JP3896366B2 - 薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置 - Google Patents

薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体等の磁界強度を信号として読み取るためのデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッド、ならびにその薄膜磁気ヘッドを含むヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能の向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し専用の磁気抵抗効果素子(以下、単にMR(Magneto-resistive)素子と簡略に記すことがある)を有する再生ヘッドと、書き込み専用の誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドと、を積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く使用されている。
MR素子としては、異方性磁気抵抗(Anisotropic Magneto-resistive)効果を用いたAMR素子や、巨大磁気抵抗(Giant Magneto-resistive)効果を用いたGMR素子や、トンネル磁気抵抗(Tunnel-type Magneto-resistive)効果を用いたTMR素子等が挙げられる。
GMR素子としては、スピンバルブ型GMR素子が多く用いられている。スピンバルブ型GMR素子は、非磁性層と、この非磁性層の一方の面に形成された軟磁性層と、非磁性層の他方の面に形成された強磁性層と、非磁性層とは反対に位置する側の強磁性層の上に形成されたピンニング層(一般には反強磁性層)とを有している。軟磁性層は外部からの信号磁界に応じて磁化の方向が変化するよう作用する層である。これに対して強磁性層は磁化の方向が固定された層であり、ピンニング層(反強磁性層)からの磁界によって交換結合され、一方向(pinned方向)に磁化方向が制御されている。
このような交換結合力、および交換結合力の熱安定性はヘッドの特性や信頼性に大きな影響を及ぼすことからできるだけ大きな交換結合力を発生させることが要求される。また、反強磁性層と接する強磁性体層を従来までの単層構造から、強磁性層/非磁性金属層/強磁性層の3層構造とすることで二つの強磁性体層間に強い交換結合(積層フェリ構造)を誘起させて、反強磁性体層からの交換結合を実効的に増大させるという提案もなされている(特開2000−137906号公報、特開2000−113418号公報)。
また、出力の向上という観点から、従来のスピンバルブセンサを2つ重ねたデュアル・スピンバルブという構造も提案されている(特開平9−147326号公報、特開2002−185060号公報)。すなわち、デュアル・スピンバルブ構造であれば、2つのCu等の非磁性層が存在するために、GMR変化率を向上させるための界面が4つに増え、さらにトータルとしてセンス電流を多く流すことができるようになる。さらに、ABS(Air Bearing Surface)からの奥行き深さに相当する素子高さ(MR height)も、シングル・スピンバルブ構造のものと比べて短くすることができる。
しかしながら、デュアル・スピンバルブ構造では、磁化方向を固定するための反強磁性層を下層側と上層側とにそれぞれ形成して合計2層の反強磁性層を形成する必要がある。本発明者らがこれらの反強磁性層の膜構造について鋭意研究を進めた結果、本発明に想到するに至る一つのヒントとして、下地層側に近い反強磁性層は、下地層の影響を受けて信頼性の高い良好な膜の形成ができるが、上層の位置するもう一つの反強磁性層は、下に位置する反強磁性層の膜質とは異なり耐熱性、耐衝撃性が十分でなく信頼性の低い膜となる傾向にあることを見出している。
従って、上層側に位置する反強磁性層によるピンニング効果は不安点要素が多く、ピン方向の信頼性が不足するという傾向がある。
このような理由に加えて、デュアル・スピンバルブ構造膜の膜厚をさらに薄くするために、一方の反強磁性層を用いることなく別の方法で、片側の強磁性層のピン止め効果を発現させる手法の提案がなされている(特開2000−276714号公報、特開2000−149229号公報)。より具体的には、反強磁性膜などによる固定機能を有さないで磁性膜の端部の静磁気的な結合と感知電流による電流バイアス磁界によって固定バイアス特性を発揮するスピンバルブ型磁気センサーの提案がなされている。しかしながら、これらの技術において、センス電流により発生する磁界のみを利用して強磁性層のピン方向を固定するピンド操作は現時点での技術ではピン固定の安定性に欠けており、商品化の現実性が乏しいと言える。また、さらに、デュアル・スピンバルブ構造膜の片側のみに反強磁性層を配置して、反強磁性層と交換結合する強磁性層から漏れる静磁界を利用することも示唆されている。
しかしながら、より狭ギャップ化、狭トラック化を図りつつ再生出力が大きく、かつピン固定の安定性を高めて信頼性の高い製品の実現化を図るための具体的な構成は示されていないのが現状である。
特開2000−276714号公報 特開2000−149229号公報 特開平9−147326号公報 特開2002−185060号公報 特開2000−137906号公報 特開2000−113418号公報
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、狭ギャップ化、狭トラック化を図りつつ再生出力が大きく、かつピン固定の安定性を高めてより信頼性の高い薄膜磁気ヘッドを提供すること、ならびにこのように改善された薄膜磁気ヘッドを備えるヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置を提供することにある。
特に、ピン固定の安定性に関しては、(1)薄膜磁気ヘッド動作時に、薄膜磁気ヘッドと記録媒体との接触などによるHDI(Hard Disk Interface)ダメージや、(2)薄膜磁気ヘッドをウエーハから多数個取りのバー状態に切り出し、さらにその多数個取りのバー状態から個々の磁気ヘッド材料に切り出す加工ストレス等があっても、ピン止めされた磁性層のピン方向が反転することなく正規の向き方向を維持することができ動作の安定性および信頼性があること、すなわち、動作中に極性が反転するピン反転不良率が少ないこと、並びに研磨加工後においてピン方向が所望の位置に存在していないピン方向不良率が少ないという特性を備える薄膜磁気ヘッドを提供することにある。
このような課題を解決するために、本発明は、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子は、第1の反強磁性層、第1の固定磁性層、第1の非磁性層、軟磁性層、第2の非磁性層、第2の固定磁性層とを有するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜を有し、
前記第1の固定磁性層は、前記第1の反強磁性層に接し、前記第1の反強磁性層と交換結合磁界により磁化方向が固定される第1の磁性層と、この第1の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第2の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
前記第2の固定磁性層は、前記第2の非磁性層側に位置する第3の磁性層と、この第3の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第4の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
前記第1の固定磁性層は、その端部から発せられる静磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用するとともに、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値は、1.5〜4.0ミリアンペア(mA)であり、その電流磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用してなり、
前記第1の固定磁性層を構成する第1の磁性層および第2の磁性層、並びに前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、それぞれ、Co 80 Fe 20 の同じ材料から構成されており、
前記第1の固定磁性層を構成する第1の磁性層および第2の磁性層の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、
t1=t3、t2=t4であり、
t1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が2〜6Åであり、
t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2〜6Åであり、
