JP3887608B2 - Pc板の吊込み方法と吊り治具 - Google Patents

Pc板の吊込み方法と吊り治具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレキャストコンクリート板(以下、PC板という)の吊込み方法に係り、詳しくは、吊り込み作業を能率化して工期の短縮を図るPC板の吊込み方法とその吊り治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、PC造の高層住宅を建築する場合に、図7に示すように、例えば、タワークレーンで搬送された複数枚のPC板(商品名:スパンクリート板、オムニア板等)21を、一旦、取付階の仮置き場所22に仮置きして、その後、専用治具23で一枚毎に、ボイド部分21aにフックを掛けて、前記PC板21を横移動させて、梁24間に掛け渡して敷設している。敷設されるPC板21の中央部の下面には、支保工25が架設され支持されている。
【0003】
このような方法の場合、タワークレーンや専用治具による揚重回数が多く、多くの工程を占めている。PC板のボイド部分が欠けたりすることがある。また、取付階での横方向にPC板を敷き並べる作業中においては、敷設前の空所があるので、作業者にとっても落下の危険があり、安全対策上に課題がある。
【0004】
また、揚重作業回数を削減するために、PC板の搬送方法として、複数枚のPC板をスペーサブロックを介して段積みし、吊下金具を前記複数枚のPC板に貫通させて、その吊下金具の下端部からコッターを展開して、最下段のPC板に係合させることで吊り上げるようにした方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−239924号公報(第2頁乃至第3頁、第4図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法においての、一枚のPC板を上下方向に複数枚段積みするものであり、PC板の搬入方法においては従来例と同様であって、横方向に敷設することにおいて、別の専用治具が不要となって、効率的であると言うものであるが、仮置きされたPC板を横方向に敷き並べる手間が掛かることにおいては、従来と同様である。また、PC板が仮置き中に捻れて梁間から落下するなどの危険もある。よって、クレーンの揚重回数を削減し、作業員の安全性を確保することに解決すべき課題がある。本発明に係るPC板の吊込み方法と吊り治具はこのような課題を解決するために提案されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るPC板の吊込み方法の要旨は、プレキャストコンクリート板を揚重搬入装置により梁間に掛け渡してスラブを構築する際に、同一階において梁で区画された1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板を構築物のサイトで上下方向に複数段に地組みし、そのプレキャストコンクリート板を前記揚重搬入装置で吊り込み、横方向に移動させながら1スパン毎に前記複数個のプレキャストコンクリート板を一度に敷設し、1回の揚重作業で複数スパン分のスラブを敷設するPC板の吊込み方法であって、前記1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板は、当該プレキャストコンクリート板の目地方向と直交する方向で、且つ、当該板の上下面に配設された鋼材をボルトで締結することで狭装され、当該下面に配設された鋼材が、梁間に敷設されたプレキャストコンクリート板の支保工の一部に転用されることである。
【0009】
本発明に係る吊り治具の要旨は、1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板の上面に横架されるチャンネルと、同下面に横架されるとともに支保工の一部に転用される角形パイプと、隣接する前記プレキャストコンクリート板の目地位置において前記チャンネルと前記角形パイプとに上下方向に貫通して挿通されるボルト及びその締結用のナットと、前記ナットの下部に下段のプレキャストコンクリート板を吊持するために取り付けられる接続金物とから構成されていることである。
【0010】
本発明に係るPC板の吊込み方法によれば、PC造の構築物において、同一階のスラブを、梁間にPC板を一度に1スパン分敷設して、構築することができる。また、1スパン分のPC板を複数段に地組みして吊り込むので、1回の揚重作業で、複数スパン分の敷設作業を済ませることができる。これにより、揚重作業回数が大幅に削減されるものである。また、PC板を複数段に地組みした際の鋼材がそのまま支保工の一部に転用されて、作業効率が向上するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るPC板の吊込み方法について、図面を参照して説明する。なお、発明の理解を容易にするため、従来例に対応する部分には従来例と同一の符号を付けて説明する。
【0012】
