JP3886038B2 - 正帯電性トナーおよび画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アモルファスシリコン感光体等に適した正帯電性トナーおよび画像形成方法に関し、より詳細には、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を使用し、電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩化合物を使用した場合であっても、例えば、帯電量が20〜30μC/gと高く、しかも均一な正帯電特性を示すことができる正帯電性トナーおよび画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、極めて優れた耐久性が得られることから、アモルファスシリコン感光体を用いた画像形成方法が、有機感光体に代わって着目されている。しかしながら、アモルファスシリコン感光体には、その特性上、負帯電性トナーを使用することができない、すなわち、正帯電性トナーしか使用することができないという問題点が見られた。
【0003】
そこで、特公平7−66201号公報には、ポリエステル系樹脂に対して、正の帯電制御剤を含んで構成した電子写真用現像剤組成物が開示されている。より具体的には、バインダー樹脂と、着色剤とを含む現像剤であって、バインダー樹脂が3価以上のカルボキシル基を有し、酸価が5mgKOH/g以下であって、しかも水酸基価が60mgKOH/g以下のポリエステル系樹脂からなることを特徴としている。また、正帯電制御剤としては、ニグロシン化合物や、アミノ基を有するビニルポリマ等が開示されている。
しかしながら、開示された電子写真用現像剤組成物は、バインダー樹脂の分子量やガラス転移点、あるいは正帯電制御剤の種類や分子量等を制限していないためと思われるが、トナーの帯電量が極めて低いという問題が見られた。実際、特公平7−66201号公報に記載された実施例におけるトナー(トナー1〜4)の帯電量は、13.8〜15.5μC/gという極めて低い値であった。
【0004】
また、特開平8−82957号公報には、バインダー樹脂と、着色剤とを含む現像剤であって、バインダー樹脂が酸価5mgKOH/g以下のポリエステル系樹脂であり、かつ現像剤の最大正帯電量が30μC/g以下であることを特徴とした正帯電一成分非磁性現像剤が開示されている。また、正帯電制御剤として、テトラアルキルアンモニウム塩等の低分子化合物が開示されている。
しかしながら、かかる正帯電一成分非磁性現像剤は、特定のバインダー樹脂を使用しなければならない上に、バインダー樹脂の分子量やガラス転移点、あるいは正帯電制御剤の種類や分子量等を制限していないためと思われるが、帯電量の値が一般に低く、しかも得られる値がばらつきやすいという問題が見られた。実際、特開平8−82957号公報に記載された実施例1の最大正帯電量は15μC/gであり、実施例2の最大正帯電量は24μC/gであり、実施例3の最大正帯電量は11μC/gであり、実施例4の最大正帯電量は10μC/gであった。
【0005】
また、特開平9−230632号公報には、着色剤と、結着樹脂(バインダー樹脂)と、荷電制御剤とを含む非磁性一成分トナーであって、バインダー樹脂が酸価2.0mgKOH/g以下で、かつ誘電率が2.5以下であるポリエステル系樹脂からなり、荷電制御剤が正帯電性の荷電制御剤であることを特徴とした正帯電一成分非磁性現像剤が開示されている。そして、正帯電制御剤として、第四級アンモニウム塩は帯電特性が低くて使用することが困難である一方、ニグロシン化合物やトリフェニルメタン系化合物が好適である旨の説明がなされている。しかしながら、開示された正帯電一成分非磁性現像剤は、バインダー樹脂の分子量やガラス転移点、あるいは正帯電制御剤の種類や分子量等を制限していないとともに、誘電率の値が低いためと思われるが、トナーの帯電量が極めて低いという問題が見られた。実際、特開平9−230632号公報に記載された実施例1の帯電量は15.53μC/gであり、実施例2の最大正帯電量は16.58μC/gであり、実施例3の帯電量は13.82μC/gであった。
【0006】
一方、特開昭63−60458号公報および特開平3−80259号公報には、バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂やアクリル−スチレン樹脂等と、電荷制御剤としての重量平均分子量が制御された第四級アンモニウム塩基含有共重合体あるいはその変性物と、着色剤と、からなる電子写真用正帯電性トナーが開示されている。より具体的には、重量平均分子量が2,000〜10,000の範囲にある第四級アンモニウム塩基含有共重合体あるいはその変性物を使用するものである。
しかしながら、開示された電子写真用正帯電性トナーは、ポリエステル樹脂を用いた場合、特開昭63−60458号公報の実施例7や、特開平3−80259号公報の実施例8に記載されているように、それぞれガラス転移点が45℃未満と低く、架橋を施した場合であっても、51℃と依然低い値であり、それぞれ結晶化しやすいという問題が見られた。また、開示されたポリエステル樹脂は、それぞれ水酸基価も大きいために、さらに結晶化しやすい一方、保存安定性や流動性に乏しいという問題が見られた。したがって、ポリエステル樹脂等が結晶化した場合、得られるトナーの帯電量もそれにつれて低くなったり、あるいは、隣接するトナー同士が付着したりして、取り扱い性が著しく低下するという問題が見られた。
なお、特開昭63−60458号公報および特開平3−80259号公報には、アクリル−スチレン樹脂についての好ましいガラス転移点の値が記載されているものの、アクリル−スチレン樹脂とポリエステル樹脂とでは、結晶特性を始めとした樹脂特性が異なることから、これらのガラス転移点の値は、ポリエステル樹脂に関しては全く参考にならないものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の発明者らは、従来の課題を鋭意検討した結果、バインダー樹脂としてガラス転移点等が制御された特定のポリエステル樹脂を用いるとともに、電荷制御剤として重量平均分子量等が制御された特定の第四級アンモニウム塩基含有重合体を用い、かつ、かかる特定のポリエステル樹脂と、特定の第四級アンモニウム塩含有重合体と、の分子量比を所定の範囲とすることにより、ポリエステル樹脂の結晶化等の問題や付着の問題を回避できることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を用いた場合であっても正帯電特性に優れ、しかも取り扱い性や保管性等にも優れた正帯電性トナーおよび画像形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、バインダー樹脂と、電荷制御剤と、を含む正帯電性トナーであって、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とする正帯電性トナーが提供され、上述した問題を解決することができる。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
