JP3895983B2 - 合成樹脂成形用金型とその製造方法および合成樹脂成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂成形用金型とその製造方法および合成樹脂成形方法に関するものであり、特に、キャビティ表面を交互に加熱および冷却して成形するヒートサイクル法に適した合成樹脂成形用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の射出成形において溶融樹脂を金型のキャビティに充填する際に金型温度を高くしておくと、樹脂の流動性が良いのでキャビティ表面の転写が良好でありウェルドラインが目立たないことから、溶融樹脂をキャビティに充填する間だけキャビティ表面を加熱するヒートサイクル法が実用化されている。
【0003】
本出願人は、先に特願平11−375069号(特開2001−18229号)によって、次のような構成を有する、ヒートサイクル法が適用される合成樹脂成形用金型を提案している。
【0004】
すなわち、この合成樹脂成形用金型は、図3に示すように、母型21と、その内部に組み込まれている入れ子22とからなる。この入れ子22にキャビティ表面23が形成され、キャビティ表面23の近傍には、加熱媒体と冷却媒体とが交互に繰り返して流入される熱媒体流路24が設けられている。入れ子22と母型21の間には、空気や熱伝導率の低い材料からなる断熱層25が設けられている。
【0005】
通常、熱媒体流路24は、キャビティ表面23の温度むらを小さくするために、できるだけキャビティ表面23に沿って直線的に切削して形成されている。しかし、湾曲部を有するキャビティでは、熱媒体流路24をキャビティ表面23に沿わせるには限界がある。
【0006】
そこで、金型を、キャビティ表面を有し、このキャビティ表面に沿う形状に形成されている表面材と、表面材を支持する補強材とに分割して製作し、この表面材または補強材の対向面(接合面)に熱媒体流路となる溝を掘って開口状態にしておき、表面材と補強材とを接合して構成する合成樹脂成形用金型が、実願昭53−133101号(実開昭55−49881号)のマイクロフィルム、特開昭64−27920号公報、特開平1−115606号公報、特開平3−244518号公報などに提案されている。この合成樹脂成形用金型は、表面材と補強材とを接合することによって、溝の開口部が閉じられて両者の接合面間に熱媒体流路が形成される。なお、特開平1−115606号公報にはヒートサイクル法が適用される金型が開示されており、前記したその他の公報には、冷却のみを行う通常の金型が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の構成の金型においては、熱媒体(加熱媒体および冷却媒体)の漏れがないように表面材と補強材とを接合する方法が難しく、特に、熱媒体流路に加熱媒体と冷却媒体とを交互に供給してキャビティ温度を繰り返し上下するヒートサイクル法においては、信頼性や耐久性に問題がある。
【0008】
熱媒体の漏れに関しては、熱媒体流路を管により構成することで信頼性や耐久性を得ることができる。この構成は、キャビティ表面を有する表面材を電鋳殻により形成している金型に多用されている。例えば、実開昭53−37760号公報に開示されている例では、図4に原理図を示すように、キャビティ表面31を有する表面材である電鋳殻32の裏面(接合面)に、管33を固着材34で固着したのち、エポキシ樹脂などからなる補強材35を接合している。また、実開昭57−162817号公報に開示されている例では、図5に原理図を示すように、キャビティ表面41を有する表面材である電鋳殻42の裏面(接合面)に、管43を固着材44で固着したのち、通常の金型材料からなる補強材45に接合しており、この際に、管43を補強材45の溝46にはめ込んでいる。全ての溝46は、金型の対接面(パーティングライン)に対して直角に形成されている。
【0009】
図4に示すような構成は、補強材自体の強度が不十分であったり、樹脂固化時の収縮歪みに起因して補強強度が低下することによって、成形時の圧力に耐えられないおそれがあるという問題を有している。
【0010】
