JP3895848B2 - ノンリニア映像編集システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビジョン放送に使用する映像編集システムに係り、特に、ランダムアクセスが可能な不揮発性のデジタルデータ記憶装置を用いたノンリニア映像編集システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、映像編集システムとして、長らくビデオテープレコーダ(VTR)が使用されてきた。VTRは、その記録媒体としてシーケンシャルアクセスを行う磁気テープを用いるため、あるシーンを録画した直後に、そのシーンを再生したいような場合に、テープ巻き戻しに伴う待ち時間が発生し、迅速な応答が困難であった。また、録画済みの映像の編集の際にも迅速な編集を行うには、シーケンシャルアクセスおよび低速な記録再生速度が支障となった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、近年、映像のデータ圧縮技術の進歩と相俟って、磁気ディスク装置(ハードディスク装置)のようなより高速なランダムアクセスの可能な記憶媒体を利用したいわゆるノンリニア映像編集システムが使用され始めている。
【0004】
ノンリニア映像編集システムにおいては、外部VTRや回線から一旦デジタイズしてディスク内に取り込んだ映像データについては、タイムラインと呼ばれる編集機能を用いて、迅速に、そのディスク内の映像の任意のシーンを切り出して組み合わせることにより、いわゆるカット編集を行うことができる。この際のシーンの「切り出し」は実際の映像データの複写を行う訳ではなく、単に、元の映像データの部分であるシーンを特定する情報、すなわちディスク上でのそのシーンの開始位置および終了位置の情報(通常、アドレス情報)を保持することにより、等価的に映像データの複写が行える。編集結果の再生時には、このシーン特定情報を参照して、元の映像データの対応する範囲の内容をディスクから読み出すことにより、再生が行われる。タイムライン上でのこのようなカットシーンを時系列に並べた映像データはパッケージと呼ばれる。したがって、一旦ディスクに取り込まれた映像データからカット編集を行うことは、極めて迅速かつ容易に実現される。
【0005】
しかし、テレビ放送用のニュース編集などの用途においては、迅速性の要求のために外部VTRから直接編集を行ってパッケージを作成したい場合がある。このような場合、編集者は外部VTRにセットされたカセット内の取り込みの対象となるシーンを再生してその映像データをディスクに収録(デジタイズ)することにより、同時にそれらのシーンからなるパッケージを作成することになる。
【0006】
従来、少なくともその取り込み対象のシーンを収録している間は、ノンリニア映像編集装置といえども、その時間を短縮することはできず、再生に3分かかるシーンの収録には同じ3分がかかる。その収録中の映像はリアルタイムでモニタで確認することができるが、収録の最中にモニタ上の映像に気になる箇所を発見したり、確認したかった箇所を見逃したりしても、そのシーンの収録が完了するまではその箇所を確認することはできない。勿論、VTRを停止してその箇所を確認することは可能であるが、その場合には、確認の結果何ら問題がなかったとしても、再度そのシーン全体の収録をやりなおさなければならない。逆に、気になる箇所を確認しないで収録が完了した後にその箇所を確認して問題があった場合には、その収録を初めからやり直す必要があるためその収録の時間は無駄になってしまう。1分、1秒を争うニュース編集等の用途ではこの時間の無駄は大きい。しかも、この問題は、そのシーンが長ければ長い程、顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、このようなランダムアクセスの可能な記憶装置を利用した映像編集システムであって、外部VTRから収録を行っている最中であっても、その収録の完了を待つことなく、かつ、その収録を中断することなく、収録済みの映像部分を確認することができるノンリニア映像編集システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によるノンリニア映像編集システムは、映像データを格納するディスクと、このディスクへの映像データの書き込みおよび読み出しを独立に実行する読み書き手段と、外部のビデオテープレコーダの再生出力と前記ディスクの再生出力とを切り替えて外部のモニタへ出力する切替器と、前記読み書き手段および前記切替器を制御する制御手段とを備えたノンリニア映像編集システムにおいて、前記制御手段は、ユーザのEXEC指示に従い、ディスクに既に格納されている各映像シーンの開始位置および終了位置を表わすデータからなるプレイリストにより定められる複数のカットシーンのパッケージに対して、外部のビデオテープレコーダからの再生シーンを上書きまたは追加編集する際、前記プレイリストに従うディスク再生出力と前記ビデオテープレコーダの当該再生シーンの出力とを前記切替器で切り替えて前記モニタへ出力することにより、書き込み中にリアルタイムに編集結果を観察できるようにするとともに、書き込み中にユーザからVIEW指示があったときには、書き込みを停止することなく、前記リアルタイムの編集結果の観察のための動作を中止するとともに、当該編集結果を反映するよう更新した仮のプレイリストに基づいて、再度同じ編集結果を前記ディスクのみからモニタへ再生出力するよう制御を行うことを特徴とする。
【0009】
この発明により、外部VTRから書き込みを行っている最中であっても、その書き込みの完了を待つことなく、かつ、その書き込みを中断することなく、書き込み済みの映像部分を確認することができる。
【0010】
本発明によるノンリニア映像編集システムは、他の見地によれば、デジタル化された映像データを格納する不揮発性のランダムアクセス記憶装置と、該ランダムアクセス記憶装置に対する映像データの書き込み手段およびこれと独立動作可能な読み出し手段と、ユーザの指示に応じて外部のビデオテープレコーダを制御するとともに前記書き込み手段および読み出し手段を制御する制御手段と、該制御手段により制御され、前記ビデオテープレコーダの再生出力と前記ランダムアクセス記憶装置の読み出し手段からの再生出力とを選択的に外部のモニタに出力する切替手段と、前記制御手段は、前記ランダムアクセス記憶装置に既に格納されている映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダの再生出力を上書きまたは追加する編集の際、当該上書きまたは追加の箇所または範囲、および、前記映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダからの上書きまたは追加すべき再生出力の範囲の指定を受けて、当該ビデオテープレコーダの再生出力を前記書き込み手段により前記ランダムアクセス記憶装置に書き込むとき、前記ビデオテープレコーダを制御してテープの指定された範囲の開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から再生を開始すると共に、前記ランダムアクセス記憶装置の読み出し手段を制御して前記指定された箇所または範囲より前記時間だけ前の位置から再生を開始し、かつ、前記読み出し手段からの