JP3891871B2 - 無電解めっき素材の前処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形品表面に無電解めっき処理を施すにあたって、その成形品を前処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂素材に導電性や金属光沢を付与する方法として、無電解めっき処理が知られている。この無電解めっきとは、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させ、素材表面に金属被膜を形成する方法をいい、電力によって電解析出させる電気めっきと異なり樹脂などの絶縁体にも金属被膜を形成することができる。そのため、自動車部品、家電製品などの分野に用いられる樹脂素材に金属光沢を付与する方法として、広く用いられている。
【0003】
ところが、無電解めっき処理によって形成されためっき被膜は、樹脂素材に対する付着強度が十分でないという問題がある。そのため、先ず樹脂素材に対して化学的エッチング処理を行って表面を粗面化し、その後無電解めっき処理する工程が一般に行われている。
【0004】
また特開平1-092377号公報には、樹脂素材をオゾンガスで前処理し、その後無電解めっき処理する方法が開示されている。同公報によれば、オゾンガスによって樹脂素材の不飽和結合が開裂して低分子化し、表面に化学組成の異なる分子が混在することになって平滑性が失われ粗面化する。したがって、無電解めっきによって形成された被膜が粗面にしっかり入りこみ容易に剥離しなくなる、と記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが射出成形などによって形成された樹脂成形品には、成形時の歪みあるいは冷却時の歪みによって内部応力が残留している。そのため無電解めっき処理を行った後に、残留する内部応力が大きい部位においてめっき被膜が剥離するという問題があった。そして上記公報などに開示されている方法などによって付着強度を向上させたとしても、この問題を解決することは困難であった。
【0006】
さらに上記公報に開示の方法においては、樹脂素材にガス状態のオゾンを接触させるだけでは樹脂素材の表面が活性化されにくく、無電解めっき被膜が析出しにくいという問題がある。また化学エッチングによって粗面化する方法では、クロム酸、硫酸などの毒劇物を用いる必要があり、廃液処理などに問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、残留する内部応力が大きな樹脂成形品をめっき素材とした場合に、付着強度に優れためっき被膜を形成することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の前処理方法の特徴は、不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品に対して、弱酸又はアセトンにて処理する先処理工程と、オゾンを含む溶液を先処理工程後の成形品に接触させるオゾン処理工程と、オゾン処理工程後の成形品を陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含むアルカリ溶液で処理するアルカリ処理工程と、を行った後に無電解めっき処理することにある。
【0009】
オゾン処理工程後の成形品の表面を安定化する安定化処理工程をさらに行うことが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の無電解めっき素材の前処理方法では、不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品を素材として用いている。不飽和結合とは C=C結合、 C=N結合、 C≡C結合などをいい、このような不飽和結合をもつ樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂、PS樹脂、AN樹脂、ポリエステル、ポリブタジエンなどを用いることができる。
【0011】
そして本発明の前処理方法では、先ず、不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品を用いる。この成形品の成形方法は特に制限されず、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、射出成形など各種成形方法を採用できるが、本発明の前処理方法は成形品に残留する内部応力が大きな射出成形で成形された成形品に特に好ましく適用される。
【0012】
射出成形などの場合には、金型内に充填された溶融樹脂は型面に接する表面から冷却されるために、冷却時に表面と内部とに温度差が生じ、この温度差は厚肉の部分ほど大きい。またABS樹脂などを用いて高速射出成形した場合には、ブタジエン成分が不均一に配向する場合がある。そのため得られる成形品には、局部的に内部応力が残留する場合が多い。このような成形品に無電解めっき処理を行ってめっき被膜を形成し、過酷な冷熱サイクル試験を行うと、局部的にめっき被膜と成形品との界面に発生する応力が増大し、内部応力が大きな部分でめっき被膜が剥離するという現象がある。
【0013】
そこで本発明では、成形品を酸又は有機溶剤にて処理する先処理工程を行っている。成形品を酸にて処理することによって、残留する内部応力が大きな部分の表面が主として粗面化されると考えられ、これによりめっき被膜の付着強度が向上して剥離を防止することができる。また有機溶剤で処理することにより、成形品の表面が溶解あるいは膨潤して表面の内部応力が消失すると考えられ、これによりめっき被膜の付着強度が向上して剥離を防止することができる。