前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、その磁歪定数の絶対値が、5×10-6以下の物性を備えてなるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記t1、t2、t3、およびt4の膜厚が5〜30Åの範囲内に設定されるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記t1、t2、t3、およびt4の膜厚が10〜18Åの範囲内に設定されるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記第1の反強磁性層はIrMnから構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜の積層厚さは150〜350Åに設定される。
また、本発明の好ましい態様として、前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜は、下地層側から第1の反強磁性層、第1の固定磁性層、第1の非磁性層、軟磁性層、第2の非磁性層、第2の固定磁性層を順次備えてなるように構成される。
本発明のヘッドジンバルアセンブリは、上記の薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、前記スライダを弾性的に支持するサスペンションと、を備えてなるように構成される。
本発明のハードディスク装置は、上記の薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される円盤状の記録媒体に対向するように配置されるスライダと、前記スライダを支持するとともに前記記録媒体に対して位置決めする位置決め装置と、を備えてなるように構成される。
本発明の薄膜磁気ヘッドは、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッドであって、前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子は、第1の反強磁性層、第1の固定磁性層、第1の非磁性層、軟磁性層、第2の非磁性層、第2の固定磁性層とを有するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜を有し、前記第1の固定磁性層は、前記第1の反強磁性層に接し、前記第1の反強磁性層と交換結合磁界により磁化方向が固定される第1の磁性層と、この第1の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第2の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
前記第2の固定磁性層は、前記第2の非磁性層側に位置する第3の磁性層と、この第3の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第4の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
前記第1の固定磁性層は、その端部から発せられる静磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用するとともに、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値は、1.5〜5.0ミリアンペア(mA)であり、その電流磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用してなり、
前記第1の固定磁性層を構成する第1の磁性層および第2の磁性層の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、
t1>t2の時、t3>t4となる関係があり、
t2>t1の時、t4>t3となる関係があり、
t1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が2〜6Åであり、
t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2〜6Åであり、
前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、その磁歪定数の絶対値が、5×10-6以下の物性を備えてなるように構成されているので、狭ギャップ化、狭トラック化を図りつつ再生出力が大きく、かつピン固定の安定性を高めてより信頼性の高い薄膜磁気ヘッドが得られる。
特に、ピン固定の安定性に関しては、薄膜磁気ヘッド動作時に、薄膜磁気ヘッドと記録媒体との接触などによるHDI(hard disk interface)ダメージや、薄膜磁気ヘッドを多数個取りのバー状態から個々の磁気ヘッド材料に切り出す加工ストレス等があっても、ピン止めされた磁性層のピン方向が反転することなく正規の向き方向を維持することができ動作の安定性および信頼性が極めて高い。
以下、本発明の具体的実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッドに関するものであって、その要部は再生ヘッドに組み込まれた磁気抵抗素子を構成するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗多層膜の構造にある。
図1は、本発明の実施の形態における再生ヘッドの要部を示す平面図であり、図2は図1におけるA−A断面図であり、図3は図1におけるB−B線断面図であり、図4は図1におけるC−C線断面図である。図5は、図2におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗多層膜の部分を拡大して模式的に記載したものであり、図6は、図3におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗多層膜の部分を拡大して模式的に記載したものである。
図5に示されるようにデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子(MR素子)を構成するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜5は、ボトム側から第1の反強磁性層51、第1の固定磁性層50、第1の非磁性層55、軟磁性層56、第2の非磁性層45、第2の固定磁性層40とを有している。
図5の図面の下方に位置する第1の固定磁性層50は、いわゆる積層フェリ型固定層として構成されている。そして、第1の固定磁性層50は、第1の反強磁性層51に接するとともにこの第1の反強磁性層51と交換結合磁界により磁化方向が固定される第1の磁性層52と、この第1の磁性層52に対して非磁性中間層53を介して積層される第2の磁性層54とで構成されている。第1の固定磁性層50における第1の磁性層52と、第2の磁性層54は、非磁性中間層53を介して互いの強磁性層の磁化が反平行に配列する反強磁性的な結合を有している。
同様に、図5の図面の上方に位置する第2の固定磁性層40も積層フェリ型固定層として構成されている。すなわち、第2の固定磁性層40は、第2の非磁性層45側に位置する第3の磁性層42と、この第3の磁性層42に対して非磁性中間層43を介して積層される第4の磁性層44とで構成されており、第3の磁性層42と、第4の磁性層44は、非磁性中間層43を介して互いの強磁性層の磁化が反平行に配列する反強磁性的な結合を有している。
本発明における第2の固定磁性層40側には、磁化方向を固定するための反強磁性層は存在していない。そのため、本発明においては、図6に示されるように図面の下方に位置する第1の固定磁性層50の端部から発せられる静磁界MS(図面上、点線で模式的に描いてある)が、前記第2の固定磁性層40の磁化をアシストして第2の固定磁性層40の磁化を固定するように作用している。また、図6において、センス電流は、その電流が作る磁界が第2の固定磁性層40を構成する第3の強磁性層42と第4の強磁性層44の磁化固定をアシストする方向、すなわち、図6における紙面の奥域側から紙面の手前側に向けて流される。センス電流の電流値は、1.5〜5.0ミリアンペア(mA)、好ましくは、2.0〜4.0ミリアンペア(mA)とされる。センス電流による磁化固定アシスト効果は、強磁性層の端部から出る静磁界による磁化固定アシスト効果よりも大きく支配的であると考えられる。
本発明において、図5や図6に示されるように下方に位置する第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52の厚さをt1、第2の磁性層54の厚さをt2とし、上方に位置する第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42の厚さをt3、第4の磁性層44の厚さをt4とした場合、
(i) t1>t2の時、t3>t4となる関係があり、
(ii) t2>t1の時、t4>t3となる関係が成立するように構成される。
これらの層による繰り返しの多層成膜を考慮すると、成膜の簡便さや膜構成の設計の容易性から、これらの層の組成は同一とすることが望ましく、上記(i)(ii)で示されるような不等号関係が成立しないと、デュアル・スピンバルブのピンド層として実質的に機能する第2の磁性層54と第3の磁性層42との磁化固定方向(ピンド方向)が同一方向とならず出力が出なくなってしまう。
