JP3895141B2 - 薄膜el素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、表示装置等に用いられる発光素子に関するものであり、さらに詳しくは、交流電圧を印加することにより、EL(Electro luminescence)発光が得られる薄膜EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
交流電圧を印加するとEL発光が得られる薄膜EL素子は、図7に示されるように、例えば、基板21上に、下部電極22、酸化シリコン膜24及び窒化シリコン膜25(下部絶縁層)、発光層26、窒化シリコン膜27及び酸化シリコン膜28(上部絶縁層)、上部電極29とをこの順で積層してなるものである。
【0003】
発光層を構成する材料としては、通常、硫化亜鉛や硫化ストロンチウム等の硫化物が用いられている。具体的には、表示パネルとして商品化されている薄膜EL素子には、発光層として、硫化亜鉛にマンガンを微量添加した蛍光体が用いられており、これにより黄橙色発光が得られている。また、発光層として、硫化亜鉛にテルビウムを付活した蛍光体も用いられており、これにより緑色発光が得られている。
【0004】
絶縁層を構成する材料としては、通常、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル等の誘電体が用いられている。しかしながら、これらの誘電体は、比誘電率が低く、それぞれ20、4、7.5程度である。このため、例えば発光層に比誘電率8程度の硫化亜鉛を用いた場合、大きい電圧が絶縁層に掛かってしまい、(発光層のクランプ電界×発光層の膜厚)よりも非常に高い閾値電圧が発光に必要となる。その結果、高価な高耐圧ICドライバが必要となる。また、発光開始後の無機ELの発光輝度Lは、理論上、次の式(1):
【0005】
L∝η・Ec・dz・Ci・φ・Vm (1)
(ここで、ηは発光効率、Ecは発光層のクランプ電界、dzは発光層の膜厚、Ciは絶縁層の容量、φは駆動周波数、Vmは変調電圧である)
で表される。このことから分かるように、絶縁層の誘電率が低いとCiが低くなり、高輝度が得られないという問題があった。
【0006】
これに対して、高い誘電率を有する強誘電体を薄膜EL素子の絶縁層に用いる試みが行われている。例えば、特開平8−83686号公報では、比誘電率が500〜1000程度のチタン酸ジルコン酸鉛薄膜を絶縁層に用いた硫化亜鉛系発光素子が開示されている。また、Y. Fujitaらの、Proc. SID 25/3(1984)P. 177によれば、比誘電率が100〜200程度のチタン酸ストロンチウムを主成分とする絶縁層を用いることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの強誘電体は絶縁破壊耐圧(電界値)が低いという問題がある。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛の絶縁破壊耐圧は0.5〜1MV/cm程度で、チタン酸ストロンチウムのそれは2〜3MV/cm程度であり、酸化シリコンや窒化シリコンの絶縁破壊耐圧(6〜8MV/cm)よりも低く、薄膜EL素子に用いた場合には信頼性がないという問題があった。なお、絶縁破壊耐圧は、絶縁膜の膜厚が厚くなるにつれ減少する傾向にあるため、これにより電圧の絶対値を上げることは難しい。また、膜厚が厚くなると、クラック等が発生しやすく、また生産コストが増加することにより実用的ではない。
【0008】
また、鉛を含まないチタン酸ストロンチウムや、チタン酸バリウム等の薄膜材料は、緻密な結晶質膜を得るために、例えばスパッタ法では堆積速度を低くしなければならず、化学溶液堆積法や有機金属気相成長法では成膜条件が限定されてしまい製造工程が煩雑である。例えば、化学溶液堆積法によれば、先ず前駆体膜を形成し、次いで熱処理を繰返し、膜厚数十nm程度の非常に薄い膜を重ねていかなければならないといった条件が必要となり、生産性が低く、量産化が困難であった。
