JP3884577B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の燃料噴射制御装置に係わり、特に内燃機関の燃料噴射時の燃料圧力を制御する手段の異常または燃料圧力を検出する手段の異常を検出する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関を超希薄空燃比で運転することで大幅な燃費と排気ガス性能の向上を得る事が出来るが、超希薄空燃比で内燃機関を運転するためには高圧の燃料が必要である。内燃機関の燃料圧力は所定の一定圧力値を取る事が多い。しかし、燃焼性能を充分に引き出すには燃料圧力を可変にするべきであり、例えば、5MPa〜10MPa程度の間に制御をしている。この燃料圧力の制御には燃料圧力を制御することを目的とする電制プレッシャレギュレータや燃料圧力を検出する燃料圧力センサが使用される。しかしこの燃料圧力を制御する電制プレッシャレギュレータや燃料圧力を検出する燃料圧力センサが万が一故障した場合に、燃料圧力の制御が不可能になるという問題を有する。
【0003】
燃料の圧力異常を検出して異常診断を実現する燃料噴射装置の異常診断装置として、特開平10−47144号公報が知られている。すなわち、この公報には、燃料を加圧し、当該加圧燃料を燃料噴射ノズルから内燃機関に噴射供給するための燃料噴射ポンプと、燃料噴射ノズルから内燃機関に噴射供給される燃料量を調節するための電磁弁と、燃料量を所定量に制御すべく電磁弁に対して駆動信号を出力するための駆動制御手段とを備えた燃料噴射装置の異常診断装置であって、燃料圧力を検出するための燃料圧力検出手段と、駆動制御手段から電磁弁に対して開弁信号が出力された後における燃料圧力の変化に基づいて電磁弁の異常判定を行うための判定手段とを備えたことを特徴とする燃料噴射装置の異常診断装置が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
燃料系の燃料圧力が異常に上昇したかあるいは減少したかを検出するのみでは、実際には運転性を悪化させる故障は見つけることができたとしても、原因が何か判定できない。また、誤って故障と検出した場合には、部品交換されてしまうことになる。
【0005】
そこで本発明は上記問題点を鑑みて、燃料圧力を制御する手段や燃料圧力を検出する手段が故障した場合には、異常を速やかに検出し、かつ異常の原因となる故障部位を検出することを目的とする。また、故障部品を特定することで、故障部品に対して、燃料圧力を制御する手段の制御量を、変化することによって、内燃機関を制御可能とすることを目的とする。さらに、前記故障が復帰した際には、異常検出をクリアし通常制御を行うことで、誤った部品交換を防ぐことができるようにするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段と、内燃機関の運転状態を検出する手段と内燃機関の空燃比を検出する手段と検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、内燃機関の燃料圧力を検出する手段において検出された燃料圧力値が、燃料圧力を制御する手段の制御量によって決定される所定の範囲以外と判定したときに、燃料圧力を変化させる手段の異常または燃料圧力を検出する手段の異常を検出する異常検出手段を有し、通常制御とは異なる手段おいて内燃機関を制御することにより達成される。
【0007】
また、燃料圧力を変化させる手段または燃料圧力を検出する手段の異常を検出するのに、内燃機関の空燃比を使用した空燃比状態量に該当する信号を用い、当該信号が、所定の範囲内であるか否やを検出することで、その原因となる異常部位を特定することができることにより達成される。
【0008】
本発明は、具体的には次に掲げる装置および方法を提供する。
【0009】
本発明は、内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、検出された燃料圧力から燃料系の異常を診断する異常診断手段と、および検出された空燃比あるいは空燃比フィードバック制御量などの空燃比状態量に基づいて、燃料系に異常があったと診断されたときに、燃料系の異常部位を検出する異常部位検出手段とを含んで構成される内燃機関の制御装置を提供する。
【0010】
本発明は、更に、前記内燃機関の燃料圧力を検出する手段において検出された燃料圧力値が、前記燃料圧力を制御する手段の制御量によって決定される所定の範囲以外と判定したとき、燃料系の異常を診断するものである内燃機関の制御装置を提供する。
【0011】
本発明は、更に、前記異常部位検出手段は、前記内燃機関の運転条件によって決定される目標空燃比に対して、前記内燃機関の空燃比を検出する手段において検出された実空燃比の値が、前記目標空燃比の所定の範囲内にあるか否かを検出することで、燃料系の異常部位を検出するものである内燃機関の制御装置を提供する。
【0012】
本発明は、更に、前記異常部位検出手段は、前記空燃比フィードバック制御の制御量が、所定の範囲内にあるか否かを検出することで、燃料系の異常部位を検出するものである内燃機関の制御装置を提供する。
【0013】
本発明は、内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、検出された燃料圧力から燃料系の異常を診断する異常診断手段と、および前記燃料圧力の変化が判定されたときに、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を固定制御量にする制御量固定手段とを含んで構成される内燃機関の制御装置を提供する。
【0014】
本発明は、更に、前記異常診断装置は、前記内燃機関の燃料圧力を検出する手段において検出された燃料圧力値が、前記燃料圧力を制御する手段の制御量によって決定される所定の範囲以外と判定したとき、燃料系の異常を診断するものである内燃機関の制御装置を提供する。
【0015】
本発明は、更に、前記固定制御量は、零またはフル制御量である内燃機関の制御装置を提供する。
【0016】
本発明は、更に、前記固定制御量は、大小の固定量からなり、交互に振られる制御量である内燃機関の制御装置を提供する。
【0017】
本発明は、内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、検出された燃料圧力から燃料系の異常を診断する異常診断手段と、および前記燃料圧力の変化が判定されたときに、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を任意に変化させて、該変化制御量によって決定される燃料圧力の範囲内にあるかを検出し、範囲内にあるときには、正常と判定する正常判定手段とを含んで構成される内燃機関の制御装置を提供する。
【0018】
本発明は、更に、前記任意に変化させる制御量は、零制御量、フル制御量または大小交互固定量である内燃機関の制御装置を提供する。
【0019】
