JP4324980B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コンピュータ用プリンタ、ワードプロッセサ用プリンタ、ファクシミリ、デジタル複写機、CAD出力用プロッタ、ポップ(POP)ライター、大型看板、ポスター用プリンタ等から、布地、絨毯、壁紙等のプリントにまで幅広く用いられてきているインクジェット記録用インクに関するものであり、さらに詳しくは、記録材としてカーボンブラックの微分散粒子を用いたインクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録技術は、非接触記録であり、しかも小型記録機器から超大型機器まで広い適用範囲を持ち、さらにカラー化が比較的容易であるためOA用から産業用にまで広い範囲で用いられている。
インクジェット記録はその形態から連続ジェット型とオンデマンドジェット型に大別される。前者は主に産業用プリンタに、後者は主に小型のOA用、携帯用プリンタに用いられている。特にサ−マルバブルジェット方式、あるいはピエゾ方式によるオンデマンド型の小型プリンタは近年その需要が急速に伸びている。
産業用プリンタに用いられるインクは即乾性に対する要求から主に溶剤型インクが、OA用、携帯用プリンタでは使用環境に対する配慮から水系インクが主に用いられている。
【0003】
(水溶性染料インク)
水系インクの多くは水溶性染料型インクである。水溶性染料型インクは主として酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等に分類される水溶性染料の水溶液に、保湿剤としてグリコール類、アルカノールアミン類、表面張力等の調製のための界面活性剤、アルコール類等を少量添加したものである。バインダー成分として水溶性の樹脂成分を添加する特許提案の散見されるが、実用的にはノズル目詰まり等に対する懸念からあまり用いられてはいない模様である。
これら水溶性染料型インクはノズル目詰まりに対する高い信頼性から、最も一般的に用いられている。しかしながらかかる水溶性染料型インクは、染料の水溶液であるが故に記録紙上でにじみやすく、また逆に見掛けの乾燥速度を早める必要から記録紙に素早く浸透するように調製されるが故にインクのニジミによる記録品位の低下を余儀なくされている。また水溶性の染料であるがゆえに耐水性に劣ることは自明である。さらに記録紙に単に浸透し、乾燥固着しているだけの水溶性染料は「染着」しているとはいい難く耐光堅牢度は非常に低い。
【0004】
(樹脂微粒子添加−水溶性染料型インク)
以上述べてような水溶性染料インクの問題点を解決する方策として、エマルジョン、ラテックス等の樹脂微粒子を添加することが古くから検討されている。
特開昭55−18418には、「ゴム、樹脂等の成分を乳化剤により微細粒子(粒径約0.01〜数μm)の形で水中に分散せしめた一種のコロイド溶液」であるラテックスを添加したインクジェット記録用インクに関する提案がある。好ましく用いられるラテックスとしては
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、
ポリクロロプレンラテックス、
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックス、
ブチルゴムラテックス、
ポリブタジエンラテックス、
ポリイソプレンラテックス、
多硫化ゴムラテックス、
等の合成ゴム系ラテックス、あるいは、
アクリルエステル系ラテックス、
スチレン−ブタジエンレジンラテックス、
酢酸ビニル系ラテックス、
塩化ビニル系ラテックス、
塩化ビニリデン系ラテックス、
等の合成樹脂系ラテックスが例示されている。
該提案において、添加できるラテックス粒子の粒子径は約0.01〜数μmの範囲であるとされている。しかしながら、0.2μm未満の粒子径では記録紙上でのてインクのニジミ防止効果が不十分であり、高い記録品位を得ることはできない。また粒子径が1.0μm以上になるとノズルの目詰まりが頻繁になり信頼性の面から使用することは困難となる。したがって現実的に使用できる範囲は概0.2〜1.0μmの範囲であると考えられる。
【0005】
かかる樹脂微粒子をインク中に添加した場合、粒子の比重と媒体の比重差による沈降あるいは浮上に関する注意が必要となる。水系インクの場合、媒体の比重はは1.0から大きく離れることは難しい。およそ0.2μm以上の大きさの微粒子においてはブラウン運動による粒子の拡散力に比較して重力の効果が大きいため、かかる領域では粒子比重と媒体比重の差を0.1以下、好ましくは0.07以下程度に抑える必要がある。
該特許提案に例示された合成ゴム系ラテックスの比重は概0.9〜1.0の範囲にあり、かかる条件をある程度満たすものの、合成ゴムの多くは分子内に不飽和二重結合を有し、耐光性、耐候性の面で問題がある。また加硫を行い不飽和結合を減じた場合には粒子の記録紙上への定着が阻害され、記録品位に問題がでる。さらに過度に加硫を行なうと比重が1.1以上となるため沈降の問題が生じる。さらにかかる合成ゴム系のラテックスはガラス転移温度が低いために室温で造膜しやすく、インクジェットノズル先端部にて乾燥された場合ノズルの目詰まりを生じやすく、しかも乾燥物が柔軟でやや粘着性を持つためその除去が非常に困難である。
【0006】
該特許に例示された合成樹脂ラテックスに関しては比重が1.1以上、特にハロゲン元素を含む合成樹脂の場合には比重1.3〜1.5近くに達するため、ニジミ防止効果が発現する粒径範囲においてはすべて沈降が生じてしまう。
さらにこれらのラテックス全般にいえることであるが、ラテックスを製造する際に用いられる乳化剤の多くはインクの泡立ちを促進しやすく、表面張力を必要以上に低下せしめるために問題が多い。