【0009】
これに対して、特開平1−124998号公報では、絶縁破壊耐圧が2MV/cm程度のチタン酸ストロンチウム(膜厚500nm)上に、酸化タンタルを膜厚50〜250nm程度に積層することで、素子の耐圧を上昇させることが報告されている。特に、酸化タンタルを膜厚100nm程度にすると、絶縁破壊耐圧が最高4MV/cm(240V)にまで上昇することが報告されている。
しかしながら、このような方法では、絶縁層の比誘電率が50程度まで低下し、発光輝度が低下するため、高誘電体を絶縁層に用いるメリットが少なくなる。
【0010】
また、硫化物系材料を発光層として用いる薄膜EL素子の絶縁層として、チタン酸ジルコン酸鉛を用いた場合、発光層形成後の熱処理時にチタン酸ジルコン酸鉛の鉛分が発光層の硫黄成分と反応しやすくなる。その結果、素子が変色してしまい、絶縁破壊が起こりやすくなる。このことは、一般に広く用いられているガラス基板等の低耐熱基板に、チタン酸ジルコン酸鉛を形成する際に、低温でその結晶性、緻密性を向上させるため、鉛を化学量論比よりも過剰に仕込まなくてはならず、その過剰な鉛分が揮発することによるものと考えられる。
また、発光層にチタン酸ジルコン酸鉛のような複合金属酸化物が接触すると、高電圧駆動中にメタルイオンの拡散や発光層の酸化が起こるという問題もある。
【0011】
これに対して、特開平7−45368号公報では、発光層とチタン酸ストロンチウムとの反応防止層として、窒化シリコンを用いることが提案されているが、チタン酸ジルコン酸鉛を用いた素子に関しては、チタン酸ジルコン酸鉛と窒化シリコンとが剥離しやすいという問題がある。
上記の問題に鑑みて、本発明は、特定の材料からなる3層以上の誘電体薄膜を絶縁層に使用した薄膜EL素子が、上記問題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、基板上に、下部電極、下部絶縁層、発光層、上部絶縁層、上部電極をこの順で構成してなる薄膜EL素子において、下部絶縁層及び上部絶縁層の両方又はいずれか一方が、少なくとも、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする第一誘電体膜と、チタン酸バリウム若しくは酸化チタンを主成分とする第二誘電体膜と、窒化シリコン若しくは酸窒化シリコンを主成分とする第三誘電体膜とをこの順に積層したものであることを特徴とする薄膜EL素子が提供される。
【0013】
この薄膜EL素子では、第一誘電体膜に、低温で形成しても緻密性、比誘電率が高く、比較的低誘電損失なチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする薄膜を用い、第二誘電体膜に、低温で形成すると緻密化しづらく、リーキーで誘電損失が高いチタン酸バリウム若しくは酸化チタンを主成分とする薄膜を用い、第三の誘電体膜に、低温で形成しても高耐圧、低誘電損失な窒化シリコン若しくは酸窒化シリコンを主成分とする薄膜を用いている。これらの誘電体膜を積層すると、高耐圧、高容量な絶縁層が得られ、この絶縁層を用いた薄膜EL素子は高輝度が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、予め下部電極が形成された基板上に、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とした非晶質の第一誘電体膜の前駆体膜を成膜し、第一誘電体膜の前駆体膜上に酸化チタンを主成分とした非晶質の第二誘電体膜の前駆体膜を成膜し、チタン酸ジルコン酸鉛の結晶化温度以上に熱処理して第一誘電体膜及び第二誘電体膜を形成することを特徴とする上記の薄膜EL素子の製造方法が提供される。
【0015】
この製造方法によれば、第一誘電体膜の余分な鉛分の多くが酸化チタンと反応して安定化し、素子の変色を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照しながら詳しく説明するが、これにより本発明が限定されることはない。
【0017】