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、その後、テープの再生が前記指定された範囲の開始位置に達したとき、前記書き込み手段により前記ランダムアクセス記憶装置に格納された映像シーンとは別に新たな映像シーンとして前記ランダムアクセス記憶装置に書き込みを開始するとともに前記テープの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、さらにその後、テープの再生が前記指定された範囲の終了位置に達したとき、前記書き込み手段の書き込みを停止するとともに再度前記読み出し手段からの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、さらにその後、テープの再生が前記終了位置より予め定めた時間だけ後の位置に達したとき前記読み出し手段の再生を停止し、前記ランダムアクセス記憶装置に格納された映像シーンのデータを変更することなく当該映像シーンと前記新たな映像シーンとの時間軸上での上書きまたは追加の結果得られる各シーンをその各シーンに対応する前記アランダムアクセス記憶装置内のシーンの開始位置および終了位置のデータで特定するプレイリストを作成し、前記テープ上の全指定範囲の書き込みが終了するまでの間に、ユーザから編集結果の確認を行うためのビュー指示を受けたとき、前記テープの再生出力の書き込みは継続しながら、当該編集の結果を反映させた仮のプレイリストを作成してこの仮のプレイリストに従って再度前記開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から前記ランダムアクセス記憶装置の読み出しを開始するとともに、前記読み出し手段の再生出力を選択するよう前記切替手段を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成において、ビデオテープレコーダの再生の停止の時機は、書き込みの停止時以降であればいつでもよい。また、開始位置、終了位置の一方に代えてまたは加えて、当該シーンの長さのデータを保持するようにしてもよい。
【0012】
この構成によっても、外部VTRから収録を行っている最中であっても、その収録の完了を待つことなく、かつ、その収録を中断することなく、収録済みの映像部分を確認することができる。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、前記ビデオテープレコーダの再生出力の書き込みを、前記指定範囲の開始位置より予め指定された時間だけ前の位置から開始し、前記終了位置より予め指定された時間だけ後の位置で終了する。
【0014】
これにより前記新たな映像シーンは実際の指定された範囲よりもその前後に余裕をもって取り込まれることになり、編集点を移動するような際に空白シーンが生じるのを防止することができる。
【0015】
前記ランダムアクセス記憶装置に既に格納されている映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダのスロー再生出力を上書きまたは追加する編集が指示された際、前記制御手段は、前記ビデオテープレコーダの再生をノーマル速度で行いながら前記ランダムアクセス記憶装置への書き込みを行うとともに、前記VIEW指示の有無に拘わらず前記仮のプレイリストを作成してこの仮のプレイリストに従って再度前記開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から前記ランダムアクセス記憶装置の読み出しによる再生を開始し、かつ、前記読み出し手段の再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、当該スロー再生シーンの再生は指定されたスロー速度で行う。
【0016】
これによって、スロー再生による編集の際にも、ノーマル再生速度での収録を行いながら、ユーザには、あたかもスロー速度で収録されている編集結果をリアルタイムで同時確認しているようにみせることができる。
【0017】
前記VIEW指示による前記ランダムアクセス記憶装置からの再生の際、前記制御手段は、ユーザによる可変速再生操作を許容することが好ましい。同様に、前記スロー再生出力を上書きまたは追加する編集における前記ランダムアクセス記憶装置からの再生の際、前記制御手段は、ユーザによる可変速再生操作を許容することが好ましい。これにより、ユーザによる編集結果のより柔軟な確認動作が迅速に行える。
【0018】
前記制御手段は、前記ランダムアクセス記憶装置に現在書き込んでいる位置を超えるような再生操作がユーザからあった場合には、その再生操作が可能になるまで再生の進行を停止し、誤動作を未然に防止する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面により詳細に説明する。
【0020】
まず、図1に本発明が適用されたノンリニア映像編集システムの全体の概略構成を示す。このシステムは、中心にデジタル録画再生装置10を有する。デジタル録画再生装置10は、映像(ビデオ)データおよび音声(オーディオ)データをデジタル的に記憶する不揮発性のランダムアクセス記憶装置140を内蔵する。本実施の形態では、ランダムアクセス記憶装置140として、ハードディスク装置を用いる。デジタル録画再生装置10の前段には、複数台のVTRを接続できるセレクタ4を有する。また、電波による映像データを受信する受信装置(図ではマイクロ波受信装置を模擬的にパラボラアンテナで示している)も接続できる。セレクタ4の出力映像および受信装置の出力映像はそれぞれモニタ6c,6dで監視することができる。セレクタ4はデジタル録画再生装置10により制御される。デジタル録画再生装置10の後段には、2系統の出力およびセレクタ4の出力を選択的に切替出力するスイッチャ8およびこの出力に加工を施すためのスーパー・モザイク装置191およびオーディオフェーダ192が配置されている。デジタル録画再生装置10の2系統の出力映像はそれぞれモニタ6a,6bで監視できるようになっている。なお、これらのモニタ6a〜6dの全てが必須のものではない。また、スーパー・モザイク装置191およびオーディオフェーダ192も映像や音声の加工が必要な場合に用いればよい。
【0021】
デジタル録画再生装置10には、キーボード14、マウス16、およびディスプレイ12が接続される。マウス16の代わりにトラックボール等の任意のポインティングデバイスを用いることも可能である。ディスプレイ12、キーボード14およびマウス16は、GUI(Graphic User Interface)を援助するための装置であり、収録、編集および再生等の各種操作を表示ディスプレイ画面上で対話的に行うためのものである。
【0022】
さらに、デジタル録画再生装置10には操作コントローラ(操作部)18が接続される。ユーザは、後述するプロセッサの制御下で、操作コントローラ18により、デジタル録画再生装置10、スイッチャ8、スーパー・モザイク装置191、オーディオフェーダ192、外部VTR等を操作することができる。操作コントローラ18においても、マウス16やキーボード14を用いたGUIによる操作と殆ど同じ操作を行うことができる。操作コントローラ18特有の操作としては、ジョグ・シャトルダイアル18aによる再生速度の可変制御が可能である。このダイヤル18aの機能については後述する。
【0023】
