JP3890558B2 - クランクシャフト及びエンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフト及びこれを備えたエンジンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンに用いられるクランクシャフトは、ピストンの往復運動をコンロッドを介して回転運動に変えるためのものである。具体的には、まずピストンの往復運動がコンロッドに伝達される。そして、コンロッドの大端部に滑り軸受を介して連結されたクランクシャフトのクランクピンがクランクジャーナルを中心に回転することによりクランクシャフト全体が回転する。
【0003】
ここで、一般に4ストロークエンジンは、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程の4工程で1サイクルの作用を完了する。その際、クランクピンに高荷重がかかる位置は各工程毎に異なる。例えば、圧縮上死点では、爆発力によりクランクピンの上側(ピストン側)、すなわち図10におけるB点に高荷重がかかる。また、吸気下死点および排気下死点でも、慣性力によりクランクピンの上側(ピストン側)、すなわち図10におけるB点に高荷重がかかる。吸気上死点の場合は、慣性力によりクランクピンの下側(ピストンの反対側)、すなわち図10におけるA点に高荷重がかかる。
【0004】
このように、各工程により荷重がかかる位置がクランクピンの上側(ピストン側)や下側(ピストンの反対側)に変化する。これに伴ってクランクピンと滑り軸受との間の軸受隙間に介在する油膜の厚さが変化する。特に、吸気上死点におけるA点および吸気下死点等におけるB点では、高荷重がかかることにより油膜切れが生じるおそれがある。油膜切れが生じると、クランクピンとコンロッドの大端部の軸受との摩擦抵抗が増大し、その結果パワーロスが増加することになる。このパワーロスとは、クランクピンとコンロッドの大端部の軸受の抵抗、すなわち流体損失である。より具体的には、回転による流体抵抗であるせん断ロスと、軸心が振れることにより生じる流体の圧縮によるロスであるスクイズロスとの和である。一般に、パワーロスが小さい程、燃費が良くなる。なお、コンロッドの大端部に取付けられた軸受およびクランクピンの断面形状は真円形状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の更なる燃費向上の要請に伴い、クランクシャフトによるパワーロスの減少が求められている。そこで、パワーロス増加の一因であるクランクピンとコンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受との間の油膜切れが生じないようにすることが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、クランクピンとコンロッドの大端部に取付けられた軸受との間の油膜切れを生じさせないクランクシャフトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、クランクピンの断面形状を非真円形状とすることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のクランクシャフトは、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームとからなる。そして、クランクピンは、断面形状が非真円形であって、この断面形状と滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置が、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とする。なお、クランクピンは、コンロッド(滑り軸受)が固定されたと仮定した場合、ほぼ滑り軸受の中心まわりに回転する。ここで、クランクジャーナルは、主軸受により回転自在に軸支されている。クランクピンは、コンロッドの大端部に取り付けられた滑り軸受との間に潤滑油を介し且つ該コンロッドの大端部に回転自在に連結されている。また、クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンとを連結するものである。
【0009】
つまり、クランクピンの断面形状を非真円形状とする。これにより、排気工程から吸気工程、そして圧縮工程と進むときに、コンロッドの大端部に取付けられた軸受に高荷重がかかる位置とクランクピンの位相を一致させることができる。その結果、適切な油膜厚さを得ることができる。
【0010】
そして、クランクピンの断面形状と滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置(以下、最小隙間位置」という)が、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線(以下、「中心直線」という)上にある場合には、油膜切れが生じるおそれがある。なぜなら、上死点または下死点において、コンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受に高荷重がかかる位置と最小隙間位置が一致することによるものである。つまり、クランクピンとコンロッドの大端部に取付けられた軸受との間が最も狭い位置に高荷重がかかるためである。なお、吸気上死点のときには、最小隙間位置がピストンの反対側にあることになる。また、圧縮上死点、吸気下死点および排気下死点のときには、最小隙間位置がピストン側にあることになる。
