JP3892719B2 - 逆印刷が施された不織布およびそれからなる包装材 - Google Patents

逆印刷が施された不織布およびそれからなる包装材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、片面に印刷等のプリント加工が施された逆印刷が施された不織布であって、表面側(印刷面と逆側)から見たときに印刷が鮮明であり、また、逆印刷が施されてなる包装材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装材に使用されている基材としては、紙、紙と合成樹脂からなるワリフを貼り合わせたもの、フィルム、不織布等が挙げられ、それらの片面には印刷加工が行われている。印刷加工は、それら基材の表面に行われているのが通常であるが、この場合、下記(1)〜(4)のような問題点が生じる。
【0003】
(1)包装材に、製袋加工を施して袋状の充填基材として使用する場合、包装材の表面に印刷が行われていると、包装充填機でヒートシール加工を行う際に、包装材表面の印刷インクと包装充填機のヒーター部が直に接するため、ヒーター部にインクが焼き付いて汚れやすく、清掃を頻繁に行う必要がある。
【0004】
(2)印刷加工において、水溶性インクが用いられている場合、湿った手等で触れた場合に、容易に印刷インクが手や基材表面で滲む。
【0005】
(3)充填包装材としては、乾燥剤を充填する包材がよく知られているが、乾燥剤は食品と一緒に入れる場合が多く、食品と充填包装材の表面に施された印刷用インクとが接触することは、あまり好まれない。
【0006】
(4)包装材として紙が使用されている場合、製袋加工時に紙粉が発生し、人体に悪影響がある。
【0007】
このような問題に鑑みて、包装材として、透明性の高いフィルムに裏印刷が施さたものが提案されている(特開平11−124303号公報)が、フィルムは引裂強力が弱いため、充填物(石灰、シリカゲル等の乾燥剤等)によっては、一定の高い強度を要するものがあり適しない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するものであって、加工段階や使用時において、上記問題が生じないように印刷加工が施すことが可能で、かつ、使用に耐える強度を有する基材および包装材を提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル系繊維からなる不織布であり、該不織布は、一対の熱平滑ロールにより熱圧着処理が施されてなり、かつ白度が70%以下であり、不織布の片面に、印刷された文字やデザイン等を裏側から見た状態となるように印刷が施され、印刷が施された面と反対側の面を表側の面として用いることを特徴とする逆印刷が施された不織布を要旨とするものである。
【0011】
また、本発明は、前記逆印刷が施された不織布よりなることを特徴とする包装材を要旨とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記逆印刷が施された不織布の印刷面側にフィルムが積層されていることを特徴とする包装材を要旨とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の不織布は、ポリエステル系繊維からなっている。ここでポリエステル系繊維とは、ポリエステル系重合体を主たる構成成分とする繊維をいい、ポリエステル系重合体のみからなる繊維であっても、また、ポリエステル系重合体とポリエステル系重合体以外の重合体(ポリオレフィン系重合体やポリアミド系重合体等)とからなる複合形態の繊維であってもよい。ポリエステル系重合体を主たる構成成分とすることで、得られるポリエステル系繊維および裏印刷用不織布に、本発明が目的とする強力を付与することができる。
【0015】
本発明で用いるポリエステル系重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル系重合体が挙げれ、必要に応じて他の成分を共重合させたものであってもよい。
【0016】
本発明に用いるポリエステル系繊維は、1種のポリエステル系重合体のみからなる単相形態の繊維であっても、2種のポリエステル系重合体が芯鞘型、サイドバイサイド型等に複合した形態の繊維であってもよい。また、ポリエステル系重合体と、ポリオレフィン系重合体あるいはポリアミド重合体とが芯鞘型、サイドバイサイド型等に複合した形態の繊維であってもよい。
【0017】
芯鞘型の複合形態を採用する場合は、芯部に高融点重合体、鞘部に低融点重合体を配した芯鞘型複合繊維とする。低融点重合体を鞘部に配することにより、本発明の包装材を製袋加工する際に、ヒートシールにより鞘部の重合体のみ溶融または軟化させ、芯部の高融点重合体は繊維形態を維持させることが可能であり、ヒートシール部の強力が優れるため好ましい。
【0018】
本発明に用いるポリエステル系繊維の形態は、短繊維であっても長繊維であってもよいが、機械的強力に優れることから長繊維であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるポリエステル系繊維は、酸化チタンを0.05〜1.5質量%含有していることが好ましい。酸化チタンの含有量が0.05質量%未満となると、ポリエステル系繊維を紡糸する際に、安定して紡糸することができず、シート化が困難となり、生産性が悪くなる。一方、酸化チタンの含有量が1.5質量%を超えると、ポリエステル系繊維の透明性が劣る傾向となって、本発明が目的とする白度を70%以下を満足できなくなり、裏印刷した際の印刷の鮮明性に劣る傾向となる。
