JP3888859B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、レーザープリンタ等で採用されている電子写真法、静電記録法、静電印刷法等の現像プロセスにおいて用いられる静電潜像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
乾式電子写真法において、静電潜像を可視像とする際に用いられるトナー粒子は、一般に熱可塑性結着樹脂(バインダー樹脂)と、電荷制御剤と、磁性粒子体と、添加剤とを予備混合後、溶融混練、粉砕、分級の工程を経て、所望の粒子径を有するトナー粒子として製造されている。そして、このトナー粒子は、粒子表面に一定量の正または負の電荷が摩擦帯電により蓄積され、この帯電粒子が静電潜像の現像に利用されている。
ここで、摩擦帯電によって、トナー粒子表面に蓄積される電荷は、静電潜像の形成に用いられる光導電性感光体の種類によって正または負のいずれかの電荷とすることが必要である。また、その場合の帯電量は、静電潜像をより正確に可視像化するのに十分な量とする必要がある。このため、電荷制御剤ないしは導電物質をバインダー樹脂中に混合分散し、トナー粒子表面の電荷及び帯電量を制御するのが一般的であり、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機微粉末が一般に添加されている。
しかしながら、これらの無機微粉末は、一般に親水性であるため、湿度等の環境条件によって、トナー粒子の帯電特性が大きく変化しやすいという問題が見られた。
【0003】
そこで、このような環境条件の影響を防ぐため、これら無機微粉末の表面を疎水化剤で処理したり、あるいは極性基を導入したりすることが行なわれている。
【0004】
例えば、特開昭52−135739号公報には、極性基を導入するために、アミノシランカップリング剤で表面処理した金属酸化物を用いた技術が提案されている。また、特開平10−3177号公報には、シランカップリング剤で処理されたチタン化合物を用いることが提案されている。
また、特開平5−181306号公報には、アルミナ、ジルコニア等の研磨剤微粒子をトナー母粒子の表面に固着させ、トナー母粒子の粒径と研磨剤微粒子の粒径との比を制御した静電潜像現像剤が提案されている。
これらの静電潜像現像剤によると、感光体表面に対して優れた研磨効果が得られ、クリーニングブラシなどの大きなシステムを組み込む必要がなく、装置の小型化が可能で、像流れ、画像濃度、カブリ等に対して効果がある。
しかしながら、特開昭52−135739号公報に開示された現像剤では、アミノシランカップリング剤が親水性であるため、高温高湿環境下において、トナーの流動性や帯電特性が著しく低下するという問題が見られた。
また、特開平10−3177号公報に開示されたチタン化合物は、極度のチャージアップを引き起こし、帯電量分布が不均一となり、画像濃度の低下、カブリ等の不具合を発生させるという問題が見られた。
さらにまた、特開平5−181306号公報に開示された静電潜像現像剤では、感光体表面に対して所定の研磨能力を発揮することができるものの、帯電特性が不安定であり、また、トナーの耐久特性についても必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
また、特開昭62−113158号公報、特開昭64−62667号公報、および特開平5−188633号公報には、疎水性シリカおよび酸化チタン(アナターゼ型)を外添したトナーが開示されている。
しかしながら、かかるトナーは、摩擦により酸化チタン(アナターゼ型)がトナー内部に埋設してしまい、帯電特性が不安定になるという問題が見られた。
【0006】
そこで、特開2000−128534号公報には、含水酸化チタン及び/又はアナターゼ型酸化チタンを一部に含有するルチル型酸化チタンの表面を、シランカップリング剤で表面処理した疎水性酸化チタンを、外添剤としたトナーが開示されている。そして、疎水性酸化チタンの長軸径を0.02〜0.1μmとし、軸比を2〜8として、トナー内部に埋設することを防止しようとしている。
しかしながら、かかる疎水性酸化チタンは、製造が容易でなく、また、嵩密度が小さくて、安定した帯電特性を示すことが未だ困難であるという問題が見られた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者らは、従来の課題を鋭意検討した結果、研磨力を発揮させるために、所定平均粒子径を有するアナターゼ型酸化チタンを添加し、帯電量分布をシャープにするために、所定平均粒子径を有するルチル型酸化チタンを添加することにより、双方が重ね合さって静電潜像現像用トナーの問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、帯電量分布が均一で、摩擦帯電量を低下させることなく、チャージアップすることもなしに安定した帯電特性を示し、しかも流動性、環境依存性、耐久特性に優れた静電潜像現像用トナーおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、平均粒子径が120〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの双方を、トナー粒子に対して、外添処理したことを特徴とする静電潜像現像用トナーが提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、平均粒子径が120〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの双方を、トナー粒子に対して、外添処理するとともに、前記アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で10:90〜90:10の範囲内の値とすることを特徴とする静電潜像現像用トナーが提供される。
したがって、アナターゼ型酸化チタンの働きにより、流動性、環境依存性、耐久特性に優れた静電潜像現像用トナーを得ることができる。また、ルチル型酸化チタンの働きにより、トナーの帯電量分布が均一で、摩擦帯電量を低下させることなく、またチャージアップすることなしに安定した帯電特性を示す静電潜像現像用トナーを得ることができる。
また、静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で10:90〜90:10の範囲内の値とすることにより、アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとの双方の機能を有効に発揮させて、優れた環境依存性や帯電特性を示す静電潜像現像用トナーを得ることができる。
【0010】
