JP3891233B2 - 内燃機関用油温制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の潤滑系の各部位に供給する潤滑油の温度を制御する内燃機関用油温制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の潤滑系に供給される潤滑油の油温と内燃機関を冷却する冷却水の冷却水温とには、図3(a)及び図3(b)の特性図に『従来』として表すように、内燃機関の冷間始動時からの時間経過に伴う昇温挙動や高出力(高負荷;燃料供給量が多い)時における昇温挙動に相違があることが知られている。即ち、内燃機関の冷間始動時からの潤滑油の油温の上昇は鈍いのに対して冷却水の冷却水温の上昇は素早く、また、高出力時では、油温はかなり高温(例えば、150℃程度)まで昇温されることとなるが冷却水温は沸点100℃(実際には、凍結防止液が混入されているため105℃程度)までであり潤滑油ほど昇温されることはない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関の冷間始動時で油温が低いときには、潤滑油は粘性が高くオイルポンプや潤滑系の各部位における摩擦力が大きいため燃費の悪化を招き、逆に、内燃機関の高出力時に潤滑油の油温が高くなり過ぎると、回転摺動部位の冷却不足や油膜保持能力の低下による焼付の要因、更には潤滑油の寿命をも短くするという不具合があった。
【0004】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、内燃機関の冷間始動時で潤滑油の油温が低いときにはなるべく早く適切な粘性の得られる温度まで昇温させ燃費を向上し、高出力時には潤滑油の油温が高くなり過ぎないようにして潤滑油本来の性能を発揮させ潤滑信頼性の向上と共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる内燃機関用油温制御装置の提供を課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の内燃機関用油温制御装置によれば、内燃機関のオイルパン内に貯留された潤滑油が内燃機関の冷却水によって熱交換される。このため、内燃機関の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗が低減され燃費が向上される。また、内燃機関の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。そして、内燃機関の高出力時または高負荷時で外部冷却系の能力が不足するときには、温感式流量制御弁の作動によって熱交換手段に対する冷却水の流量が制限される。これにより、冷却水を内燃機関の冷却のためだけに使用でき、冷却水の沸騰が防止される。
【0006】
請求項2の内燃機関用油温制御装置では、内燃機関のオイルパン内の潤滑油の貯留領域に配設されたオイルストレーナ内に設けられた熱交換手段を介して冷却水が循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換される。これにより、内燃機関の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗の大部分が低減され燃費が向上される。また、内燃機関の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【0007】
請求項3の内燃機関用油温制御装置では、内燃機関のオイルパン内の潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換手段としての熱交換器を介して冷却水が循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換される。これにより、内燃機関の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗の大部分が低減され燃費が向上される。また、内燃機関の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【0008】
請求項4の内燃機関用油温制御装置では、二重構造とされた熱交換手段としてのオイルパンの外周囲側を冷却水が循環されオイルパン内の潤滑油との間で熱交換される。これにより、内燃機関の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗の大部分が低減され燃費が向上される。また、内燃機関の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0011】
〈実施例1〉
図1は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。また、図2は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。なお、以下の図中における白抜矢印は熱の流れ方向を示す。
【0012】
図1及び図2において、まず、内燃機関10を冷却する破線矢印で流れ方向を示す冷却水の流路について述べる。
【0013】
内燃機関10のシリンダブロック11のシリンダ周囲には冷却水の流路としてのウォータジャケット12が形成され、また、内燃機関10と分離され冷却水の外部冷却系としてのラジエータ20が配設されている。これら内燃機関10のシリンダブロック11とラジエータ20との間は配管21,22にて接続され、この配管22途中にはバイパス管23を通るバイパス流路を設定するサーモスタット24、内燃機関10にて駆動され冷却水を強制的に循環させるウォータポンプ25が配設されている。
【0014】
ここで、ラジエータ20側からシリンダブロック11側への冷却水の流れ方向の配管22でウォータポンプ25の下流側には後述のオイルストレーナ16内に配設された熱交換管27に冷却水を導くための導入管26が接続され、シリンダブロック11側からラジエータ20側への冷却水の流れ方向の配管21には熱交換管27からの冷却水を戻すための導出管28が接続されている。
【0015】
次に、図1及び図2において、内燃機関10の潤滑系の各部位に供給するための実線矢印で流れ方向を示す潤滑油の流路について述べる。
【0016】