【0020】
ポリエステル系長繊維の単糸繊度は、1〜6デシテックスであることが好ましい。1デシテックス未満であると、強力が低くなり、使用の際に破れやすいものとなる。一方、6デシテックスを超えると、繊維間の空隙が大きくなる傾向にあり、本発明の目的が達することができない場合がある。
【0021】
本発明の不織布は、上記ポリエステル系繊維が集積されてなり、一対の熱平滑ロールにより熱圧着処理が施されているものである。平滑ロールの設定温度は、ポリエステル系繊維の繊維表面を構成している重合体の融点をTmとしたとき、(Tm−5)℃〜(Tm−100)℃の温度範囲とし、平滑ロール間の線圧は200〜1000N/cmとすることが好ましい。
【0022】
本発明において、一対の熱平滑ロールに通すことにより得られた本発明の不織布が、裏印刷による鮮明性が優れる理由としては、次のことが考えられる。すなわち、熱平滑ロールによる熱圧着処理により、不織布表面は平滑となり、一方、不織布内部においても、繊維の横断面が押し潰されて偏平化し、また、繊維と繊維との間の空隙が埋まる。そして、不織布に自然光が当たった場合、不織布内においては、繊維が偏平化し、かつ繊維間空隙が埋まった状態であるため、光は拡散しにくく、良好に透過するものとなる。したがって、このような不織布に逆印刷が施されていても、表(印刷面と反対側)から見た場合に、印刷が鮮明に見えると考えられる。
【0023】
ここで、逆印刷とは、印刷された文字やデザイン等を裏側から見た状態となるように印刷することをいう。
【0024】
本発明においては、一対の熱平滑ロールによる熱圧着処理を施す不織ウエブとしては、繊維が単に集積されてなる不織ウエブであってもよいが、裏印刷用不織布の機械的強力を向上させることを目的として、熱エンボス装置による部分的熱圧着部が形成された不織布を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の不織布の白度は、70%以下である。不織布の白度が70%を超えると、不織布に印刷を施しても、その印刷の鮮明性に劣るため、本発明の目的を達成することができない。ここで、白度は、JIS P 8138 A法に基づき測定を行った不透明度C(%)の値である。
【0026】
本発明の不織布は、全光線透過率に対する拡散透過率の割合で示されるヘーズ値が85%以下であることが好ましい。ヘーズ値が85%を超えると、不織布に印刷を施しても、その印刷の鮮明性に劣る傾向となる。ここで、ヘーズ値は、JIS K 7105に基づき、下記式により求めたものとする。
ヘーズ値(%)=(Td/Tt)×100
上式において、Td:拡散透過率(%)、Tt:全光線透過率(%)である。なお、本発明においては、サンプル10点の平均値よりヘーズ値を求めた。
【0027】
また、不織布においては、強力を向上するために、バインダー樹脂を付与してもよい。バインダー樹脂としては、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸ブチル,アクリロニトリル,スチレン等のモノマーを、2種以上組み合わせて所望のモル比で共重合した共重合体を採用することが好ましい。不織布に付与するバインダー樹脂の量としては、印刷の鮮明性が劣らない範囲で、すなわち前記白度およびヘーズ値の範囲が保たれる量とする。
【0028】
織布の目付は、10〜80g/m2であることが好ましい。目付が10g/m2未満であると、引張強力および引裂強力に劣るものとなり、用途によっては、使用できない場合がある。一方、目付が80g/m2を超えると、厚みが増し、印刷の鮮明性に劣る傾向となる。
【0029】
上記した本発明の不織布には、片面に逆印刷を施して、包装材として用いることができる。また、包装材だけでなく、各種プリント製品とすることができる。
【0030】
また、本発明の不織布の片面に、フィルムを積層した不織布積層体としてもよい。片面にフィルムを積層することにより、製袋加工の際には、フィルム面同士が接するように設置し、フィルムをヒートシーラーにより溶融または軟化させて、容易に接着させることができる。
【0032】
また、逆印刷された不織布の印刷面側にフィルムを積層させたものを、包装材として、あるいは各種プリント製品とすることができる。この場合、印刷面がフィルムにより覆われることとなり、印刷インクが他のものと接触することがなく好ましい。また、製袋加工の際には、前記したようにフィルム面同士が接するように設置し、フィルムをヒートシーラーにより溶融または軟化させて、両者を接着させることができる。
【0033】
織布の片面に積層するフィルムとしては、本発明の目的を達するものであれば、特に限定されるものではなく、公知のポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ナイロン系フィルム、エチレンビニルアルコール系フィルム等を用いることができる。積層方法としては、押出しラミネート法により、織布の片面に積層すればよい。
【0034】
また、乾燥剤を包装する包材のように用途によっては、適度な通気性を確保するために、微多孔を有するフィルムを用いてもよい。あるいは、フィルムを積層後、孔を空けてもよい。
【0035】
印刷方法については、従来公知のオフセット印刷、フレキソ印刷等の方法を用いればよく、印刷用インクについても、水性インクあるいは油性インクのどちらを用いてもよい。印刷の色の濃度は、裏印刷をした場合に、商品名や注意事項等の情報が読めるようにする。