また、本発明の静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの合計添加量を、トナー粒子に対して、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとの双方の機能を有効に発揮させて、優れた環境依存性や帯電特性を示す静電潜像現像用トナーを得ることができる。
【0011】
また、本発明の静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、静電潜像現像用トナーが有機感光体用トナーの場合には、アナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの体積固有抵抗をそれぞれ1×104〜1×1015Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
一方、本発明の静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、静電潜像現像用トナーがアモルファスシリコン感光体用トナーの場合には、アナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの体積固有抵抗をそれぞれ1×101〜1×107Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用した場合であっても、a−Si感光体に使用した場合であっても、それぞれアナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとの双方の機能を有効に発揮させて、優れた環境依存性や帯電特性を示す静電潜像現像用トナーを得ることができる。
【0012】
また、本発明の静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンが、チタネート系カップリング剤でそれぞれ表面処理されていることが好ましい。
このように酸化チタンをチタネート系カップリング剤により疎水化処理してあるため、周囲の湿度条件の影響を受けずらい静電潜像現像用トナーを得ることができる。
【0013】
なお、本発明の静電潜像現像用トナーを構成するにあたり、アモルファスシリコン感光体を搭載したプリンタに適用してなることが好ましい。
すなわち、本発明の静電潜像現像用トナーは、正帯電性にも、負帯電性にも優れているため、例えば、図1に示すような画像形成装置1に好適に使用することができる。より具体的には、この画像形成装置1は、時計回りに回転するアモルファスシリコン感光体9の周囲に、回転方向に沿って、現像器10、転写ローラ19、クリーニングブレード13、及び帯電ユニット8が配設されている。そして、図1に示すような画像形成装置1の例では、現像器10には、現像ローラ32が配設され、該現像ローラ32の表面は、アモルファスシリコン感光体9の表面と所定間隔離間しているとともに、この現
像器10に対して、トナーコンテナ31から適宜所定量のトナーが供給可能に構成されている。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態は、平均粒子径が120〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの双方を、トナー粒子に対して、外添処理するとともに、前記アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で10:90〜90:10の範囲内の値とした静電潜像現像用トナーである。以下、トナー粒子と、外添処理剤とに大別して説明する。
1.トナー粒子
(1)バインダー樹脂
(1)−1種類1
本発明におけるトナーに使用するバインダー樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0015】
より具体的には、ポリスチレン系樹脂として、スチレンの単独重合体でも、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。また、このような共重合モノマーとしては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどの他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデンなどのN−ビニル化合物などが挙げられる。これらは、一種を単独で使用して、スチレン単量体と共重合させることもできるし、あるいは二種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合させることもできる。
【0016】
また、ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものであれば好適に使用することができる。
【0017】
このようなアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5,−トリヒドロキシメチルベンゼン等が例示される。
【0018】
また、カルボン酸成分としては、二価または三価のカルボン酸、あるいはこれらのカルボン酸における酸無水物、またはこれらのカルボン酸における低級アルキルエステルが用いられる。
より具体的には、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等の二価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の三価以上のカルボン酸が例示される。
【0019】
▲2▼分子量分布
また、バインダー樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される重量平均分子量において、少なくとも2つ以上の分子量分布ピーク(低分子量ピークおよび高分子量ピーク)を有することが好ましい。
具体的に、低分子量ピークが3、000〜20、000の範囲内であり、もう一つの高分子量ピークが3×105〜15×105の範囲内であるバインダー樹脂が好ましい。
この理由は、低分子量ピークが上記範囲内の値にあると、静電潜像現像用トナーの定着性が向上するためである。逆に、かかる低分子量ピークが3,000未満の値となると、定着時にオフセットが発生し易くなり、また、静電潜像現像用トナーの使用環境温度(5〜50℃)での保存安定性が低下して、ケーキングを生じる場合があるためである。
一方、高分子量ピークが上記範囲内の値にあると、静電潜像現像用トナーのオフセット性が向上するためであり、逆に、かかる高分子量ピークが20,000よりも大きくなると、バインダー樹脂と電荷制御剤との相溶性が低下し、均一な分散が得られない場合があるためである。したがって、カブリ、感光体汚染、定着不良等が生じ易くなる場合がある。
【0020】
さらに、バインダー樹脂において、重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が10以上の値が好ましい。
