JP3885018B2 - 輸液ポンプ用カセット - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性を有する輸液チューブの一部に取り付けられ、輸液ポンプに装着するカセットに関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種の輸液ポンプ用カセットは、輸液チューブの一部に取り付けて輸液ポンプの所定位置に装着するだけで、輸液ポンプによる輸液が行なえるようになっている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
この種の輸液ポンプにおいては、カセットが輸液ポンプから分離可能であるため、緊急時に自然落下による輸液を応急的に行ないながら、他方で輸液ポンプの各種設定を行ない、その後速やかに輸液ポンプにカセットを装着して輸液ポンプによる輸液に切り換えるといった作業が行なわれることがある。
【０００４】
このときには、例えば、先ず、フリーフロー状態にして手動により輸液チューブ内部の気泡を抜き取り、その直後にアンチフリーフロー状態にして人体に接続された輸液チューブに接続し、次いでフリーフロー状態にして輸液を開始するといった作業を迅速に行う必要がある。
【０００５】
このような状況に対応するために、従来の技術においては、輸液チューブの一部をコイルスプリングの付勢により押圧するクランプ部材が設けられ、更に、輸液チューブの押圧を解除する位置にクランプ部材を係止するキー部材が設けられている。キー部材によってクランプ部材が係止されているときには、コイルスプリングの付勢に抗してクランプ部材が輸液チューブの押圧を解除する。キー部材によるクランプ部材の係止が解除されると、コイルスプリングの付勢によりクランプ部材が輸液チューブを押圧する。これにより、キー部材によりクランプ部材を係止してフリーフロー状態とし、キー部材によるクランプ部材の係止を解除してアンチフリーフロー状態とすることができる。
【０００６】
しかし、キー部材は、コイルスプリングの付勢力に抗してクランプ部材を係止するため、比較的大きな付勢力が戻り方向（クランプ部材によるクランプ方向）に常に付与された状態にある。これによって、例えば、緊急時に自然落下による輸液を行なっているとき、カセットが振動や衝撃を受けた場合にキー部材がクランプ部材の係止位置から外れ、輸液チューブが不用意に閉塞されるおそれがある。
【０００７】
また、クランプ部材やキー部材はカセットとは別体の部品であって、カセットに移動自在に保持されている構造なので、磨耗等により破損や動作不良が発生するおそれがあり、長期間の使用により円滑な輸液が行なえなくなる不都合がある。しかも、部品点数が多く、製造時の組立工程が煩雑となるためコストが高くなる不都合がある。
【０００８】
【特許文献１】
特開２００１−２１８８４１号公報
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
かかる不都合を解消して、本発明は、フリーフローの状態とアンチフリーフローの状態とを確実に切り換え維持でき、自然落下による輸液にも容易に対応できるだけでなく部品点数が極めて少なく動作不良が発生し難い輸液ポンプ用カセットを提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、可撓性を有する輸液チューブの一部に取り付け、輸液チューブに蠕動を付与する輸液ポンプに装着する輸液ポンプ用カセットにおいて、ハウジングと、該ハウジングに輸液チューブを導通状態で支持する少なくとも一対のチューブ支持部と、両チューブ支持部の間において蠕動を付与可能に輸液チューブの一部を露出させて保持するチューブ露出部と、輸液チューブの他部を解除自在にクランプして輸液チューブ内の液流を阻止するクランプ部とを備え、該クランプ部は、輸液チューブにその直径方向に圧接自在に設けられた圧接部と、該圧接部を輸液チューブへの圧接方向に付勢する付勢部材と、該付勢部材の付勢方向に抗して押圧操作することにより前記圧接部による圧接を解除する圧接解除部とを備え、前記付勢部材は、前記圧接部を付勢する位置と、該圧接部に対する付勢方向に直行する方向に退避して該圧接部の付勢を解除する位置との間で前記ハウジングに移動自在に設けられていることを特徴とする。
