JP3897590B2 - 無電解めっき素材の前処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂素材表面に無電解めっき処理を施すにあたって、その樹脂素材を前処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂素材に導電性や金属光沢を付与する方法として、無電解めっき処理が知られている。この無電解めっきとは、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させ、素材表面に金属被膜を形成する方法をいい、電力によって電解析出させる電気めっきと異なり樹脂などの絶縁体にも金属被膜を形成することができる。そのため、自動車部品、家電製品などの分野に用いられる樹脂素材に金属光沢を付与する方法として、広く用いられている。
【0003】
ところが、無電解めっき処理によって形成されためっき被膜は、樹脂素材に対する付着強度が十分でないという問題がある。そのため、先ず樹脂素材に対して化学的エッチング処理を行って表面を粗面化し、その後無電解めっき処理する工程が一般に行われている。
【0004】
また特開平1-092377号公報には、樹脂素材をオゾンガスで前処理し、その後無電解めっき処理する方法が開示されている。同公報によれば、オゾンガスによって樹脂素材の不飽和結合が開裂して低分子化し、表面に化学組成の異なる分子が混在することになって平滑性が失われ粗面化する。したがって、無電解めっきによって形成された被膜が粗面にしっかり入りこみ容易に剥離しなくなる、と記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の技術では、樹脂素材を粗面化し、いわゆる投錨効果によってめっき被膜の付着強度を高めている。しかしながら粗面化する方法では、樹脂素材の表面平滑度が低くなってしまう。したがって意匠性の高い金属光沢を得るためには、めっき被膜を厚くしなければならず、工数が多大となるという不具合がある。
【0006】
またエッチングによって粗面化する方法では、クロム酸、硫酸などの毒劇物を用いる必要があり、廃液処理などに問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、エッチング処理あるいはオゾンガス処理を不要として樹脂素材を粗面化することなく、付着強度に優れためっき被膜を形成することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の前処理方法の特徴は、オゾンを含む溶液を不飽和結合を有する樹脂素材に接触させるオゾン処理を行い、オゾン処理後の樹脂素材の表面に生成されたオゾニドを分解する安定化処理を行った後に無電解めっき処理する無電解めっき素材の前処理方法であって、
安定化処理は、下記の還元処理、酸化処理、熱処理、塩化ジルコニウム処理、活性水素処理、オゾニド分解触媒処理から選ばれることにある。
(1)チオ硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化水素、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ヒドラジン、ヒドロキシアミン化合物、水素ガスから選ばれる還元剤を接触させる還元処理
(2)過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化水素水から選ばれる酸化剤を接触させる酸化処理
(3)該樹脂素材を熱変形温度未満で処理する熱処理
(4)塩化ジルコニウムで処理する塩化ジルコニウム処理
(5)炭素に直接結合しておらず酸素原子あるいは窒素原子に結合している水素原子をもつ有機化合物で処理する活性水素処理
(6)塩化第二鉄、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウムから選ばれるオゾニド分解触媒を接触させるオゾニド分解触媒処理
【0009】
前記安定化処理としては、還元剤又は酸化剤で処理する方法、熱処理する方法、塩化ジルコニウムで処理する方法、活性水素で処理する方法、オゾニド分解触媒で処理する方法が例示される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の無電解めっき素材の前処理方法では、めっき素材として不飽和結合を有する樹脂を用いている。不飽和結合とは C=C結合、 C=N結合、 C≡C結合などをいい、このような不飽和結合をもつ樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂、PS樹脂、AN樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0011】
そして本発明の前処理方法では、先ず、不飽和結合を有する樹脂素材をオゾンを含む溶液に接触させるオゾン処理を行う。このオゾン処理では、溶液中のオゾンによる酸化によって樹脂素材表面の少なくとも一部の不飽和結合が切断され、オゾニド、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられる。メチロール基、カルボニル基などは金属原子と化学結合を形成し得る官能基であり、無電解めっき被膜と強く結合するため、樹脂素材とめっき被膜との付着強度が向上する。
【0012】
オゾン処理では、不飽和結合を有する樹脂素材をオゾンを含む溶液に接触させる。接触の方法としては、樹脂素材表面にオゾン溶液をスプレーしてもよいし、樹脂素材をオゾン溶液中に浸漬してもよい。浸漬による樹脂素材へのオゾン溶液の接触は、スプレーによる樹脂素材へのオゾン溶液の接触に比べてオゾン溶液からオゾンが離脱し難いため好ましい。
