JP3890560B2 - クランクシャフト及びエンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフト及びこれを備えたエンジンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンに用いられるクランクシャフトは、ピストンの往復運動をコンロッドを介して回転運動に変えるためのものである。具体的には、まずピストンの往復運動がコンロッドに伝達される。そして、コンロッドの大端部に連結されたクランクシャフトのクランクピンがクランクジャーナルを中心に回転することによりクランクシャフト全体が回転する。なお、従来のクランクピンの断面形状はほぼ真円形状としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受に対しクランクピンが相対的に回転運動することにより、この滑り軸受とクランクピンとの間に流体損失すなわちパワーロスを発生させることになる。このパワーロスは、回転による流体抵抗であるせん断ロスと、軸心が振れることにより生じる流体の圧縮によるロスであるスクイズロスとの和である。
【0004】
そして、近年の更なる燃費向上の要請に伴い、コンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受とクランクピンとの相対回転運動によるパワーロスの低減が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、クランクピンとコンロッドの大端部に取付けられた滑り軸受との相対回転運動により生じるパワーロスを低減させることができるクランクシャフトおよびこのクランクシャフトを備えたエンジンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、クランクピンの断面形状を非真円形状とすることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のクランクシャフトは、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームとからなる。そして、クランクピンは、以下の断面形状を有する略円柱形状である。クランクピンの断面形状は、外接する外接仮想円との間に4〜6個の仮想円隙間を有し仮想円隙間が外周にほぼ均等に配設された断面形状を有する略円柱形状である。さらに、クランクピンの断面形状は、上死点位置において、複数の仮想円隙間のそれぞれの中で径方向の距離が最大となる外接仮想円上の端点である最大仮想円隙間位置の何れか一つが、クランクジャーナルの回転中心と外接仮想円の中心とを結ぶ中心間直線と外接仮想円との交点のうちクランクジャーナルの回転中心から遠い側に位置する状態を基準状態とした場合に、当該上死点位置において、最大仮想円隙間位置の何れか一つと外接仮想円の中心とを結ぶ最大隙間位置線分が、外接仮想円の中心を中心として、基準状態から、中心間直線に対して所定角度回転した位置に位置する。
ここで、クランクジャーナルは、主軸受により回転自在に軸支されるものである。クランクピンは、コンロッドの大端部内に設けられた滑り軸受により回転自在にコンロッドに連結されるものである。また、クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンとを連結するものである。なお、上述の仮想円隙間とは、クランクピンの断面形状と外接仮想円との接点のうち隣接する2つの接点間における断面形状と外接仮想円の円弧形状とにより囲まれる領域のことである。
【0008】
つまり、クランクピンの断面形状と外接仮想円との間に仮想円隙間を設けるということは、コンロッドに取付けられた滑り軸受とクランクピンとの間の隙間(以下、「軸受隙間」という)を部分的に変化させることになる。このことは、クランクピンの断面形状を真円形状とした場合に比べて、パワーロスを低減できることがわかった。
ここで、最大仮想円隙間位置は、クランクピンの断面形状と外接仮想円との接点のうち隣接する2つの接点間の外接仮想円の円弧上のほぼ中央に位置する。そして、本発明によれば、上死点位置にある場合には、クランクピンの最大仮想円隙間位置の何れか一つが、基準状態からずれた位置にあることになる。これにより、確実にクランクピンの断面形状が真円の場合に比べてパワーロスが低減する。
【0009】
また、本発明のクランクシャフトの仮想円隙間は、4個とするとよい。仮想円隙間が4個の場合には、パワーロスを大きく低減することができる。
【0010】
