JP3889134B2 - 近接場光学顕微分光測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、近接場光学顕微鏡を利用した分光測定装置、特に測定効率の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な顕微鏡は、試料に対して非接触非破壊で微細極小部分の観察が行え、さらに分光分析器等を接続することにより、観察対称の形状、構造のみでなく、その成分等まで分析を行うことも可能であり、各種の分野で応用が行われている。しかしながら、一般的な光学顕微鏡は、光の波長より小さいものは観察することができず、その分解能には限界があった。
【0003】
しかし近年、光の波長より小さい空間分解能を持ち、分光分析測定のできる近接場光学顕微分光装置が開発され、その応用が期待されている。この近接場光学顕微分光装置は、微小開口を有するプローブから取り出された近接場光を試料に照射し、試料からの散乱光や発光を集光し、分光検出するものである。このとき近接場光の分布は、光の波長に依存せず、プローブの微小開口によってのみ決定される。そのため、より小さい微小開口を形成することで分光測定の空間分解能は光の波長を超えることができる。
【0004】
また、近接場光の分布は、近接場光によって励起された対象物から数十nm程度の領域に限られている。そのためプローブと試料の間の距離を常にモニターし調整する必要がある。プローブ−試料間の距離の調整にはシアフォースフィードバックと言われる方式を用いるのが一般的である。シアフォースフィードバックにおいては、プローブを微小振動させ、プローブ光をプローブに照射し、プローブからの変調された反射光を検出し、この変調された反射光の振幅からプローブと試料の距離を知ることができると言うものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしプローブでの励起光に対するエバネッセント光のスループットは−3乗のオーダーであり、プローブから取り出せる近接場光の強度はμW程度が普通である。また、その近接場光によって励起される発光や散乱光の強度はさらに少なく、例えば散乱光として、ラマン散乱光を検出する場合は、エバネッセント光に対する散乱効率が−3乗以下のオーダーであるため、励起光強度に対して、−6乗以下の信号強度しか見込めない。さらに光源の光が光ファイバーに入るときの効率、ポリクロメータの透過効率、2π方向に出るラマン散乱光の内の極一部しか収集できないこと、検出器の量子効率などを総合すると、励起光強度に対して、1000counts/secに相当する−11乗以下の信号強度となる。そのためフォトンモードのフォトマルチプライヤーで測定する必要があったが、測定に非常に時間がかかり、測定に数日以上をの時間を必要としていた。そのためマッピングでスペクトル測定を行うことは、事実上不可能に近かった。
【0006】
また、近接場光学顕微鏡部分で集光された光は、レンズ系やミラー系で空間を伝播させることによって分光器に結合されているため、近接場光学顕微鏡と分光器は同じ架台上に接近して据え付けられていた。しかし、近接場光学顕微分光装置で分光測定を行う場合は、分光器の波長スキャンを行う検出器のシャッターのスイッチの、ON/OFFの切り替えを行うなどの操作が必要になり、この際に機械ノイズや電気ノイズが近接場光学顕微鏡に伝わり、近接場光学顕微鏡の測定像にノイズとして観察されたり、プローブと試料がノイズにより衝突しプローブが破壊されるなどの問題があった。
【0007】
さらにプローブと試料の距離を調整するためにプローブ−試料間の距離を計測するためには、プローブ光が確実にプローブ光を検出する検出器にはいることが必要であるが、プローブは消耗品であるために、測定ごとに交換する必要があり、測定の度にプローブ光を手動でアライメントする必要があった。しかしこのアライメントは微妙であり、慣れを必要とする困難なものであった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その第一の目的は装置の光学的スループットを高めると共に、より広範囲のマッピングスペクトル測定を現実的な時間で行えることが可能な装置を提供することにある。
さらに、本発明の第二の目的は、近接場光学顕微鏡と分光器が互いにノイズの影響を及ぼさない装置を提供することにある。