【0013】
オゾン溶液中のオゾン濃度は樹脂素材表面の活性化に大きく影響を及ぼし、 10PPM程度から長時間の処理にて活性化の効果が見られるが、 50PPM以上とすればその活性化の効果が飛躍的に高まるとともに、短時間での処理も可能となる。
【0014】
なおオゾン処理における処理温度は、原理的には高いほど反応速度が大きくなるが、温度が高くなるほど溶液中のオゾンの溶解度が低くなり、40℃を超える温度において溶液中のオゾン濃度を 50PPM以上とするには、処理雰囲気を大気圧以上に加圧する必要があり、装置が大がかりなものとなる。したがって処理温度は、装置を大掛かりにしたくない場合には、室温程度で十分である。
【0015】
オゾン溶液は極性溶媒を含むことが望ましい。極性溶媒を含むことで溶液中のオゾンの活性を高めることができ、オゾン処理工程における処理時間を短縮することが可能となる。この極性溶媒としては水が特に好ましいが、アルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミドなどを単独であるいは水やアルコール系溶媒と混合して用いることもできる。
【0016】
不飽和結合を有する樹脂素材に上記オゾン処理のみを行うだけで、無電解めっき被膜の付着強度が向上することがわかっている。しかしながら無電解めっき処理した後の放置時間によってめっき被膜の付着強度が変化し、放置時間が短いと付着強度が低く、放置時間が長くなるにつれて付着強度が上昇することが明らかとなった。そのため無電解めっき処理したばかりの製品にあっては取り扱いに注意が必要となり、不注意に扱うとめっき被膜が剥離するという不具合があった。
【0017】
そこで本発明の無電解めっき素材の前処理方法では、オゾン処理を行った樹脂素材に対して、樹脂素材の表面を安定化する安定化処理を行っている。この安定化処理によって樹脂素材表面の不安定なオゾニドが分解されて、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理直後からめっき被膜に高い付着強度が発現される。
【0018】
安定化処理の一つとして、オゾン処理後の樹脂素材を還元剤又は酸化剤で処理する方法がある。この処理は、樹脂素材に還元剤又は酸化剤を接触させて行う。還元処理は、オゾン処理後の樹脂素材にチオ硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化水素、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ヒドラジン、ヒドロキシアミン化合物、水素などの還元性ガス、などの還元剤を接触させることで行う。また酸化処理は、オゾン処理後の樹脂素材に過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化水素水などの酸化剤を接触させることで行う。還元剤又は酸化剤は、ガス状、溶液状、あるいは溶融状として樹脂素材に接触させればよく、その濃度には特に制限がないが、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。また処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。
【0019】
還元剤又は酸化剤を接触させる方法としては、オゾン処理後の樹脂素材表面に液状又は溶液状の還元剤又は酸化剤をスプレーしてもよいし、樹脂素材を還元剤又は酸化剤の溶液中に浸漬してもよい。また還元剤又は酸化剤がガス状である場合には、還元剤又は酸化剤の雰囲気中に樹脂素材を配置すればよい。
【0020】
また安定化処理の一つとして、オゾン処理を行った樹脂素材を熱処理する方法がある。この熱処理によって、オゾニドが分解するとともに樹脂中の切断された高分子鎖が再結合されると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0021】
この熱処理方法としては、オゾン処理後の樹脂素材を加温する方法、赤外線を照射する方法、樹脂素材に火炎を照射する方法などがある。その雰囲気は大気中でよいが、上記した還元剤含有雰囲気あるいは酸化剤含有雰囲気で行うことも好ましい。また熱処理温度は、樹脂素材の変形を防ぐために熱変形温度未満とする。熱処理温度の下限は特に制限されないが、処理時間を短縮するために50℃以上とすることが望ましい。熱処理温度が50℃未満であると、処理時間が5時間以上の長時間となるため好ましくない。
【0022】
また安定化処理の一つとして、オゾン処理を行った樹脂素材を塩化ジルコニウムで処理する方法がある。この処理方法では、塩化ジルコニムが触媒として作用してオゾニドが分解するとともに、樹脂素材表面の不安定な官能基どうしが縮合することで切断された高分子鎖が再結合されると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0023】
この塩化ジルコニウム処理は、オゾン処理後の樹脂素材に塩化ジルコニウム溶液を接触させることで行う。接触の方法としては、樹脂素材表面に塩化ジルコニウム溶液をスプレーしてもよいし、樹脂素材を塩化ジルコニウム溶液中に浸漬してもよい。また塩化ジルコニウム溶液中の塩化ジルコニウムの濃度には特に制限がなく、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。塩化ジルコニウム溶液の溶媒は水でよく、アルコールなどの有機溶媒を単独であるいは水と混合して用いることもできる。
