JP3888448B2 - 簡易開口部補強構造 - Google Patents

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JP3888448B2 JP2002124182A JP2002124182A JP3888448B2 JP 3888448 B2 JP3888448 B2 JP 3888448B2 JP 2002124182 A JP2002124182 A JP 2002124182A JP 2002124182 A JP2002124182 A JP 2002124182A JP 3888448 B2 JP3888448 B2 JP 3888448B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ALCパネルで構成された壁に設ける開口部を、簡易に補強する構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、ALCパネル1、2、3で構成された壁と、壁に設けられる開口部5とを示す。該開口部5には、窓または扉が取り付けられるが、それにかかる風荷重に耐え得るように、開口部5を補強する必要がある。
【0003】
従来の開口部補強構造の一例を図7に示す。
【0004】
従来は、ALCパネル1の小口同士が摺動可能となるロッキング工法の場合に、ALCパネル1の建て込みに先立って、2本の縦補強鋼材(アングル材)25を、上下の梁4にピースアングルまたは定規アングルを使用して、溶接固定し、該縦補強鋼材25を連結するように、2本の横補強鋼材(アングル材)24を溶接固定していた。縦補強鋼材25は、開口部の左右両縁を補強し、横補強鋼材24は、開口部の上下両縁を補強していた。
【0005】
その後、ALCパネル1を、順次、建て込むことにより、開口部に取り付けられた窓や扉にかかる風荷重を、縦補強鋼材25および横補強鋼材24により、梁4に伝えている。特に、風荷重が2本の縦補強鋼材25を介して、上下の梁にかかるので、補強力が大きく、かつ、地震時にALCパネル1同士が摺動する面内変形追従機能を妨げない。
【0006】
しかし、従来の開口部補強構造では、4本の補強鋼材24、25が必要であるため、部品コストがかさみ、特に、縦補強鋼材25は、梁4の間隔以上の長さを必要としていた。また、補強鋼材24、25同士および梁4との間の固定に、溶接を必要とするので、作業の手間が非常に大きく、作業コストが上昇するという問題があった。さらに、開口部に接する左右のALCパネル1の小口面は、補強鋼材25がALCパネル1の面から出ないように、補強鋼材の厚さ分だけ切削する必要があり、作業コストが上昇していた。また、このような切削加工は、施工現場の作業環境を害していた。
【0007】
また、4本の補強鋼材24、25を溶接固定する工程と、その後にALCパネル1を建て込む工程が同時に行えないことから、施工期間が長いという問題もあった。
【0008】
前述の縦補強鋼材を省略した従来の開口部補強構造を、図8に示す。
【0009】
最近では、縦補強鋼材を省略し、開口部に接する左右のALCパネル1に小口面から挿入したアンカー金物27に、U字形の専用金物26を溶接により固定して、横補強鋼材とする構造などが開発された。開口上下のALCパネルは、当該横補強鋼材に金物28で溶接固定される。しかし、溶接作業の手間が少なくなってきているが、溶接作業に必要なアース措置を別途用意する必要があるという施工性の問題や、室内側にALCパネル固定用の金物28が見えるという意匠性の問題などが多く存在する。
【0010】