【0036】
【実施例】
次に実施例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特性値については、以下の測定法に基づいて行った。
(1)引張強力(N)および引張伸度(%):JIS−L−1096 6.12.1 B法 グラブ法に準拠し、10個の試料片のタテ方向およびヨコ方向について測定し、その平均値を引張強力(N)および引張伸度(%)とした。
【0037】
(2)引裂強力(N):JIS L−1096 6.15.5 D法 ペンジュラム法に基づき、10個の試料片のタテ方向について測定し、その平均値を引裂強力(N)とした。
【0038】
(3)印刷の鮮明性:不織布に印刷を施し、印刷が施された面と逆の面から印刷状態を観察し、その鮮明度について評価を行った。評価は下記2段階で行った。
○:印刷が鮮明に見える。
×:印刷がかすんで見える。
【0039】
実施例1
スパンボンド法により不織布を作成した。すなわち、酸化チタンを0.4質量%含有してなるポリエチレンテレフタレートを繊維断面が円形となる紡糸口金より溶融温度290℃で溶融紡出した。紡出糸条を紡糸速度5000m/分でエアーサッカーにて繊度3.3デシテックスになるよう引き取り、延伸後の繊維をネット上に、目付50g/m2の不織ウエブになるように捕集した。得られた不織ウエブをエンボスロールと平滑ロールとからなるエンボス装置にて、両ロール表面温度を200℃に設定し、部分熱圧着率30%で部分熱圧着処理を行った。
【0040】
次いで、一対の熱平滑ロールに通して、熱圧着処理を施した。両平滑ロールの表面温度を170℃、線圧200N/cmに設定し、厚み100μmの不織布を得た。
【0041】
実施例2
酸化チタンを0.4質量%含有してなるポリエチレンテレフタレートを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とし、構成比が質量比1/1とし、芯鞘型複合紡糸口金より溶融温度290℃で溶融紡出した。紡出糸条を紡糸速度5000m/分でエアーサッカーにて繊度3.3デシテックスになるよう引き取り、延伸後の繊維をネット上に、目付50g/m2の不織ウエブになるように捕集した。得られた不織ウエブをエンボスロールと平滑ロールとからなるエンボス装置にて、両ロールの表面温度を120℃に設定し、部分熱圧着率14%の部分熱圧着処理を行った。
【0042】
次いで、一対の熱平滑ロールに通して、熱圧着処理を施した。両平滑ロールの表面温度を80℃、線圧300N/cmに設定し、厚み100μmの不織布を得た。
【0043】
実施例3
実施例1で得られた不織布の片面に、押出しラミネート法により、エチレンビニルアルコールフィルムを積層して、不織布積層体を得た。
【0044】
比較例1
実施例1において、酸化チタンを2.0質量%含有してなるポリエチレンテレフタレートを用いたこと、部分熱圧着処理後、一対の平滑ロールによる熱圧着処理を施さなかった不織布を比較例1の不織布とした。
【0045】
得られた実施例1〜3、比較例1の不織布および不織布積層体の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003892719
【0047】
本発明の不織布および不織布積層体(実施例1〜3)は、優れた機械的強力を有し、かつ印刷性に優れたものであった。
【0048】
一方、比較例1の不織布は、印刷の鮮明性に劣るものであった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の不織布は、上記した構成を有するものであるので、片面に逆印刷した際に、印刷面と反対面より見たときに、印刷の鮮明性に優れたものである。
【0050】
また、不織布がポリエステル系繊維で構成されているため、機械的強力に優れ、乾燥剤等の一定強力を必要とする充填物であっても、良好に充填包装することができる。
【0051】
織布および織布積層体は、熱可塑性の重合体から形成されているため、製袋加工の際、溶断することができるため、従来の紙のように紙粉が発生することはない。

Claims (5)

  1. ポリエステル系繊維からなる不織布であり、該不織布は、一対の熱平滑ロールにより熱圧着処理が施されてなり、かつ白度が70%以下であり、不織布の片面に、印刷された文字やデザイン等を裏側から見た状態となるように印刷が施され、印刷が施された面と反対側の面を表側の面として用いることを特徴とする逆印刷が施された不織布。
  2. ポリエステル系繊維は、酸化チタンを0.05〜1.5質量%含有していることを特徴とする請求項1記載の逆印刷が施された不織布。
  3. 不織布を構成する繊維が、芯部に高融点重合体、鞘部に低融点重合体が配された芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の逆印刷が施された不織布。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆印刷が施された不織布よりなる包装材。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆印刷が施された不織布の印刷面側にフィルムが積層されていることを特徴とする包装材。
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