【0024】
さらに安定化処理の一つとして、オゾン処理後の樹脂素材を活性水素で処理する方法がある。ここでいう活性水素とは、有機化合物中で炭素に直接結合しておらず、酸素原子あるいは窒素原子などに結合している水素原子を意味する。したがって水酸基をもつアルコール、イミノ基、アミノ基などをもつアミン、アンモニアなどで樹脂素材を処理することにより、オゾニドが分解されてメチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0025】
活性水素で処理する方法としては、オゾン処理後の樹脂素材表面に活性水素をもつ液状又は溶液状の化合物をスプレーしてもよいし、樹脂素材をその化合物中に浸漬してもよい。またその化合物がガス状である場合には、その雰囲気中に樹脂素材を配置すればよい。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。
【0026】
さらにもう一つの安定化処理として、オゾン処理後の樹脂素材をオゾニド分解触媒で処理する方法がある。オゾニド分解触媒によってオゾニドが分解されて、メチロール基あるいはカルボニル基などが生成すると考えられ、無電解めっき処理の直後であってもめっき被膜には高い付着強度が発現される。
【0027】
このオゾニド分解触媒としては、塩化第二鉄、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウムなどが例示される。またオゾニド分解触媒で処理するには、オゾン処理後の樹脂素材にオゾニド分解触媒の溶液を接触させることで行う。接触の方法としては、樹脂素材表面に触媒溶液をスプレーしてもよいし、樹脂素材を触媒溶液中に浸漬してもよい。また触媒溶液中のオゾニド分解触媒の濃度には特に制限がなく、濃度が高いほど処理時間が短くてすむ。処理温度は常温でよいが、加温すれば処理時間を短縮することができる。オゾニド分解触媒溶液の溶媒は水でよく、アルコールなどの有機溶媒を単独であるいは水と混合して用いることもできる。
【0028】
上記した各処理後の樹脂素材は、そのまま無電解めっき処理してもよいが、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液を樹脂素材と接触させる第3の処理を行うことが望ましい。
【0029】
この第3の処理工程では、図1(A),(B)に示すように、界面活性剤1は、オゾン処理後の樹脂素材表面に表出する官能基にその疎水基が吸着すると考えられる。またアルカリ成分は、樹脂素材の表面を分子レベルで溶解する機能をもち、樹脂素材表面の脆化層を除去して官能基をより多く表出させる。したがって、脆化層の除去により表出した新たな官能基にも界面活性剤1が吸着する。
【0030】
界面活性剤としては、 C=O及びC-OHからなる少なくとも一方の官能基に対して疎水基が吸着しやすいものが用いられ、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方が用いられる。陽イオン性界面活性剤及び中性界面活性剤では、めっき被膜が形成できなかったり、効果の発現が困難となる。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸カリウムなどが例示される。また非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテルなどが例示される。
【0031】
アルカリ成分としては、樹脂素材の表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去できるものを用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
【0032】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の溶媒としては、極性溶媒を用いることが望ましく、水を代表的に用いることができるが、場合によってはアルコール系溶媒あるいは水−アルコール混合溶媒を用いてもよい。また溶液を樹脂素材と接触させるには、樹脂素材を溶液中に浸漬する方法、樹脂素材表面に溶液を塗布する方法、樹脂素材表面に溶液をスプレーする方法などで行うことができる。
【0033】
溶液中の界面活性剤の濃度は、0.01〜10g/Lの範囲とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が0.01g/Lより低いとめっき被膜の付着強度が低下し、10g/Lより高くなると、樹脂素材表面に界面活性剤が会合状態となって余分な界面活性剤が不純物として残留するため、めっき被膜の付着強度が低下するようになる。この場合には、処理後に樹脂素材を水洗して余分な界面活性剤を除去すればよい。
【0034】
また溶液中のアルカリ成分の濃度は、pH値で12以上が望ましい。pH値が12未満であっても効果は得られるが、表出する上記官能基が少なくなり、触媒金属の付着性が低下してめっき被膜の形成が困難になる。
【0035】
溶液と樹脂素材との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが好ましい。接触時間が短すぎると、官能基に吸着する界面活性剤量が不足してめっき被膜の付着強度が低下する場合がある。しかし接触時間が長くなり過ぎると、官能基が表出した層まで溶解して無電解めっきが困難となる場合があるので、1〜5分間程度で十分である。また温度は高い方が望ましく、温度が高いほど接触時間を短縮することが可能であるが、室温〜60℃程度で十分である。
