JP3885226B2 - インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置においては、インクの吐出不良を回復したり、吐出状態を定常的に良好に維持するために、従来からインクジェットヘッドのノズル面にキャップをかぶせて、ヘッド内のインクを吸引することで、ヘッド内に発生した気泡や、乾燥し始めたインクを排出することが行われている。また、インクジェットヘッド内の共通インク室の両端を、2つのチューブでインクタンクに接続し、インクをインクタンク、一方のチューブ、共通インク室、他方のチューブをとおしてインクタンクへ強制循環させることで、共通インク室やチューブ内の気泡を除去することも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者の吸引方法では、共通インク室内の全部のインクおよびインクタンクの一部のインクを排出してしまうため、インクの消費量が多くなる欠点がある。また、後者の循環する方法では、インクの消費量が抑えられるものの、共通インク室の両端に2つのチューブを接続しなければならないため、構造が複雑で、かつ大型化する問題がある。
【0004】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インクの吐出不良を回復したり、吐出状態を定常的に良好に維持するためのインクの消費量を抑え、かつ簡単な構造で小型化できる構造を提案するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載のインクジェットヘッドは、インクを吐出するノズル孔を有する第1の基板、前記ノズル孔に一端をそれぞれ連通した複数の圧力室を、1つの平面状にかつ列をなして形成した第2の基板、前記第1と第2の基板との間に位置し、前記圧力室がなす列方向に、共通インク室を長く形成した第3の基板、および、前記第2と第3の基板との間に位置し、前記圧力室の一端と前記共通インク室と接続される連通路とを有する第4の基板を積層したキャビティプレートと、前記圧力室のそれぞれに対応し、前記インクを吐出させるための圧力を前記圧力室内に与えるアクチュエータと、を具備し、前記キャビティプレートの上面に前記アクチュエータを固定してなるインクジェットヘッドにおいて、前記第3の基板には、前記共通インク室と平行に還流路を形成し、前記共通インク室と還流路とを、前記複数の圧力室がなす平面と平行な1つの平面状に形成し、その共通インク室の一端と還流路の一端とを相互に接続するとともに、共通インク室の他端と還流路の他端は、それぞれ外部のインク供給源と接続する、前記キャビティプレートの上面の開口にそれぞれ連通し、前記圧力室の他端と前記ノズル孔とを接続する連通孔を、前記共通インク室および前記還流路の外部で、前記第3、第4の基板に貫通形成した。
【0006】
このように、インクジェットヘッド内に共通インク室と平行に還流路を形成し共通インク室の他端の開口および還流路の他端の開口の一方からインクを供給するとともに他方から排出するインク中の気泡をインクとともにインク供給源に戻し、共通インク室から各圧力室に供給するインクから気泡を少なくすることができる。
また、インクジェットヘッドが、複数枚の基板を積層したキャビティプレートから形成されているため、共通インク室および還流路を容易に形成し、複数の圧力室と組み合わせることができる。
さらに、前記第2の基板が前記複数の圧力室を1つの平面状にかつ列をなして形成し、前記第3の基板が前記共通インク室と還流路とを、前記複数の圧力室がなす平面と平行な1つの平面状に形成したことで、 共通インク室および還流路を容易に形成し、複数の圧力室と組み合わせることができる。
【0007】
【0008】
また、前記還流路を、前記各圧力室の他端よりも、前記一端に近接した位置に配置することで、圧力室、共通インク室および還流路を小型に配置することができる。
【0009】
さらに、前記複数の圧力室を複数列設けた場合でも、その列に対してそれぞれ前記共通インク室を配置し、その列間に、前記複数の共通インク室に対し共通の前記還流路を配置することで、圧力室、共通インク室および還流路を小型に配置することができる。
【0010】
上記インクジェットヘッドを用いるインクジェット記録装置は、前記共通インク室の他端の開口と還流路の他端の開口とをそれぞれ外部のインク供給源と接続し、その両開口のいずれか一方にインク供給源のインクを供給するとともに、他方からそのインク供給源にインクを戻す強制循環手段を設けることで、実現できる。なお、前記開口は、前記キャビティプレートの上面の一側に並んで位置し、前記インク供給源は、前記インクジェットヘッドの前記両開口に対向する位置にインク供給口および還流口を有するインクタンクであることで、一層容易に実現することができる。