デジタル録画再生装置10は、内部にランダムアクセス記憶装置140の他、後述するリソース171〜174を内蔵するとともに、ワイプ、ディゾルブ等の効果を実現するためのミックスエフェクト(M/E)カード180を内蔵している。
【0024】
図2に、デジタル録画再生装置10のハードウエア構成を示す。
【0025】
デジタル録画再生装置10には、本例では、17スロットのEISAバス110と、12スロットのデジタルビデオバス(CCIR601)130を備えている。EISAバス125のスロットには、プロセッサカード121、ディスプレイコントローラカード122、RS422インタフェースカード125が装着される。また、カードによっては、EISAバス125およびデジタルビデオバス130の両スロットにまたがって装着される。図示の例では、このようなカードは、ゲンロックリファレンスカード124、ディスクコントローラカード123、ビデオ入力インタフェースカード126、ビデオ出力インタフェースカード127、およびオーディオ入出力インタフェースカード128である。
【0026】
プロセッサカード121には、マイクロプロセッサ、RAM、入出力インタフェース等が搭載されている。このプロセッサカード121には、システム用のハードディスクドライブ160およびフロッピーディスク(フレキシブルディスク)ドライブ150が接続され、さらにキーボード14及びマウス16が接続される。ディスプレイコントローラカード122にはディスプレイコントローラが搭載され、ディスプレイ12の表示動作を制御する。
【0027】
ビデオ入力インタフェースカード126には、外部VTRからのビデオ入力が接続され、ビデオ出力インタフェースカード127から外部のモニタへのビデオ信号が出力される。また、オーディオ入出力インタフェースカード128では、外部VTRからのオーディオ入力および外部のスピーカへのオーディオ出力のインタフェースがとられる。これらの入出力インタフェースカードは増設することができる。
【0028】
デジタルビデオバス130には、入出力ビデオ信号を切り替えるビデオルータ133を内蔵している。ビデオルータ133は、プロセッサの制御下で、この例では、32入力の任意の入力を32出力の任意の出力へ切り替えることができる。
【0029】
ディスクコントローラボード123は、ビデオ用ハードディスクドライブ(ランダムアクセス記憶装置)140を制御する。この例では、SCSI−2FAST/WIDEバス135を介して4.2Gバイトのハードディスクを複数台(図の例では4台:計16.8Gバイト)制御している。ディスクコントローラボード123およびハードディスクドライブ(以下、単にディスクともいう)140は複数組増設することもできる。
【0030】
ゲンロックリファレンスインタフェースカード124には、内部クロックを外部の通常のNTSCまたはPALのブラックバースト信号にロックするためのものである。RS422インタフェースカード125は、操作コントローラ18を接続するためのインタフェースを提供する。
【0031】
図3に、ディスクコントローラカード123に搭載されるディスクコントローラ123aの構成を示す。これは、図2において、ディスクコントローラカード123を2枚実装した場合に相当する。1つのディスクコントローラ123aには、2つのチャンネルのために2個のJPEG(Joint Photographic Expert Group)圧縮/伸張チップ123b,123cを有している。より長時間の映像信号の収録のために、本例では、モーションJPEG圧縮技術を利用し、映像を圧縮してハードディスクに格納する。各チップには、1本のビデオ入出力チャンネルと、4本のオーディオ入出力チャンネルがあり、入力ビデオ信号およびオーディオ信号を圧縮してディスクに格納するとともに、この圧縮格納情報を伸張して出力することができる。
【0032】
本システムでは、図4に示すように、おのおのレコーダまたはプレーヤとして機能しうる複数(ここでは4個)の物理的なリソース(JPEG圧縮伸張部)171〜174を有する。これら4個のリソースはそれぞれAチャンネル〜Dチャンネルに対応し、また、これらのリソースの個数は、図3に示した圧縮/伸張チップの個数に対応する。ユーザの目的に応じてこれらのリソースを収録/再生あるいは編集等の異なる機能に割り当てることができる。本システムでは、このような論理的なビデオレコーダ(プレーヤ)を仮想レコーダあるいは仮想プレーヤ(または内部プレーヤ)と呼ぶ。図1の例では、リソース171をレコーダ専用に使用し、リソース172をレコーダとプレーヤに切り替え使用している。また、リソース173はプレーヤとタイムライン再生(編集)用に切り替えて使用し、リソース174はプレーヤ専用に使用している。各リソースは、ディスク140に対して独立にアクセスすることができる。また、ディスク140に対して、周知のストライピング等の手法により、見かけ上、書き込みと読み出しを同時に実行できるように構成されている。例えば、あるリソースで書き込み中のシーンデータを他のリソースで数秒の遅れで読み出すことができる。この数秒の遅れは、データの読み書きの相対的なずれを吸収するためのデータのバッファリングに相当する時間である。
【0033】
ここで、本明細書における「タイムライン」とは複数の映像シーン(および対応する音声シーン)を時間軸上で組み合わせるカット編集の機能またはそのための作業エリアを表わし、このカット編集により作成されるものが「プレイリスト」である。プレイリストにより定まるパッケージの再生はプレーヤではなくタイムライン(TL)に割り当てられたリソースにより再生される。したがって、このリソースを「TL:タイムライン」と称することもある。
【0034】
図5に、本実施の形態におけるディスプレイ12の画面上に表示される基本的な編集画面(ルートウインドウと呼ぶ)の一例を示す。この画面は本システムの初期画面であり、この骨格に相当する映像データはシステム用のディスクに格納されており、種々のデータおよびパラメータの内容が画面内の各種エリア内に可変表示されるようになっている。各種エリアとしては、画面上段の左から「シーン管理」エリア、「ステータス」エリア、「オーディオ・モニタ」エリア、画面中段に「タイムデータ」エリア、画面下段に「タイムライン」エリアがある。
【0035】
シーン管理エリアは、ディスク内に格納された映像データ(カセット、パッケージ等)の各種データを階層的に管理するためのものである。このエリアを参照しながら、目的のカセット(図1の仮想的な内部カセット141)やパッケージの選択、移動、複写、削除等が行える。シーン管理エリア内の右端には、シーン管理エリア内で選択されたパッケージ等の内容のリスト表示が行われるエリアがある。
【0036】
ステータスエリアは、上述したチャンネルA〜Dの現在の割当の対象(回線、VTR、TL、転送等)およびその状態(収録中、再生中、転送中等)を示している。図の例では、チャンネルAがVTRに、チャンネルBがTLに、チャンネルCが回線に、チャンネルDが転送に、それぞれ割り当てられている。
【0037】
オーディオ・モニタエリアは、オーディオの4つのトラックの現在の状態を示すためのエリアである。
【0038】
