JP3896202B2 - ゴルフシューズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、靴底に滑り防止用の突起を設けたゴルフシューズに関し、特に歩行時におけるクッション性に優れるとともに、スイング時において高い滑り止め効果を有するゴルフシューズに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフシューズの靴底に設けられる滑り防止用のスパイクとしては、いわゆるスパイクシューズに使用される円錐状、円錐台状等の金属鋲を備えた金属スタッド、いわゆるスパイクレスシューズに使用される円柱状、円錐台状等のラバースタッド、及び、いわゆるソフトスパイクシューズに使用される笠状突起部を備えたプラスチック製ソフトスパイクが知られている。金属スタッド及びソフトスパイクは靴底にねじによって着脱可能に取り付けられるものであり、ラバースタッドは靴底の一部を突出させて靴底と一体に成形したものである。これらのスパイクは、歩行時、プレイ時を通じて体重が大きく加わる靴底の踵部及び踏付け部(土踏まず部と爪先部との間の区域)を中心に靴底に多数設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述したゴルフシューズ用の各種スパイクの内、金属スタッドの金属鋲は硬質材料からなる突起物であるため、この金属スタッドを使用したゴルフシューズは芝生面に対するグリップ性が良く、したがって各ホールでプレイや歩行を行う上で最も目的に適しているが、その反面コース内の舗装路やクラブハウスの床等の硬い面を歩くときはスタッドによる突き上げによって歩きにくく、疲れ易い上、グリーン上の芝生を引っかけて荒らしやすいという欠点がある。
【0004】
ラバースタッドは柔軟性に富むため、これを使用したゴルフシューズは前述の金属スタッドを用いたゴルフシューズのような突き上げに起因する不具合はないが、その反面肝心な各ホールでのプレイ時や歩行時に芝生面に対するグリップ性が不足することがある。
【0005】
また、茸状ソフトスパイクは、上記金属スタッド及びラバースタッドが持つ欠点を有さず、そのため最近注目されつつあるが、靴底に対しては螺着方式であり、かつ地面に対する接触面積が比較的大きい笠状部分を有するため、緩みやすく、プレイ時に脱落することがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、靴底に滑り防止用の突起を設けたゴルフシューズであって、芝生面等の柔らかい地面に対するグリップ性及び舗装路、床等の硬い面での歩行性のいずれにも優れるとともに、特にスイング時における地面に対するグリップ性を高めたゴルフシューズを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、靴底を前方から順に爪先部、踏付け部、土踏まず部及び踵部と区分したとき、踏付け部及び/又は踵部に複数の滑り止めスタッドがゴルフクラブのスイング時に靴底に加わる捻り方向として設定された円軌道にほぼ沿って配列されているとともに、前記複数の滑り止めスタッドの内の少なくとも靴底外側区域に配置された滑り止めスタッドは、前記円軌道におけるゴルフクラブのスイング時に靴底に加わる捻り方向の上流側に緩傾斜側面、下流側に急傾斜側面を有することを特徴とするゴルフシューズを提供する。
【0008】
スイング時に靴底に加わる捻りの方向は、通常、円方向に類似した方向となるが、本発明のゴルフシューズでは、スイング時に体重が大きく加わる靴底の踵部及び/又は踏付け部において、複数の滑り止めスタッドを、ゴルフクラブのスイング時に靴底に加わる捻り方向として設定された円軌道にほぼ沿って配列してある。そのため、スイング時に靴底に加わる捻りを円軌道上のスタッドによって効果的に受け止めることができる。しかも、本発明では、上記スタッドの内の、少なくともスイング時に体重が最も大きく加わる靴底外側区域に配置されたスタッドを、上記円軌道におけるスイング時に靴底に加わる捻り方向の上流側に緩傾斜側面、下流側に急傾斜側面を有するものとしてある。そのため、上記急傾斜側面によって靴底に加わる捻りをしっかりと受け止めることができる。したがって、本発明のゴルフシューズによれば、スイング時における靴底の滑りが良好に抑制され、地面に対するグリップ性が向上するものである。