本発明に係るPC板の吊り込み方法では、先ず、1スパン分の複数個のPC板21を、鋼材等で狭装させて、それを上下方向に複数段に地組みする。これには、図1(A)に示すように、例えば、アルミニウム製で軽量の角形パイプ1を建築中のPC構造物のサイトにおいて、間隔を開けて平行に敷設する。なお、この角形パイプ1は、図4(D)に示す作業台2の上に置かれるものである。また、図3に示すように、予め所定の箇所にナット6aが溶接して固着されている。
【0013】
次ぎに、トラック等の運送手段で運ばれたPC板21を、クレーンで吊り上げ、前記角形パイプ1の上に架設する。図1(B)に示すように、一例として、1スパン分のPC板21は、6枚(全幅約6m)である。このPC板21は、その長手方向に沿ってボイド21aが設けられて遮音性と断熱性が良好なものであり、PC鋼線等でプレストレスが付与されている。また、前記角形パイプ1には、上下方向に貫通する貫通孔が、両端部と中央部とに設けられている。
【0014】
図1(B)に示すように、敷設された6枚のPC板21の上に、目地方向に直角になるようにして、鋼製で上コ字形のチャンネル3が、前記角形パイプ1に対応させて2箇所に配設される。このチャンネル3は、図2に示すように、補強鉄板3aを溶接して約6mの長さにしてある。また、前記角形パイプ1の貫通孔に対応させて、貫通孔3bが3箇所に設けられている。
【0015】
更に、このチャンネル3の側壁の2箇所に貫通孔が設けられ、そこに、ボルト4が挿通されてナット4aで締結されている。このボルト4には、後に、吊り上げ用のシャックル5(図3参照)が掛けられるものである。
【0016】
そして、図1(B)と図3(A),(B)とに示すように、貫通孔3bにボルト6を通して、前記ナット6aに締結させる。これにより、PC板21が、チャンネル3と角形パイプ1とで狭装される。これでPC板6枚により、1スパン分のスラブができあがる。
【0017】
次ぎに、図1(C)に示すように、PC板21を段積みする。その場合には、図3(A)(図中の右側),(C)に示すように、長ナット7を下面に固着した角形パイプ1を下段のPC板21の上に載置して、上段のPC板21を敷く。長ナット7は、隣接するPC板21の目地部分に納まるように配置する。
【0018】
そして、該上段のPC板21の上に、目地に直交させてチャンネル3を敷設し、その貫通孔3bにボルト6を上から挿通して角形パイプ1に貫通させ、前記長ナット7に締結する。このようにして、吊り治具により、1スパン分の6枚のPC板21を上下方向に、例えば3段にして地組みして、サイトにPC板吊り荷Aができる。
【0019】
次ぎに、図4(A)に示すように、H型鋼8と単管パイプ9とをキャッチクランプで繋いで、四角の吊上げ用治具を形成する。これを揚重搬入装置であるタワークレーンでワイヤー13を介して吊り上げる。前記治具からワイヤー10を下げて、図3(A)に示すように、その下端を最上段のチャンネル3のボルト4にシャックル5を掛けて連結する。
【0020】
図4(B)に示すように、タワークレーンのワイヤー13を巻き上げて、前記ワイヤー10を介して最上段のPC板21を吊り上げる。次ぎに、前記最上段のPC板21の下面の角形パイプ1の長ナット7に、作業者が間に入り込んで接続金物11をねじ込む。その接続金物11にフックを掛けてワイヤー12を吊るし、そのワイヤー12の下端部を下段のチャンネル3のボルト4に前記シャックル5で連結することを繰り返す。これにより、図4(C),(D)に示すように、3段のPC板21が上下方向にワイヤー10,12を介して吊り上げられる。図5(A),(B)に示す状態が、PC板吊り荷Aの吊り上げ状態である。
【0021】
次ぎに、図6に示すように、前記PC板21をタワークレーンで構築中のPC造の構造物の最上階に搬入する。そして、まず最初に、最下段の6枚のPC板21を梁24間に敷設する。1スパン分のスラブ敷設が1度で完了する。更に、支保工でPC板21の下面の角形パイプ1を支持する。当該角形パイプ1は、支保工の一部として転用される。
【0022】
そして、前記タワークレーンで若干ワイヤー12が弛むくらいに降下させ、その状態を維持して作業者が、最下段と中段のPC板21の間に入り込み、当該最下段のPC板21上のチャンネル3と、前記中段のPC板21下面の角形パイプ1とのワイヤー12による連結を解除する。
【0023】
その後、タワークレーンで横方向に移動させ、次に1スパン分の区画に、中段の6枚のPC板21を梁間に敷設する。そして、中段と最上段のPC板21のワイヤー12による連結を作業者によって解除して、更にタワークレーンで横に移動させて、最上段の6枚のPC板21を隣接する1スパンの区画に敷設する。支保工でPC板下面の角形パイプ1を支持する。
【0024】
前記1スパン分のPC板21を、隣接した(必ずしも隣接していなくても良い)3区画に3回に亘り連続して敷設した後は、ボルト6をそれぞれにおいて外して、チャンネル3は撤去する。
【0025】
また、PC板21上に現場打ちでコンクリートを打設して床を形成した後に、支保工の解体と共に前記角形パイプ1も撤去する。接続金具11も角形パイプ1から外しておく。こうして、タワークレーンの揚重回数が大幅に削減されるものであり、また、PC板21が6枚で一度に敷設されて梁24間に納まるので、捻れて梁24から落下する等の危険もない。
【0026】
【発明の効果】
