JP3894846B2 - 難燃メッシュシート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃メッシュシートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は耐水性、耐候性、難燃性などの耐久保持性に優れ、印刷性、縫製性が高い難燃メッシュシートに関するものである。本発明の難燃メッシュシートは、自動車用カーゴネット、工事用メッシュシート、及び土木用ネット等の繊維シート構造物を構成する材料として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用カーゴネット、及び工事用メッシュシート等に用いられる繊維シート構造物については、種々の製造方法が知られており、例えば、特開昭52−18995号には、ポリエステル繊維メッシュ布帛に接着前処理を施し、この前処理された表面をポリ塩化ビニル系樹脂により被覆する方法が開示されている。この製法により得られるポリ塩化ビニル系樹脂被覆構造物は、柔軟性、耐久性及び難燃性においては優れているが、しかし、燃焼時にポリ塩化ビニル系樹脂に起因する有害な塩化水素ガスを発生するということが、大きな問題点となっている。
【0003】
この問題を解消するため、ハロゲン元素を含まない被覆用樹脂を用いることが検討されている。このような樹脂系では、それに難燃性を付与するために、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の無機化合物を添加する方法、赤燐を添加する方法などが知られているが、前者において、満足な難燃性を得るためには多量の無機化合物の添加が必要となるため、これから得られる被覆構造物は、柔軟性及び耐久性に劣るという欠点があり、また後者では、赤燐が製品を濃い褐色に着色するため、色彩の多様性に劣るという欠点があった。
【0004】
また、特開平6−340815号には、熱可塑性樹脂に、メラミンにより被覆されたポリ燐酸アンモニウムと特定の含窒素有機化合物とを添加する方法が開示されている。メラミン被覆はポリ燐酸アンモニウムの耐水性向上に有効な手段であるが、屋外など過酷な使用条件下では、経時的に難燃性が低下してしまうという欠点があった。
また、特開平11−302979号、及び特開平11−323736号には、ウレタン系樹脂による難燃積層体が開示されているが、難燃フィラーの添加によりTgが低いにも関わらず製品の風合いが硬く、養生メッシュシート用途ではその展張や収納時の作業性が低下するという問題がある。
【0005】
さらに、特開2000−8276号及び特開2000−8277号には、オレフィン系樹脂による難燃積層体が開示されている。一般に養生メッシュシート用途ではマーキングインキを用いる印刷適性が高いことが不可欠であるが、オレフィン系樹脂による難燃積層体は印刷適性が悪く、更に養生メッシュシート用途では、摩耗耐久性が低いという点が問題となっている。
さらに、特開2001−159049号には、ポリエステル系樹脂により被覆された養生メッシュシートが開示されている。一般に養生メッシュシート用途では使用後に洗濯を施されることは不可避であるが、このポリエステル系樹脂被覆層の、洗濯耐久性が問題となっている。この様に熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂を用いる場合、難燃性、耐久性、耐候性、及び作業性を満足する難燃性積層体は未だ得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、自動車用カーゴネット、建設工事用メッシュシート及び土木工事用ネット等の用途に好適な難燃メッシュシートを提供しようとするものである。特に本発明は、屋外など過酷な使用条件下においても、樹脂層の剥離、脱落などによる損傷が少なく、難燃性の経時的低下がなく、展張・収納時の作業負担が少なく、しかも廃棄、焼却、及びケミカルリサイクルが容易で環境負荷が少ない難燃メッシュシートを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の難燃メッシュシートは、ポリエステル繊維糸条から構成された粗目編織物からなる基布と、この基布を構成する糸条の少なくとも露出している周面上に形成された難燃性樹脂層とからなり、
前記難燃性樹脂層が、(1)100質量部のポリエステル系樹脂と、(2)燐酸エステル系化合物、ポリ燐酸アンモニウム系化合物、及び(イソ)シアヌル酸誘導体化合物から選ばれた少なくとも1種を含む5〜50質量部の難燃性付与剤と、並びに(3)アジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、及びカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を含む2〜20質量部の架橋剤とを含むことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の難燃メッシュシートにおいて、ポリエステル繊維糸条から構成された粗目編織物からなる基布と、この基布を構成する糸条の少なくとも露出している周面の全面上に形成された難燃性樹脂層とにより構成される。この場合、難燃性樹脂層は基布に塗布法、又は含浸法(浸漬法)を施して形成されたものであってもよく、或は、製編織前に、糸条の表面に含浸、塗布又はスプレー法などによって形成されてもよく、この場合、この難燃性樹脂被覆糸条から、メッシュシートを製編織してもよい。