実施形態1
図1に本実施形態の薄膜EL素子の概略断面図を示す。
図1の薄膜EL素子は、基板1上に、下部電極2、第一誘電体膜3、第二誘電体膜4、第三誘電体膜5、発光層6、窒化シリコン膜7、酸化シリコン膜8、上部電極9がこの順で積層されてなる。なお、下部絶縁層は、第一誘電体膜3、第二誘電体膜4及び第三誘電体膜5からなり、上部絶縁層は、窒化シリコン膜7及び酸化シリコン膜8からなる。
【0018】
以下、この薄膜EL素子の製造方法を説明する。
例えば、ガラス基板1上に、酸化インジウム錫(ITO)を、スパッタ法等の公知の方法により膜厚200nmに形成し、フォトリソグラフィ法でパターニングすることにより下部電極2を形成する。
なお、基板1としては、薄膜EL素子の基板として通常用いられている透明で600℃程度の耐熱性があれば特に限定されず、ガラスもしくは石英等が挙げられる。
【0019】
また、下部電極2としては、多くの場合、透明導電膜が用いられている。一般的な薄膜EL素子においては、透明導電膜としてITO、酸化錫、IDIXO(In23−ZnO系材料)等が用いられる。中でもITOは、光透過性、ファインパタン加工性、低抵抗率に優れており、液晶表示パネル等において広く用いられており、公知のフォトリソグラフィ法を用いることでファインパタンを形成することが可能であるので好ましい。下部電極2の形成方法は、公知の方法、例えばスパッタ法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スプレー法等により成膜することができる。
下部電極2の膜厚は、特に限定されないが、通常、150〜250nm程度である。
【0020】
次に、下部電極2を含むガラス基板1上に、化学溶液堆積法により、チタン酸ジルコン酸鉛膜(PZT)(第一誘電体膜3)を形成する。具体的には、鉛、ジルコン、チタンのアルコキシド若しくは有機金属塩を主成分とし、少量のランタンを含む溶液を反応させたものを用いた。なお、ランタンの添加は本発明を限定するものではなく、無添加でもよい。また、ストロンチウム、バリウム、カルシウム、錫、アルミニウム、ニオブなど他の元素を添加してもよい。これら成分の構成比は、適宜調節され、特に限定されるものではないが、チタン酸ジルコン酸鉛の結晶化温度が低減可能であることから、鉛を多く含むのが好ましい。なお、本実施形態では、各成分の構成比を、鉛:ランタン:ジルコン:チタン=1.2:0.05:0.4:0.6とする(本実施形態では、鉛を化学量論比よりも20%過剰に含む。なお、ランタンが全て置換されると仮定した場合、鉛を化学量論比よりも25%過剰に含ませる)。
【0021】
この化学溶液をガラス基板1上に塗布し、100℃程度で乾燥して溶媒を除去し、350℃程度で仮焼成して残留有機物を除去し、チタン酸ジルコン酸鉛の結晶化温度以上の温度(本実施形態では600℃以上)で結晶化焼成を施すことにより、チタン酸ジルコン酸鉛膜(第一誘電体膜3)を形成する。なお、この第一誘電体膜3は、膜厚が280nm、比誘電率が336、誘電損失が1.8%である。
【0022】
第一誘電体膜3の膜厚は、特に限定されないが、化学溶液堆積法で一回の塗布工程で得られて生産性がよいこと等から、200〜300nm程度が好ましく、さらには、再現性のよい特性が得られることから、220〜260nm程度がより好ましい。第一誘電体膜3の膜厚が200nmを下回ると、素子破壊電圧が低くなり、逆に膜厚が300nmを上回ると、クラックができやすく、疎で素子破壊電界が低くなるので好ましくない。
【0023】
次に、第一誘電体膜3上に、バリウム、チタンのアルコキシド若しくは有機金属塩を主成分とした溶液を反応させたものを用いて、化学溶液堆積法によりチタン酸バリウム膜(BTO)(第二誘電体膜4)を膜厚300nm程度に形成する。具体的には、構成比を(バリウム:チタン=7:3)とした上記化学溶液を第一誘電体膜3上に塗布し、100℃程度で乾燥して溶媒を除去し、350℃程度で仮焼成して残留有機物を除去し、チタン酸バリウムの結晶化温度以上の温度(本実施形態では600℃以上)で結晶化焼成を施すことにより、チタン酸バリウム膜(第二誘電体膜4)を形成する。