このような膜厚の比較の不等号関係の制約に加えて、さらに以下の厚さの制約が課される。
すなわち、t1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が2〜6Åの範囲内であり、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2〜6Åの範囲内となるように構成される。
|t1−t2|値が2Å未満となると、例えば、ヘッド動作中に極性が反転するピン反転不良が発生する割合が極端に高くなってしまうという不都合が生じる。また、|t1−t2|値が、6Åを超えると、スピンバルブのシャント・ロスが大きくなり、出力が劣化する傾向が生じてしまう。同様に、|t3−t4|値が2Å未満となると、例えば、ヘッド動作中に極性が反転するピン反転不良が発生する割合が臨界的に高くなってしまうという不都合が生じる。また、|t3−t4|値が、6Åを超えると、スピンバルブのシャント・ロスが大きくなり、出力が劣化する傾向が生じてしまう。
さらに、本発明においては、第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44は、その磁歪定数λの絶対値|λ|が、5×10-6以下、特に、0×10-6〜3×10-6、さらに好ましくは0.5×10-6〜1.5×10-6とするのが良い。
この磁歪定数の絶対値が、5×10-6を超えて磁歪定数が大きくなり過ぎると、ピン方向が所定の位置に存在していない、いわゆるピン反転不良が生じ易くなってしまう傾向がある。つまり、磁歪定数が大きい場合、薄膜磁気ヘッドをウエーハから多数個取りのバー状態に切り出し、さらにその多数個取りのバー状態から個々の磁気ヘッド材料に切り出す加工ストレス等により、ピン止めされた磁性層のピン方向がズレたり、あるいはピン方向が反転したまま正規の向き方向に戻らない現象などが生じてしまう。磁歪定数の絶対値が大きい場合、加工歪みにより誘導される保磁力によって、ある確率(例えば、50%)でピン方向が好ましくない方向に固着されてしまい、一方の反強磁性層に固着された磁性層側からの静磁界、加えて、センス電流磁界では制御不能になってしまうためではないかと考えられる。
本発明において、積層フェリ型固定層である第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52および第2の磁性層54、並びに積層フェリ型固定層である第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44は、前述したように同じ組成材料から構成することが好ましい。好ましい材料としては、CoFe(Co含有割合は70〜
89at%、好ましくは70〜85at%、さらに好ましくは70〜80at%)等が挙げられる。CoFeに関して言えば、CoFeのCo含有割合を70〜89at%の好ましい範囲とすることにより、この材料が関係する本願発明の所定の膜厚領域で、確実な本願発明範囲内の正磁歪が得られるという効果が発現する。
第1の磁性層52の厚さt1は、5〜30Å、好ましくは10〜18Åの範囲とすることが望ましい。第2の磁性層54の厚さt2は、5〜30Å、好ましくは10〜18Åの範囲とすることが望ましい。第3の磁性層42の厚さt3は、5〜30Å、好ましくは10〜18Åの範囲とすることが望ましい。第4の磁性層44の厚さt4は、5〜30Å、好ましくは10〜18Åの範囲とすることが望ましい。これらのt1、t2、t3、t4の範囲を10〜18Åの好ましい範囲とすることにより、上述したCoFeの組成範囲との組み合わせで本願所望の磁歪が得られるという効果が発現する。
積層フェリ型固定層の中間層である非磁性中間層43、53は、RuまたはRu−Cr合金から構成することが好ましく、その膜厚は例えば、5〜8Åとすることが望ましい。Ruの他に、Ir、Rhなども非磁性中間層43、53の材料として用いることができる。
前記第1の反強磁性層51は、Ir、Rh、Ru、PtおよびNiのグループから選択された少なくとも1種とMnとの合金系(好適にはIrMn、MnPt)や、あるいはNiO、Fe23、CoOなどを好適例として例示することができる。このような第1の反強磁性層51は、隣接する第1の強磁性層52に交換結合による一方向異方性を印加し、第1の強磁性層52の磁化方向を実質的に固定するように作用する。
このような第1の反強磁性層51の厚さは例えば、70Å程度とされる。
第1の非磁性層55および第2の非磁性層45は、それぞれ、例えばCu膜などの非磁性導電膜から構成される。膜厚は、例えば、17Å程度とされる。
第1の非磁性層55および第2の非磁性層45に挟まれる位置関係にある軟磁性層56は、記録媒体からの信号磁界に応じて磁化の方向が変化する層(いわゆるフリー層)であり、通常、軟磁性膜から構成される。軟磁性層56は1層のみの構成に限定されることなく軟磁性膜的作用をする多層膜の構造としてもよい。膜厚は、例えば、20Å程度とされる。
このような構成からなるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜の積層全体厚さは150〜350Åとされる。
以下、本発明の要部の作用について、もう一度整理して説明しておく。
(本発明の要部の作用についての説明)
図6に示されるように第1の反強磁性層51は、隣接する第1の強磁性層52に交換結合による一方向異方性を印加し、第1の強磁性層52の磁化方向を実質的に固定している(矢印α1)。第2の強磁性層54は第1の磁性層52と非磁性中間層53を介して互いの強磁性層の磁化が反平行に配列する反強磁性的な結合を有している(矢印α2)。第1の強磁性層52と第2の強磁性層54の端部に発生する静磁界によって、第3の強磁性層42と第4の強磁性層44とが磁化され(矢印α3およびα4)、従来の反強磁性膜による固定を必然としてたスピンバルブ構造とは異なり、反強磁性層なしで、第2の固定磁性層40を構成する第3の強磁性層42と第4の強磁性層44の磁化を固定するようにしている。そして、図6において、センス電流は、紙面の奥域側から紙面の手前側に向けて流されており、その電流が作る磁界が第2の固定磁性層40を構成する第3の強磁性層42と第4の強磁性層44の磁化固定をアシストする方向に働いている。
第2の強磁性層54の磁化方向(矢印α2)と第3の強磁性層42の磁化方向(矢印α3)は、順方向であり、感知すべき磁界にほぼ平行で、軟磁性層56(フリー層)の磁化方向と磁界零でおよそ垂直になる。これにより、第2の強磁性層54および軟磁性層56(フリー層)がスピンバルブとして動作するとともに同時に第3の強磁性層42および軟磁性層56(フリー層)がスピンバルブとして動作し、いわゆるデュアル・スピンバルブとして動作する。本発明においては、デュアル・スピンバルブ構造に伴う抵抗変化率の向上を、片側1枚の反強磁性層51で実現させているのである。
このようなデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子(MR素子)を構成するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜は、例えば、図2に示されるように下地層25の上に形成される。下地層25は、多層膜の下部に位置する第1の反強磁性層51の結晶性や配向性を考慮して設けることが望ましい。例えば、NiCrなどが好適に用いられる。
デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜の上には、通常、保護膜49が形成される。保護膜49の材料としては、例えば、Taが用いられる。
そして、図2に示されるように本発明におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子(MR素子)を構成する磁気抵抗効果膜5の少なくとも軟磁性層56の両端部5e、5fには、それぞれ、軟磁性層56に縦バイアス磁界を与えるための一対のバイアス磁界印加層21、21が配置され、この上にMR素子を構成する磁気抵抗効果膜5に対して磁気的信号検出用の電流であるセンス電流を流すための2つの電極層6、6が形成されている。
バイアス磁界印加層21は、例えば永久磁石や、強磁性層と反強磁性層との積層体によって構成される。電極層6は、例えばAu等の導電性材料によって形成される。
(再生ヘッドの他の構成部分についての説明)
次いで、図1〜図4に示される再生ヘッドの構成について、簡単に補足説明しておく。
図1〜図4に示される実施の形態においては、MR素子におけるエアベアリング面20とは反対側に配置され、記録媒体からの信号磁束をMR素子に導くための磁束誘導層23を絶縁層22を介して形成させた再生ヘッドが例示されている。本発明において、この磁束誘導層23は必須のものではなく、磁束誘導層23を備えていないタイプの再生ヘッドとしてもよいことは勿論である。
また、MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5は、互いに反対側を向く2つの面5a、5bと、エアベアリング面20に配置された端部5cと、端部5cとは反対側の端部5dと、2つの側部5e、5fとを有している。