【0009】
以下、本発明に付きさらに詳しく説明する。本発明のゴルフシューズに用いる靴底は、単層構造としてもよく、内層と地面に接する外層とからなる2層構造としてもよい。靴底を単層構造とする場合、靴底の材質としては、ゴム又はゴム様弾性材料等を挙げることができ、より具体的には、非発泡のゴム類、サーモプラスチックウレタン、ナイロン等を好適に用いることができる。単層構造の靴底の材質の硬度は、JIS A硬度で55〜95゜、特に65〜85゜とすることが好ましい。
【0010】
靴底を2層構造とする場合、通常、内層を外層よりも軟らかくする。内層の材質としては、例えば、発泡ゴム、発泡プラスチックといった弾性発泡体や、非発泡のゴム類等を挙げることができ、より具体的には、EVA(エチレンビニルアセテート)発泡体、通常の発泡ゴム、発泡ポリウレタン等を好適に用いることができる。内層の材質の硬度は、アスカ−C硬度で50〜90゜、特に60〜80゜とすることが好ましい。外層の材質としては、ゴム又はゴム様弾性材料を用いることが好ましく、より具体的には、非発泡のゴム類、サーモプラスチックウレタン、ナイロン等を好適に用いることができる。外層の材質の硬度は、JIS A硬度で55〜95゜、特に65〜85゜とすることが好ましい。
【0011】
滑り止めスタッドは、必ずしも限定されないが、靴底の一部を突出させて靴底と一体に成形することが好ましい。また、滑り止めスタッドの緩傾斜側面の傾斜角度は20〜70゜、特に30〜60゜、急傾斜側面の傾斜角度は60〜90゜、特に70〜80゜とすることが適当である。ただし、上記角度範囲内において、急傾斜側面の傾斜角度を緩傾斜側面の傾斜角度より大きくすることが必要である。
【0012】
さらに、滑り止めスタッドの急傾斜側面の付け根部分の幅は、緩傾斜側面の付け根部分の幅より大きくすることが好ましい。このようにすると、捻りを受け止める急傾斜側面の基部の剛性が高くなるため、急傾斜側面によって靴底に加わる捻りをよりしっかりと受け止めることが可能となる。
【0013】
滑り止めスタッドの形状に限定はないが、好適な例としては、例えば後述する実施形態例に示すように、基端部が縦長の台形状(長辺より高さが長い台形状)をなし、先端に四角形の底面が設けられた先細り突起であって、台形状基端部の短辺と底面との間に緩傾斜側面、台形状基端部の長辺と底面との間に急傾斜側面が形成されたものが挙げられる。この滑り止めスタッドは、急傾斜側面の付け根部分の幅が緩傾斜側面の付け根部分の幅より大きくなり、しかもスタッドの円軌道周方向に沿った長さが径方向に沿った長さより大きくなるので、捻りを受け止める急傾斜側面の基部の剛性が極めて高くなり、そのため急傾斜側面によって靴底に加わる捻りを強固に受け止めることができる。
【0014】
上記滑り止めスタッドの好適な寸法は下記の通りである(図2,3参照)。
・緩傾斜側面の傾斜角度α:20〜70゜
・急傾斜側面の傾斜角度β:60〜90゜
・緩傾斜側面の付け根部分の幅a:4〜5mm
・急傾斜側面の付け根部分の幅b:6〜7mm
・台形状基端部の長さc:7〜10mm
・底面の幅d:2〜3mm
・底面の長さe:2〜3mm
・スタッドの高さf:5〜6mm
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態例に係るゴルフシューズの左足用靴の靴底を示す裏側から見た平面図である。本例のゴルフシューズの靴底2は、JIS A硬度80゜の非発泡のゴムからなる単層構造のものである。また、本例の靴底2の外表面には、靴底2の一部を突出させて形成した多数の滑り止めスタッドが設けられている。
【0016】
