JP3889817B2 - ガス中の水分の定量方法及び試料容器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ガス中に不純物として含まれる微量の水分を定量する方法及びその方法を実施する際に用いられる試料容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばLSIや超LSI等の半導体デバイスの製造においては、気体中で処理を行うドライブプロセスが主流となっており、例えばシリコンウエハのドライエッチング工程においては、ドライエッチング剤として塩化水素ガスが使用されている。このドライエッチングにおいては塩化水素ガスに水分が含まれているとシリコンウエハの表面に不要な酸化皮膜が形成されてしまうので、不純物としての水分の含有量がきわめて少ない高純度の塩化水素ガスを使用することが必要とされる。このため塩化水素ガスの製造者側では、塩化水素ガス中の水分量を管理することが必要であり、この際微量水分量を定量することが要求されている。
【0003】
ここで従来ガス中の不純物例えば水分の量を測定する方法としては、ガスクロマトグラフィーによる方法や露点法、カールフィッシャー法等が知られている。このうちガスクロマトグラフィーによる方法とは充填物が詰まった分離管内で、ガス試料をキャリアガスによって展開させ、分解することなくガス状で通過させて各成分に分離し、この分離した水分の量を定量する方法であり、露点法とはガスを冷却して水滴が発生したときの平衡温度を測定し、この温度に基づいて含有水分量を定量する方法である。またカールフィッシャー法とは、水をエステル化し、水のエステル誘導体としてガスクロマトグラフィ−あるいは赤外分光法で測定する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら上述のガスクロマトグラフィーによる方法は、例えば塩化水素ガス等の腐食性ガスに対しては、分離管等の装置や充填物が腐食されてしまうので使用が困難であるという問題がある。また露点法は平衡温度の測定は目視で行うため、分析オペレータによる測定誤差が生じ、信頼性が低いと共に、定量限界の問題がある。即ち塩化水素ガス中の水分量を定量する場合は、塩化水素の沸点は−84.9℃であるため、この温度より露点が低くなる試料についてはこの方法は使用できない。例えば水分が1ppm v/v の塩化水素ガスを分析する場合を仮定すると、この試料の露点は−76℃であり塩化水素の沸点に近い。従ってこの方法を用いて塩化水素ガス中の水分量を定量する場合は、水分量の定量限界は1ppm v/v 程度であり、これ以下の水分量の測定は困難であった。さらにカールフィッシャー法については前述のガスクロマトグラフィ−あるいは赤外分光法で検出するには多量のガスを用いて濃縮するという煩雑な操作を必要とするという問題がある。
【0005】
さらにまたこれらの方法ではガス(気体)試料を測定するため、液体試料を測定する場合に比べて、同一体積中に存在する水分の量は少なく、このため水分量の検出限界が高くなってしまうという共通の問題もある。
【0006】
ここで半導体デバイスの高集積化に伴い、塩化水素ガス中の許容水分量もより微量になる傾向があり、このため無水塩化水素市場においては、現在は5Nの無水塩化水素(水分量10ppm v/v )が最も純度が高いものであるが、例えば将来的に6N(水分量1ppm v/v )等のより高純度の無水塩化水素の製造が可能になった場合には、より微量な水分量が定量できる精度の高い分析法が必要となる。
このため本発明者らは、ガスを液化して得た液体ガス試料による分析を検討した結果、例えば無水石英製の試料容器に充填した液体試料に特定波長の光を照射し、その波長における吸光度を測定して、この吸収度に基づいて試料中の水分量を測定する方法を見い出した。
【0007】