【0009】
本発明の難燃メッシュシートに用いられるポリエステル繊維糸条から構成された粗目編織物からなる基布は、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンテレフタレートを主成分としポリエチレンテレフタレートの特性を保持する程度に第3成分を共重合もしくは混合したポリエステルを溶融紡糸して作られた繊維糸条であり、短繊維紡績糸、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものでもよい。ポリエステル繊維は帯電防止剤、難燃剤、顔料等が重合時あるいは紡糸時に添加された繊維であってもよい。より安定した難燃性を要求される用途に用いる場合には、難燃剤を添加した難燃性ポリエステル繊維であることが好ましい。また基布組織は織物、編物、いずれであってもよい。
【0010】
更に基布の編織組織にも格別の制限はないが、例えば、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目布状の編織物が好適に用いられる。
前記粗目編織物の目付は30〜700g/m2 であることが好ましく、また粗目編織物の透孔面積率は、粗目編織物の面積に対して10〜95%程度であることが好ましい。
【0011】
前記粗目基布には、それに耐水性、及び吸水防止性を付与する目的をもって、例えば、ワックスエマルジョン、樹脂バインダーを含むワックスエマルジョン、及びシリコーン系化合物のエマルジョン、及びこれらの溶液などを噴霧し、又は浸漬する方法により撥水前処理を予め施しておいてもよい。
【0012】
前記粗目基布には、その難燃性を付与する目的をもって、例えば、難燃性付与剤及び樹脂バインダーを含むエマルジョン及び溶液などを噴霧し、又は浸漬する方法により難燃前処理を予め施しておいてもよい。難燃性付与剤には格別な制限はなく、従来の難燃性付与剤から選んで適宜に使用してもよい。また、基布が合成繊維を含む場合、合成繊維を製造する段階において繊維形成原料に予め難燃性付与剤を添加して繊維を製造してもよい。この場合でも難燃性付与剤には格別の制限はなく、従来の難燃性付与剤を適宜選定して使用できる。
【0013】
本発明の難燃性樹脂層に用いられるポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸とイソフタル酸または脂肪族ジカルボン酸である酸成分と、炭素数2〜6個のグリコールまたはエーテルグリコールをアルコール成分として用いて共重合したポリエステル系樹脂を用いることができる。前記脂肪族ジカルボン酸としてはアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸またはそれらの低級アルキルエステル等が使用される。また炭素数2〜6個のグリコールとしてはエチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,2プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2ブタンジオール等が使用される。更に炭素数2〜6個のエーテルグリコールとしてはジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が使用される。
本発明の難燃性樹脂に用いられるポリエステル系樹脂は、製品に柔軟性を付与するために、共重合成分を調整してガラス転移点温度を調整する必要があり、ガラス転移点温度は−30℃から50℃程度にするのが好ましい。ガラス転移点温度が−30℃未満であると、製品表面にかなりのタックが生じ、実際の展張等の作業性、防汚性が不十分になることがある。またそれが50℃を超えると、得られる製品は硬い風合いを示し、展帳、収納の作業性が不十分になることがある。
【0014】
本発明の難燃性メッシュシートにおいて、その難燃性樹脂層に難燃性を付与することを目的として、難燃性付与剤が添加される。この難燃性付与剤としては、燐酸エステル系化合物、ポリ燐酸アンモニウム系化合物、及び(イソ)シアヌル酸誘導体化合物から選ばれた少なくとも1種が使用される。燐酸エステル系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、オクチルジフェニルホスフェート、及び高分子量化したポリホスフェートなどの縮合燐酸エステル類;ホスホン酸、ジホスフィン酸、ホスフィン酸等の亜燐酸及び縮合亜燐酸のエステル類などを用いることができる。また前記ポリ燐酸アンモニウム系化合物としては、好ましくはオルソ燐酸アンモニウムと尿素の縮合生成物が用いられる。ポリ燐酸アンモニウムはこのまま用いてもいいし、メラミンにより表面を被覆したもの、或はマイクロカプセル化したものを用いてもよい。更に前記(イソ)シアヌル酸誘導体化合物としては、メラミン、硫酸メラミン、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、メチロールメラミン、シアヌル酸トリメチルエステル、シアヌル酸トリエチルエステル、アンメリン、アンメリド、及び2,4,6−トリオキシシアニジンなどのシアヌル酸誘導体を用いることができる。また、イソアンメリン、イソメラミン、イソアンメリド、トリメチルカルボジイミド、トリエチルカルボジイミド、及びトリカルボイミドなどのイソシアヌル酸誘導体を用いることができる。特には、メラミンのイソシアヌル酸との反応により得られるメラミンシアヌレートが本発明に好適に用いることができる。