【0024】
第二誘電体膜4の膜厚は、特に限定されないが、化学溶液堆積法で一回若しくは二回の塗布工程で得られて生産性がよいこと等から、150〜350nm程度が好ましく、さらには、再現性のよい特性が得られることから、200〜300nm程度がより好ましい。第二誘電体膜4の膜厚が150nmを下回ると、発光層6の熱処理時に第一誘電体膜3から揮発する鉛分の拡散を防ぐのが不充分であり、素子が黒色化しやすいので好ましくない。逆に膜厚が350nmを上回ると、クラックが発生しやすく、安定な素子を作製するのが難しいので好ましくない。
【0025】
なお、本実施形態では、第二誘電体膜4としてチタン酸バリウムを用いたが、第二誘電体膜4は、主成分がバリウム、チタン、酸素の結晶質膜であればよく、例えばストロンチウムやカルシウム、ジルコニウム、錫、アルミニオブ、ニオブなどをさらに添加したものであってもよい。
【0026】
第一、第二誘電体膜の積層膜は、比誘電率が387、誘電損失が8%である。また、第二誘電体膜4の下部電極2上での単膜特性は、リーク電流が非常に高く、正確な値が得られないため測定できない。
なお、上記第一誘電体膜3及び第二誘電体膜4は、化学溶液堆積法以外の方法で形成することもでき、例えばスパッタ法やMOCVD法などの気相成長法で形成することもできる。
【0027】
次に、第二誘電体膜4上に、反応性スパッタ法により、基板温度200℃程度にして窒化シリコン膜(SiNx)(第三誘電体膜5)を50nm程度に形成する。
なお、第三誘電体膜5を構成する材料としては、窒化シリコン又は酸窒化シリコンを主成分とするものが挙げられる。
【0028】
第三誘電体膜5の膜厚は、特に限定されないが、長期信頼性が確保でき、第一、第二誘電体膜の特性を生かせるなどの理由から、40〜100nm程度が好ましく、さらには、高安定で、発光効率及び輝度の高いものが得られるという点で、50〜80nm程度がより好ましい。第三誘電体膜5の膜厚が40nmを下回ると、高電界で素子駆動中に第一、第二誘電体膜から拡散するメタルイオンが発光層6に進入して、輝度が低下するので好ましくない。逆に膜厚が100nmを上回ると、素子耐圧は高くなるが積層膜の容量が大幅に低下し、高誘電体材料を使用する利点が少なくなるので好ましくない。
【0029】
第一、第二、第三誘電体膜の積層膜は、比誘電率が122、誘電損失が1.5%である。また、第三誘電体膜5の下部電極2上での単膜特性は、比誘電率が7.5、誘電損失が1%以下である。
【0030】
これら誘電体膜の単膜及び積層膜の電流密度と印加電圧との関係を表わすグラフを図2に示す。このグラフから、第一誘電体膜3(PZT)、第二誘電体膜4(BTO)、第三誘電体膜5(SiNx)の単膜は、耐圧値がそれぞれ25V、5V、26V程度であることが分かる。第一誘電体膜3と第二誘電体膜4との積層膜では、リーク電流密度は高くなり、耐圧は125Vまで増加する。第一誘電体膜3と第二誘電体膜4と第三誘電体膜5との積層膜では、耐圧は200V以上まで増加することが分かった。また、積層膜であるため、ピンホールにも強い。
【0031】
下部絶縁層は、本発明の効果を妨げるものでなければ、さらに公知の誘電体膜又は絶縁体膜が積層されたものであってもよい。
【0032】
次に、第三誘電体膜5上に、マンガンを付活した硫化亜鉛を真空蒸着法により膜厚600nmに成膜して硫化亜鉛膜(発光層6)形成する。
なお、発光層を構成する材料としては、通常、無機EL素子に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、硫化カルシウム、CaGa24、SrGa24等が挙げられる。また、これらの材料には、通常、Mn、PrF3、TbF3、SmF3、TbF3、DyF3、HoF3、ErF3、TmF3、YbF3等の発光中心が付活される。これらの発光中心は、所望の発光色に合わせて適宜選択される。発光層の膜厚は、特に限定されないが、通常、500〜1500nm程度である。発光層の形成方法は、公知の手法、例えばスパッタ法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スプレー法等により成膜することができる。