ガスを液化させる方法としては、ガスを大気圧下において沸点より低い温度まで冷却して液化させる冷却液化法と、臨界点以下の温度において、ガスにその温度における蒸気圧以上の圧力をかけて液化させる圧縮液化法等の方法が知られている。ここでこれらの方法を検討したところ冷却液化による方法では、吸光度測定の際試料容器を冷却する必要があるが、この試料容器の大きさは、例えば70mm×50mm×75mmと小さい場合でも、試料容器のみを冷却することは煩雑であって、同時に分光光度計等の装置も例えば−95℃の超低温まで冷却されてしまうのでこれらの装置に悪影響を与えるおそれがある。その上冷却する際に試料容器の表面に霜が析出し、この霜の存在により測定値に誤差が生じるおそれがあるため、試料容器の周囲を乾燥ガス(露点−74℃)で通気しておかなければならない。また液相で存在する温度範囲が狭いガスでは、過冷却によってガスが固化し、これにより体積が増加して配管が破裂するおそれもある。
【0008】
一方、圧縮液化による方法では、液化は常温において可能であるため上述の冷却液化におけるような問題点はないが、所定の圧力を維持するためには試料容器を耐圧構造にしなければならず、通常の吸光度測定用の試料容器は石英製であって、この石英は3kg/cm 2 以上の加圧は困難であるため、このような試料容器を使用したのでは吸光度は測定できない。
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、より高感度かつ高い精度で水分量を定量することができるガス中の水分の定量方法を提供することにあり、また他の目的は、耐圧構造で水を含まない材料からなる試料容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塩化水素ガス及び/又は塩素ガス中に不純物として含まれる微量の水分を定量する方法であって、塩化水素ガス及び/又は塩素ガスを液化して得た液化ガス試料の波長1400nm付近、1900nm付近、2700nm付近の少くとも1つの吸光度を測定し、この測定した吸光度に基づいて液化試料中の水分の濃度を定量することを特徴とする。この発明において液化ガス試料は例えばガスを圧縮して液化したものであり、この場合後述の試料容器に液化ガス試料を封入して、吸光度を測定することができる。
【0011】
液化した液化ガス試料の吸光度を測定すると、1400nm付近、1900nm付近、2700nm付近に吸収ピークが現われる。この吸収ピークと試料中の水分量とは比例関係にあるので、水分量既知の対照試料の同波長における吸光度を測定し、両者の吸収ピークの高さを比較することにより、液化ガス試料中の水分の濃度を高精度で定量できる。
【0012】
他の発明は、本発明方法に用いられる試料容器であって、
両端部が開口する筒状の耐圧容器本体と、
この耐圧容器本体の両端開口部を気密に塞ぐように設けられた近赤外線透過性の無水石英からなる窓部と、
前記耐圧容器本体に液化ガス試料を供給するために、当該耐圧容器本体に接続された供給管と、
前記耐圧容器本体から液化ガス試料を排出するために、当該耐圧容器本体に接続された排出管と、を備えることを特徴とする試料容器である。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。図1は吸光度の測定装置の概略を示すものであり、11は例えばタングステンランプからなる光源、12は水のOH基に大きな吸収を示す近赤外線を取り出すためのフィルター、13、14はレンズ、15は例えば硫化鉛光電導セルからなる検知器である。試料容器2はレンズ13と14との間に配置される。
【0014】
試料容器2の好ましい構造の例を図2(a)、(b)、(c)に示すと、図2(a)はネジタイプのもの、図2(b)はフランジタイプのもの、図2(c)はネジタイプとフランジタイプとを複合したものである。図2(a)において、21は例えば外径27mm、長さ90mmの大きさを有し、両端部が開口する円筒状形状の容器本体であり、この容器本体21の両端側の外周面にはネジ部22が形成されている。また容器本体21の両端部には、例えば直径25mm、厚さ5mmの円形の板状形状を有すると共に、耐圧性かつ近赤外線透過性の材料例えば無水石英から構成された、窓部を形成する窓板3が例えばテフロン製であって幅2mmのリング体31を介して配設される。さらに容器本体21と窓板3の外側には、容器本体21に窓板3を固定するために、内側に容器本体21のネジ部22と係合するネジ部が形成された蓋部41が、上述のリング体31と同様に構成されたリング体32を介して配設され、この蓋部41は容器本体21に螺合される。なおリング体31、32は、窓板3の破損防止及び容器の気密性を高めるために設けられるものである。
