JP3893477B2 - 複式筆記具 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の筆記体の筆記先端部を選択的に軸先より突出させるようにした複式筆記具の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のボールペン筆記体を押出す構造のノック式の複式筆記具が知られており、軸内のノック操作部材に固定された筆記体を、軸内に設けた縦溝に沿って夫々摺動自在として、選択的にひとつの筆記体の先端を軸先端孔から突出させて係合し、夫々が突出することにより他の筆記体の係合を解除してリターンスプリングの作用により軸内に収納させるように構成されている。
【0003】
又、従来知られる油性ボールペンのインキは高粘度で、筆記の際にボテ、筆記描線のムラ、濃度の薄さ、筆記圧が高い等の問題が存在する。又、従来の油性ボールペンの改良として相対的に低粘度のインキであるが、先端ボールの回転でより粘度が低下してインキがスムーズに流出する、所謂剪断減粘性を有した水性のインキを充填したボールペンが知られている。そのようなボールペンは上向き筆記をした時には先端ボール背面のインキが無くなると、インキのヘッドが直に加わる為に顕著な逆流が生じて手や衣服を汚す危険がある。又、インキの粘度が低く流出量が多いが故に、チップ側を下向きにした場合に先端ボールとチップ抱持部の隙間が生じるとインキが滲みでる(直流)問題が生じる。又更に上向き筆記後やノックや落下等の衝撃後で先端ボール背面のインキが逆流傾向となる為に筆記掠れが起きる問題が存在する。
その為に、通常はインキの後端に筆記時のインキの消耗に追随して移動するが、インキの自重や衝撃に対してインキの逆流を抑制するグリース状のフォロアが設けられる。又、先端ボールがチップのボール抱持部に密接するように先端ボールの背面をスプリングで押圧する手段やチップの後端にボール弁を遊嵌した弁室を設ける手段が用いられている。
又、この種のボールペンは、チップ先端部が服地に接触しているとインキが吸い出されて服地を汚損する問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のノック式の複式筆記具は構造が単純なため安価な複式筆記具として利用されている。本発明は単純な構造を維持しつつ、筆記先端部が突出したままポケットに差されても服を汚損する問題が無く、且つ芯の繰出し操作が必要なシャープペンシルや消しゴム繰り出し体を搭載した便利で安価な複式筆記具の提供を可能とすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために以下の構成を有する。
請求項1に記載の発明に係る複式筆記具は、先軸に対して後軸を接合した軸筒内に複数本の筆記体を収納して、筆記体と連接したノック操作部材を後軸後端近傍に至り設けた縦溝に突出させ、ノック操作部材を軸先方に摺動させて前方で係止することにより選択的に先軸の先端孔から筆記先端部を突出可能とした複式筆記具に於いて、後軸の後方軸側面に穿設した窓部に脚部を嵌入して後軸に対し適宜回動するように軸支されたクリップと、後軸の軸心部にスプリングで後方に附勢されて前後動可能となる係止ピンが配設されて、クリップの脚部の前端に突出状に設けたカム部が係止ピンに設けた傾斜状のカム面に対接するように成され、筆記体の一本を先軸の先端口から突出させ、そのノック操作部材が後軸に対し前進位置に係止された状態でクリップの先端部を後軸の側面から離反する方向に可動した時に、カム部がカム面を押圧して係止ピンが前進され、係止ピンに設けた係止解除用の段部がノック操作部材の後端部に設けた突起に当接して、ノック操作部材の係止状態を解除して筆記先端部が先軸の先端口内に没入没入可能となり、又、筆記体の内、少なくとも一本は先端ボールの回転でより粘度が低下してインキがスムーズに流出する、所謂剪断減粘性を有した水性のインキ等の低粘度インキを充填したボールペン筆記体となされている。
【0006】
【実施例】
先ず、図1乃至図5は本発明の実施例を示しており、図1は複式筆記具の外観を示す斜視図である。図2乃至図4に示すように、後軸1の後方側面には、クリップ9を嵌装する短めの窓部3と複数箇所で後端部近傍に至り縦溝2が穿設されて内孔部後方には筒状でその側面にスリット4aを有した軸部4が形成されている。又、後軸の窓部3と同軸上の前方に孔部1aが穿設されている。
又、後端面の中心に小孔19を有した軸部13と該軸部13の廻りに縦溝2と対応した複数の孔14が穿設され、側面に適宜箇所で突部15と円周リブ状の係止部16(適宜箇所の突部でも良い)が形成された継ぎ手12が後軸1の先端孔に固着部21で止着されている。尚、突部15は後軸1の先端孔に形成された溝(図示せず)に嵌入して回転止め、且つ縦溝2と孔14が同軸上に対応するよう設けられている。
【0007】
一方、先方より小径部24、中径部40、大径部39より成る係止ピン6の大径部39の側面には溝8が穿設されてその溝の前面に傾斜状のカム面6aが形成され、大径部39と中径部40の接続部に傾斜状の段部7が、中径部40と小径部24の接続部に段部38が形成されて、前記継ぎ手12の軸部13の端面と段部38との間にスプリング11が附勢された状態に係止ピン6が後軸1の後端から軸部4を挿通して取付けられ、小径部24の先端が軸部13の小孔19に嵌入し、大径部39が軸部4に位置して軸支されると共に、大径部39の溝8には上記クリップ9の基部に形成した脚部9aが窓部3と軸部4のスリット4aを挿通して嵌入し、脚部9aの前端に形成された突出状のカム部9cが前記カム面6aに対接した状態でクリップ9が後軸1の窓部3に適宜回動可能に軸支される。
【0008】
又、クリップ9の先端部内側に設けられた玉部9dが後軸1の孔部1aに没入した状態となる。
この状態から、クリップ9の先端部を後軸1の側面から離反する方向に可動した時に、前記カム部9cがカム面6aを押圧して係止ピン6が前進する。
尚、クリップ9の軸支手段は種々考えられるが、その一手段として脚部9aの両側面に設けた突状の軸支部9bを後軸の窓部3の側壁に設けた溝部3aに係止している。
【0009】
又、ノック操作部材26は板状で後方で外側に膨出した後端部27と内側に適宜突起28が形成され、先方に軸部29とその先端に筆記体の後端部を着脱可能に止着する係止部30が形成されている。ノック操作部26は複数個用意されて夫々の係止部30にはシャープペンシル筆記体32、ボールペン筆記体33、消しゴム繰り出し体34の後端が止着されて夫々後軸1に穿設されたそれぞれの縦溝2に嵌装され、夫々の筆記体は継ぎ手12のそれぞれの孔14を貫通してリターンスプリング31がノック操作部26の段部42と継ぎ手12の後端面との間に附勢されて夫々の筆記体は後軸1の後方に常時引き込まれるよう配設されている。
【0010】
又、その他の筆記体としては上記消しゴム繰り出し体34と同等のものに色芯等を繰り出し可能に取付けたものや、他色のボールペン筆記体が取付けられる。又、上記天冠5には太径の消しゴムを備えることも可能である。又、シャープペンシル筆記体は通常の複合筆記具に使用されるシャープペンシル要素と同じ構成を有するものでノックにより芯を繰り出す。又、消しゴム繰り出し体はシャープペンシル筆記体と基本的には同じもので芯針を介在させて消しゴムを繰り出すように構成されている。
【0011】
又、ボールペン筆記体は、上述した先端ボールの回転でより粘度が低下してインキがスムーズに流出する、所謂剪断減粘性を有した水性のインキ等の低粘度インキを充填したボールペンが適用される。
【0012】
ところで、上記継ぎ手12の側面には伸縮自在な弾性体17が嵌装され、継ぎ手12には先方に形成した係止部16と係合して着脱可能ではあるが抜け止め係止する係止部23を備えた先軸25が取付けられ、前記弾性体17は後軸1の先端面と先軸25の後端面との間に配設される。又、先軸25の内段43と継ぎ手12の先端との間に隙間22が形成されて、後軸1は先軸25に対して軸推移する。尚、隙間22は芯や消しゴムの繰り出しの為のノックストロークに十分な寸法を有している。又、実施例では先軸25に対して継ぎ手12を軸推移可能としたが、先軸と継ぎ手を固定して継ぎ手に対して後軸を軸推移可能と構成することも可能である。
【0013】
【作用】
本発明の構成は以上の通りであり、図3は筆記部の収納状態を示している。本発明の複式筆記具は複数本の筆記体を有するものであるが、図示が複雑となるため一本の筆記体を搭載した状態で他を省略している。先ず図4に示すようにノック操作部材26の後端部27をノックして軸先方に摺動させ、後端部27を後軸1の軸部4先端の端部20に係合させるとボールペン筆記体33の筆記先端部が先軸先端口36から突出する。この状態から図5に示すようにクリップ9の先端部を後軸側面から離反する方向に可動させると、それと連動して脚部のカム部9cが係止ピン6のカム面6aを押圧して前進させ、傾斜状の段部7がノック操作部材26の突起28に当接し、後端部27と軸部4先端の端部20との係止状態を解除して筆記先端部は軸先端口36より先軸25内に没入する。又、他のシャープペンシル筆記体32や消しゴム繰り出し体34の場合も同様に作用する。尚、シャープペンシル筆記体32や消しゴム筆記体34の筆記先端部を先軸先端孔36から突出させた場合には先軸25に対して後軸1を軸推移させることで芯や消しゴム35を繰り出すことが可能である。