【００１１】
本発明によれば、前記付勢部材による前記圧接部の付勢によって、圧接部が輸液チューブを圧接して押し潰した閉塞状態とされるので、輸液チューブ内の薬液の不用意な流動を確実に防止することができる。また、前記圧接解除部を押圧操作するだけで、前記圧接部による輸液チューブの圧接を解除することができるので、気泡抜き等の作業に際して一時的にクランプを解除することができる。これによって、手動により輸液チューブ内部の気泡を抜き取る際等のように必要なときにだけ、迅速にフリーフロー状態を形成できる。
【００１２】
更に、前記付勢部材を移動自在に設けたことにより、前記圧接解除部を押圧操作したときだけでなく、付勢部材を圧接部の付勢を解除する位置に移動させたときにも、フリーフロー状態を形成することができる。即ち、例えば、緊急時に自然落下による輸液を行なうとき、付勢部材を圧接部の付勢方向に直行する方向に退避移動させることにより、圧接部は付勢部材からの付勢力を受けることなく輸液チューブの押圧を解除した状態となる。これによって、従来のような付勢力が付与された状態で付勢力に抗して輸液チューブの押圧を解除する場合に比べて、一層確実にフリーフロー状態を維持することができ、振動や衝撃によってアンチフリーフロー状態に戻るといったことを確実に回避することができる。それだけでなく、例えば出荷時等の未使用時に付勢部材を圧接部の付勢を解除する位置に移動させておくことにより、クランプ部の輸液チューブが潰れた状態に永久変形されることを防止することができる。
【００１３】
また、本発明において、前記圧接部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って揺動自在に延びる第１のアーム部の先端に設けられ、前記圧接解除部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って前記圧接部の第１のアーム部に平行に揺動自在に延びる第２のアーム部の先端に設けられ、前記付勢部材は、板状のバネであって前記圧接部に当接して該圧接部を付勢する付勢位置と、前記圧接部への当接を解除して該圧接部による輸液チューブの圧接を解除した状態とする付勢解除位置とに前記第１のアーム部に沿って移動自在に設けられ、前記第１のアーム部は、付勢部材が付勢解除位置から付勢位置に移動したときに該付勢部材に摺接して前記圧接部を輸液チューブに圧接させる方向に該第１のアーム部を揺動させるカム部を備えることを特徴とする。
【００１４】
前記圧接部が第１のアーム部を介してハウジングに連設され、前記圧接解除部が第２のアーム部を介してハウジングに連設されていることにより、前記圧接部及び前記圧接解除部は、第１のアーム部及び第２のアーム部の揺動によって作動する。これにより、前記圧接部及び前記圧接解除部とハウジングとの接触を少なくして作動させることができるので、前記圧接部及び前記圧接解除部の磨耗が少なく、磨耗による動作不良の発生を防止することができる。
【００１５】
更に、付勢部材を付勢解除位置から付勢位置に移動させるだけで、第１のアーム部がカム部を介して輸液チューブの押圧方向に円滑に揺動され、圧接部の付勢状態を極めて容易に形成することができる。
【００１６】
また、本発明において、前記ハウジングは、前記チューブ支持部を介して支持された輸液チューブの長手方向に直交して前記圧接部を備える第１側半部と、前記圧接解除部を備える第２側半部とに２分割自在であり、第１側半部と第２側半部とは互いに係合する係合部を介して一体に連結されていることを特徴とする。
【００１７】
即ち、カセットを組立てるときには、第１側半部と第２側半部との間に輸液チューブを挟み、第１側半部と第２側半部とを互いに連結することによりハウジングを容易に形成することができる。また、第１側半部には前記圧接部が連設され、第２側半部には前記圧接解除部が連設されていることにより、ハウジングを構成する部品点数が極めて少なく、組立て容易でしかも製造コストを低減することができる。