2つのバイアス磁界印加層21は、上述したようにそれぞれ、MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5の側部5e、5fに隣接するように配置されている。電極層6はバイアス磁界印加層21の上に配置されているが、バイアス磁界印加層21のない領域では、電極層6は後述する下部シールドギャップ膜の上に配置されている。
本発明の好適な態様として形成されている磁束誘導層23は、2つのバイアス磁界印加層21の間および2つの電極層6の間に配置されている。磁束誘導層23の材料としては、軟磁気特性に優れた軟磁性材料を用いることが好ましい。
図2ないし図4では、MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5、バイアス磁界印加層21および絶縁層22が、下地層25の上に配置されている例を示している。下地層25は後述する下部シールドギャップ膜の上に配置されている。なお、下地層25を設けずに、MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5、バイアス磁界印加層21および絶縁層22を、下部シールドギャップ膜の上に配置するようにしてもよい。
ところで、本発明におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子(MR素子)の多層膜構造は、前述した図2や図5に示されるような第1の反強磁性層51をボトム側に位置させたデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜構成に限定される。素子全体の薄層化が進むなかで、下地層側に近い反強磁性層は、下地層の影響を受けて信頼性の高い良好な膜の形成ができる。
(薄膜磁気ヘッドの全体構成の説明)
次いで、上述してきた磁気抵抗効果素子を備えてなる薄膜磁気ヘッドの全体構成について説明する。図7および図8は本発明の好適な一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明するための図面であり、図7は、薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面および基板に垂直な断面を示し、図8は、薄膜磁気ヘッドの磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。ここで、エアベアリング面とは、磁気記録媒体と対向する薄膜磁気ヘッドの対向面をいう。
薄膜磁気ヘッドの全体構造は、その製造工程に沿って説明することによりその構造が容易に理解できると思われる。そのため、以下、製造工程を踏まえて薄膜磁気ヘッドの全体の構造を説明する。
まず、アルティック(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1の上に、スパッタ法等によって、アルミナ(Al23)、二酸化珪素(SiO2)等の絶縁材料からなる絶縁層2を形成する。厚さは、例えば0.5〜20μm程度とする。
次に、この絶縁層2の上に、磁性材料からなる再生ヘッド用の下部シールド層3を形成する。厚さは、例えば0.1〜5μm程度とする。このような下部シールド層3に用いられる磁性材料としては、例えば、FeAlSi、NiFe、CoFe、CoFeNi、FeN、FeZrN、FeTaN、CoZrNb、CoZrTa等が挙げられる。下部シールド層3は、スパッタ法またはめっき法等によって形成される。
次に、下部シールド層3の上に、スパッタ法等によって、Al23、SiO2等の絶縁材料からなる下部シールドギャップ膜4を形成する。厚さは、例えば10〜200nm程度とする。
次に、下部シールドギャップ膜4の上に、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子(MR素子)を形成するために、再生用のデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜と、図示していないバイアス磁界印加層と、電極層をそれぞれ、形成する。
次に、MR素子および下部シールドギャップ膜4の上に、スパッタ法等によって、アルミナ等の絶縁材料よりなす上部シールドギャップ膜7を例えば10〜200nmの厚さに形成する。
次に、上部シールドギャップ膜7の上に、磁性材料からなり、記録ヘッドの下部磁極層を兼ねた再生ヘッドの上部シールド層8を、例えば3〜4μm程度の厚さに形成する。なお、上部シールド膜8に用いられる磁性材料は、上述した下部シールド層3と同様な材料を用いればよい。上部シールド膜8はスパッタ法またはメッキ法等によって形成される。
なお、上部シールド層8の代わりに、上部シールド層と、この上部シールド層の上にスパッタ法等によって形成されたアルミナ等の非磁性材料よりなる分離層と、この分離層の上に形成された下部磁性層とを設けるように構成してもよい。磁極とシールドの機能を兼用させることなく、別個に分けて構成した場合の構成例である。
次に、上部シールド層8の上に、スパッタ法等によって、アルミナ等の絶縁材料からなる記録ギャップ層9を、例えば50〜300nmの厚さに形成する。
次に、磁路形成のために、後述する薄膜コイルの中心部において、記録ギャップ層9を部分的にエッチングしてコンタクトホール9aを形成する。
次に、記録ギャップ層9の上に、例えば銅(Cu)からなる薄膜コイルの第1層部分10を、例えば2〜3μmの厚さに形成する。なお、図9において、符号10aは、第1層部分10のうち、後述する薄膜コイルの第2層部分15に接続される接続部を示している。第1層部分10は、コンタクトホール9aの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第1層部分10およびその周辺の記録ギャップ層9を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機材料からなる絶縁層11を所定のパターンに形成する。
次に、絶縁層11の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層11の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
次に、絶縁層11のうちの後述するエアベアリング面20側の斜面部分からエアベアリング面20側にかけての領域において、記録ギャップ層9および絶縁層11の上に、記録ヘッド用の磁性材料によって、上部磁極層12のトラック幅規定層12aを形成する。上部磁極層12は、このトラック幅規定層12aと、後述する連結部分層12bおよびヨーク部分層12cとで構成される。
トラック幅規定層12aは、記録ギャップ層9の上に形成され上部磁極層12の磁極部分となる先端部と、絶縁層11のエアベアリング面20側の斜面部分の上に形成されヨーク部分層12cに接続される接続部と、を有している。先端部の幅は記録トラック幅と等しくなっている。接続部の幅は、先端部の幅よりも大きくなっている。
トラック幅規定層12aを形成する際には、同時にコンタクトホール9aの上に磁性材料からなる連結部分層12bを形成するとともに、接続部10aの上に磁性材料からなる接続層13を形成する。連結部分層12bは、上部磁極層12のうち、上部シールド層8に磁気的に連結される部分を構成する。
次に、磁極トリミングを行なう。すなわち、トラック幅規定層12aの周辺領域において、トラック幅規定層12aをマスクとして、記録ギャップ層9および上部シールド層8の磁極部分における記録ギャップ層9側の少なくとも一部をエッチングする。これにより、図8に示されるごとく、上部磁極層12の磁極部分、記録ギャップ層9および上部シールド層8の磁極部分の少なくとも一部の各幅が揃えられたトリム(Trim)構造が形成される。このトリム構造によれば、記録ギャップ層9の近傍における磁束の広がりによる実効的なトラック幅の増加を防止することができる。
次に、全体に、アルミナ等の無機絶縁材料からなる絶縁層14を、例えば3〜4μm厚さに形成する。
次に、この絶縁層14を、例えば化学機械研摩によって、トラック幅規定層12a、連結部分層12b、接続層13の表面に至るまで研摩して平坦化する。
次に、平坦化された絶縁層14の上に、例えば銅(Cu)からなる薄膜コイルの第2層部分15を、例えば2〜3μmの厚さに形成する。なお、図7において、符号15aは、第2層部分15のうち、接続層13を介して薄膜コイルの第1層部分10の接続部10aに接続される接続部を示している。第2層部分15は、連結部分層12bの周囲に巻回される。
次に、薄膜コイルの第2層部分15およびその周辺の絶縁層14を覆うように、フォトレジスト等の、加熱時に流動性を有する有機材料からなる絶縁層16を所定のパターンに形成する。
次に、絶縁層16の表面を平坦にするために所定の温度で熱処理する。この熱処理により、絶縁層16の外周および内周の各端縁部分は、丸みを帯びた斜面形状となる。
次に、トラック幅規定層12a、絶縁層14、16および連結部分層12bの上にパーマロイ等の記録ヘッド用の磁性材料によって、上部磁性層12のヨーク部分を構成するヨーク部分層12cを形成する。ヨーク部分層12cのエアベアリング面20側の端部は、エアベアリング面20から離れた位置に配置されている。また、ヨーク部分層12cは、連結部分層12bを介して上部シールド層8に接続されている。