タイムデータエリアは、タイムライン編集の対象となる各種パラメータを表示するエリアである。基準トラックの表示部、およびTLにおける編集対象の現在位置(ポジション)、編集対象シーンのIN点、OUT点、デュレーション、スプリット、スピードが表示される。「スプリット」とは、通常、基準トラックである映像トラックのカット点が音声トラックのシーンのカット点に対してずれている量を示す。このエリアには、さらに、TLに対するソースとしてのデバイスの表示部(図ではデバイスPP1が選択されている)、およびそのデバイスにおける編集対象のシーンのIN点、OUT点、デュレーションが表示される。
【0039】
このエリアに下部には、現在TLに掛けられているパッケージを構成しているシーンのTL上のタイムコード、およびそのシーンの特定情報のリストを表示している。
【0040】
タイムデータエリアの右側には、任意のデータ等を捨てるためのゴミ箱が配置されている。
【0041】
タイムラインエリアは、与えられたパッケージの内容を時系列に表示するエリアであり、主としてこのエリアでタイムライン編集を行うことができる。タイムラインエリア内の表示は、タイムライン(時系列)表示とリスト表示とが切り替えられるようになっており、その指示はタイムラインエリアの左上にあるボタンで選択できる。図の例では、タイムライン表示が選択されている。タイムライン表示では、パッケージの先頭からの相対的な時間が時・分・秒・フィールド(またはフレーム)の形式の数値からなるタイムコードで示される。また、シーンの「上書き」および「割り込み」の選択ボタンも用意されている。時系列表示では、1本の映像のトラック(V)と、4本の音声トラック(A1〜A4)が表示される。図示しないが、各トラックの現在フォーカスされているシーンを強調して表示することが好ましい。Vトラック上の逆三角点は、現在の編集点の位置を示している。A4トラックの下にあるバー表示は、タイムラインの再生の進行状況を示している。このタイムラインエリア内の横軸の縮尺は右下の虫眼鏡アイコンで可変操作できる。このバー表示の下に、全体のパッケージのどれだけの割合のどの部分が表示されているかをスクロールバー表示している。このタイムラインエリアの最下段には、タイムラインの再生等を操作するためのボタン(<<、<、||、>、>>)およびシーンのフォーカスを移動させるための(シーンの頭だし)ボタン(|<、>|)が配置されている。また、コマ送りのためのボタン(−、+)、および後に詳述するVIEW指示のためのVIEWボタンもある。
【0042】
タイムラインエリアの右端には、各トラックの空白(ブランク)シーンの個数の表示部、および空白シーンの検索指示を行うボタンが配置されている。また、シーンの編集時に割り込みを行うか、上書きを行うかの選択ボタンも配置されている。
【0043】
ルートウインドウ画面の左上の枠部には、「ファイル」や「編集」等のプルダウンメニューが配置されている。「ファイル」のメニューからファイルの作成、保存、名称変更等の操作が行える。さらに、その下には、各種操作ボタンを並べたツールバーが配置されている。
【0044】
図6に、本実施の形態において用いる操作コントローラ18の一例の平面図を示す。
【0045】
操作コントローラ18の左上の18bは、右下のテンキー18vでユーザが入力したタイムコードなどの数値を表示する液晶表示部である。その下のキー群18cは、図5のタイムラインエリア内の操作対象のトラックを選択するためのものである。その下のEXECキーは、後述するタイムライン編集における収録の実行指示を行うためのキーである。INSERTキーおよびOVERWRITEキーは、図5のタイムラインエリア内の「上書き」「割り込み」と同じ機能を果たす。キー群18dは、操作の対象を選択するためのデバイス選択キーであり、「TL」はタイムライン、「P1」,「P2」は2台の外部VTR、「PP1」,「PP2」は2台の内部の仮想プレーヤを表している。キー群18eの中のVIEWキーは図5に示したVIEWボタンと同じであり、その機能は後述する。キー群18dの下のMARKINキーとMARKOUTキーは、それぞれ、ユーザがモニタを見ながら所望のIN点およびOUT点をシステムに知らせるためのキーである。その下のALLSTOPキーは、操作や動作の中断を指示するためのキーである。
【0046】
操作コントローラ18の中央上段のキー群18hは、タイムライン編集において用いる編集キーである。その下のキー群18iは、カセットの選択や編集点またはシーンの頭出しを行うためのキーである。更にその下のキー群18jは、1倍速再生、静止画再生、タイムコードによるサーチのためのキーである。
【0047】
中央下部には可変速再生操作のためのダイヤル18aがあり、その上に、このダイヤル18aをシャトルダイヤルとして機能させるか、あるいは、ジョグダイヤルとして機能させるかを指示するためのキー18f,18gがある。シャトルダイヤルは、その回転角度に応じて再生速度を決定するものであり、傾きを大きくするほど再生速度が速くなる。傾きを0にすると再生が静止する。ジョグダイヤルはその回転の速さに応じて再生速度を決定するものであり、早く回転させるほど再生速度が速くなる。回転を停止すると再生が静止する。現在の再生の向きはインジケータ18kにより表示される。ユーザは、通常、ダイヤル18aの操作を、再生出力の接続されたモニタを見ながら行う。
【0048】
操作コントローラ18の右上のキー群18mは、図5等の画面の上に表示されるGUIポインタ(図示せず)の操作キーである。GUIポインタは、TABキー、SHIFTTABキーにより、後述するルートウインドウ内で順次各エリアにフォーカス(反転表示等)を移動し、そのエリア内でのフォーカスの移動を矢印キーにより行う。キー群18nのSETINキーはIN点を、SETOUTキーはOUT点をテンキーで数値入力したときの確定用のキーである。キー群18o,18pについては本発明に直接関係ないので説明を省略する。
【0049】
図7に、本実施の形態においてビデオ用ハードディスクドライブ140に格納される映像等のデータのフォーマットを示す。外部のVTRや回線からは、1トラック分の映像データ、4トラック分の音声データ、および1トラック分のタイムコード(TC)が組として、ハードディスクドライブ140内の仮想的な内部カセット(図1の141に対応)に格納される。なお、外部VTRからのタイムコードは、その外部VTRに装填された実カセット内の映像を撮影したカメラから生成され、映像とともにテープに記録されたものである。このタイムコードはオリジナルのタイムコードと呼ぶ。
【0050】
本明細書では、内部カセットに一度に書き込まれる連続した映像等の単位を「レコード」と呼ぶ。また、内部カセットに記録されたレコード内の着目した一部分を「シーン」と呼ぶ。このシーンは、タイムライン編集時にその開始位置であるIN点および終了位置であるOUT点の情報により特定される。このIN点およびOUT点のデータはディスクの中で一意に定まるアドレスであり、ここでは「フィールド番号(またはフレーム番号)」である。このIN点、OUT点のデータがユーザによりタイムコードで指定された場合には、対応するフィールド番号に変換(換算)される。
【0051】
図7の下段に示すように、このシーン特定情報を、タイムライン上で仮想的に時系列に並べることにより、シーンのカット編集が行える。このようなカット編集により出来上がったシーンの組合せが「パッケージ」である。ただし、パッケージは、実際には、このような複数のシーンの映像データ等(音声データを含む)の実体データを順次連続して複写したものではない。このパッケージの実体は、前述したように単なるシーンを特定する情報の集合にすぎない。このようなシーン特定情報の集合を本明細書ではプレイリストと呼んでいる。編集の完成したパッケージは、「パッケージ登録」により、名称を付けて保存することができる。この登録したパッケージは、図示しないパッケージウインドウの中に格納される。また、シーン管理エリアで確認することもできる。