特開昭54−146109には溶剤にて膨潤され、かつ油性染料にて着色されたビニル重合体微粒子を添加した水溶性染料型インクに関する提案がなされている。好適に用いられる重合体としては主に(メタ)アクリル酸エステル系共重合体微粒子が例示され、さらにガラス転移温度が30℃以下であることが好適な条件であると記されている。該提案においては粒子径に関する記述は一切ない。かかる低ガラス転移温度でさらに溶剤にて膨潤した微粒子が室温乾燥した場合に造膜性を有することは自明であり、かかるインクを使用した場合にはノズル目詰まりが頻繁に生じるであろうことが容易に類推される。
【0007】
(顔料分散型インク)
水溶性染料型インクの欠点を改良するために、記録材としてカーボンブラック、あるいは有機顔料を用いる提案がなされている。このような顔料分散型インクにおいてはインクの耐水性は大幅に改良される。しかしながらこれら顔料は比重が1.5〜2.0と高く、分散粒子の沈降に対する注意が必要である。かかる高比重の顔料を安定的に分散させるためには平均粒子径を概0.1μm以下にまで微分散することが必要であり、分散コストが高く非常に高価なインクとなる。さらに0.1μm以下の粒子径ではニジミ防止効果は不十分であり高品位な記録文字・画像を得ることはできない。さらに分散に際して用いられる分散剤により表面張力、起泡性等のインク物性が制限される等の問題がある。
【0008】
(着色樹脂粒子型インク)
油溶性染料ないし疎水性染料により水分散性樹脂を着色する提案がインクジェット記録用インクとしてなされている。これらは「着色されたポリマー微粒子を記録剤として用いたインク」に関する提案である。例えば特開昭54−58504においては、疎水性染料溶液とビニル重合体微粒子の混合物を水中油型分散させたインクが提案されている。ビニル重合体微粒子は疎水性染料溶液と混合されることにより染料溶液の溶媒にて膨潤し、さらに染料により着色されることが本文にて開示されている。疎水性染料を記録剤とするため、得られる画像は耐水性を有するものとなるとある。該提案では、連続相として水を用い、分散相として溶剤にて膨潤した着色ビニル重合体粒子を用いることにより、インク粘度の支配を水に持たせ、溶剤としてある程度高粘度(低揮発性)のものを用いることを許容させている。
特開昭55−139471、特開平3−250069には染料によって染色された乳化重合または分散重合粒子を用いたインクが提案されている。提案の主旨は特開昭54−58504と同様、着色した粒子を分散質、水(透明)を媒体とすることによるニジミ防止であるが、この提案の場合には溶剤を含まないため、粒子が造膜することにより記録紙に定着されることが必要となる。造膜の必要、分散安定性の確保の観点より、望ましい粒子径はサブミクロン領域であることが示唆されている。
【0009】
いずれの提案においても水分散性樹脂はビニル重合体である。これらビニル重合体においては樹脂に対する染料の溶解度が低いために高濃度の着色を行うことは難しい。特開昭54−58504では重合体微粒子を溶剤にて膨潤させることにより染着性を稼ぐことが容認されているが、この場合にはノズル先端部での乾燥造膜によりノズル目詰まりの問題が生じる。
特開平4−185672には着色された樹脂粒子と水性媒体からなるインクにおいて水溶性化合物を水性媒体に溶解させることにより着色樹脂粒子と水性媒体との比重差を0.04以下とし、粒子の沈降を防止することが提案されている。
ここに水溶性化合物としては無機塩類が好ましく用いられるとされている。しかしながら、かかる無機塩類を水性媒体に溶解した場合、系内のイオン強度が増し、分散系の安定性が低下するために着色樹脂粒子は凝集しインクジェットインクとしての流体特性を保持できない。
特開平4−185673、特開平4−185674には着色された樹脂粒子と水性媒体からなるインクにおいて着色樹脂粒子を溶剤にて膨潤させることにより実効的な比重を下げ、着色樹脂粒子と水性媒体との比重差を0.04以下にすることが提案されている。かかる場合には前述したようにノズル目詰まりを避けることが困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べてきたように、従来技術では水溶性染料型インクの記録品位を向上させることは難しく、さらに水溶性染料型インクの問題点を解決するべく開発されている顔料分散型インク、着色樹脂粒子型インクにおいても満足な結果は得られていない。
本発明者らはインクジェット記録用の水系インクの記録品位向上を目的とし、特にカーボンブラックの微分散体を記録材に用いたインクにおいて、ある特定の樹脂微粒子を添加した際にのみ、著しい記録品位向上と粒子沈降に対する安定性、ノズル目詰まりに対する信頼性を両立させることが可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、記録剤としてカーボンブラックの水系微分散体を用いたインクジェット記録用インクにおいて、比重0.9〜1.05、平均粒子径0.2〜1.0μmで、かつ乳化剤を用いない乳化手段により得られたビカット軟化点が40〜100℃の範囲である合成樹脂微粒子を0.5〜15重量%含有することを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子の比重が0.93〜1.00の範囲であり、平均粒子径が0.3〜0.8μmの範囲である請求項1記載のインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子の比重が0.93〜1.00の範囲であり、平均粒子径が0.3〜0.8μmの範囲であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子が低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して非膨潤性であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子がエチレンおよびまたはプロピレンを50重量%以上含有する(共)重合体からなることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子がメチルスチレン50重量%以上からなる(共)重合体からなることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子がエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、前記合成樹脂微粒子がエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなるアイオノマー樹脂であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、さらに前記カーボンブラックの分散粒子径が0.1μm以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0012】
さらに、前記合成樹脂微粒子がエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなるアイオノマー樹脂からなり、ビカット軟化点が40〜100℃の範囲であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、
前記合成樹脂微粒子が乳化剤を用いない乳化手段により得られるものであることを特長とするインクジェット記録用インクであり、さらに
前記カーボンブラックの分散粒子径が0.1μm以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0013】
本発明において用いられるカーボンブラックとしては、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等を用いることができる。また水分散の手法としてはサンドミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェイカー等を用いることができる。水分散化する際に必要な分散剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系の公知の分散剤を必要に応じて用いることができる。しかしながら本発明においてはかかる分散剤の使用量は最低限度に抑えるべきであり、好ましくは表面処理、グラフト処理を行なったカーボンブラックを用い分散剤を用いずに水分散化したものが望ましい。カーボンブラックはインク中に0.3〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%、さらに好ましくは2.0〜8.0wt%程度配合される。カーボンブラックの分散粒子径は0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがなお好ましく、さらには0.05μm以下であることが好ましい。分散粒子径が大きいとカーボンブラック粒子の沈降が懸念される。
【0014】
本発明では色相等の調整のために少量の水溶性染料を添加してもよい。水溶性染料は公知の染料から適宜選択して用いることができる。水溶性染料としては酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等のアニオン性染料、塩基性染料等のカチオン染料が好ましく用いられる。より具体的には、C.I.Direct Black 17、19、32、51、108、146、C.I.Acid Black 1、2、7、24、31、52、63、112、 118、119、121、122、155、156、C.I.Food Black 2 等を用いることができる。水溶性染料の添加は耐水性の低下を招くために最低限に抑える必要がある。
通常、インクジェット記録用インクにおいてはインクの表面張力、粘度、保湿性、記録紙への浸透速度の調製等を目的として水溶性有機化合物が添加され、本発明でも例外ではない。水溶性有機化合物としては、メタノール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ニトリルトリエタノール、エチレンジアミンエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、タ−シャルブチルセルソルブ、アルキレングリコールモノエーテル等の化合物等を単独あるいは適宜複数成分を組合わせて用いることができる。とくにアルキレングリコール類はインク中に2〜10wt%、好ましくは3〜7wt%程度添加されることが好ましい。
【0015】
本発明の特長はかかるカーボンブラックの水系微分散インクに、比重0.9〜1.05、平均粒子径0.2〜1.0μmの合成樹脂微粒子を0.5〜15重量%含有することである。
前記合成樹脂微粒子の比重は好ましくは0.93〜1.00の範囲でありさらに好ましくは0.94〜0.98の範囲である。また平均粒子径は好ましくは0.3〜0.8μmの範囲であり、さらに好ましくは0.35〜0.7μmの範囲であり、なお好ましくは0.4〜0.6μmの範囲である。比重がこの範囲を下回るとインクを長期保存した際に粒子の浮上による相分離する可能性がある。比重がこの範囲を大きく越えた場合には沈降が生じる可能性がある。また平均粒子径がこの範囲を下回る場合には記録品位の向上が不十分であり、特に再生紙のような紙質の悪い紙においてニジミが生じやすくなる。平均粒子径がこの範囲を越える場合においては沈降、あるいは浮上による相分離の危険性が大きくなるばかりか、ノズル目詰まり等に対する危険度が増す。さらに興味深いことであるが、この範囲を越える粒子径のものを添加した場合においてはニジミ防止効果が次第に低下してしまう。これは粒子の径が大きすぎるために、かえって記録紙の繊維間隙を粒子が閉塞させる効果が薄れるためであると考察される。なお本発明においては粒子径分布の下限は、インクの粘度上昇等の問題が生じない限りにおいて制限はなく概0.01μm程度までの範囲が許容される。しかしなが粒子径分布の上限は2.0μm程度、好ましく1.5μm、さらに好ましくは1.2μm以下に制御される必要がある。すなわち本発明における好ましい粒度分布は必ずしも正規分布ではなく、小径粒子側にやや尾を引いた形状が好ましい。単分散性の高い粒子は必ずしも好ましいとは言えない。