さらに、本発明の第三の目的は、プローブ光照射装置とプローブ光検出器を載置したXZステージを駆動し、自動でプローブ光照射装置とプローブ光検出器のプローブに対する位置をアライメントする装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかる近接場光学顕微分光測定装置は、被測定物表面にエバネッセント光を発生させる励起光を照射する励起光照射手段と、前記エバネッセント光の場へプローブを進入させることにより発生する被測定光を集光する集光手段と、前記集光手段により集光された光を、その波長毎に分光する分光手段と、前記分光手段により得られる各波長の分光光を同時に検出可能なマルチチャンネル検出手段と、前記被測定物表面−プローブ位置制御に、シアフォースフィードバックシステムを用いた、試料−プローブ位置制御機構と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記試料−プローブ位置制御機構は、前記プローブと被測定物との間の距離を検出し、エバネッセント光の有効距離内に制御する試料−プローブ位置制御手段と、前記プローブを微小振動させ、その振動の共振周波数を求めるプローブ共振周波数検出手段と、を備える。
また、前記試料−プローブ位置制御手段は、プローブにプローブ光を照射するプローブ光照射装置、前記プローブからのプローブ光の反射光、あるいは透過光を検出するプローブ光検出器、および、前記プローブ光照射装置と前記プローブ光検出器をそれぞれ載置して駆動する一組の自動XZステージを備える。
そして、本発明においては、前記プローブ光のプローブからの反射光または透過光を前記プローブ光検出器によりモニターすることにより、プローブ光照射装置を載置した自動XZステージを駆動し、プローブ光をプローブ上に自動でアライメントしている。
また、本発明においては、加振されたプローブからの変調された反射光または透過光をプローブ光検出器により検出し、検出器の出力のAC成分が最大になるようにプローブ光検出器を載置したXZステージを駆動させて、プローブ光検出器の位置を自動でアライメントしている。
【0010】
さらに、前記目的を達成するために本発明にかかる近接場光学顕微分光測定装置は、プローブ先端にエバネッセント光を発生させ、プローブ先端を被測定物に近づけることにより発生する被測定光により分光分析を行う近接場光学顕微分光測定装置において、プローブ先端にエバネッセント光を発生させる励起光を照射する励起光照射手段と、前記プローブを被測定物に近づけることにより前記エバネッセント光の場に発生する被測定光を集光する集光手段と、前記集光手段により集光された光を、その波長毎に分光する分光手段と、前記分光手段により得られる各波長の分光光を同時に検出可能なマルチチャンネル検出手段と、前記被測定物表面−プローブ位置制御に、シアフォースフィードバックシステムを用いた、試料−プローブ位置制御機構と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記試料−プローブ位置制御機構は、前記プローブと被測定物との間の距離を検出し、エバネッセント光の有効距離内に制御する試料−プローブ位置制御手段と、前記プローブを微小振動させ、その振動の共振周波数を求めるプローブ共振周波数検出手段と、を備える。
また、前記試料−プローブ位置制御手段は、プローブにプローブ光を照射するプローブ光照射装置、前記プローブからのプローブ光の反射光、あるいは透過光を検出するプローブ光検出器、および、前記プローブ光照射装置と前記プローブ光検出器をそれぞれ載置して駆動する一組の自動XZステージを備える。
そして、本発明においては、前記プローブ光のプローブからの反射光または透過光を前記プローブ光検出器によりモニターすることにより、プローブ光照射装置を載置した自動XZステージを駆動し、プローブ光をプローブ上に自動でアライメントしている。
また、本発明においては、加振されたプローブからの変調された反射光または透過光をプローブ光検出器により検出し、検出器の出力のAC成分が最大になるようにプローブ光検出器を載置したXZステージを駆動させて、プローブ光検出器の位置を自動でアライメントしている。
【0011】
また本発明において、被測定物の測定箇所を任意の箇所に移動可能とする移動手段を備えることが好適である。
また本発明において、集光された被測定光を光ファイバーに導入し、それを分光手段に結合することにより、近接場光学顕微鏡と、集光手段、分光手段、検出手段とが、機械的、電気的に分離されていることが好適である。
また本発明において、前記散乱光を検出するマルチチャンネル検出手段には、高感度CCDを用いることが好適である。
【0012】
また本発明において、被測定物からの散乱光や発光をプローブに再導入することによって集光することが好適である。
【0013】