【0033】
次に、発光層6上に、スパッタ法により、窒化シリコン膜7及び酸化シリコン膜8をこの順で成膜して上部絶縁層を形成する。窒化シリコン膜7及び酸化シリコン膜8の膜厚は、それぞれ50nmにする。
【0034】
なお、上部絶縁層には、窒化シリコン又は酸化シリコンの他に、酸化タンタルやPbTiO3などの高誘電体を用いてもよい。また、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする第一誘電体膜と、チタン酸バリウム若しくは酸化チタンを主成分とする第二誘電体膜と、窒化シリコン若しくは酸窒化シリコンを主成分とする第三誘電体膜とをこの順に積層したものであってもよい。このように上部絶縁層及び下部絶縁層を特定の材料からなる3層の積層誘電体膜にすると、さらに発光輝度を高くすることができる。
上部絶縁層の膜厚は、特に限定されないが、通常、70〜150nm程度である。
【0035】
次に、発光層6の結晶性を向上させるために、得られた積層膜を、不活性ガス中、630℃で1時間熱処理を行う。
ここで、第二誘電体膜4及び/又は第三誘電体膜5を形成しなかった場合は、第一誘電体膜3の成分である鉛と発光層6の成分である硫黄とが反応して、素子が黒色化する。
【0036】
次に、酸化シリコン膜8上に、真空蒸着法によりアルミニウム膜を成膜し、ホトリソグラフィーを行って、上部電極9を形成する。
なお、上部電極9を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、公知のもの、例えばアルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、マグネシウム・銀合金、インジウム等が挙げられる。上部電極9の形成方法は、公知の手法、例えばスパッタ法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スプレー法等により成膜することができる。
上部電極の膜厚は、特に限定されないが、通常、100〜1000nm程度である。
【0037】
こうして作製される薄膜EL素子の発光輝度と印加電圧との関係を表わすグラフを図3に示す。また、比較として、第二誘電体膜を形成しなかった場合の素子のグラフ及び下部絶縁層が窒化シリコン24(膜厚210nm)及び酸化シリコン25(膜厚35nm)からなる従来の素子(図7)のグラフも図3に示す。
【0038】
図3によれば、本実施形態の薄膜EL素子は、従来の素子よりも、閾値が30V以上低下し、また、各閾値から電圧をさらに40V印加したとき(本実施形態では、印加電圧180V、従来例では、印加電圧210V)において、2倍以上の輝度が得られることが分かる。また、第二誘電体膜を形成しなかった素子は閾値の低下が見られ、155V付近で素子が破壊する。これに対し、本実施形態の薄膜EL素子は290Vまで素子破壊が見られない。また、加速試験によれば、50000時間後も安定した発光特性が得られることが分かる。
【0039】
以上、本実施形態の薄膜EL素子は、特定の材料からなる3層の誘電体膜が下部絶縁層として構成されてなるため、高容量・高耐圧を示し、素子特性として高輝度・高信頼性を有することが示された。
【0040】
実施形態2
図4に本実施形態の薄膜EL素子の概略断面図を示す。
図4の薄膜EL素子は、基板11上に、下部電極12、第一誘電体膜13、第二誘電体膜14、第三誘電体膜15、発光層16、窒化シリコン膜17、酸化シリコン膜18、上部電極19がこの順で積層されてなる。なお、下部絶縁層は、第一誘電体膜13、第二誘電体膜14及び第三誘電体膜15からなり、上部絶縁層は、窒化シリコン膜17及び酸化シリコン膜18からなる。
【0041】
以下、この薄膜EL素子の製造方法を説明する。
実施形態1と同様にして、ガラス基板11上にITO電極(下部電極12)、チタン酸ジルコン酸鉛膜(第一誘電体膜13)を形成する。