【0016】
さらにかかる合成樹脂微粒子にはインク添加剤である水溶性有機化合物である低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して非膨潤性であることが必要とされる。ここに非膨潤性とは、樹脂のバルクとしての物性として該有機化合物に対して溶解しないことはもちろん、該有機化合物を10wt%、好ましくは5wt%以上吸収しない樹脂であることを意味するものとし、また別の観点より、かかる樹脂粒子の水分散体において10℃以上、好ましくは5℃以上の造膜温度の低下を生じないことを意味するものとする。インクに補助的に添加されるこれらの水溶性有機化合物に膨潤する場合にはノズル先端部にて樹脂粒子の乾燥造膜が生じ、ノズル目詰まりの原因となる。
【0017】
本発明に用いられる樹脂微粒子においては最低造膜温度が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、なおさらには70〜100℃の範囲であることが好ましく、そのうえさらに80〜100℃の範囲であることが好ましい。かかる最低造膜温度を実現するためにはASTM D1525−70にて定義されるビカット軟化点が40〜100℃であることが必要であり、さらに45〜80℃であることが好ましく、なおさらに50〜70℃であることが好ましい。
【0018】
かかる性質を有する樹脂微粒子としては、エチレンおよびまたはプロピレンを50重量%以上含有する(共)重合体、メチルスチレン50重量%以上からなる(共)重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂微粒子を例示することができる。メチルスチレンとしてはα、オルト、メタ、パラ位の何れの異性体を用いてもよいが特にメタ位、パラ位にメチル基を有するものが好ましい。かかる樹脂微粒子は所謂乳化重合法等の任意の方法により得ることができるが、本発明においては乳化重合法により得られる樹脂微粒子を用いる場合ソープフリー乳化重合等の乳化剤を用いない手法により得られるものを使用する。乳化剤等はインクジェット記録用インクとしての諸性能に好ましからざる影響を与えることが多いからである。本発明において特に好ましく用いられる樹脂粒子はエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とし、アルカリ金属イオン、あるいはアルカリ土類金属イオン、あるいはアンモニウム系イオン等により部分的にイオン架橋された所謂アイオノマー樹脂からなる水分散体を用いることが好ましい。かかる樹脂の水分散体は加熱と機械的撹拌を併用する強制機械乳化等、乳化重合以外の方法により得ることが可能であり、乳化剤を用いずに樹脂粒子の微分散体を得る方法の自由度が高い。かかる樹脂の水分散体としては商品名ケミパールS−100、同S−200、同S−300、同SA−100タイプ[三井石油化学社製]等を例示することができる。
【0019】
本発明のインクにはフッ素系、ないしはシリコ−ン系の消泡剤などを添加することができる。さらに各種殺菌剤や防カビ剤、また必要に応じて、透明性を損なわない程度に無機、有機系の顔料類を添加することもできる。
また5〜50ppm 程度の微量のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの添加は水分散体の粘度を低下させるために好ましい場合がある。
本発明のインクのpHは4以上が好ましく、6以上がさらに好ましく、7.5以上がまたさらに好ましく、7.5〜9.5の範囲がなおさらに好ましい。
本発明のインクの粘度は1.5〜30センチポイズの範囲が好ましく、1.8〜15センチポイズがさらに好ましく、2.0〜10センチポイズの範囲がなおさらに好ましく、3.0〜6.0センチポイズの範囲がその上好ましい。
本発明のインクジェット記録用インクは、駆動力として熱エネルギーを用いないインク吐出手段と組合わせることが好ましい。また、本発明のインクジェット記録用インクは、記録紙を40℃に加熱することによりインク定着を行なう手段と組合わせることが好ましい。
【0020】
カーボンブラックの比重は1.8〜2.5程度と高いために0.1μm以下程度に微分散しないと長期に静置保存した場合に沈降を生じ、インク固形分の不均一を招く恐れがある。かかる粒子径は一般の記録紙表面の繊維間隙に比較して充分小さいため、記録紙上におけるカーボンブラック粒子の微視的な流動挙動は水溶性染料に近い。したがって記録品位、印字品位に関る「ニジミ」の程度は水溶性染料型インクと大差なく、若干の改良が見られる程度である。
水溶性染料型インクに樹脂微粒子を添加した場合に記録品位が向上することは広く知られており、特許提案も多数なされている。同様のことはカーボンブラックを微分散させたインクにおいても成立すると考えられる。よってカーボンブラックの水分散体型インクの記録品位向上のために樹脂微粒子を添加するという手段そのものは容易に類推できる。
