JP3888312B2 - 撚糸機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撚糸機の制御装置に関し、特にスピンドル駆動モータ又は巻取用モータの減速停止度合いを制御するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、給糸パッケージから解舒された糸に撚りを付与するための撚糸機が知られている。その多くは、多数並設された各スピンドル軸に一帯の駆動ベルトを巻回し、該駆動ベルトにより一個の駆動モータにて多数のスピンドル軸を同時に駆動するように構成した一斉駆動型の撚糸機である。このような撚糸機では、給糸パッケージから解舒された糸を巻き取るための巻取装置のドラムの駆動は、スピンドル軸駆動用のモータから伝動装置を介して駆動力を伝達して行うようにしていた。
一方、近年においては、駆動時の騒音や動力損失を低減するべく、各スピンドル装置にそれぞれ駆動モータを設け、該駆動モータによりスピンドル軸を直接駆動するように構成した単錘駆動型の撚糸機も考案されている。この単錘駆動型の撚糸機では、巻取装置駆動用のモータをスピンドル装置駆動用のモータとは別に設けて、該巻取装置のドラムを駆動するようにしていた。
スピンドル毎に駆動モータを設けた撚糸機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
【特許文献1】
特許第3180754号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の一斉駆動型の撚糸機では、同じ駆動モータでスピンドル軸と巻取装置のドラムとを駆動しているので、該スピンドル軸の回転とドラムの回転とは必ず同期することとなる。従って、停電時には、スピンドル軸の回転及びドラムの回転に対して特段の制御をすることなく、フリーランさせながら該スピンドル軸及びドラムを停止させるようにしている。
一方、単錘駆動型の撚糸機では、スピンドル軸と巻取装置のドラムとは別の駆動モータにて駆動されているので、撚り数変動がないようにするために、該スピンドル軸の回転とドラムの回転とが同期するように、常に両者の回転を電気的に制御しておく必要がある。
そして、停電時においても両者の回転を同期させるために制御する必要があるため、撚糸機には、停電後の制御を行うためのバックアップ電源が備えられている。
しかし、バックアップ電源は、使用する頻度が多いものではないため、撚糸機のサイズやコスト的な理由から容量をあまり大きくすることができない。
従って、スピンドル軸の回転及びドラムの回転の制御を長時間に渡ってすることはできず、停電発生からバックアップ電源が切れるまでの短時間でスピンドル軸及びドラムを減速停止させる必要がある。
【0005】
ここで、撚糸機のスピンドル装置においては、糸の給糸パッケージからの解舒張力を一定にして安定したバルーニングを得るために、スピンドル軸と一体的に回転するストレージディスクに1周り〜2周り程度糸を巻き付けることが行われている。つまり、ストレージディスクに糸を巻き付けることにより摩擦張力が得られるため、解舒張力の変化に応じて巻き付け量が変化し、結果的に糸がストレージディスクから離れる部分では常に張力が一定になるようにしている。
この場合、図6、図7に示すように、解舒張力が小さいときには円盤への巻付が多くなって摩擦張力が多くなり(図6)、解舒張力が大きいときには円盤への巻付が少なくなって摩擦張力が減少する。また、ストレージディスクへの糸の巻き付き量を遅れ角という。
従って、スピンドルが高速回転している通常運転時には、遅れ角は大きくなり、スピンドルの回転速度が減少して停止する際には遅れ角は小さくなって、やがて遅れ角は0となる。
そして、スピンドル回転の加減速時など、遅れ角が変化すると、撚りがかけられる糸の長さも変化するため、単位長さ当たりの撚り数がばらついてしまうこととなる。
【0006】
このように、停電によりスピンドル回転が減速した場合など、遅れ角による糸長の変化があった場合でも、従来のベルト駆動される一斉駆動型の撚糸機では、スピンドル及びドラムはフリーランしながら長時間かけて減速停止するので、遅れ角による糸長の変化に比べて、減速開始から停止するまでの糸の巻取量が多いため、撚り数に与える影響は少ない。つまり、減速度合いが小さく、遅れ角も序々に減少していくため、撚りがかけられる部分の糸長の変化が少なく、撚り数の変化も小さくなる。
