JP3897130B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コンピュータ用プリンタ、ワードプロッセサ用プリンタ、ファクシミリ、デジタル複写機、CAD出力用プロッタ、ポップ(POP)ライター、大型看板、ポスター用プリンタ等から、布地、絨毯、壁紙等のプリントにまで幅広く用いられてきているインクジェット記録用インクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録技術は、非接触記録であり、しかも小型記録機器から超大型機器まで広い適用範囲を持ち、さらにカラー化が比較的容易であるためOA用から産業用にまで広い範囲で用いられている。インクジェット記録はその形態から連続ジェット型とオンデマンドジェット型に大別される。前者は主に産業用プリンタに、後者は主に小型のOA用、携帯用プリンタに用いられている。特にサ−マルバブルジェット方式、あるいはピエゾ方式によるオンデマンド型の小型プリンタは近年その需要が急速に伸びている。産業用プリンタに用いられるインクは即乾性に対する要求から主に溶剤型インクが、OA用、携帯用プリンタでは使用環境に対する配慮から水系インクが主に用いられている。
【0003】
(水溶性染料インク)
水系インクの多くは水溶性染料型インクである。水溶性染料型インクは主として酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等に分類される水溶性染料の水溶液に、保湿剤としてグリコール類、アルカノールアミン類、表面張力等の調製のための界面活性剤、アルコール類等を少量添加したものである。バインダー成分として水溶性の樹脂成分を添加する特許提案の散見されるが、実用的にはノズル目詰まり等に対する懸念からあまり用いられてはいない模様である。これら水溶性染料型インクはノズル目詰まりに対する高い信頼性から、最も一般的に用いられている。しかしながらかかる水溶性染料型インクは、染料の水溶液であるが故に記録紙上でにじみやすく、また逆に見掛けの乾燥速度を早める必要から記録紙に素早く浸透するように調製されるが故にインクのニジミによる記録品位の低下を余儀なくされている。また水溶性の染料であるがゆえに耐水性に劣ることは自明である。さらに記録紙に単に浸透し、乾燥固着しているだけの水溶性染料は「染着」しているとはいい難く耐光堅牢度は非常に低い。
【0004】
(樹脂微粒子添加−水溶性染料型インク)
以上述べたような水溶性染料インクの問題点を解決する方策として、エマルジョン、ラテックス等の樹脂微粒子を添加することが古くから検討されている。特開昭55−18418号公報には、「ゴム、樹脂等の成分を乳化剤により微細粒子(粒径約0.01〜数μm)の形で水中に分散せしめた一種のコロイド溶液」であるラテックスを添加したインクジェット記録用インクに関する提案がある。好ましく用いられるラテックスとしてはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックス、ブチルゴムラテックス、ポリブタジエンラテックス、ポリイソプレンラテックス、多硫化ゴムラテックス、等の合成ゴム系ラテックス、あるいは、アクリルエステル系ラテックス、スチレン−ブタジエンレジンラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス、等の合成樹脂系ラテックスが例示されている。
【0005】
該提案において、添加できるラテックス粒子の粒子径は約0.01〜数μmの範囲であるとされている。しかしながら、0.2μm未満の粒子径では記録紙上でのインクのニジミ防止効果が不十分であり、高い記録品位を得ることはできない。また粒子径が1.0μm以上になるとノズルの目詰まりが頻繁になり信頼性の面から使用することは困難となる。したがって現実的に使用できる範囲は概0.2〜1.0μmの範囲であると考えられる。かかる樹脂微粒子をインク中に添加した場合、粒子の比重と媒体の比重差による沈降あるいは浮上に関する注意が必要となる。水系インクの場合、媒体の比重はは1.0から大きく離れることは難しい。およそ0.2μm以上の大きさの微粒子においてはブラウン運動による粒子の拡散力に比較して重力の効果が大きいため、かかる領域では粒子比重と媒体比重の差を0.1以下、好ましくは0.07以下程度に抑える必要がある。
【0006】
該特許提案に例示された合成ゴム系ラテックスの比重は概0.9〜1.0の範囲にあり、かかる条件をある程度満たすものの、合成ゴムの多くは分子内に不飽和二重結合を有し、耐光性、耐候性の面で問題がある。また加硫を行い不飽和結合を減じた場合には粒子の記録紙上への定着が阻害され、記録品位に問題がでる。さらに過度に加硫を行なうと比重が1.1以上となるため沈降の問題が生じる。さらにかかる合成ゴム系のラテックスはガラス転移温度が低いために室温で造膜しやすく、インクジェットノズル先端部にて乾燥された場合ノズルの目詰まりを生じやすく、しかも乾燥物が柔軟でやや粘着性を持つためその除去が非常に困難である。該特許に例示された合成樹脂ラテックスに関しては比重が1.1以上、特にハロゲン元素を含む合成樹脂の場合には比重1.3〜1.5近くに達するため、ニジミ防止効果が発現する粒径範囲においてはすべて沈降が生じてしまう。さらにこれらのラテックス全般にいえることであるが、ラテックスを製造する際に用いられる乳化剤の多くはインクの泡立ちを促進しやすく、表面張力を必要以上に低下せしめるために問題が多い。
【0007】
特開昭54−146109号公報には溶剤にて膨潤され、かつ油性染料にて着色されたビニル重合体微粒子を添加した水溶性染料型インクに関する提案がなされている。好適に用いられる重合体としては主に(メタ)アクリル酸エステル系共重合体微粒子が例示され、さらにガラス転移温度が30℃以下であることが好適な条件であると記されている。該提案においては粒子径に関する記述は一切ない。かかる低ガラス転移温度でさらに溶剤にて膨潤した微粒子が室温乾燥した場合に造膜性を有することは自明であり、かかるインクを使用した場合にはノズル目詰まりが頻繁に生じるであろうことが容易に類推される。