【0015】
また、難燃性を高めるために、必要に応じ、前記難燃性付与剤とともに、(イソ)シアヌル酸誘導体化合物以外の含窒素化合物、例えばジシアンジアミド、ジシアンジアミジシン、グアニジン、スルファミン酸グアニジン、燐酸グアニジン、及びジグアニドなどのシアナミド誘導体;並びに尿素、ジメチロール尿素、ジアセチル尿素、トリメチル尿素、N−ベンゾイル尿素、及び燐酸グアニル尿素などの尿素誘導体から選ばれた1種以上を併用してもよい。
【0016】
難燃性付与剤の添加量は、難燃性樹脂量における樹脂固形分に対して、5〜50質量%であることが好ましい。その添加量が5質量%未満では、得られる難燃性樹脂層において十分な難燃性を得ることができず、その添加量が50質量%を超えると、十分な耐久性を有する難燃性樹脂層を得ることができず、またコスト高となる。
【0017】
また、本発明の難燃メッシュシートの難燃性樹脂層には、適宜難燃助剤として無機系化合物を添加してもよい。これら無機系化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、四硼酸ナトリウム、燐酸マグネシウム、二燐酸ナトリウム、燐酸亜鉛などの結晶水を持つ無機水和物、メタ錫酸、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛などの錫系化合物並びに硼酸、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウムなどの硼酸化合物が好適に用いられ、これらは単独に、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
更に、本発明の難燃メッシュシートの難燃性樹脂層には、アジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、及びカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を含む架橋剤が必須成分として添加される。これらの架橋剤は、難燃性樹脂層の耐水性、耐候性、樹脂強度の低下を抑制すると共に、難燃性付与剤の耐水性、耐ブリード性を向上させる効果を有している。
本発明において架橋剤として用いられる前記アジリジン系化合物としては、分子内にアジリジニル基を含有するものであればよく、分子内に2個のアジリジニル基を含有する化合物、例えば、ジフェニルメタン−ビス−4−4′−N−N′−ジエチレンウレアなど、及び分子内に3個のアジリジニル基を含有する化合物、例えば、2,2−ビスハイドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アジリジニル)プロピオネート〕などが用いられる。
【0019】
本発明において架橋剤として用いられる前記カルボジイミド系化合物としては、有機ジイソシアネートを、ホスホレン化合物、金属カルボニル錯体化合物、及び燐酸エステルなどのように、カルボジイミド化を促進する触媒の存在下に、反応させることにより得られたものが好適に用いられる。具体的に述べるならば、ジプロピルカルボジイミド、ジヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジ−P−トルオイルカルボジイミド、及びトリイソプロピルベンゼンポリカルボジイミドなどを用いることができる。特には、トリイソプロピルベンゼンポリカルボジイミドなどのように多官能カルボジイミドは、耐久性がすぐれているので、好適に用いられる。
本発明において架橋剤として用いられる前記オキサゾリン系化合物としては、オキサゾール−4−カルボン酸の脱炭酸反応により得られるオキサゾールから誘導、生成される化合物が好適に用いられる。例えば、2−オキサゾリン、4−メチル−2−オキサゾリン、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、並びにスチレン、又はアクリル系化合物などのポリマーにオキサゾリル基をグラフトして得られる多官能オキサゾリンポリマーが用いられる。特には、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)などのような多官能オキサゾリンは耐久性がすぐれているので、本発明に好ましく用いられる。
【0020】
本発明において架橋剤として用いられる前記イソシアネート系化合物としては、脂肪族ジイソシアネート類、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートなど、脂環式ジイソシアネート類、例えば、イソホロンジイソシアネート、及び水添トリレンジイソシアネートなど、芳香族ジイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシレンジイソシアネートなど、イソシアヌレート類、例えば、トリス(ヘキサメチレンイソシアネート)イソシアヌレート、及びトリス(3−イソシアネートメチルベンジル)イソシアヌレートなど、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基末端をフェノール類、オキシム類、アルコール類、又はラクタム類等のブロック化剤でブロックして得られるブロックイソシアネート化合物類、並びに、前記化合物のイソシアネート基の一部にエチレングリコールなど親水性単量体が付加された変性イソシアヌレート化合物類などを例示することができる。分散性、耐水性の改良及び基布への接着性向上の観点から、特に、ブロックイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0021】