また、前記所定角度は、クランクジャーナルの回転方向へ15度〜75度の範囲内とするとよい。特に、仮想円隙間が4個の場合において、前記所定角度をクランクジャーナルの回転方向へ15度〜75度の範囲内とするとよい。これにより、パワーロスを確実に低減することができる。より好ましくは、仮想円隙間が4個の場合であって、所定角度をクランクジャーナルの回転方向へ45度とすると、仮想円隙間が4個のうちでパワーロスが最も低減する。また、仮想円隙間が6個の場合には、所定角度をクランクジャーナルの回転方向へ30度とすると、仮想円隙間が6個の場合のうちでパワーロスが最も低減する。
【0012】
また、本発明のエンジンは、シリンダと、ピストンと、コンロッドと、クランクシャフトとを有している。そして、クランクシャフトは、クランクピンとクランクジャーナルとクランクアームとからなる。さらに、クランクピンは、以下の断面形状を有する略円柱形状である。クランクピンの断面形状は、外接する外接仮想円との間に4〜6個の仮想円隙間を有し該仮想円隙間が外周にほぼ均等に配設された断面形状を有する略円柱形状である。さらに、クランクピンは、上死点位置において、複数の仮想円隙間のそれぞれの中で径方向の距離が最大となる外接仮想円上の端点である最大仮想円隙間位置の何れか一つが、クランクジャーナルの回転中心と外接仮想円の中心とを結ぶ中心間直線と外接仮想円との交点のうちクランクジャーナルの回転中心から遠い側に位置する状態を基準状態とした場合に、上死点位置において、最大仮想円隙間位置の何れか一つと外接仮想円の中心とを結ぶ最大隙間位置線分が、外接仮想円の中心を中心として、基準状態から、中心間直線に対して所定角度回転した位置に位置する。
ここで、シリンダはシリンダブロック内に形成されている。ピストンは、シリンダ内を摺動自在に配設されている。コンロッドは、ピストンの摺動方向に略直角な軸線まわりに回転自在にピストンに連結されいる。クランクピン、クランクジャーナルおよびクランクアームは、上述と同様である。
【0013】
つまり、クランクピンの断面形状と外接仮想円との間に仮想円隙間を設けるということは、軸受隙間を変化させることになる。このことは、クランクピンの断面形状を真円形状とした場合に比べて、パワーロスを低減できることがわかった。
そして、本発明によれば、上死点位置にある場合には、クランクピンの最大仮想円隙間位置の何れか一つが、基準状態からずれた位置にあることになる。これにより、確実にクランクピンの断面形状が真円の場合に比べてパワーロスが低減する。
【0014】
また、エンジンに上述の本発明のクランクシャフトを備えることにより、より効果的にパワーロスが低減する。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0016】
本発明の4ストロークエンジンの一部を図1に示す。すなわち、シリンダブロック7内にシリンダ8が形成されている。そして、このシリンダ8の内側を摺動自在にピストン6が設けられている。このピストン6には、コンロッド4の小端部内に設けられたブシュにより回転自在にコンロッド4が連結されている。このコンロッド4の小端部は、ピストン6の摺動方向に略直角な軸線まわりに回転する。そして、コンロッド4の大端部には、クランクシャフトのクランクピン1がコンロッド4の大端部内に設けられた滑り軸受5により回転自在に連結されている。このクランクピン1は、クランクアーム2を介してクランクジャーナル3に連結されている。そして、クランクジャーナル3は、主軸受(図示せず)により回転自在に軸支されている。
【0017】
このように構成されたエンジンの動作について説明する。まず、爆発工程でピストン6が得た力(往復運動)をコンロッド4およびクランクシャフトを介して回転力(回転運動)に変換して動力を発生させる。この動力の慣性力により、他の工程(吸気工程、圧縮工程、排気工程)ではピストン6を動かして吸気、圧縮、排気を行っている。なお、4ストロークエンジンとは、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程の4工程で1サイクルの作用を完了するエンジンである。
【0018】
次に、上述のように構成されたエンジンのうち、本発明の特徴的部分であるクランクシャフトのクランクピン1について詳述する。
【0019】
