JP3897442B2 - カラーフィルターの製造方法、及びこのカラーフィルターを用いた液晶素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルターの製造方法、及びカラーフィルターを用いた液晶素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの発達、特に携帯用パーソナルコンピュータの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加している。しかしながら、さらなる普及のために大幅なコストダウンが必要であり、特にコスト的に比重の重いカラーフィルタ基板のコストダウンが求められている。
【0003】
カラーフィルタ基板の低コストな製造方法として、ガラス基板上に先ず遮光性のブラックマトリクスを形成し、インクジェット方式により該ブラックマトリクスの開口部にインクを付与してカラーフィルタを形成する方法が提案されている。この方法に関して、それぞれの画素に対応するブラックマトリクスの開口部にうまくインクが収まるようにするため、ブラックマトリクスの材料として、該インクに濡れにくく、はじき易いものが検討されている。
【0004】
例えば、特開平7−35917号公報には、インクに対し20°以上の接触角を有する材料を用いてブラックマトリクスを形成し、その開口部にインクを付与する方法が提案されている。また、特開平7−35915号公報には、ブラックマトリクス材料として水に対して40°以上の接触角を有する材料が提案されている。さらに、特開平6−347637号公報には、それぞれの材料の臨界表面張力を、基板面>インク>ブラックマトリクス面とし、ブラックマトリクス面<35dyne/cm、基板面≧36dyne/cm、インクは両者から5dyne/cm以上の差を有するように、それぞれ設定することが提案されている。これらの提案ではいずれもブラックマトリクスの材料として、撥インク性を持たせるために、フッ素化合物やケイ素化合物を含むことが提案されている。
【0005】
また、特開平4−121702号公報には、基板と逆の親水性を有する堤を形成し、その間にインクを注入する方法が提案されているが、材料についての詳しい記載はない。
【0006】
これらの例のように、ブラックマトリクスに撥インク性を持たせることにより、ブラックマトリクス上に飛散したインクをブラックマトリクス開口部内に引き込ませることが可能となり、各画素に対応する開口部にインクがうまく収まらないという問題が改善された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例は、カラーフィルタ材料(インク)に対して臨界表面張力の異なる材料で遮光性の仕切り(ブラックマトリクス)を設け、その開口部にインクを付与するというものである。
【0008】
しかしながら、これらの例で示されている材料に関しては以下の点で問題があった。
【0009】
即ち、主に感光性樹脂、非感光性樹脂、黒色材料、及び撥インク剤(撥水剤)を含有する樹脂組成物からなるブラックマトリクスの場合、所望のパターンを形成するための最終工程であるポストベークにおいて、ブラックマトリクスを形成する樹脂組成物中の樹脂成分や撥インク剤が蒸発し、基板表面に薄く付着する。そのため、基板表面も撥インク性を有するようになり、インクを付与した際に、基板表面にインクが付着しにくく、開口部材で良好にインクが拡がらず、白抜けやむらの有るカラーフィルタとなったり、またカラーフィルタが基板より剥離する場合があった。
【0010】
本発明の目的は、上記問題を解決し、ブラックマトリクスの開口部に露出した基板表面が撥インク化するのを防止し、該開口部に付与される着色インクの該基板表面への付着性を改善して信頼性の高いカラーフィルタの製造方法、この製造方法により製造されたカラーフィルター、このカラーフィルタを用いた液晶素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、基板上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層を仮硬化する工程と、前記樹脂層を露光する工程と、前記樹脂層を現像して開口を有するブラックマトリクスを形成する工程と、前記ブラックマトリクスを減圧加熱する工程と、前記開口にインクジェット方法によりインクを付与する工程とを有し、前記減圧加熱の減圧度が5−2660Paであり、前記減圧加熱の温度が150−240℃であることを特徴とするカラーフィルターの製造方法である。
【0012】
また、本発明のカラーフィルターは、上記方法により製造されたものである。
【0013】
更に、本発明の液晶素子は、上記製造方法で製造され、電極を有するカラーフィルターと、前記カラーフィルターに対向して設けられ、電極を有する対向基板と、前記カラーフィルター及び前記対向基板の間に封入されたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