【００１８】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図１は本実施形態のカセットの使用状態を示す説明図、図２はカセットの一方側面を示す説明的側面図、図３はカセットの他方側面を示す説明的側面図、図４（ａ）は分解したカセットの第１側半部の内面側を示す説明図、図４（ｂ）は分解したカセットの第２側半部の内面側を示す説明図、図５は付勢部材の形状を示す説明図、図６はクランプ部の作動を示す説明図である。
【００１９】
図１に示すように、本実施形態のカセット１は、可撓性を有する輸液チューブ２の一部に取り付けられ、輸液ポンプ３の挿入スリット４に挿入することによって輸液ポンプ３への装着が完了する。輸液ポンプ３は、図示しないが、カセット１に支持されている輸液チューブ２に蠕動を付与する複数のフィンガーからなる蠕動ユニットを備えている。
【００２０】
カセット１は、図２及び図３に示すように、合成樹脂製のハウジング５を備えている。ハウジング５は、図４（ａ）に示す第１側半部６と、第１側半部６に対応する形状の図４（ｂ）に示す第２側半部７とによって構成されており、第１側半部６の周縁に設けられた複数の係止爪８と第２側半部７の周縁に設けられた係止孔９とを互いに係合させて連結することにより一体とされている。
【００２１】
ハウジング５は、図２及び図３に示すように、複数のチューブ支持部１０を備えている。各チューブ支持部１０は、前記第１側半部６と第２側半部７との連結時に輸液チューブ２を挟み込むようにして支持する。
【００２２】
また、ハウジング５には、前述した輸液ポンプの蠕動ユニットに対応する位置において輸液チューブ２の一部を露出させる第１のチューブ露出部１１と、輸液チューブ２の他部をクランプするクランプ部１２と、該ハウジング５の一部に突出する把持部１３とが形成されている。更に、クランプ部１２の隣接位置には、第２のチューブ露出部１４ａ及び第３のチューブ露出部１４ｂが設けられている。 第２のチューブ露出部１４ａは、前記輸液ポンプに備えられた図示しない閉塞センサに対応する位置に設けられ、該第２のチューブ露出部１４ａにおいて輸液チューブ２の折れや針詰まり等による輸液チューブ２内の液流停止状態を検知可能としている。第３のチューブ露出部１４ｂは、前記輸液ポンプに備えられた図示しない気泡センサに対応する位置に設けられ、該第３のチューブ露出部１４ｂにおいて輸液チューブ２内を移動する気泡を検知可能としている。
【００２３】
クランプ部１２は、図２に示すように、付勢部材である後述する金属製の板状バネ１５と、該バネ１５の付勢によって輸液チューブ２に圧接する圧接部１６とを備えている。圧接部１６は、図４（ａ）に示すように、ハウジング５の第１側半部６に第１のアーム部１７を介して一体に設けられている。第１のアーム部１７は、弾発的に撓むことによって揺動自在となっている。
【００２４】
更に、クランプ部１２は、図３に示すように、前記圧接部１６に対向する圧接解除部１８を備えている。圧接解除部１８は、図４（ｂ）に示すように、ハウジング５の第２側半部７に第２のアーム部１９を介して一体に設けられている。第２のアーム部１９は、前記第１のアーム部１７に平行に延設され、弾発的に撓むことによって揺動自在となっている。また、該圧接解除部１８の形状は、図６（ａ）乃至図６（ｃ）に示すように、輸液チューブ２を収容可能にコ字形に屈曲され、その先端側が前記圧接部１６に当接する。
【００２５】
前記バネ１５は、図５（ａ）に示すように、第１延設部２０と第２延設部２１とが連設部２２を介してを互い対向するように略コ字形に屈曲形成されている。これにより、第１延設部２０が第２延設部２１に接近する方向に付勢力を発生する。第２延設部２１は、図５（ｂ）に示すように、平行に延出する一対の延出部２３を備えている。バネ１５の第１延設部２０は、図２及び図６（ａ）に示すように、圧接部１６に当接して圧接部１６を付勢する。バネ１５の第２延設部２１は、一対の延出部２３の間に圧接解除部１８が位置させ、該圧接解除部１８に付勢力を付与することはない。両延出部２３は、図３に示すように、圧接解除部１８及び第２のアーム部１９に沿ってその両側に形成されている一対の段差部２４に当接し、バネ１５の第１延設部２０の付勢を受けて第１延設部２０の付勢力を確実に発生させるようになっている。更に、後述するが、バネ１５は、クランプ部１２において前記第１のアーム部１７に沿って移動自在とされている。即ち、図６（ｃ）に示すように、圧接部１６に対する付勢方向に直行する方向にバネ１５をスライドさせることができる。また、圧接部１６を付勢する位置にバネ１５をスライドさせると、バネ１５の第１延設部２０が第１のアーム部１７に設けられたカム部２５に沿って移動し、図６（ａ）に示すように圧接部１６を付勢する状態を円滑に形成することができる。