内燃機関10にて駆動されるオイルポンプ17は、内燃機関10のシリンダブロック11と一体化されたオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設されたオイルストレーナ16を介して濾過された潤滑油をシリンダブロック11内の潤滑系の各部位に流路としてのメインホール19を通して送出し強制的に循環させる。ここで、内燃機関10のシリンダブロック11にはオイルクーラ機能を有するオイルフィルタ18が配設されており、オイルポンプ17からの潤滑油はオイルフィルタ18にて濾過されると同時に、シリンダブロック11のウォータジャケット12を循環される冷却水を利用して冷却されたのちメインホール19側に送出される。
【0017】
次に、その動作及び作用について、図1、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図3は本実施例の内燃機関用油温制御装置における油温と冷却水温との昇温挙動を従来と比較して表す特性図である。
【0018】
内燃機関10からの発熱の大部分を冷却水が受取ることで、図3(a)に表すように、冷間始動時には冷却水温>油温となる。図1に示すように、冷間始動時にはサーモスタット24の働きによってバイパス管23側が開、ラジエータ20側が閉とされることでバイパス管23を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設されたオイルストレーナ16内の熱交換管27を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。
【0019】
このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、バイパス管23、配管22を通りラジエータ20を介すことなくシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、冷間始動時における冷却水はシリンダブロック11のウォータジャケット12内をほぼ循環されるだけであり、図3(a)に『本発明』として表すように『従来』とほぼ同様に素早く昇温される。同時に、冷却水は導入管26、オイルストレーナ16内の熱交換管27、導出管28を通って循環される。このように、オイルストレーナ16内の熱交換管27を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる際の潤滑油の昇温が促進され、図3(a)に『本発明』として表すように、内燃機関10の早期暖機が可能となる。
【0020】
本実施例では、オイルポンプ17における吸込側の流路抵抗の大部分を占めるオイルストレーナ16内の潤滑油が暖められるため、冷間始動時の負担を効率良く軽減することができる。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の昇温が鈍るというような懸念はない(図3(a)参照)。
【0021】
内燃機関10の暖機後であって高出力時には、図3(b)に表すように、潤滑油の冷却が十分でないことも手伝って油温>冷却水温となる。図2に示すように、このような高出力時にはサーモスタット24の働きによってラジエータ20側が開、バイパス管23側が閉とされることでラジエータ20を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、冷間始動時と同様に、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設されたオイルストレーナ16内の熱交換管27を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。
【0022】
このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、ラジエータ20、配管22を通りシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、高出力時における内燃機関10のシリンダブロック11側からの冷却水はラジエータ20で冷却されシリンダブロック11のウォータジャケット12側に戻され、冷却水温は図3(b)に『本発明』として表すように『従来』とほぼ同様な昇温挙動となる。同時に、ラジエータ20で冷却された冷却水は導入管26、オイルストレーナ16内の熱交換管27、導出管28を通って循環される。このように、オイルストレーナ16内の熱交換管27を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる際の潤滑油が冷却され、図3(b)に『本発明』として表すように『従来』として表すのに比べて、内燃機関10の潤滑系の各部へ供給する潤滑油の極端な高温化が防止される。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の冷却が鈍るというような懸念はない(図3(b)参照)。
【0023】
このように、本実施例の内燃機関用油温制御装置は、内燃機関10のオイルパン11内に貯留された潤滑油を汲上げて潤滑系の各部位へ供給するオイルストレーナ16、オイルポンプ17、オイルフィルタ18、メインホール19等にて達成される潤滑手段と、外部冷却系としてのラジエータ20との間で冷却水を循環させ熱交換によって内燃機関10を冷却するラジエータ20、ウォータポンプ25、配管21,22等にて達成される冷却手段と、オイルパン15内に貯留された潤滑油と冷却水との間で熱交換する熱交換手段とを具備するものであり、この熱交換手段として、本実施例では具体的に、オイルパン15内に貯留された潤滑油の汲上げ先端のオイルストレーナ16内に冷却水を循環させる熱交換管27を設けたものである。つまり、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域に配設されたオイルストレーナ16内に設けられた熱交換管27を介してラジエータ20からの冷却水が循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換される。
【0024】
このため、内燃機関10の冷間始動時では、オイルストレーナ16を通してオイルポンプ17にて汲上げられる際の潤滑油が熱交換管27を介して冷却水にて暖められることで、潤滑油の吸込側の流路抵抗の大部分が低減され燃費が向上される。また、内燃機関10の高出力時では、オイルストレーナ16を通してオイルポンプ17にて汲上げられる際の潤滑油が熱交換管27を介して冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【0025】