先ず、図1に示す塗布工程で、透明基板1上に黒色材料を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層2を形成する(図2(a))。塗布方法は、スピンコーター、ダイコーター、ディップコート、スプレーコートなどさまざまな方法を使用することができる。また、感光性樹脂層2の厚さは、必要な遮光性を得る厚さであり、例えば1μm程度である。尚、透明基板1にはガラス板が多く用いられるが、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のプラスチックフィルムやプラスチックシートでも構わない。
【0015】
上記感光性樹脂組成物は、黒色材料として顔料又は染料と、感光性樹脂を含み、その他必要に応じて非感光性樹脂を含んでいても良い。また、基板に塗布する際には適当な溶媒に分散されている。
【0016】
上記黒色顔料としては、カーボンブラックや黒色有機顔料などを用いることができる。また、赤,緑,青の顔料あるいは染料を混ぜて用いることもできる。
【0017】
また、感光性樹脂としては、UVレジストやDEEP−UVレジスト、紫外線硬化型樹脂等から適宜選択して用いることができる。
【0018】
上記UVレジストとしては、環化ポリイソプレン−芳香族ビスアジド系レジスト及びフェノール樹脂−芳香族アジド化合物系レジスト等のネガレジスト、ノボラック樹脂−ジアゾナフトキノン系レジスト等のポジレジストを挙げることができる。
【0019】
また、上記DEEP−UVレジストとしては、ポジ型レジストとして、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン、ポリヘキサフルオロブチルメタクリレート、ポリメチルイソプロペニルケトン及び臭素化ポリ1−トリメチルシリルプロピン等の放射線分解型ポリマーレジスト、コール酸o−ニトロベンジルエステル類等の溶解抑制剤系ポジ型レジスト等を、ネガ型レジストとして、例えばポリビニルフェノール−3,3−ジアジドジフェニルスルホン及びポリメタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。
【0020】
また、紫外線硬化型樹脂としては、ベンゾフェノン及びその置換誘導体、ベンゾイン及びその置換誘導体、アセトフェノン及びその置換誘導体、ベンジル等のオキシム系化合物等の中から選ばれる一種又は二種以上の光重合開始剤を2〜10重量%程度含有した、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0021】
次に、図1の仮硬化工程21において、塗布された感光性樹脂組成物層2を、例えばホットプレートを用いて仮硬化する。仮硬化にホットプレートを用いる場合、加熱温度は60−120℃、更には80−150℃が好ましい。加熱時間は30−150秒、更には60−90秒が好ましい。
【0022】
仮硬化工程では、加熱の代りに、減圧乾燥により仮硬化してもよい。減圧乾燥の場合、減圧度は5−2660Pa、更には10−1000Paが好ましい。減圧時間は3−60秒、更には5−30秒が好ましい。減圧乾燥は、ホットプレートを用いる場合に比べ時間がかからない。
【0023】
次に、感光性樹脂層2の塗工された基板1は、図1に示す露光工程22に送られる。露光工程22で、感光性樹脂層2は、所定パターンを有するマスク3を介して光照射される(図2(b))。露光源としては水銀灯が好ましく用いられる。
【0024】
露光された感光性樹脂層2は、次に現像工程23で、例えば無機アルカリ水溶液の現像機で現像される。感光性樹脂層2がネガ型であれば、マスク3で遮光された部分が現像液で溶出し、ポジ型であれば露光された部分が溶出する。尚、現像液は無機アルカリに限られるものでなく、有機アルカリ及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブ、アルコール類等の有機溶媒でも構わない。
【0025】
その後、例えば純水でリンスを行ない、現像液を洗い流す。こうして基板1上に開口を有するブラックマトリクス4が形成される(図2(c))。
【0026】
その後、ブラックマトリクス4の形成された基板1は、図1のポストベーク工程24に送られポストベークされる。
【0027】
ポストベーク工程24で、ブラックマトリクス4は図3に示す減圧ホットプレートを用いて減圧加熱され、硬化する。
【0028】
図3において、先ずブラックマトリクス4の形成された基板1を挿入口34を開けた状態にして、減圧室32に挿入する。尚、図3においてブラックマトリクス4は省略した。その後、減圧室32内のホットプレート35の所定の位置に基板1を配置する。この時、ホットプレート35上に直に基板1を置いてもよいし、ホットプレート35からピン等の冶具を用いて所定の距離だけ離して配置してもよい。
【0029】
基板1配置後、挿入口34のふたを閉じて、真空ポンプ33により減圧を開始する。この時同時に、ホットプレート35の内部に配置してなるヒーターにより、ホットプレート35及びその上に配置されている基板1の加熱を開始する。