【0014】
成形品を処理する酸としては、残留する内部応力が大きな部分の表面を選択的にエッチングする特性があるものを用いることができ、クロム酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、あるいはリン酸などを用いることができる。強酸の場合には、残留する内部応力が小さな部分でもエッチングされてしまうので、弱酸が特に好ましい。また強酸でも、低濃度の溶液であれば用いることが可能である。中でも環境負荷が低い酢酸を用いることが好ましい。
【0015】
酸による処理方法としては、浸漬法,スプレー法など成形品に酸の水溶液を付着させて行うことができる。この場合、酸の濃度が高い方が好ましく、酢酸の場合には氷酢酸を用いることが好ましい。酸による処理条件として、処理時間は長いほど効果的であるが、氷酢酸で処理する場合には数分で十分である。また処理温度は高いほど効果的であるが、氷酢酸の場合には室温で十分である。
【0016】
また成形品を処理する有機溶剤としては、成形品の表面を溶解又は膨潤させる有機溶剤を用いることができ、成形品の樹脂種によって適宜選択される。例えばABS樹脂の場合には、アセトン,メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル,アセト酢酸エチル,酢酸ブチルなどのエステル類、メチレンクロライドなどの塩素化炭化水素類などを用いることができる。中でも環境負荷の低いアセトンが好ましい。有機溶剤の場合の処理方法も、浸漬法,スプレー法などによって成形品に有機溶剤を付着させて行うことができる。また処理時間は長いほど効果的であるが、アセトンで処理する場合には数10秒で十分である。また処理温度は高いほど効果的であるが、アセトンの場合には室温で十分である。
【0017】
先処理後の成形品は、次いでオゾンを含む溶液に接触させるオゾン処理工程が行われる。このオゾン処理工程では、溶液中のオゾンによる酸化によって成形品表面の少なくとも一部の不飽和結合が切断され、オゾニド、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられる。残留する内部応力が大きな部分では、酸処理による粗面化によって表面積が大きくなっているため生成する官能基が多い。メチロール基、カルボニル基などは金属原子と化学結合を形成し得る官能基であり、無電解めっき被膜と強く結合するため、成形品とめっき被膜との付着強度が向上する。なお有機溶剤によって先処理工程を行う場合にも、オゾン処理工程より前に行わないとオゾン処理を行う意味がない。
【0018】
オゾン処理工程では、不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品をオゾンを含む溶液に接触させる。接触の方法としては、成形品表面にオゾン溶液をスプレーしてもよいし、成形品をオゾン溶液中に浸漬してもよい。浸漬による成形品へのオゾン溶液の接触は、スプレーによる成形品へのオゾン溶液の接触に比べてオゾン溶液からオゾンが離脱し難いため好ましい。
【0019】
オゾン溶液中のオゾン濃度は成形品表面の活性化に大きく影響を及ぼし、 10PPM程度から長時間の処理にて活性化の効果が見られるが、 50PPM以上とすればその活性化の効果が飛躍的に高まるとともに、短時間での処理も可能となる。
【0020】
なおオゾン処理工程における処理温度は、原理的には高いほど反応速度が大きくなるが、温度が高くなるほど溶液中のオゾンの溶解度が低くなり、40℃を超える温度において溶液中のオゾン濃度を 50PPM以上とするには、処理雰囲気を大気圧以上に加圧する必要があり、装置が大がかりなものとなる。したがって処理温度は、装置を大掛かりにしたくない場合には、室温程度で十分である。
【0021】
オゾン溶液は極性溶媒を含むことが望ましい。極性溶媒を含むことで溶液中のオゾンの活性を高めることができ、オゾン処理工程における処理時間を短縮することが可能となる。この極性溶媒としては水が特に好ましいが、アルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミドなどを単独であるいは水やアルコール系溶媒と混合して用いることもできる。
【0022】
本発明では上記した各処理後の成形品について、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液を成形品と接触させるアルカリ処理工程を行う。
【0023】
このアルカリ処理工程では、図1(A),(B)に示すように、界面活性剤1は、オゾン処理工程の成形品表面に表出する官能基にその疎水基が吸着すると考えられる。またアルカリ成分は、成形品の表面を分子レベルで溶解する機能をもち、成形品表面の脆化層を除去して官能基をより多く表出させる。したがって、脆化層の除去により表出した新たな官能基にも界面活性剤1が吸着する。
【0024】
界面活性剤としては、 C=O及びC-OHからなる少なくとも一方の官能基に対して疎水基が吸着しやすいものが用いられ、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方が用いられる。陽イオン性界面活性剤及び中性界面活性剤では、めっき被膜が形成できなかったり、効果の発現が困難となる。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸カリウムなどが例示される。また非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテルなどが例示される。
