JP3890641B2 - 高純度ベンジルアルコールの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はベンジルアルコールの製造法に関するものである。
【0002】
酢酸ベンジルをメタノールでエステル交換させて得られるベンジルアルコールは、溶解性に優れた溶剤、無毒性のため医薬用添加物、農薬や医薬等の中間体としても極めて重要な化合物である。
【0003】
【従来の技術】
ベンジルアルコールの製造法としては、次の方法が知られ、工業的には1)、3)の方法で製造されている。
【0004】
1)ベンジルクロライドを苛性ソーダを用いて加水分解する方法。
【0005】
2)酢酸ベンジルを触媒の存在下、加水分解する方法。
【0006】
3)ベンズアルデヒドを触媒の存在下、水素還元する方法。
【0007】
上記1)、2)はいずれも加水分解によりベンジルアルコールを製造する方法である。そのうち1)の方法では苛性ソーダが量論反応するためベンジルクロライドと当量以上必要であり、さらに反応後には有機物を含んだ多量の食塩水が副生し、その処理が問題である。また、3)の方法は比較的高価なベンズアルデヒドを原料とするため、経済的に有利とは言えない。
【0008】
一方、2)の酢酸ベンジルを加水分解してベンジルアルコールを製造する方法は、反応で副生する酢酸が再利用されるので排水のないプロセスとなり、経済的で環境にも低負荷である。
【0009】
この方法として、J.Chem.Soc.No.5,1952,1607にはスルホン酸型陽イオン交換樹脂であるアンバーライトIR−100の存在下、20〜30℃、水/酢酸ベンジル(体積比)25で加水分解してベンジルアルコールを製造する方法が既に報告されている。しかしながらこの方法は触媒活性が低く、さらに著しく多量の水を用いているため原料濃度が低く、生成液からの未反応の水の除去エネルギーを考えると工業的な方法としては実用的でない。また、ベンジルアルコールの分離・精製方法については、具体的な記載がなされていない。
【0010】
またベンジルアルコールの製造法ではないが、エステル交換反応によりエステルから相当するアルコールを得る方法が知られている。例えば、特開昭54−61109号公報や特開昭55−59122号公報には、ブタンジオール又はブテンジオールの酢酸エステルからブタンジオールを製造する方法が記載されている。しかしながら、本発明にこれらの方法をそのまま適応しようとすると、反応蒸留塔内で固形物が析出しフラッディング現象を起こし運転を継続できなかったり、反応が思うように進まないといった問題があった。
【0011】
このようにベンジルアルコールの製造法について、実際の工業化を考えた場合、詳細な分離・精製工程を含めた製造法については検討されておらず、上記した方法は、高純度ベンジルアルコールの製造法としては満足できるものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高純度のベンジルアルコールを経済的に製造する方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸ベンジルを塩基性触媒の存在下でメタノールとエステル交換反応させ、その後の分離・精製プロセスを考慮し、各工程留分を合理的に組み合わせることにより、高純度のベンジルアルコールを経済的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、塩基性触媒の存在下に酢酸ベンジルをメタノールとエステル交換反応させベンジルアルコールを製造する方法において、酢酸ベンジルを反応蒸留塔の上部から供給し、メタノールを反応蒸留塔の下部から供給して、塩基性触媒の存在下、酢酸ベンジルとメタノールを向流的に接触反応させ、酢酸メチルとメタノールを主成分とする塔頂留分と、メタノールとベンジルアルコールを主成分とする塔底液を得、反応蒸留塔の塔底液をメタノール分離塔に供給して蒸留し、メタノールを主成分とする塔頂留分とベンジルアルコールを主成分とする塔底液に分離し、メタノール分離塔の塔頂留分を反応蒸留塔へ循環させ、メタノール分離塔の塔底液をアルコール精製塔に供給して蒸留してベンジルアルコールを得ることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法である。
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の方法においては、酢酸ベンジルを反応蒸留塔の上部に供給し、メタノールを反応蒸留塔の下部に供給して、塩基性触媒の存在下、酢酸ベンジルとメタノールを向流的に接触させ、エステル交換反応させることによってベンジルアルコールを製造する。
【0017】
この際、原料中の不純物により反応速度の低下や閉塞トラブルを招く場合がある。例えば、ナトリウムメチラートを塩基性触媒として用いた場合には、安息香酸や原料の酢酸等の酸性物質又は水が原料の酢酸ベンジルやメタノール中に存在すると次式の反応が生じ、安息香酸ソーダや酢酸ソーダを生成する。
【0018】
【化1】
Figure 0003890641
【0019】
【化2】