また、この開口部補強構造では、横補強鋼材26は、ALCパネル1に打込まれたアンカー金物27に溶接固定されており、面内変形時に可動でないため、地震等の面内変形において、変形追従機能を阻害するという問題もあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の課題を解決し、開口部を十分に補強しながら、従来は必要としていた長い補強鋼材を不要とし、煩雑な溶接作業や小口切削加工が必要なく、簡単に施工でき、ALCパネルの建込みとほぼ並行して施工が可能で、施工期間を短縮することが可能で、地震等の変形に対して高い効果が得られる変形追従機能を維持可能で、コストを下げることを可能とする開口部の補強構造を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の簡易開口部補強構造は、ALCパネルが相互に摺動可能で同一平面状に並べられて構成される壁において、下側に位置する1枚以上の下側ALCパネル、上側に位置する1枚以上の上側ALCパネル、および水平方向両隣に接する両側ALCパネルのそれぞれの小口面で囲まれて形成される開口部を補強する構造である。開口部に面する下側ALCパネルの上側小口面および両側ALCパネルのそれぞれの小口面の一部にわたって伸びる例えばU字形やコ字形の第1の補強鋼材を有し、開口部に面する上側ALCパネルの下側小口面および両側ALCパネルのそれぞれの小口面の一部とにわたって伸びる例えばU字形やコ字形の第2の補強鋼材を有し、それぞれの補強鋼材には、接するALCパネルの1枚当たりに1つの取付け孔を設けて、該取付け孔を介して、アンカー金具によりALCパネルを補強鋼材に取り付けられ、該アンカー金具は該取付け孔よりも大きいプレートと、該プレートから伸び出て該取付け孔を貫通する棒状体と、該棒状体を取付け孔に対しバネ力で支える弾性部材とを有する。
【0013】
弾性部材は、棒状体の周囲に、補強鋼材の取付け孔への装着が容易で、かつ脱落困難な弾性部分を有することが望ましい。
【0014】
両側ALCパネルの小口面に接する位置に設けられた補強鋼材の取付け孔は、ALCパネルの長さ方向に、ALCパネルの自由な揺動を可能とする長さを有するルーズ孔であることが望ましい。
【0015】
弾性部材は、プレートをはめ合いで収容する基部を有し、一対の弾性部分が基部から伸び出ているのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図面に基づいて、本発明を説明する。
【0017】
図1は、本発明の開口部構造の一実施例を示す一部省略斜視図である。
【0018】
本発明の簡易開口部補強構造は、ALCパネル1が相互に摺動可能で同一平面状に並べられて構成される壁において、下側に位置する1枚以上の下側ALCパネル3、上側に位置する1枚以上の上側ALCパネル(図1では省略した)、および水平方向両隣に接する両側ALCパネル1のそれぞれの小口面で囲まれて形成される開口部を補強する構造である。
【0019】
開口部に面する下側ALCパネル3の上側小口面および両側ALCパネル1のそれぞれの小口面の一部にわたって、U字形の補強鋼材14を有する。開口部の上側も同様に補強鋼材14を有する。
【0020】
アンカー金具8は、図2に斜視図を示したように、プレート9と、該プレート9から伸び出る棒状体10と、プレート9に脱着可能な弾性体11とを有する。図示の場合、プレート9は円板状である。棒状体10にはメッキなどの表面処理が施されており、ALCパネルの穴に該棒状体10を挿入する時に、該表面処理を損傷しないように、かつ最適な揺動が可能となるようなキャップ10aを備える。さらに、弾性体11の弾性部分は、プレート9にはまり合う基部11aと該基部11aから伸びる一対の弾性部分(ばね部)11bとを有する。基部11aは、プレート9の厚さおよび外寸(図示の場合、外径)に対応したチャンネル形になっている。弾性部分(ばね部)11bは、チャンネル状基部11aの内縁から、波形に伸びて、弾性力を得る。従って、弾性体11は、プレート9を覆うように囲んでから、棒状体10の周囲に伸び、取付け孔に対し、突っ張る形で棒状体10を支える。該弾性体11は、補強鋼材の孔への装着が容易で、かつ脱落困難となるように、公知の素材(例えばステンレス鋼)から選定し、かつ基部11aおよび弾性部分(ばね部)11bの形状とする。
【0021】
アンカー金具8の長さは、ALCパネルに埋設され、小口面に並行に横切る補強鉄筋に達し、若干越える程度の長さとする。補強鉄筋は、通常、主面に並行な2枚の鉄筋マットで構成されるので、小口面の中央に設けた穴にアンカー金具を挿入すれば、アンカー金具の先端がそれぞれの補強鉄筋を越える位置まで伸びることになる。このような位置関係とすることにより、ALCパネルに強い揺動が起きて、一部が損壊しても、アンカー金具の先端が補強鉄筋に当たって、ALCパネルの落下を防止することができる。
