JP3888887B2 - 免震装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、免震装置に関し、特に、住宅等の低層建築物に設置される免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
地震等によって基礎構造物が振動すると、基礎構造物上に構築された上部構造物には、揺れによる大きな繰返し応力が発生する。そして、振動規模が大きい場合には、上部構造物が変形したり、破損、倒壊し、大きな被害が生じるおそれがある。
【0003】
上述の被害を防止するため、基礎構造物と上部構造物との間に振動を減衰させる免震装置を介在させたり、上部構造物の中に上部構造物の振動エネルギーを吸収する水槽を設置する等各種の振動対策技術が開発されている。
【0004】
基礎構造物と上部構造物の間に介在させる免震装置には、基礎構造物に対して上部構造物を水平方向にスライド可能にしたスライド形式の免震装置や、基礎構造物と上部構造物とを弾性体を介して連結した弾性体介在形式のものがある。
【0005】
ここで、スライド形式の免震装置には、基礎構造物と上部構造物とを摺動面で重ね合わせたものや、基礎構造物と上部構造物との間に転動可能なローラを挿入したものがある。そして、基礎構造物が振動すると、上部構造物がその水平力を受けた方向に移動しようとするが、その際に減衰装置が機能する。このスライド形式の免震装置では、スライドする上部構造物が何物にも衝突することなく停止するための広いスライド面が必要であり、免震装置の全体容積が大型化する問題がある。
【0006】
一方、弾性体介在型の免震装置では、基礎構造物に生じる振動をすべて弾性体で受け、剪断方向の弾性変形により衝撃を発生させることなく減衰するため、弾性体は強い振動に耐えることができ、しかも、振動振幅よりも大きい弾性変形量が必要である。この弾性体には、一般に広い面積のゴム材を複数段に積層した大型のものが使用されるが、免震装置全体構成が複雑になり、大型化する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来の免震装置における問題点等に鑑みてなされたものであって、構成が簡単で、装置全体をコンパクトに形成することができ、振動の規模に容易に対応することのできる複合型の免震装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、免震装置であって、基礎構造物に固着され、摺動面と該摺動面に立設された円筒状の周壁とを有する第1筐体と、該第1筐体の摺動面に摺動可能に載置され、摺動面と該摺動面に立設された円筒状の周壁とを有する第2筐体と、前記基礎構造物の上方に配設される上部構造物に固着される可動部材に一体に設けられ、前記第2筐体の摺動面上を移動可能なスライダと、一端が該スライダに一体に、他端が前記第2筐体の周壁と当接可能に設けられ、前記スライダを前記第2筐体の摺動面の中央部に付勢する複数の第1板ばねと、一端が前記第2筐体の外側周壁に一体に、他端が前記第1筐体の内側周壁に当接可能に設けられ、前記第2筐体を前記第1筐体の摺動面の中央部に付勢する複数の第2板ばねとを備え、前記第1板ばね及び第2板ばねは、上下方向に2段に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、地震等により基礎構造物とともに筐体が水平方向に振動した場合に、第2筐体及びスライダが第1筐体及び第2筐体の摺動面上をスライドし、第1及び第2板ばねが重なることなく変形に応じるため、より大規模な建築物に対して、構成が簡単で、コンパクトで、振動の規模に容易に対応することのできる免震装置を提供することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の免震装置において、前記可動部材と前記スライダとの間に積層ゴムを有するゴムパッドを介装したことを特徴とする。これによって、地震動の初期または微動の振動に対してより柔軟に対応することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の免震装置の好ましい一形態として、前記基礎構造物と前記筐体または前記第1筐体とが水平調整ボルトを介して固着されることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる免震装置の実施の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる免震装置の第1実施例を示し、この免震装置1は、大きく分けて、基礎構造物8に水平調整ボルトとして機能するボルト10、長ナット11及びアンカーボルト9を介して固着された筐体2と、上部構造物12に固着される可動部材3にゴムパッド5を介して一体に設けられたスライダ4と、スライダ4と筐体2の周壁2bとの間に介装された板ばね6、7等で構成される。
【0018】
筐体2は、平面円形の摺動面2aと、この摺動面2aの縁部に立設された円筒状の周壁2bとを備え、上方が開口している。そして、底面2cに固着されたボルト10と、長ナット11及び基礎構造物8に植設されたアンカーボルト9とを介して基礎構造物8に固着される。摺動面2aの表面にはフッ素樹脂層または金属板が敷設される。
【0019】
可動部材3は、平面矩形状の板状部材であって、図示しない締結部材を介して上部構造物12に締結される。
【0020】
スライダ4は、中空の円筒状に形成され、積層ゴムを有するゴムパッド5を介して可動部材3に一体に設けられ、筐体2の摺動面2a上に移動可能に載置される。スライダ4の底面4bには、複数箇所にフッ素樹脂層または金属板からなる摺動部4aが配設される。摺動部4aと摺動面2aの接触面積を調整することにより、摩擦力を調整することができる。また、スライダ4の円筒状側面には、防震ゴム13が巻回、固着される。
【0021】
スライダ4と筐体2の周壁2bとの間には、その一端がスライダ4の円筒状側面に一体に固定され、他端が筐体2の周壁2bと当接可能な板ばね6、7が設けられる。この板ばね6、7は、上下方向に2段に設けられ、スライダ4を筐体2の摺動面の中央部に付勢し、スライダ4の移動量を減衰させる。
【0022】
次に、上記構成を有する免震装置1の動作について説明する。