【0011】
従って、最小隙間位置が中心直線上にないように、最小隙間位置の設定をすることで、油膜切れを効果的に防止できる。その結果、パワーロスを減少させることができる。
【0012】
また、軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)と滑り軸受の中心とを結ぶ直線は、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線(中心直線)に一致する状態から、滑り軸受の中心を中心として、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、当該回転させる角度は、クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であると良い。
【0013】
つまり、上死点または下死点のときに、最小隙間位置がクランクジャーナルの回転方向に対して遅れ側にあることになる。一例として、圧縮上死点の場合について説明する。この場合、コンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受に高荷重がかかる位置はピストン側である。そして、クランクピンが反時計回りに回転する場合、最小隙間位置はピストン側から時計回り方向へ90度以内の位置にあることになる。ここで、高荷重がかかる位置にある潤滑油にくさび効果が発生する。すなわち、高荷重がかかる位置にくさび効果が発生して高圧となると共に、十分な軸受隙間、すなわち油膜厚さが確保される。これにより、油膜切れを防止でき、パワーロスが減少する。
【0014】
また、軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)は、滑り軸受の中心に対してクランクジャーナルから遠い側に位置すると良い。この場合には、圧縮上死点にて効果的にくさび効果を発生させることができる。
【0015】
また、軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)は、滑り軸受の中心に対してクランクジャーナルに近い側に位置すると良い。この場合には、吸気上死点、吸気下死点、排気下死点にて、効果的にくさび効果を発生させることができる。特に、これらの位置の場合には、油膜切れが生じやすいため、油膜切れ防止に効果的である。さらに、排気下死点から吸気上死点、さらには吸気下死点へ進むときには、最小隙間位置は、高荷重がかかる位置からある位相だけ遅れた位置に常に存在することになる。このことにより、くさび効果を適切に得ることができる。
【0016】
また、本発明のクランクシャフトのクランクピンは、断面形状がだ円形であって、断面形状のだ円形の長軸と滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置が、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とする。
【0017】
断面形状をだ円とした場合にも、上述の非真円形状の場合と同様の効果がある。すなわち、高荷重がかかる位置に長軸がないので十分な油膜厚さが確保されて油膜切れを起こすことがなく、さらにくさび効果により油膜切れを防止できる。その結果、パワーロスを減少させることができる。これは、上述の非真円形状の最小隙間位置が、だ円の長軸位置に相当するからである。
【0018】
また、断面形状のだ円形の長軸は、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線(中心直線)に一致する状態から、滑り軸受の中心を中心として、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、当該回転させる角度は、クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であると良い。
【0019】
この場合も上述の非真円形状の場合と同様の効果がある。すなわち、高荷重がかかる位置でくさび効果がより効果的に働くので、油膜切れをより防止できる。その結果パワーロスを減少させることができる。
【0020】
また、本発明のエンジンは、クランクジャーナルとクランクピンとを有するクランクシャフトと、コンロッドとを備えており、クランクピンは、断面形状が非真円形であって、断面形状と滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)が、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とする。なお、クランクピンはコンロッド(滑り軸受)が固定されたと仮定した場合、ほぼ滑り軸受の中心まわりに回転する。ここで、クランクジャーナルと、クランクピンと、コンロッドとについては、上述と同様である。
【0021】
これにより、最小隙間位置が中心直線上にないように最小隙間位置の設定をすることで、油膜切れを効果的に防止できる。その結果、パワーロスを減少させることができる。
【0022】