Figure 0003890641
【0020】
【化3】
Figure 0003890641
【0021】
【化4】
Figure 0003890641
【0022】
これらのソーダ塩は、原料の酢酸ベンジルやエステル交換反応の副生物である酢酸メチルにはほとんど溶解せず、これらの濃度が高い酢酸ベンジルのフィード段付近で析出、沈積し、スケーリングしてフラッディングトラブルを招く場合がある。また、これらの反応には触媒(ナトリウムメチラート)がからんでいるため、触媒自身が失活(消費)し、反応までも阻害する。尚、触媒として水酸化ナトリウムを用いた場合もナトリウムメチラートを用いた場合と類似の反応が起こる。
【0023】
したがって、原料の酢酸ベンジルやメタノールは、安息香酸や酢酸等の酸性物質の濃度及び水の濃度が低いものを使用することが好ましい。原料中に含まれるこれら不純物の濃度は、酢酸ベンジルに対するメタノールのモル比や触媒濃度又は互いの不純物濃度によって変わるため特に限定するものではないが、例えば、酢酸ベンジル中に含まれる安息香酸の濃度は、通常0.05重量%以下、好ましくは0.03重量%以下、更に好ましくは0.02重量%以下である。酢酸ベンジル中の酢酸濃度は、通常0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、更に好ましくは0.03重量%以下である。酢酸ベンジル中の水分濃度は、通常0.05重量%以下、好ましくは0.03重量%以下、更に好ましくは0.02重量%以下である。また、メタノール中に含まれる水分濃度は、通常0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下である。
【0024】
本発明の好ましい形態としては、原料の酢酸ベンジルは後述するオキシアセトキシル化反応により得られたものを使用する。また、原料のメタノールは、エステル交換反応で副生した酢酸メチルを加水分解してメタノール回収塔で蒸留回収されるメタノールと、反応蒸留塔の塔底液をメタノール分離塔に供給して蒸留回収されるメタノールを循環使用する。したがって、新たに供給されるメタノールは蒸留のロス分のみのためわずかでよい。
【0025】
本発明において、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルコラート等が使用できる。これらは固体であるため一般にアルコールに溶解させて供給される。
【0026】
エステル交換反応に用いられるアルコールは、メタノールに限定するものではないが、触媒の溶解性やエステル交換反応で副生する酢酸エステルの加水分解後のアルコールと水の蒸留分離性などからメタノールが最も適している。したがって、触媒を溶解するアルコールもメタノールが最適である。また目的生成物のベンジルアルコールに溶解させて使用する方法も有効である。
【0027】
触媒の使用量としては、触媒の種類によっても異なり一概には言えない。反応速度を考慮すると多い方が反応上有利であるが、前述の塩類の析出問題に関係するためそれを勘案して決定する必要がある。例えば、水酸化ナトリウムを使用する場合は原料の酢酸ベンジルに対して0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%が適当である。尚、ナトリウムメチラートを使用する場合は、水酸化ナトリウムの場合の使用量に、分子量比(54/40)を乗じた値が適当である。
【0028】
反応蒸留塔の型式は、一般に使用される型式のものでよく、充填塔式蒸留塔でも棚段式蒸留塔でも使用でき、特に限定するものではない。
【0029】
反応蒸留塔に触媒を供給する位置は、酢酸ベンジルの供給位置(供給段)と同じかそれより高い位置(上の段)が好ましい。
【0030】
反応蒸留塔の形態は、メタノールの供給位置から酢酸ベンジルの供給位置までを反応部とし、酢酸ベンジルの供給位置より上部に濃縮部、メタノールの供給位置より下部に放散部と仮称する蒸留分離部を設けるのが好ましい。濃縮部の役目は原料の酢酸ベンジルや生成物のベンジルアルコールを留出させないことである。一方、放散部の役目は、生成した酢酸メチルを塔底部に落とさないことである。留出成分の酢酸メチルやメタノールの沸点に比べて酢酸ベンジルやベンジルアルコールの沸点が十分に高く分離しやすい。したがって、これら蒸留分離部の段数としては多くを必要としない。反応部の大きさは原料の酢酸ベンジルの滞留時間と蒸留上の理論段数を勘案して決定する。必要滞在時間は塔内の気液接触効率、触媒濃度、反応部における酢酸ベンジルとメタノールのモル比及び反応温度によって変わるため特に限定するものではない。滞在時間が長く理論段数が大きいことは反応上妨げにはならないが経済性が考慮されるべきである。したがって、滞在時間としては1分から60分、反応蒸留塔全体の理論段数としては3段から50段が適当である。
【0031】
ベンジルアルコールは比較的熱安定性の高い物質であるが、触媒やナトリウム塩の存在下で高温にさらすことはできるだけ避けた方が好ましく、塔底温度をベンジルアルコールの標準沸点以下にするためメタノールの一部を塔底から排出するようにするのが好ましい。
【0032】