本発明は、内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御方法において、燃料系の燃料圧力から燃料系の異常を検出し、該異常検出があったときに、空燃比センサ信号がリーンはりつき状態か、リッチはりつき状態かを求め、リーンはりつき状態ではリッチ状態に、リッチはりつき状態ではリーン状態に制御することでエンジンの運転を可能にする内燃機関の制御方法を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる内燃機関の制御装置の実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明が適用されたエンジンシステムの一例を示したもので、図においてエンジン8が吸入すべき空気はエアクリーナ1の入口部2から取り入れられ、吸入空気量を制御する絞弁5を設置した絞弁ボディ6を通り、コレクタ7に入る。ここで、絞弁5は、これを駆動するモータ10と連結しており、モータ10を駆動することにより絞弁5が操作される。絞弁5を操作して、吸入空気量を制御できるようになっている。コレクタ7に至った吸入空気はエンジン8の各シリンダに接続された各吸気管9に分配され、シリンダ内28に導かれる。この吸気管ではそれぞれの気筒にスワールコントロールバルブ31が設けられており、ここで吸入空気に偏向力を与える。偏向した力を与えられた空気はエンジン8のシリンダ内で、後で述べる燃料の噴霧と混合される。
【0022】
エンジンシステムにおける燃料系の構成を図2に示す。
【0023】
ガソリンなどの燃料は、図に示すように、燃料タンク11から低圧燃料ポンプ58により吸引、高圧燃料ポンプ12で加圧された上で燃料噴射弁13、燃料圧力センサ14、電制プレッシャレギュレータ41が配管されている燃料系4に供給される。
【0024】
そして、この燃料は、図3,図4で詳細に説明する電制プレッシャレギュレータ41により所定の圧力に調圧され、それぞれのシリンダに燃料噴射口を開口している燃料噴射弁13からシリンダ28内に噴射される。
【0025】
また、高圧燃料ポンプ12から燃料噴射弁13の間の燃料配管内の燃料圧力は、基本的には電制プレッシャレギュレータ41で制御されているが、この電制プレッシャレギュレータ41への操作量が与えられないとき、あるいは、電制プレッシャレギュレータの制御系が制御できなくなった時には、機械的なプレッシャレギュレータ61で調整される構成となっている。
【0026】
図1において、燃料噴射弁13から噴射された燃料は、点火コイル17で高電圧化された点火信号により点火プラグ19で着火される。
【0027】
また、空気流量計3からは吸気流量を表わす信号が出力され、コントロールユニット15に入力されるようになっている。
【0028】
さらに、上記絞弁ボディ6には絞弁5の開度を検出するスロットルセンサ18が取り付けられており、その出力もコントロールユニット15に入力されるようになっている。
【0029】
次に、16はクランク角センサであり、カム軸によって回転駆動され、クランク軸の回転位置を表わす信号を少なくとも1〜4°程度の精度で出力する。この信号もコントロールユニット15に入力されるようになっている。これらの信号により燃料の噴射タイミングおよび点火のタイミングは制御される。
【0030】
20は、排気管に設けられたA/Fセンサで、排気ガスの成分から実運転空燃比を検出、出力して、その信号は同じくコントロールユニット15に入力されるようになっている。
【0031】
コントロールユニット15はエンジンの運転状態を検出する各種のセンサなどからの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、上記した燃料噴射弁13や点火コイル17や絞弁操作のモータ10に所定の制御信号を出力し、燃料供給制御、点火時期制御、吸入空気量制御を実行する。
【0032】
21はEGR弁であり、その信号もコントロールユニット15に入力される。図2において、燃料タンク11の中に設けられた低圧燃料ポンプ58によりフィードされた燃料は高圧燃料ポンプ12のポンプ部42において10MPaを超す高圧に加圧される。この燃料はインジェクタ13に供給をされるが、その圧力は電制プレッシャレギュレータ41でタンクへのリターン量を調整する事で制御される。この燃料圧力は燃料圧力センサ14により測定されており、燃料圧力は予め決められた値に電制プレッシャレギュレータで調整制御される。
【0033】
図3は図2において12で示す高圧燃料ポンプの構造を示すもので、ポンプ部42はピストンプランジャ型であり、このピストンの往復動によって燃料を高圧にしている。一方41は電制プレッシャレギュレータであり、コントロールユニット15からコイルに作動デューティ信号を与える事で後で説明する性能を得ることができる。図中のバルブ部43については図4を用いて更に詳しく説明をする。
【0034】
図4は、バルブ部43を示すもので、プランジャ44とバルブ46とバルブシート47から構成をされている。燃料配管48内の燃料が図中のIN側よりバルブ部43に入り、図中のOUT側の燃料配管49に排出される構造となっている。電制プレッシャレギュレータ41に前記コントロールユニット15から作動デューティ信号が与えられない時には、バルブ部43のバルブ46はバネでバルブシート47に押し付けられており、燃料配管48のIN側からの燃料は、OUT側の燃料配管49には排出されず、燃料配管内の燃料圧力は上昇する。
【0035】
図5は、電制プレッシャレギュレータの特性を示しており、前記電制プレッシャレギュレータ41のプランジャ44は、前記コントロールユニット15からコイルに作用される作動デューティ信号に対して変位で示すような位置の変化をする。すなわち、作動デューティ信号によって、プランジャ44の吸引力を制御し、前記バルブ46からの逃がし燃料量を制御することで、燃料配管48内の燃料圧力を目標燃料圧力に制御するものである。例えば、作動デューティ量が大きくなれば、前記プランジャ44の操作量が大きくなり、燃料配管48内からの燃料逃がし量が多くなり燃料圧力が低下することを示している。
【0036】
次に、図6,図7おいて、電制プレッシャレギュレータの制御方法について説明をする。
【0037】
図6は、電制プレッシャレギュレータの制御デューティについて説明するものである。電制プレッシャレギュレータの制御デューティは、電制プレッシャレギュレータの制御サイクル中において、開弁時間の割合を示すものであり、例えば、電制プレッシャレギュレータの制御サイクルをAとし、電制プレッシャレギュレータのコイルへの通電時間をBとすれば、制御デューティはB/A(%)で示される。この状態での燃料配管内の燃料圧力の挙動は図7で示すような動きをしており、電制プレッシャレギュレータのコイルへの通電時間Bに同期する形で燃料圧力が変動する。
【0038】
図8は図1において14で示した燃料圧力センサの特性を示すもので、燃料圧力に対して比例する電気信号を出力する。この燃料圧力信号は、図9に示すコントロールユニットに入力されている。
【0039】
