JP3883396B2 - 誘導結合プラズマ着火方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェーハやガラス基板等の被処理物に対し、誘導結合プラズマによるエッチング、アッシング、CVD処理、イオン注入処理等を行うのに好適な誘導結合プラズマ着火方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波を印加することで発生するプラズマには容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)と誘導結合型プラズマ(IPC:Inductively Coupled Plasma)とがある。上記容量結合型プラズマは基板にダメージを与えるため、誘導結合型プラズマの方が好ましいことが判明しており、この誘導結合型プラズマを主に発生させるプラズマ処理装置として、コイル電極を用いたもの等が多く使われている。
【0003】
被処理物を処理できる低エネルギー・高密度の誘導結合プラズマを発生させるにはプラズマ着火用チャンバー内の圧力を高くし、反応ガスは大流量、しかも高周波も高出力で電極に印加することが好ましい。
図2は、このような高圧力、高ガス流量および高出力のプラズマ着火条件を示すグラフである。図2において、例えば、チャンバー内圧力は800mTorr、反応ガス流量は2,500sccmおよび高周波出力は1,450Wである。
【0004】
しかし上記のような条件では放電開始電圧が非常に高くなる。そのため、チャンバーの構造によっては、プラズマが着火する以前に高周波印加用の電極を固定している絶縁体が絶縁破壊を起こし、電圧が低下してプラズマが発生しないことがある。
【0005】
また、チャンバー内の圧力を低く設定し、反応ガス流量を少なくした状態で高い高周波出力を印加してプラズマ着火させ、その後チャンバー内圧力および反応ガス流量を上昇させる方法も知られている。
【0006】
図3は、このような低圧力および低ガス流量で高出力の高周波を電極に印加して、プラズマ着火後にチャンバー内圧力および反応ガス流量を上昇させるプラズマ着火条件を示すグラフである。この図において、例えば、初期のチャンバー内圧力を200mTorr、反応ガス流量を150sccm、高周波出力を1,450Wとし、プラズマ着火後にチャンバー内圧力を800mTorr、反応ガス流量を2,500sccmにまで上昇させる。
しかし、このような条件では高い高周波出力を印加した瞬間に高エネルギー・高密度のプラズマが発生し、ウェーハにチャージアップダメージを与える危険性がある。
【0007】
一方、特開平10−162993号公報には、プラズマ着火が容易な反応ガスを使用してプラズマを発生させ、チャンバー内に送り込む反応ガスの種類を順次切り替えて、最終的に所望の反応ガスのプラズマを得る方法が開示されている。しかし、この方法ではプラズマ着火が容易な反応ガスとしてヘリウムやアルゴン等、設備面でのコストが大幅に嵩むガスを使用しなければならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、絶縁破壊による電流のリークを生じず、また、プラズマによって被処理物がチャージアップダメージを被ることのない誘導結合プラズマ着火方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の誘導結合プラズマ着火方法は、高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力が共に低い状態で低エネルギー・低密度のプラズマを着火させ、プラズマ着火確認後に、高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力を共に漸次増加させ、最終的に被処理物を処理できる低エネルギー・高密度のプラズマを発生させる誘導結合プラズマ着火方法において、プラズマ着火当初の前記反応ガス流量を最終到達流量の2〜15%に設定するようにした。
【0010】
前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火時の高周波出力、およびチャンバー内圧力が、前記低エネルギー・高密度のプラズマを発生させる高周波最終到達出力、およびチャンバー内最終到達圧力の、それぞれ10〜30%、および10〜30%であることが好ましい。
【0011】
また、前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火確認時から前記低エネルギー・高密度のプラズマ発生に達するまでの高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力の増加は、たとえば2〜10秒の間で徐々(ソフトスタート)に行う。
【0012】
さらに、前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火確認は、プラズマ着火操作後3〜10秒経過したときに発光モニターで行い、未着火の場合は、直ちに高周波出力の印加を停止することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで図1は本発明に係る誘導結合プラズマの着火条件の一例を示すグラフである。本図に示すように、プラズマ着火時はプラズマが着火し易いようにチャンバー内の圧力は低く、反応ガス流量は低く抑え、高周波出力も低く設定する。本例では反応ガスとして酸素を使用しているが、このガスの種類は被処理物の材質等を考慮して決定することができ、他に窒素、空気、6フッ化エチレン、プロパン、ブタン等を使用することができる。
【0014】
本例ではチャンバー内の圧力を当初200mTorrに設定している。この値は最終到達圧力800mTorrの25%に当たる。当初の圧力は最終到達圧力の10〜30%が好ましい。この値が10%未満ではプラズマは着火し易くなるが高エネルギー・高密度のプラズマの発生を防止することが困難となり、30%を超えると高エネルギー・高密度のプラズマの発生は防止し易くなるが、プラズマが着火し難くなることがある。また、反応ガスである酸素の当初の流量は150sccmに設定した。この値は最終到達流量2,500sccmの6%に当たる。当初のガス流量は最終到達流量の2〜15%であることが好ましく、この値が2%未満ではプラズマ着火時の圧力コントロールが難しくなり、15%を超えるとプラズマが着火し難くなることがある。