反応蒸留塔の操作圧力は特に限定されないが、塔頂の主成分である酢酸メチルとメタノールの蒸気圧を考慮すると常圧で操作するのが、最も合理的かつ経済的である。塔内の各部の温度は操作圧力、酢酸ベンジルとメタノールの供給モル比、触媒濃度、塔底温度又は組成、各部の段数及び還流比を決めると決定される。
【0033】
原料の酢酸ベンジルに対するメタノールの供給モル比は等モルより多ければよいが、多すぎると生成した酢酸メチルと共に加水分解工程に送られるメタノール量が増え、メタノール循環量の増加によってエネルギー消費量の増大を招く。したがって、原料の酢酸ベンジルに対するメタノールの供給モル比は、通常1.1〜10、好ましくは1.5〜5である。
【0034】
本発明において、反応蒸留塔の塔底から得られるベンジルアルコールとメタノールを主成分とする混合物は、メタノール分離塔に供給され蒸留され、メタノールを主成分とする塔頂留分は反応蒸留塔へ循環される。この際、メタノール中の水分が多い場合は、水分を塔底のベンジルアルコール側に残すように蒸留分離することが好ましい。
【0035】
メタノール分離塔の型式は一般に使われる型式のものでよい。
【0036】
メタノール分離塔の操作圧力は特に限定されないが、上述のようにベンジルアルコールの標準沸点以下で処理されるよう減圧下で操作する方が好ましい。
【0037】
ベンジルアルコールとメタノールの比揮発度は非常に大きいため両者を分離するのは低段数、低還流比で可能である。このことから留出メタノール中の水分濃度にとらわれること無くメタノールを留出させ、水分を含んだメタノールは反応蒸留塔に循環させる前にシリカゲル、ゼオライト、活性炭等の水吸着剤を詰めた乾燥塔に通し脱水処理した後反応蒸留塔にリサイクルする方法も有効である。
【0038】
ベンジルアルコールを主成分とするメタノール分離塔の塔底液は、アルコール精製塔に供給され、塔頂からメタノール、水、ベンズアルデヒド等の低沸不純物を除去し、塔の中間部から高純度のベンジルアルコールを取り出す。この際、メタノール分離塔の塔底液をアルコール精製塔に供給する前に、固形物分離器に供給して濃縮し、液中に溶解する安息香酸ソーダ、酢酸ソーダ及び触媒等の固形物を析出分離することが好ましい。そして、ベンジルアルコールを主成分とする固形物分離器の蒸発物がアルコール精製塔に供給され、塔頂からメタノール、水、ベンズアルデヒド等の低沸不純物を除去し、塔の中間部から製品のベンジルアルコールを取り出し、塔底液は固形物分離器へ循環される。
【0039】
固形物分離器及びアルコール精製塔の圧力はベンジルアルコールの熱安定性を考慮して減圧下で操作するのが好ましい。固形物分離器の型式は特に限定しないが、例えば、内部に固形物の掻き取り器を持った蒸発器、例えば薄膜式蒸発装置等が挙げられる。
【0040】
アルコール精製塔は二塔すなわち不純物分離塔とアルコール精製塔に分けることもできる。この場合、不純物分離塔の塔頂からメタノール、水、ベンズアルデヒド等の不純物を取り出し廃棄し、塔底液はアルコール精製塔に供給し、塔頂から製品のベンジルアルコールを取り出し、塔底液は固形物分離器へ循環される。
【0041】
反応蒸留塔の塔頂から取り出される酢酸メチルとメタノールを主成分とする混合物は、抽出蒸留塔の中間部に供給し、上部から水を供給して蒸留し、塔頂から酢酸メチルと水を主成分とする混合物を取り出し、酢酸回収塔の留出物及び水とともに加水分解反応器に供給し加水分解処理することが好ましい。この際、水及びメタノールを主成分とする抽出蒸留塔の塔底液はメタノール回収塔に供給して蒸留し、メタノールを主成分とする塔頂留出物は反応蒸留塔へ循環させ、塔底から回収される水は抽出蒸留塔へ循環させる。
【0042】
加水分解反応器を出た反応混合物は、酢酸メチル回収塔に供給して蒸留し、塔頂から得られる未反応の酢酸メチルとメタノールを主成分とする混合物は抽出蒸留塔へ循環させる。酢酸メチル回収塔の塔底から得られる水と酢酸を主成分とする混合物は酢酸回収塔に供給して蒸留し、塔頂から得られる水又は酢酸水溶液を主成分とする留出物は加水分解反応器へ循環させる。
【0043】
抽出蒸留塔、メタノール回収塔、酢酸メチル回収塔及び酢酸回収塔の型式は一般の蒸留塔の型式でよい。
【0044】
抽出蒸留塔に供給する水の量は、反応蒸留塔から供給される酢酸メチルとメタノールを主成分とする混合物の量に対して、重量比で通常0.05〜5、好ましくは0.1〜1である。水の量が少なすぎると留出液中のメタノール濃度が高くなり、また塔底液中の酢酸メチル濃度が高くなる。水の量が多すぎるとエネルギー消費量が大きくなり経済的でない。
【0045】
メタノール回収塔の塔頂から回収されるメタノール中の水分は、少なければ少ない方がよく、通常0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下である。水を主成分とするメタノール回収塔の塔底液中のメタノール濃度は特に限定されないが、抽出蒸留塔に供給する水の量を増加させないことと、循環するメタノール量を減らす意味で低い方が好ましい。
【0046】