また、軸受隙間の最小位置と滑り軸受の中心とを結ぶ直線は、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線に一致する状態から、滑り軸受の中心を中心として、クランクジャーナルの回転中心と滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、当該回転させる角度は、クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であると良い。
【0023】
これにより、油膜切れをより効果的に防止でき、パワーロスをより減少させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0025】
一般に、クランクシャフトは、ピストンの往復運動をコンロッドを介して回転運動に変えるためのものである。そして、爆発工程でピストンが得た力を回転力に変換して動力を発生し、他の工程(吸気工程、圧縮工程、排気工程)では逆にピストンを動かして吸入、圧縮、排気を行っている。このクランクシャフトは、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームとからなる。クランクジャーナルは、クランクケースの主軸受部でクランクシャフト自身を支えるものである。クランクピンは、滑り軸受が取付けられたコンロッドの大端部と連結されている。そして、クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンを連結するものである。また、本実施形態においては、4ストロークエンジンの場合について説明する。一般に4ストロークエンジンとは、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程の4工程で1サイクルの作用を完了するエンジンである。
【0026】
(第1実施形態)
次に、本発明の特徴的部分であるクランクピンの断面部分を図1に示す。図1に示すように、クランクピン1の断面形状はだ円形をしている。このクランクピン1にクランクアーム2を介してクランクジャーナル3に連結されている。また、コンロッド4の大端部の滑り軸受5(以下、単に「軸受」という)の断面形状は真円である。そして、コンロッド4の小端部がピストン6に連結されている。なお、図1は、上死点における図である。
【0027】
次に、クランクピン1の断面形状を変化させた場合に、クランクピン1によるパワーロスについての解析を行った。まず、解析条件としてのクランクピン1の断面形状は、図2に示す3種類である。すなわち、直径40mmの真円のクランクピンaと、真円のクランクピンaの垂直方向に約10μm大きいだ円断面形状(以下「ふくれだ円」という)のクランクピンbと、約10μm小さいだ円断面形状(以下「つぶれだ円」という)のクランクピンcである。なお、これらは上死点における断面形状である。
【0028】
それぞれの断面形状のクランクピン1を4ストロークエンジンに用いた場合のパワーロスを解析した結果を図3に示す。図3は、真円のクランクピンaのパワーロスを「1」とした場合において、ふくれだ円のクランクピンbおよびつぶれだ円のクランクピンcのパワーロスを示す。図3から分かるように、ふくれだ円のクランクピンbは真円のクランクピンaよりパワーロスが大きくなっている。つぶれだ円のクランクピンcは真円のクランクピンaよりパワーロスが小さくなっている。
【0029】
次に、ふくれだ円のクランクピンbおよびつぶれだ円のクランクピンcの傾斜角度を変更した場合におけるパワーロスについて解析を行った。この傾斜角度については図4を参照して説明する。上死点におけるクランクジャーナル3の回転中心からクランクピン1の回転中心を結ぶ直線(中心直線)を0度とする。そして、クランクピン1の回転中心に対するクランクピン1の回転方向への角度を傾斜角度αとする。本解析では、クランクピン1の傾斜角度αを0度から180度まで回転させた場合について行った。この解析結果を図5に示す。図5(a)はふくれだ円の場合であって、図5(b)はつぶれだ円の場合である。図5(a)から明らかなように、ふくれだ円の場合は、傾斜角度αが約150度の位置を中心に真円のクランクピンに比べてパワーロスが減少している。また、図5(b)から明らかなように、つぶれだ円の場合は、傾斜角度αが約30度の位置を中心に真円のクランクピンに比べてパワーロスが減少している。
【0030】
以上の解析結果より、だ円の長軸が、中心直線とのなす角がクランクピン1の回転方向と反対方向へ90度以下の場合に、パワーロスが減少していることが分かる。なお、図3に示す解析結果において、ふくれだ円の場合にパワーロスが増加しているが、これはだ円の長軸と中心直線とが一致している場合である。すなわち、この場合には、高荷重がかかる位置とだ円の長軸の位置とが一致していることになる。つまり、クランクピン1とコンロッドの大端部に取付けられた軸受5との隙間が最も少ない位置に高荷重がかかるためことによるものである。
【0031】
次に、さらに図6を用いて考察してみる。図6に示すように、クランクピン1の断面形状をだ円とし、コンロッドの大端部に取付けられた軸受5を真円とする。また、図6には、クランクピン1の断面形状と軸受5との間の軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)をRとして示している。
【0032】