また、インクジェット記録装置は、前記ノズル孔を覆うように設けられたキャップと、前記ノズル孔内のインクを吸引するための吸引手段が備えられていることで、圧力室、連通孔およびノズル孔中の気泡や乾燥し始めたインクを除去することができ、吐出状態を回復できる。また、共通インク室内のインクを大量に排出する必要がないため、無駄なインクを少なくできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
【0012】
インクジェットヘッドは、キャビティプレート組10とアクチュエータユニット30とからなる。キャビティプレート組10は、インク流路となる開口をエッチングにより形成した複数の基板11〜19を、積層して相互に接着した構造である。最上層の基板11は複数の圧力室20を複数列たとえば2列にかつ1つの平面状に配置して備え、最下層の基板19は、インク滴を吐出する複数のノズル孔21を有する。その両基板間に位置する他の基板12〜18は、各圧力室20の一端をノズル孔21に連通するための連通孔22をそれぞれ備える。5番目〜7番目の基板15〜17は、各圧力室20の列の下に対応してその列方向に延びる共通インク室23,23を有する。各圧力室20の他端は、断面積を縮小した制限流路20aになっており、その制限流路20aは、図5および図6に詳細に示すように2番目の基板12の連通路24、3番目の基板13のフィルタ孔25、4番目の基板14の連通孔26を介して共通インク室23に連通している。3番目の基板13は、電鋳によって製作し厚さ5〜20μmの弾性を有する薄板で、連通路24の端部と連通孔26とに対向する位置に直径15μm以下のフィルタ孔25を多数有している。
【0013】
2列の圧力室20は、ノズル孔21側の端部を相互に対向するように位置し、また、各列の圧力室20は、共通インク室23の上方を横切る方向に延び、その各圧力室20の他端に連通する連通孔26は、共通インク室23の長手方向の側縁に沿って開口している。2列の圧力室20の一端とノズル孔21とを連通させる2列の連通孔22の間には、還流路27を基板15〜18に設けている。つまり、共通インク室23,23と還流路27とは、複数の圧力室20がなす平面と平行な1つの平面状に位置する。
【0014】
還流路27は、2つの共通インク室23,23の間をそれらの長手方向と平行に延び、その一端を両共通インク室23,23の同側端部と相互に連通している。還流路27の他端は、キャビティプレート組10の上面に開口する開口28に連通し、両共通インク室23,23のの他端は、キャビティプレート組10の上面に開口する開口29,29に連通している。
【0015】
アクチュエータユニット30は、特開平3−274159号公報に記載されたものと同様に、圧電セラミックス層と電極とを交互に積層しキャビティプレート組10の上面に固定した構成で、圧電セラミックス層を挟む電極のうち少なくとも一方を圧力室20の平面形状とほぼ相似形でかつそれよりもやや小さい平面形状としている。圧電セラミックス層を挟む2つの電極間に電圧を印加することにより、圧力室20に対応する部分の圧電セラミックス層を変形させ圧力室20内のインクに圧力を与え、そのインクをノズル孔21から吐出することができる。アクチュエータユニット30は、上記圧電または電歪変形のほか、静電気、熱によるインクの局部的な沸騰などの力を利用してインクに吐出圧力を付与するものを用いることもできる。
【0016】
図3に示すように、インク供給源すなわちインクタンク40は、内部にインクを貯留し、底面に、2つの共通インク室23,23の各開口29,29と対向する2つのインク供給口41,41と、還流路27の開口28と対向する還流口42を備える。キャビティプレート組10の3つの開口28,29,29は、キャビティプレート組10の上面の一側に並んで位置しており、インクタンク40はインク供給口41,41、還流口42を各開口28,29,29に接続して、その一側部分に容易に着脱可能に装着することができる。
【0017】
インクタンク40は、内部のインク貯留室をインク供給口41,41に連通する第1の部屋44と、還流口42に連通する第2部屋45とに仕切る仕切壁43を備え、その仕切壁43に、第2の部屋45から第1の部屋44へのインクの流動を許す一方向流路手段46を有する。また、第1の部屋44には、該部屋内のインクをインク供給口41,41からキャビティプレート組10内へ流動させるようにインクに圧力を付与する流動手段47を接続する。流動手段47としては、たとえば送風機、コンプレッサ等で第1の部屋44内の圧力を高め、インクをインク供給口41,41から圧送するもの、あるいはインク供給口41,41に配置した液体ポンプ等を利用することができる。一方向流路手段46としては、公知の一方向流動弁、または特開平10−151761号公報に記載したものと同様に2つの弁手段を使用することができる。流動手段47と一方向流路手段46は、強制循環手段を構成する。