このようにガラス転移点が比較的高い非結晶ポリエステル樹脂を用いることにより、結晶化することが少なくなり、得られるトナーの帯電量を安定化させることができる。また、非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点が所定範囲の値であるため、保管時等における隣接トナー同士の付着についても有効に防止することができる一方、使用時の定着特性等の特性を劣化させることも少なくなる。
また、電荷発生剤と、非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が所定の範囲内であるため、得られるトナーの帯電量や定着特性等のバランスをさらに良好なものとすることができる。
【0009】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の添加量を、一成分現像剤の場合には、全体量に対して、30〜70重量%の範囲内の値とし、二成分現像剤の場合には、全体量に対して、70〜95重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、一成分現像剤およびニ成分現像剤のそれぞれの場合において、得られるトナーの帯電量や定着特性等のバランスをさらに良好なものとすることができる。
【0010】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の吸水率(21℃、24時間水中乾量基準)を、0.1〜1.0%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、得られるトナーの耐湿性を著しく向上させることができ、帯電特性をさらに安定なものとすることができる。
【0011】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価を、1〜50mgKOH/gの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、得られるトナーの耐湿性や結晶化防止性をさらに向上させることができ、そのため、帯電特性をさらに安定なものとすることができる。
【0012】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率(測定周波数100Hz)を2.5超〜3.5の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、環境条件によらず、得られるトナーの帯電量を一定範囲の値とすることができる。
なお、従来、特開平9−230632号公報に開示されているように、ポリエステル樹脂の誘電率が2.5以下であると、正帯電性の荷電制御剤として、第四級アンモニウム塩を使用した場合には、帯電量が増加しないという知見がある。しかしながら、本発明においては、逆に、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率を2.5を超えた値とすることにより、第四級アンモニウム塩を使用した場合であっても、適当な帯電量を得られることを確認しており、従来の知見が誤っていることを確認した。
【0014】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の軟化点を90〜150℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、得られるトナーの耐久性を向上させることができるばかりか、低温定着特性や結晶化防止性についてもさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、電荷制御剤の添加量を、全体量に対して、1〜15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、得られるトナーの帯電量や定着特性等のバランスをさらに良好なものとすることができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、バインダー樹脂と、電荷制御剤と、からなる正帯電性トナーを用いた画像形成方法であって、正帯電性トナーが、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とした画像形成方法である。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
このようにガラス転移点の値が制御された非結晶ポリエステル樹脂からなる正帯電性トナーを使用することにより、結晶化することが少なくなり、優れた印刷特性が得られるばかりか、アモルファスシリコン感光体に対するカブリ等も少なくすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の正帯電性トナーおよび画像形成方法に関する実施の形態を具体的に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、バインダー樹脂と、電荷制御剤と、を含む正帯電性トナーであって、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とする正帯電性トナーである。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
【0020】
1.バインダー樹脂
(1)種類
本発明における正帯電性トナーに使用するバインダー樹脂としては、非結晶ポリエステル樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものであれば好適に使用することができる。
このようなアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が例示される。
また、カルボン酸成分としては、2価または3価カルボン酸、あるいはこれらのカルボン酸における酸無水物、またはこれらのカルボン酸における低級アルキルエステルが用いられる。
より具体的には、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキルまたはアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が例示される。
【0021】
(2)酸価