また、後者の構成は、図5(a)に示すようにキャビティ表面41が平面である場合には、補強材45が電鋳殻42に十分に接触して補強機能を持つ。しかし、図5(b)に示すように、キャビティ表面41が凹状の曲面である場合には、キャビティ表面41が金型の対接面(パーティングライン)に対して大きな角度を有する部分、特に直角に近い角度を有する部分では、電鋳殻42に対する補強材45の接触面積が小さくなり、部分的には殆ど接触不能になる。さらに、図5(c)に示すように、キャビティ表面41が凸状の曲面である場合には、電鋳殻42に対する補強材45の接触面積がさらに小さくなり、接触不能な部分が多くなる。図5(b),(c)に示すような構成では、補強材45と電鋳殻42の接合が不十分で、補強材45が電鋳殻42に対して補強機能を持たなくなる。
【0011】
そこで本発明は、管からなる熱媒体流路を有する構成における従来の問題を解決し、表面材に対する補強機能が大きく、しかも熱媒体の漏れに関して信頼性および耐久性に優れた合成樹脂成形用金型とその製造方法および合成樹脂成形方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の合成樹脂成形用金型は、キャビティ表面を有する表面材と、表面材に接合されてそれを補強する補強材との間に、熱媒体流路となる管と、補間材とを挟み込むことを特徴とする。補間材は、管と管との間の間隔を規定するとともに、管が成形圧力で潰されるのを防ぐ。なお、補間材と管との間の隙間は、熱伝導の良い封止材で埋められている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態および参考例について図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)には、参考例である合成樹脂成形用金型が示されている。この金型は、キャビティ表面1を有する表面材2と、この表面材2を補強する補強材3が接合された構成である。表面材2はキャビティ表面1に沿う形状を有しており、補強材3に対する接合面に、この接合面に直角な方向に溝4が形成されている。そして、この溝4内に熱媒体流路となる管5が埋め込まれ、さらに溝4の内壁と管5との間の隙間が、熱伝導の良い封止材6により埋められている。
【0017】
図1(b)には、参考例である合成樹脂成形用金型の変形例が示されている。この金型は、図1(a)に示す構成と異なり、補強材3の接合面に、接合面に直角に溝4が形成されて管5が配設され、封止材6により埋められている。このように、溝4の形成および管5の配設は、表面材2と補強材3のいずれに行われてもよい。ただし、製造工程の容易さを考慮すると、凸形状の部分に溝4を形成し管5を配設することが好ましい。
【0018】
この合成樹脂成形用金型を用い、図示しない型閉じ状態で他の金型7(図1(a)参照)との間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂が注入され固化されて、合成樹脂成形品が生産される。この成形工程において、熱媒体流路となる管5に加熱媒体と冷却媒体とが交互に供給されてヒートサイクル法が実施される。管5により熱媒体流路が構成されているため、熱媒体が漏れるおそれがない。そして、管5はキャビティ表面1に沿う形状に形成されているため、キャビティ表面1の温度むらが小さくなる。また、溝4が接合面に対して直角の方向に彫り込まれているため、表面材2と補強材3との接合面積が大きく、補強材3による表面材2の補強効果が大きい。
【0019】
表面材2の厚みは、加熱時あるいは冷却時にキャビティ温度が均一になるように、管5の径と、隣り合う管5の間の間隔とによって決められ、キャビティ表面1に沿って均一であることが好ましい。通常、表面材2の厚さは管5の径の1〜5倍程度である。
【0020】
また、溝4の深さは、管5の位置を正確に規定するために管5の径に等しいことが好ましいが、実際には、封止材6で埋める時の余裕を見込んだ大きさとされる。溝4の間隔は、管5の径の1〜5倍程度である。溝4の長手方向の形状は、直線状、曲線状、スパイラル状などにすることができる。また、溝4の断面形状は、半円形、正方形、長方形などにすることができる。
【0021】
図2に本発明の一実施形態の合成樹脂成形用金型が示されている。
【0022】
この金型においては、キャビティ表面11を有する表面材12と、この表面材12を補強する補強材13との間に、熱媒体流路となる管14と、隣り合う管14の間などに位置する補間材15とが挟み込まれている。そして、補間材15と管14との間の隙間が、熱伝導の良い封止材16により埋められている。
【0023】
本実施形態の合成樹脂成形用金型によっても、前記した参考例と同様に、熱媒体が漏れるおそれがなく、キャビティ表面11の温度むらが小さくなる。そして、補間材15を介して表面材12と補強材13とが強固に接合され、補強材13による表面材12の補強効果が大きい。