【0015】
ここで容器本体21の両端部の外端面は蓋部41によりリング体31に押し付けられており、また容器本体21のネジ部22と蓋部41のネジ部を含む内側部分とは密接しているので、容器内部の気密性が保たれる。蓋部41は図2(a)の正面図に示すように、例えば中央部に近赤外線の透過させるための例えば窓板3より小さな径の円形の孔部42が形成された例えば六角形形状の構造体であり、この蓋部22の周面内端面の一部分は、リング体32の周面外端面の一部に接合され、既述のように蓋部41を容器本体21に装着することにより、窓板3及びリング体31、32が容器本体21と蓋部41との間に固定される。
【0016】
容器本体21の管壁にはまた、容器本体21内部へ液化ガスを供給するための供給管51と、容器本体21から液化ガスを排出するための排出管52が例えば溶接により接続されていて、これらには、例えば125atm 程度の加圧が可能な耐圧性のバルブ61、62が夫々設けられている。このような容器本体21、蓋部41、供給管51、排出管52、バルブ61、62は耐圧性及び耐食性の材料例えばステンレスより形成される。
【0017】
また図2(b)に示すフランジタイプの試料容器2について説明すると、容器本体24の両端部はフランジ部25を構成しており、容器本体24の開口部には段部26が形成されていてこの段部26にリング体31を介して窓板3が嵌合される。43は中央部に上述の図2(a)の蓋部22と同様に近赤外線を透過させるための例えば円形の孔部44が形成された、例えば直径15mmのリング状の蓋部であり、この蓋部43をリング体32を介して窓板3の外側に配設し、蓋部43の周面内端面と容器本体24のフランジ部25周面外端面及びリング体32とを密接させ、両者を接合させてネジ45で固定することにより、容器本体24と蓋部43との間に窓板3が保持されると共に、容器内の気密性が保たれる。
【0018】
さらに図2(c)に示すネジタイプとフランジタイプとの複合タイプの試料容器2について説明すると、27は両端部が開口すると共に、両端側の外周面にネジ部28が形成された円筒状形状の筒状容器であり、29はこの筒状容器27の両端部に取り付けられるフランジ体である。フランジ体29は、フランジ部29aとネジ部29bとから構成され、ネジ部29bは筒状容器27のネジ部28と係合するように形成されている。またフランジ体29の周面外端面には段部29cが形成されていて、この段部29cにリング体31を介して窓板3が嵌合される。43は例えば上述の図2(c)と同様に構成された蓋部であり、先ず筒状容器27の両端部にフランジ体29を螺合させると共に、段部29cにリング体31及び窓板3を嵌合し、この後蓋部43をリング体32を介して窓3の外側に配設して、蓋部43の周面内端面とフランジ体29のフランジ部29aの周面外端面及びリング体32とを密接させ、両者を接合させてネジ45で固定することにより、窓板3が保持されると共に、容器内部の気密性が保たれる。なお本構造の試料容器2では、筒状容器27とフランジ体29により容器本体が構成される。
次に本発明の実施例に係る塩化水素ガス中の水分濃度の定量方法について説明する。先ず図3に示すように試料容器2の供給管51と排出管52とを、塩化水素製造ラインの液化ガスが通流する配管71、72にフェラル91を備えたジョイント9により接続し、液化工程において、温度tにおける蒸気圧以上の圧力(例えば20℃では41.6atm以上の圧力)が加圧されて液化された液化塩化水素を採取する。
【0019】