これに対し、短時間でスピンドル軸及びドラムを減速停止させる必要がある単錘駆動型の撚糸機では、減速開始から停止するまでの糸の巻取量が少ないため、遅れ角による撚りがかけられる部分の糸長変化が、撚り数に与える影響が多くなってしまい、撚糸の撚り数精度が悪くなってしまうという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、給糸パッケージから解舒された糸に撚りを付与するためのスピンドル装置と、スピンドル装置のスピンドル軸を駆動するためのスピンドル駆動モータと、スピンドル軸と一体的に回転するストレージディスクと、給糸パッケージから解舒された糸を巻き取るための巻取装置と、巻取装置を駆動するための巻取用モータと、停電を検出したときにスピンドル駆動モータを減速停止させるためのスピンドル駆動モータ減速停止制御手段と、停電を検出したときに巻取用モータを減速停止させるための巻取用モータ減速停止制御手段とを備える撚糸機において、停電発生による減速制御時には、スピンドル駆動モータと巻取用モータとを同期させる場合と比較して、巻取用モータを減速制御初期の間は相対的に高い回転速度で維持し、その後急減速させて、巻取用モータの停止時期を、スピンドル駆動モータの停止時期と同時期もしくは若干前後する時期にする、ものである。
なお、前記減速停止度合い(減速制御初期は高めの回転速度で、その後急減速させる度合い)は、時間経過とともに曲線状に減速していく態様も、時間経過とともに折れ線状に減速していく態様も含む。
【0008】
請求項2においては、撚糸処理を行う錘を複数備え、各錘のスピンドル装置毎にスピンドル駆動モータを設けたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明の制御装置を備えた単錘駆動型撚糸機を示す全体正面図、図2は単錘駆動型撚糸機の一錘分の構成を示す斜視図、図3は同じく単錘駆動型撚糸機のスピンドル装置を正面から見て示す一部断面図、図4は単錘駆動型撚糸機の制御装置を示すブロック図、図5は減速停止制御時におけるスピンドル駆動モータ及びドラム駆動モータの減速停止度合いを示す図、図6は遅れ角が大きい状態のストレージディスクを示す斜視図、図7は遅れ角が小さい状態のストレージディスクを示す斜視図である。
【0011】
本発明の一実施形態例について説明する。
図1においては、原糸を撚糸し、撚糸した糸を巻き取る処理を行う錘Sが多数並設された単錘駆動型二重撚糸機が示されている。各錘Sには、下方にスピンドル装置1が、上方に巻取装置2が設けられ、スピンドル装置1と巻取装置2との間には、ガイドローラ49・50、フィードローラ8及びトラバースガイド7などが設けられている。各錘Sのスピンドル装置1は一本のスピンドル軸4を備え、該スピンドル軸4と、該スピンドル軸4の中間部に位置するストレージディスク15とは一体的に回転可能に構成され、該スピンドル軸4は各スピンドル装置1にそれぞれ設けられたモータであるスピンドル駆動モータ10により回転駆動され、これによりストレージディスク15が一体的に回転する。
【0012】
該ストレージディスク15は、スピンドル駆動モータ10の上方に配置され、スピンドル装置1はスピンドル駆動モータ10の下方でフレーム9に支持されている。
そして、ストレージディスク15を、スピンドル軸4を介して回転駆動することにより、該ストレージディスク15の上方で静止状に配設された給糸パッケージ11から引き出される原糸12aに撚りをかけるように構成している。
また、各撚糸機の駆動状態は制御装置14により制御されている。
【0013】
図2、図3おいて、スピンドル装置1の前記給糸パッケージ11は、ストレージディスク15の上方に配置された静止盤21上に載置されており、該静止盤21はスピンドル軸4の上部に回転可能に嵌入して支持されている。該静止盤21内には静止磁石21aが固設され、該静止磁石21aと、静止盤21の外周部に非接触状態でフレーム9に固定して配置される吸引磁石22との吸引力により、静止盤21が静止状態を保持するようにしている。また、給糸パッケージ11は、その外周を給糸カバー3により覆われており、該給糸カバー3は、静止盤21と一体的に形成されている。