この理由は、かかるMw/Mnの比率が10未満の値となると、静電潜像現像用トナーの定着性やオフセット性が低下する場合があり、双方の特性を十分に満足できない場合があるためである。
【0021】
▲3▼架橋構造
また、バインダー樹脂は、定着性が良好な観点から熱可塑性樹脂が好ましいが、ソックスレー抽出器を用いて測定される架橋成分量(ゲル量)が10重量%以下の値、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲内の値であれば、硬化性樹脂であっても良い。
このように一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性や形態保持性、あるいは耐久性をより向上させることができる。よって、トナーのバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂を100重量%使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、あるいは、熱硬化性樹脂を一部使用したりすることも好ましい。
【0022】
このような熱硬化性樹脂として、エポキシ系樹脂やシアネート系樹脂が挙げられるが、より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
▲4▼官能基
また、バインダー樹脂内に、磁性粒子の分散性を向上させるために、官能基を有することが好ましい。このような官能基としては、ヒドキロキシ(水酸)基、カルボキシル基、アミノ基およびグリシドキシ(エポキシ)基から選択される少なくとも一つが挙げられる。
なお、バインダー樹脂が、これらの官能基を有しているか否かは、FT−IR装置を用いて確認することができ、さらに官能基の含有量については、滴定法を用いて定量することができる。
【0024】
▲5▼ガラス転移点
また、バインダー樹脂のガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかるバインダー樹脂のガラス転移点が、55℃未満となると、得られた静電潜像現像用トナー同士が融着し、保存安定性が低下する場合があるためである。一方、かかるバインダー樹脂のガラス転移点が、70℃を超えると、トナーの定着性が乏しくなる場合があるためである。
したがって、バインダー樹脂のガラス転移点を58〜68℃の範囲内の値とすることがより好ましく、60〜66℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0025】
なお、バインダー樹脂のガラス転移点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。
【0026】
▲6▼軟化点
また、バインダー樹脂が結晶性である場合、その融点(または軟化点)を110〜150℃の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかるバインダー樹脂の融点(または軟化点)が、110℃未満となると、得られたトナー同士が融着し、保存安定性が低下する場合があるためである。一方、バインダー樹脂の融点(または軟化点)が、150℃を超えると、トナーの定着性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、バインダー樹脂の融点(または軟化点)を115〜145℃の範囲内の値とすることがより好ましく、120〜140℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、バインダー樹脂の融点(または軟化点)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解ピーク位置や、落球法から求めることができる。
【0027】
(2)ワックス類
本発明のトナーにおいて、定着性やオフセット性の向上効果、さらには読み取り装置の拒絶率減少を求めることから、ワックス類を添加することが好ましい。ここで、添加するワックス類の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロン系ワックス(フッ素系ワックス)、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等を使用することが好ましい。また、これらワックスを併用しても構わない。かかるワックスを添加することにより、オフセット性を向上させることができるとともに、像スミアリングをより効率的に防止することができる。なお、フィッシャートロプシュワックスは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
【0028】
また、フィッシャートロプシュワックスの中でも、重量平均分子量が1,000以上の値であり、かつ100〜120℃の範囲内にDSCによる吸熱ボトムピークを有するものがより好ましい。
このようなフィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(H1の結晶化による高分子量グレード、吸熱ボトムピーク:106.5℃)、サゾールワックスC105(C1の分留法による精製品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)、サゾールワックスSPRAY(C105の微粒子品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)等が挙げられる。
【0029】
また、ワックス類の添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、静電潜像現像用トナーの全体量を100重量%としたときに、ワックス類の添加量を1〜5重量%の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかるワックス類の添加量が1重量%未満となると、オフセット性の低下や像スミアリング等を効率的に防止することができない場合があるためであり、一方、ワックス類の添加量が5重量%を超えると、静電潜像現像用トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する場合があるためである。
【0030】
(3)電荷制御剤
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、帯電レベルや帯電立ち上がり特性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)が著しく向上し、耐久性や安定性に優れた特性等が得られることから、電荷制御剤を添加することが好ましい。