クランクジャーナル3が反時計まわりに回転するエンジンの上死点において、クランクピン1の断面形状のだ円の長軸と、中心直線とのなす角βがクランクピン1の軸受5に対する回転方向と反対方向(以下、単に「クランクピン1の回転方向」という)へ45度の場合とする。この場合に、軸受5に対するクランクピン1の回転方向を反時計まわりであるので、くさび効果により潤滑油が高圧となる領域は、領域xおよび領域yとなる。
【0033】
続いて、各工程毎に図7を参照して説明する。まず、吸気上死点の場合は、高荷重がかかる位置はピストンの反対側(A点)となる。そのため、領域yはクランクピン1と軸受5により圧縮され、さらに高圧となる。A点ではクランクピン1と軸受5との間の軸受隙間が十分に確保されているため、油膜切れを防止できる。
【0034】
また、圧縮上死点の場合は、高荷重がかかる位置はピストン側(B点)となる。そのため、領域xはクランクピン1と軸受5により圧縮され、さらに高圧となる。B点ではクランクピン1と軸受5との間の軸受隙間が十分に確保されているため、油膜切れを防止できる。
【0035】
また、吸気下死点および排気下死点の場合は、高荷重がかかる位置はピストン側(A点)となる。すなわち、図6に示す状態を半回転した場合であるので、領域yがピストン側となる。そのため、領域yはクランクピン1と軸受5により圧縮され、さらに高圧となる。A点ではクランクピン1と軸受5との間の軸受隙間が十分に確保されているため、油膜切れを防止できる。
【0036】
また、一般に、排気工程、吸気工程および圧縮工程は特に油膜切れを生じやすいことは解析により分かっている。そして、排気工程から吸気工程へ、さらには圧縮工程へ進んでいく場合には、高荷重の位置がかかる位置がピストン側とピストンの反対側に180度変化することになる。この場合に、コンロッド4の大端部に取付けられた軸受に高荷重がかかる位置とクランクピン1の断面形状のだ円の長軸の位相をほぼ一致させることができる。すなわち、だ円の長軸の位置が、高荷重がかかる位置からある位相だけ遅れた位置に存在することになる。従って、くさび効果を適切に得ることができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の特徴的部分であるクランクピンの断面部分を図8(a)(b)に示す。図8に示すように、クランクピン1の断面形状はつぶれだ円と真円とを組み合わせた非真円形をしている。具体的には、図8(a)に示すクランクピン1の断面形状は、図2におけるつぶれだ円cの上半分と真円aの下半分とを組み合わせた形状である。図8(b)は、図8(a)のクランクピン1をクランクピン1の回転方向へ45度ずらしたものである。また、コンロッドの大端部の軸受5の断面形状は真円である。なお、図8は、上死点における図であり、クランクピン1は軸受5に対して反時計まわりに回転する。
【0038】
まず、図8(b)の場合について説明する。クランクピン1の断面形状のつぶれだ円c側の軸受隙間の最小位置(最小隙間位置)Rは、真円a側とのつなぎ目である。クランクジャーナルから遠い側(上死点にてピストン側)では、最小隙間位置Rと軸受5の中心とを結ぶ直線と、クランクジャーナル3の回転中心と軸受5の中心とを結ぶ直線(中心直線)とのなす角βは、クランクピン1の回転方向と反対方向へ45度である。この場合には、B点における軸受隙間、すなわち油膜厚さが十分に確保されると共に、くさび効果により領域xが高圧となる。
【0039】
すなわち、第1実施形態におけるクランクピン1の断面形状を一部変更したものに相当する。具体的には、断面形状のつぶれだ円cの長軸と真円aの直径とを一致させたものに相当する。このことより、図8(a)における領域xに発生するくさび効果は、図6の領域xに発生するくさび効果と同様の効果を有することになる。
【0040】
つまり、圧縮上死点の場合には、高荷重がかかる位置はピストン側となる。そのため、領域xはクランクピン1と軸受5により圧縮され、さらに高圧となる。B点では軸受隙間が十分に確保されたいるため、油膜切れを防止できる。
【0041】
(第3実施形態)
第3実施形態について図9に示す。図9(a)〜(d)はそれぞれ図8と同様に、上死点における図であり、クランクピン1は軸受5に対して反時計まわりに回転する。
【0042】
図9に示すように、クランクピン1の断面形状は、ふくれだ円と真円とを組み合わせた非真円形をしておる。より具体的には、図2におけるふくれだ円bの上半分と真円aの下半分とを組み合わせた形状である。すなわち、クランクピン1の断面形状は、ふくれだ円bの短軸と真円aの直径とを一致させた形状である。そして、上死点において、図9(a)では、左側にふくれだ円b、右側に真円aが位置している。また、図9(c)では、左側に真円a、右側にふくれだ円bが位置している。また、図9(b)は図9(a)のクランクピン1がクランクピン1の回転方向に約30度進んだ位置に位置している。また、図9(d)は図9(b)のクランクピン1がクランクピン1の回転方向に約30度遅れた位置に位置している。
【0043】
つまり、図9(a)〜(d)に示すクランクピン1の断面形状では、圧縮上死点において高荷重がかかるB点で軸受隙間、すなわち油膜厚さが従来(断面形状が真円)と同程度に確保されると共に、くさび効果により領域xが高圧となる。また、吸気上死点、吸気下死点および排気下死点では、高荷重がかかるA点で軸受隙間、すなわち油膜厚さが従来(断面形状が真円)と同程度に確保されると共に、くさび効果により領域yが高圧となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明のクランクシャフトによれば、軸受隙間を十分に確保することができると共に、効果的にくさび効果を発生させることができるため、油膜切れを防止できる。その結果、パワーロスを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクピンとコンロッドとピストンの配置を示す図である。