【0008】
(顔料分散型インク)
水溶性染料型インクの欠点を改良するために、記録材としてカーボンブラック、あるいは有機顔料を用いる提案がなされている。このような顔料分散型インクにおいてはインクの耐水性は大幅に改良される。しかしながらこれら顔料は比重が1.5〜2.0と高く、分散粒子の沈降に対する注意が必要である。かかる高比重の顔料を安定的に分散させるためには平均粒子径を概0.1μm以下にまで微分散することが必要であり、分散コストが高く非常に高価なインクとなる。さらに0.1μm以下の粒子径ではニジミ防止効果は不十分であり高品位な記録文字・画像を得ることはできない。さらに分散に際して用いられる分散剤により表面張力、起泡性等のインク物性が制限される等の問題がある。
【0009】
(着色樹脂粒子型インク)
油溶性染料ないし疎水性染料により水分散性樹脂を着色する提案がインクジェット記録用インクとしてなされている。これらは「着色されたポリマー微粒子を記録剤として用いたインク」に関する提案である。例えば特開昭54−58504号公報においては、疎水性染料溶液とビニル重合体微粒子の混合物を水中油型分散させたインクが提案されている。ビニル重合体微粒子は疎水性染料溶液と混合されることにより染料溶液の溶媒にて膨潤し、さらに染料により着色されることが本文にて開示されている。疎水性染料を記録剤とするため、得られる画像は耐水性を有するものとなるとある。該提案では、連続相として水を用い、分散相として溶剤にて膨潤した着色ビニル重合体粒子を用いることにより、インク粘度の支配を水に持たせ、溶剤としてある程度高粘度(低揮発性)のものを用いることを許容させている。
【0010】
特開昭55−139471号公報、特開平3−250069号公報には染料によって染色された乳化重合または分散重合粒子を用いたインクが提案されている。提案の主旨は特開昭54−58504号公報と同様、着色した粒子を分散質、水(透明)を媒体とすることによるニジミ防止であるが、この提案の場合には溶剤を含まないため、粒子が造膜することにより記録紙に定着されることが必要となる。造膜の必要、分散安定性の確保の観点より、望ましい粒子径はサブミクロン領域であることが示唆されている。ずれの提案においても水分散性樹脂はビニル重合体である。これらビニル重合体においては樹脂に対する染料の溶解度が低いために高濃度の着色を行うことは難しい。特開昭54−58504号公報では重合体微粒子を溶剤にて膨潤させることにより染着性を稼ぐことが容認されているが、この場合にはノズル先端部での乾燥造膜によりノズル目詰まりの問題が生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べてきたように、従来技術では水溶性染料型インクの記録品位を向上させることは難しく、さらに水溶性染料型インクの問題点を解決するべく開発されている顔料分散型インクにおいても満足な結果は得られていない。本発明者らはインクジェット記録用の水系インクの記録品位向上を目的として鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂微粒子をインクに配合した場合にのみ、沈降に対する安定性、ノズル目詰まりに対する信頼性を両立させ、さらに極めて高い記録品位を実現できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、記録剤と樹脂微粒子を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該記録剤が水溶性染料、カーボンブラック及び有機顔料のいずれかであり、該樹脂微粒子が、重量換算平均粒子径0.05〜2.0μmの範囲にあり、非球形度が1.2以上である非球形粒子であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記非球形樹脂微粒子が低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して室温において非膨潤性であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記非球形樹脂微粒子が、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなるアイオノマー樹脂からなることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記非球形樹脂微粒子がポリエステル樹脂を主成分とするものであることを特徴とするインクジェット記録用インクである。本発明は主に水系のインクジェット記録用インクに関してなされたものであるが、油性インクを用いるインクジェット記録に関しても適用可能である。また広く、表面に凹凸、あるいは繊維集合体層を有する記録媒体、具体的には一般的な紙、一部の合成紙、あるいは布、布織布等に液体の記録材を用いて行なう記録手段全般に適用することができる。
【0013】
本発明では記録剤として、水溶性染料、カーボンブラック、有機顔料を用いることができる。本発明に用いられる水溶性染料は公知の染料から適宜選択して用いることができる。水溶性染料としては酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等のアニオン性染料、塩基性染料等のカチオン染料が好ましく用いられる。