【発明の実施形態】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明は、励起光を照射し、それにより発生するエバネッセント光場と呼ばれる一種のエネルギーフィールドを散乱させることで、その散乱されたエバネッセント光を光として観測し、あるいは、エネルギーを得た試料が発光する光を観測することで、その光から試料の有用な情報を得るものである。
そしてこの方法には、試料表面にエバネッセント光を発生させる方法と、プローブ先端にエバネッセント光を発生させる方法がある。以下にその原理を説明する。
【0014】
図1は試料表面にエバネッセント光を生じさせた際の説明図である。試料10の裏面にはプリズム12が配置されており、励起光14が試料裏面において全反射するように構成されている。励起光が試料裏面において反射されると、試料表面にはエバネッセント光場16が発生し、このエバネッセント光場16にプローブ18を進入させるとエバネッセント光場16が散乱され、試料の有用な情報を持つ光として観測されるのである。
【0015】
これに対し図2は、プローブ先端にエバネッセント光場を生じさせた際の説明図である。図1と同じ部材は図1での符号をそのまま用いている。励起光14はプローブ18中に導入され、プローブの表面を覆う金属皮膜20に照射される。この金属皮膜20表面にはエバネッセント光場が発生する。そしてプローブ18の微小開口部分から外部に伝わりプローブ先端部分にエバネッセント光場16が形成され、プローブが試料10に近づくことにより、エバネッセント光場16が試料によって散乱され、試料の有用な情報を持つ光として観測されるのである。
【0016】
次の実施形態においては、近接場光学顕微分光測定装置により、被測定試料の形状測定及び成分測定を同時に行い得るように構成されている。
図3は、本発明の一実施形態にかかる近接場光学顕微分光測定装置の概略図である。同図において近接場光学顕微測定装置22は被測定試料24を載置するサンプルステージ26と、該サンプルステージ26に近接配置されたプローブ28と、プローブ28の先端にエバネッセント光場を形成させる励起光を照射する励起光照射手段としての光源30と、プローブ28先端に生じるエバネッセント光場に試料24が進入することにより発生する散乱光あるいは発光等を集光する集光手段としての対物レンズ32と、該対物レンズ32で集光された被測定光を分光する分光手段としての分光器34と、該分光器34で分光された各波長光を同時検出可能なマルチチャンネル検出器36とを備える。
【0017】
そして、前記サンプルステージ26は試料移動機構38上に載置され、コントローラ40の指示によりサンプルステージ26を所定位置に位置決め制御することができる。
またプローブ28は、試料−プローブ位置制御機構42により図中上下方向に移動制御され、プローブ28と試料24の間隔を一定に維持する。
【0018】
また光源30とプローブ28の間には調光用フィルタ44が設置され、励起光強度を所望値に制御している。
さらに対物レンズ32と分光器34の間には、励起光除去フィルタ46が設けられ、プローブ28から漏れ出す励起光を除去する。
【0019】
以下、同図に基づき、実際に試料を観察する過程で本発明がどのように動作するかを説明する。試料移動機構38上に試料を載置し、試料の任意の場所を観察、測定できるように試料24の観察測定位置をコントローラ40によって変える。
光源30より発した励起光であるレーザー光は、フィルタ44を通されることによって、観察に適した強度に変化させられ、プローブ28中に導入される。
【0020】
プローブ28は、先鋭化された透明媒体より成るもので、全体に金属被覆を施され、近接場光として取り出す波長以下の大きさの微小開口を持っている。プローブ中に導入されたレーザー光は、そのままプローブ先端を被覆する金属表面に照射される。励起光を照射された金属は、その表面にエバネッセント光と呼ばれる表面波を発する。プローブは、その先端に光の波長よりも小さい微小開口を持つため、励起光はほぼ全くこの開口を抜けることはないが、エバネッセント光はこの微小開口より外部に洩れだし、プローブ先端にエバネッセント光の場を形成する。このエバネッセント光の場の中に試料24を近づけることにより、エバネッセント光を試料24で散乱させ、あるいは試料24を発光させ、そのその試料の有用な情報を含んだ被測定光である散乱光や発光を観察、測定するのである。
【0021】
このエバネッセント光は、プローブ先端の周囲の光の波長以内の領域に局在するため、試料に非接触、非破壊の測定装置のためには、試料とプローブの間の距離を光の波長以内の間で制御しなければならない。この試料とプローブの間の距離を検出し、位置制御を行うのが試料−プローブ位置制御機構42である。試料−プローブ位置検出機構42の詳しい構成と動作原理は後ほど詳しく説明する。