ここで、添加する電荷制御剤の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下に示す正帯電性や負帯電性を示す電荷制御剤が挙げられる。
【0031】
▲1▼正帯電性電荷制御剤
正帯電性電荷制御剤として、ニグロシン、第四級アンモニウム塩化合物、樹脂にアミン系化合物を結合させた樹脂タイプの電荷制御剤等が挙げられる。
具体的に、アジン化合物としてのピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1、2、3−トリアジン、1、2、4−トリアジン、1、3、5−トリアジン、1、2、4−オキサジアジン、1、3、4−オキサジアジン、1、2、6−オキサジアジン、1、3、4−チアジアジン、1、3、5−チアジアジン、1、2、3、4−テトラジン、1、2、4、5−テトラジン、1、2、3、5−テトラジン、1、2、4、6−オキサトリアジン、1、3、4、5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、アジン化合物からなる直接染料としての、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEWおよびアジンディープブラック3RL、ニグロシン化合物としてのニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体、ニグロシン化合物からなる酸性染料としての、ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、4級アンモニウム塩としてのベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。特に、ニグロシン化合物は、より迅速な立ち上がり性が得られることから、正帯電性の静電潜像現像用トナーに対しては最適である。
【0032】
また、4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマー、カルボン酸塩を有する樹脂またはオリゴマー、カルボキシル基を有する樹脂またはオリゴマー等が挙げられる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するポリスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン-アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン-アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン-アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩あるいはカルボキシル基を官能基として有するスチレン-アクリル系樹脂(スチレン-アクリル系共重合体)は、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができることから、最適な電荷制御剤である。
【0033】
▲2▼負帯電性電荷制御剤
また、負帯電性を示すものとして、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などが挙げられる。
【0034】
▲3▼添加量
また、静電潜像現像用トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷制御剤の添加量を、1.5〜15重量%の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかる電荷制御剤の添加量が1.5重量%未満となると、静電潜像現像用トナーに対して、安定して帯電特性を付与することが困難となり、画像濃度が低くなったり、耐久性が低下したりする場合があるためである。また、分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなったりする場合があるためである。
一方、電荷制御剤の添加量が15重量%を超えると、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、電荷制御機能と、静電潜像現像用トナーの耐久性等とのバランスがより良好となることから、電荷制御剤の添加量を、2.0〜8.0重量%の範囲内の値とするのがより好ましく、3.0〜7.0重量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0035】
(4)磁性粒子
▲1▼種類
静電潜像現像用トナーにおいて、帯電特性を制御するために、磁性粒子を添加することも好ましい。
このような磁性粒子としては、酸化鉄(マグネタイト)、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、およびフェライト粉をそれぞれ主成分とした磁性粒子や、酸化鉄(マグネタイト)にコバルトやニッケル等の強磁性を示す金属をドーピングした磁性粒子を挙げることができる。
また、そのままでは強磁性元素を含まないものの、適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、例えば二酸化クロム等を磁性粒子として使用することもできる。
【0036】
また、磁性粒子は、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理を施したものであることが好ましい。
この理由は、このような表面処理を施すことにより、磁性粒子とバインダー樹脂との親和性が向上し、磁性粒子をバインダー樹脂中に、より均一に分散させることができるようになるためである。また、磁性粒子は、通常、親水性であるため、このような表面処理を施すことにより、適度に疎水化を図ることができ、結果として、トナーの耐湿性を向上させることができるためである。
【0037】
▲2▼平均粒子径
また、磁性粒子の平均粒子径を0.1〜0.5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる磁性粒子の平均粒子径がこれらの範囲外となると、トナー粒子に不均一に分散し、均一に帯電させることが困難となる場合があるためである。したがって、磁性粒子の平均粒子径を0.15〜0.45μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜0.4μmの範囲内の値とすることが値とすることがさらに好ましい。
【0038】
▲3▼添加量
また、磁性粒子の添加量を、一成分現像方式に適用する場合には、トナー粒子の全体量に対して、30〜70重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる磁性粒子の添加量が30重量%以下となると、耐久性が低下し、カブリが生じ易くなる場合があるためである。一方、かかる磁性粒子の添加量が70重量%を超えると、画像濃度や耐久性が低下したり、あるいは定着性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、一成分現像方式に適用する場合には、磁性粒子の添加量を30〜60重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