より具体的には、C.I.Direct Yellow 12、24、26、33、39、44、98、C.I.Direct Red 1、4、17、28、81、83、C.I.Direct Blue 6、22、25、71、86、90、98、108、202、C.I.Direct Black 17、19、32、51、108、146、C.I.Acid Yellow 11、19、25、29、38、42、61、 71、127、135、161、C.I.Acid Red 6、37、51、52、80、85、87、92、94、118、155、158、180、249、256、317、318、C.I.Acid Violet 90C.I.Acid Blue 9、22、23、24、40、43、78、82、 93、102、104、113、117、120、127、167、229、 234C.I.Acid Black 1、2、7、24、31、52、63、112、 118、119、121、122、155、156、C.I.Food Black 2C.I.Basic Yellow 11、13、14、21、28、36、40、73、C.I.Basic Red 13、14、27、36、39、C.I.Basic Violet 7、11、15、27、40、C.I.Basic Blue 3、45、67、75、77、等を好適に用いることができる。これらは単独でも複数混合して用いても良い。かかる市販染料には染料製造の際に無機塩類が混入していることが多いが、これら無機塩類、無機イオン類はインクの安定性に悪影響を及ぼすことが知られているため極力透析、再結晶化等の手段により除去することが望ましい。かかる染料はインク中に0.3〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%、さらに好ましくは2.0〜8.0wt%程度配合される。
【0014】
本発明において用いられるカーボンブラックとしては、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等を用いることができる。また水分散の手法としてはサンドミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェイカー等を用いることができる。水分散化する際に必要な分散剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系の公知の分散剤を必要に応じて用いることができる。しかしながら本発明においてはかかる分散剤の使用量は最低限度に抑えるべきであり、好ましくは表面処理、グラフト処理を行なったカーボンブラックを用い分散剤を用いずに水分散化したものが望ましい。カーボンブラックはインク中に0.3〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%、さらに好ましくは2.0〜8.0wt%程度配合される。カーボンブラックの分散粒子径は0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがなお好ましく、さらには0.05μm以下であることが好ましい。分散粒子径が大きいとカーボンブラック粒子の沈降が懸念される。
【0015】
本発明において用いられる有機顔料は公知の有機顔料の中から必要に応じて選択して用いることができる。より好ましくCIELCH系色度座標(CIELAB1976系色度座標の円筒座標系表示)における色相角Hが85〜120度好ましくは90〜110度の範囲にあるものをイエロー色素、230〜270度、好ましくは250〜265度にあるものをシアン色素、330〜360度にあるものをマゼンタ色素として用いることが好ましい。有機顔料としてはカラーインデックスにおいてC.I.ピグメントカラーに分類されるもの、C.I.ヴァットカラーに分類されるものを主に用いることができる。またこれらの他、水に不溶な染料の一部を顔料として用いることもできる。このような染料としては疎水性でありさらに親水性溶剤である低級アルコール類、グリコール類に対して溶解しない一部の油用性染料を用いることができる。
【0016】
より具体的にはC.I.Pigment Yellow 3、13、14、15、16、17、185、C.I.Pigment Red 81、95、122、184C.I.Pigment Violet 23C.I.Pigment Blue 15、16等を好適に用いることができる。また水分散の手法としてはサンドミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェイカー等を用いることができる。水分散化する際に必要な分散剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系の公知の分散剤を必要に応じて用いることができる。しかしながら本発明においてはかかる分散剤の使用量は最低限度に抑えるべきであり、好ましくは表面処理、グラフト処理を行なった有機顔料を用い分散剤を用いずに水分散化したものが望ましい。
【0017】
有機顔料はインク中に0.3〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%、さらに好ましくは2.0〜8.0wt%程度配合される。有機顔料の分散粒子径は0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがなお好ましく、さらには0.05μm以下であることが好ましい。分散粒子径が大きいと有機顔料粒子の沈降が懸念される。本発明では色相等の調整のために少量の水溶性染料を添加してもよい。水溶性染料は公知の染料から適宜選択して用いることができる。水溶性染料としては酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等のアニオン性染料、塩基性染料等のカチオン染料が好ましく用いられる。水溶性染料の添加は耐水性の低下を招くために最低限に抑える必要がある。
【0018】
通常、インクジェット記録用インクにおいてはインクの表面張力、粘度、保湿性、凍結安定性の改善、記録紙への浸透速度の調製等を目的として水溶性有機化合物が添加され、本発明でも例外ではない。水溶性有機化合物としては、メタノール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノ−ル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ニトリルトリエタノール、エチレンジアミンエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、タ−シャルブチルセルソルブ、アルキレングリコールモノエーテル等の化合物等を単独あるいは適宜複数成分を組合わせて用いることができる。とくにアルキレングリコール類はインク中に2〜10wt%、好ましくは3〜7wt%程度添加されることが好ましい。