本発明のクランクピン1は、断面形状が真円形状ではなく、μm単位で見ると(ミクロ的には)図2に示すような例えば曲率の異なる円弧を順に接続したような略多角形形状となっている。具体的には、クランクピン1の断面形状は、この断面形状の周囲を囲むように外接する外接仮想円9を考えた場合に、クランクピン1の断面形状と外接仮想円9との間の複数の隙間(以下、「仮想円隙間」という)11を、ほぼ均等に配設された形状である。この仮想円隙間とは、クランクピン1の断面形状と外接仮想円9との接点10のうち隣接する2つの接点10間における断面形状と外接仮想円9の円弧形状とにより囲まれる領域のことである。この外接仮想円9は、通常コンロッド4の大端部内に設けられた滑り軸受5よりわずかに小さな直径を有する円となる。そして、複数の仮想円隙間11のそれぞれの中で、外接仮想円9の径方向の距離が最大となる外接仮想円9上の端点である最大仮想円隙間位置12は、隣接する接点10間のほぼ中央に位置する。そして、この最大仮想円隙間12は、図2に示すような外接仮想円9および接点10が4つある場合には、4箇所存在することになる。すなわち、それぞれの仮想円隙間11に一つの最大仮想円隙間位置が存在する。なお、最大仮想円隙間位置12と外接仮想円9の中心とを結ぶ線分(以下、「最大隙間位置線分」という)上のうち、クランクピン1の断面形状と外接仮想円9の円周上との距離の最大値(以下、「最大仮想円隙間」という)は、d1である。これら複数の最大仮想円隙間d1は、すべて等しい必要はなく異なるようにしてもよい。
【0020】
また、ここではクランクピン1の断面形状のうち接点10付近を除く部分の形状は、外接仮想円9の半径より大きな曲率半径からなる形状としている。そして、外接仮想円9と軸受5との間には隙間(以下「軸受仮想円間隙間」という)d2を有する。なお、仮想円隙間11は外接仮想円9の直径に対して非常に微小であるため、実際にはクランクピン1の断面形状は略多角形形状とは言えないが、本実施形態におけるクランクピン1の断面形状を説明する際には「多角形形状」や「四角形形状」等という用語を用いる。また、接点10の数が2つの場合は、ほぼだ円形状となる。
【0021】
また、本実施形態では、加工の容易性を考慮してだ円円弧を組み合わせて「多角形形状」を形成しているが、加工が可能であれば直線や他の曲線を組み合わせて「多角形形状」を形成してもよい。
【0022】
次に、クランクピン1の断面形状を多角形形状の接点10の数を2〜9まで変化させた場合におけるパワーロスの解析について説明する。
【0023】
(解析条件)
接点10の数が3、すなわちクランクピン1の断面形状が三角形形状の場合であって、クランクピン1が上死点位置にある状態を図3に示す。そして、図3(a)は、本解析における基準状態を示す図である。基準状態とは、3つの最大隙間位置12の何れか一つが、クランクジャーナル3の回転中心と外接仮想円9の中心とを結ぶ直線(以下、「中心間直線」という)と、外接仮想円9との交点のうちクランクジャーナル3の回転中心から遠い側に位置する状態である。この基準状態の場合には、最大隙間位置線分と中心間直線とが一致している。図3(b)は、外接仮想円9の中心を中心としてクランクピン1の断面形状を基準状態からある角度θだけクランクジャーナル3の回転方向へ回転させた状態を示す図である。ここで、上述の回転させた角度θとは、すなわち最大隙間位置線分と中心間直線とのなす角である。つまり、図3(b)は、最大隙間位置線分と中心間直線とのなす角が、中心間直線からクランクジャーナル3の回転方向へ角度θ(以下、「傾斜角度θ」という)となる状態の図である。
【0024】
そして、本解析は、接点10の数を2〜9まで変化させると共に、傾斜角度θを0〜90度まで変化させて行った。ここで、クランクピン1の断面形状が三角形形状以外の場合も三角形形状の場合と同様に、基準状態とは上死点位置において最大隙間位置線分と中心間直線とが一致する状態である。傾斜角度θについても、上述の三角形形状の場合と同様である。また、接点10の数が3、すなわちクランクピン1の断面形状が三角形形状の場合は、傾斜角度θを0〜90度まで変化させて解析を行った。また、接点10の数が4、すなわち四角形形状の場合は、傾斜角度θを0〜90度まで変化させて解析を行った。また、六角形形状の場合は、傾斜角度θを0〜60度まで変化させて解析を行った。また。八角形形状の場合は、傾斜角度θを0〜30度まで変化させて解析を行った。また、九角形形状の場合は、傾斜角度θを0〜40度まで変化させて解析を行った。
【0025】
なお、クランクピン1は、ヤング率2.058×102GPaとする。軸受5は、ヤング率2.058×102GPa、軸受幅(軸受5の軸方向幅)20mmとする。また、コンロッド4の重量は500gとする。そして、クランクピン1と軸受5との間に供給する潤滑油は、粘度3.65mPa・sとする。また、外接仮想円9の直径は26mm、最大仮想円隙間d1はすべて5μm、軸受仮想円間隙間d2は30μmとする。また、エンジンの回転数は5000min-1とする。なお、軸受5の周方向断面形状形状は真円としている。
【0026】
(解析結果)
次に、上述の解析により得られた解析結果について説明する。まず、三角形形状のクランクピン1の場合について説明する。図4(a)は、傾斜角度θに対するパワーロスを示す図である。また、クランクピン1の断面形状が真円形状の場合におけるパワーロスは165Wである。従って、図4(a)から明らかなように、真円形状の場合に比べて、三角形形状の場合は傾斜角度θが10〜75度においてパワーロスが低減している。また、傾斜角度θが30度の場合は、パワーロスが約156Wとなり、最小となる。この場合には、真円形状に比べて、パワーロスが約5%低減している。