【００２６】
図６（ａ）は、クランプ部１２における輸液チューブ２のクランプ状態を示している。このときには、バネ１５の第１延設部２０によって圧接部１６が付勢され、圧接部１６によって輸液チューブ２が押し潰されるようにして輸液チューブ２内の薬液の流動が阻止される（アンチフリーフロー状態）。これにより、例えば、図１に示すように、輸液ポンプ３からカセット１を取り外した際に、輸液チューブ２内の薬液が急激に流動することを防止することができる。なお、輸液ポンプ３にカセット１を装着したときには、輸液ポンプ３に備えている図示しない押圧手段によって圧接解除部１８が押圧されるので、図６（ｂ）に示すように、バネ１５による付勢に抗して圧接部１６が輸液チューブ２への圧接が解除され、輸液チューブ２が圧接解除部１８のコ字形の内部に収容され、輸液ポンプ３による輸液が可能とされる（フリーフロー状態）。
【００２７】
また、例えば、輸液ポンプ３へのカセット１の装着に先立って、手動による気泡抜きが行なわれる場合があるが、このときには、図６（ｂ）に示すように、圧接解除部１８を手指により押圧操作することで、一時的に輸液チューブ２内の薬液を流動させることができる。
【００２８】
更に、緊急時等に輸液ポンプ３を介さず、自然落下による輸液を行なう場合には、図６（ｃ）に示すように、圧接部１６の付勢を解除する位置にバネ１５をスライドさせる。こうすることにより、圧接部１６による輸液チューブ２の押圧が解除され、自然落下による輸液を円滑に行なうことができる。しかもこのとき圧接部１６にはバネ１５の付勢が付与されていず、振動や衝撃の影響を受けて不用意に輸液チューブ２の圧接が復帰される事態を確実に防止することができる。更に、カセット１の出荷時や長期保管時に図６（ｃ）に示す圧接解除状態とすることで、輸液チューブ２が潰れた状態で永久変形することを確実に防止することができ、カセット１の出荷輸送時等においても、振動や衝撃を受けて不用意に輸液チューブ２が圧接される事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態のカセットの使用状態を示す説明図。
【図２】カセットの一方側面を示す説明的側面図。
【図３】カセットの他方側面を示す説明的側面図。
【図４】（ａ）は分解したカセットの第１側半部の内面側を示す説明図、（ｂ）は分解したカセットの第２側半部の内面側を示す説明図。
【図５】付勢部材の形状を示す説明図。
【図６】クランプ部の作動を示す説明図。
【符号の説明】
１…カセット、３…輸液ポンプ、５…ハウジング、６…第１側半部、７…第２側半部、８…係止爪（係合部）、９…係止孔（係合部）、１０…チューブ支持部、１１…第１のチューブ露出部（チューブ露出部）、１２…クランプ部、１５…バネ（付勢部材）、１６…圧接部、１７…第１のアーム部、１８…圧接解除部、１９…第２のアーム部、２５…カム部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性を有する輸液チューブの一部に取り付けられ、輸液ポンプに装着するカセットに関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種の輸液ポンプ用カセットは、輸液チューブの一部に取り付けて輸液ポンプの所定位置に装着するだけで、輸液ポンプによる輸液が行なえるようになっている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
この種の輸液ポンプにおいては、カセットが輸液ポンプから分離可能であるため、緊急時に自然落下による輸液を応急的に行ないながら、他方で輸液ポンプの各種設定を行ない、その後速やかに輸液ポンプにカセットを装着して輸液ポンプによる輸液に切り換えるといった作業が行なわれることがある。
【０００４】
このときには、例えば、先ず、フリーフロー状態にして手動により輸液チューブ内部の気泡を抜き取り、その直後にアンチフリーフロー状態にして人体に接続された輸液チューブに接続し、次いでフリーフロー状態にして輸液を開始するといった作業を迅速に行う必要がある。