【0052】
図8に、このプレイリストの構成例を示す。プレイリストは、映像V、音声A1,A2,A3,A4の情報からなり、各面は、個々のシーンについて、そのシーンを格納した内部カセットのカセット名81、シーン名82、IN点83、OUT点84、デュレーション(IN点からOUT点までのシーンの長さ)85、再生速度86を規定している。図8では、理解しやすいように、IN点およびOUT点をタイムコードの形式(時:分:秒:フィールド)で示しているが、実際にシステムが保持するのはこれをディスク内アドレスとしてのフィールド数に換算したフィールド番号である。システムは、パッケージの再生時にこのプレイリストを参照して順次該当するシーンの指定された部分をディスクから読み出すことにより、あたかもそれらのシーンが組み合わされた1本のビデオテープを再生しているかのように機能する。このようなパッケージのカット編集は、映像データ等の実体的な複写(再生および記録)動作を伴うことなく、単にシーンの特定情報の組合せで実現される。したがって、ディスク内に既に存在するレコードに基づくパッケージの作成および修正は極めて迅速に行うことができる。
【0053】
さて、図9により、まず、本発明の前提となる、VTRから直接タイムライン編集する場合のシステムの概略構成および動作を説明する。
【0054】
今、図9に示すように、操作制御部(18,121)により、外部のVTR90内に装着された実カセットのテープ上の特定のシーン(シーンx)を、本システムのディスク140内にある既存のパッケージ内のシーンAの中間部分に上書きする場合を想定する。本実施の形態では外部のVTRは同時に2台接続可能であり、システムではそれぞれ「P1」「P2」として区別する。この場合のユーザの操作としては、外部のVTR90(ここではP1とする)に目的の実カセットをセットし、デジタル録画再生装置10側ではルートウインドウ内のシーン管理エリアにおいて当該編集対象のパッケージを選択する。ついで、まず操作コントローラ18のデバイス選択キー「P1」を選択するとともに、ジョグまたはシャトルのキー18f,18gを押してダイヤル18aを操作することにより目的のシーンxを捜し出す。シーンxの開始位置の映像をモニタ上に表示した状態で操作コントローラ18の「MARKIN」ボタンを押す。次に、ダイヤル操作によりシーンxの終了位置の映像をモニタに表示した状態で操作コントローラ18の「MARKOUT」ボタンを押す。これにより、VTR90のシーンxの範囲がシステムに認識される。
【0055】
次に、選択されているパッケージをタイムライン上で再生するために、操作コントローラ18のデバイス選択キー「TL」を押す。そこでダイヤル18aの操作によりパッケージの再生が行える。ユーザは、シーンxを上書きすべきシーンA上の位置(IN点)をモニタ6a上の再生映像をみながら確定し、その映像が表示された状態で「MARKIN」ボタンを押す。これによりシーンxの長さからシーンxが上書きされるシーンA上のOUT点は自動的に定まる。例えば、タイムライン側のIN点はテンキーによるタイムコード入力で指定してもよい。IN点およびOUT点の一方に代えて、デュレーションを指定してもよい。タイムライン上のIN点およびOUT点のいずれをも指定しない場合は、タイムライン上の現在位置をデフォルト値として用いることができる。変倍速度での収録の場合には、タイムライン上のIN点およびOUT点の両方を指定する。
【0056】
そこで、操作コントローラ18の「EXEC」ボタンを押すことにより、シーンxのディスク140内への複写と、パッケージのプレイリストの更新が自動的にシステムにより実行される。
【0057】
図11(a)に示すように、シーンAは内部カセットである「カセット1」に記録されているとする。シーンAのディスク140上のアドレスの範囲すなわちIN点およびOUT点のアドレスはAD1およびAD4であり、この間にシーンAの実体データが格納されている。また、同図(b)に示すように、新たに取り込まれたシーンxは新たな内部カセット「カセットx」に格納される。この代わりに上記と同じカセット1に追加格納されてもよい。シーンxのIN点およびおよびOUT点のアドレスはAD8およびAD9であるが、シーンxの収録の際には、IN点より予め定めた時間Δtだけ前の位置(アドレスAD7)から、OUT点より時間Δtだけ後の位置(アドレスAD10)までのデータが取り込まれる。シーンxの前後の時間Δtの部分は「のりしろ」と呼ぶ部分であり、後に編集点の移動などの場合に備えて予め指定された範囲より余分に取り込んでおく部分である。こののりしろを設けることにより、編集点を移動するような際に空白シーンが生じるのを防止することができる。のりしろの長さはユーザが可変設定できる。前後ののりしろの時間は同じにしたが、異なってもよい。
【0058】
このようにシーンxをシーンAに上書きするといっても、実際にはシーンAをそのまま残したまま、別個にシーンxをディスク内に取り込む。シーンの組合せはプレイリスト上で実現される。
【0059】
図12(a)に図11(a)のカセット1からシーンA(AD1〜AD4)とシーンB(AD5〜AD6)をカット編集して得られたパッケージのプレイリストの例を示す。これに対して、シーンAの中にシーンxを上書きして得られたパッケージのプレイリストの例を図11(b)に示す。シーンAの中間部にシーンxが上書きされたことにより、シーンAが前後にAD1〜AD2とAD3〜AD4とに二分され、その間にシーンxのAD8〜AD9が挿入されている。ユーザは、このシーンxの収録完了後に、操作コントローラ18のVIEWボタンによるVIEW指示を行うことにより、このパッケージに基づいてシーンxの前後の境界部分を含めてタイムライン再生を行うことができる。すなわち、これらのシーンが所望の態様で組み合わされた状態で映像および音声が再生される。
【0060】
シーンxの上書きの場合を示したが、割り込みの場合は、分割されたシーンAの後半のIN点がAD3ではなくAD2になる以外、上記とほぼ同様である。
【0061】
図9に戻り、上記のシーンxの収録が完了した後、その編集結果を確認できることは上記のとおりであるが、その収録の実行中にもその編集の結果がどのようになるかをアルタイムでユーザが確認できるようになっている。図10(a)でこの収録と同時に確認を行うための再生動作を説明する。
【0062】