コントロールユニットでは、マイクロコンピュータにプログラムされたソフトウエアによって、前記燃料圧力センサの出力を含むエンジンの運転状態が入力され、入力された信号をもとに演算を行い、エンジン制御システム全体を制御している。
【0040】
図9は、コントロールユニットの入出力を示すもので、入力はエンジンの運転状態を示す、空気量、エンジン回転数、運転者からの指示値であるアクセル開度、アクセル開度に呼応するスロットル開度に加えて燃料の圧力を検出する燃料圧力センサなどがある。 一方、出力としては燃料の量と噴射タイミングを決定するインジェクタ出力、この燃料に対し点火をさせるための点火信号、アクセル開度に呼応するスルットル開度の指令値に加えて、燃料の圧力を制御する電制プレッシャレギュレータへの指令値などがある。
【0041】
次に、燃料圧力の制御方法について説明をする。燃料ポンプは、エンジンのカップリングにより直接駆動されるため、エンジン回転数に比例するポンプ回転数と、燃料吐出量の関係は図10のような関係となる。燃料ポンプから吐出される燃料量は、図10に示すように、エンジン回転数に比例する特性になるので、エンジン回転数Neがきまると燃料吐出量はQとなる。
【0042】
図11は電制プレッシャレギュレータの作動特性を示すものである。燃料圧力Pは、電制プレッシャレギュレータの作動デューティと燃料ポンプ吐出量の関係から一義的に決定される。例えば、燃料圧力をP(MPa)に設定するには、ポンプ吐出量がQ(l/h)の場合は、電制プレッシャレギュレータの作動デューティを50%とすれば、設定できるし、またポンプ吐出量がQQQ(l/h)の場合には、電制プレッシャレギュレータの作動デューティを75%にすれば、P(MPa)に設定できる。
【0043】
しかし、実際の運転条件においては、エンジン回転数を一定とした条件が殆どである。そこで、エンジン回転数を一定にした場合、つまりポンプ吐出量を一定をした場合の電制プレッシャレギュレータの作動デューティと制御燃料圧力の関係を、図12に示す。例えば、図11に示すポンプ吐出量がQQ(l/h)一定の場合、電制プレッシャレギュレータの作動デューティ値がDaより大きくなれば、電制プレッシャレギュレータからの逃がし流量が多くなり、燃料圧力は低くなることを示している。一方、電制プレッシャレギュレータの作動デューティがDaより小さくなれば、電制プレッシャレギュレータからの逃がし流量が少なくなり、燃料圧力が高くなることを示している。また、電制プレッシャレギュレータの作動デューティ値が0%、すなわち、制御操作量なしの状態は、電制プレッシャレギュレータからの逃がし流量がなくなり燃料圧力は異常に高くなる。しかし、機械的なプレッシャレギュレータでその上限が規制される。
【0044】
次に、燃料圧力が変化することによって、エンジンが要求する燃料噴射量を噴射するための、燃料噴射パルス幅の演算について図13の制御フローチャートを用いて説明する。図13に示す一連の処理は一定時間、例えば10ms毎の割り込み処理によって実行される。まず、ステップ131で吸入空気量Qaを、ステップ132でエンジン回転数Neを、ステップ133で燃料圧力センサ13の出力である検出燃料圧力Pfを読み込む。ステップ134では次式(1)により燃料噴射基本パルス幅Tpを計算する。
【0045】
Tp = K × (Qa / Ne) ・・・・・・式(1)
ここでKは、例えば燃料圧力10MPaで燃料を噴射するとき、シリンダ内への吸入空気量と燃料噴射量の比が理論空燃比14.7になるように定められたインジェクタ噴射定数である。
【0046】
ステップ135では次式(2)に従って燃料噴射基本パルス幅Tpに各種補正係数を乗じて燃料噴射パルス幅Tiを求める。
【0047】
Ti = Tp × TFBYA × COEF × FPHOS × ALPHA ・・・・・・式(2)ここで、TFBYAはシリンダ内への吸入空気量と燃料噴射量の比が目標空燃比となるように設定された補正係数である。目標空燃比は、例えば燃料噴射基本パルス幅Tpとエンジン回転数Neを軸とする目標空燃比マップを参照して求める。COEFは過渡時補正や始動後補正などの運転状態によって作用する補正係数である。FPHOSは、図14,15を用いて詳細に説明するが、異なる燃料圧力であっても燃料噴射量が同じになるように補正する燃料圧力補正係数である。ALPHAは空燃比フィードバック係数である。
【0048】
図14は、燃料噴射弁の開弁パルス幅を一定とする条件における燃料圧力と燃料噴射量の関係を示すものである。例えば、燃料圧力P1のときの燃料噴射量はAであり、燃料圧力P2の場合の燃料噴射量はBである。
【0049】
すなわち、同じ燃料噴射パルス幅でも燃料圧力が高いほど燃料噴射量は多く、燃料圧力が低いほど燃料噴射量は少なくなることを示している。
【0050】
そこで、燃料圧力変化に対しても、所定の燃料量を噴射するための燃料噴射パルス幅の操作を、図15を用いて説明する。
【0051】
図15は、燃料圧力に対する燃料噴射パルス幅の補正係数の関係を示している。
【0052】
燃料圧力が異なる状態から、吸入空気量に対する所定の燃料噴射量を燃料噴射弁から噴射する場合、図15に示すように同一噴射パルス幅では、燃料噴射量に過不足が生じる。そこで、燃料圧力に応じて、同一の燃料噴射量が設定できるように、図15に示す燃料圧力に対する燃料噴射パルス幅の補正係数PFHOSを用いる。インジェクタ噴射定数Kが燃料圧力10MPaで決定されている場合、燃料圧力補正係数FPHOSは検出燃料圧力Pfが10MPaの時に1.0とし、検出燃料圧力Pfが10MPaより降圧するほど燃料噴射量が減少するため、燃料圧力補正係数FPHOSを1.0以上の値で燃料噴射量を多くするように設定し、検出燃料圧力Pfが10MPaより昇圧するほど燃料噴射量が増加するため、燃料圧力補正係数FPHOSは1.0未満の値で燃料噴射量が少なくなるように設定する。例えば、Qinjという燃料噴射量が必要な場合、その時の燃料圧力がP1の場合には、その燃料圧力の燃料噴射パルス幅補正係数PFHOSはAkを用い、また、燃料圧力がP2の場合には、燃料噴射パルス幅補正係数PFHOSはBkを用いることで、異なる燃料圧力においても、Qinjという同一の燃料量を噴射することができる。
【0053】
以上が、本発明に適用される内燃機関の制御装置の形態である。
【0054】
次に、電制プレッシャレギュレータまたは燃料圧力センサが故障した場合の挙動を説明する。
【0055】
図12において、図中Aで示す部分は燃料系が正常に動作をしている場合である。一方、BまたはCの領域は、燃料系が正常に動作していない場合である。例えば、Bの領域は、所定の電制プレッシャレギュレータの制御量に対して検出された燃料圧力値が所定の燃料圧力値より高くなる場合である。これは、電制プレッシャレギュレータが異常となった場合、もしくは、燃料圧力センサが異常になった場合に起こる。電制プレッシャレギュレータが異常の場合、所定の作動デューティに対してバルブが所定量開弁駆動できないことが原因である。また、燃料圧力センサが異常となった場合は、燃料圧力センサの検出する燃料圧力値が実際の燃料圧力値より高く出力されることが原因である。
【0056】