【0036】
第3の処理は、アルカリ成分のみを含む水溶液で処理した後に界面活性剤を吸着させてもよいが、界面活性剤を吸着させるまでの間に再び脆化層が形成されてしまう場合があるので、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とが共存する状態で行うことが望ましい。
【0037】
なお第3の処理後、水洗してアルカリ成分を除去する工程を行ってもよい。界面活性剤は官能基に強固に吸着しているので、水洗する程度では除去されず吸着した状態が維持されることがわかっている。したがって上記処理された樹脂素材は、無電解めっき処理までに時間が経過しても効果が失われることがない。
【0038】
そして無電解めっき処理では、界面活性剤が吸着した樹脂素材が先ず触媒と接触される。すると、図1(C)に示すように、触媒2が上記官能基に吸着している界面活性剤1の親水基に吸着すると考えられる。
【0039】
そして触媒が十分に吸着している樹脂素材に対して無電解めっき処理を施すことにより、界面活性剤が官能基から外れるとともにめっき金属が官能基と結合すると考えられ、特に付着強度に優れためっき被膜を形成することができる。
【0040】
触媒としては、Pd2+など、従来の無電解めっき処理に用いられる触媒を用いることができる。触媒を樹脂素材の表面に吸着させるには、触媒溶液を樹脂素材の表面に接触させればよく、上記した溶液の接触と同様に行うことができる。また接触時間、温度などの条件も、従来と同様でよい。また無電解めっき処理の条件、析出させる金属種なども制限されず、従来の無電解めっき処理と同様に行うことができる。無電解めっき処理の後には、従来と同様に通常の電気めっき処理が行われ、樹脂素材に金属光沢を付与することができる。
【0041】
本発明にいう安定化処理は、オゾン処理から無電解めっき処理までの間に行うことができ、上記した第3の処理の後、あるいは触媒を吸着させた後に安定化処理を行ってもよい。しかし第3の処理では樹脂素材表面の官能基が重要であるので、安定化処理のうち官能基が多く形成されると考えられる熱処理以外の処理は、第3の処理より前に行うことが望ましい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0043】
(実施例1)
めっき素材としてABS樹脂板を用い、100PPMのオゾンを含有するオゾン水溶液に室温で30分間浸漬するオゾン処理を行った。
【0044】
次に、オゾン処理後のABS樹脂板を、濃度30重量%のチオ硫酸ナトリウム水溶液に室温で5分間浸漬する還元処理を行い、その後水洗した。
【0045】
NaOHを50g/Lとラウリル硫酸ナトリウムを1g/L溶解した混合水溶液を60℃に加熱し、そこへ還元処理・水洗後のABS樹脂板を2分間浸漬して陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を吸着させた。
【0046】
界面活性剤が吸着したABS樹脂板を引き上げ、水洗・乾燥後、3N塩酸水溶液に塩化パラジウムを 0.1重量%溶解するとともに塩化錫を5重量%溶解し50℃に加熱された触媒溶液中に3分間浸漬し、次いでパラジウムを活性化するために、1N塩酸水溶液に3分間浸漬した。これにより触媒が吸着しためっき素材を得た。
【0047】
その後、40℃に保温されたNi−P化学めっき浴中にめっき素材を浸漬し、10分間Ni−Pめっき被膜を析出させた。析出したNi−Pめっき被膜の厚さは 0.5μmである。続いて硫酸銅系Cu電気めっき浴にて、Ni−Pめっき被膜の表面に銅めっきを 100μm析出させた。
【0048】
得られためっき被膜にめっき素材に達する切り込みを1cm幅で入れ、引張り試験機にてめっき被膜の付着強度を測定した。付着強度は、銅めっき被膜の析出時から10分後、3時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、及び14日放置後にそれぞれ測定した。放置条件は、温度 25 ℃の恒温恒湿条件とした。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同様にオゾン処理を行い、チオ硫酸ナトリウム水溶液に代えて濃度30重量%のヨウ化カリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして還元処理を行った。そして還元処理・水洗後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、濃度5重量%の過塩素酸ナトリウム水溶液中に5分間浸漬し、その後水洗する酸化処理を行った。そして酸化処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、恒温槽内に入れて70℃で20分間加熱する熱処理を行った。そして熱処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、NaOHを50g/Lとラウリル硫酸ナトリウムを1g/L溶解した混合水溶液を60℃に加熱した中に2分間浸漬して、陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を吸着させた。
【0053】