図10(a)に示すように、「EXEC」処理では、シーンxのn秒(例えば5秒)前からVTRの再生が開始されると同時にタイムラインのパッケージも指定されたIN点よりn秒前の位置から再生が開始される。この時点でモニタ6aへはタイムライン再生出力が供給されるように切替器96でVTRの再生出力が選択されている。なお、切替器96は図1内に示されていない。VTR再生がシーンxのIN点のΔt秒前の位置に達すると、VTR再生出力のデジタイズが開始され、シーンxの実体データがディスク内にJPEGデータとして圧縮して取り込まれる。このΔtは前述したのりしろに対応するものである。VTRのIN点からOUT点までの再生期間中は、切替器96はVTR再生出力を選択するように切り替えられる。この期間中のタイムライン再生出力は、この上書き編集を行う前の状態のプレイリストに基づくものであるが、切替器96がVTR側に切り替わるため、モニタ6aには出力されない。VTRの再生がそのOUT点に達したとき、切替器96は再度タイムライン再生出力を選択するように切り替えられる。OUT点からΔt秒後の位置でVTR再生出力のデジタイズが停止される。さらに、OUT点からn秒後の位置でタイムライン再生が停止される。このようにして、シーンxの前のシーンからシーンxへの移り変わり部分、およびシーンxから次のシーンへの移り変わり部分を観察することができる。VTRの再生はデジタイズの終了時点で停止せずに、タイムライン再生と共に停止するようにしてもよい。
【0063】
このようにVTRから直接タイムライン編集する際に、タイムライン再生出力とVTR再生出力とを切り替えて再生することにより、編集と同時にリアルタイムにその編集結果を観察することができる。
【0064】
しかしながら、従来技術において前述したように、シーンxをデジタイズしている間は、ノンリニア映像編集装置といえども、その時間を短縮することはできず、シーンxの収録には少なくともその再生時間と同じ時間がかかり、このデジタイズの最中にモニタ上の映像に気になる箇所を発見しても、現在の収録を無駄にする覚悟がない限り、そのシーンのデジタイズが終わるまではその箇所を再確認することはできず、この収録動作が完了するのを待つ必要があった。
【0065】
そこで、本発明においては、シーンxの収録の途中であっても、シーンxのデジタイズは続行したまま、切替器96を強制的にタイムライン再生側に切り替えるとともに当該編集対象のパッケージをIN点のn秒前から再度タイムライン再生を開始するようにしたものである。さらに、図12(b)に示したようなパッケージの更新は、EXEC処理の中断の可能性の考慮してその処理が完了した後に行うのが好ましいが、収録途中でシーンxのタイムライン再生を実現するために、本実施の形態では、EXEC処理の途中でVIEW指示があった場合、システムは、図12(b)のプレイリストを新たなシーンの上書きに対応して更新した仮のプレイリストを作成し、これに基づいて、図10(b)に示すように、その時点以降、タイムライン再生を行う。また、VIEW指示に従って、切替器96はVTR側からタイムライン側に切り替わる。VIEW指示によりタイムラインの再生はIN点よりn秒前の位置まで戻って再開されるので、ディスク内のシーンxの収録部分を再生し始めるころにはシーンxのデジタイズは充分先行しており、シーンxの同時読み書きに関して支障はない。
【0066】
なお、この仮のプレイリストに基づいてタイムライン再生を行っているとき、システムは、ユーザがダイヤル18aを操作して所望の速度(例えばスロー)でタイムライン再生を操作(可変速再生操作)することを許容する。これにより、ユーザは、そのタイムライン再生を所望の点で静止させたり、巻き戻したり、再生速度を変えたりして所望の部分を存分に確認することができる。ユーザがタイムライン再生の早送りの指示によりシーンxの収録済みの位置(実際には現在の収録点の数秒前の位置)を超えて再生しようとした場合には、その位置以上に再生が進まないように、すなわちシーンxを格納したカセットxの未書き込みの部分にまで読み出しが及ばないように制御する。
【0067】
シーンxの収録は図1におけるリソース171が担当し、若干の時間差をおいてその収録されたシーンxの再生はリソース173が担当する。
【0068】
このようにして、ユーザは、外部VTRからのシーンの収録途中であっても、即座に、気になる部分を自由に確認することができる。しかも、このことによって、現在実行されているシーンxの収録には何ら影響は及ばない。その気になる部分を確認して問題なければ、出来上がったパッケージはそのまま有効に利用できる。問題がある場合には、EXEC処理を直ちに中止することにより、その時点以後にその処理に要する無駄な時間を節約することができる。
【0069】
ところで、シーンxの収録時にノーマル速度ではなくスロー速度(例えば1/2倍速)で収録したい場合がある。シーンxをスローで収録するためには、シーンxの長さ(IN点とOUT点の間隔)に対して、これに対応するタイムライン上でのIN点およびOUT点の間隔を大きく設定することによって指定できる。
【0070】
このようなスロー設定の場合でも、ノンリニアの映像記憶装置では、収録時には外部VTRをノーマル速度で再生するのが好ましい。これは、スローでの収録結果を再度変倍しようとしたときに任意の変倍が困難になる場合があるからである。したがって、収録はノーマル速度で行い、その収録されたシーンの属性として事後的にスロー速度を設定する。そのために、図8に示したように、プレイリスト80において、シーン毎に再生速度86を指定できるようになっている。システムは、タイムライン再生時にこの再生速度86を確認して当該シーンの再生速度を決定する。しかしながら、収録をノーマル速度で行ったのでは、その際の前記「収録と同時の確認」は目的の編集結果と異なることにならざるを得ず、収録の完了後に、改めてVIEW指示により目的の編集結果を確認することになる。
【0071】
そこで、本実施の形態では、スロー設定時においても収録完了前に、編集結果と同様の速度での確認を行えるようにした。そのために、EXEC処理において、スロー設定がある場合には、VIEW処理を起動することにより当該シーンについてはスローでタイムライン再生を行うとともに、モニタ6aにはこのタイムライン再生出力を流す。すなわち、図10(c)に示すように、この場合には、切替器96はタイムライン側に切り替わったままとなる。一方、その裏では、EXEC処理においてノーマル速度でのシーンxのデジタイズを行う。この場合のVIEW処理におけるシーンxのタイムライン再生速度はVTRのノーマル再生速度より遅いので、シーンxのデジタイズはシーンxの再生より充分先行して行われる。但し、この場合もシステムは、ユーザがダイヤル18aを操作して所望の速度でタイムライン再生を操作することを許容する。したがって、ユーザがタイムライン再生の早送りの指示によりシーンxの収録済みの位置を超えて再生しようとする場合がありうるが、その際には前述と同様、その位置以上に再生が進まないようにディスクの読み出しを制御する。
【0072】
図12に、本実施の形態における上述したEXEC処理を実現するための処理手順の一例を示す。この処理および後続の図13の処理は、プロセッサカード121に搭載のプロセッサにより実行される。
【0073】
図12のEXEC処理は、ユーザによる操作コントローラ18上のEXECボタンの押下により起動される。ルートウインドウ上でのボタンやメニュー等の操作によって起動するようにしてもよい。
【0074】
このEXECの処理に先立って、ユーザは、VTRの収録対象のシーンのIN点およびOUT点を指定し、また、ノーマル速度での収録の場合、タイムライン上の収録先のIN点およびOUT点の少なくとも一方を指定している。変倍速度での収録の場合には、タイムライン上のIN点およびOUT点の両方が指定されている。
【0075】