一方、二成分現像方式に適用する場合には、磁性粒子を添加しなくとも良いが、添加する場合には、その添加量を、トナー粒子の全体量に対して、15重量%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる磁性粒子の添加量が15重量%を超えると、耐久性が低下し、カブリが生じ易くなる場合があるためである。
したがって、二成分現像方式に適用した場合、より好ましくは、磁性粒子の添加量を0〜10重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることである。
【0039】
(5)特性改良剤
また、本発明の静電潜像現像用トナーには、静電潜像現像用トナーの流動性や保存安定性を向上させる目的で、特性改良剤としてのコロイダルシリカや疎水性シリカ等を添加したり、あるいはこれらのコロイダルシリカを用いて表面処理したりすることが好ましい。
また、シリカの添加量を、酸化チタンの添加量を考慮して定めることが好ましい。具体的に、シリカの添加量を、酸化チタンの添加量を100重量%としたときに、10〜100重量%の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかるシリカの添加量が10重量%未満の値となると、シリカの添加効果が発現されない場合があるためであり、一方、かかるシリカの添加量が100重量%を超えると、電子写真用トナーの帯電特性が低下する場合があるためである。
したがって、シリカの添加量を、酸化チタンの添加量を100重量%としたときに、20〜90重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0040】
(6)平均粒子径
静電潜像現像用トナーの平均粒子径を5〜12μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる静電潜像現像用トナーの平均粒子径が5μm未満となると、保存安定性が低下しやすくなる場合があるためである。一方、かかる静電潜像現像用トナーの平均粒子径が12μmより大きくなると、搬送性が低下したり、あるいは定着画像が不鮮明となったりする場合があるためである。
したがって、静電潜像現像用トナーの平均粒子径を6〜11μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0041】
2.外添処理剤
本発明のトナーにおいて、帯電量分布が均一で、摩擦帯電量を低下させることなく、またチャージアップすることなしに安定した帯電特性を示し、流動性、環境依存性、耐久性に優れた静電潜像現像用トナーを提供するために、平均粒子径が120〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの双方をトナー粒子に外添処理する必要がある。
すなわち、研磨力を発揮させるためにアナターゼ型酸化チタンを添加し、帯電量分布をシャープにするためにルチル型酸化チタンを添加して、それぞれ相乗効果を発揮させるためである。
【0042】
(1)アナターゼ型酸化チタン
(1)−1平均粒子径
アナターゼ型酸化チタンの平均粒子径を120〜200nm未満と範囲とすることが必要である。
この理由は、かかるアナターゼ型酸化チタンの平均粒子径が200nm以上の値となると、感光体を損傷させるおそれが生じるためであり、また、磁性インク粒子との分散混合が困難となる場合があるためである。ただし、アナターゼ型酸化チタンの平均粒子径が120nm未満の値になると、感光体に対する研磨力が低下して、流動性、環境依存性、および耐久性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することが困難となる場合がある。
したがって、アナターゼ型酸化チタンの平均粒子径を120〜180nmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、アナターゼ型酸化チタンの平均粒子径は、アナターゼ型酸化チタンが凝集している場合には、その平均一次粒子径を意味する。また、アナタ−ゼ型酸化チタンおよび後述するルチル型酸化チタンの平均粒子径は、レーザー方式を採用したパーティクルカウンター等を用いて測定することができる。
【0043】
▲2▼体積固有抵抗
また、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用する場合には、アナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗を1×104〜1×1015Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましく、a−Si感光体に使用する場合には、アナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗を1×101〜1×107Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用した場合に、かかるアナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗がこのような範囲外の値となると、静電潜像現像用トナーの帯電特性が低下しやすくなり、画像濃度低下を引き起こして、白抜け画像となる場合があるためである。
また、a−Si感光体に使用した場合、アナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗が1×107Ω・cm以上の値となると、帯電量が高すぎてしまい、チャージアップとなり、画像濃度が逆に低下したり、耐久性が低下したりする場合があり、さらには、過度のチャージアップのため、a−Si感光体を用いた場合に、放電破壊を発生させ、黒点画像となる場合があるためである。
したがって、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用する場合には、アナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗を1×105〜1×1014Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1×106〜1×1013Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。また、静電潜像現像用トナーをa−Si感光体に使用する場合には、アナターゼ型酸化チタンの体積固有抵抗を1×102〜1×106Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1×103〜1×105Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