【0014】
スピンドル軸4の上方には、テンション装置47が設けられ、給糸パッケージ11から引き出された原糸12aはテンション装置47へその上方から入り、該テンション装置47により所定の張力を付与された後、ストレージディスク15の中心部から外周方向へ案内されながら、該ストレージディスク15の外部まで延出して、スピンドル装置1上部のバルーンガイド48へ至る。
【0015】
ストレージディスク15の外部へ延出した原糸12aは、スピンドル駆動モータ10により駆動されるスピンドル軸4及びストレージディスク15が高速回転することによりバルーンされ、スピンドル軸4及びストレージディスク15が一回転する間に、テンション装置47からストレージディスク15へ至るまでの間で一回、ストレージディスク15からバルーンガイド48へ至るまでの間でさらにもう一回撚りが入り、合計二回加撚される。
このように、本撚糸機は、スピンドル軸4及びストレージディスク15が一回転する間に原糸に二回撚りをかける二重撚糸機に構成されている。
また、スピンドル軸4毎に駆動モータが設けられる単錘駆動型の撚糸機に構成されている。
【0016】
スピンドル装置1の上方には巻取装置2が配設され、スピンドル装置1で加撚された撚糸12bを巻き上げるように構成している。前記バルーンガイド48から上方へ延出される撚糸12bは、ガイドローラ49・50及びフィードローラ8を経てトラバースガイド7に至る。
そして、トラバースガイド7に至った撚糸12bは、該トラバースガイド7により綾振りされながら、ドラム6に転接する巻取パッケージ5に巻き取られるのである。該ドラム6は、スピンドル駆動モータ10とは別個に設けられる巻取用モータであるドラム駆動モータ20(図4図示)により駆動されている。
【0017】
このように、単錘駆動型に構成される撚糸機では、スピンドル軸4と巻取装置2のドラム6とは別の駆動モータ10・20にて駆動されているので、単位長さ当たりの撚り数を全長に亘って安定させるために、スピンドル軸4の回転とドラム6の回転とが同期するように、前記制御装置14により両者の回転が電気的に制御されている。
【0018】
図4に示すように、前記制御装置14は、撚糸機の巻取速度を算出するための巻取速度演算手段71と、停電の発生を検出する停電検出手段72と、ドラム駆動モータ20の減速停止制御を行うドラム駆動モータ減速停止制御手段73と、スピンドル駆動モータ10の減速停止制御を行うスピンドル駆動モータ減速停止制御手段74と、減速停止制御時における制御や各モータ10・20駆動用のバックアップ電源手段75と、後述する所定の減速時間を算出するためのドラム駆動モータ減速時間演算手段76と、遅れ角変動量C、減速時間D、及びタイムラグT等を記憶するメモリ77とを備えている。
さらに、制御装置14には、スピンドル軸4の回転速度や糸の撚り数等といった撚糸機の運転条件を入力するための運転条件入力器70が付設されており、これらの入力値に基づいて巻取速度、即ちドラム6の回転速度が巻取速度演算手段71により算出され、算出された巻取速度に応じてドラム駆動モータ20が回転駆動される。また、図示せぬスピンドル速度演算手段によりスピンドル軸4の回転速度が算出され、算出された巻取速度に応じてスピンドル駆動モータ10が回転駆動される。
【0019】
撚糸機の通常の運転時には、運転条件入力器70への入力値に基き、巻取速度演算手段71により算出された巻取速度、及びスピンドル速度演算手段により算出されたスピンドル軸4の回転速度に応じて、ドラム駆動モータ20及びスピンドル軸4が回転駆動されるが、停電が発生した場合には、停電検出手段72によりその旨が検出されるとともに、ドラム駆動モータ減速停止制御手段73及びスピンドル駆動モータ減速停止制御手段74により、ドラム駆動モータ20及びスピンドル駆動モータ10の減速停止制御が行われる。
制御装置14に備えられるドラム駆動モータ減速時間演算手段76は、後述するように、減速停止制御時にドラム駆動モータ20が停止信号を受けてから停止するまでの時間(以下「減速時間」という)を算出するものであるが、ドラム駆動モータ減速停止制御手段73は、ドラム駆動モータ減速時間演算手段76が算出した減速時間、及びタイムラグに基づいて決定される減速停止度合い(図5中の遅れ角を考慮した場合のドラム駆動モータ20の回転速度減速停止グラフ)に従って、ドラム6の減速停止制御を行う。