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の酸価を5mgKOH/g以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/gを越えると、負の帯電特性が強くなり、トナーに対して安定して正帯電性を付与することが困難となり、アモルファスシリコン感光体に用いた場合、画像濃度が低くなったり、カブリが発生したりする場合があるためである。
ただし、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が過度に小さくなると、非結晶ポリエステル樹脂の材料選択の幅が過度に狭められたり、酸価を小さくするための精製に、過度に時間がかかる場合があるためである。
したがって、非結晶ポリエステル樹脂の酸価を0.1〜4mgKOH/gの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜3.5mgKOH/gの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0022】
ここで、図1〜図3を参照して、非結晶ポリエステルの酸価と、帯電特性、画像濃度、カブリ性との関係をそれぞれ説明する。
図1の横軸には、非結晶ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)を採って示してあり、図1の縦軸には、帯電量(μC/g)を採って示してある。そして、初期帯電量(μC/g)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後の帯電量(μC/g)を記号Bで示す点線で示してある。
この図1に示すように、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5以下の値、であれば、初期帯電量も耐久後の帯電量も安定していることが理解できる。しかしながら、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5を超えた値、例えば、酸価の値が7.8となると、帯電量の値が小さくなり、しかも耐久後には帯電量の値はさらに小さく変化している。
したがって、初期帯電量および耐久後の帯電量を安定させるためには、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価を5以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0023】
また、図2の横軸には、非結晶ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)を採って示してあり、図2の縦軸には、画像濃度(−)を採って示してある。そして、初期画像濃度(−)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後の画像濃度(−)を記号Bで示す点線で示してある。
この図2に示すように、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5以下の値であれば、初期も耐久後も1.40程度の画像濃度が得られ、安定していることが理解できる。しかしながら、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5を超えた値、例えば、非結晶ポリエステル樹脂の酸価の値が7.8となると、初期画像濃度が低くなり、しかも耐久後には画像濃度がさらに低下している。
したがって、初期および耐久後の画像濃度を安定させるためには、非結晶ポリエステル樹脂の酸価を5以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0024】
また、図3の横軸には、非結晶ポリエステル樹脂の酸価(mgKOH/g)を採って示してあり、図3の縦軸には、カブリ性の評価点(相対値)を採って示してある。そして、初期のカブリ性評価(相対値)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後のカブリ性評価(相対値)を記号Bで示す点線で示してある。なお、カブリ性の評価◎を5点とし、評価○を3点とし、カブリ性の評価△を1点とし、カブリ性の評価×を0点として、それぞれカブリ性の評価点を算出してある。
この図3に示すように、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5以下の値であれば、初期も耐久後もカブリ性の評価点は5点と安定していることが理解できる。しかしながら、かかる非結晶ポリエステル樹脂の酸価が5を超えた値、例えば、非結晶ポリエステル樹脂の酸価の値が7.8となると、初期のかぶり性の評価点が3となり、さらには耐久後のカブリ性の評価点が1まで低下している。
したがって、初期および耐久後のカブリ性を良好なものとするためには、非結晶ポリエステル樹脂の酸価を5以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0025】
(3)ガラス転移点(Tg)
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とすることが好ましく、58〜68℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点が55℃未満となると、得られたトナー同士が融着し、保存安定性や耐オフセット性が低下する場合があるためである。一方、かかる非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点が70℃を越えると、トナーの定着性が乏しくなる場合があるためである。
したがって、非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点を58〜68℃の範囲内の値とすることがより好ましく、59〜67℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。
【0026】
(4)重量平均分子量
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂が、重量平均分子量において、二つの分子量ピーク(低分子量ピークと、高分子量ピークと称する。)を有することが好ましい。具体的に、低分子量ピークが3、000〜20、000の範囲内であり、もう一つの高分子量ピークが300、000〜1、500、000の範囲内であり、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が10以上あるものが好ましい。
この理由は、非結晶ポリエステル樹脂の分子量ピークがこのような範囲内の値であれば、トナーを、低湿条件下でも容易に定着させることができ、また、耐オフセット性を向上させることもできるためである。