加水分解反応器に供給する水の量は、抽出蒸留塔から供給される酢酸メチルとメタノールの量及び加水分解率にもよるが、通常酢酸メチルに対する水のモル比で1〜10、好ましくは1〜5である。加水分解反応用触媒としては、硫酸、燐酸、アルキルスルホン酸等の液体酸や酸性陽イオン交換樹脂、シリカ、シリカアルミナ、酸性白土等の固体酸があるが、反応後の触媒分離の容易さ、装置材質等から酸性陽イオン交換樹脂が使いやすく適当である。
【0047】
加水分解反応器の型式は、撹拌式、固定床式、塔式のいずれでもよいが、酸性陽イオン交換樹脂を触媒として使用する場合は触媒の損傷のない固定床式が好適である。
【0048】
さらに、好ましい方法として酸性陽イオン交換樹脂を圧損の少ない形状に成型したり、容器に入れて蒸留塔内に組み込み反応と蒸留を一本の塔で行う反応蒸留方式を採用すれば、酢酸メチル回収塔が不要となり有利である。装置の大きさは必要接触時間によって決まる。通常の固定床式の場合の接触時間は、通常0.03〜10時間、好ましくは0.1〜5時間である。反応温度は反応速度と酸性陽イオン交換樹脂の耐熱性から50〜120゜Cが好ましい。反応器の操作圧力は特に限定されないが、通常絶対圧で1〜5気圧が適当である。
【0049】
酢酸メチル回収塔は、酢酸メチルとメタノールの混合物を主成分とする留出液と酢酸と水を主成分とする塔底液の沸点差が大きいため分離は容易であり段数と還流比は経済性から選定すればよい。本発明によれば酢酸回収塔の留出水は加水分解反応器へリサイクルされるが、プロセスの経済性を考慮するとこの中にある程度の酢酸が含まれても支障ない。
【0050】
本発明の方法において、原料として使用される酢酸ベンジルの製造法としては特に限定するものではないが、例えば、トルエンと酢酸及び酸素をオキシアセトキシル化することにより製造することができる。
【0051】
この際、原料として用いられるトルエン及び酢酸はどのような製法によって製造されたものでも使用可能である。例えば、トルエンは、石油留分から分離されたもの、石油留分を分解して得られる分解油から分離されたもの等を使用することができ、また酢酸は、アセトアルデヒドの酸化によって製造されたもの、炭化水素の酸化によって製造されたもの、メタノールと一酸化炭素から合成されたもの等のいずれでも用いることができる。
【0052】
上記の方法においては、トルエンと酢酸及び酸素をオキシアセトキシル化して酢酸ベンジルを得るために、オキシアセトキシル化反応器にオキシアセトキシル化能を有する触媒を充填して用いる。
【0053】
オキシアセトキシル化能を有する触媒としては、所望のオキシアセトキシル化反応成績を得ることができる触媒が特に制限なく使用でき、オキシアセトキシル化活性を持つパラジウムを主成分とする触媒が好適なものとして挙げられる。
【0054】
具体的には例えば、アルミナにパラジウムを担持した触媒とアルカリ金属の酢酸塩からなる触媒系(特公昭42−13081号公報)、シリカに担持したビスマス、モリブデン、マンガン、バナジウム及びタングステンから選ばれる一つをパラジウムと組み合わせた触媒(特開昭52−151135号公報、特開昭52−151136号公報)、シリカに担持したビスマス、コバルト及び鉄から選ばれる一成分とパラジウムからなる触媒と酢酸カリウムからなる触媒系(特公昭50−28947号公報)、シリカにパラジウム、ビスマス及びクロムを担持した触媒とアルカリ金属の酢酸塩からなる触媒系(特公昭52−16101号公報)、シリカにパラジウムとビスマス又は鉛を担持した触媒と反応系に可溶なビスマス化合物又は鉛化合物の両方からなる触媒系(特開昭63−174950号公報)、パラジウムとビスマスからなり、パラジウム/ビスマス=2.5〜3.5(原子比)である合金がシリカに担持された触媒等が挙げられる。これらのうちでも、パラジウムとビスマスからなり、パラジウム/ビスマス=2.5〜3.5(原子比)である合金がシリカに担持された触媒が、触媒活性及び触媒寿命を考慮すると特に好ましい。パラジウムとビスマスからなり、パラジウム/ビスマス=2.5〜3.5(原子比)である合金は、2θが30〜80°の間に表1
【0055】
【表1】
Figure 0003890641
【0056】
に示される特徴的なX線回折パターンを示す。
【0057】
上記の方法においては、触媒の劣化を抑制するために、トルエン及び/又は酢酸中にビスマスの可溶性化合物を溶解させて反応を行ってもよい。
【0058】
この場合、トルエン及び/又は酢酸中に溶解させているビスマスの可溶性化合物の量は、下式(5)
【0059】
【化5】
Figure 0003890641
【0060】
の範囲内であることが好ましい。
【0061】
触媒として、上記したパラジウムとビスマスからなり、パラジウム/ビスマス=2.5〜3.5(原子比)である合金がシリカに担持された触媒を使用する場合、該触媒は本反応系では安定であるため、特にビスマスの可溶性物質を共存させる必要はないが、共存させる場合でも、上記の範囲内で十分である。この範囲を著しく超えると、生成物の酢酸ベンジルを精製する工程で、ビスマス化合物が析出し閉塞の原因となる場合がある。
【0062】
