】
特開2002−205483号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】
特開2002−205484号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】
特開2002−205485号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献10】
特開昭56−155798号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0010】
しかしながら、上記特許文献5及び6は、インキ組成物以外の要素による対策を講じているものであり、充分なものといえず、また、上記特許文献7〜9では、インキ直読性について記載も示唆もなく、更に上記特許文献10では、実際に、これらの加圧ボールペン用インキ収容管にインキを充填すると、効果がないものがあり、これだけでは十分とはいえず、インキ組成物の検討が必要であるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、加圧ボールペンにおいて、使用時暫時インキが消費されても、インキ収容管にインキが概略付着せず、内容インキの減少分が確認できる手書きに好適な加圧ボールペンを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物において、インキの粘度範囲を特定の範囲とすると共に、各剪断速度における粘度の比を特定値以下とする加圧ボールペン用インキ組成物を特定構造となるインキ収容管に充填することにより、上記目的の加圧ボールペンが得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の加圧ボールペンは、少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物であって、
(1)前記インキの粘度が25℃において、剪断速度3.8s−1の粘度が10000mPa・s〜40000mPa・secであり、
(2)前記インキの25℃、剪断速度0.38s−1における粘度(N)と、25℃、剪断速度1.9s−1における粘度(N)の比(N/N)が1.3以下である加圧ボールペン用インキ組成物が、光の透過が可能な材質から構成されているインキ収容管に充填され、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、該インキ収容管の後方開放部と連通する空間を設け、該インキ収容管の少なくとも一部を内包するEVOH製の収容筒体とを有し、該空間に加圧ガスが封入されており、該加圧ガスの圧力により上記インキ組成物をチップ方向に押し出すことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の加圧ボールペンは、少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物であって、
(1)前記インキの粘度が25℃において、剪断速度3.8s−1の粘度が10000mPa・s〜40000mPa・secであり、
(2)前記インキの25℃、剪断速度0.38s−1における粘度(N)と、25℃、剪断速度1.9s−1における粘度(N)の比(N/N)が1.3以下である加圧ボールペン用インキ組成物が、光の透過が可能な材質から構成されているインキ収容管に充填され、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、該インキ収容管の後方開放部と連通する空間を設け、該インキ収容管の少なくとも一部を内包するEVOH製の収容筒体とを有し、該空間に加圧ガスが封入されており、該加圧ガスの圧力により上記インキ組成物をチップ方向に押し出すことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の加圧ボールペンに用いるインキ組成物は、上記(1)及び(2)の粘度条件を満たすために、着色剤として染料・顔料、溶剤、樹脂、その他適宜使用できる添加剤、界面活性剤、分散剤等で好適に組合わせることにより調整することができる。
用いることができる着色剤としては、加圧ボールペン用に用いられている着色剤であれば、特に限定されず、染料や顔料などが挙げられる。
染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
顔料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン顔料等の無機顔料、タルク、アルミナ、マイカ、アルミナシリケート等の体質顔料、アゾ・縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系原料、アンスラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料等の有機顔料、蛍光顔料、パール顔料、金色、銀色等のメタリック顔料等が挙げられる。
また、黒色顔料兼潤滑剤としては、黒鉛(グラファイト)も使用でき、人造黒鉛、天然黒鉛、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の各種の性状と大きさのものが使用できる。