【0030】
減圧及び加熱は所定の設定値に到達後、しばらくして止め、基板1が装置外に取り出せる状態にする。
【0031】
その後、挿入口34から基板1を装置外に取り出しポストベーク工程を終了する。
【0032】
なお本装置は、ホットプレート35の加熱を行わないことにより仮硬化工程の減圧乾燥装置としても使用できる。
【0033】
ポストベーク工程24での減圧度は、5−2660Pa、更には10−1000Paが好ましい。加熱温度は150−240℃、更には180−230℃が好ましい。減圧時間は10−600秒、更には150−400秒が好ましい。
【0034】
このように、ポストベークを減圧加熱により行うことにより、ブラックマトリクスから発生する揮発成分が、露出した基板表面に付着するのを防止することができる。このため、次のインク付与工程で、インクが基板に着実に付着する。また、減圧加熱は、常圧での加熱に比べ、時間を短縮できる。更に、減圧加熱は基板前面を均一に加熱することができる。
【0035】
ポストベーク終了後、ブラックマトリクス4の各開口部にインクジェット装置5を用いてR(赤)、G(緑)、B(青)等の着色インク6を付与する(図2(d))。本発明においては、インクの付与方法として、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の一般の印刷法等も用いることができるが、特に、インクジェット方式を用いた場合には、版を使用しないために高精度のパターニングが可能となり、好ましい。また、インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェットタイプ、或いは圧電素子を用いたピエソジェットタイプ等が使用可能である。
【0036】
本発明において用いられる着色インクとしては、最終的にカラーフィルタとなるためには、熱又は光硬化型の樹脂組成物であることが好ましい。従って、該インク中には、バインダー成分としてポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のモノマー或いはオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0037】
また、本発明にかかる着色インクは染料系、顔料系のいずれでも良く、溶媒は純水(イオン交換水)を主成分として、親水性の有機溶剤等を含んでいても良い。使用される染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド118、C.I.アシッドレッド254、C.I.アシッドグリーン25、C.I.アシッドブルー113、C.I.アシッドブルー185、C.I.アシッドブルー7が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、使用される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー209、C.I.ピグメントブルー16等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
インクジェット方式に用いられる着色インクに含有される上記染料或いは顔料は、インク中に0.1〜20重量%を占める割合で使用するのが好ましい。
【0040】
着色インクに用いられる親水性の有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール類等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明においては、着色インクの表面エネルギーは30〜70dyne/cm程度が好ましい。即ち、着色インクがブラックマトリクスを乗り越えて隣の開口部のインクと混色しないためには、ブラックマトリクスはインクに濡れにくい材料であることが好ましい。即ち、ブラックマトリクスの表面エネルギーがインクの表面エネルギーより小さいことが好ましい。
【0042】
上記着色インク6を硬化してカラーフィルタとした後、必要に応じて保護層8を形成する(図1(e))。保護層8としては、光硬化タイプ、熱硬化タイプ、或いは光熱併用タイプの樹脂素材、蒸着、スパッタ等によって形成された無機膜等を用いることができ、カラーフィルタとした場合の透明性を有し、その後のプロセス、例えば液晶素子を構成する場合には、ITO膜形成プロセス、配向膜形成プロセス等に耐え得るものであれば使用可能である。
【0043】
上記実施形態においては、ブラックマトリクスを感光性樹脂組成物により形成したが、非感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。例えば、ポリイミド、アクリル酸モノマー、ウレタンアクリレート等を適当な溶媒に分散して基板に塗布する。この場合、基板上に黒色の非感光性樹脂組成物の1μm厚程度の塗膜を形成した後、フォトレジストをマスクとして該非感光性樹脂組成物層をエッチングしてパターニングすることができる。また、フォトレジストを用いてリフトオフによってパターニングしても良い。
