JP3883317B2 - 変性ポリブタジエンの製造方法、変性ポリブタジエン、及びゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にタイヤトレッド用のゴム材料として有用な変性ポリブタジエンと、その製造方法、およびタイヤトレッド用のゴム材料として有効に使用できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブタジエンやブタジエン−スチレン共重合体ゴムなどの共役ジエン系共重合体ゴムは、自動車タイヤトレッド用ゴムとして使用されてきたが、近年、自動車の低燃費化の要求と雪上及び氷上での走行安定性の要求から、自動車タイヤトレッド用ゴムとして、転動抵抗が小さく、雪上及び氷上での路面グリップの大きいゴム材料の出現が望まれている。
【0003】
この課題を解決するための手段として、例えばアルカリ金属含有ジエン系重合体と特定の化合物とを反応させることにより、特定の原子団を重合体中に導入する方法が数多く提案されてきた。
【0004】
特開昭58−162604号公報と特開昭59−117514号公報には、ゴム成分をベンゾフェノンと反応させて変性する方法が記載されており、特公平6−53766号公報、特公平6−57769号公報、および特公平6−78450号公報には、ゴム成分をニトロアミノ化合物、ニトロ化合物またはニトロアルキル化合物と反応させて変性する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、充分満足できるゴム材料が得られていないのが現状であり、さらに、これらの方法で得られるゴム材料では、そのポリマーのミクロ構造におけるシス−1,4含量が低く、耐摩耗性がハイ・シスポリマーに比べて劣るという問題点があった。一方、ハイ・シスポリマーを与える触媒としては、Co触媒、Ni触媒、Ti触媒及びNd触媒等が知られているが、これらの触媒の中で、Co触媒、Ni触媒及びTi触媒はリビング性がないので、重合系に変性剤を添加することによって、変性ポリマーを製造する方法の提案はなされていない。
【0006】
ハイ・シスポリマーに溶媒を加えて溶解し、その溶液に触媒と変性剤を接触させて変性ポリマーを製造する方法は既に知られている。例えば、特開昭58−142901号公報には、ゴムを溶媒に溶解し、酸触媒の存在下、不飽和結合を有するゴムにカルボキシル基とアルデヒド基とを有する有機化合物を反応させて、ゴムの変性を行う方法が提案されている。また特開昭58−162602号公報には、ゴムを溶媒に溶解し、不飽和結合を有するゴムにカルボキシル基を有する有機化合物及び芳香族スルホンハロアミドの塩を反応させる方法が提案されている。
【0007】
特開昭61−225202号公報には、不飽和結合を有するゴムを溶媒に溶解し、ルイス酸の存在下、ベンジリデンブチルアミンや、有機酸ハライドを反応させてゴムを変性する方法が記載されている。これらの方法はいずれも、ゴムを溶媒で溶解したゴム溶液にする工程が必要となり、多量の溶媒を必要とする。そのために、重合系に直接変性剤を添加することにより、このような煩雑な操作を省力したハイ・シス含量の変性ゴムを得る方法の開発が望まれていた。
【0008】
この方法としては、Nd触媒を用いて製造された擬似リビング性を有する共役ジエン重合体に、変性剤を直接添加する方法が提案されている。例えば、特開昭63−178102公報には、ランタン系列希土類金属触媒を用いて共役ジエンを重合し、その重合された直後のポリマーに特定のハロゲン化有機金属を反応させることによって変性共役ジエン系重合体を製造する方法が記載されている。特開昭63−297403号公報には、ランタン系列希土類金属触媒を用いて共役ジエンを重合し、その重合された直後のポリマーに、特定のヘテロクムレン化合物もしくはヘテロ三員環化合物を反応させることによって、変性共役ジエン系重合体を製造する方法が提案されている。特開昭63−305101号には同様の方法で、変性剤として2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンのような特定のハロゲン化合物を添加して、変性共役ジエン系重合体を製造する方法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ランタン系列希土類金属触媒を用いる共役ジエンの重合反応には、Co触媒やNi触媒と比較して、単位触媒量当たりの重合反応速度が低いという欠点がある。一方、Co触媒やNi触媒により、ランタン系列希土類金属触媒の場合と同様の変性反応を実施させることは、Co触媒やNi触媒がリビング性や擬似リビング性を有しないので、不可能であると考えられていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、ハイ・シス構造のポリブタジエンゴムを高活性で製造し、かつ重合直後に変性剤を添加することによって、不飽和結合を有するゴムに変性剤を導入させる方法の可能性を考え、この考えに基づき鋭意研究した結果、コバルト系触媒組成物(コバルト化合物、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物および水を有効成分として含む組成物)、もしくはニッケル系触媒組成物(ニッケル化合物、有機アルミニウム化合物およびフッ素化合物を有効成分として含む組成物)の存在下にて1,3−ブタジエンを重合することにより得られた重合直後のポリブタジエンに、変性剤として、少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物を添加することによって、優れた特性を有する変性ポリブタジエンを製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