【0025】
アルカリ成分としては、成形品の表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去できるものを用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
【0026】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の溶媒としては、極性溶媒を用いることが望ましく、水を代表的に用いることができるが、場合によってはアルコール系溶媒あるいは水−アルコール混合溶媒を用いてもよい。また溶液を成形品と接触させるには、成形品を溶液中に浸漬する方法、成形品表面に溶液を塗布する方法、成形品表面に溶液をスプレーする方法などで行うことができる。
【0027】
溶液中の界面活性剤の濃度は、0.01〜10g/Lの範囲とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が0.01g/Lより低いとめっき被膜の付着強度が低下し、10g/Lより高くなると、成形品表面に界面活性剤が会合状態となって余分な界面活性剤が不純物として残留するため、めっき被膜の付着強度が低下するようになる。この場合には、処理後に成形品を水洗して余分な界面活性剤を除去すればよい。
【0028】
また溶液中のアルカリ成分の濃度は、pH値で12以上が望ましい。pH値が12未満であっても効果は得られるが、表出する上記官能基が少なくなり、触媒金属の付着性が低下してめっき被膜の形成が困難になる。
【0029】
溶液と成形品との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが好ましい。接触時間が短すぎると、官能基に吸着する界面活性剤量が不足してめっき被膜の付着強度が低下する場合がある。しかし接触時間が長くなり過ぎると、官能基が表出した層まで溶解して無電解めっきが困難となる場合があるので、1〜5分間程度で十分である。また温度は高い方が望ましく、温度が高いほど接触時間を短縮することが可能であるが、室温〜60℃程度で十分である。
【0030】
アルカリ処理工程は、アルカリ成分のみを含む水溶液で処理した後に界面活性剤を吸着させてもよいが、界面活性剤を吸着させるまでの間に再び脆化層が形成されてしまう場合があるので、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とが共存する状態で行うことが望ましい。
【0031】
なおアルカリ処理工程後、水洗してアルカリ成分を除去する工程を行ってもよい。界面活性剤は官能基に強固に吸着しているので、水洗する程度では除去されず吸着した状態が維持されることがわかっている。したがって上記処理された成形品は、無電解めっき処理までに時間が経過しても効果が失われることがない。
【0032】
不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品に上記オゾン処理工程のみを行うだけで、無電解めっき被膜の付着強度が向上することがわかっている。しかしながら無電解めっき処理した後の放置時間によってめっき被膜の付着強度が変化し、放置時間が短いと付着強度が低く、放置時間が長くなるにつれて付着強度が上昇することが明らかとなった。そのため無電解めっき処理したばかりの製品にあっては取り扱いに注意が必要となり、不注意に扱うとめっき被膜が剥離するという不具合がある。
【0033】
そこで、オゾン処理工程を行った成形品に対して、成形品の表面を安定化する安定化処理工程を行うことが望ましい。この安定化処理工程によって成形品表面の不安定なオゾニドが分解されて、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理直後からめっき被膜に高い付着強度が発現される。
【0034】
安定化処理工程の一つとして、オゾン処理後の成形品を還元剤又は酸化剤で処理する方法がある。この処理は、成形品に還元剤又は酸化剤を接触させて行う。還元処理は、オゾン処理後の成形品にチオ硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化水素、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ヒドラジン、ヒドロキシアミン化合物、水素などの還元性ガス、などの還元剤を接触させることで行う。また酸化処理は、オゾン処理工程後の成形品に過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化水素水などの酸化剤を接触させることで行う。還元剤又は酸化剤は、ガス状、溶液状、あるいは溶融状として成形品に接触させればよく、その濃度には特に制限がないが、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。また処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。
【0035】
還元剤又は酸化剤を接触させる方法としては、オゾン処理工程後の成形品表面に液状又は溶液状の還元剤又は酸化剤をスプレーしてもよいし、成形品を還元剤又は酸化剤の溶液中に浸漬してもよい。また還元剤又は酸化剤がガス状である場合には、還元剤又は酸化剤の雰囲気中に成形品を配置すればよい。
【0036】
また安定化処理工程の一つとして、オゾン処理工程を行った成形品を熱処理する方法がある。この熱処理によって、オゾニドが分解するとともに樹脂中の切断された高分子鎖が再結合されると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0037】