ここで図中81〜85は、塩化水素製造ラインの配管7、71、72に設けられたバルブであり、液化塩化水素を採取する際には、試料容器2のバルブ61、62及びバルブ81、83〜85を開けると共に、バルブ82を閉じて液化ガスを配管7、71、供給管51を介して試料容器2内へ供給する。このとき液化ガスを連続的に試料容器2内に供給すると、試料容器2内に入りきれない余剰の液化ガスは排出管52、配管72を介して試料容器2内から流出するので、このようにして試料容器2内に液化ガスを通流させるようにしながら採取を行なう。そして試料容器2内に液化ガスを充填した後バルブ61、62及びバルブ84、85を閉じると共に、バルブ81〜83を開けて配管71、72から供給管51及び排出管52を取り外し、次いで試料容器2を図1のように吸光度の測定装置1に設置して液化ガスの吸光度を測定する。
【0020】
測定装置1では、光源11からフィルター12、レンズ13を介してOH基の吸収ピークが存在する波長を含む例えば1000〜3200nmの波長の近赤外線を試料容器2中の液化塩化水素試料に照射し、このときの透過光をレンズ14を介して検知器15で検知して、試料の吸収スペクトルを測定する。
【0021】
そしてこの吸収スペクトルから水のOH基に大きな吸収を示す波長である1400nm、1900nm、2700nmにおける吸光度を測定し、この吸光度と、予め測定された水分濃度既知の対照試料例えば四塩化炭素の同波長における吸光度との関係より、測定試料中の水分濃度が定量される。即ち吸光度と水分濃度は比例関係にあり、例えば試料中の同波長における吸収ピークの大きさを求め、これを比較することにより、測定試料中の水分濃度が定量できる。
【0022】
以下実際に測定した吸収スペクトルを用いて、具体的に説明する。図4は、露点法で定量した水分濃度38.8ppm v/v (18.7ppm w/w )の液化塩化水素の吸収スペクトルである。この吸収スペクトル測定に際しては、温度9.5℃、その温度における飽和蒸気圧33atm以上の圧力である50atmの下で塩化水素ガスの液化を行なった。そして得られた液化塩化水素試料を上述の試料容器内に3/4ほど満たしバルブを閉じて試料容器内を密閉状態にし、この試料容器を吸光度測定装置に設置して吸収スペクトルを測定した。なお試料容器内を液化塩化水素で完全に満たさないのは、温度上昇に伴なう圧力の上昇により、液化塩化水素が試料容器から噴き出すことを抑えるためである。今回この液化塩化水素の水分濃度を本発明方法で定量し、この方法の正当性を確認することとした。
【0023】
図5に水の吸収スペクトルを示すが、このように水のスペクトルには1400nm、1900nm、2700nmに特性吸収ピークがあらわれる。一方図6に水分濃度0ppm(露点法により測定)無水塩化水素の吸収スペクトルを示すが、このように塩化水素のスペクトルには1210nm、1750nm、1780nm、2700nm以降に特性吸収ピークがあらわれる。
【0024】
従って図4の吸収スペクトルと図6の吸収スペクトルとの差を求めると、図4の吸収スペクトルから塩化水素に起因する吸収ピークを除いて水に起因する吸収ピークのみを取り出すことができる。図7はこのようにして求めた測定対象である液化塩化水素中の水の吸光度である。そしてこの吸光度と、図8に示す対照試料である水分濃度既知の30ppm w/w の四塩化炭素の吸光度とを比較することにより、測定対象である液化塩化水素中の水分濃度を定量する。なお四塩化炭素中の水分濃度はカールフィッシャー法により定量した。
【0025】
ここで対照試料として四塩化炭素を使用したのは、水が有するOH基がなく容易に入手できる有機溶剤であると共に、対照波長領域に吸収を持たないためであり、対照試料としてはこれ以外にn−ヘキサン等も使用することができる。
【0026】
比較は、各特性波長における吸収ピークの大きさに基づいて行なわれ、この吸収ピークの大きさは、各吸光度の測定範囲を合わせ図8に示すように、ピークの頂点PからX軸垂線を降ろして、ピークの前後の点A、Bを結ぶ線との交点Qを求め、線分PQの長さにより求められる。この方法により求めた測定試料の1400nm、1900nmにおける吸収ピークの大きさは夫々15.0mm、48.2mmであり、一方対照試料の吸収ピークの大きさは夫々23、9mm、71.0mmである。そして例えば1400nmにおける吸収ピークにより、対照試料に基づいて測定試料中の水分濃度を算出すると、