【0022】
試料−プローブ位置制御機構42により光の波長以内の領域、つまりはプローブ28が試料に近づくことにより、散乱されたエバネッセント光や試料の発光は、対物レンズ32により集光され、集光された散乱光や発光は、光ファイバー48に導入され、励起光除去フィルタ46に至る。この励起光除去フィルタ46は、例えば、測定でラマン分光分析を行うならば、散乱光に含まれる励起光と波長の変わらないレイリー光、あるいは励起光そのものを除去し、試料のキャラクタリゼーションを行うのに有効な試料の分子振動分だけ励起光より波長の変化したラマン光のみを測定解析するためのものである。
【0023】
励起光除去フィルタ46を通過したラマン光は、光ファイバー48によって分光器34に導入され分光され、分光された光は、マルチチャンネル検出器36に導入され、観察、測定される。本実施形態においてはマルチチャンネル検出器36として液体窒素冷却CCDを用いた。このようにマルチチャンネル検出器36を使用することにより、従来用いられてきたフォトマルチプライヤーで測定すると、前述したように測定に数日以上をの時間を必要としていたが、マルチチャンネル検出器を用いることによって、1000程度のスペクトルデータを同時に測定することが可能となり、スペクトル測定時間を1/1000以下に短縮することができ、より広範囲のマッピングスペクトル測定を現実的な時間で行えることが可能となった。
【0024】
さらに本発明において特徴的なことは、集光された散乱光や発光を光ファイバーに導入し分光器に結合することで、図3において点線で囲まれた近接場分光顕微鏡とその他点線外の集光手段、分光手段、検出手段などが、機械的・電気的に分離されて構成されていることである。これらは前述したノイズの問題を解決するためであり、本実施形態においては、ノイズの影響でプローブ28が破壊されることもなく、また測定像もノイズの影響を受けることはなかった。
【0025】
続いて、試料−プローブ位置制御機構42について詳しく説明する。図4は本発明の一実施形態にかかる試料−プローブ位置制御機構の概略図である。これらは、プローブと試料の間の距離を自動で制御するものである。
同図において、試料−プローブ位置制御機構42は、試料−プローブ位置制御手段を構成するプローブ28にプローブ光を照射するプローブ光照射装置50と、該プローブ光照射装置50が照射したプローブ光のプローブからの反射光あるいは透過光を検出し、プローブの振動周波数を計測できるプローブ光検出器52と、プローブ光照射装置50及び、プローブ光検出器52を載置してそれぞれ独立に駆動する自動XZステージ54、56と、自動XZステージをコントロールするステージコントローラ58、60と、プローブ共振周波数検出手段を構成するプローブ28を微小振動させる加振器(図示せず)と、プローブの共振周波数を求める手段(図示せず)を備える。
【0026】
プローブは測定中、加振器により加振された状態で用いられる。プローブには常時プローブ光照射装置50によりプローブ光が照射されている。本実施形態においては、プローブ光照射装置は、プローブ光光源とプローブにプローブ光を集光するレンズを備えている。そして、プローブに照射されたプローブ光の透過光をプローブ光検出器52によってやはり常時検出されている。プローブ光検出器52は本実施形態では、PIN型検出器を用いている。プローブ28は、加振器によって、一定の振幅で振動している。振動の持つ周期性から光強度を変えられた光をプローブ光検出器52で検出すると、プローブ光照射装置50でのプローブ光のもともとの光強度よりプローブ28がプローブ光をあるいは遮り、あるいはプローブ光照射位置よりずれることにより、プローブ光検出器52で検出される光強度を変えられた光の光強度は、一定の振幅を持ったsin曲線として観測される。
【0027】
本来ならば加振器により一定の振幅で振動させられているのであるから、プローブ光検出器52で検出される光強度を変えられたの光強度は、一定の振幅を持ったsin曲線のままで変化することはないが、エバネッセント光の場に試料が入るほどプローブ28が近づくと、プローブ28にはシアフォースが働き、プローブ28の振動が制振される。この制振の割合は、プローブ28が試料に近づくほど大きくなり、このためプローブ28の振幅の変化から、プローブ光検出器52により検出される信号も変化し、この検出信号の変化から試料にどれだけ近づいたかを検出し、制振の割合が一定になるように距離制御を行うものである。
【0028】