次にCの領域は、所定の電制プレッシャレギュレータの制御量に対して検出された燃料圧力値が所定の燃料圧力値より低くなる場合である。これは、電制プレッシャレギュレータが異常となった場合、もしくは、燃料圧力センサが異常になった場合に起こる。電制プレッシャレギュレータが異常となった場合は、所定の作動デューティに対してバルブが所定量以上駆動していることが原因である。また、燃料圧力センサが異常となった場合は、燃料圧力センサの検出する燃料圧力値が実際の燃料圧力値より低い場合を示している。
【0057】
つまり、電制プレッシャレギュレータの異常または、燃料圧力センサの異常となった場合、燃料圧力センサにおいて検出された燃料圧力値が、電制プレッシャレギュレータの作動デューティによって決定される所定の燃料圧力の範囲以外となる。
【0058】
電制プレッシャレギュレータまたは燃料圧力センサが異常となった場合、エンジンの燃焼に必要な燃料量及び燃料圧力が供給できない。そこで、燃料圧力センサの異常及び電制プレッシャレギュレータの異常の検出方法を、下記制御フローチャートを用いて説明する。
【0059】
図16は図12で説明をした燃料系異常状態検出のための制御フローチャートであり、流れに沿って説明をする。ステップ161では、燃料圧力センサの出力電圧値Vfuelをもとに、図8の燃料圧力センサの出力電圧と燃料圧力関係より、燃料圧力Pfを算出する。ステップ162では、エンジン回転数、負荷等のエンジン運転条件信号をもとに、エンジンの運転条件に応じて決定されている制御燃料圧力のマップを検索し、目標燃料圧力TPfを算出する。ステップ163では、ステップ161において燃料圧力センサにより検出した燃料圧力Pfが、目標燃料圧力TPfと一致するように、燃料圧力Pfと目標燃料圧力TPfとの偏差を燃料圧力フィードバックで制御する。ステップ164では、エンジン回転数、負荷等のエンジン運転条件信号をもとに、エンジンの運転条件に応じて決定されている電制プレッシャレギュレータの制御デューティのマップを検索し、ステップ163で算出した燃料圧力フィードバック制御量を加算して、電制プレッシャレギュレータの作動デューティPfdutyを算出する。ステップ165では、ステップ164で算出された電制プレッシャレギュレータの作動デューティPfdutyに対して、その時の燃料圧力センサの検出した燃料圧力Pfが、ステップ164で算出された電制プレッシャレギュレータの作動デューティPfdutyに相当する燃料系故障判定の上限燃料圧力PFmax以上または、下限燃料圧力PFmin以下であるか否やを判定する。ステップ165において燃料圧力センサの出力値が故障判定の上下限以内であれば、「燃料系異常なし」と判定する。しかし、燃料圧力センサの出力値が、故障判定の上下限以外であれば、ステップ166において、燃料圧力センサの出力値が、故障判定の上下限以外の状態を連続して時間Tpf以上経過したかどうか判断し、時間Tpf以上経過していない場合は、以下の制御をパスする。また、ステップ165,166において、燃料圧力センサの出力値が故障判定の上下限以外の状態を連続して時間Tpf以上経過した場合、「燃料系の異常」と判定して、ステップ167において「燃料系の異常」判定フラグを1にセットする。
【0060】
次に、図17は図16で説明をした燃料系の異常が検出された場合に、燃料系異常部位の検出を行うための制御フローチャートである。以下流れに沿って説明をする。
【0061】
燃料系の異常部位検出には、コントロールユニットに入力される空燃比信号または、空燃比フィードバック制御量などの空燃比状態信号を用いて行う。
【0062】
A/Fセンサを用いた場合: ステップ171において、エンジンの排気ガスより空燃比ABFを計測する。また、エンジン回転数、負荷等のエンジン運転条件信号をもとに、エンジンの運転条件に応じて決定される目標空燃比を算出する。
【0063】
ステップ172では、ステップ171において計測された実空燃比の値ABFが、目標空燃比と一致するように、実空燃比ABFの値と目標空燃比との偏差を空燃比フィードバックで制御する。ステップ173において、図16で説明した「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされているか否やを判定し、「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされてなければ、以下の制御フローはパスする。また、前記「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされている場合は、以下の制御フローを行う。ステップ174において、ステップ172で算出された空燃比フィードバック制御後の実空燃比ABFを計測し、該空燃比がエンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲にあるか否やを判断する。ステップ174において、エンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲の上限値ABFmaxまたは下限値ABFmin以内にあるか否やを判定し、前記空燃比ABFが空燃比範囲の上限値ABFmaxまたは下限値ABFmin以内にある場合は、ステップ175において、その状態が連続して時間Tabf1以上経過したかどうか判定し、経過していない場合は、ステップ176において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ174において、空燃比ABFが、エンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲の上限値ABFmaxまたは下限値ABFmin以内にあるか否やを判定し、前記空燃比ABFが空燃比範囲の上限値ABFmaxまたは下限値ABFmin以内にある状態を連続して時間Tabf1以上経過した場合は、ステップ177において、「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグを1にセットする。
【0064】
逆にステップ174において、実空燃比ABFが、エンジンの燃焼を実現するための空燃比範囲の上限値ABFmaxまたは下限値ABFmin以外にある場合は、ステップ178において、その状態が連続して時間Tabf2以上経過したかどうか判定し、経過していない場合は、ステップ179において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ174,178において、実空燃比ABFがエンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲の上下限以外にある状態を連続して時間Tabf2以上経過した場合は、ステップ170において、「燃料圧力センサの異常」判定フラグを1にセットする。
【0065】
この部分は図1を用いて更に詳しく説明する。
【0066】