【0022】
それぞれの補強鋼材14には、図3に斜視図を示したように、接するALCパネルの1枚当たりに1つの取付け孔12、17を設ける。両側ALCパネル1の小口面に接する位置に設けられた補強鋼材14の取付け孔17は、ALCパネル1の長さ方向に、ALCパネル1の自由な揺動を可能とする長さを有するルーズ孔とする。補強鋼材14は、必要な強度の鋼板を折り曲げて形成すればよい。
【0023】
そして、図4に示した縦断面図のように、アンカー金具8により、ALCパネル2を補強鋼材14に、揺動自在に取り付け、図5に横断面図を示したように、アンカー金具8により、ALCパネル1を補強鋼材14に、揺動自在に取り付ける。
【0024】
本発明の簡易開口部補強構造により、補強鋼材14を無溶接で取り付け可能となる。さらに、アンカー金具8に備えた弾性体11が、補強鋼材14の取付孔に容易に挿入可能となり、そのバネ力によりガタツキを防止でき、弾性体11によりアンカー金具8が脱落しない効果が得られる。
【0025】
さらに、両側ALCパネル1の小口面に接する位置に設けられた補強鋼材14の取付け孔17をルーズ孔として、該ルーズ孔の長さを、ALCパネル1の長さ方向に、ALCパネル1の自由な揺動を可能とすることにより、面内(垂直)方向において、アンカー金具8と補強鋼材14は摺動可能であり、地震時には相対的に摺動させることにより外力を逃がす免震構造が得られる。本発明により、このような壁のロッキング工法におけるALCパネルの摺動を妨げることが無くなり、地震に強い構造が得られる。
【0026】
(実施例1)
図1に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【0027】
本実施例の簡易開口部補強構造は、ALCパネル1が相互に摺動可能で同一平面状に並べられて構成される壁において、下側に位置する2枚の下側ALCパネル3、上側に位置する2枚の上側ALCパネル(図1では省略した)、および水平方向両隣に接する両側ALCパネル1のそれぞれの小口面で囲まれて形成される開口部を補強する構造である。
【0028】
各ALCパネル1、3の長辺小口面の目地部には、モルタルのような接着材は充填されずに、小口面同士が摺動可能に接する。
【0029】
ALCパネル1は、例えば、100×600×3200mmの大きさを有し、ALCパネル3は、例えば、100×600×1000mmの大きさを有する。小口面の中央には、φ19mmのアンカー挿入用の穴が開けられて、アンカー金具8が挿入される。
【0030】
開口部に面する下側ALCパネル3の上側小口面および両側ALCパネル1のそれぞれの小口面の一部にわたって、U字形の補強鋼材14を有する。開口部の上側も同様に補強鋼材14を有する。
【0031】
アンカー金具8は、図2に斜視図を示したように、φ20mm、厚さ5mmのプレート9と、φ16mm、長さ100mmの棒状体10が一体に接合され、プレート9には突起を有する弾性体11が取り付けられる。プレート9は鋼材から、棒状体10は鋼材から、弾性体11はステンレス材からなる。
【0032】
棒状体10を、ALCパネルの穴に挿入するときに、棒状体10の表面処理を損傷しないように、かつ最適な揺動が可能となるようなキャップ10aを備える。キャップ10aはゴム材からなる。
【0033】
それぞれの補強鋼材14は、幅50mmとして、図3に斜視図を示したように、接するALCパネルの1枚当たりに1つの取付け孔12、17を設ける。取付け孔12は、16.5×18.5mm、取付け孔17は、16.5×25.0mmとした。
【0034】
そして、図4に示した縦断面図のように、アンカー金具8により、ALCパネル2を補強鋼材14に、揺動自在に取り付け、図5に横断面図を示したように、アンカー金具8により、ALCパネル1を補強鋼材14に、揺動自在に取り付ける。さらに、補強鋼材14の面外方向への回転を防止する目的で、補強鋼材14の垂直部15には、カットネイル用ルーズ孔32を設けてカットネイル31等の釘にて補強鋼材14とALCパネル1とを固定する。カットネイル31等による固定により、補強鋼材14と両側ALCパネル1の摺動性を妨げないように、取付け孔17と同様に、ALCパネル1の長さ方向に長いルーズ孔32にカットネイル等を通す。