なお、アナタ−ゼ型酸化チタンおよび後述するルチル型酸化チタンの体積固有抵抗値は、ULTRA HIGH RESISTANCE METER(アドバンテスト社製、R8340A)を用い、1kgの荷重をかけた状態で、印加電圧DC10Vの条件にて求めることができる。
【0045】
(2)ルチル型酸化チタン
▲1▼平均粒子径
ルチル型酸化チタンの平均粒子径を200〜500nm未満の範囲内の値とすることが必要である。
この理由は、かかるルチル型酸化チタンの平均粒子径が500nmを超えると、均一な帯電特性を発揮したり、また、磁性インク粒子との分散混合が困難となったりする場合があるためである。一方、かかるルチル型酸化チタンの平均粒子径が200nm未満の値となると、均一な帯電特性を発揮したり、また、凝集しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、ルチル型酸化チタンの平均粒子径を200〜300nmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0046】
▲2▼体積固有抵抗
また、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用する場合には、ルチル型酸化チタンの体積固有抵抗を1×104〜1×1015Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましく、a−Si感光体に使用する場合には、ルチル型酸化チタンの体積固有抵抗を1×101〜1×107Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用した場合に、かかるルチル型酸化チタンの体積固有抵抗がこのような範囲外の値となると、静電潜像現像用トナーの帯電特性が低下しやすくなり、画像濃度低下を引き起こして、白抜け画像となる場合があるためである。
また、a−Si感光体に使用した場合、ルチル型酸化チタンの体積固有抵抗が1×107Ω・cm以上の値となると、帯電量が高すぎてしまい、チャージアップとなり、画像濃度が逆に低下したり、耐久性が低下したりする場合があり、さらには、過度のチャージアップのため、a−Si感光体を用いた場合に、放電破壊を発生させ、黒点画像となる場合があるためである。
したがって、静電潜像現像用トナーをOPC感光体に使用する場合には、ルチル型酸化チタンの体積固有抵抗を1×105〜1×1014Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1×106〜1×1013Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。また、静電潜像現像用トナーをa−Si感光体に使用する場合には、ルチル型酸化チタンの体積固有抵抗を1×102〜1×106Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1×103〜1×105Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
(3)表面処理
また、上述した酸化チタンは、チタネート系カップリング剤や、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施したものでもよい。
すなわち、アナタ−ゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンは、一般に親水性であることから、これらのチタネート系カップリング剤等により表面を疎水化処理することが好ましい。
【0048】
(4)添加割合
また、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で、静電潜像現像用トナーに対して、10:90〜90:10の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、アナターゼ型酸化チタンの添加量が、静電潜像現像用トナーの全体量に対して、10%未満の値(相対的に、ルチル型酸化チタンが90%以上の値)となると、研磨不足となり、高温高湿時において像流れが発生し、画像欠陥となる場合があるためである。
一方、アナターゼ型酸化チタンの添加量が、静電潜像現像用トナーの全体量に対して、90%以上の値(相対的に、ルチル型酸化チタンが10%未満の値)となると、静電潜像現像用トナーの帯電量が適正値を超えてしまい、チャージアップを引き起こし、帯電量分布がブロードとなり、その結果、画像濃度の低下や、耐久性の悪化を招く場合があるためである。
したがって、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で、20:80〜80:20の範囲内の値とすることが好ましく、30:70〜70:30の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
ここで、図2〜図5を参照して、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合と、帯電特性、画像濃度、カブリ性および像流れ性との関係をそれぞれ説明する。
図2の横軸には、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を採って示してあり、図2の縦軸には、帯電量(μC/g)を採って示してある。そして、初期帯電量(μC/g)を実線で示してあり、耐久後の帯電量(μC/g)を点線で示してある。
この図2から容易に理解できるように、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)が10/90〜90/10の範囲であれば、初期帯電量も耐久後の帯電量も安定しているが、かかる添加割合(重量比)が95/5〜100/0となると、帯電量の値が大きくなり、しかも耐久後に大きく値が変化するチャージアップが生じている。
したがって、初期帯電量および耐久後の帯電量を安定させるためには、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を90/10以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0050】
また、図3の横軸には、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を採って示してあり、図3の縦軸には、画像濃度(−)を採って示してある。そして、初期画像濃度(−)を実線で示してあり、耐久後の画像濃度(−)を点線で示してある。