【0027】
また、パワーロスの解析と共に、傾斜角度θに対する最小油膜厚さについても解析を行った。油膜厚さとは、クランクピン1とコンロッドの大端部内に設けられた軸受5との間にある潤滑油の外接仮想円9の径方向の厚さである。そして、クランクジャーナル3が回転する際に、油膜厚さが最も最小となる厚さを最小油膜厚さという。最小油膜厚さが非常に薄くなり過ぎると、せん断抵抗が増加するためパワーロスを増加させることにもなる。さらに、最小油膜厚さが非常に薄くなると、焼き付きを生じるおそれがある。ここで、クランクピン1の断面形状が真円形状の場合の最小油膜厚さは、約1.4μmである。そして、最小油膜厚さの最適値は、真円形状と同等程度若しくはそれ以上となる場合である。
【0028】
ここで、三角形形状のクランクピン1の場合において、傾斜角度θに対する最小油膜厚さの解析結果を図4(b)に示す。パワーロスが最小となる傾斜角度θが30度の場合における最小油膜厚さは、1.43μmである。すなわち、真円形状の場合よりやや厚い最小油膜厚さである。つまり、三角形形状のクランクピン1の傾斜角度θが30度の場合は、最小油膜厚さが最適に保持されている。
【0029】
そして、三角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを30度とした場合に、エンジンを1サイクル運動させた際のクランク角(0〜720度)に対するパワーロスについて解析を行った。この結果を図4(c)に示す。なお、クランク角が0度の場合は、吸気工程の上死点位置にある場合である。クランク角が180度の場合は、圧縮工程の下死点位置にある場合である。クランク角が360度の場合は、爆発工程の上死点位置にある場合である。クランク角が540度の場合は、排気工程の下死点位置にある場合である。また、図4(c)は、真円形状のクランクピン1の解析結果についても併せて示している。そして、図4(c)から明らかなように、クランク角が30度、270度、330度および630度付近で、真円形状に比べて特にパワーロスが低減している。すなわち、爆発工程を除く全ての工程において、パワーロスの低減が得られる。
【0030】
次に、四角形形状のクランクピン1の場合について説明する。図5(a)は、傾斜角度θに対するパワーロスを示す図である。図5(a)から明らかなように、真円形状の場合に比べて、四角形形状の場合は、傾斜角度θが15〜75度においてパワーロスが低減している。また、傾斜角度θが45度の場合は、パワーロスが約153Wとなり、最小となる。この場合には、真円形状に比べて、パワーロスが約9%低減している。さらに、三角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを30度にした場合に比べてもパワーロスが小さい。
【0031】
四角形形状のクランクピン1の場合において、傾斜角度θに対する最小油膜厚さの解析結果を図5(b)に示す。パワーロスが最小となる傾斜角度θが45度の場合における最小油膜厚さは、1.39μmである。すなわち、真円形状の場合とほぼ同等の最小油膜厚さである。つまり、四角形形状のクランクピン1の傾斜角度θが45度の場合は、最小油膜厚さが最適に保持されている。
【0032】
そして、四角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを45度とした場合に、エンジンを1サイクル運動させた際のクランク角(0〜720度)に対するパワーロスを図5(c)に示す。四角形形状のクランクピン1の場合も、三角形形状の場合とほぼ同様のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスの低減が得られる。
【0033】
次に、六角形形状のクランクピン1の場合について説明する。図6(a)は、傾斜角度θに対するパワーロスを示す図である。図6(a)から明らかなように、真円形状の場合に比べて、六角形形状の場合は、傾斜角度θが15〜35度においてパワーロスが低減している。また、傾斜角度θが30度の場合は、パワーロスが約163Wとなり、最小となる。この場合は、真円形状に比べて、パワーロスが約1%低減している。
【0034】
六角形形状のクランクピン1の場合において、傾斜角度θに対する最小油膜厚さの解析結果を図6(b)に示す。パワーロスが最小となる傾斜角度θが30度の場合における最小油膜厚さは約1.37μmである。すなわち、真円形状の場合に比べて最小油膜厚さはやや低下する。
【0035】