次に、全体を覆うように、例えばアルミナからなるオーバーコート層17を形成する。最後に、上記各層を含むスライダの機械加工を行い、記録ヘッドおよび再生ヘッドを含む薄膜ヘッドのエアベアリング面20を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
このようにして製造される薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する対向面(エアベアリング面20)と、再生ヘッドと、記録ヘッド(誘導型磁気変換素子)とを備えている。再生ヘッドは、MR素子(磁気抵抗効果膜5)と、エアベアリング面20側の一部がMR素子(磁気抵抗効果膜5)を挟んで対向するように配置された、MR素子(をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層8とを有している。
記録ヘッドは、エアベアリング面20側において互いに対向する磁極部分を含むとともに、互いに磁気的に連結された下部磁極層(上部シールド層8)および上部磁極層12と、この下部磁極層の磁極部分と上部磁極層12の磁極部分との間に設けられた記録ギャップ層9と、少なくとも一部が下部磁極層および上部磁極層12の間に、これらに対して絶縁された状態で配置された薄膜コイル10、15と、を有している。この薄膜磁気ヘッドでは、図7に示されるように、エアベアリング面20から、絶縁層11のエアベアリング面側の端部までの長さが、スロートハイト(図面上、符号THで示される)となる。なお、スロートハイトとは、エアベアリング面20から、2つの磁極層の間隔が開き始める位置までの長さ(高さ)をいう。
(薄膜磁気ヘッドの作用の説明)
次に、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの作用について説明する。薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。
再生ヘッドにおいて、バイアス磁界印加層21による縦バイアス磁界によって、軟磁性層56に実質的に印加される実質的縦バイアス磁界の方向は、エアベアリング面20に垂直な方向と直交している。MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5において、信号磁界がない状態では、軟磁性層56磁化の方向は、バイアス磁界の方向に揃えられている。一方、第2の強磁性層54および第3の強磁性層42の磁化の方向は同一方向であり、かつエアベアリング面20に垂直な方向に固定されている。
MR素子を構成する磁気抵抗効果膜5では、記録媒体からの信号磁界に応じて軟磁性層56の磁化の方向が変化し、これにより、軟磁性層56の磁化の方向と、第2の強磁性層54および第3の強磁性層42の磁化の方向との間の相対角度が変化し、その結果、MR素子の抵抗値が変化する。MR素子の抵抗値は、2つの電極層6によってMR素子にセンス電流を流したときの2つの電極層6間の電位差より求めることができる。このようにして、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置についての説明)
以下、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置について説明する。
まず、図9を参照して、ヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダ210について説明する。ハードディスク装置において、スライダ210は、回転駆動される円盤状の記録媒体であるハードディスクに対向するように配置される。このスライダ210は、主に図7における基板1およびオーバーコート17からなる基体211を備えている。
基体211は、ほぼ六面体形状をなしている。基体211の六面のうちの一面は、ハードディスクに対向するようになっている。この一面には、エアベアリング20が形成されている。
ハードディスクが図9におけるz方向に回転すると、ハードディスクとスライダ210との間を通過する空気流によって、スライダ210に、図9におけるy方向の下方に揚力が生じる。スライダ210は、この揚力によってハードディスクの表面から浮上するようになっている。なお、図9におけるx方向は、ハードディスクのトラック横断方向である。
スライダ210の空気流出側の端部(図9における左下の端部)の近傍には、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド100が形成されている。
次に、図10を参照して、本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリ220について説明する。ヘッドジンバルアセンブリ220は、スライダ210と、このスライダ210を弾性的に支持するサスペンション221とを備えている。サスペンション221は、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム222、このロードビーム222の一端部に設けられると共にスライダ210が接合され、スライダ210に適度な自由度を与えるフレクシャ223と、ロードビーム222の他端部に設けられたベースプレート224とを有している。
ベースプレート224は、スライダ210をハードディスク262のトラック横断方向xに移動させるためのアクチュエータのアーム230に取り付けられるようになっている。アクチュエータは、アーム230と、このアーム230を駆動するボイスコイルモータとを有している。フレクシャ223において、スライダ210が取り付けられる部分には、スライダ210の姿勢を一定に保つためのジンバル部が設けられている。
ヘッドジンバルアセンブリ220は、アクチュエータのアーム230に取り付けられる。1つのアーム230にヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドアームアセンブリと呼ばれる。また、複数のアームを有するキャリッジの各アームにヘッドジンバルアセンブリ220を取り付けたものはヘッドスタックアセンブリと呼ばれる。
図10は、ヘッドアームアセンブリの一例を示している。このヘッドアームアセンブリでは、アーム230の一端部にヘッドジンバルアセンブリ220が取り付けられている。アーム230の他端部には、ボイスコイルモータの一部となるコイル231が取り付けられている。アーム230の中間部には、アーム230を回動自在に支持するための軸234に取り付けられる軸受け部233が設けられている。
次に図11および図12を参照して、ヘッドスタックアセンブリの一例と本実施の形態に係るハードディスク装置について説明する。
図11はハードディスク装置の要部を示す説明図、図12はハードディスク装置の平面図である。
ヘッドスタックアセンブリ250は、複数のアーム252を有するキャリッジ251を有している。複数のアーム252には、複数のヘッドジンバルアセンブリ220が、互いに間隔を開けて垂直方向に並ぶように取り付けられている。キャリッジ251においてアーム252とは反対側には、ボイスコイルモータの一部となるコイル253が取り付けられている。ヘッドスタックアセンブリ250は、ハードディスク装置に組み込まれる。
ハードディスク装置は、スピンドルモータ261に取り付けられた複数枚のハードディスク262を有している。各ハードディスク262毎に、ハードディスク262を挟んで対向するように2つのスライダ210が配置される。また、ボイスコイルモータは、ヘッドスタックアセンブリ250のコイル253を挟んで対向する位置に配置された永久磁石263を有している。
スライダ210を除くヘッドスタックアセンブリ250およびアクチュエータは、本発明における位置決め装置に対応しスライダ210を支持すると共にハードディスク262に対して位置決めする。
本実施の形態に係るハードディスク装置では、アクチュエータによって、スライダ210をハードディスク262のトラック横断方向に移動させて、スライダ210をハードディスク262に対して位置決めする。スライダ210に含まれる薄膜磁気ヘッドは、記録ヘッドによって、ハードディスク262に情報を記録し、再生ヘッドによって、ハードディスク262に記録されている情報を再生する。
本実施の形態に係るヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置は、前述の本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドと同様の効果を奏する。
また、実施の形態では、基本側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の薄膜磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。また、読み取り専用として用いる場合には、薄膜磁気ヘッドを、再生ヘッドだけを備えた構成としてもよい。
以下に示すような具体的な実験例に基づいて、上述してきた本発明の薄膜磁気ヘッドをさらに詳細に説明する。
〔実験例1〕