この図3から容易に理解できるように、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)が10/90〜90/10の範囲であれば、初期も耐久後も1.40程度の画像濃度が得られ、安定しているが、かかる添加割合(重量比)が95/5〜100/0となると、初期も耐久後も1.2〜1.3程度まで、画像濃度が低下している。
したがって、初期および耐久後の画像濃度を安定させるためには、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を90/10以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0051】
また、図4の横軸には、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を採って示してあり、図4の縦軸には、カブリ性の評価点(相対値)を採って示してある。そして、初期のカブリ性評価(相対値)を実線で示してあり、耐久後のカブリ性評価(相対値)を点線で示してある。なお、カブリ性の評価○を3点とし、カブリ性の評価△を1点とし、カブリ性の評価×を0点として、それぞれカブリ性の評価点を算出してある。
この図4から容易に理解できるように、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)が10/90〜90/10の範囲であれば、初期も耐久後もカブリ性の評価点は3点と安定しているが、かかる添加割合(重量比)が95/5〜100/0となると、初期も耐久後もカブリ性の評価点が0〜1程度まで低下している。
したがって、初期および耐久後のカブリ性を良好なものとするためには、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を90/10以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0052】
また、図5の横軸には、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を採って示してあり、図5の縦軸には、像流れ性の評価点(相対値)を採って示してある。なお、像流れ性の評価○を3点とし、像流れ性の評価△を1点とし、像流れ性の評価×を0点として、それぞれカブリ性の評価点を算出してある。
この図5から容易に理解できるように、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)が10/90〜90/10の範囲であれば、初期も耐久後も像流れ性の評価点は3点と安定しているが、かかる添加割合(重量比)が5/95〜0/100となると、初期も耐久後も像流れ性の評価点が0〜1程度まで低下している。
したがって、初期および耐久後の像流れ性を良好なものとするためには、アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合(重量比)を10/90以上の値とすることが有効であることが理解される。
【0053】
(5)添加量
また、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの合計添加量を、合計値で、トナー粒子の全体量に対して、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる合計添加量が0.5重量%未満となると、感光体に対する研磨効果が不十分となったり、あるいは高温高湿時において像流れが発生したり、画像欠陥となってしまう場合があるためである。一方、かかる合計添加量が、5重量%以上の値となると、静電潜像現像用トナーの流動性が極端に悪化するため、画像濃度や耐久性が低下する場合がある。
したがって、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの合計添加量を、0.6〜4.5重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.7〜4.3重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0054】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、特に理由なく、以下の説明に本発明の範囲は限定されるものではない。
[実施例1]
(1)静電潜像現像用トナーの製造
以下の組成となるように、スチレン/アクリル樹脂、ポリエチレンワックス、電荷制御剤の混合物を二軸押出機にて溶融混練した。これを冷却し、粉砕、分級して平均粒子径7μmのトナー粒子を得た。
このトナー粒子に対して、アナターゼ型酸化チタン(平均粒子径150nm、体積固有抵抗5×104Ω・cm)とルチル型酸化チタン(平均粒子径250nm、体積固有抵抗5×104Ω・cm)を、合計添加量(10重量部/90重量部)で2重量%となるように添加し、さらにシリカ微粒子(SiO2)を0.5重量%外添して、実施例1の静電潜像現像用トナーとした。
スチレン/アクリル樹脂 96重量部
ポリエチレンワックス 3重量部
電荷制御剤 1重量部
アナターゼ型酸化チタン 0.2重量部
ルチル型酸化チタン 1.8重量部
シリカ微粒子 0.5重量部
【0055】
(2)静電潜像現像用トナーの評価
▲1▼帯電特性
得られた静電潜像現像用トナー5重量部と、フェライトキャリア100重量部とを混合して、通常環境(20℃,65%RH)にて、60分間の条件で摩擦帯電させた場合の帯電量(μC/g)を初期帯電量として、ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。
また、a−Si感光体搭載の京セラ製ページプリンタ(FS-3750)を用い、A4紙、10万枚の連続印刷を行った後の静電潜像現像用トナーの帯電量を、耐久後の帯電量とし、同様にブローオフ粉体帯電量測定装置を用いて測定した。
【0056】
▲2▼画像特性
得られた静電潜像現像用トナーを、上述したFS-3750を用いて、画像特性の評価を行った。すなわち、通常環境(20℃,65%RH)にて初期時に画像評価パターンを印字して、初期画像とし、ソリッド画像濃度をマクベス反射濃度計により測定した。また、同時に、カブリ性を、以下の基準により、目視にて行った。
その後、上述したFS-3750を用い、A4紙、10万枚連続印刷を行い、画像評価パターンを印字して耐久画像とし、ソリッド画像濃度をマクベス反射濃度計により測定した。また、同時に、カブリ性を、以下の基準により、目視にて行った。
○:カブリを全く生じていない。
△:ややカブリを生じている。
×:顕著なカブリを生じている。
【0057】
▲3▼像流れ性