【0044】
次に、図4を用いて、本発明の製造方法で製造したカラーフィルタを組み込んだカラー液晶素子の一例について説明する。
【0045】
本実施形態の液晶素子は、一般的にカラーフィルタ基板と対向基板を合わせ込み、液晶化合物を封入することにより形成される。カラーフィルタ基板の内側には共通電極9が形成され、対向基板側は透明基板11の内側にTFT(図示しない)と透明画素電極12が各カラーフィルタに対応するようにマトリクス状に形成されている。さらに、液晶化合物14と接する両基板の界面には配向膜10、13がそれぞれ形成されており、この配向膜をラビング処理することにより液晶分子を一定方向に配列させることができる。
【0046】
上記基板を封止材(図示しない)を用いて貼り合わせ、その間隙(2〜5μm程度)に液晶化合物を注入し、液晶素子が構成される。それぞれの基板1、11の外側にはさらに偏光板15、16が接着される。また、バックライトとしては螢光灯(図示しない)と散乱光(図示しない)の組み合わせが一般的に用いられており、液晶化合物をバックライト光の透過率を変化させる光シャッターとして機能させることにより表示を行なう。
【0047】
実施例1
アルカリ洗浄後、UVオゾン処理したガラス基板上に、黒色材料を含有したレジスト剤(新日鉄化学社製:ブラックマトリクス用ネガ型レジストインキBK739P)を、スピンコーターで膜厚1.2μmになるように塗布し、ホットプレートで90℃で60秒間加熱し、仮硬化した。上記レジストを紫外線露光装置で所定のパターンマスクを用い、プロキシミティー露光をして無機アルカリ水溶液の現像液でスピン現像機を用いて現像し、ブラックマトリクスパターンを形成した。続いて純水でリンス処理し、現像液を完全に除去した。
【0048】
次に、減圧室中で、200℃で10分間加熱し、ポストベークによる本硬化処理を行った。この時、減圧室の減圧度は700Paであった。
【0049】
上記基板について、ブラックマトリクス表面の水に対する接触角を測定したところ、70°と撥水状態となっていた。また、ガラス基板表面の水に対する接触角は18°であり、ブラックマトリクス表面とは表面状態が大きく異なっていた。
【0050】
上記ブラックマトリクスの開口部に、インクジェット装置を用いて赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの染料系インクを付与した。各インクの表面エネルギーは32dyne/cmであった。この着色インクはブラックマトリクスの開口部において十分濡れて広がり、にじみ・はみ出し・隣接する異なる色のインクとの混色、及び画素内の白ぬけは見つからなかった。その後、加熱して着色インクを硬化してガラスへの固着を促進させた後、アクリル系透明樹脂(日本合成ゴム社製:SS−6500)からなる保護膜を塗布し、ITOからなる透明導電膜を成膜しても、密着性に優れ、何ら不具合は生じなかった。
【0051】
以上のようにして作成したカラーフィルタ基板を用いて、カラー液晶素子を構成したところ、欠陥の無いかつ色特性に優れた液晶表示素子が得られた。
【0052】
実施例2
実施例1と同様にしてブラックレジストを塗布したガラス基板を、減圧乾燥装置にて仮乾燥を行った。この時、乾燥は、常温にて減圧度13Paで5秒間保持しその後大気圧に戻すことにより行った。その後同様に、露光・現像・リンスを行いブラックレジストがパターニングされたガラス基板を得た。減圧乾燥により、通常のホットプレートによる乾燥と比較して、面内の焼成むらがほとんど見られなかった。
【0053】
さらに、ポストベークは減圧室中で、180℃で6分間減圧加熱しレジストの本硬化を行った。この時減圧度は133Paであった。
【0054】
上記基板について、ブラックマトリクス表面の水に対する接触角を測定したところ、75°と非常に撥水状態となっていた。また、ガラス基板表面の水に対する接触角は12°であり、ブラックマトリクス表面とは表面状態が大きく異なっていた。この減圧ホットプレートによるポストベークにより、密着力試験(プレッシャークッカー試験)も、温風循環型の雰囲気炉と比較して約3倍(数十時間)の結果を得た。
【0055】
上記ブラックマトリクスの開口部に、インクジェット装置を用いて赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの染料系インクを付与した。各インクの表面エネルギーは32dyne/cmであった。この着色インクはブラックマトリクスの開口部において十分濡れ広がり、にじみ・はみ出し、隣接する異なる色のインクとの混色、及び画素内の白ぬけは見つからなかった。その後、加熱して着色インクを硬化・ガラスへの固着を促進させた後、ITOからなる透明導電膜を成膜しても、密着性に優れ、何ら不具合は生じなかった。
【0056】
以上のようにして作成したカラーフィルタ基板を用いて、カラー液晶素子を構成したところ、欠陥の無いかつ色特性に優れた液晶表示素子が得られた。