【0019】
本発明は、かかるインクジェット記録用インク、主に水系のインクジェット記録用インクにおいて、記録品位の向上を目的として樹脂微粒子を添加したインクジェット記録用インクの改良を目的としてなされたものである。本発明を特徴づける最も重要な必須要件は、インクに含有される樹脂微粒子の重量換算平均粒子径が0.05〜2.0μmの範囲にあり、その形状が非球形であることである。非球形形状は平均非球形度にて1.2以上が好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.0以上がなおさらに好ましく2.5以上がその上好ましい。ここに非球形度は、(1) 粒子を平面に投影した投影図形における面積換算円の円周長に対する投影図形の外周長の比(2) 平面投影図形において短径に対する長径の比(3) 体積換算粒子径から計算的に求められる比表面積に対する実測された比表面積の比等で定義され、好ましくは、これらの方法で求められた数値のうちの最も小さい値をもって非球形度とする。
【0020】
非球形度は好ましくは画像処理装置等を用いて測定される。実際の測定においては測定上の誤差がかなり生じることが予想されるため、予め真球度の高い粒子、たとえば顕微鏡校正用ラテックス粒子などを用いて校正した上で測定を行なう必要がある。重量換算粒子径は体積換算粒子径と同義であり、非球形形状をしている粒子と同一の重量、ないしは体積を有する中実球の粒子径を示す。重量換算粒子径は好ましくはコールターカウンター法により求めることができる。遠心沈降式粒度分布計においては粒子形状が沈降速度に影響を与えるため正確な測定が困難である。また光散乱式の粒度分布計においても、粒子形状が散乱光強度分布に影響するため正確な評価が困難となる。なお、代替手段として画像処理装置を用いて得られる球換算径を使用することができる。
【0021】
本発明における重量換算粒子径は0.05〜2.0μmの範囲が必須であり、0.05〜1.0μmの範囲がより好ましく、0.08〜0.5μmの範囲がなお好ましく0.1〜0.3μmの範囲がなおさらに好ましい。本発明の非球形粒子を構成する樹脂の比重は特に限定されないが好ましくは0.9〜1.3の範囲、なお好ましくは0.95〜1.10の範囲、さらに好ましくは0.93〜1.00の範囲でありさらに好ましくは0.94〜0.98の範囲である。本発明においては粒子径分布の下限は、インクの粘度上昇等の問題が生じない限りにおいて制限はなく概0.01μm程度までの範囲が許容される。しかしなが粒子径分布の上限は2.0μm程度、好ましく1.5μm、さらに好ましくは1.2μm以下に制御される必要がある。すなわち本発明における好ましい粒度分布は必ずしも正規分布ではなく、小径粒子側にやや尾を引いた形状が好ましい。単分散性の高い粒子は必ずしも好ましいとは言えない。
【0022】
かかる非球形樹脂微粒子は、インク添加剤である水溶性有機化合物である低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して非膨潤性であることが好ましい。ここに非膨潤性とは、樹脂のバルクとしての物性として該有機化合物に対して溶解しないことはもちろん、該有機化合物を10wt%、好ましくは5wt%以上吸収しない樹脂であることを意味するものとし、また別の観点より、かかる樹脂粒子の水分散体において10℃以上、好ましくは5℃以上の造膜温度の低下を生じないことを意味するものとする。さらに別の観点よりは、樹脂の軟化温度、あるいはガラス転移温度以下の領域において、かかる水溶性有機化合物が存在することにより粒子形状の実効的な変化が生じないことを意味するものとする。インクに補助的に添加されるこれらの水溶性有機化合物に膨潤する場合にはノズル先端部にて樹脂粒子の乾燥造膜が生じ、ノズル目詰まりの原因となることはもちろん、本発明の必須要件である非球状粒子の形態が保てなくなり、本発明の効果が消滅してしまう。
【0023】
本発明に用いられる非球形粒子は水系微分散体として用いられるが、かかる水分散体においては最低造膜温度が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、なおさらには70〜100℃の範囲であることが好ましく、そのうえさらに80〜100℃の範囲であることが好ましい。かかる最低造膜温度を実現するためにはASTM D1525−70にて定義されるビカット軟化点が40〜100℃であることが好ましく、さらに45〜80℃であることが好ましく、なおさらに50〜70℃であることが好ましい。またガラス転移温度が40℃以上、さらには55℃以上であることが好ましい。
【0024】
さて、一般に、樹脂の微小粒子を得る方法としては、(1) 懸濁重合法(2) 乳化重合法(3) 転相(自己)乳化法などが知られているが、これらの方法により得られる微小粒子はすべて実質的に球形をしている。従来技術において、インクジェット記録用インクに配合されてきた樹脂微粒子、エマルジョン、ラテックス等はすべてこれらの方法により得られた球形微粒子を用いてきたがゆえに十分な記録品位向上効果を得ることができなかった。本発明において用いられる非球形粒子は、好ましくは、(1) 機械的な粉砕手段(2) 分散重合法(3) 乳化重合法、転相(自己)乳化法等により得られた樹脂微粒子の二次凝集等により得ることができる。
【0025】