この場合、本例では、靴底2を前方から順に爪先部、踏付け部、土踏まず部及び踵部と区分したとき、踏付け部及び踵部の両方に複数の滑り止めスタッドがほぼ円軌道に沿って配列されている。すなわち、踏付け部においては、第1円軌道4に沿って8個の第1スタッド6がほぼ等間隔で配列され、その内側の同心の第2円軌道8に沿って第1スタッド6より小さい7個の第2スタッド10がほぼ等間隔で配列されている。また、踵部においては、第3円軌道12に沿って8個の第3スタッド14がほぼ等間隔で配列され、その内側の同心の第4円軌道16に沿って第3スタッド14より小さい7個の第4スタッド18がほぼ等間隔で配列されている。この場合、第1スタッド6と第3スタッド14、第2スタッド10と第4スタッド18は、それぞれ同じ形状、大きさとしてある。
【0017】
図2は前記第1〜第4スタッド6,10,14,18を示す拡大平面図、図3は同スタッドの拡大側面図である。第1〜第4スタッドは、基端部20が縦長の台形状をなし、先端に四角形の平坦な地面に接する底面22が設けられた先細り突起である。そして、台形状基端部20の短辺21と底面22との間に緩傾斜側面24、台形状基端部20の長辺23と底面22との間に急傾斜側面26が形成されている。したがって、急傾斜側面26の付け根部分の幅は緩傾斜側面24の付け根部分の幅より大きい。また、緩傾斜側面24と急傾斜側面26との間には、傾斜角度がほぼ等しい2つの傾斜面28が形成されている。
【0018】
本例において、第1〜第4スタッド6,10,14,18は、それぞれ第1〜第4円軌道4,8,12,16の周方向にほぼ沿って延びている。すなわち、第1〜第4スタッドの長手方向は第1〜第4円軌道の周方向とほぼ一致している。また、第1〜第4スタッドは、スイング時に靴底に加わる捻り方向Xの上流側に緩傾斜側面24、下流側に急傾斜側面26が位置するように配置されている。この場合、図1に示したのは左足用靴の靴底であるから、右利きプレーヤーの場合はダウンスイングからフィニッシュにかけて靴底には上記X方向の捻りが加わる。そのため、本例では、上記方向Xをスイング時に靴底に加わる捻り方向に設定してある。
【0019】
本例において、第1〜第4スタッドの寸法は下記の通りである。
第1、第3スタッド
・緩傾斜側面24の傾斜角度α:45゜
・急傾斜側面26の傾斜角度β:68゜
・緩傾斜側面24の付け根部分の幅a:5mm
・急傾斜側面26の付け根部分の幅b:7mm
・台形状基端部20の長さc:10mm
・底面22の幅d:3mm
・底面22の長さe:3mm
・スタッド6,14の高さf:5mm
【0020】
第2、第4スタッド
・緩傾斜側面24の傾斜角度α:51゜
・急傾斜側面26の傾斜角度β:79゜
・緩傾斜側面24の付け根部分の幅a:4mm
・急傾斜側面26の付け根部分の幅b:6mm
・台形状基端部20の長さc:7mm
・底面22の幅d:2mm
・底面22の長さe:2mm
・スタッド10,18の高さf:5mm
【0021】
本例では、踏付け部において、第2円軌道8の内側の同心の第5円軌道28に沿って4個の第5スタッド30がほぼ等間隔で配列され、踵部において、第4円軌道16の内側の第6円軌道32に沿って4個の第6スタッド34がほぼ等間隔で配列されている。この場合、第5スタッド30と第6スタッド34は同じ形状、大きさとしてある。
【0022】
第5及び第6スタッド30,34は、図4に示すように、基端部36が縦長の台形状をなし、先端に台形の平坦な地面に接する底面38が設けられた先細り突起である。そして、基端部36と底面38との間には、傾斜角度がほぼ等しい4つの傾斜面40が形成されている。また、第5及び第6スタッドの高さは、第1〜第4スタッドの高さとほぼ等しくしてある(第1〜第4スタッドの高さはほぼ等しい)。
【0023】
図5は本発明の一実施形態例に係るゴルフシューズの右足用靴の靴底を示す裏側から見た平面図である。本例のゴルフシューズは、図1に示したゴルフシューズに用いたのと同じ材質からなる靴底2に、図1に示したのと同じ滑り止めスタッドを実質上対称に配列したものである。したがって、図5において、図1と実質的に同じ部分には、同一参照符号を付してその説明を省略する。この場合、図5に示したのは右足用靴の靴底であるから、右利きプレーヤーの場合はバックスイングからトップオブスイングにかけて靴底には図中X方向の捻りが加わる。そのため、本例では、上記方向Xをスイング時に靴底に加わる捻り方向に設定してある。
