JP3896150B2 - 電子顕微鏡の球面収差補正装置 - Google Patents
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球面収差補正光学系5は、6極子場を発生する多極子8、9間に軸対称レンズ10、11を配置したものである。多極子8、9の各極は相互に光軸に対して位相が一致し、光軸と垂直な面内における光軸を中心とした回転関係をもたないように配置される。軸対称レンズ10、11は、焦点距離が同じfで、多極子8と軸対称レンズ10との間の距離がf、軸対称レンズ10、11間の距離が2f、軸対称レンズ11と多極子9との間の距離がf、多極子8、9の励起強度Kと光軸方向の幅(サイズ)Zがそれぞれ同じであるとき、球面収差が補正される。
また、多極子8、9は光軸と垂直な面内における光軸を中心とした回転関係を持たないように配置されなければならないが、実際には、製作、組み立て精度内である程度の回転関係が混入するのはやむを得ず、また、軸対称レンズ10、11を通過する電子は、光軸と垂直な面内における回転作用を受け、コイル極性を逆にするなどしても、ある程度の回転関係が混入するのはやむを得ない。従って、多極子の励磁を制御し、作用場の位相角度を回転させるなどして、混入した回転関係を補正する必要が生ずるが、多極子をこのように使用した場合、多極子の高次収差が発生し易くなってしまう。
(1)球面収差補正装置を構成する2つの多極子間の光軸に垂直な面内での回転関係を、多極子の位相角を変化させることなく補正できるので、多極子の位相変化に伴う高次収差の発生を防止することができる。
(2)照射系の球面収差が補正できるため、微小電子プローブが得られ、これにより微小領域の特性X線分析が可能となり、高分解能の観察が可能となる。
同じく本発明に電子顕微鏡の結像系に適用すれば、以下のような効果が達成できる。
(3)結像系の球面収差が補正できるため、高分解能の透過電子顕微鏡像の観察が可能となる。
図1は本発明による電子顕微鏡の球面収差補正装置の第1実施例を説明する図であり、図3と同一番号は同一内容を示している。本実施例は、多極子8、9が電子軌道に対して回転関係を持たざるを得ないことの解決策として、軸対称レンズ10、11間にできる電子軌道の集光面内に、新たに回転補正レンズ12を配置したものである。
光源1からの電子線2が、絞り3を有する集束レンズ4を通り、光軸に平行となって球面収差補正光学系5’に入射し、補正光学系5’から出射した光軸に平行な電子線が対物レンズ6を通して試料7に照射され、補正光学系5の軸対称レンズ10、11の焦点距離が同じfで、多極子8と軸対称レンズ10との間の距離がf、軸対称レンズ10、11間の距離が2f、軸対称レンズ11と多極子9との間の距離がf、多極子8、9の励起強度Kと光軸方向の幅(サイズ)Zが同じで、かつ多極子8、9が光軸と垂直な面内における光軸を中心とした回転関係をもたないように配置されたとき球面収差が補正されるのは図3の場合と同じである。
球面収差補正光学系5’は、6極子場を発生する多極子8、9間に配置された軸対称レンズ10、11間にできる電子軌道の集光面内に、回転補正レンズ12が配置される。この回転補正レンズ12は集光面内に配置されることによって、電子ビームは光軸を通ることになる。このため回転補正レンズ12は電子ビームに集束作用を与えないようにできる。一方、この回転補正レンズ12は磁場型レンズを採用することによって、電子ビームに回転作用を与えることができる。このように、この回転補正レンズ12は、電子に与える主な作用は、通常のレンズのような集束作用は持たず、光軸と垂直な面内での回転作用のみである。このときの回転角度は磁場型レンズの励磁電流に比例する。
従って、多極子8、9が製作、組み立て精度等である程度の電子軌道に対する回転関係があっても、従来のように多極子の位相角を制御することで補正するのではなく、回転補正レンズ12のレンズ電流を変化させることで混入した回転関係を補正することができる。このため多極子の位相制御に付随する有害な高次収差が発生するのを防止することができる。
図2は本発明の第2実施例を説明する図であり、図1、図3と同一番号は同一内容を示している。本実施例の収差補正光学系5”は、軸対称レンズ10’、11’の焦点距離をそれぞれf1、f2、多極子8’と軸対称レンズ10’との間の距離をf1、軸対称レンズ10’、11’間の距離をf1+f2、軸対称レンズ11’と多極子9’との間の距離をf2、多極子8、9の励起強度をそれぞれK1、K2、多極子8、9の光軸方向の幅(サイズ)をそれぞれZ1、Z2としたとき、多極子を従来と同様に6極子場として作用させた場合の解析計算の結果、光軸と平行に入射する電子軌道の光軸からの距離をr、この電子が補正光学系5”を射出する時点において、補正光学系5”を通過したことで与えられた電子線軌道の傾きをRとすると、Rは下式で表される。
R=r2(cos3θ)(K1Z1(f1/f2) −K2Z2(f2/f1)2)
+r3(K12Z13(1/3)(f1/f2) +K22Z23(1/3)(f1/f2)3)
−K1K2Z2Z1(f2/f1)2r3(cos3θ)2(Z2 (f1/f2)2−Z1) (1)
となる。
図4は、多極子として6極子を用いた場合のrとθとを説明する図である。図は光軸に垂直な多極子8’を通る断面図である。Oは光軸、Aは電子が多極子8’に入射する際の位置、gは光軸を中心とした回転を考えたときの基準となる方向を示している。rは光軸Oからの距離、θは電子が多極子8’に入射する際の位置Aの方向を示すための、基準gからの角度である。