なお、バインダー樹脂の分子量は、分子量測定装置(GPC)を用いて、カラムからの溶出時間を測定し、標準ポリスチレン樹脂を用いて予め作成しておいた検量線と照らし合わせることにより、求めることができる。
【0027】
(5)吸水率
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の吸水率(21℃、24時間水中乾量基準)を、0.1〜1.0%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂の吸水率が0.1%未満となると、トナーが過度に帯電して、チャージアップが生じ易くなり、画像濃度が低下する場合があるためである。
一方、かかる非結晶ポリエステル樹脂の吸水率が1.0%を越えると、環境条件下に存在する水を吸湿して、帯電量が低下したり、像流れが発生しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、非結晶ポリエステル樹脂の吸水率を0.2〜0.9%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜0.8%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非結晶ポリエステル樹脂の吸水率は、21℃の水に測定試料を24時間浸漬する前後の重量変化から求めることができる。
【0028】
(6)水酸基価
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価を、1〜50mgKOH/gの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価が1mgKOH/g未満となると、チャージアップが生じ易くなり、画像濃度が低下する場合があるためである。一方、かかる非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価が50mgKOH/gを越えると、吸湿しやすくなって、帯電量が低下したり、像流れが発生しやすくなったりする場合があるためである。また、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価が50mgKOH/gを越えると、トナーが結晶化しやすくなり、保存安定性が低下する場合があるためである。
したがって、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価を2〜45mgKOH/gの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜40mgKOH/gの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価は、滴定法により求めることができる。
【0029】
(7)誘電率
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率(測定周波数100Hz)を2.5超〜3.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂の誘電率が2.5以下の値となると、帯電量が低下したり、像流れが発生したりする場合があるためである。一方、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率が3.5を越えると、チャージアップが生じ易くなり、画像濃度が低下する場合があるためである。
したがって、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率を2.5超〜3.4の範囲内の値とすることがより好ましく、2.5超〜3.3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非結晶ポリエステル樹脂の誘電率は、誘電率計を用いて、周波数100Hzの条件で、測定することができる。
【0030】
(8)破断伸び率
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の破断伸び率を50〜150%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる非結晶ポリエステル樹脂の破断伸び率が50%未満の値となると、得られるトナーの耐久性が低下したり、着色剤等との相溶性が低下したりする場合があるためである。一方、かかる破断伸び率が150%を越えると、得られるトナーが保管時に融着する場合があるためである。
したがって、かかる非結晶ポリエステル樹脂の破断伸び率を60〜140%の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜130%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、非結晶ポリエステル樹脂の破断伸び率は、引っ張り試験機を用いて、測定することができる。
【0031】
(9)軟化点
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂において、軟化点を110〜150℃の範囲内の値とすることが好ましく、120〜140℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかるバインダー樹脂の軟化点が110℃未満では、得られたトナー同士が融着し、保存安定性や耐オフセット性が低下する場合があるためである。一方、非結晶ポリエステル樹脂の軟化点が150℃を超えると、トナーの定着性が乏しくなる場合があるためである。
なお、非結晶ポリエステル樹脂の軟化点は、いわゆる落球法から求めることができる。
【0032】
(10)架橋構造
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、バインダー樹脂は、定着性が良好な観点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0033】
(11)添加量
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、非結晶ポリエステル樹脂の添加量を、トナーの全体量を100重量%としたときに、一成分現像剤の場合には、30〜70重量%の範囲内の値とし、二成分現像剤の場合には、70〜95重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、一成分現像剤の場合において、かかる非結晶ポリエステル樹脂の添加量が、30重量%未満では、チャージアップが生じ易くなり、画像濃度が低下する場合があるためである。一方、かかる非結晶ポリエステル樹脂の添加量が70重量%を越えると、帯電量が低下したり、像流れが発生しやすくなったりする場合があるためである。また、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価が70重量%を越えると、トナーが結晶化しやすくなり、保存安定性が低下する場合があるためである。