図2および図5に示されるようなデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜を備える素子を有する再生ヘッドサンプルを作製した。以下、実施の要部のみ記載する。
図7に示されるごとく下部シールド層3をNiFeで形成し、この上に下部シールドギャップ膜4をAl23で形成し、この上にデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果素子を構成する積層膜を形成した。
すなわち、Al23からなる下部シールドギャップ膜4の上に、下地層25(NiCr;厚さ50Å)、第1の反強磁性層51(IrMn反強磁性層;厚さ70Å)、第1の固定磁性層50((第1の磁性層52(Co80Fe20;厚さは下記表1のパラメータX(Å)で表示)/非磁性中間層53(Ru;厚さ8Å)/第2の磁性層54(Co80Fe20;厚さ15Å))、第1の非磁性層55(Cu;厚さ17Å)、軟磁性層56(Co90Fe10;厚さ20Å)、第2の非磁性層45(Cu;厚さ17Å)、第2の固定磁性層40((第3の磁性層42(Co80Fe20;厚さは下記表1のパラメータX(Å)で表示)/非磁性中間層43(Ru;厚さ8Å)/第4の磁性層44(Co80Fe20;厚さ15Å))、保護層49(Ta;厚さ20Å)からなる積層膜を形成した。
第1の反強磁性層51による第1の磁性層52の磁化の固定は、真空中において、温度270℃、印加磁場790kA/m(10kOe)、処理時間5時間の磁場中熱処理によって行なった。
このような第1の磁性層52の磁界の向きを固定する磁場中熱処理行なった後に、磁気抵抗効果膜の上に、エッチングによってMR素子の形状を定めるためのマスクを形成した。このマスクは2つの有機膜からなるレジスト層をパターニングして、底面が上面よりも小さくなるようにアンダーカットを有する形状とした。
このマスクを用いて磁気抵抗効果膜を選択的にイオンミリング等のドライエッチングしてパターニングされた磁気抵抗効果素子を得た。次いで、下地層25の上にバイアス磁界印加層21(材質:CoCrPt;厚さ:20nm)を形成した。次いで、バイアス磁界印加層21の上に電極層6(材質:Au;厚さ:40nm)を形成した。
再生トラック幅の大きさは、光学トラック幅100nm、実行トラック幅125nmであった。
なお、上記バイアス磁界印加層21は、室温にて948kA/m(12kOe)の磁場中で60秒の着磁条件で着磁して、軟磁性層56に対して、縦バイアス磁界を付与した。
このようなMR素子の上に、Al23からなる上部シールドギャップ層およびNiFeからなる上部シールド層を形成し、下記表1に示されるような第1の磁性層52および第3の磁性層42厚さであるX値(Å)が異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
このようにして作製した再生ヘッドサンプルを用いて、下記の要領で(1)孤立波出力(mV/pp)、および(2)ピン反転不良率(%)を求めた。
(1)孤立波出力(mV/pp)
スピンスタンドを用いて、3.5インチの媒体を7200rpmで回転させ、そこに試作ヘッドを浮上させ、1MHzの周波数で記録媒体の1トラックに書き込みを行った。その後、試作サンプルヘッドに3mAの測定電流を流し、1トラックの平均の再生出力を測定した。
(2)ピン反転不良率(%)
動作中に極性が反転してしまった場合を不良として判断した。サンプル数は100個とし、具体的には、本発明者らが提示している特開平10−228614号に開示の手法を用いてピンの極性を判断した。ピン反転不良を発生させるために、以下のような加速的試験的な手段でヘッドに力学的ダメージを与えた。すなわち、まずCSS(Constant Start and Stop)ゾ−ンを有する媒体を用意し、1000rpmで回転させ、そこに試作ヘッドを浮上させる。同時に書き込み動作も行い、スピンバルブ素子部をABSに対して熱で突出させる。このようにして1分間、スピンバルブ素子部にダメージを与え、その前後でのピンの極性を判定した。
結果を下記表1に示すとともに、この結果が視認し易いように表1の結果を図13のグラフに示した。
Figure 0003896366
〔実験例2〕
上記実験例1において用いた第1の固定磁性層50の構造を、(第1の磁性層52(Co80Fe20;厚さ15Å)/非磁性中間層53(Ru;厚さ8Å)/第2の磁性層54(Co80Fe20;厚さは下記表2のパラメータX(Å)で表示))に変えた。
さらに、上記実験例1において用いた第2の固定磁性層40の構造を、(第3の磁性層42(Co80Fe20;厚さ15Å)/非磁性中間層43(Ru;厚さ8Å)/第4の磁性層44(Co80Fe20;厚さは下記表2のパラメータX(Å)で表示))に変えて、下記表2に示されるような第2の磁性層54および第4の磁性層44の厚さであるX値(Å)が異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
このようにして作製した再生ヘッドサンプルを用いて、上述した要領で(1)孤立波出力(mV/pp)、および(2)ピン反転不良率(%)を求めた。
結果を下記表2に示すとともに、この結果が視認し易いように表2の結果を図14のグラフに示した。
Figure 0003896366
表1および表2に示される結果、並びに図13および図14に示される結果より、第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52および第2の磁性層54の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、高出力を得るためにはt1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が6Å以下、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が6Å以下とする必要があることがわかる。そしてピン反転不良率を低く抑えるためには、|t1−t2|値が2Å以上、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2Å以上とする必要があることがわかる。
なお上記表1および表2に示される実験は、t1=t3、t2=t4の条件のもとに行った実験であるが、これらの条件に限定されるものではない。すなわち、t1とt3の値が異なる場合、およびt2とt4の値が異なる場合であっても、t1〜t4の関係要件が本発明の要件を満たす限りにおいて、表1および表2に示される結果と同様な傾向の効果が発現することが確認されている。
なお、ピンを安定化させるにはセンス電流を増やしても良いが、エレクトロマイグレーションの制限からあまり大きな電流を流すことはできない。
なお、実験例1および実験例2で用いた第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、その磁歪定数の絶対値が、2.5×10-6の物性を有する。
〔実験例3〕
上記実験例1において用いた第1の固定磁性層50の構造を、(第1の磁性層52(Co80Fe20;厚さ19Å)/非磁性中間層53(Ru;厚さ8Å)/第2の磁性層54(Co80Fe20;厚さは15(Å))に変えた。
さらに、上記実験例1において用いた第2の固定磁性層40の構造を、(第3の磁性層42(CoyFe100-y(yは原子%(at%)を示し、下記表3におけるパラメータで表示);厚さ19Å)/非磁性中間層43(Ru;厚さ8Å)/第4の磁性層44(Co80Fe20;厚さは15(Å))に変えて、下記表3に示されるようなy値(at%)の異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
このようにして作製した再生ヘッドサンプルを用いて、(3)加工ピン反転不良率(%)を求めた。ここでいう「加工ピン反転不良率(%)」とは、ウエーハから薄膜磁気ヘッドを多数個取りのバー状態に切り出し、この状態からさらに個々の磁気ヘッド材料に切り出す加工ストレスによってピン方向が所望の位置に存在していないピン方向不良の発生率をいう。サンプル数は、200個とし、具体的には、本発明者らが提示している特開平10−228614号に開示の手法を用いてピンの極性を判断した。
結果を下記表3に示すとともに、この結果が視認し易いように表3の結果を図15のグラフに示した。
Figure 0003896366
表3および図15に示される結果より、静磁界によってピン方向が固定される第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層のCoFe層におけるCoの組成が70at%未満となると、磁歪定数が極端に増大する。Co70Fe30における磁歪は4.7×10-6であり、磁歪が5.0×10-6を超えると加工ピン反転不良に大きな影響を及ぼすことが分かる。磁歪定数が大きい場合には、研磨加工後にヘッドに存在する歪み等に誘導される保磁力により、1/2の確率でピン方向が好ましくない方向に固着されてしまい、静磁界や電流磁界によっても制御不可能になってしまうものと考えられる。
これに対して、磁歪が5.0×10-6以内となると、誘導される保磁力も小さいので、静磁界や電流磁界で制御可能であり、加工ピン反転不良率が小さくなるものと考えられる。