本発明において架橋剤として用いられる前記カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びジルコアルミニウム系カップリング剤から選ばれた少なくとも1種からなるものが好ましく用いられる。
シラン系カップリング剤としては、アミノシラン類、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど;エポキシシラン類、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなど;ビニルシラン類、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなど;メルカプトシラン類、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなど、が挙げられる。
チタン系カップリング剤としては、アルコキシ類、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、及びテトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタンなど;アシレート類、例えば、トリ−n−ブトキシチタンステアレート、及びイソプロポキシチタントリステアレートなどが挙げられる。
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、及びテトライソプロピルジルコネートなどが挙げられる。
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。また、ジルコアルミニウム系カップリング剤としては、テトラプロピルジルコアルミネートが挙げられる。
【0022】
これらの中で、耐水性、耐候性の観点から、特にγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシランを用いることが好ましい。
これら架橋剤は単独で用いてもよいし、また、2種以上を併用してもよい。架橋剤の添加量は、難燃性樹脂層の樹脂固形分に対して2〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは5〜15質量%である。添加量が2質量%未満では得られる難燃性樹脂層の耐水性及び難燃性における耐久性が不十分であり、またそれが20質量%を超えると製品の柔軟性が損なわれ、難燃性能も低下してしまうという問題を生ずる。
【0023】
本発明の難燃メッシュシートにおいて、難燃性樹脂層はポリエステル系樹脂と難燃性付与剤と、架橋剤とを含有するエマルジョン及び/又は溶液中に、粗目基布をディッピングし、乾燥することによって得られる。或は、基布形成用糸条に、上記と同様のディッピング及び乾燥を施し、得られた難燃性樹脂層被覆糸条によりメッシュシートを製編織してもよい。難燃性ポリエステル系樹脂配合組成物中には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填剤、顔料、増粘剤及び消泡剤などの1種以上を適宜添加してもよい。
【0024】
前記難燃性ポリエステル系樹脂配合組成物中には、難燃性樹脂層の難燃性、耐水性、柔軟性、防汚性、作業性、耐候性、及びリサイクル性を阻害しない程度のポリエステル系樹脂とは異種の樹脂が含まれていてもよい。前記ポリエステル系樹脂以外の異種樹脂としては、エチレンと不飽和単量体との共重合樹脂、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体。アクリル系樹脂、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル。ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などの汎用熱可塑性樹脂類などから選ぶことができる。
【0025】
粗目基布に対する難燃性樹脂層の付着質量は30〜800g/m2 であることが好ましく、更に好ましくは50〜500g/m2 である。難燃性樹脂層の付着質量が30g/m2 未満では、本発明の難燃メッシュシートの難燃性が不十分になることがあり、また難燃性樹脂層の付着質量が800g/m2 を超えると、得られた難燃メッシュシートの柔軟性が不十分になることがある。
【0026】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に具体的に説明する。
【0027】
製品の性能評価に用いられた測定方法は下記の通りである。
耐水性
耐温水性試験(40℃温水中に3日間浸漬)前の乾燥状態、及び後の湿潤状態における試験片の各々をJIS L−1096のスコット法に従って、つかみ間隔2cm、押圧荷重1kgf の条件下に、試験片に回数1,000回の屈曲試験を施し、その結果を目視により、屈曲試験による耐水性能として評価した。