また、二成分現像剤の場合において、かかる非結晶ポリエステル樹脂の添加量が、70重量%未満では、チャージアップが生じ易くなり、画像濃度が低下する場合があるためである。一方、かかる非結晶ポリエステル樹脂の添加量が95重量%を越えると、帯電量が低下したり、像流れが発生しやすくなったりする場合があるためである。また、非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価が95重量%を越えると、トナーが結晶化しやすくなり、保存安定性が低下する場合があるためである。
【0034】
2.電荷制御剤
(1)種類
本発明における正帯電性トナーに使用する電荷制御剤としては、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体であれば特に制限されるものではない。すなわち、通常多用されているニグロシン化合物と異なり、高分子量の電荷制御剤を使用することにより、トナーにおける帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができるためである。
【0035】
(2)平均分子量
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、かかる電荷制御剤の平均分子量を、重量平均分子量において、3、000〜20、000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量がこのような範囲内の値であれば、トナーを、低湿条件下でも容易に定着させることができる一方、耐オフセット性についても向上させることもできるためである。また、このような重量平均分子量を有する電荷制御剤であれば、相互に付着することを有効に防止でき、取り扱いが容易になるためである。
【0036】
(3)添加量
また、本発明の正帯電性トナーを構成するにあたり、電荷制御剤の添加量を、トナーの全体量を100重量%としたときに、1〜15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電荷制御剤の添加量が1重量%未満となると、トナーに対して、安定して帯電特性を付与することが困難となり、画像濃度が低くなったり、耐久性が低下したりする場合があるためである。また、電荷制御剤の添加量が1重量%未満となると、トナーの分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなったりする場合があるためである。一方、かかる電荷制御剤の添加量が15重量%を超えると、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良や画像不良の原因となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、かかる電荷制御剤の添加量を、トナーの全体量を100重量%としたときに、1〜13重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
3.分子量比
また、本発明のトナーにおける非結晶ポリエステル樹脂と電荷制御剤との分子量比に関して、当該電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂で表される分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる分子量比が1.5未満となると、帯電量が低下し、画像濃度が低下したり、カブリが発生したりする場合があるためである。一方、分子量比が3.0を超える値となると、安定した帯電特性が得られなくなり、画像濃度が低下したり、カブリが発生したりする場合があるためである。
したがって、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.6〜2.9の範囲内の値とすることがより好ましく、1.7〜2.8の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
ここで、図4〜図6を参照して、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比と、帯電特性、画像濃度、カブリ性との関係をそれぞれ説明する。図4の横軸には、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を採って示してあり、図4の縦軸には、帯電量(μC/g)を採って示してある。そして、初期帯電量(μC/g)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後の帯電量(μC/g)を記号Bで示す点線で示してある。
この図4に示すように、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が1.5〜3.0の範囲内の値であれば、初期帯電量も耐久後の帯電量も安定していることが理解できる。しかしながら、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が3.0を超えた値、例えば、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が5.8となると、帯電量の値が小さくなり、しかも耐久後にはさらに小さい値に変化している。
したがって、初期帯電量および耐久後の帯電量を安定させるためには、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることが有効であることが理解される。
【0039】
また、図5の横軸には、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を採って示してあり、図5の縦軸には、画像濃度(−)を採って示してある。そして、初期画像濃度(−)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後の画像濃度(−)を記号Bで示す点線で示してある。
この図5に示すように、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が1.5〜3.0の範囲内の値であれば、初期も耐久後も1.40程度の画像濃度が得られ、安定していることが理解できる。しかしながら、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が3.0を超えた値、例えば、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が5.8となると、初期の画像濃度が1.2程度まで低下し、さらに耐久後には0.8程度まで、画像濃度が低下している。