【0014】
又、筆記先端部が先軸の先端口36から突出した状態でクリップ9をポケット等に差した場合、上述したように筆記先端部が先端口内に没入するので筆記先端部で服を汚す心配がない。尚、クリップの玉部9dが軸筒の孔部1aに深く没入しているので、例え薄地の服であってもクリップ先端部の離反ストロークは十分確保され、従ってノック操作部材の係止を確実に解除可能とする。
【0015】
ところで、筆記体の収納本数が少ない場合には突出した筆記先端部を没入させるのに他のノック操作部を軸推移させて相互のノック操作部の干渉により係止状態を解除する方法を行っているが、筆記体の収納本数が多くなるとノック操作部どうしの干渉による係止の解除方法は設計的に困難になる。又、突出した筆記体に対して解除側の筆記体が前進するため筆記体どうしが干渉しあって筆記体の切り替え操作に支障をきたす。本発明ではクリップと連動する係止ピンを設けたことにより筆記体どうしの干渉がないので切り替え操作はスムーズである。
【0016】
【発明の効果】
本発明の構成及び作用は以上の通りであり、筆記先端部が突出したままポケットに差されても服を汚損する問題が無く、単純な構造で、且つシャープペンシル筆記体、ボールペン筆記体、消しゴム繰り出し体、色芯繰り出し体等の多数の筆記体が選択して使用できる便利な複式筆記具が安価に供給可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である複式筆記具の筆記部の収納状態を示した外観斜視図である。
【図2】本発明の複式筆記具の部品の展開状態を示した斜視図である。
【図3】筆記具の収納状態に於ける要部縦断面図である。
【図4】筆記先端部を先軸の先端口から突出させた状態を示した要部縦断面図である。
【図5】クリップを後軸側面から離反させて、突出した筆記先端部を先軸内に没入させる瞬間を示した要部縦断面図である。
【符号の説明】
1 後軸
1a 孔部
2 縦溝
3 窓部
3a 溝部
4 軸部
4a スリット
5 天冠
6 係止ピン
6a カム面
7 段部
8 溝
9 クリップ
9a 脚部
9b 軸支部
9c カム部
9d 玉部
11 スプリング
12 継ぎ手
13 軸部
14 孔
15 突部
16 係止部
17 弾性体
18 後端孔
19 小孔
20 端部
21 固着部
22 隙間
23 係止部
24 小径部
25 先軸
26 ノック操作部材
27 後端部
28 突起
29 軸部
30 係止部
31 リターンスプリング
32 シャープペンシル筆記体
33 ボールペン筆記体
34 消しゴム繰り出し体
35 消しゴム
36 先端口
38 段部
39 大径部
40 中径部
42 段部
43 内段
Claims (1)
- 先軸に対して後軸を接合した軸筒内に複数本の筆記体を収納して、筆記体と連接したノック操作部材を後軸後端近傍に至り設けた縦溝に突出させ、ノック操作部材を軸先方に摺動させて前方で係止することにより選択的に先軸の先端孔から筆記先端部を突出可能とした複式筆記具に於いて、クリップは後軸に対し先端部が後軸側面から離反する方向に回動するように軸支されており、後軸の軸心部にスプリングで後方に附勢されて前後動可能となる係止ピンが配設されて、クリップの脚部の前端に突出状に設けたカム面が係止ピンに設けた傾斜状のカム面に対接するように成され、筆記体の一本を先軸の先端口から突出させて、そのノック操作部材が後軸に対し前進位置に係止された状態でクリップの先端部を後軸の側面から離反する方向に可動した時に、それと連動して脚部のカム部が係止ピンのカム面を押圧することによりその可動が前進位置に係止されたノック操作部材の係止状態が解除されるように伝達されて筆記先端部が先軸の先端口内に没入可能となり、又、上記筆記体の内、少なくとも一本は先端ボールの回転でより粘度が低下してインキがスムーズに流出する、所謂剪断減粘性を有した水性のインキ等の低粘度インキを充填したボールペン筆記体であることを特徴とする複式筆記具。
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- 1998-07-28 JP JP22656598A patent/JP3893477B2/ja not_active Expired - Fee Related
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