【0042】
次に、第一誘電体膜13上に、チタンのアルコキシド若しくは有機金属塩を主成分とした溶液を反応させたものを用いて、化学溶液堆積法により、酸化チタン膜(第二誘電体膜14)を膜厚150nmに形成する。具体的には、上記化学溶液を第一誘電体膜13上に塗布し、100℃程度で乾燥して溶媒を除去し、350℃程度で仮焼成して残留有機物を除去し、酸化チタンの結晶化温度以上の温度(本実施形態では600℃以上)で結晶化焼成を施すことにより、酸化チタン膜(第二誘電体膜14)を形成する。
【0043】
なお、第一誘電体膜13と第二誘電体膜14とは次の方法によって同時に形成できる。すなわち、第一誘電体膜13となるチタン酸ジルコン酸鉛の溶液をガラス基板11に塗布し、350℃程度で仮焼成して非晶質膜(第一誘電体膜の前駆体膜)にする。次いで、その上に、第二誘電体膜14となる酸化チタンの溶液を塗布し、100℃程度で乾燥して溶媒を除去し、350℃程度で仮焼成して残留有機物を除去し、非晶質膜(第二誘電体膜の前駆体膜)にする。次いで、チタン酸ジルコン酸鉛の結晶化温度以上の温度で結晶化焼成を施すことにより、第一誘電体膜13及び第二誘電体膜14を同時に形成する。この方法によれば、チタン酸ジルコン酸鉛にある過剰の鉛成分が酸化チタンと反応するので、発光層と鉛との反応防止効果が向上する。
【0044】
第二誘電体膜14の膜厚は、特に限定されないが、化学溶液堆積法で一回若しくは二回の塗布工程で得られて生産性がよいこと等から、100〜200nm程度が好ましく、さらには、再現性のよい特性が得られることから、120〜160nm程度がより好ましい。第二誘電体膜14の膜厚が100nmを下回ると、発光層16の熱処理時に第一誘電体膜13から揮発する鉛分の拡散を防ぐのが不充分であり、素子が黒色化しやすいので好ましくない。逆に膜厚が200nmを上回ると、クラックが発生しやすく、安定な素子を作製するのが難しいので好ましくない。
【0045】
第一、第二誘電体膜の積層膜は、比誘電率が232、誘電損失が9%である。また、第二誘電体膜14の下部電極12上での単膜特性は、リーク電流が非常に高く、正確な値が得られない。
【0046】
次に、第二誘電体膜14上に反応性スパッタ法にて、基板温度200℃程度で窒化シリコン膜(第三誘電体膜15)を50nm程度に形成する。
第一、第二、第三誘電体膜の積層膜は、比誘電率が109、誘電損失が1.8%である。また、第三誘電体膜15の下部電極12上での単膜特性は、比誘電率が7.5、誘電損失が1%以下である。
【0047】
これらの単膜及び積層膜の電流密度と印加電圧との関係を表わすグラフを図5に示す。このグラフから、第一誘電体膜13(PZT)、第二誘電体膜14(TiO2)、第三誘電体膜15(SiNx)は単膜では耐圧値がそれぞれ25V、10V、26V程度であることが分かる。第一誘電体膜13と第二誘電体膜14との積層膜では、リーク電流密度は高いものの、耐圧は130Vまで増加する。第一誘電体膜13と第二誘電体膜14と第三誘電体膜15との積層膜では、耐圧は200V以上まで増加することが分かる。また、積層膜であるため、ピンホールにも強い。
【0048】
次に、実施形態1と同様にして、第三誘電体膜15上に、発光層16、窒化シリコン膜17、酸化シリコン膜18、アルミニウム膜(上部電極19)を形成する。
ここで、第二誘電体膜14及び/又は第三誘電体膜15を形成しなかった場合、第一誘電体膜13の成分である鉛と発光層16の成分である硫黄とが反応して、素子が黒色化する。
【0049】
こうして作製された本実施形態の薄膜EL素子の発光輝度と印加電圧との関係を表わすグラフを図6に示す。また、比較として、第二誘電体膜14を形成しなかった素子のグラフ及び下部絶縁層が窒化シリコン24(膜厚210nm)及び酸化シリコン25(膜厚35nm)からなる従来の素子(図7)のグラフも図6に示す。
【0050】