上記説明したように、本発明に係るPC板の吊込み方法は、プレキャストコンクリート板を揚重搬入装置により梁間に掛け渡してスラブを構築する際に、同一階において梁で区画された1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板を構築物のサイトで上下方向に複数段に地組みし、そのプレキャストコンクリート板を前記揚重搬入装置で吊り込み、横方向に移動させながら1スパン毎に前記複数個のプレキャストコンクリート板を一度に敷設し、1回の揚重作業で複数スパン分のスラブを敷設するPC板の吊込み方法であって、前記1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板は、当該プレキャストコンクリート板の目地方向と直交する方向で、且つ、当該板の上下面に配設された鋼材をボルトで締結することで狭装され、当該下面に配設された鋼材が、梁間に敷設されたプレキャストコンクリート板の支保工の一部に転用されるので、揚重搬入装置による吊り上げ回数が大幅に削減されるとともに、PC板の落下の危険性が解消され作業者の落下防止にもなると言う優れた効果を奏するものである。
【0027】
また、1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板は、当該プレキャストコンクリート板の目地方向と直交する方向で、且つ、当該板の上下面に配設された鋼材をボルトで締結することで狭装され、当該下面に配設された鋼材が、梁間に敷設されたプレキャストコンクリート板の支保工の一部に転用されるので、PC板敷設時の支保工の組立作業工数も工数削減となる。
【0028】
本発明に係る吊り治具は、1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板の上面に横架されるチャンネルと、同下面に横架されるとともに支保工の一部に転用される角形パイプと、隣接する前記プレキャストコンクリート板の目地位置において前記チャンネルと前記角形パイプとに上下方向に貫通して挿通されるボルト及びその締結用のナットと、前記ナットの下部に下段のプレキャストコンクリート板を吊持するために取り付けられる接続金物とから構成されているので、1区画分のPC板を複数段に地組みすることができて、揚重回数を削減できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るPC板の吊込み方法における、PC板の地組みを示す説明図(A),(B),(C),(D)である。
【図2】チャンネル3の平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)である。
【図3】同本発明に係るPC板の吊込み方法における、PC板をチャンネル3と角形パイプ1とボルト6で狭装する様子を示す説明図(A),(B),(C)である。
【図4】同本発明に係るPC板の吊込み方法における、PC板の搬入する様子を示す説明図(A),(B),(C),(D)である。
【図5】PC板吊り荷Aの吊り上げ状態を示す説明図(A),(B)である。
【図6】同本発明に係るPC板の吊込み方法によって、1スパン毎にPC板21を梁間に敷設する様子を示す平面図である。
【図7】従来例に係るPC板の敷設状況を示す説明図(A),(B),(C)である。
【符号の説明】
1 角形パイプ、 2 作業台、
3 チャンネル、 3a 補強鉄板、
3b 貫通孔、 4 ボルト、
4a ナット、 5 シャックル、
6 ボルト、 6a ナット、
7 長ナット、 8 H型鋼、
9 単管パイプ、 10 ワイヤー、
11 接続金物、 12 ワイヤー、
13 ワイヤー、 21 PC板、
22 仮置き部分、 24 梁。

Claims (2)

  1. プレキャストコンクリート板を揚重搬入装置により梁間に掛け渡してスラブを構築する際に、同一階において梁で区画された1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板を構築物のサイトで上下方向に複数段に地組みし、そのプレキャストコンクリート板を前記揚重搬入装置で吊り込み、横方向に移動させながら1スパン毎に前記複数個のプレキャストコンクリート板を一度に敷設し、1回の揚重作業で複数スパン分のスラブを敷設するPC板の吊込み方法であって、
    前記1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板は、当該プレキャストコンクリート板の目地方向と直交する方向で、且つ、当該板の上下面に配設された鋼材をボルトで締結することで狭装され、当該下面に配設された鋼材が、梁間に敷設されたプレキャストコンクリート板の支保工の一部に転用されること、
    を特徴とするPC板の吊込み方法。
  2. 1スパン分の複数個のプレキャストコンクリート板の上面に横架されるチャンネルと、同下面に横架されるとともに支保工の一部に転用される角形パイプと、隣接する前記プレキャストコンクリート板の目地位置において前記チャンネルと前記角形パイプとに上下方向に貫通して挿通されるボルト及びその締結用のナットと、前記ナットの下部に下段のプレキャストコンクリート板を吊持するために取り付けられる接続金物とから構成されていること、
    を特徴とするPC板の吊り治具。
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