したがって、初期および耐久後の画像濃度を安定させるためには、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることが有効であることが理解される。
【0040】
また、図6の横軸には、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を採って示してあり、図6の縦軸には、カブリ性の評価点(相対値)を採って示してある。そして、初期のカブリ性評価(相対値)を記号Aで示す実線で示してあり、耐久後のカブリ性評価(相対値)を記号Bで示す点線で示してある。なお、カブリ性の評価◎を5点とし、評価○を3点とし、カブリ性の評価△を1点とし、カブリ性の評価×を0点として、それぞれカブリ性の評価点を算出してある。この図6に示すように、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が1.5〜3.0の範囲内の値であれば、初期も耐久後もカブリ性の評価点は5点と安定していることが理解できる。しかしながら、かかる電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が3.0を超えた値、例えば、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比が5.8となると、初期も耐久後もカブリ性の評価点が0〜1程度まで低下している。
したがって、初期および耐久後のカブリ性を良好なものとするためには、電荷制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることが有効であることが理解される。
【0041】
4.ワックス類
また、トナーにおいて、定着性やオフセット性の効果を求めることから、ワックス類を添加することが好ましい。
このようなワックス類の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。なお、フィッシャートロプッシュワックスを使用する場合、その重量平均分子量が1000以上の値であり、かつ100〜120℃の範囲内にDSCによる吸熱ボトムピークを有するものがより好ましい。このようなフィッシャートロプッシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(H1の結晶化による高分子量グレード、吸熱ボトムピーク:106.5℃)、サゾールワックスC105(C1の分留法による精製品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)、サゾールワックスSPRAY(C105の微粒子品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)等が挙げられる。
また、ワックス類の添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、トナー全体量を100重量%としたときに、ワックス類の添加量を1〜5重量%の範囲内の値とするのが好ましい。ワックス類の添加量が1重量%未満となると、定着器へのオフセットや像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、ワックス類の添加量が5重量%を超えると、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下したり、ドラムフィルミングが発生したりする場合がある。
【0042】
5.磁性粉
また、トナーにおいて、公知の磁性粉をトナー中に分散させ磁性トナーとして構成することができる。好ましい磁性粉としては、フェライト、マグネタイト、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属もしくは合金、またはこれらの強磁性元素を含む化合物、あるいは、強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金等を挙げることができる。また、磁性粉の平均粒径を0.1〜1μmの範囲内の値とするのが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内の値とするのがより好ましい。この理由は、かかる平均粒径を有する磁性粉であれば、取り扱いが容易である一方、微粉末の形でトナーバインダー中に均一に分散することができるためである。
また、磁性粉の表面を、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理することが好ましい。このように表面処理することにより、磁性粉の吸湿性や分散性を改善することができるためである。
【0043】
6.外添粒子
トナーには、測定対象であって、定着ロールを汚染する要因となるものの、帯電特性、流動特性および研磨特性等を改善するために、酸化チタン、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の無機酸化物からなる外添粒子を添加することが好ましい。
また、これらの無機酸化物からなる外添粒子は、トナーの流動性や保存安定性をさらに向上させる目的で、コロイダルシリカや疎水性シリカ、あるいはシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって、表面処理することも好ましい。
【0044】
また、トナーにおいて、パーティクルアナライザーを用いて測定される無機酸化物の遊離率を10.0%以内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる遊離率が10.0%を超えると、無機酸化物が単独で存在する量が多くなり、トナー表面にホールドされていない場合があるためである。したがって、遊離率が所定値以上になると、無機酸化物が感光体において現像され易くなり、結果的に、定着前の記録媒体上の無機酸化物量を増加させる場合がある。
【0045】
7.平均粒径
また、トナーの平均粒径は特に制限されるものではないが、例えば、5〜12μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるトナーの平均粒径が5μm未満の値となると、トナーの帯電特性や流動特性が低下し、さらには、外添粒子の遊離率が高まる場合があるためであり、一方、かかるトナーの平均粒径が12μmを超えると、トナーの流動性が低下する場合があるためである。