空燃比フィードバック制御量を用いた場合:ステップ181においてエンジンの排気ガスより実空燃比を計測する。また、エンジン回転数、負荷等のエンジン運転条件信号をもとに、エンジンの運転条件に応じて決定されている目標空燃比を算出する。またステップ182では、ステップ181において計測された実空燃比の値ABFが、目標空燃比と一致するように、実空燃比ABFの値と目標空燃比との偏差を空燃比フィードバックで制御する。そのときの空燃比フィードバックの制御量ALPHAを算出する。ステップ183において、図16で説明した「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされているかどうかチェックし、「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされていなければ、以下の制御フローはパスする。また、前記「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされている場合は、以下の制御を行う。ステップ184において、ステップ182で算出された空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバック制御を可能にするための所定範囲にあるか否やを判断する。ステップ184において、空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバック制御を可能にするための範囲、つまり制御量ALPHAが制御量の上限値ALPmaxまたは制御量の下限値ALPmin以内にある場合、ステップ185において、その状態を連続して時間Talp1以上経過したかどうか判定する。ステップ185において、時間Talp1以上経過していない場合は、ステップ186において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ184,185において、空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバック制御を可能にするための所定範囲にある状態を連続して時間Talp1以上経過した場合は、ステップ187において「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグを1にセットする。逆に、ステップ184において、空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバック制御を可能にするための所定範囲にない場合、つまり空燃比フィードバックの制御量の上下限値と等しくなっている場合は、ステップ188において、その状態を連続して時間Talp2以上経過したかどうか判定する。ステップ188において、時間Talp2以上経過していない場合は、ステップ189において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ184,188において、空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバック制御を可能にするための所定範囲にない状態を連続して時間Talp2以上経過した場合、ステップ180において、「燃料圧力センサの異常」判定フラグを1にセットする。この部分は図19と20を用いて更に詳しく説明する。
【0067】
図19では、空燃比センサの値を基に故障部位が特定できることを示す。
【0068】
吸入空気量に応じて所定の燃料燃料量を燃料噴射弁より噴射することで、エンジンを所定の空燃比で運転する。しかし、図15で示したように燃料噴射量は燃料圧力に応じて変化するので、燃料圧力センサが異常の場合、検出した燃料圧力は実燃料圧力とは異なるため、検出した燃料圧力を基に燃料噴射を行うと、設定した空燃比に対して大きくずれることになる。つまり、燃料圧力センサが異常時は、実燃料圧力P2とは異なる燃料圧力PSngを検出し、検出した燃料圧力を基に燃料噴射パルス幅の補正を行うため、要求噴射パルス幅と異なる燃料噴射パルス幅で燃料噴射することになる。よって、目標空燃比に対して実空燃比がずれてしまうことになる。これは、図19に記載の2,3の燃料圧力検出異常領域にあることを示す。また、目標空燃比とのずれに対して、過大の空燃比フィードバック制御の制御量ALPHAを必要とするので、空燃比フィードバック制御量が上下限値まで至ってしまうことになる。
【0069】
一方、電制プレッシャレギュレータが異常の場合、所定の作動デューティに対して燃料圧力が制御できなくなった場合でも、つまり、所定の作動デューティに対して燃料圧力が上下限値以外となった場合でも、燃料圧力に応じて燃料を噴射するため、目標空燃比に対して実空燃比が大きくずれることはない。これは、図1に記載の1の燃料圧力計測正常範囲にあることになる。また、空燃比フィードバック制御量ALPHAも、制御量の上限値ALPmaxまたは制御量の下限値ALPmin以内にあることになる。
【0070】
この特性を利用して空燃比が、エンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲以内にあるか否やを判定し、前記空燃比ABFが、所定の空燃比範囲以内にある場合、もしくは、空燃比フィードバック制御量ALPHAが、制御量の上下限値以内にある場合、「電制プレッシャレギュレータの異常」と判定する。一方空燃比ABFが、エンジンの燃焼を実現するための所定の空燃比範囲以外にある場合、もしくは、空燃比フィードバックの制御量ALPHAが、空燃比フィードバックの制御量の上下限値と等しくなっている場合は、「燃料圧力センサの異常」と判定する。
【0071】
例えば、図20を用いて、燃料圧力センサが異常となった場合の異常検出の方法を説明する。
【0072】
図20中の時間Tfailにおいて燃料圧力センサが異常となった場合、燃料噴射制御は、燃料圧力センサの検出燃料圧力をもとに燃料圧力補正を行うため、結果として空燃比が目標空燃比からずれてしまう。そこで、空燃比フィードバック制御において目標空燃比に近づけようとするが、燃料圧力センサの値が異常であると空燃比フィードバックの制御量ALPHAでは補正しきれずに、結果的に空燃比フィードバックの制御量ALPHAの上限値ALPmaxまで、補正をすることになる。空燃比フィードバックの制御量ALPHAは上限値ALPmaxに張り付いた状態となる。つまり、空燃比フィードバック制御では目標空燃比との偏差をなくすことができなくなるので、目標空燃比に対して、所定範囲以外の空燃比となり、燃料圧力センサが異常と判定される。
【0073】
次に、図21は図17で説明をした電制プレッシャレギュレータの異常が検出されたときの制御フローチャートであり、以下流れに沿って説明をする。ステップ211において、図17で説明した「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグがセットされているかどうかチェックし、「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグがセットされていなければ、以下の制御フローはパスする。また、前記「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグがセットされている場合は、以下の制御を行う。