しかしながらこれまでに提案されてきたそれら樹脂微粒子をインクに添加して記録品位向上を図る試みは、記録品位のみを問題とし、インク自身の保存安定性、インクジェットノズルの目詰まりに対する信頼性に対して何等配慮したものではない。本発明の目的とするところは保存安定性、目詰まりに対する信頼性を満足した上で高い記録品位を実現するインクを提供することにあり、数ある樹脂微粒子の中でも特定の物のみがこの目的を満足することを見出した結果なされたものである。
【0021】
本発明においては樹脂の比重と分散粒子径が同時に規定されるがこれらを両立することによって初めて保存安定性と記録品位の両立がなされるものである。さらにこの条件を満たした上で特定の軟化温度を有し、他のインク添加成分によりその物性が大きく影響されない特性を実現することによりノズル目詰まりに対する信頼性が確保されるのである。
さらに本発明において特筆すべきことはかかる樹脂微粒子をインクに添加することにより記録濃度が向上することである。この事実は、記録紙の繊維に沿って媒体(水)とともに浸透拡散していくカーボンブラック微粒子成分が、添加された樹脂微粒子によりせき止られることによりニジミが抑制されるとともに、記録紙の表面近傍に比較的多く残るためであると理解することができる。本発明の限定条件を満足する樹脂微粒子において特にこの効果が際立って観察されることから、逆にニジミ防止効果の高さを評価できる。
【0022】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが本発明はここに示す実施例に限定されるものではない。。
【実施例1】
カーボンブラックの水分散体「マイクロピグモ ブラック WMBK−5」(オリエント化学社製、平均粒子径0.05μm)、脱イオン水、所定量のエチレングリコール、イソプロピルアルコール、ニトリルトリエタノールを加え混合した。さらに別に準備した樹脂微粒子の水分散体を撹拌下に静かに滴下し十分に混合した後、1.0μmのメンブレンフィルタ−にて濾過し下記組成のインクジェット記録用インクを調製した。
試作インク(1)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
エチレン−プロピレン共重合体微粒子 (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにエチレン−プロピレン共重合体微粒子はエチレン90wt%、プロピレン10wt%からなるソープフリー乳化重合により得られた共重合体樹脂粒子水分散体であり、
平均粒子径 0.40μm
樹脂比重 0.95
最低造膜温度 95℃
ビカット軟化点 76℃
である。
【0023】
本樹脂はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解せず、膨潤している様子も観察されなかった。さらに不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においても最低造膜には変化がなく、粒子径にも変化がないため低級アルコールによる膨潤性は事実上ないと判断された。
インクの粘度は2.8センチポイズ、表面張力は52dyn/cmに調整された。また以下に示す実施例、比較例においても一定条件下にて比較するべき観点よりインク粘度は2.5〜3.2センチポイズの範囲内に、表面張力は48〜54dyn/cmの範囲に入るように調整された。
なお平均粒子径は光散乱式粒度分布計、樹脂比重は浮沈法、最低造膜温度は常法、ビカット軟化点はASTMD1525−70準拠の方法で測定した。
得られた試作インク(1)をインクジェットプリンタIO735X[シャープ社製]に仕込み、再生紙に印字を行い記録品位を目視評価した。また書道用半紙に1ドット幅の細線と1ドット幅の線間を有する平行線パターンを印字し、ドットピッチから計算される本来の線幅と実際に印字された線幅より線の太りを求め、ニジミ幅とした。同時にベタ印字部の光学濃度(マクベス社製光学濃度計)を測定した。得られた記録物をイオン交換水に浸漬し、色材のニジミだしにより耐水性を評価した。インクを仕込んだ状態のインクジェットプリンタを40℃30%RHの高温乾燥雰囲気中に1週間放置し、その後にプリンタを再起動しヘッド回復までに必要なヘッドクリーニング回数にてノズル目詰まり性を評価した。さらに試作インクを深さ10cmの試験管に満たし、密封して3ヶ月間静置し、三ヶ月後に試験管の最下部における沈殿物の有無、液面下5mmからサンプリングしたインクと、底から1cm上の部分からサンプリングしたインクとの固形分濃度比をもって保存安定性の評価を行なった。なお固形分濃度とは初期の濃度を100として現したものであり、インク不揮発分中の樹脂粒子成分に換算(記録材の沈降・濃度勾配は生じないと仮定)した値である。
結果を表1.表2.に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
なお、表1、表2中で、
である。
【0026】
【実施例2】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(2)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
パラメチルスチレン−メタクリル酸ブチル共重合体微粒子(不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにパラメチルスチレン−メタクリル酸ブチル共重合体微粒子はパラメチルスチレン75wt%、メタクリル酸ブチル20wt%、ジビニルベンゼン5wt%からなるソープフリー乳化重合により得られた共重合体樹脂粒子水分散体であり、
平均粒子径 0.45μm
樹脂比重 1.02
最低造膜温度 102℃
ビカット軟化点 95℃