ビスマスの可溶性化合物としては、特に限定するものではないが、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、オキシ酢酸ビスマス、水酸化ビスマス、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、酢酸ビスマス、シュウ酸ビスマス、トリメチルビスマス等が例示される。
【0063】
上記したオキシアセトキシル化能を有する触媒は、反応器中に充填して使用する。使用する触媒量は、反応方法により異なるため一律には規定できないが、経済性を勘案すると、固定床の場合には、単位触媒体積、単位時間当たりのトルエンと酢酸の合計供給量(LHSV)として、0.1〜50h-1の範囲、より好ましくは、0.1〜30h-1となる触媒量が好ましく、また、懸濁床の場合には、触媒の濃度は、原料に対し0.1〜30重量%の範囲が良い。
【0064】
上記の方法において、工業的観点から、触媒の活性、選択性を確保した上で触媒の寿命を維持するためには、反応器内の気相部分の酸素分圧を、0.1〜2kg/cm2の範囲に制御することが好ましい。0.1kg/cm2未満では、工業的に充分な活性が得られず、また、2kg/cm2を越えるとパラジウムの溶出が多くなり、活性低下が著しくなる場合がある。また、酸素の供給量は、触媒体積1リットルに対して0.5〜4.5モル/hが好ましい。
【0065】
上記のオキシアセトキシル化反応は、通常、加温、加圧下で実施される。反応温度は、通常80〜230℃、好ましくは120〜200℃が選ばれる。これより高くしても副反応の進行が増すだけであり、低くすると反応速度の点で不利になる。また、圧力は、反応温度で触媒表面が液相に保たれていればよく、通常3〜100kg/cm2G、好ましくは4〜50kg/cm2Gが選ばれる。本発明の方法では、この範囲内で望むべき反応が十分進行するので、これを越える高圧は不必要である。
【0066】
上記の方法においては、酸素を酸化剤として用いる。酸素は、窒素等の不活性ガスで希釈されていてもよく、空気であっても使用できる。酸素の供給量は、反応温度、触媒量等によって最適量が変わるが、触媒を通過した所のガス組成が爆発範囲以下であればよい。単位触媒量、単位時間当たりの酸素供給量(GHSV)は、0℃、1気圧換算で5000h-1以下が好ましい。
【0067】
反応時間は、反応温度、圧力、触媒量等の設定の仕方又は反応方法によって変わるため一概にその範囲を決めることは困難であるが、懸濁床での回分式、半回分式においては通常0.5時間以上が必要で、好ましくは1〜10時間が良い。また、懸濁床による連続式反応又は固定床流通式反応においては、滞留時間は通常0.03〜10時間で良い。
【0068】
オキシアセトキシル化反応器の形式は、特に限定されるものではなく、例えば、単管式又は多管式の反応器形式でよい。また、この反応は酸化反応であり発熱を伴う反応であるが、熱の制御方法についても、特に制限はなく、断熱形式、多管式反応器を用いて反応熱を除熱する形式、又は、原料の分割供給形式等を採用することが可能である。
【0069】
オキシアセトキシル化反応器からの流出物は、気液分離装置である気液分離器に供給される。
【0070】
気液分離装置としては、独立した気液分離器の他、オキシアセトキシル化反応器出口での流出物の取り出し方法によっては気液分離操作が可能であり、この場合は反応器と一体型の気液分離装置及び操作と見なすことができ、このような形態を使用してもかまわない。
【0071】
気液分離器からの液相部は、トルエン、酢酸及び酢酸ベンジルを主成分とする混合液であり、それらは原料回収塔に供給される。原料回収塔では蒸留が行われ、塔頂からは未反応原料であるトルエンと酢酸を主成分とする混合液が留分として回収され、塔底からは目的生成物である酢酸ベンジルを主成分とする混合液が得られる。原料回収塔で回収されたトルエンと酢酸を主成分とする塔頂留分は、オキシアセトキシル化反応器に循環される。
【0072】
原料回収塔で回収された酢酸ベンジルを主成分とする塔底液は、そのまま又は温度及び圧力を調整して低沸物除去塔に供給される。低沸物除去塔では蒸留が行われ、ベンズアルデヒドを主成分とする塔頂液と酢酸ベンジルを主成分とする塔底液とに分離される。低沸物除去塔の蒸留条件は、ベンズアルデヒド等の酢酸ベンジルよりも沸点の低い成分を塔頂から除去できれば特に限定されるものではない。
【0073】
低沸物除去塔で回収された酢酸ベンジルを主成分とする塔底液は、そのまま又は温度及び圧力を調整して高沸物除去塔に供給される。高沸物除去塔では蒸留が行われ、塔頂より高純度の酢酸ベンジルを得る。また、高沸物除去塔の塔底からは安息香酸や安息香酸ベンジル等の酢酸ベンジルよりも沸点の高い成分が除去される。高沸物除去塔の蒸留条件は特に限定されるものではなく、製品酢酸ベンジルの純度に応じた任意の蒸留条件が選ばれる。さらに高品質の酢酸ベンジルを製造する場合は、別の蒸留塔を用いて酢酸ベンジルを蒸留・精製することも可能である。
【0074】
このようなプロセスを採用することにより、高純度酢酸ベンジル及び高純度ベンジルアルコールを効率的に連続して製造することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