【０００５】
このような状況に対応するために、従来の技術においては、輸液チューブの一部をコイルスプリングの付勢により押圧するクランプ部材が設けられ、更に、輸液チューブの押圧を解除する位置にクランプ部材を係止するキー部材が設けられている。キー部材によってクランプ部材が係止されているときには、コイルスプリングの付勢に抗してクランプ部材が輸液チューブの押圧を解除する。キー部材によるクランプ部材の係止が解除されると、コイルスプリングの付勢によりクランプ部材が輸液チューブを押圧する。これにより、キー部材によりクランプ部材を係止してフリーフロー状態とし、キー部材によるクランプ部材の係止を解除してアンチフリーフロー状態とすることができる。
【０００６】
しかし、キー部材は、コイルスプリングの付勢力に抗してクランプ部材を係止するため、比較的大きな付勢力が戻り方向（クランプ部材によるクランプ方向）に常に付与された状態にある。これによって、例えば、緊急時に自然落下による輸液を行なっているとき、カセットが振動や衝撃を受けた場合にキー部材がクランプ部材の係止位置から外れ、輸液チューブが不用意に閉塞されるおそれがある。
【０００７】
また、クランプ部材やキー部材はカセットとは別体の部品であって、カセットに移動自在に保持されている構造なので、磨耗等により破損や動作不良が発生するおそれがあり、長期間の使用により円滑な輸液が行なえなくなる不都合がある。しかも、部品点数が多く、製造時の組立工程が煩雑となるためコストが高くなる不都合がある。
【０００８】
【特許文献１】
特開２００１−２１８８４１号公報
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
かかる不都合を解消して、本発明は、フリーフローの状態とアンチフリーフローの状態とを確実に切り換え維持でき、自然落下による輸液にも容易に対応できるだけでなく部品点数が極めて少なく動作不良が発生し難い輸液ポンプ用カセットを提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、可撓性を有する輸液チューブの一部に取り付け、輸液チューブに蠕動を付与する輸液ポンプに装着する輸液ポンプ用カセットにおいて、ハウジングと、該ハウジングに輸液チューブを導通状態で支持する少なくとも一対のチューブ支持部と、両チューブ支持部の間において蠕動を付与可能に輸液チューブの一部を露出させて保持するチューブ露出部と、輸液チューブの他部を解除自在にクランプして輸液チューブ内の液流を阻止するクランプ部とを備え、該クランプ部は、輸液チューブにその直径方向に圧接自在に設けられた圧接部と、該圧接部を輸液チューブへの圧接方向に付勢する付勢部材と、該付勢部材の付勢方向に抗して押圧操作することにより前記圧接部による圧接を解除する圧接解除部とを備え、前記付勢部材は、前記圧接部を付勢する位置と、該圧接部に対する付勢方向に直行する方向に退避して該圧接部の付勢を解除する位置との間で前記ハウジングに移動自在に設けられていることを特徴とする。
【００１１】
本発明によれば、前記付勢部材による前記圧接部の付勢によって、圧接部が輸液チューブを圧接して押し潰した閉塞状態とされるので、輸液チューブ内の薬液の不用意な流動を確実に防止することができる。また、前記圧接解除部を押圧操作するだけで、前記圧接部による輸液チューブの圧接を解除することができるので、気泡抜き等の作業に際して一時的にクランプを解除することができる。これによって、手動により輸液チューブ内部の気泡を抜き取る際等のように必要なときにだけ、迅速にフリーフロー状態を形成できる。
【００１２】
更に、前記付勢部材を移動自在に設けたことにより、前記圧接解除部を押圧操作したときだけでなく、付勢部材を圧接部の付勢を解除する位置に移動させたときにも、フリーフロー状態を形成することができる。即ち、例えば、緊急時に自然落下による輸液を行なうとき、付勢部材を圧接部の付勢方向に直行する方向に退避移動させることにより、圧接部は付勢部材からの付勢力を受けることなく輸液チューブの押圧を解除した状態となる。これによって、従来のような付勢力が付与された状態で付勢力に抗して輸液チューブの押圧を解除する場合に比べて、一層確実にフリーフロー状態を維持することができ、振動や衝撃によってアンチフリーフロー状態に戻るといったことを確実に回避することができる。それだけでなく、例えば出荷時等の未使用時に付勢部材を圧接部の付勢を解除する位置に移動させておくことにより、クランプ部の輸液チューブが潰れた状態に永久変形されることを防止することができる。