【0074】
ステップ212において、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」の実行回数PFNclnが所定の回数Ncln以上実行したかどうか判定して、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」の実行回数PFNclnが所定の回数Ncln以上実行していない場合は、ステップ213において、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」を実行する。尚、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」については、図22において詳細に説明する。ステップ213で「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」を実行後、
ステップ214で「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」の実行回数PFNclnに1を加える。ステップ215において、「燃料系の異常」判定フラグと「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグを0にクリアして、通常動作を行う。
【0075】
ステップ212において、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」の実行回数PFNclnが所定の回数Ncln以上実行した場合は、電制プレッシャレギュレータのバルブシート部に異物が噛み込んだ状態ではなく、電制プレッシャレギュレータ自体の故障、例えばコイルの断線が考えられるため、ステップ216において、電制プレッシャレギュレータの故障として、電制プレッシャレギュレータを用いた燃料圧力フィードバック制御を中止し、作動デューティPFdutyを所定の値、例えば0%に固定し、エンジンが運転できる状態にするとともに、ステップ217において、「電制プレッシャレギュレータの故障」判定フラグを1にセットし、警告灯を点灯して、ユーザに異常を知らせる。
【0076】
次に、図22において、「電制プレッシャレギュレータの掃除モード」の制御方法について説明をする。
【0077】
電制プレッシャレギュレータの作動デューティを、従来の作動デューティと異なる大小の作動デューティに交互変化させることで、電制プレッシャレギュレータは確実にこの信号に追従して作動できるようにする。この通常作動ディーティに対してより大きい,小さい作動デューティを繰り返し与えることにより、電制プレッシャレギュレータのプランジャが大きく作動することになり、電制プレッシャレギュレータを通過する燃料流量または燃料流速を変化することで電制プレッシャレギュレータのバルブ部を清掃する事ができる。この結果、電制プレッシャレギュレータのシート部及びプランジャ部に付着した異物などが取り除けるため、電制プレーシャレギュレータのシート異常による燃料圧力制御不能が解消される。
【0078】
図23は、電制プレッシャレギュレータが異常となった場合の動作を示すものである。
【0079】
例えば電制プレッシャレギュレータの駆動コイルが異常となった場合、燃料圧力の制御ができなくなり、燃料圧力が目標燃料圧力に対して異常に低下するが、燃料圧力フィードバック制御で、目標燃料圧力との偏差をなくそうと電制プレッシャレギュレータの作動デューティを操作する。その結果、図中PREGN1時間で、図16で示した電制プレッシャレギュレータの作動デューティPfdutyに対して、その時の燃料圧力センサの検出した燃料圧力Pfが、電制プレッシャレギュレータの作動デューティPfdutyに相当する燃料系故障判定の下限燃料圧力PFmin以下となり、「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされる。
【0080】
「燃料系の異常」判定フラグが1にセットされたことにより、図17または18で示した空燃比信号をもとに異常部位を検出することにより、図中のPREGN2時間で「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグを1にセットする。「電制プレッシャレギュレータの異常」判定フラグが1に設定されることにより、図21で示した電制プレッシャレギュレータの清掃制御を行うとともに、図中のPREGN3時間で「燃料系の異常」判定フラグと「電制プレッシャレギュレータに異常」判定フラグを0にクリアする。電制プレッシャレギュレータのバルブシート部に塵が付着して、燃料圧力が制御できなくなった場合は、前記清掃制御をすることで、燃料圧力の制御が可能となるが、本事例は電制プレッシャレギュレータの駆動コイルが故障した場合であり、前記清掃制御では、電制プレッシャレギュレータの異常が解消できず、結果的に図23中の時間PRGGN5で「電制プレッシャレギュレータの故障」判定フラグを1にセットし、電制プレッシャレギュレータの故障として、電制プレッシャレギュレータを用いた燃料圧力フィードバック制御を中止し、作動デューティPFdutyを所定の値、例えば0%に固定し、エンジンが運転できる状態にするとともに、警告灯を点灯して、ユーザに異常を知らせる。
【0081】
次に、図24は図17で説明した燃料圧力センサの異常が検出されたときの制御フローチャートであり、以下流れに沿って説明をする。ステップ241において、図17で説明した「燃料圧力センサの異常」判定フラグがセットされているかどうかチェックし、「燃料圧力センサの異常」判定フラグがセットされていなければ、以下の制御フローはパスする。また、前記「燃料圧力センサの異常」判定フラグがセットされている場合は、以下の流れに沿って説明をする。ステップ242において電制プレッシャレギュレータの作動デューティPFDutyを所定の値に固定する。電制プレッシャレギュレータの作動デューティを固定する値は、例えば0%またはフル制御量として、通常の制御とは異なる作動デューティとする。ステップ243おいて電制プレッシャレギュレータの作動デューティPFDutyを0%またはフル制御量に固定したまま、燃料圧力センサの出力電圧値VFuelを計測する。
【0082】