【0024】
図示しないが、管14および補間材15により構成される層と、補強材13の表面との間に、断熱材として、熱伝導率の小さい耐熱プラスチックやセラミックなどを挟んでもよい。
【0025】
表面材12の厚みは、前記の通り、通常は管14の径の1〜5倍程度であり、補間材15の厚みおよび間隔も、第1の実施形態の溝4と同様に、管14の径の1〜5倍程度である。
【0026】
以上説明した本発明の実施形態および参考例の合成樹脂成形用金型において、表面材2,12と補強材3,13の材質としては、強度などの観点から通常の金型材料が好ましく、管5,14の材質としては、熱伝導性と曲げ易さの点から銅やアルミニウムなどが好ましく、補間材15の材質としては、圧縮強度や熱伝導性や曲げ易さの点から銅やアルミニウムなどが好ましい。しかし、各部材の材質はこれらに限定されるものではない。
【0027】
管5と溝4の内壁との間の隙間、あるいは管14と補間材15の間の隙間を埋める封止材6,16としては、市販のペースト材などが用いられる。この封止材6,16は、これらの隙間を埋めるためのみならず、表面材2と補強材3の接合面の隙間や、表面材12および補強材13の接合面と補間材15との隙間を埋めるためにも用いられ得る。その場合、接着性の封止材を用いることが好ましい。ただし、成形圧力などにより表面材2,12と補強材3,13が十分強固に接合される場合には、接着性を持たない封止材を用いてもよい。
【0028】
本発明の合成樹脂成形用金型は、入れ子形式のものであっても、入れ子形式のものでなくてもよい。また、前記した実施形態では、キャビティ表面を交互に加熱および冷却するヒートサイクル法を行うための合成樹脂成形用金型を示したが、ヒートサイクル法を行わない通常の金型に本発明の構成を採用してもよい。さらに、この金型が適用される成形方法としては、射出成形法、トランスファ成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法などが含まれる。
【0029】
本発明の合成樹脂成形用金型に供給される加熱媒体としては、飽和蒸気、過熱蒸気、加圧水、温水などが用いられ、冷却媒体としては冷水などが用いられる。
【0030】
本発明の合成樹脂成形用金型により成形される原料樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、およびこれらのアロイまたはフィラー配合物が用いられる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、加工しやすく、熱媒体の漏れがなく、キャビティ表面を有する表面材の補強機能に優れた合成樹脂成形用金型を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は参考例の合成樹脂成形用金型の要部断面図であり、(b)はその変形例の要部断面図である。
【図2】 本発明の一実施形態の合成樹脂成形用金型の要部断面図である。
【図3】合成樹脂成形用金型の第1の従来例の断面図である。
【図4】合成樹脂成形用金型の第2の従来例の要部断面図である。
【図5】(a)は合成樹脂成形用金型の第3の従来例の要部断面図であり、(b)および(c)はその変形例の要部断面図である。
【符号の説明】
1,11 キャビティ表面
2,12 表面材
3,13 補強材
4 溝
5,14 管
6,16 封止材
7 他の金型
15 補間材
Claims (3)
- キャビティ表面を有する表面材と、前記表面材に接合されてそれを補強する補強材とを主構造とする合成樹脂成形用金型において、
前記表面材と前記補強材の間に挟まれている、熱媒体流路となる管、および補間材と、
前記補間材と前記管との間の隙間を埋めている、熱伝導の良い封止材と
を有することを特徴とする合成樹脂成形用金型。 - キャビティ表面を有する表面材と、前記表面材に接合されてそれを補強する補強材とを主構造とする合成樹脂成形用金型の製造方法において、
前記表面材と前記補強材のいずれか一方に、熱媒体流路となる管と、補間材とを載置し、
前記補間材と前記管との間の隙間を、熱伝導の良い封止材で埋め、
前記管と前記補間材を挟み込むように前記表面材と前記補強材とを接合する
ことを特徴とする合成樹脂成形用金型の製造方法。 - 請求項1に記載の合成樹脂成形用金型を他の金型と接合し、両金型の間のキャビティに樹脂を充填する合成樹脂成形方法。
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