本発明において好ましく用いられる非球形粒子の素材はエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とし、アルカリ金属イオン、あるいはアルカリ土類金属イオン、あるいはアンモニウム系イオン等により部分的にイオン架橋された所謂アイオノマー樹脂である。かかるアイオノマー樹脂の非球形粒子の水分散体は加熱と機械的撹拌を併用する強制機械乳化等、乳化重合以外の方法により得ることが可能であり、商品名ケミパールS−100、同S−200、同S−300、同SA−100タイプ[三井石油化学社製]等を例示することができる。本発明において好ましく用いられる非球形粒子の素材はポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂はジカルボン酸を主成分とするモノ〜多価カルボン酸類とジオール類を主成分とするモノ〜多価アルコール類との縮重合により得られる。ポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸類としては、ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸、フェニレンジアクリル酸等の芳香族不飽和多価カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、脂肪族不飽和多価カルボン酸、および、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を、また多価カルボン酸としては他にトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等を例示できる。
【0026】
モノカルボン酸としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n-ドデシルアミノカルボニル安息香酸、タ−シャルブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、およびこれらの低級アルキルエステル、等を例示できる。ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコ−ル類としては脂肪族多価アルコ−ル類、脂環族多価アルコ−ル類、芳香族多価アルコ−ル類等を例示できる。脂肪族多価アルコ−ル類としては、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、2,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ジメチロ−ルヘプタン、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、グリセリン、ペンタエルスリト−ル等のトリオ−ルおよびテトラオ−ル類等を例示できる。
【0027】
脂環族多価アルコ−ル類としては1,4−シクロヘキサンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、スピログリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、水素化ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオ−ル、トリシクロデカンジメタノ−ル等を例示できる。芳香族多価アルコ−ル類としてはパラキシレングリコ−ル、メタキシレングリコ−ル、オルトキシレングリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ル、1,4−フェニレングリコ−ルのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等を例示できる。これらの他モノアルコールとして低級アルキルアルコール、高級アルキルアルコール、トリシクロデカンモノメタノール等を例示できる。さらにポリエステルポリオ−ルとして、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られる、ラクトン系ポリエステルポリオ−ル類等を例示することができる。
【0028】
ポリエステル樹脂は、これらの単量体類を用い、真空重合法、あるいは減圧重合法等の常法により得ることができる。前者は繊維、フィルム、ポリボトル等に用いられポリエチレンテレフタレ−ト等を重合する際に用いられる方法であり比較的高分子量のポリエステルを得ることができる。後者はアルキッド樹脂等の不飽和ポリエステル樹脂を重合する際に用いられる方法であり、比較的低分子量のポリエステルが得られる。またこれらの常法の他、酸クロライド法などによりポリエステル樹脂を得ることができる。本発明におけるポリエステル樹脂の数平均分子量は1000〜20000であることが好ましく、さらに好ましくは1500〜10000、またさらに好ましくは2000〜5000である。分子量が低いと得られる塗膜の物性が不十分となる場合がある。また分子量が高すぎると乾燥造膜が阻害される場合がある。本発明におけるポリエステル樹脂のガラス転移温度は、40℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは60〜100℃の範囲である。
【0029】
本発明におけるポリエステル樹脂は、水分散化の観点よりイオン性基を20〜2000eq. /ton の範囲にて含有することが必要となる。イオン性基としては、スルホン酸アルカリ金属塩基あるいはスルホン酸アンモニウム塩基、カルボン酸アルカリ金属塩基あるいはカルボン酸アンモニウム塩基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基もしくはそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩等のアニオン性基、または第1級ないし第3級アミン基等のカチオン性基などを用いることができる。イオン性基はイオン性基含有単量体を併用することにより導入することができ、カチオン性基を導入するためには、2−アミノプロパン1,3ジオ−ル、ニトリルトリエタノール等を好ましく用いることができ、スルホン酸アルカリ金属塩基あるいはスルホン酸アンモニウム塩基、をポリエステルに導入するためには、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸、メタスルホ安息香酸等、スルホン酸基を有するモノないし多価カルボン酸類のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などをポリエステルに共重合すればよい。塩としてはアンモニウム系イオン、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等の塩があげられ、特に好ましいものはK塩またはNa塩である。本発明では5−ナトリウムスルホイソフタル酸、あるいはメタナトリウムスルホ安息香酸を用いることが好ましい。