である。本樹脂は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解しなかった、ただしメタノールに対し若干膨潤が観察された。不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においては最低造膜が約4℃低下したが、粒子径には検出できる程の変化がないため低級アルコールによる膨潤性は低いと判断された。
【0027】
【実施例3】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(3)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
アイオノマー樹脂微粒子S−200 (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにアイオノマー樹脂微粒子はアルカリ金属イオンにより部分的イオン架橋されたエチレン−メタクリル酸共重合体(エチレン80〜90wt%、メタクリル酸10〜20wt%)からなりソープフリー乳化手法により得られた水分散体であり、ケミパールS−200として三井石油化学社より上市されているものであり、
平均粒子径 0.43μm
樹脂比重 0.95
最低造膜温度 85℃
ビカット軟化点 57℃
である。本樹脂はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解せず、膨潤している様子も観察されなかった。さらに不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においても最低造膜には変化がなく、粒子径にも変化がないため低級アルコールによる膨潤性は事実上ないと判断された。
【0028】
【実施例4】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(4)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
アイオノマー樹脂微粒子S−300 (不揮発分換算)2.0wt%
水 残
ここにアイオノマー樹脂微粒子はアルカリ金属イオンにより部分的イオン架橋されたエチレン−メタクリル酸共重合体(エチレン80〜90wt%、メタクリル酸10〜20wt%)からなりソープフリー乳化手法により得られた水分散体であり、ケミパールS−300として三井石油化学社より上市されているものであり、
平均粒子径 0.53μm
樹脂比重 0.95
最低造膜温度 94℃
ビカット軟化点 67℃
である。本樹脂は実施例3に用いられたアイオノマー樹脂と同様、低級アルコールによる膨潤性は事実上ないと判断された。
【0029】
【実施例5】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(5)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
変性アイオノマー樹脂微粒子SA−100(不揮発分換算)2.0wt%
水 残
ここに変性アイオノマー樹脂微粒子はアルカリ金属イオンにより部分的イオン架橋されたエチレン−メタクリル酸共重合体(エチレン80〜90wt%、メタクリル酸10〜20wt%)にさらにスチレンをグラフトしたグラフト共重合体からなるソープフリー乳化手法により得られた水分散体であり、ケミパールSA−100として三井石油化学社より上市されているものであり、
平均粒子径 0.75μm
樹脂比重 1.00
最低造膜温度 70℃
ビカット軟化点 55℃
である。本樹脂は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解しなかった、ただしメタノールに対し若干膨潤が観察された。不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においては最低造膜が約2℃低下したが、粒子径には検出できる程の変化がないため低級アルコールによる膨潤性は低いと判断された。
【0030】
【比較例1】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(6)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
水 残
カーボンブラックは実施例1と同様「マイクロピグモ ブラック WMBK−5」を用いた。本試作インクは樹脂粒子を含まない所謂典型的なカーボンブラック微分散型インクである。
【0031】
【比較例2】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(7)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
塩化ビニリデン共重合体ラテックス (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここに塩化ビニリデン共重合体ラテックスは塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体の脂肪族石鹸を用いた乳化分散ラテックスである。
平均粒子径 0.15μm
樹脂比重 1.36
最低造膜温度 135℃
ビカット軟化点 125℃
である。本樹脂は実施例1と同様の評価の結果、低級アルコールによる膨潤性は低いと判断された。
【0032】
【比較例3】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(8)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
塩化ビニリデン共重合体ラテックス (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここに塩化ビニリデン共重合体ラテックスは比較例1と同様、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体の脂肪族石鹸を用いた乳化分散ラテックスである。