【0024】
上記各例のゴルフシューズは、スイング時に体重が大きく加わる靴底の踵部及び踏付け部において、緩傾斜側面及び急傾斜側面を有する複数の滑り止めスタッドを、スイング時に靴底に加わる捻り方向の上流側に緩傾斜側面、下流側に急傾斜側面が位置するようにほぼ円軌道に沿って配列してある。しかも、急傾斜側面の付け根部分の幅を緩傾斜側面の付け根部分の幅より大きくしてあるとともに、スタッドの円軌道周方向に沿った長さを径方向に沿った長さより大きくしてある。したがって、上記各例のゴルフシューズは、上記滑り止めスタッド、特にその急傾斜側面がスイング時に靴底に加わる捻りを強固に受け止め、スイング時における靴底の滑りを良好に抑制して地面に対するグリップ性を向上させることができる。
【0025】
なお、上記各例では、第1〜第4スタッドの全てについて、捻り方向Xの上流側に緩傾斜側面、下流側に急傾斜側面が位置するように配置したが、本発明においては、少なくとも靴底外側区域(小指側の区域)のスタッドを上記のように配置すればよい。また、本例では、緩傾斜側面及び急傾斜側面を有する滑り止めスタッドを踏付け部及び踵部の両方に配列したが、どちらか一方のみに配列してもよい。さらに、本例では、踏付け部及び踵部において、緩傾斜側面及び急傾斜側面を有する滑り止めスタッドの配列円軌道としてそれぞれ2つの同心円を設定したが、これに限られるものではなく、例えば上記円軌道は1つの円でもあってもよく、3つ以上の同心円であってもよく、2つ以上の非同心円であってもよい。また、爪先部と土踏まず部には、必要に応じ、図2〜図4に示した形状の突起や、円錐台状等の他の形状の突起を適宜配置することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明のゴルフシューズは、芝生面等の柔らかい地面に対するグリップ性及び舗装路、床等の硬い面での歩行性のいずれにも優れるとともに、特にスイング時において良好な地面に対するグリップ性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例に係るゴルフシューズの左足用靴の靴底を示す裏側から見た平面図である。
【図2】緩傾斜側面及び急傾斜側面を有する滑り止めスタッドの一例を示す平面図である。
【図3】図2に示したスタッドの側面図である。
【図4】スタッドの他の例を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態例に係るゴルフシューズの右足用靴の靴底を示す裏側から見た平面図である。
【符号の説明】
2 靴底
4 第1円軌道
6 第1スタッド
8 第2円軌道
10 第2スタッド
12 第3円軌道
14 第3スタッド
16 第4円軌道
18 第4スタッド
20 台形状基端部
21 短辺
22 底面
23 長辺
24 緩傾斜側面
26 急傾斜側面
Claims (4)
- 靴底を前方から順に爪先部、踏付け部、土踏まず部及び踵部と区分したとき、踏付け部及び/又は踵部に複数の滑り止めスタッドがゴルフクラブのスイング時に靴底に加わる捻り方向として設定された円軌道にほぼ沿って配列されているとともに、前記複数の滑り止めスタッドの内の少なくとも靴底外側区域に配置された滑り止めスタッドは、前記円軌道におけるゴルフクラブのスイング時に靴底に加わる捻り方向の上流側に緩傾斜側面、下流側に急傾斜側面を有することを特徴とするゴルフシューズ。
- 滑り止めスタッドの緩傾斜側面の傾斜角度が20〜70゜、急傾斜側面の傾斜角度が60〜90゜である請求項1に記載のゴルフシューズ。
- 滑り止めスタッドの急傾斜側面の付け根部分の幅が緩傾斜側面の付け根部分の幅より大きい請求項1又は2に記載のゴルフシューズ。
- 滑り止めスタッドは、基端部が縦長の台形状をなし、先端に四角形の底面が設けられた先細り突起であって、台形状基端部の短辺と底面との間に緩傾斜側面、台形状基端部の長辺と底面との間に急傾斜側面が形成されたものである請求項1、2又は3に記載のゴルフシューズ。
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