これらの着色剤は、上記した染料、顔料の1種又は2種以上、或いは上記した染料、顔料を混合して用いてもよく、好ましくは、鮮やかな描線濃度を発揮せしめる点から顔料を含むことが望ましい。
これらの着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、合計で10〜60重量%、更に好ましくは、20〜50重量%含むことが好ましい。
【0015】
用いる溶剤は、粘度調整と染料の溶解促進、顔料等の分散調整、インキの乾燥性調整のために含有するものである。用いることができる溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレグリコールモノへキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等のエーテル系溶剤、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール等のアルコール系溶剤やプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、N−メチルー2−ピロリドンロジンアルコール、水(精製水、イオン交換水、純水、海洋深層水)などが挙げられ、これらの溶剤は単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
これらの溶剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、30〜80重量%が好ましく、更に好ましくは、35〜60重量%とすることが望ましい。
【0016】
本発明では、更に、定着性向上、筆跡の裏写り防止の他、顔料等の分散剤としての機能や粘度調整、染料の溶解促進のために各種樹脂を含有することができる。
用いることができる樹脂としては、例えば、トルエンスルホンアミド・エポキシレジン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、尿素などのケトンとホルムアルデヒドとの縮合樹脂、シクロヘキサノンの縮合樹脂及びこれらを水素添加した樹脂、マレイ酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合休、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、重合脂肪酸とポリアミン類との縮合体であるポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロンーインデン樹脂、ポリテルペン、テルペン樹脂類、テルペン−フェノール樹脂類、キシレン樹脂、ロジン系樹脂やその水素添加物、ロジン変性されたマレイン酸樹脂、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンやフェノール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
これらの樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、0〜30重量%が好ましく、更に好ましくは、1〜25重量%とすることが望ましい。
【0017】
本発明に用いる加圧ボールペン用インキ組成物には、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、潤滑剤として高級脂肪酸、金属石鹸、リン酸エステル系潤滑剤、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤等を含有することができ、特に、オレイン酸が最も好適に用いられる。また、その他適宜な界面活性剤、分散剤、シリカ等必要に応じて使用できる。
【0018】
本発明において、上記各成分を含有するインキの粘度は、25℃、剪断速度3.8s-1において、10000mPa・s〜40000mPa・sec(条件1)に調整することが必要であり、好ましくは、20000mPa・sec〜35000mPa・seとすることが望ましい。
この粘度が40000mPa・secを越えて粘度が高くなると、特に流量の多い太字のボールペンにおいて、インキがインキ収容管に付着して内容インキの確認が困難となる。逆に、10000mPa・sec未満であると、インキが加圧ガスで置換しインキが後方に流れ出すといった事が発生したり、他の品質で、初期は問題がないが、時間が経過すると、インキ漏れが発生する場合があり、好ましくない。
【0019】
更に、本発明では、前記インキの25℃、剪断速度0.38s-1における粘度(N1)と、25℃、剪断速度1.9s-1における粘度(N2)の比(N1/N2)が1.3以下とすることが必要(条件2)であり、更に好ましくは、1.2以下とすることが望ましい。
この粘度比N1/N2が1.3を越えると、インキの流動性が悪いため、筆記時のインキ収容管内のインキのペン先方向への移動に追従しないインキが収容管壁に残存し、インキ残量がわかりにくくなり、好ましくない。
なお、上記条件1の調整は、上記加圧ボールペン用インキ成分において、用いる着色剤、溶剤及び樹脂の種類と配合量を勘案して設定することにより、また、上記条件2は、例えば、着色剤として顔料を用いる場合は、上記条件1の調整と同様に用いる顔料、溶剤及び樹脂の種類と配合量を勘案し、その分散状態をコントロールすることにより調整することができる。