【0018】
通常の記録状態では、流動手段47は駆動しない。圧力室20からインクを吐出した後、あるいは吐出する前にアクチュエータユニット30の変形にともなって共通インク室23から圧力室20へインクを補給し、共通インク室23へは、インクタンク40からインク供給口41を通って補給する。
【0019】
このとき、共通インク室23から圧力室20への流路中に多数のフィルタ孔25が位置するので、製造工程中に侵入したゴミ等が、共通インク室から圧力室へ流入して圧力室からノズル孔までの流路に存在する確率を低減させることができ、また、インクタンクの装着時に侵入したゴミも圧力室へ流入するのを防ぎ、圧力室20からノズル孔21までの流路を閉塞することを防ぐことができる。なお、フィルタは、上記フィルタのみでなく、開口29にも設けてもよい。
【0020】
共通インク室23等にたまった気泡やゴミを除去するために、流動手段47を駆動すると、インクタンク40内のインクは、上記通常の記録状態のときよりも高速でインク供給口41を通って共通インク室23へ流れ、共通インク室23から還流路27、インクタンクの還流口42、一方向流路手段46を通ってインクタンクの第1の部屋44に戻る。このインクの速い流れとともに共通インク室23等の気泡やゴミもインクタンク40に回収することができる。このとき、キャビティプレート組10のノズル孔21は、公知のキャップ50により覆っておくことが望ましい。必要に応じキャップ50に接続した吸引手段により圧力室20,連通孔23,ノズル孔21内のインクを吸引することで、それらの中の気泡、乾燥し始めたインク等を除去することができる。これらのインクの循環動作、吸引動作により、インクの吐出状態を回復したり良好に維持することができる。吸引動作では、共通インク室23内のインクを大量に排出する必要がないから、無駄にするインクが少ない。
【0021】
また、インク吐出時の圧力変動によるクロストークを防止するために、共通インク室23の一部の領域の機械的剛性を弱くしている。たとえば、図2に示すように、共通インク室23の開口29と反対側つまり還流路27と接続する側の端部で、各圧力室の他端が前記共通インク室に連通する領域から離れた領域に、圧力室の他端が共通インク室に連通する領域よりも幅が広い部分23aを設けている。また、図4に示すように、上記幅広部分23aに対応する基板12,14の部分を開口12a,14aとして、それに対応する基板13の部分の下面を幅広部分23aに臨ませ、上面を空間とすることで、その基板13の部分が圧力変動により弾性変形するようにしている。
【0022】
上記のように構成することで、多数の圧力室20から同時にインク吐出したとき、圧力室20から共通インク室23に圧力変動が及ぶが、このとき多量のインクの補給のために共通インク室23内に開口29から幅広部分23a側に向けて比較的速いインクの流れが生じているので、共通インク室23内に発生した圧力波は、そのインクの流れにともない、幅広部分23a側に大部分を伝播し、共通インク室23が幅広部分23aで断面積を拡大していることで圧力変動が緩衝される。またその幅広部分23aに対応する基板13が弾性変形して、圧力変動を吸収し、次のインク吐出時に圧力室に圧力変動が及ぶクロストークを防止することができる。
【0023】
上記のように幅広部分23aを設けることと、基板13を弾性変形させることは、併用することがもっとも効果的であるが、一方のみでもよい。なお、幅広部分23aの上方は、基板11〜13を設けることなく基板14のみにし、また下方は、基板19のみにして、基板14,19を弾性変形させるようにしてもよい。つまり、幅広部分23aを構成するキャビティプレート組10の部分(13または14,19)は、幅の広い空間を内包することで、他の部分よりも機械的剛性が著しく弱くなっており、圧力変動を吸収させやすいが、基板13のように一層薄いものであることが好ましい。
【0024】
なお、このとき、仮に圧力室に対応する共通インク室23の部分の剛性を弱くすると、圧力室の列の中央と両端とでキャビティプレート組10の機械的剛性がばらつき、圧力室での発生圧力にばらつきがでて、インク吐出を均一に行うことができなくなるが、上記のように圧力室の他端が共通インク室に連通する領域から離れた領域に幅広部分23aを形成することで、全圧力室に対して剛性が均一になりインク吐出を均一に行うことができる。
【0025】