本実施形態の薄膜EL素子は、従来の素子と比較して30V以上の閾値低下が見られ、各閾値からさらに電圧を40V印加したとき(本実施形態では180V、従来例では210V)、2倍以上の輝度が得られる。また、第二誘電体膜14を形成しなかった素子は、閾値の低下が見られ、155V付近で素子が破壊する。これに対し、本実施形態の薄膜EL素子は290Vまで素子破壊が見られない。また、本実施形態の薄膜EL素子は、加速試験により50000時間後も安定した発光特性が得られることが分かる。
【0051】
以上、本実施形態の薄膜EL素子は、特定の材料からなる3層の誘電体膜が下部絶縁層として構成されてなるため、高容量・高耐圧を示し、素子特性として高輝度・高信頼性を有することが示された。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜EL素子を構成する絶縁層として、結晶性高誘電体膜に低温で形成しても緻密性、比誘電率が高いチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする第一誘電体薄膜、結晶性誘電体膜に低温で形成すると緻密化しづらく、誘電損失が高いチタン酸バリウム若しくは酸化チタンを主成分とする第二誘電体膜、低温で形成しても高耐圧、低誘電損失な窒化シリコン若しくは酸窒化シリコンを主成分とする第三誘電体膜をこの順に積層したものを用いることにより、絶縁耐圧が飛躍的に上昇し、さらに硫化物系発光層との反応により、黒色化するといった問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の薄膜EL素子の概略断面図である。
【図2】実施形態1で用いた絶縁層の「電流密度−印加電圧」特性グラフである。
【図3】実施形態1の薄膜EL素子の「印加電圧−発光輝度」特性グラフである。
【図4】実施形態2の薄膜EL素子の概略断面図である。
【図5】実施形態2で用いた絶縁層の「電流密度−印加電圧」特性グラフである。
【図6】実施形態2の薄膜EL素子の「印加電圧−発光輝度」特性グラフである。
【図7】従来の薄膜EL素子の概略断面図である。
【符号の説明】
1、11、21 基板
2、12、22 下部電極
3、13 第一誘電体膜(チタン酸ジルコン酸鉛膜)
4 第二誘電体膜(チタン酸バリウム膜)
5、15 第三誘電体膜(窒化シリコン膜)
6、16、26 発光層
7、17、25、27 窒化シリコン膜
8、18、24、28 酸化シリコン膜
9、19、29 上部電極
14 第二誘電体膜(酸化チタン膜)

Claims (5)

  1. 基板上に、下部電極、下部絶縁層、発光層、上部絶縁層、上部電極をこの順で構成してなる薄膜EL素子において、
    下部絶縁層が、少なくとも、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする膜厚が200〜300nmである第一誘電体膜と、チタン酸バリウム若しくは酸化チタンを主成分とする第二誘電体膜と、窒化シリコン若しくは酸窒化シリコンを主成分とする第三誘電体膜とをこの順に積層したものを含むことを特徴とする薄膜EL素子。
  2. 第二誘電体膜が、チタン酸バリウムを主成分とし、膜厚150〜350nmを有する請求項1に記載の薄膜EL素子。
  3. 第二誘電体膜が、酸化チタンを主成分とし、膜厚100〜200nmを有する請求項1に記載の薄膜EL素子。
  4. 第三誘電体膜の膜厚が40〜100nmである請求項1〜のいずれかに記載の薄膜EL素子。
  5. 予め下部電極が形成された基板上に、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とした非晶質の第一誘電体膜の前駆体膜を成膜し、第一誘電体膜の前駆体膜上に酸化チタンを主成分とした非晶質の第二誘電体膜の前駆体膜を成膜し、チタン酸ジルコン酸鉛の結晶化温度以上に熱処理して第一誘電体膜及び第二誘電体膜を形成することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の薄膜EL素子の製造方法。
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