そして、六角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを30度とした場合に、エンジンを1サイクル運動させた際のクランク角(0〜720度)に対するパワーロスを図6(c)に示す。六角形形状のクランクピン1の場合も、三角形形状や四角形形状の場合とほぼ同様のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスの低減が得られる。
【0036】
次に、八角形形状のクランクピン1の場合について説明する。図7(a)は、傾斜角度θに対するパワーロスを示す図である。図7(a)から明らかなように、真円形状の場合に比べて、八角形形状の場合は、全ての傾斜角度θにおいてパワーロスが増加している。例えば、パワーロスが最も小さくなる傾斜角度θが30度の場合は、パワーロスが約172Wである。
【0037】
また、八角形形状のクランクピン1の場合において、傾斜角度θに対する最小油膜厚さの解析結果を図7(b)に示す。図7(b)より、傾斜角度θが30度の場合には、最小油膜厚さが約1.83μmである。すなわち、真円形状の場合に比べて最小油膜厚さは増加する。
【0038】
そして、八角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを30度とした場合に、エンジンを1サイクル運動させた際のクランク角(0〜720度)に対するパワーロスを図7(c)に示す。八角形形状のクランクピン1の場合も、三角形形状等とほぼ同様のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスの低減が得られる。しかし、その他のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスが増加している。
【0039】
次に、九角形形状のクランクピン1の場合について説明する。図8(a)は、傾斜角度θに対するパワーロスを示す図である。図8(a)から明らかなように、真円形状の場合に比べて、九角形形状の場合は、全ての傾斜角度θにおいてパワーロスが増加している。例えば、パワーロスが最も小さくなる傾斜角度θが40度の場合は、パワーロスが約175Wである。
【0040】
また、九角形形状のクランクピン1の場合において、傾斜角度θに対する最小油膜厚さの解析結果を図8(b)に示す。図8(b)より、最小油膜厚さは真円の場合に比べてやや低下する。例えば、傾斜角度θが0度の場合は、最小油膜厚さが約1.31μmである。
【0041】
そして、九角形形状のクランクピン1の傾斜角度θを0度とした場合に、エンジンを1サイクル運動させた際のクランク角(0〜720度)に対するパワーロスを図8(c)に示す。九角形形状のクランクピン1の場合も、三角形形状等とほぼ同様のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスの低減が得られる。しかし、その他のクランク角において、真円形状に比べてパワーロスが増加している。
【0042】
以上の解析結果より、それぞれのクランクピン1の断面形状においてパワーロスが最も小さくなる傾斜角度の場合におけるパワーロスおよび最小油膜厚さを図9に示す。また、接点10の数に対するパワーロスを図10に示す。なお、接点10の数が0の場合のクランクピン1の断面形状は、真円形状である。接点10の数が2の場合のクランクピン1の断面形状は、ほぼだ円である。すなわち、接点10の数を2〜6の場合に、真円形状に比べてパワーロスが低減している。
【0043】
さらに、これらのうち、最小油膜厚さを考慮すると、接点10の数は3〜6の場合が真円形状と同等程度である。すなわち、接点10の数が3〜6とすることで、最小油膜厚さを最適に保持しつつ、パワーロスを低減させることができる。そして、接点10の数が4、すなわち四角形形状であって傾斜角度θが45度の場合が最もパワーロスを低減させることができる。すなわち、上死点位置におけるクランクピン1の断面形状が図1に示すような形状の場合が最適となる。
【0044】
つまり、クランクピン1の断面形状を多角形形状とすることにより、すなわち仮想円隙間11を設けることにより、軸受隙間を変化させることになる。このことより、軸受5とクランクピン1との相対回転運動の際、効果的に動圧効果を得ることができると思われる。その結果、クランクピン1の断面形状が真円形状の場合に比べて、多角形形状とすることによりパワーロスを低減させることができる。ただし、接点10の数が多数(本実施形態では8以上)になると、パワーロスが増加しているが、これは接点10の攪拌抵抗によるものと推定される。
【0045】