【００１３】
また、本発明において、前記圧接部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って揺動自在に延びる第１のアーム部の先端に設けられ、前記圧接解除部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って前記圧接部の第１のアーム部に平行に揺動自在に延びる第２のアーム部の先端に設けられ、前記付勢部材は、板状のバネであって前記圧接部に当接して該圧接部を付勢する付勢位置と、前記圧接部への当接を解除して該圧接部による輸液チューブの圧接を解除した状態とする付勢解除位置とに前記第１のアーム部に沿って移動自在に設けられ、前記第１のアーム部は、付勢部材が付勢解除位置から付勢位置に移動したときに該付勢部材に摺接して前記圧接部を輸液チューブに圧接させる方向に該第１のアーム部を揺動させるカム部を備えることを特徴とする。
【００１４】
前記圧接部が第１のアーム部を介してハウジングに連設され、前記圧接解除部が第２のアーム部を介してハウジングに連設されていることにより、前記圧接部及び前記圧接解除部は、第１のアーム部及び第２のアーム部の揺動によって作動する。これにより、前記圧接部及び前記圧接解除部とハウジングとの接触を少なくして作動させることができるので、前記圧接部及び前記圧接解除部の磨耗が少なく、磨耗による動作不良の発生を防止することができる。
【００１５】
更に、付勢部材を付勢解除位置から付勢位置に移動させるだけで、第１のアーム部がカム部を介して輸液チューブの押圧方向に円滑に揺動され、圧接部の付勢状態を極めて容易に形成することができる。
【００１６】
また、本発明において、前記ハウジングは、前記チューブ支持部を介して支持された輸液チューブの長手方向に直交して前記圧接部を備える第１側半部と、前記圧接解除部を備える第２側半部とに２分割自在であり、第１側半部と第２側半部とは互いに係合する係合部を介して一体に連結されていることを特徴とする。
【００１７】
即ち、カセットを組立てるときには、第１側半部と第２側半部との間に輸液チューブを挟み、第１側半部と第２側半部とを互いに連結することによりハウジングを容易に形成することができる。また、第１側半部には前記圧接部が連設され、第２側半部には前記圧接解除部が連設されていることにより、ハウジングを構成する部品点数が極めて少なく、組立て容易でしかも製造コストを低減することができる。
【００１８】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図１は本実施形態のカセットの使用状態を示す説明図、図２はカセットの一方側面を示す説明的側面図、図３はカセットの他方側面を示す説明的側面図、図４（ａ）は分解したカセットの第１側半部の内面側を示す説明図、図４（ｂ）は分解したカセットの第２側半部の内面側を示す説明図、図５は付勢部材の形状を示す説明図、図６はクランプ部の作動を示す説明図である。
【００１９】
図１に示すように、本実施形態のカセット１は、可撓性を有する輸液チューブ２の一部に取り付けられ、輸液ポンプ３の挿入スリット４に挿入することによって輸液ポンプ３への装着が完了する。輸液ポンプ３は、図示しないが、カセット１に支持されている輸液チューブ２に蠕動を付与する複数のフィンガーからなる蠕動ユニットを備えている。
【００２０】
カセット１は、図２及び図３に示すように、合成樹脂製のハウジング５を備えている。ハウジング５は、図４（ａ）に示す第１側半部６と、第１側半部６に対応する形状の図４（ｂ）に示す第２側半部７とによって構成されており、第１側半部６の周縁に設けられた複数の係止爪８と第２側半部７の周縁に設けられた係止孔９とを互いに係合させて連結することにより一体とされている。
【００２１】
ハウジング５は、図２及び図３に示すように、複数のチューブ支持部１０を備えている。各チューブ支持部１０は、前記第１側半部６と第２側半部７との連結時に輸液チューブ２を挟み込むようにして支持する。