【0020】
また、ドラム駆動モータ減速時間演算手段76は、メモリ77に予め記憶されている遅れ角変動量C、減速時間D、及びタイムラグT等と、運転条件入力器70から入力される運転条件(スピンドル回転速度、撚り数)とに基づいて前記減速時間を自動的に算出する。
尚、遅れ角変動量C、及びタイムラグTは固定値としてメモリ77に記憶されているが、スピンドル駆動モータ10の減速時間Dは制御装置14に付設される記憶値設定変更手段78によりその値を変更することが可能となっている。
【0021】
この制御時の制御及び各モータ10・20の駆動電源は、制御装置14に備えられるバックアップ電源手段75から供給される。
また、ドラム駆動モータ減速停止手段73等の制御装置14によるドラム駆動モータ20の駆動制御はインバータ79を介して行われ、スピンドル駆動モータ減速停止制御手段74等の制御装置14による各スピンドル駆動モータ10の駆動制御はドライバ80を介して行われる。
【0022】
ここで、スピンドル装置1における「遅れ角」について説明する。
前述の如く、スピンドル装置1においては、運転時に給糸パッケージ11からの糸の解舒張力を一定にして、安定したバルーニングを得るために、スピンドル軸4と一体的に回転するストレージディスク15に、1周り〜2周り程度の糸が巻き付けられている。
例えば、図6に示すような通常運転の高速回転時は、ストレージディスク15への糸の巻き付き量が多くて遅れ角が大となり、図7に示すようにスピンドル軸4が減速して低速回転となるとストレージディスク15への糸の巻き付きが少なくなって遅れ角が小となり、スピンドル軸4が停止した時点では、遅れ角は0となる。
そして、通常運転時にストレージディスク15に巻き付いていた遅れ角分の糸は、スピンドル軸4が停止するまでの間にスピンドル装置1から送り出されることとなる。
【0023】
次に、停電時等に行われるスピンドル駆動モータ10及びドラム駆動モータ20の制御装置14による減速制御について説明する。
図5に示すように、停電時にスピンドル駆動モータ減速停止制御手段74により減速駆動制御されるスピンドル駆動モータ10は、通常運転時の速度ssから一定度合いで直線的に減速されて、減速開始から時間D経過後に停止するように制御されている(図5におけるスピンドル駆動モータ側のグラフ(α))。
【0024】
この場合、スピンドル軸4が速度ssにて回転する通常運転時の糸の巻取速度をYSとし、前述の遅れ角を考慮しなければ、ドラム6の減速制御は、通常運転時に巻取速度YSで糸を巻き取るべく速度dsにて回転していた状態から、スピンドル駆動モータ10の減速度合いと同期させた一定度合いで直線的に減速しながら、減速開始から減速時間D経過後に停止するような制御を行えば(図5における破線で示したドラム駆動モータ側のグラフ(γ))、通常運転時の単位長さ当たりの撚り数を変化させずに巻き取ることができるはずである。
【0025】
しかし、実際には、スピンドル装置1側から送り出される糸の量は、給糸パッケージ11から送り出される糸の量に、ストレージディスク15に巻き付いていた遅れ角分の糸の量(以下、遅れ角による加算糸量(前記遅れ角変動量)という)Cが加算される。
従って、ドラム駆動モータ20の減速制御を、図5に破線で示すように行うと、減速停止時の撚り数が通常運転時の撚り数に対して変化してしまう。
そこで、本案では、遅れ角による加算糸量Cを考慮して、図5に実線で表したドラム駆動モータ側のグラフ(β)のように、ドラム駆動モータ20がドラム駆動モータ減速停止制御手段73によって制御されている。すなわち、ドラム駆動モータ20は、減速制御を開始した後も、所定のタイムラグTを経過するまでの間は通常運転時の回転速度dsを維持し、その後一定度合いで直線的に減速しながら、減速制御開始から時間Dd経過後に停止するように制御されている。
【0026】
ここで、ドラム駆動モータ20の遅れ角パラメータ入り減速制御を行う際の、ドラム駆動モータ減速時間Ddの算出方法について説明する。