次に、図4は上述の内燃機関用油温制御装置の変形例を示す概略構成図である。この変形例は、上述の実施例で使用されているサーモスタット24に加えて、導出管28が接続されている配管21部分にサーモスタット31を設けて2サーモスタット方式としたものである。図5は図4のサーモスタット24,31の冷却水温に対応する動作を示す動作図であり、図6は図4のサーモスタット24,31の冷却水温〔℃〕に対応する動作に基づく潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合〔%〕を表す説明図である。なお、図中、上述の実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0026】
内燃機関10の冷間始動時では、サーモスタット24,31は図4に示す動作状態にあり、冷却水は破線矢印で示すようにラジエータ20側へ流れずバイパス管23を流れることとなる。このときのサーモスタット24,31の具体的な動作を図5(a)に示す。つまり、潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合は、図6に示すように、潤滑油をできるだけ素早く昇温するため30%程度とされる。
【0027】
冷却水の冷却水温が約82℃となり内燃機関10が暖機状態となると、図5(b)に示すように、サーモスタット24にてバイパス管23側が閉鎖状態とされるため、冷却水は破線矢印で示すように、バイパス管23へ流れなくなりラジエータ20を介して循環されることとなる。
【0028】
そして、内燃機関10の高出力時には冷却水の循環量が多くなるが、この際、内燃機関10の冷却には冷却水量も多く必要となる。このため、冷却水の冷却水温が95℃以上の高温となると、図5(c)に示すように、サーモスタット31にて熱交換管28側が閉鎖状態とされ、内燃機関10を冷却するためだけに冷却水を使用し冷却水温のこれ以上の上昇を防ぐようにされる。つまり、図6に示すように、冷却水温95℃以上では潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合が0%と制限される。これにより、潤滑油の油温は当然のことながら上昇ぎみとなるが、潤滑油の使用温度には冷却水の使用温度に比べて余裕があり、内燃機関10の高出力時に対処することができる。
【0029】
このように、本実施例の内燃機関用油温制御装置は、更に、熱交換手段としての熱交換管27に対して冷却水の冷却水温に感応して流量を制御する温感式流量制御弁としてのサーモスタット31を具備し、内燃機関10の高出力時または高負荷時で外部冷却系としてのラジエータ20の能力が不足するときには、サーモスタット31を作動することで潤滑油との熱交換に用いる冷却水の流量を制限するものである。
【0030】
したがって、内燃機関10の高出力時または高負荷時でラジエータ20の能力が不足するときには、サーモスタット31の作動によって熱交換管27を流れる冷却水の流量が制限される。このため、冷却水を内燃機関10の冷却のためだけに使用でき、冷却水の沸騰が防止される。
【0031】
また、図7は上述の内燃機関用油温制御装置の他の変形例を示す概略構成図である。この変形例は上述の変形例で使用されているサーモスタット24,31に替えて、一体化されたサーモスタット41を用いたものである。図8は図7のサーモスタット41の冷却水温に対応する動作を示す動作図である。なお、図7のサーモスタット41の冷却水温〔℃〕に対応する動作に基づく潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合〔%〕は図6と同様である。また、図中、上述の実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
内燃機関10の冷間始動時では、サーモスタット41は図7に示す動作状態にあり、冷却水は破線矢印で示すようにラジエータ20側へ流れずバイパス管23を流れることとなる。このときのサーモスタット41の具体的な動作を図8(a)に示し、潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合は、図6に示すように、潤滑油をできるだけ素早く昇温するため30%程度とされる。
【0033】
冷却水の冷却水温が約82℃となり内燃機関10が暖機状態となると、図8(b)に示すように、サーモスタット41にてバイパス管23側が閉鎖状態とされるため、冷却水は破線矢印で示すように、ラジエータ20を介して循環されることとなる。
【0034】
そして、内燃機関10の高出力時には冷却水の循環量が多くなるが、この際、内燃機関10の冷却には冷却水量も多く必要となる。このため、冷却水の冷却水温が95℃以上の高温となると、図8(c)に示すように、サーモスタット41にて熱交換管28側が閉鎖状態とされ、内燃機関10を冷却するためだけに冷却水を使用し冷却水温のこれ以上の上昇を防ぐようにされる。つまり、図6に示すように、冷却水温95℃以上では潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合が0%と制限される。これにより、潤滑油の油温は当然のことながら上昇ぎみとなるが、潤滑油の使用温度には冷却水の使用温度に比べて余裕があり、内燃機関10の高出力時に対処することができる。
【0035】
図9及び図10は上述の実施例におけるオイルストレーナ16の詳細な構造を示す分解斜視図である。ここで、オイルストレーナ16内の熱交換管27は、上述の実施例における形状の他、図9に示すような渦巻型や図10に示すような冷却羽根付格子型を採用することもできる。
【0036】
〈実施例2〉
図11は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。また、図12は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。なお、図中、上述の実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0037】
上述の実施例では内燃機関10のオイルパン15内に配設されたオイルストレーナ16内に熱交換管27が設けられ、冷却水の一部が熱交換管27内に循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換されているが、本実施例では、図11及び図12に示すように、オイルストレーナ16とは別にオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に熱交換器50が配設され、この熱交換器50内に冷却水の一部が循環され潤滑油との間で熱交換する点が相違している。本実施例では、オイルパン15内の潤滑油の貯留領域内でオイルストレーナ16の周囲のスペースを利用して大型の熱交換器50を設置し、導入管26と導出管28とにより配管21,22と接続するものである。