ステップ244では、ステップ243で計測された燃料圧力センサの出力値が、電制プレッシャレギュレータの作動デューティで決定される所定の燃料圧力範囲以内にあるかどうかで「燃料圧力センサの異常を判定」を行う。ステップ244で算出された燃料圧力センサの出力電圧Vfuelが、電制プレッシャレギュレータの作動デューティを0%に固定した時の燃料配管内燃料圧力相当の燃料圧力センサ出力電圧値の範囲にあるか否やを判断する。ステップ244において燃料圧力センサの出力電圧Vfuelが所定の燃料圧力センサ出力電圧の範囲にある場合、つまり、図25で示す燃料圧力センサ出力下限電圧値OKLから上限電圧値OKHの範囲以内にあれば、ステップ245において、その状態を連続して時間Tvfl1以上経過したかどうかの判定をする。ステップ245において、時間Tvfl1以上経過していない場合は、ステップ246において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ244,245において、燃料圧力センサの出力電圧Vfuelが所定の燃料圧力センサ出力電圧の範囲にある状態を連続して時間Tvfl1以上経過した場合、ステップ247において、「燃料系の異常」判定フラグと「燃料圧力センサの異常」判定フラグを0にクリアする。逆に、ステップ244において燃料圧力センサの出力電圧Vfuelが所定の燃料圧力センサ出力電圧の範囲以外にある場合、つまり、燃料圧力センサ出力上限電圧値OKH以上または下限電圧値OKL以下の値であれば、ステップ248において、その状態を連続して時間Tvfl2以上経過したかどうかの判定をする。ステップ248において、時間Tvfl2以上経過していない場合は、ステップ249において、「燃料系の異常」判定フラグを1にセットしたままとする。また、ステップ244,248において、燃料圧力センサの出力電圧Vfuelが所定の燃料圧力センサ出力電圧の範囲にない状態を連続して時間Tvfl2以上経過した場合、ステップ240において、エンジン制御に用いる燃料圧力Pfを、燃料圧力センサから出力される燃料圧力信号を用いるのではなく、電制プレッシャレギュレータの作動デューティPFdutyを、例えば0%に固定した場合に決定される制御燃料圧力NGPfとして、エンジンが運転できる状態にする。さらに、「燃料圧力センサ異常」なので、警告灯を点灯させ運転者に知らせるとともに、燃料圧力センサ異常判定フラグをセットしたままとする。尚、燃料圧力センサ出力の上限電圧値OKHと下限電圧値OKLは、図25に示すように配管内の燃料圧力と燃料圧力センサの出力値の関係により決定されるものである。
【0083】
詳しく説明すると、「燃料圧力センサの異常」判定は、燃料圧力センサの測定電圧値VFuelが、燃料圧力センサ出力上下限電圧値の範囲であれば「燃料圧力センサ正常」とし、異常判定をクリアして通常制御を行うが、燃料圧力センサ出力上限電圧値以上または下限電圧値以下の値であれば、「燃料圧力センサ異常」と判定し、上記異常時制御を行う。
【0084】
図25,26を用いて、燃料圧力センサが異常と判定された場合の動作について詳細に説明する。
【0085】
燃料圧力センサの出力信号値を基に燃料圧力センサが故障しているかどうかの判定できることを図25を用いて示す。図中の枠で示す部分は、燃料圧力センサが正常に作動している場合である。一方、枠で示す部分以外では、燃料圧力センサの燃料圧力が計測異常となった場合に、このような特性になる。燃料圧力センサが、異常判定されると、電制プレッシャレギュレータの作動デューティPFdutyを所定の値、例えば0%またはフル制御量に固定するため、燃料配管内の燃料圧力はPSngとなる。その時、燃料圧力センサが正常であれば、燃料圧力センサの検出電圧値は、図中の燃料圧力センサの検出電圧下限値OKLから上限値OKHの間にあるはずである。しかし、燃料圧力センサが故障していると、上記の範囲内に収まることができず、燃料圧力センサの故障が判定できる。この燃料圧力PSngを燃料圧力センサの異常時の燃料配管内の燃料圧力として、エンジン制御に用いる。
【0086】
次に図26は、燃料圧力センサが瞬間的な断線をした場合、例えばコネクタの接触不良時の動作を示している。図中の時間PSN1の時点で燃料圧力センサのコネクタが接触不良による断線をおこしたしたとすると、燃料圧力センサの出力値が下がる。燃料圧力センサの出力値が下がったことで、燃料系では燃料圧力を上昇させるように、燃料圧力フィードバック制御を行い、電制プレシャレギュレータの作動デューティを操作する。また、燃料噴射パルス幅でも燃料圧力センサの出力を基に演算をしているため、実空燃比も所定の値と異なってくる。空燃比フィードバック制御においても、実空燃比を目標空燃比に近づけようと操作するが、時間PSN2の時点で燃料圧力センサ異常と判定される。その後、時間PSN3の時点で燃料圧力センサのコネクタが接触不良による断線が復旧したとすると、燃料圧力センサの出力値が所定の範囲内に出力されるので、時間PSN4の時点で燃料圧力センサ正常と判定され、燃料圧力センサ異常判定をクリアして、通常のエンジン制御を行う。
【0087】
以上のように本発明の実施例によれば、前記内燃機関の燃料圧力を検出する手段において検出された燃料圧力値が、前記燃料圧力を制御する手段の制御量によって決定される所定の範囲以外と判定したとき、燃料系の異常を診断する手段を有し、前記内燃機関の運転条件によって決定される目標空燃比に対して、前記内燃機関の空燃比を検出する手段において、検出された実空燃比の値が、前記目標空燃比の所定の範囲内にあるか否かを検出することで、燃料系の異常部位を診断する手段を有し、前記空燃比フィードバック制御の制御量が、所定の範囲内にあるか否かを検出することで、燃料系の異常部位を診断する手段を有し、前記燃料圧力を変化させる手段が異常と判定された際には、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を、零またはフル制御量にすることで、前記内燃機関を運転する手段を有し、前記燃料圧力を変化させる手段が異常と判定された際、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を大小交互に変化させて、前記燃料圧力を変化させる手段の異常が検出されなくなった場合には、正常と判定する手段を有し、前記燃料圧力を検出する手段が異常と判定された際には、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を任意に変化、例えば零またはフル制御量にすることで決定される燃料圧力の値を、前記燃料圧力を検出する手段の信号として前記内燃機関の制御に用いることで、前記内燃機関を運転する手段を有し、かつ前記燃料圧力を検出する手段が異常と判定された後、検出された燃料圧力が、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を、零またはフル制御量にすることで決定される燃料圧力の範囲内にあることを検出することによって、正常と判定する手段を有する。
【0088】
以上、本発明の一実施形態について記述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0089】
例えば、燃料圧力センサ故障による空燃比のずれに関して、空燃比センサ信号がリーンはりつき状態では、燃料噴射パルス幅を増加させて空燃比をリッチとする。一方、空燃比センサ信号がリッチはりつき状態では燃料噴射パルス幅を減少させて空燃比をリーンとすることで、エンジンの運転を可能にすることができる。
【0090】
また、燃料圧力センサ故障による空燃比のずれに関して、空燃比センサ信号がリーンはりつき状態ではスロットルを閉じ方向に制御して空燃比をリッチとする。一方、空燃比センサ信号がリッチはりつき状態ではスロットルを開き側に制御して空燃比をリーンとすることで、エンジンの運転を可能にすることができる。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、運転性に影響を及ぼすような故障レベルに至る前に燃料系の故障判断できるばかりでなく、再診断及び掃除制御を行うことで、誤診断による部品の交換を少なくすることができ、誤判定の少ない燃料系故障診断が可能である。