〔実験例4〕
上記実験例1と同様な手法で上記実験例1と同様なサンプルを作製した。すなわち、下記表4に示されるような第1の磁性層52および第3の磁性層42厚さであるX値(Å)が異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
これらのサンプルについて、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値の影響を調べる実験をおこなった。すなわち、作製した再生ヘッドサンプルを用いて、センス電流の電流値を3mAから2mAに変更して(1)孤立波出力(mV/pp)、および(2)ピン反転不良率(%)を求めた。
結果を下記表4に示すとともに、この結果が視認し易いように表4の結果を図16のグラフに示した。
Figure 0003896366
表4に示される結果、および図16に示される結果より、第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52および第2の磁性層54の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、高出力を得るためにはt1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が6Å以下、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が6Å以下とする必要がある傾向が見られることがわかる。そしてピン反転不良率を低く抑えるためには、|t1−t2|値が2Å以上、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2Å以上とする必要がある傾向が見られることがわかる。
なお、これらの傾向は、上記実験例2の要領で、第2の磁性層54および第4の磁性層44の厚さをX値(Å)とした場合の実験でも同様であることが確認できた。
〔実験例5〕
上記実験例1と同様な手法で上記実験例1と同様なサンプルを作製した。すなわち、下記表5に示されるような第1の磁性層52および第3の磁性層42厚さであるX値(Å)が異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
これらのサンプルについて、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値の影響を調べる実験をおこなった。すなわち、作製した再生ヘッドサンプルを用いて、センス電流の電流値を3mAから4mAに変更して(1)孤立波出力(mV/pp)、および(2)ピン反転不良率(%)を求めた。
結果を下記表5に示すとともに、この結果が視認し易いように表5の結果を図17のグラフに示した。
Figure 0003896366
表5に示される結果、および図17に示される結果より、第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52および第2の磁性層54の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、高出力を得るためにはt1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が6Å以下、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が6Å以下とする必要がある傾向が見られることがわかる。そしてピン反転不良率を低く抑えるためには、|t1−t2|値が2Å以上、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2Å以上とする必要がある傾向が見られることがわかる。
なお、これらの傾向は、上記実験例2の要領で、第2の磁性層54および第4の磁性層44の厚さをX値(Å)とした場合の実験でも同様であることが確認できた。
〔実験例6〕
上記実験例1と同様な手法で上記実験例1と同様なサンプルを作製した。すなわち、下記表6に示されるような第1の磁性層52および第3の磁性層42厚さであるX値(Å)が異なる種々の再生ヘッドサンプルを作製した。
これらのサンプルについて、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値の影響を調べる実験をおこなった。すなわち、作製した再生ヘッドサンプルを用いて、センス電流の電流値を3mAから1.5mAに変更して(1)孤立波出力(mV/pp)、および(2)ピン反転不良率(%)を求めた。
結果を下記表6に示すとともに、この結果が視認し易いように表6の結果を図18のグラフに示した。
Figure 0003896366
表6に示される結果、および図18に示される結果より、第1の固定磁性層50を構成する第1の磁性層52および第2の磁性層54の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、第2の固定磁性層40を構成する第3の磁性層42および第4の磁性層44の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、高出力を得るためにはt1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が6Å以下、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が6Å以下とする必要がある傾向が見られることがわかる。そしてピン反転不良率を低く抑えるためには、|t1−t2|値が2Å以上、t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2Å以上とする必要がある傾向が見られることがわかる。
なお、これらの傾向は、上記実験例2の要領で、第2の磁性層54および第4の磁性層44の厚さをX値(Å)とした場合の実験でも同様であることが確認できた。
〔実験例7〕
強磁性層のピン止めに関し、センス電流の影響を調べる確認実験を以下の要領で行った。
上記実験例1の要領で、Al23からなる下部シールドギャップ膜4の上に、下地層(NiCr;厚さ50Å)、軟磁性層(Co90Fe10;厚さ20Å)、非磁性層(Cu;厚さ17Å)、固定磁性層((Co80Fe20;厚さ19Å)/非磁性中間層(Ru;厚さ8Å)/(Co80Fe20;厚さ15Å))、保護層(Ta;厚さ20Å)からなる積層膜を有する再生ヘッドサンプルを作製した。
このようなサンプルについて、センス電流を1.0mA、1.5mA、2.0mA、2.5mA、3.0mAに種々変え、センス電流によるピン止め効果の確認実験を行った。
具体的な確認方法としては、センス電流値を一定とした場合の印加方向を通常の場合から(符号プラス「+」表示)、逆方向に印加させ(符号マイナス「−」表示)、これらの各ケース(例えば+2.0mAと−2.0mA)における、外部磁界に対する出力の状況を見て判断している。
(1)図19(a),(b)には、それぞれ、センス電流+1.0mAおよびセンス電流−1.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係が示されている。双方のグラフを比較するに、センス電流が1.0mAでは電流方向を変えても実質的な出力の出方に変動はない。つまり、電流の逆転によるピン止め方向の逆転が見られておらず、センス電流が1.0mAでは電流によるピン止め効果が発現していないことがわかる。
(2)図20(a),(b)には、それぞれ、センス電流+1.5mAおよびセンス電流−1.5mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係が示されている。双方のグラフを比較するに、センス電流が1.5mAでは電流方向を変えると、出力の出方は大きく変動し逆転する傾向が見られる。つまり、電流の逆転によるピン止め方向の逆転がおこり、センス電流が1.5mAでは電流によるピン止め効果が発現していることがわかる。
(3)図21(a),(b)には、それぞれ、センス電流+2.0mAおよびセンス電流−2.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係が示されている。双方のグラフを比較するに、センス電流が2.0mAでは電流方向を変えると、出力の出方は大きく変動し逆転する傾向が見られる。つまり、電流の逆転によるピン止め方向の逆転がおこり、センス電流が2.0mAでは電流によるピン止め効果が発現していることがわかる。
(4)図22(a),(b)には、それぞれ、センス電流+2.5mAおよびセンス電流−2.5mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係が示されている。双方のグラフを比較するに、センス電流が2.5mAでは電流方向を変えると、出力の出方は大きく変動し逆転する傾向が見られる。つまり、電流の逆転によるピン止め方向の逆転がおこり、センス電流が2.5mAでは電流によるピン止め効果が発現していることがわかる。