この熱処理方法としては、オゾン処理工程後の成形品を加温する方法、赤外線を照射する方法、成形品に火炎を照射する方法などがある。その雰囲気は大気中でよいが、上記した還元剤含有雰囲気あるいは酸化剤含有雰囲気で行うことも好ましい。また熱処理温度は、成形品の変形を防ぐために熱変形温度未満とする。熱処理温度の下限は特に制限されないが、処理時間を短縮するために50℃以上とすることが望ましい。熱処理温度が50℃未満であると、処理時間が5時間以上の長時間となるため好ましくない。
【0038】
また安定化処理工程の一つとして、オゾン処理工程を行った成形品を塩化ジルコニウムで処理する方法がある。この処理方法では、塩化ジルコニムが触媒として作用してオゾニドが分解するとともに、成形品表面の不安定な官能基どうしが縮合することで切断された高分子鎖が再結合されると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0039】
この塩化ジルコニウム処理は、オゾン処理工程後の成形品に塩化ジルコニウム溶液を接触させることで行う。接触の方法としては、成形品表面に塩化ジルコニウム溶液をスプレーしてもよいし、成形品を塩化ジルコニウム溶液中に浸漬してもよい。また塩化ジルコニウム溶液中の塩化ジルコニウムの濃度には特に制限がなく、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。塩化ジルコニウム溶液の溶媒は水でよく、アルコールなどの有機溶媒を単独であるいは水と混合して用いることもできる。
【0040】
さらに安定化処理工程の一つとして、オゾン処理工程後の成形品を活性水素で処理する方法がある。ここでいう活性水素とは、有機化合物中で炭素に直接結合しておらず、酸素原子あるいは窒素原子などに結合している水素原子を意味する。したがって水酸基をもつアルコール、イミノ基、アミノ基などをもつアミン、アンモニアなどで成形品を処理することにより、オゾニドが分解されてメチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0041】
活性水素で処理する方法としては、オゾン処理工程後の成形品表面に活性水素をもつ液状又は溶液状の化合物をスプレーしてもよいし、成形品をその化合物中に浸漬してもよい。またその化合物がガス状である場合には、その雰囲気中に成形品を配置すればよい。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。
【0042】
さらにもう一つの安定化処理工程として、オゾン処理工程後の成形品をオゾニド分解触媒で処理する方法がある。オゾニド分解触媒によってオゾニドが分解されて、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0043】
このオゾニド分解触媒としては、塩化第二鉄、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウムなどが例示される。またオゾニド分解触媒で処理するには、オゾン処理工程後の成形品にオゾニド分解触媒の溶液を接触させることで行う。接触の方法としては、成形品表面に触媒溶液をスプレーしてもよいし、成形品を触媒溶液中に浸漬してもよい。また触媒溶液中のオゾニド分解触媒の濃度には特に制限がなく、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。オゾニド分解触媒溶液の溶媒は水でよく、アルコールなどの有機溶媒を単独であるいは水と混合して用いることもできる。
【0044】
この安定化処理工程は、オゾン処理工程から無電解めっき処理までの間に行うことができ、上記したアルカリ処理工程の後、あるいは無電解めっき処理時に触媒を吸着させた後に安定化処理工程を行ってもよい。しかしアルカリ処理工程では成形品表面の官能基が重要であるので、安定化処理工程の種類のうち官能基が多く形成されると考えられる熱処理以外の処理は、アルカリ処理工程より前に行うことが望ましい。
【0045】
そして無電解めっき処理では、界面活性剤が吸着した成形品が先ず触媒と接触される。すると、図1(C)に示すように、触媒2が上記官能基に吸着している界面活性剤1の親水基に吸着すると考えられる。
【0046】
そして触媒が十分に吸着している成形品に対して、触媒を吸着・活性化し次いで無電解めっきする無電解めっき処理を施すことにより、界面活性剤が官能基から外れるとともにめっき金属が官能基と結合すると考えられ、付着強度に優れためっき被膜を形成することができ、残留する内部応力が大きい表面に特に付着強度に優れためっき被膜を形成することができる。
【0047】
触媒としては、Pd2+など、従来の無電解めっき処理に用いられる触媒を用いることができる。触媒を成形品の表面に吸着させるには、触媒溶液を成形品の表面に接触させればよく、上記した溶液の接触と同様に行うことができる。また接触時間、温度などの条件も、従来と同様でよい。また無電解めっき処理の条件、析出させる金属種なども制限されず、従来の無電解めっき処理と同様に行うことができる。無電解めっき処理の後には、必要に応じて従来と同様に通常の電気めっき処理が行われ、成形品に金属光沢を付与することができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0049】
(実施例1)
めっき素材としてABS樹脂から射出成形により形成された成形品(トヨタ自動車のシンボルマーク)を用い、室温にて氷酢酸に3分間浸漬する先処理工程を行った。この先処理工程後の成形品では、局部的に白化が発生して粗面化されており、その部分は残留する内部応力が大きな部分であると認められた。