したがって、トナーの平均粒径を、6〜11μmの範囲内の値とすることがより好ましく、7〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、バインダー樹脂と、電荷制御剤と、からなる正帯電性トナーを用いた画像形成方法であって、正帯電性トナーが、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とした画像形成方法である。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
【0047】
1.画像形成装置
(1)構成
画像形成方法を実施するにあたり、図7に示すような画像形成装置1に好適に使用することができる。すなわち、画像形成装置1には、図上、時計回りに回転する帯電型感光体ドラム(感光体)9の周囲に、回転方向に沿って、現像器10、転写ローラ19、クリーニングブレード13、及び帯電ユニット8が配設されている。そして、現像器10には、現像ローラ32が配設され、該現像ローラ32の表面は、感光体9の表面と所定間隔離間しているとともに、この現像器10に対して、トナーコンテナ31から適宜所定量のトナーが供給可能に構成されていることが好ましい。
また、感光体9の上部には、感光体9の表面に画像のドットを形成するための光学伝送機構5が設けられている。この光学伝送機構5は図示しないものの、レーザ光源からのレーザ光を反射するためのポリゴンミラー2と、レーザ光を反射ミラー4を介して帯電ユニット8と現像ローラ32との間の感光体表面に画像ドットを結像するための光学系3と、から構成されていることが好ましい。
また、画像形成装置1の下部には、後述する該装置を制御するための制御回路71が収納される基部54が設けられており、該基部54の上側には、記録紙コンテナ55が外部から着脱可能に配置されている。この記録紙コンテナ55には、転写前の記録紙を収納するための収納庫14が設けられていることが好ましい。
そして、押圧バネ52上に載置された記録紙は、搬送ローラ53及び15により、通路16および17を通って補助ローラ30に対面して設けられているレジストローラ18まで搬送されるように構成されている。
また、画像形成装置1の右側には、前方扉50が開閉可能に配置され、その前方扉に載置される記録紙は、搬送ローラ51により通路17に搬送されるように構成されている。そして、画像形成装置1の左側には、定着ローラ23及び24によって定着部が構成され、感光体9と転写ローラ19間を通過した記録紙は、これらの定着ローラ23、24によって定着される。また、定着後の記録紙は、搬送ローラ25、26により通路27を通って、さらにローラ28、29により転写済記録紙集積庫6に集積されるように構成されていることが好ましい。
さらにまた、画像記録装置1の上部には、各種情報を表示する表示部47、インストールスイッチ48及び電源スイッチ49が設けられていることが好ましい。
【0048】
(2)動作
このように構成された画像記録装置1は、電源スイッチ49を開閉することにより、メインモータ(図示しない)が、駆動を開始し、スタートスイッチ(図示しない)により感光体9が時計方向に回転して、光学伝送機構5が、感光体9の表面上に、画像を形成することができるように構成してあることが好ましい。
そして、形成された画像は、現像器10の現像ローラ32によって現像され、現像されたトナー画像は、転写ローラ19によって記録紙に転写される。さらにトナーが転写された記録紙は、定着ローラ23、24によって、定着固定され、ローラ25、27、28、29により集積庫6に搬送されて集積されることになる。なお、現像ローラ32によって、現像されなかったトナーは、クリーニングブレード13により回収されることになる。
【0049】
2.正帯電性トナー
第2の実施形態で使用する静電潜像現像用トナーは、バインダー樹脂と、電荷制御剤と、を含む正帯電性トナーであって、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴としており、第1の実施形態で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
【0050】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、特に理由なく、以下の説明に本発明の範囲は限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
1.トナーの作成
(1)トナー粒子の作成
以下の配合割合となるように非結晶ポリエステル樹脂(酸価:2.6mgKOH/g、Tg:60.1℃、Mw:6000)と、低分子量ポリエチレンワックスと、電荷制御剤と、磁性粉と、を2軸押出器にて溶融混練した後、冷却した。次いで、粉砕工程、分級工程を経て、平均粒径7μmのトナー粒子を得た。
▲1▼非結晶ポリエステル樹脂 56重量部
▲2▼低分子量ポリエチレンワックス 3重量部
▲3▼電荷制御剤 1重量部
▲4▼磁性粉 40重量部
【0052】
(2)外添粒子の添加
得られたトナー粒子100重量部に対して、以下の割合となるように、酸化チタンと、シリカとをそれぞれ外添して実施例1のトナーを作成した。
▲1▼トナー粒子 100重量部
▲2▼酸化チタン 2重量部
▲3▼シリカ 0.5重量部
【0053】
2.トナーの評価
得られたトナーを、磁性一成分現像剤として構成し、以下の評価を行った。
【0054】
(1)帯電特性
得られたトナー4重量部と、フェライトキャリア100重量部とを混合して、通常環境にて、60分間摩擦帯電させた時の帯電量(μC/g)を初期帯電量とした。また、トナーを用いて磁性一成分現像剤とし、a−Si感光体搭載京セラ製ページプリンタ(FS−1800)を用い、10万枚連続通紙を行った時のトナーの帯電量を耐久後の帯電量とした。
なお、それぞれの帯電量をブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)社製)を用いて測定した。
【0055】
(2)画像特性
トナーを用いて、磁性一成分現像剤とし、a−Si感光体搭載京セラ製ページプリンタ(FS−1800)を用い、画像特性の評価を行った。通常環境(20℃、65%RH)にて初期時に画像評価パターン(ソリッドパターン)を印字して初期画像とした。次いで、10万枚連続通紙を行った後、再度画像評価パターン(ソリッドパターン)を印字して、耐久画像とした。そして、得られた初期画像および耐久画像における画像濃度を、マクベス反射濃度計を用いて測定した。また、同時にカブリ性(バックグラウンドへの印刷性)を目視観察し、以下の基準に拠って評価した。
◎:カブリが全く生じていない。
○:カブリがほとんど生じていない。
△:カブリが少々生じている。
×:カブリが顕著に生じている。
【0056】
(3)定着特性
トナーを用いて、磁性一成分現像剤とし、a−Si感光体搭載京セラ製ページプリンタ(FS−1800)を任意の定着温度に制御することにより、定着率およびオフセット性の評価を行った。ここで、最低定着温度とは、定着率が95%を越える際の定着ローラーの温度をいう。