得られた静電潜像現像用トナーについての像流れ性の評価を行った。すなわち、上述したFS-3750を用い、通常環境(20℃,65%RH)にて、A4紙、5、000枚の連続印刷を行った。その後、高温高湿環境(33℃,85%RH)下に一昼夜放置し、さらに画像評価パターンを印字して、像流れのレベルを下記基準に従い目視にて行った。
○:像流れは全く認められず、画像評価パターンを精度良く再現している。
△:像流れが少々認められ、画像評価パターンの一部が再現されていない。
×:顕著な像流れが少々認められ、画像評価パターンの再現性に劣る。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[ 実施例2〜5および比較例1〜2、1´〜2´ ]
(1)静電潜像現像用トナーの作成
所定粒径を有するアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの添加比率の影響を検討した。
そのため、表1に示す添加比率とした以外は、実施例1と同様に、静電潜像現像用トナーを作成した。
【0061】
(2)静電潜像現像用トナーの評価
得られた静電潜像現像用トナーを実施例1と同様に評価した。得られた結果を表2に示す。
結果から容易に理解できるように、所定粒径を有するアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとを混合使用することにより、帯電特性、画像特性、および像流れ特性において、それぞれバランスが良い静電潜像現像用トナーが得られることを確認した。
【0062】
[比較例3〜5]
(1)静電潜像現像用トナーの作成
比較例3では、平均粒子径が10nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200nm未満のルチル型酸化チタンとの混合の影響を検討した。
また、比較例4では、平均粒子径が10nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの混合の影響を検討した。
また、比較例5では、平均粒子径が10〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200nm未満のルチル型酸化チタンとの混合の影響を検討した。
そのため、それぞれ平均粒子径が異なるアナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとを使用した以外は、実施例1と同様に、静電潜像現像用トナーを作成した。
【0063】
(2)静電潜像現像用トナーの評価
得られた静電潜像現像用トナーを実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
なお、参考のため、実施例1の結果も併せて示す。
結果から容易に理解できるように、所定粒径を有するアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとを混合使用しなければ、帯電特性、画像特性、および像流れ特性において、それぞれバランスが良好な静電潜像現像用トナーが得られないことを確認した。
【0064】
【表3】
【0065】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の静電潜像現像用トナーによれば、所定平均粒子径を有するアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの双方をトナー粒子に外添処理することにより、耐久性、安定性に優れた帯電特性を付与し、いずれの温度、湿度下においても高画質の画像を安定して得ることができるようになった。また、本発明の静電潜像現像用トナーは、優れた研磨力を有しているため、像流れの画像欠陥を生じることなくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の静電潜像現像用トナーが適用される画像形成装置の断面図である。
【図2】 アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合と、帯電特性との関係を説明するために供する図である。
【図3】 アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合と、画像濃度との関係を説明するために供する図である。
【図4】 アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合と、カブリ性との関係を説明するために供する図である。
【図5】 アナターゼ型酸化チタン/ルチル型酸化チタンの添加割合と、像流れ性との関係を説明するために供する図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
2 ポリゴンミラー
5 光学電送機構
7 上部扉
9 感光体
10 現像器
31 トナーコンテナ
32 現像ローラ
33 供給ローラ
39 トナーセンサ
47 表示部
Claims (5)
- 平均粒子径が120〜200nm未満のアナターゼ型酸化チタンと、平均粒子径が200〜500nm未満のルチル型酸化チタンとの双方を、トナー粒子に対して、外添処理するとともに、前記アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの添加割合を、重量比で10:90〜90:10の範囲内の値とすることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
- 前記アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンの合計添加量を、前記トナー粒子に対して、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記静電潜像現像用トナーが有機感光体用トナーであって、前記アナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの体積固有抵抗をそれぞれ1×104〜1×1015Ω・cmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記静電潜像現像用トナーがアモルファスシリコン用トナーであって、前記アナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの体積固有抵抗をそれぞれ1×101〜1×107Ω・cmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンが、チタネート系カップリング剤でそれぞれ表面処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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