また、上記のように圧力室20と共通インク室23との間にフィルタ孔25を介在させているので、圧力室20から共通インク室23に向かう圧力波を、フィルタ孔25の抵抗により緩衝でき、上記のクロストーク防止効果を一層高めることができる。また、幅広部分23aを還流路27と反対側に幅広く形成しているので、還流路27の大きさや配置を制限することなく、幅広部分23aを設け、インクジェットヘッドを小型にすることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、インクジェットヘッドは、複数の基板を積層して構成されていて、インクジェットヘッド内に共通インク室と平行に還流路を形成し共通インク室の他端の開口および還流路の他端の開口の一方からインクを供給するとともに他方から排出するようにしたことで、インク中の気泡をインクとともにインク供給源に戻し、共通インク室から各圧力室に供給するインクから気泡を少なくすることができるとともに、共通インク室および還流路を容易に形成し、複数の圧力室と組み合わせることができる。したがって、インクの吐出不良を回復したり、吐出状態を定常的に良好に維持するためのインクの消費量を抑え、また簡単な構造で小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すインクジェットヘッドの断面図で、図2のA−A線断面図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドのアクチュエータユニットを取り外した状態の平面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドにインクタンクを装着した状態の断面図で、図2のB−B線断面位置に相当する断面図である。
【図4】図2のC−C線断面図である。
【図5】図1のフィルタ孔部分の拡大断面図である。
【図6】図1のフィルタ孔部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
11〜19 基板
20 圧力室
23 共通インク室
27 還流路
40 インクタンク
Claims (6)
- インクを吐出するノズル孔を有する第1の基板、
前記ノズル孔に一端をそれぞれ連通した複数の圧力室を、1つの平面状にかつ列をなして形成した第2の基板、
前記第1と第2の基板との間に位置し、前記圧力室がなす列方向に、共通インク室を長く形成した第3の基板、および、
前記第2と第3の基板との間に位置し、前記圧力室の一端と前記共通インク室と接続される連通路とを有する第4の基板を積層したキャビティプレートと、
前記圧力室のそれぞれに対応し、前記インクを吐出させるための圧力を前記圧力室内に与えるアクチュエータと、を具備し、
前記キャビティプレートの上面に前記アクチュエータを固定してなるインクジェットヘッドにおいて、
前記第3の基板には、前記共通インク室と平行に還流路を形成し、前記共通インク室と還流路とを、前記複数の圧力室がなす平面と平行な1つの平面状に形成し、その共通インク室の一端と還流路の一端とを相互に接続するとともに、
共通インク室の他端と還流路の他端は、それぞれ外部のインク供給源と接続する、前記キャビティプレートの上面の開口にそれぞれ連通し、前記圧力室の他端と前記ノズル孔とを接続する連通孔を、前記共通インク室および前記還流路の外部で、前記第3、第4の基板に貫通形成したことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記還流路を、前記各圧力室の他端よりも、前記一端に近接した位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記複数の圧力室は複数列に位置し、その列に対してそれぞれ前記共通インク室を配置し、その列間に、前記複数の共通インク室に対し共通の前記還流路を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッドを備え、前記キャビティプレート前記共通インク室の他端の開口と還流路の他端の開口とをそれぞれ外部のインク供給源と接続し、その両開口のいずれか一方にインク供給源のインクを供給するとともに、他方からそのインク供給源にインクを戻す強制循環手段を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 前記両開口は、前記キャビティプレートの上面の一側に並んで位置し、前記インク供給源は、前記両開口に対向する位置にインク供給口および還流口を有するインクタンクであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
- 前記ノズル孔を覆うように設けられたキャップと、前記ノズル孔内のインクを吸引するための吸引手段が備えられていることを特徴とする請求項4から5のいずれかにに記載のインクジェット記録装置。
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