平均粒子径 0.45μm
樹脂比重 1.36
最低造膜温度 135℃
ビカット軟化点 125℃
であり比較例1に対して粒子径が大となっている。本樹脂は実施例1と同様の評価の結果、低級アルコールによる膨潤性は低いと判断された。
【0033】
【比較例4】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(9)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスはスチレン25wt%を含む共重合体の脂肪族石鹸を用いた乳化分散ラテックスである。
平均粒子径 0.38μm
樹脂比重 1.08
最低造膜温度 24℃
ビカット軟化点 10℃
である。本樹脂は、メタノール、エタノール、イソプロパノールに溶解した。エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解しなかった。不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においては最低造膜は24℃以上低下、すなわち氷点以下にならない場合には自然乾燥により造膜した。したがって膨潤性は非常に高い判断された。
【0034】
【比較例5】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(10)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
ポリメチルメタクリレートラテックス (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにポリメチルメタクリレートラテックスはソープフリー乳化重合により得られた単分散性の高いラテックス粒子である。
平均粒子径 0.52μm
樹脂比重 1.19
最低造膜温度 120℃
ビカット軟化点 110℃
である。本樹脂は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解はしなかったが、メタノール、イソプロパノールに対して若干表面が軟化膨潤のきざしを示した。不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においては最低造膜は12℃低下した。膨潤性はそれほど高くないが若干は認められるものとされた。
【0035】
【比較例6】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(11)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
アクリル系共重合体ラテックス (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにアクリル系共重合体ラテックスはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートからなる乳化重合により得られた共重合体ラテックス粒子である。
平均粒子径 0.45μm
樹脂比重 1.07
最低造膜温度 84℃
ビカット軟化点 80℃
である。本樹脂は、エタノール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解はしなかったが、メタノール、イソプロパノールに対して若干溶解性が観察された。不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においては最低造膜は30℃近く低下し、膨潤性は高いと判断された。
【0036】
【比較例7】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。ただし1.0μmメンブレンフィルターによる濾過工程は省略した。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(12)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
ポリオレフィン微粒子W−500 (不揮発分換算)5.0wt%
水 残
ここにポリオレフィン微粒子は低分子量ポリオレフィン(主にポリエチレン)からなりソープフリー乳化手法により得られた水分散体であり、ケミパールW−500として三井石油化学社より上市されているものであり、
平均粒子径 2.50μm
樹脂比重 0.92
最低造膜温度 90℃
ビカット軟化点 38℃
である。本樹脂はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ニトリルトリエタノールに対して溶解せず、膨潤している様子も観察されなかった。さらに不揮発分濃度を20wt%に調製した水分散体100wt部にイソプロピルアルコール10wt部を添加した場合においても最低造膜には変化がなく、粒子径にも変化がないため低級アルコールによる膨潤性は事実上ないと判断された。
【0037】
【比較例8】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(13)
水溶性染料 C. I. Direct Blue 86 精製品 1.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
水 残
本試作インクは樹脂粒子を含まない所謂典型的な水溶性染料型インクである。
【0038】
【比較例9】
下記組成のインクジェット記録用インクを実施例1と同様の手順にて調製し、同様の評価を行なった。結果を表1.表2.に示す。
試作インク(14)
カーボンブラック (顔料分換算)10.0wt%
エチレングリコール 5.0wt%
イソプロピルアルコール 0.8wt%