【0020】
このように構成される本発明の加圧ボールペンに用いるインキ組成物では、少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物であって、インキの粘度を上記条件1の10000mPa・s〜40000mPa・secの粘度範囲とし、かつ、上記条件2の粘度比(N/N)を1.3以下とすることにより、優れた筆記性を有し、透明なインキ収容管内部にインキが付着しやすくインキが残っていないのに残っているかのような錯覚を与えない、いわゆるインキ直読性に優れた本発明の加圧ボールペン用に好適なインキ組成物が得られることとなる。
【0021】
本発明の加圧ボールペンは、上述の加圧ボールペン用インキ組成物が、光の透過が可能な材質から構成されているインキ収容管に充填され、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、該インキ収容管の後方開放部と連通する空間を設け、該インキ収容管の少なくとも一部を内包するEVOH製の収容筒体とを有し、該空間に加圧ガスが封入されており、該加圧ガスの圧力により上記インキ組成物をチップ方向に押し出すことを特徴とするものである。
【0022】
加圧式のボールペン構造としては、上記構成、すなわち、金属製又は樹脂製のインキ収容管と、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、前記インキ収容管にインキが充填され、その後方より加圧ガスが充填され、該加圧ガスの圧力によりインキをチップ方向に押し出すようにした加圧式のボールペン構造であり、インキ収容管が光の透過が可能な材質から構成されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、インキ充填後のインキ充填管内または、インキ充填管をその中に含む密閉された容器内に、窒素ガス等の加圧ガスを封入したリフィールを備えた加圧式ボールペンまた一時的に加圧したり、蓄圧する等の加圧ボールペンなどが挙げられる。
本発明において、インキ収容管が光の透過が可能な材質から構成されるものとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリロニトリル系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、エチレンビニルアルコール等の熱可塑性樹脂が使用可能であり、特に、ポリプロピレンがが、安価で、透明度もあり、適度な強度・硬度もあり、好適である。
【0023】
図1は、ガス加圧式ボールペンを示す具体的実施形態の一例であり、このボールペンAは、先端に筆記チップ10が設けられて内部に筆記チップに供給する本発明のインキ組成物11が収容され、かつ、後方の開放された例えば、PP製インキ収容管(チューブ体)12と、該インキ収容管12の後方開放部と連通する空間13を設け、該インキ収容管12の少なくとも一部を内包する収容筒体14とを有し、該収容筒体14をガス低透過性又はガス不透過性を有する部材(例えば、EVOH)で構成し、上記インキ収容管12と収容筒体14との間に設けた空間内に加圧ガスを封入してなるものである。なお、15は、軸体(例えば、PP製)である。
【0024】
このように構成される本発明の加圧ボールペンは、少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物であって、
(1)前記インキの粘度が25℃において、剪断速度3.8s−1の粘度が10000mPa・s〜40000mPa・secであり、
(2)前記インキの25℃、剪断速度0.38s−1における粘度(N)と、25℃、剪断速度1.9s−1における粘度(N)の比(N/N)が1.3以下である加圧ボールペン用インキ組成物が、光の透過が可能な材質から構成されているインキ収容管に充填され、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、該インキ収容管の後方開放部と連通する空間を設け、該インキ収容管の少なくとも一部を内包するEVOH製の収容筒体とを有し、該空間に加圧ガスが封入されており、該加圧ガスの圧力により上記インキ組成物をチップ方向に押し出すものであるので、上述の効果を有するインキ組成と相俟って、優れた筆記性を有し、インキ直読性に優れた加圧ボールペンが得られることとなる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例等を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜5及び比較例1〜6〕
下記表1に示す配合組成及び下記方法によりインキ組成物を調製した。
各インキ組成物の調製は、先ず顔料は成分中の樹脂、溶剤の一部を取り出しを分散剤とし、三本ロールミルまたはビーズミル用いて分散し、それを還流冷却器、撹拌幾を備えた容器に移した後、その他の成分を一部投入し、60℃で5時間撹拌した。その後シリカを所定量添加し、それぞれ下記各処理方法で処理し、残部を添加撹拌して、インキ組成物とした。
【0027】