【0092】
また、異常時には、通常制御とは異なる手段おいて内燃機関を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料噴射装置のシステム構成を示す図。
【図2】本発明が適応される燃料噴射装置の燃料系を示す図。
【図3】高圧燃料ポンプと電制プレッシャレギュレータの構造を示す図。
【図4】電制プレッシャレギュレータのバルブ部の構造を示す図。
【図5】電制プレッシャレギュレータの特性例を示す図。
【図6】電制プレッシャレギュレータの動作例を示す図。
【図7】電制プレッシャレギュレータの動作例を示す図。
【図8】燃料圧力センサの特性例を示す図。
【図9】本発明が適応される入出力の基本性能説明するための図。
【図10】エンジン回転数とポンプ吐出量との関係図。
【図11】燃料吐出量と制御燃料圧力との関係図。
【図12】燃料圧力と電制プレッシャレギュレータ作用デューティとの関係図。
【図13】燃料噴射量の演算するための制御フローチャート図。
【図14】燃料圧力と燃料噴射パルス幅補正係数との関係図。
【図15】電制プレッシャレギュレータの異常検出する制御フローチャート図。
【図16】燃料系異常を検出するための制御フローチャート図。
【図17】故障部位を特性するための制御フローチャート図。
【図18】故障部位を特性するための制御フローチャート図。
【図19】 A/Fセンサの特性例を示す図。
【図20】f燃料圧力センサの異常を説明するための図。
【図21】電制プレッシャレギュレータの異常検出する制御フローチャート図。
【図22】電制プレッシャレギュレータの制御を説明するための図。
【図23】電制プレッシャレギュレータの制御を説明するための図。
【図24】燃料圧力センサの異常検出する制御フローチャート図。
【図25】燃料圧力センサの異常を説明するための図。
【図26】燃料圧力センサの異常を説明するための図。
【符号の説明】
1:エアクリーナ、2:エアクリーナ入り口、3:空気流量計、4:燃料系、5:絞弁、6:絞弁ボディ、7:コレクタ、8:エンジン、9:吸気管、10:電制スロットル駆動モータ、11:燃料タンク、12:高圧燃料ポンプ、13:燃料噴射弁、14:燃料圧力センサ、15:コントロールユニット、16:クランク角センサ、17:点火コイル、18:スロットル開度センサ、19:点火コイル、20:A/Fセンサ、21:EGR弁、31:スワールコントロールバルブ、 41:電制プレッシャレギュレータ、43:電制プレッシャレギュレータのバルブ部、44:電制プレッシャレギュレータ稼動プランジャ、45:バルブシート(1)、46:バルブ、47:バルブシート(2)、48:高圧側燃料配管、49:燃料配管、51:エンジン、52:絞弁、53:バキュームタンク、54:圧力センサ、55:ブレーキブースタ、56:チェックバルブ、57:圧力センサ、58:燃料ポンプ、59:警告灯、60:アクセル開度センサ、61:機械的なプレッシャレギュレータ。

Claims (6)

  1. 内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、
    検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、
    燃料系の異常を診断する異常診断手段と、燃料系に異常があったと診断されたときに、
    検出された空燃比が所定の空燃比範囲内にあるか否かを判定し、所定の空燃比範囲内にあるときは当該状態が連続して所定の時間Tabf1以上経過したか否かを判定することによって、および前記所定の空燃比範囲外にあるときは当該状態が連続して所定の時間Tabf2以上経過したか否かを判定し、所定の時間Tabf1以内の時間であること、および所定の時間Tabf2以内の時間であることによって燃料系の異常部位を検出する異常部位検出手段と
    を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の燃料系に、内燃機関に供給する燃料噴射量と、該噴射量を決定する要素である燃料圧力を供給する手段と、該燃料圧力を制御する手段と、該燃料圧力を検出する手段とを有し、内燃機関の運転状態を検出する手段と、内燃機関の空燃比を検出する手段と、検出した空燃比と目標空燃比との偏差に応じて空燃比フィードバック制御量で空燃比フィードバックをする手段を有する内燃機関の制御装置において、
    燃料系の異常を診断する異常診断手段と、燃料系に異常があったと診断されたときに、
    検出された空燃比フィードバック制御量が所定の空燃比フィードバック制御量範囲内にあるか否かを判定し、所定の空燃比フィードバック制御量範囲内にあるときは当該状態が連続して所定の時間Talp1以上経過したか否かを判定することによって、および前記所定の空燃比フィードバック制御量範囲外にあるときは当該状態が連続して所定の時間Talp2以上経過したか否かを判定し、所定の時間Talp1以内であること、およびTalp2以内であることによって燃料系の異常部位を検出する異常部位検出手段と
    を含んで構成されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1または2において、前記異常部位検出手段は、電制プレッシャレギュレータおよび燃料圧力センサのいずれかの異常を検出することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  4. 請求項において、前記電制プレッシャレギュレータに異常が検出されたとき、電制プレッシャレギュレータの掃除制御を実行し、所定回数の電制レギュレータの掃除制御を実行したときは電制プレッシャレギュレータ故障と判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  5. 請求項において、前記燃料圧力センサに異常が検出されたとき、前記電制プレッシャレギュレータの作動デューテイを所定の値に固定し、前記燃料圧力センサの出力値を検出し、前記燃料圧力センサの出力値が前記電制プレッシャレギュレータの前記作動デューテイで決定される所定の燃料圧力範囲以内にあるかどうかで前記燃料圧力センサの異常判定を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  6. 請求項1または2において、前記異常部位検出手段は、燃料圧力を変化させる手段の異常を検出するものであり、前記燃料圧力を変化させる手段が異常と判定されたとき、前記燃料圧力を変化させる手段の制御量を大小交互に変化させ、前記燃料圧力を変化させる手段の異常が検出されなくなった場合には、正常と判定する手段を有することを特徴とする内燃機関の制御装置。
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