15.0mm/23.9mm×30ppm w/w =18.8ppm w/w となり、また同様に1900nmにおける吸収ピークにより、水分濃度を算出すると、
48.2mm/71.0mm×30ppm w/w =20.4ppm w/w となる。
【0027】
これらの算出値は、多少誤差はあるものの、露点法で測定した水分濃度18.7ppm w/w とほぼ一致しており、このことから本発明方法により塩化水素ガス中の水分濃度が定量できることが確認された。なお誤差は、吸収ピ−クの大きさの測定を行った際に生じたものと考えられる。また上述の塩化水素ガス中の水分濃度の定量では、2700付近の吸収ピークは、定量に使用していないが、これは、塩化水素ガス自体にも2700mm付近に吸収ピークがあるため、この塩化水素ガス自体の吸収ピークに水の吸収ピークが隠れてしまい、水の吸収ピークのみを取り出すことが困難であるからである。従って2700mm付近の吸収ピークに基づいて塩化水素ガス中の水分濃度を定量することは不適切であると考えられる。但し、水の吸収スペクトルでは、1400nm、1900nmに比べて2700nm付近の吸収ピークは大きいので、塩化水素以外であって水分濃度が微量である試料ではこの2700nm付近のピークに基づいて水分量の定量を行ってもよい。
【0028】
図9は、液化塩化水素中の水の吸収スペクトルを吸光度の最大値を0.050として再度測定したものである。即ちこの吸収スペクトルにおける吸収ピークは、塩化水素中の水分量が0.38ppm v/v である場合に得られるピークであり、このように吸光度の最大値を小さくすれば、正確にピークの大きさを測定でき、これにより確実に水分量が定量できると考えられる。実際に図6に示す、露点法により水分濃度が0ppm w/w と定量された塩化水素について吸光度を0〜0.025の範囲で再度測定すると、図10に示すように、1400nm付近に新たな吸収ピークがあらわれる。従ってこのピークに基づいて露点法では定量不可能な微量の水分濃度が定量できると考えられる。そして実際にこのピークに基づいて、対照試料として水分濃度、38ppm v/v の塩化水素を用いて上述の方法により水分濃度を定量したところ、対照試料のピーク大きさ(図中、点線であらわしたピーク)は63.0mmであり、測定試料のピーク大きさは2mmであるので、測定試料中の水分濃度は、
2mm/63mm×38ppm v/v =1.2ppm v/v
となる。この水分濃度は露点法による測定下限界付近の濃度であるが、本発明方法によれば、さらに精度よく、例えば露点法では測定不可能なより微量の水分濃度の定量を行うことができる。
【0029】
このように本発明のガス中の水分の定量方法では、試料を液化し、この試料の水の特性吸収波長である1400nm、1900nm、2700nm付近の吸光度を測定して、この吸光度に基づいて測定試料中の水分量を液体の状態で定量するのでガス状態で定量する場合に比較して測定試料中における単位体積当たりの水分のモル数が格段に多く、吸光度の測定感度も格段に高くなる。このため、水分の定量を精度よく行なうことができ、また試料中の水分量が微量であっても、吸収スペクトル中に吸収ピークがあらわれるので例えば露点法では測定不可能な例えば1ppm v/v 以下の微量水分を定量することも可能となる。
【0030】
また本発明の試料容器は、例えば50atm程度の耐圧を確保できるものが望ましく、このような試料容器を用いれば例えば温度25℃以下であれば圧縮液化により液化した液体試料の吸光度を測定することができる。またバルブを設けたので測定試料を試料容器内に封入して試料容器内を密閉した状態で試料容器を持ち運ぶことができ、これにより塩化水素ガスの液化工程と水分の定量工程とを分離して水分の定量工程をガスの製造場所から離れたところで行うことができるので、吸光度の測定装置等の機器類と腐食性ガスとの接触が抑えられて、好環境の下で水分の定量を行なうことができる。さらに液化ガスの供給管と排出管という2本の管を設けたので、試料容器内に液化塩化水素を連続的に供給すると、試料容器に入りきれない余剰の液化塩化水素は排出管を介して試料容器外へ流出し、これにより液化塩化水素は試料容器内を通流するため、このようにして液化塩化水素を採取すると、試料容器内に滞留、蓄積する不純物が塩化水素と共に試料容器外へ流出し、測定試料中の水分をより正確に定量することができる。