また、各インキ組成物の粘度は、コーンプレート型粘度計(株式会社トキメック製:TV−20タイプ)で測定したものである。粘度値は25℃において剪断速度が剪断速度3.8s-1における数値を記載した。更に、粘度比(TI値)に関しては、レオメータ(Physica社製MCR300)を用いて定常流測定を行った。測定器具として、コーンプレート(直径25mm、角度1.4°)を用い、25℃、剪断速度0.38s-1(0.1rpm)と剪断速度1.9s-1(0.5rpm)の粘度を測定し、粘度比粘度比(N1/N2)を算出した。
個別のインキの詳細な調製法は以下のとおりである。
【0028】
(実施例1及び2、黒インキ)
シリカ添加後は3本ロールミルで1回パスして回収し、残部を添加してインキ化した。
(実施例3及び4、赤インキ)
シリカ添加後は3本ロールミルで1回パスして回収し、残部を添加してインキ化した。
(実施例5、青インキ)
シリカ添加後ホモミキサー(T.K.ホモミクサー 特殊機化工業株製)で冷却しながら、5000rpmで1時間攪拌処理後、回収して残部を添加攪拌混合してインキ化した。
【0029】
(比較例1〜3、黒インキ)
実施例1と同様の処方でインキを作製した。
(比較例4、赤インキ)
実施例3と同様の処方でインキを作製した。
(比較例5、青インキ)
実施例5と同様の処方でインキを作製した。
(比較例6、黒インキ)
特開平2002―205483号公報に記載の実施例2−2のインキ組成を用いた。
【0030】
〔加圧ボールペンでの評価法〕
上記で得た実施例1〜5及び比較例1〜6のインキ組成物について、下記方法により加圧ボールペンでの評価を行った。
上記各実施例及び比較例で調製した各インキ組成物0.3mlをポリプロピレン(PP)製インキ(内部がシリコーンで処理してあるもの、していないもの)収容管、並びに、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製インキ収容管に充填し、片方の端面にチップ(ボールは超鋼合金で、直径0.7mm)を装着し、もう片方から窒素ガスで概略3000hpaの加圧を維持した状態で密封したリフィールに組み立て各種試験用リフィールとした。なお、各インキ収容管の内径は、直径(内径)1.7mm、厚さ0.65mmである。
これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
(インキ残量視認性の評価方法)
荷重を200g、筆記角度60°、4.5m/sの筆記速度で螺旋筆記を行い、リフィール中のインキの追従性及び管壁へのインキの残存状態を目視で確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:管壁にインキが残存せず、インキ残量がはっきり視認可能
○:管壁にインキがほとんど残存せず、インキ残量がはっきり視認可能
△:管壁にインキが残存するも、インキ残量は判別可能
△△:インキ残量の判別が困難
×:判別不可能
【0032】
(インキ漏れ試験の評価方法)
試験用ボールペンを捨て書きした後、温度25℃、湿度60%で7日間で放置して、ペン先から漏れ出したインキの量を測り、試料数10本中の最頻値をとり、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:インキ漏れが全くない。
○:ペン先に極少量のインキ漏れが認められる。
△:ペン先に中程度のインキ漏れが認められる。
△△:ペン先に多量のインキ漏れが認められる。
×:インキが漏れ落ちた。
【0033】
【表1】
Figure 0003897675
【0034】
上記表1の結果から明らかように、本発明の範囲となる上記条件1の粘度範囲及び上記条件2の粘度比以下となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、インキ漏れもなく、インキ残量視認性(インキ直読性)に優れていることが判明した。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた筆記性を有し、インキ漏れもなく、インキ直読性に優れる加圧ボールペンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる加圧ボールペンの一例を示す縦断面図である。

Claims (1)

  1. 少なくとも着色剤、溶剤を含有するボールペン用インキ組成物であって、
    (1)前記インキの粘度が25℃において、剪断速度3.8s−1の粘度が10000mPa・s〜40000mPa・secであり、
    (2)前記インキの25℃、剪断速度0.38s−1における粘度(N)と、25℃、剪断速度1.9s−1における粘度(N)の比(N/N)が1.3以下である加圧ボールペン用インキ組成物が、光の透過が可能な材質から構成されているインキ収容管に充填され、該インキ収容管の片側に少なくともボールとホルダーから構成されるチップが装着され、該インキ収容管の後方開放部と連通する空間を設け、該インキ収容管の少なくとも一部を内包するEVOH製の収容筒体とを有し、該空間に加圧ガスが封入されており、該加圧ガスの圧力により上記インキ組成物をチップ方向に押し出すことを特徴とする加圧ボールペン。
JP2002301789A 2002-10-16 2002-10-16 加圧ボールペン Expired - Fee Related JP3897675B2 (ja)

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