【0035】
また、両側ALCパネル1の長辺小口面には、絶縁物30を貼付しその上からカットネイル31等の釘で座金を均等な間隔で取り付け、サッシ周りに充填するモルタルによる接着を防止する。モルタルがALCパネル1の小口面に接着すると、地震時にALCパネル同士の摺動性や、ALCパネルと補強鋼材との摺動性を妨げる恐れがあり、面内変形に追従できずに、ALCパネルに亀裂が発生する恐れがあるために、このような対策を行うと効果的になる。
【0036】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の簡易開口部補強構造は、ALCパネル同士の摺動性や、ALCパネルと補強鋼材との摺動性を損なわないので、地震に強い免震工法に適し、かつ、使用鋼材、金物、作業手間を少なくすることが可能となり、コストダウンを図ることができ、高品質で、低価格の補強構造である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の開口部構造の一実施例を示す一部省略斜視図である。
【図2】 本発明のアンカー金具の一実施例を示す斜視図である。
【図3】 本発明の補強鋼材の一実施例を示す斜視図である。
【図4】 本発明の開口部構造の一実施例を示す縦断面図である。
【図5】 本発明の開口部構造の一実施例を示す横断面図である。
【図6】 ALCパネルで構成された壁と、壁に設けられる開口部とを示す斜視図である。
【図7】 従来の開口部構造の一例を示す一部省略斜視図である。
【図8】 従来の開口部構造の一例を示す一部省略斜視図である。
【符号の説明】
1 開口部両側ALCパネル
2 開口部上側ALCパネル
3 開口部下側ALCパネル
4 建物躯体
5 開口部
7 アンカー挿入穴
8 アンカー金具
9 プレート
10 棒状体
10a キャップ
11 弾性体
11a 基部
11b 弾性部分
12 取付孔
14 補強鋼材
15 垂直部
16 水平部
17 ルーズ孔
19 床パネル
20 パイプアンカー
21 イナズマプレート
22 定規アングル
23 支持金具
24 横補強鋼材
25 縦補強鋼材
26 U字補強鋼材
27 専用金物
28 L字プレート
30 絶縁物
31 カットネイル
32 カットネイル用ルーズ孔

Claims (3)

  1. ALCパネルが相互に摺動可能で同一平面状に並べられて構成される壁において、下側に位置する1枚以上の下側ALCパネル、上側に位置する1枚以上の上側ALCパネル、および水平方向両隣に接する両側ALCパネルのそれぞれの小口面で囲まれて形成される開口部を補強する構造であって、開口部に面する下側ALCパネルの上側小口面および両側ALCパネルのそれぞれの小口面の一部にわたって伸びる第1の補強鋼材を有し、開口部に面する上側ALCパネルの下側小口面および両側ALCパネルのそれぞれの小口面の一部とにわたって伸びる第2の補強鋼材を有し、それぞれの補強鋼材には、接するALCパネルの1枚当たりに1つの取付け孔を設けて、該取付け孔を介してアンカー金具によりALCパネルを補強鋼材に取り付けられ、該アンカー金具は、該取付け孔よりも大きいプレートと、該プレートから伸び出て該取付け孔を貫通する棒状体と、該棒状体を取付け孔に対しバネ力で支える弾性部材とを有することを特徴とする簡易開口部補強構造。
  2. 弾性部材は、前記棒状体の周囲に、補強鋼材の取付け孔への装着が容易で、かつ脱落困難な弾性部分を有することを特徴とする請求項1に記載の簡易開口部補強構造。
  3. 両側ALCパネルの小口面に接する位置に設けられた補強鋼材の取付け孔は、ALCパネルの長さ方向に、ALCパネルの自由な揺動を可能とする長さを有するルーズ孔であることを特徴とする請求項1に記載の簡易開口部補強構造。
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