次に図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の形態は各種考えられ、図面に示される実施の形態の一例に限定されるものではない。
【0076】
図1に本発明のエステル交換反応プロセスの一例を示す。
【0077】
酢酸ベンジルを反応蒸留塔1の上部に供給し、メタノールを反応蒸留塔1の下部から供給し、塩基性触媒の存在下で向流接触させエステル交換反応させる。
【0078】
原料のメタノールは、後工程のメタノール分離塔2の塔頂から回収されるメタノールと酢酸メチルの加水分解工程のメタノール回収塔6の塔頂から回収されるメタノールでほとんどが賄われるため、少量のロス分が新たなメークアップとして供給される。この際、前述のようにメタノール中の水分濃度を管理することが好ましい。
【0079】
塩基性触媒は原料の酢酸ベンジルの供給位置と同じかそれよりも高い位置に供給する。原料の酢酸ベンジルが塔頂から留出しないように数段の濃縮部を酢酸ベンジルの供給段の上に設けるのが好ましいが、触媒を酢酸ベンジルの供給段以上から供給すれば、濃縮部でも反応が起き反応寄与分だけ濃縮部段数と還流比が軽減され有利である。
【0080】
エステル交換反応によって生成した目的物質のベンジルアルコールは一部の余剰メタノールと共に反応蒸留塔1の塔底から取り出され、メタノール分離塔2に供給され、メタノールは塔頂から蒸留分離され反応蒸留塔1へ循環される。このとき水分が共存する場合は循環させるメタノール中の水分濃度が所定濃度を超えないように蒸留条件をコントロールすることが好ましい。
【0081】
メタノール分離塔2の塔底液は、固形物分離器3に供給して濃縮し固形物を分離する。固形物分離器3の例としては掻き取り式の薄膜蒸発器等が有効である。
【0082】
固形物分離器3の蒸発蒸気はベンジルアルコールを主成分とする混合物で、飛沫同伴で混入しないかぎり固形物成分は含まれない。該蒸発蒸気はアルコール精製塔4に供給され塔頂から低沸不純物が留去され、アルコール精製塔4の中段から高純度のベンジルアルコールが取り出される。アルコール精製塔4の塔底液は固形物分離器3へ循環される。言うまでもないがアルコール精製塔4を低沸不純物を分離する蒸留塔と製品を塔頂から取り出す製品塔の二塔に分割することも可能である。
【0083】
反応蒸留塔1の塔頂から得られる酢酸メチルと余剰メタノールの一部を主成分とする混合物は、酢酸メチルの加水分解工程の抽出蒸留塔5の中央部に供給される。抽出蒸留塔5の上部からは水を主成分とするメタノール回収塔6の塔底液が供給されて、水によるメタノールの抽出蒸留が行われる。抽出蒸留塔5の塔底から取り出される水とメタノールを主成分とする混合物は、メタノール回収塔6に供給され蒸留されて、塔底から得られる水を主成分とする混合物は抽出蒸留塔5の上部へ循環される。メタノール回収塔6の塔頂から回収されるメタノールを主成分とする留出液は、メタノール分離塔2から循環されるメタノールと必要に応じメイクアップのメタノールと共に反応蒸留塔1の下部に供給される。
【0084】
一方、酢酸メチルと水を主成分とする抽出蒸留塔5の塔頂液は、水又は水と酢酸を主成分とする酢酸回収塔9の塔頂液及びメークアップの水と共に、加水分解反応器7に供給し、酢酸メチルの加水分解反応が行われる。加水分解反応器7の流出物は、酢酸メチル回収塔8に供給して蒸留し、塔頂から未反応の酢酸メチルとメタノールを主成分とする混合物が取り出され、抽出蒸留塔5へ循環され、反応蒸留塔1の塔頂液と共に抽出蒸留塔5に供給される。酢酸メチル回収塔8の塔底液は酢酸回収塔9に供給される。
【0085】
図2には酢酸ベンジル製造プロセスの一例を示す。
【0086】
図2において、オキシアセトキシル化反応器10には、原料として供給されるトルエンと酢酸及び空気、原料回収塔12及び水除去塔16から循環されるトルエンと酢酸を主成分とする循環液相部、静定槽17のトルエンを主成分とする上相部、凝縮器15から少なくとも一部循環される酸素と窒素を主成分とする循環気相部、並びに酢酸回収塔9(図1参照)の酢酸を主成分とする塔底液が供給される。
【0087】
原料の供給方法については特に限定されるものではないが、反応を液相で行うため触媒の表面が原料液で覆われていればよく、気液並流又は向流であってもかまわないし、気液の流れ方向が下向流又は上向流であってもかまわない。また、原料液及び/又は空気は、オキシアセトキシル化反応器10に分割供給してもかまわない。
【0088】
オキシアセトキシル化反応器10の気液混相流となった反応器流出物は、気液分離器11に供給される。
【0089】
気液分離器11から取り出された気相部は、凝縮装置である凝縮器15に供給され、トルエン、酢酸、水及び酢酸ベンジルを主成分とする液相部と、酸素と窒素を主成分とする気相部に分離される。
【0090】
凝縮器15で分離された液相部の少なくとも一部は、気液分離器11からの液相部に混合して原料回収塔12に供給され、残りの液相部は水除去塔16に供給される。また、凝縮器15で分離された気相部の少なくとも一部はオキシアセトキシル化反応器10に循環され、残りの気相部は系外にパージされる。このオキシアセトキシル化反応器10に少なくとも一部循環される気相部の循環量は、オキシアセトキシル化反応器10に供給される空気と混合したときの全気相部中の酸素濃度が所望の濃度になるように制御される。