【００２２】
また、ハウジング５には、前述した輸液ポンプの蠕動ユニットに対応する位置において輸液チューブ２の一部を露出させる第１のチューブ露出部１１と、輸液チューブ２の他部をクランプするクランプ部１２と、該ハウジング５の一部に突出する把持部１３とが形成されている。更に、クランプ部１２の隣接位置には、第２のチューブ露出部１４ａ及び第３のチューブ露出部１４ｂが設けられている。 第２のチューブ露出部１４ａは、前記輸液ポンプに備えられた図示しない閉塞センサに対応する位置に設けられ、該第２のチューブ露出部１４ａにおいて輸液チューブ２の折れや針詰まり等による輸液チューブ２内の液流停止状態を検知可能としている。第３のチューブ露出部１４ｂは、前記輸液ポンプに備えられた図示しない気泡センサに対応する位置に設けられ、該第３のチューブ露出部１４ｂにおいて輸液チューブ２内を移動する気泡を検知可能としている。
【００２３】
クランプ部１２は、図２に示すように、付勢部材である後述する金属製の板状バネ１５と、該バネ１５の付勢によって輸液チューブ２に圧接する圧接部１６とを備えている。圧接部１６は、図４（ａ）に示すように、ハウジング５の第１側半部６に第１のアーム部１７を介して一体に設けられている。第１のアーム部１７は、弾発的に撓むことによって揺動自在となっている。
【００２４】
更に、クランプ部１２は、図３に示すように、前記圧接部１６に対向する圧接解除部１８を備えている。圧接解除部１８は、図４（ｂ）に示すように、ハウジング５の第２側半部７に第２のアーム部１９を介して一体に設けられている。第２のアーム部１９は、前記第１のアーム部１７に平行に延設され、弾発的に撓むことによって揺動自在となっている。また、該圧接解除部１８の形状は、図６（ａ）乃至図６（ｃ）に示すように、輸液チューブ２を収容可能にコ字形に屈曲され、その先端側が前記圧接部１６に当接する。
【００２５】
前記バネ１５は、図５（ａ）に示すように、第１延設部２０と第２延設部２１とが連設部２２を介してを互い対向するように略コ字形に屈曲形成されている。これにより、第１延設部２０が第２延設部２１に接近する方向に付勢力を発生する。第２延設部２１は、図５（ｂ）に示すように、平行に延出する一対の延出部２３を備えている。バネ１５の第１延設部２０は、図２及び図６（ａ）に示すように、圧接部１６に当接して圧接部１６を付勢する。バネ１５の第２延設部２１は、一対の延出部２３の間に圧接解除部１８が位置させ、該圧接解除部１８に付勢力を付与することはない。両延出部２３は、図３に示すように、圧接解除部１８及び第２のアーム部１９に沿ってその両側に形成されている一対の段差部２４に当接し、バネ１５の第１延設部２０の付勢を受けて第１延設部２０の付勢力を確実に発生させるようになっている。更に、後述するが、バネ１５は、クランプ部１２において前記第１のアーム部１７に沿って移動自在とされている。即ち、図６（ｃ）に示すように、圧接部１６に対する付勢方向に直行する方向にバネ１５をスライドさせることができる。また、圧接部１６を付勢する位置にバネ１５をスライドさせると、バネ１５の第１延設部２０が第１のアーム部１７に設けられたカム部２５に沿って移動し、図６（ａ）に示すように圧接部１６を付勢する状態を円滑に形成することができる。
【００２６】
図６（ａ）は、クランプ部１２における輸液チューブ２のクランプ状態を示している。このときには、バネ１５の第１延設部２０によって圧接部１６が付勢され、圧接部１６によって輸液チューブ２が押し潰されるようにして輸液チューブ２内の薬液の流動が阻止される（アンチフリーフロー状態）。これにより、例えば、図１に示すように、輸液ポンプ３からカセット１を取り外した際に、輸液チューブ２内の薬液が急激に流動することを防止することができる。なお、輸液ポンプ３にカセット１を装着したときには、輸液ポンプ３に備えている図示しない押圧手段によって圧接解除部１８が押圧されるので、図６（ｂ）に示すように、バネ１５による付勢に抗して圧接部１６が輸液チューブ２への圧接が解除され、輸液チューブ２が圧接解除部１８のコ字形の内部に収容され、輸液ポンプ３による輸液が可能とされる（フリーフロー状態）。
【００２７】