【0028】
防炎性
耐温水性試験(70℃温水中に3日間浸漬)の前及び後の試験片の各々を、45度法防炎試験:JIS L−1091のA−1法もしくはA−2法に従って、炭化面積、炭化距離、残炎時間、残ジン時間を測定し、その性能を評価した。基準を満足した場合、防炎区分3合格とした。
剛軟性
JIS L−1096の45°カンチレバー法に従い、剛軟性を評価した。50mm以下のものは展張及び収納時の作業性が良好である。
【0029】
実施例1
粗目基布として、
ポリエステルフィラメント粗目状織物:
Figure 0003894846
を使用した。またポリエステル系樹脂の水性エマルジョンを用いて、下記組成の難燃樹脂エマルジョンを調製した。
Figure 0003894846
【0030】
前記難燃樹脂エマルジョンに、前記粗目基布を浸漬し、マングルで絞った後100℃で乾燥し、更に140℃で熱処理した。このとき、難燃層樹脂固形分質量に対するメラミンシアヌレート、及びカルボジイミド系架橋剤の添加量は、それぞれ20質量%、及び8質量%であった。得られたメッシュ状シートにおいて、樹脂付着量が140g/m2 であり、この積層体において、繊維性基布の糸条間に間隙空間が残されており、従って通気性を有するシートであった。この難燃メッシュシート組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0031】
実施例2
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、カルボジイミド系架橋剤の代りに、アジリジン系架橋剤(ジフェニルメタン−ビス−4−4′−N−N′−ジエチレンウレア)とカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)を、それぞれ1質量部を用いた。このときの架橋剤の総添加量は、難燃樹脂固形分質量に対して8質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0032】
実施例3
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、メラミンシアヌレートの代りに、オルソ燐酸アンモニウムと尿素とを縮合して得られたポリ燐酸アンモニウム(平均分子量10,000)5質量部を用いた。このときのポリ燐酸アンモニウムの添加量は、難燃層樹脂固形分質量に対して20質量%であった。更に、カルボジイミド系架橋剤の代りに、オキサゾリン系架橋剤2,2′−ビス(2−オキサゾリン)2質量部を用いた。このときの架橋剤の添加量は、難燃樹脂固形分質量に対して8質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0033】
実施例4
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、メラミンシアヌレートの代りに、オルソ燐酸アンモニウムと尿素とを縮合して得られるポリ燐酸アンモニウム(平均分子量10,000)の粒子をメラミン被覆によりマイクロカプセル化処理して得られた難燃性付与剤5質量部を用いた。このときのマイクロカプセル化したポリ燐酸アンモニウムの添加量は、難燃層樹脂固形分質量に対して20質量%であった。更に、カルボジイミド系架橋剤の代りに、フェノールブロック化ヘキサメチレンジイソシアネート2質量部を添加した。このときの架橋剤の添加量は、難燃層樹脂固形分質量に対して8質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0034】
実施例5
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、メラミンシアヌレートの単独使用に代えて、メラミンシアヌレートと、ポリ燐酸アンモニウム(平均分子量10,000)とを、それぞれ2.5質量部を用いた。このときの難燃性付与剤の総添加量は、難燃層樹脂固形分質量に対して20質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0035】
実施例6
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、メラミンシアヌレートの単独使用に代えて、メラミンシアヌレートとレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)とを、それぞれ2.5質量部を用いた。このときの難燃性付与剤の総添加量は、難燃層樹脂固形分質量に対して20質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0036】
実施例7
粗目基布として、
ポリエステルフィラメント粗目状織物:
Figure 0003894846
を使用した。またポリエステル系樹脂の水性エマルジョンを用いて、下記組成の難燃樹脂エマルジョンを調製した。
Figure 0003894846
【0037】