まず、減速制御の開始時(即ち、停電検出手段72停止信号を送出したとき)からドラム駆動モータ20が停止するまでの、遅れ角を考慮しない糸の理論上の巻取量W1は、次式1にて表される。なお、式1において、W1の単位は〔m〕、YSの単位は〔m/min〕、Dの単位は〔s〕である(以降の式においても同じ)。
W1=(YS/60)*(D/2) ・・・(1)
【0027】
また、遅れ角を考慮して前記タイムラグTを加えた巻取量W2は、次式2で表される。なお、式2において、W2の単位は〔m〕、Tの単位は〔s〕である(以降の式においても同じ)。
W2=((YS/60)*T)+W1 ・・・(2)
【0028】
そして、減速制御開始からドラム駆動モータ20が停止するまでの間に給糸パッケージ11から送り出される糸の量W3は、次式(3)のように、前記巻取量W2から前記遅れ角による変動量Cを減じたもので表すことができる。なお、式2において、W3・Cの単位は〔m〕である。(以降の式においても同じ)
W3=W2−C ・・・(3)
【0029】
ここで、前述の糸の理論上の巻取量W1と糸の送り出し量W3との比Xを、次式(4)のように求める。
X=(W1−W3)/W1 ・・・(4)
さらに、次式(5)のように所定の係数Aを求める。
A=1−X ・・・(5)
【0030】
そして、遅れ角を考慮したドラム駆動モータ20の減速時間Ddが次式(6)により算出される。なお、式6において、Ddの単位は〔s〕である。
Dd=D*A ・・・(6)
【0031】
以上の如く、ドラム駆動モータ20の遅れ角考慮時の減速時間Ddが算出されるが、前記式(1)から式(6)までの演算はドラム駆動モータ減速時間演算手段76にて行われ、算出されたドラム駆動モータ20の減速時間Ddがドラム駆動モータ減速停止手段73へ送出されて、ドラム駆動モータ20が減速制御される。
尚、ドラム駆動モータ減速時間演算手段76による式(1)から式(6)までの演算は、メモリ77に記憶されている遅れ角変動量C、減速時間D、及びタイムラグT等と運転条件入力器70からの運転条件とに基づいて行われる。
また、スピンドル駆動モータ10の減速時間D及びドラム駆動モータ20の遅れ角考慮時の減速時間Ddは、制御装置14による減速制御及びその減速制御における各駆動モータ10・20の駆動が前記バックアップ電源手段75の容量の範囲内で行えるような値に設定される。
【0032】
ここで、遅れ角を考慮した場合のドラム駆動モータ20の減速停止度合い(図5の実線グラフβ)を、遅れ角を考慮していない場合のドラム駆動モータ20の減速停止度合い(図5の実線グラフγ)と比較して説明する。
遅れ角を考慮した場合は、ドラム駆動モータ20(ドラム6)の回転速度を、停止信号発生時(スピンドル駆動モータ10の減速制御開始時)からタイムラグT分の所定時間だけ、その発生時の回転速度に維持し、タイムラグT分の時間経過後にスピンドル駆動モータ10と略同時期(D)に停止するように一定割合で減速する。
ドラム駆動モータ20の停止時期は、スピンドル駆動モータ10の停止時期と同時期が理想的であるが、諸条件により若干前後しても良い。また、この例では、折れ線状に減速しているが、できれば、曲線状に減速する方が良い。タイムラグTの時間も、諸条件により自動的に変更できるようにするのが好ましい。
このように、遅れ角を考慮した場合は、遅れ角を考慮していない場合と比較して、減速制御初期の間はドラム駆動モータ20の回転速度を高い回転速度で維持し、その後、急減速させるようにする。このようにすることで、遅れ角による加算糸量Cの撚り数への影響を減ずることができる。
【0033】
このように、停電発生の場合等、バックアップ電源手段72の容量の関係で短時間でスピンドル軸4及びドラム6の回転速度を減速制御した場合でも、上記減速制御の如く、ドラム駆動モータ20の減速停止度合いを設定するためのパラメータに、スピンドル装置1の遅れ角を含めて、遅れ角による糸長の変化を考慮した制御を行うことで、減速停止時における撚り数の変化やばらつきを小さく抑えることができる。
逆に、短時間での減速停止制御が可能となることで、バックアップ電源手段72の容量を小さくすることができ、撚糸機の小型化や低コスト化を図ることが可能となる。
【0034】