また、例えば、輸液ポンプ３へのカセット１の装着に先立って、手動による気泡抜きが行なわれる場合があるが、このときには、図６（ｂ）に示すように、圧接解除部１８を手指により押圧操作することで、一時的に輸液チューブ２内の薬液を流動させることができる。
【００２８】
更に、緊急時等に輸液ポンプ３を介さず、自然落下による輸液を行なう場合には、図６（ｃ）に示すように、圧接部１６の付勢を解除する位置にバネ１５をスライドさせる。こうすることにより、圧接部１６による輸液チューブ２の押圧が解除され、自然落下による輸液を円滑に行なうことができる。しかもこのとき圧接部１６にはバネ１５の付勢が付与されていず、振動や衝撃の影響を受けて不用意に輸液チューブ２の圧接が復帰される事態を確実に防止することができる。更に、カセット１の出荷時や長期保管時に図６（ｃ）に示す圧接解除状態とすることで、輸液チューブ２が潰れた状態で永久変形することを確実に防止することができ、カセット１の出荷輸送時等においても、振動や衝撃を受けて不用意に輸液チューブ２が圧接される事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態のカセットの使用状態を示す説明図。
【図２】カセットの一方側面を示す説明的側面図。
【図３】カセットの他方側面を示す説明的側面図。
【図４】（ａ）は分解したカセットの第１側半部の内面側を示す説明図、（ｂ）は分解したカセットの第２側半部の内面側を示す説明図。
【図５】付勢部材の形状を示す説明図。
【図６】クランプ部の作動を示す説明図。
【符号の説明】
１…カセット、３…輸液ポンプ、５…ハウジング、６…第１側半部、７…第２側半部、８…係止爪（係合部）、９…係止孔（係合部）、１０…チューブ支持部、１１…第１のチューブ露出部（チューブ露出部）、１２…クランプ部、１５…バネ（付勢部材）、１６…圧接部、１７…第１のアーム部、１８…圧接解除部、１９…第２のアーム部、２５…カム部。
Claims (3)
- 可撓性を有する輸液チューブの一部に取り付け、輸液チューブに蠕動を付与する輸液ポンプに装着する輸液ポンプ用カセットにおいて、
ハウジングと、該ハウジングに輸液チューブを導通状態で支持する少なくとも一対のチューブ支持部と、両チューブ支持部の間において蠕動を付与可能に輸液チューブの一部を露出させて保持するチューブ露出部と、輸液チューブの他部を解除自在にクランプして輸液チューブ内の液流を阻止するクランプ部とを備え、
該クランプ部は、輸液チューブにその直径方向に圧接自在に設けられた圧接部と、該圧接部を輸液チューブへの圧接方向に付勢する付勢部材と、該付勢部材の付勢方向に抗して押圧操作することにより前記圧接部による圧接を解除する圧接解除部とを備え、
前記付勢部材は、前記圧接部を付勢する位置と、該圧接部に対する付勢方向に直行する方向に退避して該圧接部の付勢を解除する位置との間で前記ハウジングに移動自在に設けられていることを特徴とする輸液ポンプ用カセット。 - 前記圧接部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って揺動自在に延びる第１のアーム部の先端に設けられ、
前記圧接解除部は、基部がハウジングに連設されて前記輸液チューブに向って前記圧接部の第１のアーム部に平行に揺動自在に延びる第２のアーム部の先端に設けられ、
前記付勢部材は、板状のバネであって前記圧接部に当接して該圧接部を付勢する付勢位置と、前記圧接部への当接を解除して該圧接部による輸液チューブの圧接を解除した状態とする付勢解除位置とに前記第１のアーム部に沿って移動自在に設けられ、
前記第１のアーム部は、付勢部材が付勢解除位置から付勢位置に移動したときに該付勢部材に摺接して前記圧接部を輸液チューブに圧接させる方向に該第１のアーム部を揺動させるカム部を備えることを特徴とする請求項１記載の輸液ポンプ用カセット。 - 前記ハウジングは、前記チューブ支持部を介して支持された輸液チューブの長手方向に直交して前記圧接部を備える第１側半部と、前記圧接解除部を備える第２側半部とに２分割自在であり、第１側半部と第２側半部とは互いに係合する係合部を介して一体に連結されていることを特徴とする請求項１又は２記載の輸液ポンプ用カセット。
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