【0030】
カルボン酸塩の基は、ポリエステル末端のカルボキシル基を後述する水分散化時に塩基を添加中和することにより得ることができる。ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、真空重合法においてはポリエステルの重合末期に無水トリメリット酸、無水フタル酸等の多価カルボン酸を系内に導入する方法を例示することができる。また減圧重合法においてはポリエステル末端に残るカルボキシル基をそのまま利用できる。中和に用いる塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ物質の他、アンモニア、アンモニウム系化合物としては、モノアルカノールアミン、ジアルキルモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、モノアルキルジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、を例示することができ、好ましくはトリアルカノールアミンであり、さらに好ましくは2,2',2''- ニトリルトリエタノール、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリヘキサノールアミンを用いることができる。イオン性基の含有量は20〜2000m当量/1000gが必須であり、50〜1000m当量/1000gが好ましく、またさらに、100〜500m当量/1000gの範囲が好ましい。イオン性基の含有量が所定の量より少ない場合には十分なる水分散性が得られない。またイオン性基の含有良が多すぎる場合にはポリエステル樹脂が水溶化し目的とする水分散体が得られない。本発明においては、特にカルボン酸アンモニウム塩系のイオン性基の使用が好ましく、さらにカルボン酸トリアルカノールアミン塩の使用がさらに好ましい。
【0031】
かかるイオン性基含有ポリエステル樹脂は転相自己乳化性を有するため、ポリエステル樹脂と水溶性有機化合物とをあらかじめ混合後に水を加える方法、イオン性基含有ポリエステル樹脂と水溶性有機化合物と水とを一括して混合加熱する方法等により得ることができる。水溶性有機化合物としてはエタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、タ−シャルブチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。水溶性有機化合物はイオン性基含有ポリエステル樹脂を水分散化した後に共沸等により除去することができるものが好ましい。以上のようにして得られるポリエステル樹脂の微粒子は粒子径0.01〜数μm程度の球形粒子である。平均粒子径は、ポリエステル樹脂と水溶性有機化合物の量比、イオン性基含有量等により制御可能である。本発明では中心粒子径が概ね0.01〜0.2μm弱となる様に調製することが好ましい。
【0032】
本発明の非球形粒子は例えばこのようにして得られた熱可塑性の球状粒子を、軟化温度を若干越えた程度の温度領域にて二次凝集させ、部分的に融着させることにより得ることができる。二次凝集は緩凝集領域で行なうことが好ましい。具体的には樹脂微粒子の水分散体に電解質を加え、樹脂のガラス転移温度ないしは軟化温度近傍、やや高めの温度に水分散体の温度を上昇せしめることにより二次凝集を生じせしめることができる。電解質の添加量は添加温度域での臨界凝集濃度を越えない範囲であることが好ましい。かかる二次凝集法はポリエステル樹脂の水分散体以外の樹脂に対しても適用可能である。二次凝集により得られる粒子の形状は処理の時間、温度、電解質の添加量等により制御可能である。
【0033】
本発明のインクにはフッ素系、ないしはシリコ−ン系の消泡剤などを添加することができる。さらに各種殺菌剤や防カビ剤、また必要に応じて、透明性を損なわない程度に無機、有機系の顔料類を添加することもできる。また5〜50ppm 程度の微量のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの添加は水分散体の粘度を低下させるために好ましい場合がある。本発明のインクのpHは4以上が好ましく、6以上がさらに好ましく、7.5以上がまたさらに好ましく、7.5〜9.5の範囲がなおさらに好ましい。本発明のインクの粘度は1.5〜30センチポイズの範囲が好ましく、1.8〜15センチポイズがさらに好ましく、2.0〜10センチポイズの範囲がなおさらに好ましく、3.0〜6.0センチポイズの範囲がその上好ましい。本発明のインクジェット記録用インクは、駆動力として熱エネルギーを用いないインク吐出手段と組合わせることが好ましい。また、本発明のインクジェット記録用インクは、記録紙を40℃に加熱することによりインク定着を行なう手段と組合わせることが好ましい。
【0034】