また、ドラム駆動モータ20の減速停止度合いは、運転条件入力器70にスピンドル軸4の回転速度や撚り数等といった撚糸機の運転条件を入力するだけで、ドラム駆動モータ減速時間演算手段76により自動的に設定されることとなるので、撚り数の変化やばらつきを抑えた正確な減速停止制御を容易且つ確実に行うことが可能となる。
【0035】
特に、撚糸処理を行う錘を複数備え、各錘のスピンドル装置1毎にスピンドル駆動モータ10を設けた単錘駆動型の撚糸機に、このような減速停止制御を行う制御装置14を備えたことで、短時間で減速停止制御を行うと、減速開始から停止するまでの糸の巻取量が少なくて撚り数に与える遅れ角による糸量の影響が大きく、通常運転時に対する減速停止時の撚り数の変化やばらつきが大きかったという単錘駆動型の撚糸機の問題を解消することが可能となっている。
【0036】
なお、本実施例では、ドラム駆動モータ減速停止制御手段73によりドラム駆動モータ20の減速停止制御を行うためのパラメータにスピンドル装置1の遅れ角を含めているが、遅れ角を含めた減速停止制御は、スピンドル駆動モータ減速停止制御手段74等によるスピンドル駆動モータ10に対して行うことも可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、次のような効果を奏する。
請求項1記載の如く構成するので、
停電発生の場合等、バックアップ電源手段の容量の関係で短時間でスピンドル装置及び巻取装置を減速制御した場合でも、減速制御時の撚り数の変化やばらつきを通常運転時に対して小さく抑えることができる。
逆に、短時間での減速停止制御が可能となることで、バックアップ電源手段の容量を小さくすることができ、撚糸機の小型化や低コスト化を図ることが可能となる。
【0038】
請求項2記載の如く構成するので、
短時間で減速停止制御を行うと、減速開始から停止するまでの糸の巻取量が少なくて撚り数に与える遅れ角の影響が大きく、撚り数の変化やばらつきが大きかったという単錘駆動型の撚糸機の問題を解消することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置を備えた単錘駆動型撚糸機を示す全体正面図である。
【図2】単錘駆動型撚糸機の一錘分の構成を示す斜視図である。
【図3】同じく単錘駆動型撚糸機のスピンドル装置を正面から見て示す一部断面図である。
【図4】単錘駆動型撚糸機の制御装置を示すブロック図である。
【図5】減速停止制御時におけるスピンドル駆動モータ及びドラム駆動モータの減速停止度合いを示す図である。
【図6】遅れ角が大きい状態のストレージディスクを示す斜視図である。
【図7】遅れ角が小さい状態のストレージディスクを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 スピンドル装置
2 巻取装置
4 スピンドル軸
6 ドラム
10 スピンドル駆動モータ
11 給糸パッケージ
14 制御装置
15 ストレージディスク
20 ドラム駆動モータ
73 ドラム駆動モータ減速停止制御手段
74 スピンドル駆動モータ減速停止制御手段
75 バックアップ電源手段

Claims (2)

  1. 給糸パッケージから解舒された糸に撚りを付与するためのスピンドル装置と、スピンドル装置のスピンドル軸を駆動するためのスピンドル駆動モータと、スピンドル軸と一体的に回転するストレージディスクと、給糸パッケージから解舒された糸を巻き取るための巻取装置と、巻取装置を駆動するための巻取用モータと、停電を検出したときにスピンドル駆動モータを減速停止させるためのスピンドル駆動モータ減速停止制御手段と、停電を検出したときに巻取用モータを減速停止させるための巻取用モータ減速停止制御手段とを備える撚糸機において、
    停電発生による減速制御時には、スピンドル駆動モータと巻取用モータとを同期させる場合と比較して、巻取用モータを減速制御初期の間は相対的に高い回転速度で維持し、その後急減速させて、
    巻取用モータの停止時期を、スピンドル駆動モータの停止時期と同時期もしくは若干前後する時期にする、
    ことを特徴とする撚糸機の制御装置。
  2. 撚糸処理を行う錘を複数備え、各錘のスピンドル装置毎にスピンドル駆動モータを設けたことを特徴とする請求項1に記載の撚糸機の制御装置。
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