【0023】
振動の発生しない通常状態では、図1(a)に示すように、スライダ4が、筐体2の摺動面2aの略々中央部に位置する。そして、地震等により基礎構造物8とともに筐体2が水平方向に振動すると、図2に示すように、スライダ4が摺動面2a上をスライドし、板ばね6、7の先端が周面2bに当接し、板ばね6、7が弾性変形する。この際、スライダ4の摺動面2aに対する相対的移動量が増加するに従って、板ばね6、7の弾性力が大きくなり、スライダ4の相対的移動量を抑制する。従って、基礎構造物8が振幅の大きい振動を受けてもスライダ4が摺動面2a上を大きく移動することはなく、これに伴って、上部構造物12の振動が低減される。
【0024】
次に、図3を参照しながら本発明にかかる免震装置の第2実施例について説明する。
【0025】
本実施例にかかる免震装置21は、第1実施例にかかる免震装置1よりは大規模の建築物に適用するものであって、基礎構造物8に固着された第1筐体22と、第1筐体22の摺動面をスライドする第2筐体23とを備えることを特徴としている。すなわち、この免震装置は、大きく分けて、第1筐体22と、第2筐体23と、上部構造物12に固着される可動部材3に一体に設けられたスライダ24と、スライダ24と第2筐体23と間に介装された第1板ばね26、27と、第1筐体22と第2筐体23と間に介装された第2板ばね28、29等で構成される。
【0026】
第1筐体22は、平面円形の摺動面22aと、この摺動面22aの縁部に立設された円筒状の周壁22bとを備え、底面に固着された水平調整ボルトとして機能するボルト10と、長ナット11及び基礎構造物8に植設されたアンカーボルト9とを介して基礎構造物8に固着される。摺動面2aの表面にはフッ素樹脂層または金属板が敷設される。
【0027】
第2筐体23は、平面円形の摺動面23aと、この摺動面23aの縁部に立設された円筒状の周壁23bとを備え、第1筐体22の摺動面22a上に移動可能に載置される。第2筐体23の底面23cには、複数箇所にフッ素樹脂層または金属板からなる摺動部23dが配設される。摺動部23dと摺動面22aの接触面積を調整することにより、摩擦力を調整することができる。また、第2筐体23の円筒状側面には、防震ゴム30が巻回、固着される。
【0028】
スライダ24は、中空の円筒状に形成され、複数の板状のゴムが積層されたゴムパッド5を介して可動部材3に一体に設けられ、第2筐体23の摺動面23a上に移動可能に載置される。スライダ24の底面24bには、複数箇所にフッ素樹脂層または金属板からなる摺動部24aが配設される。また、スライダ24の円筒状側面には、防震ゴム31が巻回、固着される。
【0029】
スライダ24と第2筐体23との間には、その一端がスライダ24に一体に、他端が第2筐体23の周壁23bと当接可能な複数の第1板ばね26、27が上下方向に2段に設けられ、スライダ24を第2筐体23の摺動面23aの中央部に付勢する。
【0030】
また、第2筐体23と第1筐体22との間には、その一端が第2筐体23の外側周壁に一体に、他端が第1筐体22の内側周壁に当接可能な複数の第2板ばね28、29が上下方向に2段に設けられ、第2筐体23を第1筐体22の摺動面22aの中央部に付勢する。
【0031】
上記構成を有する免震装置21の動作は、第1実施例にかかる免震装置1と略々同様であるが、第1筐体22及び第2筐体23と2つの筐体が設けられているため、第1板ばね26、27と、第2板ばね28、29とでスライダ24の相対的移動量を抑制することができる。そのため、基礎構造物8が振幅の大きい振動を受けてもスライダ24が摺動面2a上を大きく移動することはなく、比較的大規模の上部構造物12の振動を低減することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、構成が簡単で、装置全体をコンパクトに形成することができ、振動の規模に容易に対応することのできる複合型の免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる免震装置の第1実施例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】図1の免震装置の動作を説明するための平面図である。
【図3】本発明にかかる免震装置の第2実施例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
1 免震装置
2 筐体
2a 摺動面
2b 周壁
2c 底面
3 可動部材
4 スライダ
4a 摺動部
4b 底面
5 ゴムパッド
6 板ばね
7 板ばね
8 基礎構造物
9 アンカーボルト
10 ボルト
11 長ナット
12 上部構造物
13 防震ゴム
21 免震装置
22 第1筐体
22a 摺動面
22b 周壁
23 第2筐体
23a 摺動面
23b 周壁
23c 底面
23d 摺動部
24 スライダ
24a 摺動部
24b 底面
26 第1板ばね
27 第1板ばね
28 第2板ばね
29 第2板ばね
30 防震ゴム
31 防震ゴム
Claims (3)
- 基礎構造物に固着され、摺動面と該摺動面に立設された円筒状の周壁とを有する第1筐体と、
該第1筐体の摺動面に摺動可能に載置され、摺動面と該摺動面に立設された円筒状の周壁とを有する第2筐体と、
前記基礎構造物の上方に配設される上部構造物に固着される可動部材に一体に設けられ、前記第2筐体の摺動面上を移動可能なスライダと、
一端が該スライダに一体に、他端が前記第2筐体の周壁と当接可能に設けられ、前記スライダを前記第2筐体の摺動面の中央部に付勢する複数の第1板ばねと、
一端が前記第2筐体の外側周壁に一体に、他端が前記第1筐体の内側周壁に当接可能に設けられ、前記第2筐体を前記第1筐体の摺動面の中央部に付勢する複数の第2板ばねとを備え、
前記第1板ばね及び第2板ばねは、上下方向に2段に設けられることを特徴とする免震装置。 - 前記可動部材と前記スライダとの間に積層ゴムを有するゴムパッドを介装したことを特徴とする請求項1記載の免震装置。
- 前記基礎構造物と前記筐体または前記第1筐体とが水平調整ボルトを介して固着されることを特徴とする請求項1または2記載の免震装置。
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