次いで界面活性剤が吸着したABS樹脂板を引き上げ、恒温槽内に入れて70℃で20分間加熱する熱処理を行った。そして熱処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にして触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例6)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、恒温槽内に入れて70℃で2時間加熱する熱処理を行った。そして熱処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例7)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板に対し、赤外線を照射してABS樹脂板を70℃まで加熱し、その状態で20分間加熱する熱処理を行った。そして熱処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例8)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板に対し、バーナーにより火炎を照射する熱処理を行った。そして熱処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例9)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、濃度3重量%の塩化ジルコニウム水溶液中に3分間浸漬し、その後水洗する塩化ジルコニウム処理を行った。そして塩化ジルコニウム処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例10)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、エタノール中に10分間浸漬し、引き上げて乾燥する活性水素処理を行った。そして活性水素処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例11)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板を、濃度5重量%の塩化第二鉄水溶液中に10分間浸漬し、その後水洗するオゾニド分解処理を行った。そしてオゾニド分解処理後のABS樹脂板を用い、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様にオゾン処理したABS樹脂板に対し、実施例1と同様にしてラウリル硫酸ナトリウムを吸着させ、同様に触媒を吸着させた後にめっき被膜を同様に形成し、同様にして付着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
<評価>
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、各実施例の処理方法で処理されたものは、比較例1の処理方法で処理されたものに比べて短時間の放置で高い付着強度が発現していることが明らかである。
【0064】
【発明の効果】
すなわち本発明の無電解めっき素材の前処理方法によれば、無電解めっき処理後の放置時間が短くてもめっき被膜に高い付着強度が発現され、不良率を大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液で処理した場合の推定される作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1:界面活性剤 2:触媒
Claims (5)
- オゾンを含む溶液を不飽和結合を有する樹脂素材に接触させるオゾン処理を行い、該オゾン処理後の該樹脂素材の表面に生成されたオゾニドを分解する安定化処理を行った後に無電解めっき処理する無電解めっき素材の前処理方法であって、
該安定化処理は、下記の還元処理、酸化処理、熱処理、塩化ジルコニウム処理、活性水素処理、オゾニド分解触媒処理から選ばれることを特徴とする無電解めっき素材の前処理方法。
(1)チオ硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化水素、亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ヒドラジン、ヒドロキシアミン化合物、水素ガスから選ばれる還元剤を接触させる還元処理
(2)過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化水素水から選ばれる酸化剤を接触させる酸化処理
(3)該樹脂素材を熱変形温度未満で処理する熱処理
(4)塩化ジルコニウムで処理する塩化ジルコニウム処理
(5)炭素に直接結合しておらず酸素原子あるいは窒素原子に結合している水素原子をもつ有機化合物で処理する活性水素処理
(6)塩化第二鉄、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウムから選ばれるオゾニド分解触媒を接触させるオゾニド分解触媒処理 - 前記還元剤はチオ硫酸ナトリウム又はヨウ化カリウムである請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
- 前記酸化剤は過塩素酸ナトリウムである請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
- 前記活性水素はエタノールである請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
- 前記オゾニド分解触媒は塩化第二鉄である請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
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