【0038】
次に、その動作及び作用について、図11及び図12を参照して説明する。
【0039】
図11に示すように、内燃機関10の冷間始動時にはサーモスタット24の働きによってバイパス管23側が開、ラジエータ20側が閉とされることでバイパス管23を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換器50を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。
【0040】
このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、バイパス管23、配管22を通りラジエータ20を介すことなくシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、冷間始動時における冷却水はシリンダブロック11のウォータジャケット12内をほぼ循環されるだけであり素早く昇温される。同時に、冷却水は導入管26、熱交換器50、導出管28を通って循環される。このように、熱交換器50を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる潤滑油の昇温が促進され、内燃機関10の早期暖機が可能となる。
【0041】
本実施例では、オイルストレーナ16から吸込まれるオイルパン15内の潤滑油が暖められるため、冷間始動時の負担を軽減することができる。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の昇温が鈍るというような懸念はない。
【0042】
図12に示すように、内燃機関10の暖機後であって高出力時には、サーモスタット24の働きによってラジエータ20側が開、バイパス管23側が閉とされることでラジエータ20を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、冷間始動時と同様に、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換器50を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。
【0043】
このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、ラジエータ20、配管22を通りシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、高出力時における内燃機関10のシリンダブロック11側からの冷却水はラジエータ20で冷却されシリンダブロック11のウォータジャケット12側に戻される。同時に、ラジエータ20で冷却された冷却水は導入管26、熱交換器50、導出管28を通って循環される。このように、熱交換器50を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる潤滑油が冷却され、内燃機関10の潤滑系の各部へ供給する潤滑油の極端な高温化が防止される。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の冷却が鈍るというような懸念はない。
【0044】
このように、本実施例の内燃機関用油温制御装置は、オイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換手段としての熱交換器50であって、熱交換器50内に冷却水を循環させるものである。したがって、内燃機関10のオイルパン15内の潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換器50を介して冷却水が循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換される。これにより、内燃機関10の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗が低減され燃費が向上される。また、内燃機関10の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【0045】
〈実施例3〉
図13は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。また、図14は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。なお、図中、上述の実施例と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
上述の実施例では内燃機関10のオイルパン15内に配設されたオイルストレーナ16内の熱交換管27やオイルストレーナ16とは別にオイルパン15内に熱交換器50が設けられ、冷却水の一部が熱交換管27内や熱交換器50内に循環され潤滑油と冷却水との間で熱交換されているが、本実施例では、図13及び図14に示すように、二重構造のオイルパン55を形成し、内側を従来と同様の潤滑油の貯留領域とし、外周囲側に冷却水の一部が循環され潤滑油との間で熱交換する点が相違している。本実施例では、オイルパン55に潤滑油の貯留に加えて、潤滑油と冷却水との熱交換機能を兼用させ、導入管26と導出管28とにより配管21,22と接続するものである。
【0047】
次に、その動作及び作用について、図13及び図14を参照して説明する。
【0048】
図13に示すように、内燃機関10の冷間始動時にはサーモスタット24の働きによってバイパス管23側が開、ラジエータ20側が閉とされることでバイパス管23を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、内燃機関10のオイルパン55の外周囲側を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、バイパス管23、配管22を通りラジエータ20を介すことなくシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、冷間始動時における冷却水はシリンダブロック11のウォータジャケット12内をほぼ循環されるだけであり素早く昇温される。同時に、冷却水は導入管26、オイルパン55の外周囲側、導出管28を通って循環される。このように、オイルパン55の外周囲側を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる潤滑油の昇温が促進され、内燃機関10の早期暖機が可能となる。