【0057】
実施例3
実施例2と同様にして作成したブラックレジストがパターニングされたガラス基板を、減圧室中で、230℃で3分間減圧加熱しレジストの本硬化を行った。この時減圧度は13Paであった。
【0058】
上記基板について、ブラックマトリクス表面の水に対する接触角を測定したところ、68°と撥水状態となっていた。また、ガラス基板表面の水に対する接触角は16°であり、ブラックマトリクス表面とは表面状態が大きく異なっていた。
【0059】
上記ブラックマトリクスの開口部に、インクジェット装置を用いて赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの染料系インクを付与した。各インクの表面エネルギーは32dyne/cmであった。この着色インクはブラックマトリクスの開口部において十分濡れ広がり、にじみ・はみ出し・隣接する異なる色のインクとの混色、及び画素内の白ぬけは見つからなかった。その後、加熱して着色インクを硬化・ガラスへの固着を促進させた後、ITOからなる透明導電膜を成膜しても、密着性に優れ、何ら不具合は生じなかった。
【0060】
以上のようにして作成したカラーフィルタ基板を用いて、カラー液晶素子を構成したところ、欠陥の無いかつ色特性に優れた液晶表示素子が得られた。
【0061】
比較例1
実施例1と同様にして作成したブラックレジストがパターニングされたガラス基板を、温風循環型の雰囲気炉中で、230℃で90分間加熱しレジストの本硬化を行った。その結果、ブラックマトリクス表面の水に対する接触角が70°であるのに対して、ガラス基板表面の接触角は68°でほとんどブラックマトリクス表面と差異が認められなかった。
【0062】
上記ブラックマトリクスの開口部に実施例1と同様にして着色インクを付与したところ、上記開口部内のガラス基板表面でインクがはじいてしまい開口部内に均一に濡れ広がらずに、開口部周辺にインクの無い白ぬけ欠陥が生じた。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、ブラックマトリクスの開口部に着色インクを付与してカラーフィルタを形成する際に、該ブラックマトリクスのポストベークの際に発生する揮発成分が基板に付着するのを防止することができるため、上記開口部内の透明基板の表面エネルギーが高く保持され、よって、付与された着色インクが開口部内に良好に広がり、基板からの剥離や白抜けがなく信頼性の高いカラーフィルタが提供され、さらに該カラーフィルタを用いて、色特性に優れた液晶素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の工程を示す図である。
【図2】本発明のカラーフィルターが製造される過程の一例を工程順に示した断面図である。
【図3】本発明の製造方法で用いる減圧ホットプレートの一例を示す側面図である。
【図4】本発明の液晶素子の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 感光性樹脂組成物層
3 マスク
4 ブラックマトリクス
5 インクジェット装置
6 着色インク
8 保護膜
9 共通電極
10 配向膜
11 透明基板
12 画素電極
13 配向膜
14 液晶化合物層
15,16 偏光板
32 減圧室
33 真空ポンプ
34 挿入口
35 ホットプレート
Claims (6)
- 基板上に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層を仮硬化する工程と、前記仮硬化後の前記樹脂層を露光する工程と、前記露光後の前記樹脂層を現像して開口を有するブラックマトリクスを形成する工程と、前記ブラックマトリクスを減圧加熱する工程と、前記開口にインクジェット方法によりインクを付与する工程とを有し、前記減圧加熱の減圧度が5−2660Paであり、前記減圧加熱の温度が150−240℃であることを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
- 前記樹脂層を、減圧乾燥により仮硬化する請求項1記載のカラーフィルターの製造方法。
- 前記減圧加熱の減圧度が、10−1000Paである請求項1または2に記載のカラーフィルターの製造方法。
- 前記減圧加熱の温度が、180−230℃である請求項1乃至3のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
- 前記減圧加熱の時間が、10−600秒である請求項1乃至4のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれかの製造方法で製造され、電極を有するカラーフィルターと、前記カラーフィルターに対向して設けられ、電極を有する対向基板と、前記カラーフィルター及び前記対向基板の間に封入された液晶化合物とを有する液晶素子。
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