【0091】
水除去塔16に供給される凝縮器15からの大部分の液相部は、トルエン、酢酸及び水を主成分とするもので、水除去塔16で蒸留され、水除去塔16の塔頂からはトルエンと水が主留分として得られる。このトルエンと水を主成分とする塔頂留分は静定槽17で液液二相分離され、トルエンを主体とした上相はそのままオキシアセトキシル化反応器10に循環され、水を主体とした下相は除去される。また、水除去塔16の塔底からは酢酸が得られそのままオキシアセトキシル化反応器10に循環される。
【0092】
気液分離器11からの液相部は、凝縮器15で分離された少なくとも一部の液相部と混合して原料回収塔12に供給される。この気液分離器11からの液相部と凝縮器15で分離された少なくとも一部の液相部との混合液には、酸素及び窒素等の非凝縮ガス成分が溶存しており、原料回収塔12に供給する前にフラッシュ蒸発器、真空脱気器等の公知の装置及び操作によって溶存した非凝縮ガス成分を取り除くことが好ましい。この方法を採用すれば、原料回収塔12を小型化できるとともに、非凝縮ガス成分と同時に系外へ放出される有効成分の損失を抑制するための原料回収塔12に付属させる凝縮装置等の特別な装置及び操作が不必要となる。
【0093】
原料回収塔12の塔頂留分は、トルエン、酢酸を主成分とするものでそのままオキシアセトキシル化反応器10に循環される。
【0094】
オキシアセトキシル化反応器10に循環される未反応原料であるトルエン及び酢酸を主成分とする循環液相部は少量の水を含む。水の濃度が高くなった場合、触媒の活性、選択性に悪影響を及ぼすことがあるため、この場合、オキシアセトキシル化反応器10に供給される原料トルエン及び酢酸と、循環されたトルエンと酢酸を主成分とする循環液相部との全混合液中の水の濃度が5重量%以下となるように、気液分離器11の気液分離条件、凝縮器15の凝縮条件、及び原料回収塔12又は水除去塔16の蒸留条件を制御することが好ましい。
【0095】
【発明の効果】
以上のように、本発明の方法によれば、酢酸ベンジルを原料としてメタノールとエステル交換することによって高純度のベンジルアルコールを安定操作のもとに経済的に製造することができる。
【0096】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明が以下の実施例のみに限定されるものではないことは言うまでもない。なお、以下本文中、重量%を%、ベンジルアルコールをBzOH、酢酸ベンジルをBzOAcとそれぞれ省略する。
【0097】
実施例1
図1を使って実施例を説明する。
【0098】
純度99.7%のBzOAc427g/h(ベンズアルデヒド:0.03%、BzOH:0.24%、酢酸:0.01%、安息香酸:0.01%、水分:0.01%を含有)を反応蒸留塔1(30段、反応部25段)の塔頂部に連続供給した。メタノール分離塔2とメタノール回収塔6の塔頂から回収されたメタノール、及びメイクアップのメタノールの合計242g/h(酢酸メチル:0.16%、水分:0.01%を含有)を反応蒸留塔1の5段目に供給した。また塔頂から触媒として2%のナトリウムメチラートを含むメタノール溶液13.8g/hを供給した。塔底の温度は96.0℃で運転した。
【0099】
その結果、塔底から反応混合物349g/h(組成 BzOH:86.8%、メタノール:13.1%)を得た。尚、この反応混合物のガスクロマトグラムにおいて、原料のBzOAcのピークは痕跡程度であった。
【0100】
その反応混合物をメタノール分離塔2に供給して蒸留し、留出のメタノール44g/hは反応蒸留塔1に循環した。メタノール分離塔2の塔底液は受器に溜め、その5.0kgを回転式薄膜蒸発型の固形物分離器3に仕込み、圧力を350〜100Torrに段階的に変えて蒸発濃縮し、純度99.8%のBzOH4.9kgを得た。
【0101】
一方、反応蒸留塔1の塔頂から留出液334g/h(組成 酢酸メチル:62.5%、メタノール:35.7%、BzOAc:0.9%、BzOH:0.9%)を抜き出した。この留出液を酢酸メチル回収塔8の留出液と混合して抽出蒸留塔5の中段に供給し、塔頂から水177g/hを供給して抽出蒸留した。抽出蒸留の塔底液は、メタノール回収塔6に供給して蒸留し、塔頂の留出液205g/h(組成 メタノール:99.8%、酢酸メチル:0.2%)は、反応蒸留塔1に循環した。
【0102】
抽出蒸留塔5の塔頂から得られた留出液635g/h(組成 酢酸メチル:95.5%、メタノール:2.0%、水:2.5%)は、酢酸回収塔9の塔頂留出液454g/h(組成 水:69.6%、酢酸:30.0%)及び水109g/hと混合し、加水分解反応器7(内径4cm、高さ80cmのガラス製固定床に市販の酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR−120B(オルガノ(株)製)のH型のものを1000ml充填)に供給し、40℃で加水分解した。
【0103】