【0049】
本実施例では、オイルストレーナ16から吸込まれるオイルパン55内の潤滑油がその外周囲側から暖められるため、冷間始動時の負担を軽減することができる。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の昇温が鈍るというような懸念はない。
【0050】
図14に示すように、内燃機関10の暖機後であって高出力時には、サーモスタット24の働きによってラジエータ20側が開、バイパス管23側が閉とされることでラジエータ20を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成される。また、冷間始動時と同様に、内燃機関10のオイルパン55の外周囲側を通る冷却水の流路(破線矢印)が形成されている。
【0051】
このため、内燃機関10からの冷却水は配管21、ラジエータ20、配管22を通りシリンダブロック11のウォータジャケット12に戻される。即ち、高出力時における内燃機関10のシリンダブロック11側からの冷却水はラジエータ20で冷却されシリンダブロック11のウォータジャケット12側に戻される。同時に、ラジエータ20で冷却された冷却水は導入管26、オイルパン55の外周囲側、導出管28を通って循環される。このように、オイルパン55の外周囲側を冷却水が通ることでオイルポンプ17によって汲上げられる潤滑油が冷却され、内燃機関10の潤滑系の各部へ供給する潤滑油の極端な高温化が防止される。なお、潤滑油量に対し冷却水量は十分多いため、上述の熱交換の影響で冷却水温の冷却が鈍るというような懸念はない。
【0052】
このように、本実施例の内燃機関用油温制御装置は、二重構造としたオイルパン55であって、オイルパン55外周囲側に冷却水を循環させるものである。したがって、オイルパン55を介してオイルパン内の潤滑油と外周囲側の冷却水との間で熱交換される。このため、内燃機関の冷間始動時では、潤滑油が冷却水にて暖められることで潤滑油の吸込側の流路抵抗が低減され燃費が向上される。また、内燃機関の高出力時または高負荷時では、潤滑油が冷却水にて冷却されることで、潤滑油の油温の上昇が抑制され潤滑系の各部位の信頼性が向上されると共に、潤滑油の長寿命化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。
【図2】 図2は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。
【図3】 図3は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置における油温と冷却水温との昇温挙動を従来と比較して表す特性図である。
【図4】 図4は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の変形例の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。
【図5】 図5は図4の変形例におけるサーモスタットの冷却水温に対応する動作を示す動作図である。
【図6】 図6は図4のサーモスタットの冷却水温に対応する動作に基づく潤滑油との熱交換に使用される冷却水の割合を表す説明図である。
【図7】 図7は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の他の変形例の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。
【図8】 図8は図7の変形例におけるサーモスタットの冷却水温に対応する動作を示す動作図である。
【図9】 図9は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置のオイルストレーナ内の熱交換管の変形例を示す斜視図である。
【図10】 図10は本発明の実施の形態の第1実施例にかかる内燃機関用油温制御装置のオイルストレーナ内の熱交換管の他の変形例を示す斜視図である。
【図11】 図11は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。
【図12】 図12は本発明の実施の形態の第2実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。
【図13】 図13は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の冷間始動時における動作を示す概略構成図である。
【図14】 図14は本発明の実施の形態の第3実施例にかかる内燃機関用油温制御装置の高出力時における動作を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 内燃機関
15 オイルパン
16 オイルストレーナ
17 オイルポンプ
18 オイルフィルタ
20 ラジエータ
24 サーモスタット
25 ウォータポンプ
27 熱交換管
50 熱交換器
51 オイルパン
Claims (4)
- 内燃機関のオイルパン内に貯留された潤滑油を汲上げて潤滑系の各部位へ供給する潤滑手段と、
外部冷却系との間で冷却水を循環させ熱交換によって前記内燃機関を冷却する冷却手段と、
前記オイルパン内に貯留された前記潤滑油と前記冷却水との間で熱交換する熱交換手段と 前記熱交換手段に対して前記冷却水の冷却水温に感応して流量を制御する温感式流量制御弁とを具備し、
前記内燃機関の高出力時または高負荷時で前記外部冷却系の能力が不足するときには、前記温感式流量制御弁を作動することで前記潤滑油との熱交換に用いる前記冷却水の流量を制限することを特徴とする内燃機関用油温制御装置。 - 前記熱交換手段は、前記オイルパン内に貯留された前記潤滑油の汲上げ先端のオイルストレーナ内に配設され、前記オイルストレーナ内で前記冷却水を循環させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用油温制御装置。
- 前記熱交換手段は、前記オイルパン内の前記潤滑油の貯留領域内に配設された熱交換器であって、前記熱交換器内に前記冷却水を循環させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用油温制御装置。
- 前記熱交換手段は、二重構造とした前記オイルパンであって、前記オイルパンの外周囲側に前記冷却水を循環させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用油温制御装置。
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