なお、定着率とは、綿布で包んだ黄銅製分銅で1kgの荷重をかけ、印字した定着評価パターンのソリッド画像を10往復擦り、擦る前後での画像濃度をマクベス反射濃度計にて測定したときの濃度比率である。
【0057】
[実施例2〜4および比較例1、5〜8]
表1に示すように、トナーバインダーの酸価と、ガラス転移点(Tg)と、トナーバインダーおよび電荷制御剤の分子量を変えたほかは、実施例1と同様にトナーを製造し、トナーの評価を行った。表2に示す結果から理解できるように、実施例2〜4では、非結晶ポリエステル樹脂と、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を所定量含むものであることから、帯電特性、画像特性、定着特性においてバランスが良いトナーが得られることが確認された。一方、比較例1では、トナーバインダーの酸価が所定の範囲外であり、比較例5、6ではトナーバインダー、荷電制御剤の分子量がそれぞれ範囲外であり、比較例7、8では、トナーバインダーのガラス転移点(Tg)が範囲外となっている。そのために、それぞれ、帯電特性、画像特性(画像濃度およびカブリ)および定着性が低下する場合が見られた。
【0058】
[比較例2〜4]
表1に示すように、比較例2では電荷制御剤をニグロシン染料に変えたほかは、実施例1と同様に、比較例3ではトナーバインダーをスチレンーアクリル共重合体樹脂に変えたほかは、実施例1と同様に、比較例4ではトナーバインダーをスチレンーアクリル共重合体樹脂に変えるとともに、電荷制御剤をニグロシン染料に変え、トナーを製造し、トナーの評価を行った。表2に示す結果から理解できるように、それぞれ、帯電特性や、画像特性や、定着特性および耐久性において低下する場合が見られた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の正帯電性トナーによれば、所定範囲のガラス転移点を有する非結晶ポリエステル樹脂を用いることにより、結晶化することが少なくなり、得られるトナーの帯電量もそれにつれて安定化させることができるようになった。また、このように非結晶ポリエステル樹脂のガラス転移点が所定範囲の値であるため、保管時等に隣接するトナー同士が付着することを容易に防止することができる一方、使用時の定着特性等を損なうことも少なくなった。
また、本発明の画像形成方法によれば、所定範囲のガラス転移点を有する非結晶ポリエステル樹脂からなる正帯電性トナーを用いることにより、結晶化することが少なくなり、優れた印刷特性が得られるばかりか、アモルファスシリコン感光体に対するカブリ等も少なくすることができるようになった。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】 非結晶ポリエステル樹脂の酸価と帯電特性との関係を示す図である。
【図2】 非結晶ポリエステル樹脂の酸価と画像濃度との関係を示す図である。
【図3】 非結晶ポリエステル樹脂の酸価とカブリ性との関係を示す図である。
【図4】 荷電制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比と帯電特性との関係を示す図である。
【図5】 荷電制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比と画像濃度との関係を示す図である。
【図6】 荷電制御剤の分子量/非結晶ポリエステル樹脂の分子量比とカブリ性との関係を示す図である。
【図7】 プリンターの内部構造や動作を説明するために供する図である。
【0063】
【符号の説明】
1:画像形成装置
2:ポリゴンミラー
5:光学電送機構
7:上部扉
9:感光体
10:現像器
31:トナーコンテナ
32:現像ローラ
33:供給ローラ
39:トナーセンサ
47:表示部
Claims (8)
- バインダー樹脂と、電荷制御剤と、を含む正帯電性トナーであって、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、前記電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とする正帯電性トナー。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。 - 前記非結晶ポリエステル樹脂の添加量を、一成分現像剤の場合には、全体量に対して、30〜70重量%の範囲内の値とし、二成分現像剤の場合には、全体量に対して、70〜95重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の正帯電性トナー。
- 前記非結晶ポリエステル樹脂の吸水率(21℃、24時間水中乾量基準)を、0.1〜1.0%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の正帯電性トナー。
- 前記非結晶ポリエステル樹脂の水酸基価を1〜50mgKOH/gの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
- 前記非結晶ポリエステル樹脂の誘電率(測定周波数100Hz)を2.5超〜3.5の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
- 前記非結晶ポリエステル樹脂の軟化点を90〜150℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
- 前記電荷制御剤の添加量を、全体量に対して、1〜15重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
- バインダー樹脂と、電荷制御剤と、からなる正帯電性トナーを用いた画像形成方法であって、前記正帯電性トナーが、下記特性(1)を有するバインダー樹脂と、下記特性(2)を有する電荷制御剤と、を含有するとともに、前記電荷制御剤の分子量/バインダー樹脂としての非結晶ポリエステル樹脂の分子量比を1.5〜3.0の範囲内の値とすることを特徴とした画像形成方法。
(1)バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂である非結晶ポリエステル樹脂を使用し、その酸価を5mgKOH/g以下の値とするとともに、ガラス転移点を55〜70℃の範囲内の値とし、さらに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
(2)電荷制御剤として、第四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を使用するとともに、重量平均分子量を3、000〜20、000の範囲内の値とする。
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