さて上記(1)式の第1項は、2次3回対称の収差で、微小電子プローブの形成のためには0にすべき項である。(1)式の第2項は、この収差補正光学系5”が形成する3次軸対称の収差(−δ)であって、この収差(−δ)を用いて電子顕微鏡の照射系の球面収差(δ)をキャンセルさせる項である。(1)式の第3項は、3次6回対称の収差で、微小電子プローブの形成のためには0にすべき項である。従って、球面補正の条件は以下のようになる。
K1Z1(f1/f2) −K2Z2(f2/f1)2=0 (2)
r3(K12Z13(1/3)(f1/f2) +K22Z23(1/3)(f1/f2)3)=−δ (3)
Z2 (f1/f2)2−Z1=0 (4)
ここで、δは球面収差による軌道の傾きの変化分(r3に比例)である。6極子場の強度を表すK1、K2は多極子に流れる電流に比例する。ここで
a=f2/f1 (5)
とすると、(2)式、(4)式は、それぞれ
Z2=a2 Z1 (6)
K2=K1/a5 (7)
となる。
従来の球面収差補正装置は、a=1で、f1=f2、Z2=Z1、K1=K2であったため、(4)式、及び(2)式は自然に0となり、(3)式で決まるK1(=K2)で球面収差を補正するものであった。
これに対して本発明では、まず軸対称レンズ10’、11’の焦点距離f1、f2を異なる値に定め、異なるf1、f2の値に対する(4)式からの要請で決まるZ2、Z1の関係が必然的に決まり、f1、f2の関係と、Z1、Z2の関係と(2)式の関係からK1、K2の関係が必然的に決まり、最終的に式(3)の要請からk1、k2の値が決まり、球面収差を補正するものである。本発明においては、f1、f2の比を任意に設計できるため、補正系による電子軌道の倍率変化を与えることができ、補正光学系に無限遠結像とした場合、1/aの倍率をもつレンズの機能を持たせることができる。
なお、第1実施例における回転補正レンズ12は、第2実施例の場合にも適用可能であることは言うまでもなく、図5に示す如くに、軸対称レンズ10’、11’間にできる電子軌道の集光面内に回転補正レンズ12を配置することにより、多極子8’、9’に電子軌道に対する回転関係があってもこれを補正することが可能である。
更に、上記の図1〜3および図5用いた説明では、1は光源、4は集束レンズ、6は対物レンズ、7は試料として電子顕微鏡の照射系の球面収差補正装置について説明したが、上記球面収差補正装置は電子顕微鏡の結像系の球面収差補正装置としても有効である。即ち、図1〜3および図5において、1を試料、4を結像系の対物レンズ、6を結像系の最初の中間レンズ、7を最初の中間レンズ6で形成される像面とすれば、結像系の球面収差補正装置として同様に動作することが説明できる。以下に本件発明の球面収差補正装置の電子顕微鏡への適用例を図6を用いて説明する。
図6は電子顕微鏡において、本件発明の球面収差補正装置を用いる場合を説明する図である。21は電子ビームを発生させ所望のエネルギーを与える電子銃、22は電子ビームを集束するための複数のレンズから成る集束レンズ、23は電子ビームを二次元的に偏向走査する偏向器、24は電子ビームを試料25に照射するための対物レンズである。これら21から24までで構成された電子光学系を照射系と呼ぶ。
この照射系において、電子ビームを試料25に照射する形態には幾つかの使われ方がある。第1は電子ビームを細く集束して試料25上の所望の位置に照射する方法、第2は細く集束したて電子ビームを偏向器23を用いて試料25上の所望の領域を二次元的に走査しながら照射する方法、第3は、電子ビームを細く集束したり走査はせずに、試料25上の所望の領域に一様な電子ビーム(所望の領域と等しい太さの電子ビーム)を照射する方法などである。
更に図6において、26は、例えば上記第3の方法で電子ビームを試料25に照射し、試料25を透過した電子ビームの透過像を拡大するための対物レンズ、27は対物レンズ26で拡大された透過像を更に拡大するための複数のレンズから成る中間レンズ、28は拡大された透過像を蛍光スクリーン29上に投影するための投影レンズである。これら26から29までで構成された電子光学系を結像系と呼ぶ。また、これら電子銃21以下は全て真空雰囲気中に配置されている。なお、上記は説明の都合で、対物レンズは24と26の2個から成るかのように説明したが、通常1個のレンズで対物レンズ24と対物レンズ26の2つの働きができるようになっている。
また更に図6において、30は本件発明の球面収差補正装置5’、5”、5’’’の何れかを照射系に適用した場合の球面収差補正装置であり、40は本件発明の球面収差補正装置5’、5”、5’’’の何れかを結像系に適用した場合の球面収差補正装置である。そして、球面収差補正装置30は照射系の第1と第2の照射方法において、集束した電子ビームの収差を補正してより微小な電子プローブを得るものであり、球面収差補正装置40は照射系の第3の照射方法において、結像系の対物レンズ26の収差を補正してより高分解能な拡大像を得るものである。
Claims (1)
- 2つの多極子間に2つの軸対称レンズを配置した電子顕微鏡の球面収差補正装置において、2つの多極子間の光軸に垂直な面内での回転関係を補正するため、軸対称レンズ間にできる電子軌道の集光面内に、光軸と垂直な面内で電子に回転作用を与える回転補正レンズを配置したことを特徴とする電子顕微鏡の球面収差補正装置。
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