【0015】
チャンバー内圧力を上記の200mTorr、反応ガス流量を上記の150sccmに設定した状態で、チャンバーに巻回した電極に高周波を印加する。このときの高周波出力を本例では250Wとした。この値は最終到達出力1,450Wの約17%に当たる。当初印加する高周波の出力は最終到達出力の10〜30%であることが好ましく、この値が10%未満ではプラズマが着火し難くなり、30%を超えると高エネルギー・高密度プラズマが発生し易くなることがある。
【0016】
このような低出力、低流量および低圧力の状態で着火するプラズマはその放電開始圧力が低く、低エネルギー・低密度であるため、プラズマ発生装置が絶縁破壊による高周波出力のリークを起こしたり、被処理物がプラズマによってチャージアップダメージを被ることがない。上記プラズマの着火は、チャンバー内のプラズマ炎を観測できる発光モニターを使用して、着火操作後3〜10秒経過したときに確認・判定することが好ましい。本例では着火操作後3秒目に確認を行っている。
【0017】
上記確認によりもしプラズマ未着火と判定された場合は、インターロック等により直ちに高周波出力の印加を停止する。こうすることにより、電極への高周波の印加は最小限の電圧で済ますことができるため、仮にプラズマが着火しなくても、電極固定用の絶縁体が絶縁破壊を起こしたり、その他の装置部品を破損したりすることを未然に防止できる。
【0018】
上記発光モニターによりプラズマの着火が確認されたときは、2〜10秒をかけて、高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力を共に漸次増加させ、最終的に被処理物を処理できる低エネルギー・高密度のプラズマを発生させる。本例では着火と判定開始時から3秒間かけて徐々に目的の高周波出力(1,450W)、反応ガス流量(2,500sccm)およびチャンバー内圧力(800mTorr)に到達させている。
【0019】
ここで、上記着火時のプラズマはCCP(容量結合型プラズマ)からICP(誘導結合型プラズマ)へモードチェンジした直後の不安定なものであるが、最終的に発生させる低エネルギー・高密度のプラズマは、ほぼ完全な誘導結合型プラズマ状態で安定しているため、ウェーハ等の処理を確実に行うことができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の誘導結合プラズマ着火方法は、誘導結合プラズマ高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力が共に低い状態で低エネルギー・低密度のプラズマを着火させ、プラズマ着火確認後に、高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力を共に漸次増加させるため、プラズマ発生装置が絶縁破壊による高周波出力のリークを生じたり、被処理物がプラズマによってチャージアップダメージを被ることがない。
【0021】
また、最終的に発生する低エネルギー・高密度のプラズマは、完全な誘導結合型プラズマ状態で安定しているため、ウェーハ等の処理を確実に行うことができる。
なお、前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火確認は発光モニターで行い、未着火の場合は、直ちに高周波出力の印加を停止するため、電極への高周波の印加は最小限の電圧で済ますことができ、仮にプラズマが着火しなくても、電極固定用の絶縁体が絶縁破壊を起こしたり、その他の装置部品を破損したりすることを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る誘導結合プラズマの着火条件の一例を示すグラフ
【図2】従来の、高圧力、高ガス流量および高出力のプラズマ着火条件を示すグラフ
【図3】従来の低圧力および低ガス流量で高出力の高周波を印加し、プラズマ着火後にチャンバー内圧力および反応ガス流量を上昇させるプラズマ着火条件を示すグラフ

Claims (4)

  1. 高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力が共に低い状態で低エネルギー・低密度のプラズマを着火させ、プラズマ着火確認後に、高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力を共に漸次増加させ、最終的に被処理物を処理できる低エネルギー・高密度のプラズマを発生させる誘導結合プラズマ着火方法において、反応ガスとして酸素ガスを用い、プラズマ着火当初の前記反応ガス流量を最終到達流量の2〜15%に設定することを特徴とする誘導結合プラズマ着火方法。
  2. 前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火当時の高周波出力、およびチャンバー内圧力が、前記低エネルギー・高密度のプラズマを発生させる高周波最終到達出力、およびチャンバー内最終到達圧力の、それぞれ10〜30%、および10〜30%である請求項1に記載の誘導結合プラズマ着火方法。
  3. 前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火確認時から前記低エネルギー・高密度のプラズマ発生に達するまでの高周波出力、反応ガス流量およびチャンバー内圧力の増加を、2〜10秒の間で行う請求項1または請求項2のいずれかに記載の誘導結合プラズマ着火方法。
  4. 前記低エネルギー・低密度のプラズマ着火確認は、プラズマ着火操作後3〜10秒経過したときに発光モニターで行い、未着火の場合は、直ちに高周波出力の印加を停止する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の誘導結合プラズマ着火方法。
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