さらに前述したように距離制御のためには、プローブ光がプローブ28に確実にあたり、さらにプローブ28にあたったプローブ光をプローブ光検出器52により確実に検出することが不可欠であるが、プローブが消耗品であるため、測定ごとに交換する必要がある。このため測定の度にプローブ光を手動でアライメントする必要があったが、このアライメントは微妙であり、慣れを必要とする困難なものであった。何故ならばプローブは極細の形状をしており、その先端の先鋭化された部位となると、目視することは不可能であること、並びに、プローブ光も極細のスポットレーザーなどを用いているためである。しかし本発明の位置制御機構は、このアライメントを自動で行うものである。
【0029】
図4に示すとおりプローブ光照射装置50とプローブ光検出器52は、上下左右に自由に位置を変えられるように、それぞれ、自動XZステージ54、56上に載置されている。プローブ28は、プローブ光照射装置50とプローブ光検出器52のアライメントの際は加振を止められ、プローブ28にプローブ光照射装置50より、プローブ光を照射し、プローブを挟んだ反対側からプローブ光検出器52、加振を止めてアライメントする際には面型検出器を用いてプローブよりのプローブ光の透過光を検出するようにプローブ光照射装置50の位置が変えられ、自動XZステージ54を駆動して、プローブ光検出器52の出力が最小になるように自動でアライメントされる。その後、プローブを加振した状態では、プローブ光検出器52にPIN型検出器を用い、プローブ光検出器52の乗った自動XZステージ56を駆動し、得られる信号のsin曲線の振幅が最大になるように位置を調整する。本発明によれば、このような手順によって、プローブ光照射装置50と、プローブ光検出器52の位置をそれぞれ自動でアライメントできる。
【0030】
なお、本実施形態においては、プローブからの透過光を用いてプローブ光照射装置とプローブ光検出器のアライメントを行ったが、反射光を用いても良く、反射光を用いる場合は、プローブの加振を止めてプローブ光照射装置とプローブ光検出器をアライメントする際に、プローブ光を照射し、プローブ光検出器によりプローブ光の反射光を検出する位置に変えられ、自動XZステージを駆動してプローブ光検出器の出力が最大になるようにアライメントする事が透過光の場合と異なるだけで、後は同様の手順によってアライメントすることができ、またプローブの位置を制御をすることができる。
以上のように、本実施形態のような構成を持つ近接場光学顕微分光測定装置は、Heクライオスタット内や超高真空チャンバ内で使用することもできる。
【0031】
【実施例】
本発明における近接場光学顕微分光測定装置を用いて、ポリジアセチレン結晶のラマンスペクトルの測定を行った。励起光には、波長532nmのグリーンレーザーを用い、プローブ開口径は約200nmであった。
図5に観測されたポリジアセチレン結晶のラマンスペクトル測定結果を示す。波数約1500cm-1にC=C、波数約2100cm-1にC≡Cの伸縮振動に帰属される特徴的な共鳴ラマンピークが観測された。
測定に要した時間は5分であり、従来のフォトマルチプライヤーを用いて測定していた場合は約80時間であったので、およそ1000倍の測定時間の短縮が可能となっている。
【0032】
【発明の効果】
本発明における近接場光学顕微測定装置によれば、液体窒素冷却CCDなどのマルチチャンネル検出器を使用することにより、スペクトル測定時間を短縮でき、より広範囲のマッピングスペクトル測定を現実的な時間で行うことが可能である。 また、本発明における近接場光学顕微測定装置によれば、集光された散乱光や発光を光ファイバーに導入し、それを分光手段に結合することにより、近接場光学顕微鏡と集光手段、分光手段、検出手段とを機械的・電気的に分離することにより、互いにノイズの影響を及ぼすことがない。
また、本発明における近接場光学顕微測定装置によれば、試料−プローブの位置制御のための、プローブ光照射装置とプローブ光検出器がそれぞれ自動でアライメントするので、手動でアライメントする困難さのない装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料表面にエバネッセント光を生じさせた際の説明図
【図2】プローブ先端にエバネッセント光場を生じさせた際の説明図
【図3】本発明による近接場光学顕微分光測定装置の概略図
【図4】本発明による試料−プローブ位置制御手段の構成の概略図
【図5】本発明による近接場光学顕微分光測定装置で測定したポリジアセチレンのラマンスペクトル
【符号の説明】
22:近接場光学顕微分光測定装置
28:プローブ
32:対物レンズ
36:マルチチャンネル検出器
48:光ファイバー
50:プローブ光照射装置
52:プローブ光検出器
54、56:自動XZステージ
Claims (6)
- 被測定物表面にエバネッセント光を発生させる励起光を照射する励起光照射手段と、