(5)図23(a),(b)には、それぞれ、センス電流+3.0mAおよびセンス電流−3.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係が示されている。双方のグラフを比較するに、センス電流が3.0mAでは電流方向を変えると、出力の出方は大きく変動し逆転する傾向が見られる。つまり、電流の逆転によるピン止め方向の逆転がおこり、センス電流が3.0mAでは電流によるピン止め効果が発現していることがわかる。
磁気記録媒体等の磁界強度を信号として読み取るための磁気抵抗効果素子を備えるハードディスク装置の産業に利用できる。
図1は、本発明の実施の形態における再生ヘッドの要部を示す平面図である。 図2は、図1におけるA−A断面図である。 図3は、図1におけるB−B線断面図である。 図4は、図1におけるC−C線断面図である。 図5は、図2におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗多層膜の部分を拡大して模式的に記載したものである。 図6は、図3におけるデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗多層膜の部分を拡大して模式的に記載したものである。 図7は、本発明の好適な一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明するための図面であり、薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面および基板に垂直な断面を示した図面である。 図8は、本発明の好適な一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明するための図面であり、薄膜磁気ヘッドの磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示した図面である。 図9は、本発明の一実施の形態におけるヘッドジンバルアセンブリに含まれるスライダを示す斜視図である。 図10は、本発明の一実施の形態におけるヘッドジンバルアセンブリを含むヘッドアームアセンブリを示す斜視図である。 図11は、本発明の一実施の形態におけるハードディスク装置の要部を示す説明図である。 図12は、本発明の一実施の形態におけるハードディスク装置の平面図である。 図13は、表1の結果をグラフに示したものである。 図14は、表2の結果をグラフに示したものである。 図15は、表3の結果をグラフに示したものである。 図16は、表4の結果をグラフに示したものである。 図17は、表5の結果をグラフに示したものである。 図18は、表6の結果をグラフに示したものである。 図19(a),(b)は、それぞれ、センス電流+1.0mAおよびセンス電流−1.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係を示すグラフである。 図20(a),(b)は、それぞれ、センス電流+1.5mAおよびセンス電流−1.5mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係を示すグラフである。 図21(a),(b)は、それぞれ、センス電流+2.0mAおよびセンス電流−2.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係を示すグラフである。 図22(a),(b)は、それぞれ、センス電流+2.5mAおよびセンス電流−2.5mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係を示すグラフである。 図23(a),(b)は、それぞれ、センス電流+3.0mAおよびセンス電流−3.0mAを印加した場合の、外部磁場(グラフの横軸)に対する出力電圧(グラフの縦軸)の関係を示すグラフである。
符号の説明
1…基板
2…絶縁層
3…下部シールド層
4…下部シールドギャップ膜
5…磁気抵抗効果膜
6…電極層
7…上部シールドギャップ層
8…上部シールド層
9…記録ギャップ層
10…薄膜コイルの第1層部分
12…上部磁極層
15…薄膜コイル第2層部分
17…オーバーコート層
20…エアベアリング面
21…バイアス磁界印加層
22…絶縁層
40…第2の固定磁性層
42…第3の磁性層
43…非磁性中間層
44…第4の磁性層
45…第2の非磁性層
49…保護層
50…第1の固定磁性層
51…第1の反強磁性層
52…第1の磁性層
53…非磁性中間層
54…第2の磁性層
55…第1の非磁性層
56…軟磁性層(フリー層)

Claims (8)

  1. デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子を有する薄膜磁気ヘッドであって、
    前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗素子は、第1の反強磁性層、第1の固定磁性層、第1の非磁性層、軟磁性層、第2の非磁性層、第2の固定磁性層とを有するデュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜を有し、
    前記第1の固定磁性層は、前記第1の反強磁性層に接し、前記第1の反強磁性層と交換結合磁界により磁化方向が固定される第1の磁性層と、この第1の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第2の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
    前記第2の固定磁性層は、前記第2の非磁性層側に位置する第3の磁性層と、この第3の磁性層に対して非磁性中間層を介して積層される第4の磁性層とで形成される積層フェリ型固定層として構成されており、
    前記第1の固定磁性層は、その端部から発せられる静磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用するとともに、デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜に印加されるセンス電流の電流値は、1.5〜4.0ミリアンペア(mA)であり、その電流磁界が前記第2の固定磁性層の磁化をアシストして第2の固定磁性層の磁化を固定するように作用してなり、
    前記第1の固定磁性層を構成する第1の磁性層および第2の磁性層、並びに前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、それぞれ、Co 80 Fe 20 の同じ材料から構成されており、
    前記第1の固定磁性層を構成する第1の磁性層および第2の磁性層の厚さをそれぞれ、t1およびt2とし、前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層の厚さをそれぞれ、t3およびt4とした場合、
    t1=t3、t2=t4であり、
    t1とt2との膜厚の差の絶対値である|t1−t2|値が2〜6Åであり、
    t3とt4との膜厚の差の絶対値である|t3−t4|値が2〜6Åであり、
    前記第2の固定磁性層を構成する第3の磁性層および第4の磁性層は、その磁歪定数の絶対値が、5×10-6以下の物性を備えてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 前記t1、t2、t3、およびt4の膜厚が5〜30Åの範囲内である請求項1に記載の薄膜磁気ヘッド。
  3. 前記t1、t2、t3、およびt4の膜厚が10〜18Åの範囲内である請求項1に記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 前記第1の反強磁性層はIrMnである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜の積層厚さは150〜350Åである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  6. 前記デュアル・スピンバルブ型磁気抵抗効果多層膜は、下地層側から第1の反強磁性層、第1の固定磁性層、第1の非磁性層、軟磁性層、第2の非磁性層、第2の固定磁性層を順次備えてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  7. 前記請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された薄膜磁気ヘッドを含み、記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
    前記スライダを弾性的に支持するサスペンションと、
    を備えてなることを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
  8. 前記請求項1ないし請求項6のいずれかに記載された薄膜磁気ヘッドを含み、回転駆動される円盤状の記録媒体に対向するように配置されるスライダと、
    前記スライダを支持するとともに前記記録媒体に対して位置決めする位置決め装置と、
    を備えてなることを特徴とするハードディスク装置。
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