加水分解反応器7の反応混合物は、酢酸メチル回収塔8に供給して蒸留し、塔頂からの留出液557g/h(組成 酢酸メチル:71.5%、メタノール:18.5%、水:10%)は抽出蒸留塔5に循環し、塔底液は酢酸回収塔9に供給し蒸留した。酢酸回収塔9の塔頂留出液は加水分解反応器7に循環し、塔底から90%の酢酸水溶液188g/hを回収した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベンジルアルコールの製造法におけるエステル交換反応プロセスの一例を具体的に示した工程図である。
【図2】酢酸ベンジルの製造法の一例を具体的に示した工程図である。
【符号の説明】
1 反応蒸留塔
2 メタノール分離塔
3 固形物分離器
4 アルコール精製塔
5 抽出蒸留塔
6 メタノール回収塔
7 加水分解反応器
8 酢酸メチル回収塔
9 酢酸回収塔
10 オキシアセトキシル化反応器
11 気液分離器
12 原料回収塔
13 低沸物除去塔
14 高沸物除去塔
15 凝縮器
16 水除去塔
17 静定槽

Claims (7)

  1. 塩基性触媒の存在下に酢酸ベンジルをメタノールとエステル交換反応させベンジルアルコールを製造する方法において、酢酸ベンジルを反応蒸留塔の上部から供給し、メタノールを反応蒸留塔の下部から供給して、塩基性触媒の存在下、酢酸ベンジルとメタノールを向流的に接触反応させ、酢酸メチルとメタノールを主成分とする塔頂留分と、メタノールとベンジルアルコールを主成分とする塔底液を得、反応蒸留塔の塔底液をメタノール分離塔に供給して蒸留し、メタノールを主成分とする塔頂留分とベンジルアルコールを主成分とする塔底液に分離し、メタノール分離塔の塔頂留分を反応蒸留塔へ循環させ、メタノール分離塔の塔底液をアルコール精製塔に供給して蒸留してベンジルアルコールを得ること、及び反応蒸留塔の塔頂留分を抽出蒸留塔に供給して蒸留した後、水とメタノールを主成分とする塔底液をメタノール回収塔に供給して蒸留し、メタノールを主成分とする塔頂留分を反応蒸留塔に循環させ、水を主成分とする塔底液を抽出蒸留塔に循環させることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  2. 請求項1に記載の製造法において、メタノール分離塔の塔底液を固形物分離器に供給して固形物を除去した後、アルコール精製塔に供給することを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の製造法において、水と酢酸メチルを主成分とする抽出蒸留塔の塔頂留分を加水分解反応器に供給し、酸性触媒の存在下、水を加えて加水分解した後、生成液を酢酸メチル回収塔に供給して蒸留し、酢酸メチルとメタノールを主成分とする塔頂留分を抽出蒸留塔に循環させ、塔底液を酢酸回収塔で蒸留した後、水を主成分とする塔頂留分を加水分解反応器に循環させることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  4. トルエン、酢酸及び酸素をオキシアセトキシル化能を有する触媒を充填したオキシアセトキシル化反応器に供給し反応させて酢酸ベンジルを製造し、次いで請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造法によりベンジルアルコールを製造することを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  5. 請求項4に記載の酢酸ベンジルの製造法において、トルエン、酢酸及び酸素をオキシアセトキシル化反応器に供給し反応させて反応器流出物を得、反応器流出物を気液分離器に供給して、酸素と窒素を主成分とする気相部と、トルエン、酢酸及び酢酸ベンジルを主成分とする液相部に分離し、気液分離器から取り出した液相部を原料回収塔に供給して蒸留し、トルエン及び酢酸を主成分とする塔頂留分と酢酸ベンジルを主成分とする塔底液とに分離し、原料回収塔の塔頂留分をオキシアセトキシル化反応器に循環させ、原料回収塔の塔底液を低沸物除去塔に供給して蒸留し、ベンズアルデヒドを主成分とする塔頂液と酢酸ベンジルを主成分とする塔底液とに分離し、低沸物除去塔の塔底液を高沸物除去塔に供給して蒸留し、塔頂より酢酸ベンジルを得ることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  6. 請求項5に記載の製造法において、気液分離器から取り出した気相部を凝縮器に供給し、トルエン、酢酸、水及び酢酸ベンジルを主成分とする液相部と酸素と窒素を主成分とする気相部に分離した後、少なくとも一部の液相部は原料回収塔に供給し、少なくとも一部の気相部はオキシアセトキシル化反応器に循環させることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
  7. 請求項6に記載の製造法において、凝縮器から取り出した液相部は水除去塔に供給して蒸留し、大部分の水を除去した後、オキシアセトキシル化反応器に循環させることを特徴とする高純度ベンジルアルコールの製造法。
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