従来より、水溶性染料の水溶液、あるいは顔料、カーボンブラック等水系微分散体を主成分としたインクジェット記録用インクの記録品位向上のために樹脂微粒子の添加が試みられてきた。従来の提案に見られる樹脂粒子に関してその粒子形状を規定した例は見当たらない。特に断わりがないかぎり、かかる提案に見られる樹脂粒子はその製法(乳化重合、懸濁重合)から察して実質的に球形であると解釈できる。かかる樹脂粒子を添加して記録品位を向上しようという試みは、基本的には記録紙に含まれる繊維の間隙を、間隙より大きい粒子にて塞ぐことによりニジミを抑制するという考え方に基づく物である。しかしながら従来用いられてきた実質的に球形の粒子においては粒子と粒子との間隙が大きく、記録紙の繊維間隙を完全に塞ぐことができず、インクのニジミを防止する効果が不十分である。本発明によりその形状を規定された非球形粒子は繊維間隙において複雑に絡み合いながら充填されるため粒子間隙が同程度の粒子径の球状粒子を用いた場合より小さく、記録品位向上効果が顕著である。さらにかかる非球形粒子の素材に関してもインクジェット記録用インクに用いられる親水性溶剤に対し低い膨潤性が要求される。これはかかる樹脂が軟化した場合にノズル先端部にて付着しやすくノズル目詰まりの原因となるばかりでなく、軟化膨潤することにより樹脂の形状が球形化することを防止する意味も含まれる。
【0035】
さらに本発明の非球状粒子は実質球形の粒子に比較してより小さい重量換算球粒子径においても顕著なる記録品位向上効果を有する。これは樹脂粒子の形状が非球形であるために小さな質量と大きな粘性抵抗を有するゆえであると解釈できる。さらに本発明において特筆すべきことはかかる樹脂微粒子をインクに添加することにより記録濃度が向上することである。この事実は、記録紙の繊維に沿って媒体(水)とともに浸透拡散していく記録剤が、添加された樹脂微粒子によりせき止られることによりニジミが抑制されるとともに、記録紙の表面近傍に比較的多く残るためであると理解することができる。本発明の限定条件を満足する樹脂微粒子において特にこの効果が際立って観察されることから、逆にニジミ防止効果の高さを評価できる。
【0036】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが本発明はここに示す実施例に限定されるものではない。
〔ポリエステル非球形粒子の作製〕
温度計、撹拌機を備えたオ−トクレ−ブ中に、 シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル 198重量部、 プロピレングリコ−ル 165重量部、 トリシクロデカンジメタノール 91重量部、および テトラブトキシチタネ−ト 0.1重量部を仕込み150〜220℃で180分間加熱してエステル交換反応を行った。次いで、240℃に昇温した後、系の圧力を徐々に減じて30分後に10mmHgとし、60分間反応を続けた。その後オ−トクレ−ブ中を窒素ガスで置換し、大気圧とした。温度を200℃に保ち、無水トリメリット酸 4重量部無水マレイン酸 20重量部を加え、60分間反応を行い、共重合ポリエステル樹脂(A)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は数平均分子量は3100、酸価214eq./ton 、ガラス転移温度は62℃であった。
【0037】
温度計、コンデンサ−、撹拌羽根を備えた四つ口の10リットルセパラブルフラスコにポリエステル樹脂(A)200重量部、メチルエチルケトン100重量部、テトラハイドロフラン50重量部を仕込み70℃にて溶解した。次いで塩基として2,2',2''- ニトリルトリエタノール5重量部を加えた後、70℃のイオン交換水500重量部を加えた。系内では転相自己乳化が生じ、水分散体が生成した。さらに蒸留用フラスコにて留分温度が103℃に達するまで蒸留し、冷却後に水を加え固形分濃度を25%のポリエステル水分散体(B)とした。得られたポリエステル水分散体に存在する微分散粒子の平均粒子径は0.08μm、ゼ−タ電位は−55mV、SEM観察による粒子形状はほぼ球形であった。温度計、コンデンサ−、撹拌羽根を備えた四つ口の10リットルセパラブルフラスコに得られた水分散体900重量部、アゾビスブチルニトリル2wt%を溶解したスチレン45重量部、1規定のクエン酸トリエタノールアミン塩(電解質に相当)100重量部を室温で仕込み、静かに撹拌しながら95℃まで0.2℃/分にて昇温し、95℃120分間保った後に氷を入れて急冷した。処理後の水分散体を人工腎臓モジュールを用いて透析液の導電率が5μS/cm以下に達するまで透析した。得られた水分散体中に存在する粒子はSEM観察により球状粒子数個〜十個前後がデンドライト状に凝集融着した非球形形状であった。昇温速度を変えることにより得られた粒子の非球形度は変化した。この方法により表1.に示す粒子径、形状を有するポリエステル微粒子を得た。なお非球形度(1)(2)は得られた粒子のSEM写真を画像処理装置「イメージアナライザーV1(東洋紡績(株)製」にて解析し求めた。また非球形度(3)はコールターカウンター法により得られた粒子径分布より計算的に求められた比表面積と、窒素吸脱着法、ならびに水銀圧入法により得られた比表面積(両社の平均値)とから求めた。
【表1】
【0038】
ここに非球形度は、
非球形度(1) 粒子を平面に投影した投影図形における面積換算円の円周長に対する投影図形の外周長の比
非球形度(2) 平面投影図形において短径に対する長径の比
非球形度(3) 体積換算粒子径から計算的に求められる比表面積に対する実測された比表面積の比である。
粒子の膨潤性は、樹脂粒子の水分散体にイソプロピルアルコールを10wt%添加した際の最低造膜温度の低下度合により評価した。造膜温度の低下が5℃以内の場合を○、5〜10℃を△、10℃を越える場合を×とした。また市販の樹脂粒子より本発明の要件を満たす非球形形状の粒子および、本発明の要件を満たさない球状粒子を選択して実施例、比較例に用いた。用いた樹脂粒子の特性を表1.に示す。ここにS−100、S−200、S−300、SA−100は、アルカリ金属イオンにより部分的イオン架橋されたエチレン−メタクリル酸共重合体(エチレン80〜90wt%、メタクリル酸10〜20wt%)を主成分とするアイオノマー樹脂よりなるソープフリー乳化手法により得られた水分散体であり、ケミパールとして三井石油化学社より上市されているものであり、ここにW−500ポリオレフィン系のワックスエマルジョンであり、ケミパールとして三井石油化学社より上市されているものである。
【0039】