【0031】
さらにまた圧縮液化することにより常温にて測定試料を液化することができるため、測定試料を冷却して液化する場合のように、吸光度測定装置が超低温下に晒されて劣化するおそれがないと共に、常温にて測定できるので吸光度測定のための装置構成が簡易化され、測定も容易に行なうことができる。また常温での吸光度測定の際には、試料容器に霜が付着して測定誤差が生じるおそれもない。
【0032】
以上において本発明のガス中の水分の定量方法は塩化水素ガス以外のガス例えば塩素ガスに適用してもよいし、また圧縮液化により液化した試料のみならず冷却液化により液化試料に対して適用してもよい。また水の特性吸収波長の3つのピーク全てについて水分の定量を行ってもよいし、1つあるいは2つのピークを選択して定量してもよい。さらに本発明の試料容器に液化試料を供給し、排出するための管は両者を共通して行なうものであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、塩化水素ガス及び/又は塩素ガスを液化して得た液化ガス試料の、水の特性吸収波長である1400nm付近、1900nm付近、2700nm付近の少くとも1つの吸光度を測定し、この吸光度に基づいて水分を定量しているので、ガス中に不純物として含まれる微量の水分の濃度を高感度でかつ高い精度で定量することができる。また本発明の試料容器によれば、圧縮液化により液化した試料の吸光度の測定が可能となり、また窓部として近赤外線透過性の無水石英を用いているので、微量の水分の濃度を高い精度で定量できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 吸光度の測定装置の概略図である。
【図2】 試料容器の構造を示す断面図と蓋部の正面図である。
【図3】 試料容器に液化試料を採取する際の説明図である。
【図4】 水分濃度38ppm v/v の塩化水素の吸収スペクトルである。
【図5】 水の吸収スペクトルである。
【図6】 無水塩化水素の吸収スペクトルである。
【図7】 水分濃度38ppm v/v の塩化水素中の水の吸収スペクトルである。
【図8】 水分濃度30ppm w/w の四塩化炭素の吸収スペクトルである。
【図9】 吸光度0〜0.050の範囲における水分濃度38ppm v/v の塩化水素中の水の吸収スペクトルである。
【図10】 吸光度0〜0.025の範囲における無水塩化水素の吸収スペクトルである。
【符号の説明】
1 吸光度の測定装置
2 試料容器
21、24 容器本体
27 筒状容器
29 フランジ体
3 窓板
31、32 リング体
41、43 蓋部
51 供給管
52 排出管
61、62 バルブ
Claims (4)
- 塩化水素ガス及び/又は塩素ガス中に不純物として含まれる微量の水分を定量する方法であって、塩化水素ガス及び/又は塩素ガスを液化して得た液化ガス試料の波長1400nm付近、1900nm付近、2700nm付近の少くとも1つの吸光度を測定し、この測定した吸光度に基づいて液化試料中の水分の濃度を定量することを特徴とするガス中の水分の定量方法。
- 液化ガス試料はガスを圧縮して液化したものであることを特徴とする請求項1記載のガス中の水分の定量方法。
- 請求項1に記載のガス中の水分の定量方法に用いられる試料容器であって、
両端部が開口する筒状の耐圧容器本体と、
この耐圧容器本体の両端開口部を気密に塞ぐように設けられた近赤外線透過性の無水石英からなる窓部と、
前記耐圧容器本体に液化ガス試料を供給するために、当該耐圧容器本体に接続された供給管と、
前記耐圧容器本体から液化ガス試料を排出するために、当該耐圧容器本体に接続された排出管と、を備えることを特徴とする試料容器。 - 請求項3記載の試料容器に液化ガス試料を封入して、吸光度を測定することを特徴とする請求項1または2記載のガス中の水分の定量方法。
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