【0050】
次に氷酢酸から引き上げられた成形品について、100PPMのオゾンを含有するオゾン水溶液に室温で30分間浸漬するオゾン処理工程を行った。
【0051】
続いてNaOHを50g/Lとラウリル硫酸ナトリウムを1g/L溶解した混合水溶液を60℃に加熱し、そこへオゾン処理工程後の成形品を2分間浸漬して、陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を吸着させるアルカリ処理工程を行った。
【0052】
界面活性剤が吸着した成形品を引き上げ、水洗・乾燥後、3N塩酸水溶液に塩化パラジウムを 0.1重量%溶解するとともに塩化錫を5重量%溶解し50℃に加熱された触媒溶液中に3分間浸漬し、次いでパラジウムを活性化するために、1N塩酸水溶液に3分間浸漬した。これにより触媒が吸着した成形品を得た。
【0053】
その後、40℃に保温されたNi−P化学めっき浴中に成形品を浸漬し、10分間Ni−Pめっき被膜を析出させた。析出したNi−Pめっき被膜の厚さは 0.5μmである。続いて硫酸銅系Cu電気めっき浴にて、Ni−Pめっき被膜の表面に銅めっき被膜を20μm析出させた。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様の成形品を用い、先処理工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様に前処理を行い、同様に触媒吸着・活性化後に無電解めっき被膜を形成し、さらにNi−Pめっき被膜と銅めっき被膜を形成した。
【0055】
<試験・評価>
実施例1と比較例1で得られためっき被膜をもつ成形品に対して、−30℃で2時間保持し80℃で2時間保持するのを1サイクルとする冷熱サイクル試験をそれぞれ5サイクル行い、それぞれ外観を目視で判定した。
【0056】
その結果、比較例1の方法で処理された成形品では局部的にめっき被膜に膨れが発生し、その部位は実施例1の先処理工程後に発生した白化部位と一致していた。つまり残留する内部応力が大きな部位においてめっき被膜に膨れが発生し、その部分の付着性が不足している。しかし実施例1の方法で処理された成形品では、めっき被膜の膨れは認められず、残留する内部応力が大きな部位においてもめっき被膜の付着性に優れている。これは、成形品を氷酢酸に浸漬する先処理工程を行った効果であることが明らかである。
【0057】
(実施例2)
めっき素材としてABS樹脂から射出成形により形成された樹脂板を用意した。射出速度を変化させ、射出速度の遅い順に表1に示すNo.1〜No.5の5種類の樹脂板を用意した。
【0058】
各樹脂板をそれぞれ室温でアセトンに30秒間浸漬し、5分間大気中で乾燥する先処理工程を行った。そして実施例1と同様にオゾン処理工程及びアルカリ処理工程を行い、同様に触媒吸着・活性化後に無電解めっき被膜を形成し、さらにNi−Pめっき被膜 0.5μmと銅めっき被膜 100μmを形成した。
【0059】
得られためっき被膜に樹脂板に達する切り込みを1cm幅で入れ、銅めっき被膜の析出時から7日後に、引張り試験機にてめっき被膜の付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
実施例2と同様のNo.1〜No.5の5種類の樹脂板を用い、先処理工程を行わなかったこと以外は実施例2と同様に前処理を行い、同様に触媒吸着・活性化後に無電解めっき被膜を形成し、さらに同様にNi−Pめっき被膜と銅めっき被膜を形成した。そして実施例2と同様にめっき被膜の付着強度を測定し、結果を表1に示す。
【0061】
<評価>
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、比較例2のようにアセトンに浸漬する先処理工程を行わない場合には、射出速度が大きい(同一容積に対し射出時間が短い)ものほど付着強度が小さく、つまり残留する内部応力が大きいほど付着強度が小さくその値も実施例2より小さい。しかし実施例2では射出速度に関わらず高い付着強度が発現され、これは樹脂板をアセトンに浸漬する先処理工程を行ったことに起因していることが明らかである。
【0064】
【発明の効果】
すなわち本発明の無電解めっき素材の前処理方法によれば、残留する内部応力が大きな成形品を素材として高い付着強度を有するめっき被膜を形成することができ、不良率を大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液で処理した場合の推定される作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1:界面活性剤 2:触媒
Claims (2)
- 不飽和結合を有する樹脂から形成された成形品に対して、弱酸又はアセトンにて処理する先処理工程と、オゾンを含む溶液を該先処理工程後の該成形品に接触させるオゾン処理工程と、該オゾン処理工程後の該成形品を陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含むアルカリ溶液で処理するアルカリ処理工程と、を行った後に無電解めっき処理することを特徴とする無電解めっき素材の前処理方法。
- 前記オゾン処理工程後の前記成形品の表面を安定化する安定化処理工程をさらに行う請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
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