ニトリルトリエタノール 0.2wt%
水 残
ここにカーボンブラックは「マイクロジェット ブラック SMP−4−0211」(オリエント化学社製)平均粒子径0.15μm、を用いた。本カーボンブラックの水分散体は表面処理を行なったカーボンブラックを用いたものである。
【0039】
【比較例10】
カーボンブラック「プリンテックス150T」(DEGUSSA社製20重量部、スチレン−マレイン酸共重合樹脂の部分エステル化物(酸価2000eq/ton)の水溶液(不揮発分20wt%)10重量部、イオン交換水70重量部をアトライターに仕込み、約3時間分散処理を行なった。得られた分散体を5Bろ紙にて濾過した後にメンブレンフィルター1.0μm、メンブレンフィルター0.4μm、メンブレンフィルター0.2μmと濾過し、最終的に平均粒子径0.08μmのカーボンブラック水分散体を得た。このようにして得られた顔料水分散体を用い、それ以外は比較例1と同様の組成と手順にして試作インク(15)を得た。以下実施例1と同様の評価を行い、結果を表1.表2.に示す。プリンテックス150Tは酸性のカーボンブラックとして知られている。
【0040】
【実施例6】
比較例9で用いたカーボンブラック「マイクロジェット ブラック SMP−4−0211」(オリエント化学社製)を用い、他の組成、手順は実施例3と同様にして試作インク(16)を得た。以下同様に評価した。結果を表1.表2.にしめす。
【0041】
【実施例7】
比較例10で作製したカーボンブラック「プリンテックス150T」の水分散体「を用い、他の組成、手順は実施例3と同様にして試作インク(17)を得た。以下同様に評価した。結果を表1.表2.にしめす。
【0042】
【実施例8】
カーボンブラック「スペシャルブラック4」(DEGUSSA社製)の水分散体を比較例10の手順にしたがって作製した。次いで、他の組成、手順は実施例0と同様にして試作インク(18)を得た。以下同様に評価した。結果を表(表1、表2)にしめす。
【0043】
【実施例9】
カーボンブラック「プリンテックス35」(DEGUSSA社製)の水分散体を比較例10の手順にしたがって作製した。次いで、他の組成、手順は実施例3と同様にして試作インク(19)を得た。以下同様に評価した。結果を表にしめす。プリンテックス35はアルカリ性のカーボンブラックであることが知られている。
【0044】
【実施例10】
カーボンブラック「プリンテックス55」(DEGUSSA社製)の水分散体を比較例10の手順にしたがって作製した。次いで、他の組成、手順は実施例3と同様にして試作インク(20)を得た。以下同様に評価した。結果を表にしめす。
【0045】
【実施例11】
カーボンブラック「スペシャルブラック550」(DEGUSSA社製)の水分散体を比較例10の手順にしたがって作製した。次いで、他の組成、手順は実施例3と同様にして試作インク(21)を得た。以下同様に評価した。結果を表にしめす。
【0046】
【比較例11】
インクジェットプリンタ「デスクジェット1200C」(ヒューレットパッカード社製)のブラックインクを試作インク(22)として用いた。本インクはカーボンブラックを記録剤として用いていることが学会報告等で公開されている。以下同様に評価した。結果を表にしめす。
【0047】
【実施例12】
「デスクジェット1200C」のブラックインク80重量部にアイオノマーS−200水分散体(固形分27%)20重量部を混合し試作インク(23)とした。
以下同様に評価した。結果を表にしめす。
【0048】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のインクジェット記録インクは高い高品位な記録画像、印字が可能であるとともにノズル目詰まりに対する耐性が高く、また長期間静置保存した場合にも安定な優れた特性を有する物である。
Claims (8)
- 記録剤としてカーボンブラックの水系微分散体を用いたインクジェット記録用インクにおいて、比重0.9〜1.05、平均粒子径0.2〜1.0μmで、かつ乳化剤を用いない乳化手段により得られたビカット軟化点が40〜100℃の範囲である合成樹脂微粒子を0.5〜15重量%含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子の比重が0.93〜1.00の範囲であり、平均粒子径が0.3〜0.8μmの範囲である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子が低級アルコールおよびまたはアルキレングリコールおよびまたはアルカノールアミン類に対して非膨潤性である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子がエチレンおよびまたはプロピレンを50重量%以上含有する(共)重合体である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子がメチルスチレン50重量%以上からなる(共)重合体である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子がエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記合成樹脂微粒子がエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体からなるアイオノマー樹脂である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
- 前記カーボンブラックの分散粒子径が0.1μm以下である請求項1記載のインクジェット記録用インク。
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