なお、本解析では、エンジン回転数を5000min-1としているが、他の回転数であっても同様の効果を得ることができる。例えば、1000min-1程度の場合でも同様の効果を得ることができる。ただし、回転数が4000〜5000min-1の場合には、特に大きな効果を得ることができる。
【0046】
また、最小仮想円隙間d1は5μmとして解析を行っているが、より大きくした場合、例えば30μmとした場合には、パワーロスをさらに低減することができる。また、本解析では、軸受5の周方向断面形状を真円として解析を行っているが、軸受5の周方向断面形状が真円でない場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明のクランクシャフトおよびエンジンによれば、クランクピン1とコンロッド4の大端部に取付けられた滑り軸受5との相対回転運動により生じるパワーロスを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクピンとコンロッドとピストンの配置を示す図である。
【図2】クランクピンの断面形状を示す図である。
【図3】解析条件を示す図である。
【図4】三角形形状の解析結果を示す図である。
【図5】四角形形状の解析結果を示す図である。
【図6】六角形形状の解析結果を示す図である。
【図7】八角形形状の解析結果を示す図である。
【図8】九角形形状の解析結果を示す図である。
【図9】解析結果を示す表である。
【図10】接点数に対するパワーロスを示す図である。
【符号の説明】
1 ・・・ クランクピン
2 ・・・ クランクアーム
3 ・・・ クランクジャーナル
4 ・・・ コンロッド
5 ・・・ 滑り軸受
6 ・・・ ピストン
7 ・・・ シリンダブロック
8 ・・・ シリンダ
9 ・・・ 外接仮想円
10 ・・・ 接点
11 ・・・ 仮想円隙間
12 ・・・ 最大仮想円隙間位置
d1 ・・・ 最大仮想円隙間
d2 ・・・ 軸受仮想円間隙間
Claims (4)
- 主軸受により回転自在に軸支されるクランクジャーナルと、コンロッドの大端部内に設けられる滑り軸受により回転自在にコンロッドに連結されるクランクピンと、該クランクジャーナルと該クランクピンとを連結するクランクアームとを有するクランクシャフトにおいて、
前記クランクピンは、
外接する外接仮想円との間に4〜6個の仮想円隙間を有し該仮想円隙間が外周にほぼ均等に配設された断面形状を有する略円柱形状であり、
上死点位置において、複数の前記仮想円隙間のそれぞれの中で径方向の距離が最大となる該外接仮想円上の端点である最大仮想円隙間位置の何れか一つが、前記クランクジャーナルの回転中心と前記外接仮想円の中心とを結ぶ中心間直線と前記外接仮想円との交点のうち前記クランクジャーナルの回転中心から遠い側に位置する状態を基準状態とした場合に、
上死点位置において、前記最大仮想円隙間位置の何れか一つと前記外接仮想円の中心とを結ぶ最大隙間位置線分が、前記外接仮想円の中心を中心として、前記基準状態から、前記中心間直線に対して所定角度回転した位置に位置することを特徴とするクランクシャフト。 - 前記仮想円隙間は、4個である請求項1記載のクランクシャフト。
- 前記所定角度は、前記クランクジャーナルの回転方向へ15度〜75度の範囲内である請求項1又は2記載のクランクシャフト。
- シリンダブロック内に形成されたシリンダと、該シリンダ内を摺動自在に配設されたピストンと、該ピストンの摺動方向に略直角な軸線まわりに回転自在に該ピストンに連結されたコンロッドと、該コンロッドの大端部内に設けられた滑り軸受により回転自在に該コンロッドに連結されたクランクピンと主軸受により回転自在に軸支されたクランクジャーナルと該クランクジャーナルと該クランクピンとを連結するクランクアームとからなるクランクシャフトと、を有するエンジンにおいて、
前記クランクピンは、
外接する外接仮想円との間に4〜6個の仮想円隙間を有し該仮想円隙間が外周にほぼ均等に配設された断面形状を有する略円柱形状であり、
上死点位置において、複数の前記仮想円隙間のそれぞれの中で径方向の距離が最大となる該外接仮想円上の端点である最大仮想円隙間位置の何れか一つが、前記クランクジャーナルの回転中心と前記外接仮想円の中心とを結ぶ中心間直線と前記外接仮想円との交点のうち前記クランクジャーナルの回転中心から遠い側に位置する状態を基準状態とした場合に、
上死点位置において、前記最大仮想円隙間位置の何れか一つと前記外接仮想円の中心とを結ぶ最大隙間位置線分が、前記外接仮想円の中心を中心として、前記基準状態から、前記中心間直線に対して所定角度回転した位置に位置することを特徴とするエンジン。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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