前記難燃樹脂エマルジョン中に、前記粗目基布を浸漬し、マングルで絞った後100℃で乾燥し、更に140℃で熱処理した。このとき、難燃層樹脂固形分質量に対するメラミンシアヌレート、及びカルボジイミド系架橋剤の添加量は、それぞれ20質量%、及び8質量%であった。得られた積層体において、樹脂付着量が180g/m2 であり、この難燃メッシュシート組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0038】
比較例1
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、難燃樹脂層にカルボジイミド系架橋剤を添加しなかった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0039】
比較例2
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、難燃樹脂層のカルボジイミド系架橋剤の添加量を25質量部に変更した。このときの架橋剤の添加量は、難燃樹脂固形分質量に対して100質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0040】
比較例3
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、難燃樹脂層のメラミンシアヌレートの添加量を100質量部に変更した。このときのメラミンイソシアヌレートの添加量は、難燃樹脂固形分に対して400質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0041】
比較例4
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、難燃樹脂層のメラミンシアヌレートの添加量を1.0質量部に変更した。このときのメラミンシアヌレートの添加量は、難燃樹脂固形分質量に対して4質量%であった。得られた難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0042】
比較例5
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、下記組成の難燃樹脂エマルジョンを調製し使用した。
Figure 0003894846
【0043】
前記難燃樹脂エマルジョンに、前記粗目基布を浸漬し、マングルで絞った後100℃で乾燥し、更に140℃で熱処理した。このとき、難燃層樹脂固形分質量に対するポリ燐酸アンモニウム、及びカルボジイミド系架橋剤の添加量は、それぞれ20質量%、及び10質量%であった。得られた積層体において、樹脂付着量が140g/m2 であった。この難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0044】
比較例6
実施例1と同様にして難燃メッシュシートを作製し、試験を行った。但し、下記組成の難燃樹脂エマルジョンを調製し使用した。
Figure 0003894846
【0045】
前記難燃樹脂エマルジョンに、前記粗目基布を浸漬し、マングルで絞った後100℃で乾燥し、更に140℃で熱処理した。このとき、難燃層樹脂固形分質量に対するメラミンシアヌレート、及びカルボジイミド系架橋剤の添加量は、それぞれ33質量%、及び10質量%であった。得られた積層体において、樹脂付着量が140g/m2 であった。この難燃メッシュシートの組成及び試験結果を表1〜2に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003894846
【0047】
【表2】
Figure 0003894846
【0048】
表1〜2から明らかなように、ポリエステル系樹脂層中に、難燃性付与剤に加えて、アジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、及びカップリング剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤を必須成分として含有させることにより、得られた難燃メッシュシートの難燃耐久性、耐水性、柔軟性が著しく向上することが確認された。
【0049】
【発明の効果】
本発明により得られる難燃メッシュシートは、耐久性、柔軟性、難燃性に優れており、自動車用カーゴネット、工事用メッシュシート、及び土木用ネットなどに好適である。また、この難燃メッシュシートは焼却が容易であり、特にケミカルリサイクルによりポリエステル樹脂原料となるモノマーの回収が可能となり環境負荷が少ないという利点を有する。

Claims (1)

  1. ポリエステル繊維糸条から構成された粗目編織物からなる基布と、この基布を構成する糸条の少なくとも露出している周面に形成された難燃性樹脂層とからなり、
    前記難燃性樹脂層が、(1)100質量部のポリエステル系樹脂と、(2)燐酸エステル系化合物、ポリ燐酸アンモニウム系化合物、及び(イソ)シアヌル酸誘導体化合物から選ばれた少なくとも1種を含む5〜50質量部の難燃性付与剤と、並びに(3)アジリジン系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物、及びカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を含む2〜20質量部の架橋剤とを含むことを特徴とする難燃メッシュシート。
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