E−3101、E−5101はスチレンないしアクリル系の球状樹脂微粒子であり、マイクロジェルの商品名にて日本ペイント社より市販されているものである。240−Vはポリスチレン系樹脂からなる偏平形状の微粒子でありグロスデールとして三井東圧化学社より市販されているものである。
【0040】
〔実施例1〜9、比較例1〜5〕
カーボンブラックの水分散体「マイクロピグモ ブラック WMBK−5」(オリエント化学社製、平均粒子径0.05μm)、脱イオン水、所定量のエチレングリコール、イソプロピルアルコール、ニトリルトリエタノールを加え混合した。さらに別に準備した樹脂微粒子の水分散体を撹拌下に静かに滴下し十分に混合した後、1.0μmのメンブレンフィルタ−にて濾過し下記組成のインクジェット記録用インクを調製した。なおW−500を用いた場合にのみ濾過操作を省略した。
試作インク
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
樹脂微粒子 (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
得られた試作インクをインクジェットプリンタIO735X[シャープ社製]に仕込み、再生紙に印字を行い記録品位を目視評価した。
【0041】
また書道用半紙に1ドット幅の細線と1ドット幅の線間を有する平行線パターンを印字し、ドットピッチから計算される本来の線幅と実際に印字された線幅より線の太りを求め、ニジミ幅とした。インクを仕込んだ状態のインクジェットプリンタを40℃30%RHの高温乾燥雰囲気中に1週間放置し、その後にプリンタを再起動しヘッド回復までに必要なヘッドクリーニング回数にてノズル目詰まり性を評価した。結果を表2.に示す。
【表2】
なお表2.中、
記録品位(目視):1ドット幅ライン長1cmあたりのヒゲ状ノイズ
1本未満 ◎
1〜2本 ○
2〜4本 △
4本以上 ×
耐目詰まり性 :復帰までに要したクリーニング動作回数
電源オン時のクリーニングにて復帰した場合 ◎
強制クリーニング 1回で回復 ○
強制クリーニング 2〜3回で回復 △
強制クリーニング3回にて回復せず ×
である。
【0042】
〔実施例10〜18、比較例6〜10〕
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表3.に示す。
試作インク)
水溶性染料 C.I.Direct Blue 86 精製品 1.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
樹脂微粒子 7.0wt%
水 残
【表3】
【0043】
〔実施例19〕
有機顔料「Paliotol Yellow S1155(C.I.Pigment Yellow 185」(BASF社製)20重量部、スチレン−マレイン酸共重合樹脂の部分エステル化物(酸価2000eq/ton)の水溶液(不揮発分20wt%)10重量部、イオン交換水70重量部をアトライターに仕込み、約3時間分散処理を行なった。得られた分散体を5Bろ紙にて濾過した後にメンブレンフィルター1.0μm、メンブレンフィルター0.4μm、メンブレンフィルター0.2μmと濾過し、最終的に平均粒子径0.08μmのイエロー顔料水分散体を得た。有機顔料として「Permanent Rubine F6B(C.I.Pigment Red 184)」(HOECHST社製)を用い、同様にマゼンタ顔料水分散体を得た。シアン有機顔料の水分散体として「Levanyl Blue GZ」(BAYER社製、平均粒子径0.06μm、ノニオン系分散剤を使用して微分散したC.I.Pigment Blue15)を準備した。
【0044】
ブラック顔料としてプリンテックス150T[DEGUSSA社製]カーボンブラックを用い、イエロー、マゼンタと同様にブラック水分散体を作製した。得られた顔料水分散体を用いて、 試作インク 有機顔料+分散剤 (不揮発分換算)10.0wt% エチレングリコール 5.0wt% イソプロピルアルコール 0.8wt% ニトリルトリエタノール 0.2wt% ケミパールS−200 (不揮発分換算)5.0wt% 水 残となるように試作インクを調整した。得られた試作インクをインクジェットプリンタIO735X[シャープ社製]に仕込み、PPC用普通紙に連続階調を有する写真調フルカラー画像をプリントした。得られた画像は鮮明良好な色調を示し、また淡色中間色の発色が好ましいものであった。記録ドットを光学顕微鏡にて観察したところ独立ドットがほぼ円形に再現されていた。
【0045】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のインクジェット記録インクは高い高品位な記録画像、印字が可能であるとともにノズル目詰まりに対する耐性が高いというインクジェット記録用インクとして優れた特性を有する物である。
Claims (4)
- 記録剤と樹脂微粒子を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該記録剤が水溶性染料、カーボンブラック及び有機顔料のいずれかであり、該樹脂微粒子が、重量換算平均粒子径が0.05〜2.0μmの範囲にあり、非球形度が1.2以上である非球形粒子であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 前記非球形樹脂微粒子が低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して室温において非膨潤性である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記非球形樹脂微粒子が、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなるアイオノマー樹脂からなる請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記非球形樹脂微粒子がポリエステル樹脂を主成分とするものである請求項1記載のインクジェット記録用インク。
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