ユーザからEXEC指示がなされると、システムはユーザの入力情報に基づいて、VTRのIN点およびOUT点、ならびにタイムライン上のIN点およびOUT点を確認する(S101)。ついで、VTRを制御して、そのIN点のn秒前から再生を開始するとともに、タイムライン側でもそのIN点のn秒前から再生を開始する(S102)。また、タイムライン再生出力をモニタ6aへ供給するよう切替器96を制御する(S103)。
【0076】
そこで、スロー設定があるかどうかを確認する(S104)。すなわち、VTRのIN点およびOUT点の差とタイムラインのIN点およびOUT点の差が異なるかどうかを確認する。スロー設定であれば、後述するVIEW処理を起動する(S105)。スロー設定でなければ、ステップS105を迂回して、ステップS106へ進み、ここで、VTR再生がIN点からのりしろ時間Δtだけ前の位置に到達するまで、待機する。到達した地点で、VTR再生出力のデジタイズを開始する(S107)。
【0077】
そこで、VIEWを実行中かどうかを確認する(S108)。VIEW実行中であれば、後述するステップS133へジャンプする。これはVIEWの処理内容と抵触するEXECの処理内容を迂回するためである。
【0078】
VIEW実行中でなければ、VTR再生がIN点に到達するまで待機し(S109)、到達した時点で、VTR再生出力をモニタ6aへ供給するように切替器96を制御する(S110)。その後、VTR再生がOUT点に到達するまで待つ(S111)。OUT点に到達した時点で、タイムライン再生出力をモニタ6aへ供給するように切替器96を制御する(S112)。
【0079】
その後、VTR再生がOUT点からのりしろ時間Δtだけ後の位置に到達するまで待ち(S113)、到達した時点でVTR再生出力のデジタイズを終了する(S114)。
【0080】
そこで、再度、VIEWを実行中かどうかを確認する(S115)。VIEW実行中であれば、後述するステップS118へジャンプする。VIEW実行中でなければ、タイムラインの再生がそのOUT点からn秒後の位置に到達するまで待ち(S117)、到達した時点でタイムライン再生を停止すると共に、VTRの再生を停止する(S117)。最後に、このEXEC処理の結果を反映するように、プレイリストを更新して(S118)、本処理を終了する。
【0081】
次に、図13に、本実施の形態におけるVIEW処理の処理手順の一例を示す。この処理は、ユーザによるVIEW指示により起動される他、前述のようにスロー設定におけるEXEC指示時にも起動される。
【0082】
このVIEW処理において、まず、現在EXEC処理を実行中であるかどうかを確認する(S201)。実行中であれば、タイムライン再生出力をモニタ6aへ供給するよう切替器96を制御し(S205)、指定されているパッケージの現在のプレイリストに基づいてIN点のn秒前の位置から、各シーンに指定された速度でタイムラインの再生を開始する(S206)。この際にも、前述のようにユーザによる任意の可変速再生操作が許容される。続いて、後述するステップS207へ進む。
【0083】
先のステップS201において、EXEC処理を実行中であることが判明した場合には、入力情報に基づいて、当該パッケージの仮のプレイリストを作成する(S202)。また、タイムライン再生出力をモニタ6aへ供給するよう切替器96を制御する(S203)。そこで、この仮のプレイリストに基づいて、タイムラインのIN点のn秒前から、各シーンについて指定された速度でタイムラインの再生を開始する(S204)。この際、ユーザによる任意の可変速再生操作が許容される。
【0084】
次に、ユーザが可変速再生操作を行っているかを調べ(S207)、行っている際にはこのユーザによる可変速再生操作により、タイムラインのカレントポイントがタイムライン再生可能点を超えるような指示があったとき、それが可能になるまで再生の進行を停止して待機する(S210)。ユーザによるVIEW中止の指示(明示的なものでなく、他の指示に伴うものでも可)があれば(S213)、本処理を終了する。
【0085】
先のステップS207でユーザが可変速再生操作を行っていない場合には、タイムラインの再生がOUT点のn秒後の位置に到達するまで待ち(S208)、その位置に到達した時点で、仮のプレイリストが存在する場合には仮のプレイリストを廃棄する(S209)。その後、タイムライン再生を停止して(S212)、本処理を終了する。
【0086】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の変形・変更を行うことが可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、外部VTRから収録を行っている最中であっても、その収録の完了を待つことなく、かつ、その収録を中断することなく、収録済みの映像部分を確認することができるノンリニア映像編集システムを提供することができる。したがって、本発明は、ニュース編集等、編集に要する時間に制約がある用途に利用して顕著な効果を奏する。
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による映像編集システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1のシステム内のデジタル録画再生装置10の内部構成を示す構成図である。
【図3】図2の装置内のディスクコントローラ123aの内部構成を示す模式図である。
【図4】図1のシステム内のデジタル録画再生装置内のディスクと、レコーダまたはプレーヤとして機能しうる複数の物理的なリソース(資源)との関係を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるディスプレイ12上に表示される基本的な編集画面(ルートウインドウと呼ぶ)の一例の中間調画像を示す図である。
【図6】図1のシステムにおいて用いられる操作コントローラの一例の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態においてビデオ用ハードディスクドライブ140に格納される映像等のデータのフォーマットを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるプレイリストの構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態においてVTRから直接タイムライン編集する場合のシステムの動作を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態における(a)EXEC処理、(b)EXEC処理中のVIEW処理、(c)スロー設定時のEXEC処理の各動作の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態における(a)カセット1、(b)カセットxの説明図である。
【図12】本発明の実施の形態における(a)更新前のプレイリスト、(b)更新後のプレイリストの例の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるEXEC処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態におけるVIEW処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