前記エバネッセント光の場へプローブを進入させることにより発生する被測定光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集光された光を、その波長毎に分光する分光手段と、
前記分光手段により得られる各波長の分光光を同時に検出可能なマルチチャンネル検出手段と、
前記被測定物表面−プローブ位置制御に、シアフォースフィードバックシステムを用いた、試料−プローブ位置制御機構と、
を備え、
前記試料−プローブ位置制御機構は、前記プローブと被測定物との間の距離を検出し、エバネッセント光の有効距離内に制御する試料−プローブ位置制御手段と、
前記プローブを微小振動させ、その振動の共振周波数を求めるプローブ共振周波数検出手段と、
を備え、
前記試料−プローブ位置制御手段は、プローブにプローブ光を照射するプローブ光照射装置、前記プローブからのプローブ光の反射光、あるいは透過光を検出するプローブ光検出器、および、前記プローブ光照射装置と前記プローブ光検出器をそれぞれ載置して駆動する一組の自動XZステージを備え、
前記プローブ光のプローブからの反射光または透過光を前記プローブ光検出器によりモニターすることにより、プローブ光照射装置を載置した自動XZステージを駆動し、プローブ光をプローブ上に自動でアライメントし、
加振されたプローブからの変調された反射光または透過光をプローブ光検出器により検出し、検出器の出力のAC成分が最大になるようにプローブ光検出器を載置したXZステージを駆動させて、プローブ光検出器の位置を自動でアライメントすることを特徴とする近接場光学顕微分光測定装置。 - プローブ先端にエバネッセント光を発生させ、プローブ先端を被測定物に近づけることにより発生する被測定光により分光分析を行う近接場光学顕微分光測定装置において、
プローブ先端にエバネッセント光を発生させる励起光を照射する励起光照射手段と、
前記プローブを被測定物に近づけることにより前記エバネッセント光の場に発生する被測定光を集光する集光手段と、
前記集光手段により集光された光を、その波長毎に分光する分光手段と、
前記分光手段により得られる各波長の分光光を同時に検出可能なマルチチャンネル検出手段と、
前記被測定物表面−プローブ位置制御に、シアフォースフィードバックシステムを用いた、試料−プローブ位置制御機構と、
を備え、
前記試料−プローブ位置制御機構は、前記プローブと被測定物との間の距離を検出し、エバネッセント光の有効距離内に制御する試料−プローブ位置制御手段と、
前記プローブを微小振動させ、その振動の共振周波数を求めるプローブ共振周波数検出手段と、
を備え、
前記試料−プローブ位置制御手段は、プローブにプローブ光を照射するプローブ光照射装置、前記プローブからのプローブ光の反射光、あるいは透過光を検出するプローブ光検出器、および、前記プローブ光照射装置と前記プローブ光検出器をそれぞれ載置して駆動する一組の自動XZステージを備え、
前記プローブ光のプローブからの反射光または透過光を前記プローブ光検出器によりモニターすることにより、プローブ光照射装置を載置した自動XZステージを駆動し、プロ ーブ光をプローブ上に自動でアライメントし、
加振されたプローブからの変調された反射光または透過光をプローブ光検出器により検出し、検出器の出力のAC成分が最大になるようにプローブ光検出器を載置したXZステージを駆動させて、プローブ光検出器の位置を自動でアライメントすることを特徴とする近接場光学顕微分光測定装置。 - 被測定物の測定箇所を任意の箇所に移動可能とする移動手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至2記載の近接場光学顕微分光測定装置。
- 集光された被測定光を光ファイバーに導入し、それを分光手段に結合することにより、近接場光学顕微鏡と、集光手段、分光手段、検出手段とが、機械的、電気的に分離されていることを特徴とする請求項1乃至2記載の近接場光学顕微分光測定装置。
- 前記散乱光を検出するマルチチャンネル検出手段には、高感度CCDを用いることを特徴とする請求項1乃至2記載の近接場光学顕微分光測定装置。
- 被測定物からの散乱光や発光をプローブに再導入することによって集光することを特徴とする請求項1乃至2に記載の近接場光学顕微分光測定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28250997A JP3889134B2 (ja) | 1997-09-29 | 1997-09-29 | 近接場光学顕微分光測定装置 |
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