【図2】クランクピンの断面形状を変化させる解析の解析条件を示す図である。
【図3】解析結果を示す図である。
【図4】傾斜角度を説明する図である。
【図5】傾斜角度を変更した場合の解析結果を示す図である。
【図6】上死点におけるクランクピンと軸受の位置関係を示す図である。
【図7】4ストロークエンジンの各工程におけるクランクピンの位置を示す図である。
【図8】クランクピンの断面形状を示す図である。
【図9】クランクピンの断面形状を示す図である。
【図10】従来のクランクピンを示す図である。
【符号の説明】
1 ・・・ クランクピン
2 ・・・ クランクアーム
3 ・・・ クランクジャーナル
4 ・・・ コンロッド
5 ・・・ 軸受
6 ・・・ ピストン
Claims (8)
- 主軸受により回転自在に軸支されたクランクジャーナルと、コンロッドの大端部に取り付けられた滑り軸受との間に潤滑油を介し且つ該コンロッドの大端部に回転自在に連結されたクランクピンと、該クランクジャーナルと該クランクピンとを連結するクランクアームとを有するクランクシャフトにおいて、
前記クランクピンは、
断面形状が非真円形であって、
前記断面形状と前記滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置が、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とするクランクシャフト。 - 前記軸受隙間の最小位置と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線は、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に一致する状態から、前記滑り軸受の中心を中心として、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、
当該回転させる角度は、前記クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であることを特徴とする請求項1記載のクランクシャフト。 - 前記軸受隙間の最小位置は、前記滑り軸受の中心に対して前記クランクジャーナルから遠い側に位置することを特徴とする請求項2記載のクランクシャフト。
- 前記軸受隙間の最小位置は、前記滑り軸受の中心に対して前記クランクジャーナルに近い側に位置することを特徴とする請求項2記載のクランクシャフト。
- 主軸受により回転自在に軸支されたクランクジャーナルと、コンロッドの大端部に取り付けられた滑り軸受との間に潤滑油を介し且つ該コンロッドの大端部に滑り軸受を介して回転自在に連結されたクランクピンと、該クランクジャーナルと該クランクピンとを連結するクランクアームとを有するクランクシャフトにおいて、
前記クランクピンは、
断面形状がだ円形であって、
前記断面形状のだ円形の長軸と前記滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置が、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とするクランクシャフト。 - 前記断面形状のだ円形の長軸は、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に一致する状態から、前記滑り軸受の中心を中心として、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、
当該回転させる角度は、前記クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であることを特徴とする請求項5記載のクランクシャフト。 - 主軸受により回転自在に軸支されたクランクジャーナルと、該クランクジャーナルにクランクアームを介して連結されたクランクピンとを有するクランクシャフトと、
大端部に取り付けられた滑り軸受と前記クランクピンとの間に潤滑油を介し且つ該クランクピンに回転自在に連結されたコンロッドと、
を備えたエンジンにおいて、
前記クランクピンは、
断面形状が非真円形であって、
前記断面形状と前記滑り軸受との間の軸受隙間の最小位置が、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線上にないように設定されることを特徴とするエンジン。 - 前記軸受隙間の最小位置と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線は、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に一致する状態から、前記滑り軸受の中心を中心として、前記クランクジャーナルの回転中心と前記滑り軸受の中心とを結ぶ直線に対して回転した位置に設定され、
当該回転させる角度は、前記クランクジャーナルの回転方向と反対方向へ90度以下であることを特徴とする請求項7記載のエンジン。
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