4…セレクタ、6…モニタ、8…スイッチャ、10…デジタル録画再生装置、12…ディスプレイ、14…キーボード、16…マウス、18…操作コントローラ、80…プレイリスト、90…外部VTR、96…切替器、110…EISAバス、121…プロセッサカード(RAM含む)、122…ディスプレイコントローラカード、123…ディスクコントローラカード、124…ゲンロックリファレンスカード、125…RS422インタフェースカード、126…ビデオ入力インタフェースカード、127…ビデオ出力インタフェースカード、128…オーディオ入出力インタフェースカード、130…デジタルビデオバス、133…ビデオルータ、135…SCSI−2バス、140…ビデオ用ハードディスクドライブ(ランダムアクセス記憶装置)、141…カセット、150…フロッピーディスクドライブ、160…システム用ハードディスクドライブ。
Claims (7)
- 映像データを格納するディスクと、
このディスクへの映像データの書き込みおよび読み出しを独立に実行する読み書き手段と、
外部のビデオテープレコーダの再生出力と前記ディスクの再生出力とを切り替えて外部のモニタへ出力する切替器と、
前記読み書き手段および前記切替器を制御する制御手段とを備えたノンリニア映像編集システムにおいて、
前記制御手段は、
ユーザのEXEC指示に従い、ディスクに既に格納されている各映像シーンの開始位置および終了位置を表わすデータからなるプレイリストにより定められる複数のカットシーンのパッケージに対して、外部のビデオテープレコーダからの再生シーンを上書きまたは追加編集する際、
前記プレイリストに従うディスク再生出力と前記ビデオテープレコーダの当該再生シーンの出力とを前記切替器で切り替えて前記モニタへ出力することにより、書き込み中にリアルタイムに編集結果を観察できるようにするとともに、
書き込み中にユーザからVIEW指示があったときには、書き込みを停止することなく、前記リアルタイムの編集結果の観察のための動作を中止するとともに、当該編集結果を反映するよう更新した仮のプレイリストに基づいて、再度同じ編集結果を前記ディスクのみからモニタへ再生出力するよう制御を行う
ことを特徴とするノンリニア映像編集システム。 - デジタル化された映像データを格納する不揮発性のランダムアクセス記憶装置と、
該ランダムアクセス記憶装置に対する映像データの書き込み手段およびこれと独立動作可能な読み出し手段と、
ユーザの指示に応じて外部のビデオテープレコーダを制御するとともに前記書き込み手段および読み出し手段を制御する制御手段と、
該制御手段により制御され、前記ビデオテープレコーダの再生出力と前記ランダムアクセス記憶装置の読み出し手段からの再生出力とを選択的に外部のモニタに出力する切替手段と、
前記制御手段は、前記ランダムアクセス記憶装置に既に格納されている映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダの再生出力を上書きまたは追加する編集の際、当該上書きまたは追加の箇所または範囲、および、前記映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダからの上書きまたは追加すべき再生出力の範囲の指定を受けて、当該ビデオテープレコーダの再生出力を前記書き込み手段により前記ランダムアクセス記憶装置に書き込むとき、
前記ビデオテープレコーダを制御してテープの指定された範囲の開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から再生を開始すると共に、前記ランダムアクセス記憶装置の読み出し手段を制御して前記指定された箇所または範囲より前記時間だけ前の位置から再生を開始し、かつ、前記読み出し手段からの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、その後、テープの再生が前記指定された範囲の開始位置に達したとき、前記書き込み手段により前記ランダムアクセス記憶装置に格納された映像シーンとは別に新たな映像シーンとして前記ランダムアクセス記憶装置に書き込みを開始するとともに前記テープの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、さらにその後、テープの再生が前記指定された範囲の終了位置に達したとき、前記書き込み手段の書き込みを停止するとともに再度前記読み出し手段からの再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、さらにその後、テープの再生が前記終了位置より予め定めた時間だけ後の位置に達したとき前記読み出し手段の再生を停止し、前記ランダムアクセス記憶装置に格納された映像シーンのデータを変更することなく当該映像シーンと前記新たな映像シーンとの時間軸上での上書きまたは追加の結果得られる各シーンをその各シーンに対応する前記アランダムアクセス記憶装置内のシーンの開始位置および終了位置のデータで特定するプレイリストを作成し、
前記テープ上の全指定範囲の書き込みが終了するまでの間に、ユーザから編集結果の確認を行うためのビュー指示を受けたとき、前記テープの再生出力の書き込みは継続しながら、当該編集の結果を反映させた仮のプレイリストを作成してこの仮のプレイリストに従って再度前記開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から前記ランダムアクセス記憶装置の読み出しを開始するとともに、前記読み出し手段の再生出力を選択するよう前記切替手段を制御することを特徴とするノンリニア映像編集システム。 - 前記制御手段は、前記ビデオテープレコーダの再生出力の書き込みを、前記指定範囲の開始位置より予め指定された時間だけ前の位置から開始し、前記終了位置より予め指定された時間だけ後の位置で終了することを特徴とする請求項2記載のノンリニア映像編集システム。
- 前記ランダムアクセス記憶装置に既に格納されている映像シーンに対して前記ビデオテープレコーダのスロー再生出力を上書きまたは追加する編集が指示された際、前記制御手段は、前記ビデオテープレコーダの再生をノーマル速度で行いながら前記ランダムアクセス記憶装置への書き込みを行うとともに、前記VIEW指示の有無に拘わらず前記仮のプレイリストを作成してこの仮のプレイリストに従って再度前記開始位置より予め定めた時間だけ前の位置から前記ランダムアクセス記憶装置の読み出しによる再生を開始し、かつ、前記読み出し手段の再生出力を選択するよう前記切替手段を制御し、当該スロー再生シーンの再生は指定されたスロー速度で行うことを特徴とする請求項2記載のノンリニア映像編集システム。
- 前記VIEW指示による前記ランダムアクセス記憶装置からの再生の際、前記制御手段は、ユーザによる可変速再生操作を許容することを特徴とする請求項2記載のノンリニア映像編集システム。
- 前記スロー再生出力を上書きまたは追加する編集における前記ランダムアクセス記憶装置からの再生の際、前記制御手段は、ユーザによる可変速再生操作を許容することを特徴とする請求項4記載のノンリニア映像編集システム。
- 前記制御手段は、前記ランダムアクセス記憶装置に現在書き込んでいる位置を超えるような再生操作がユーザからあった場合には、その再生操作が可能になるまで再生の進行を停止することを特徴とする請求項5または6記載のノンリニア映像編集システム。
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