従って、本発明は、1,3−ブタジエンを、コバルト化合物、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、及び水からなるコバルト系触媒組成物、もしくはニッケル化合物、有機アルミニウム化合物、及びフッ素化合物からなるニッケル系触媒組成物の存在下で重合させてポリブタジエンとした後、直ちにこのポリブタジエンを、少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物により変性することを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法にある。
【0012】
本発明はまた、上記の本発明の製造方法により得られた変性ポリブタジエンであって、その繰り返し単位の80%以上がシス−1,4構造を持ち、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20〜80の範囲にあり、ゲルパーミエーション法による重量平均分子量が200,000〜1,000,000の範囲にあり、窒素含有量が10〜5000ppmの範囲にあることを特徴とする変性ポリブタジエンにもある。
【0013】
本発明はまた、上記の変性ポリブタジエンをゴム成分中に少なくとも10重量%含むことを特徴とするゴム組成物にもある。
【0014】
本発明の変性ポリブタジエンの製造方法において使用する触媒組成物はコバルト系触媒組成物であることが望ましく、その場合の各触媒成分の使用量は、全て1,3−ブタジエン1モルに対する量として、コバルト化合物については1×10-7〜1×10-3モルであり、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物については1×10-5〜1×10-1モルであり、かつ水については1×10-5〜1×10-1モルであることが望ましい。
【0015】
本発明の変性ポリブタジエンの製造方法では、触媒組成物として、コバルト系触媒組成物の代りにニッケル系触媒組成物を使用することもでき、その場合における各触媒成分の使用量は、全て1,3−ブタジエン1モルに対して、ニッケル化合物については1×10-7〜1×10-3モルであり、有機アルミニウム化合物(ハロゲン原子を含まない有機アルミニウム化合物)成分については1×10-5〜1×10-1モルであり、フッ素化合物については1×10-4〜1モルであることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、コバルト化合物は、炭素原子数1〜18のカルボン酸のコバルト塩であることが好ましく、そしてハロゲン含有有機アルミニウム化合物は、合計炭素原子数2〜10のジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、もしくはアルキルアルミニウムセスキハライドであることが好ましい。ジアミン化合物としては、炭素原子数2〜6のジアミノアルカンを用いることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の変性ポリブタジエンの製造方法、その製造方法により得られる変性ポリブタジエン、そしてその変性ポリブタジエンのタイヤトレッド用のゴム材料としての使用についてさらに詳しく説明する。
【0018】
コバルト系触媒組成物を用いる場合のコバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化コバルトや臭化コバルトなどのハロゲン化コバルト、硝酸コバルトなどの無機酸のコバルト塩、オクチル酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトオクトエートなどの炭素原子数1〜18のカルボン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、マロン酸コバルト、コバルトのビスアセチルアセトナートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルなどのコバルト錯体、ハロゲン化コバルトのトリアリールホスフィン錯体、トリアルキルホスフィン錯体、ピリジン錯体やピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などの各種錯体が挙げられる。
【0019】
ニッケル系触媒組成物を用いる場合のニッケル化合物としては、ニッケルの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものは、塩化ニッケルや臭化ニッケルなどのハロゲン化ニッケル、硝酸ニッケルなどの無機酸のニッケル塩、オクチル酸ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルオクトエートなどの炭素原子数1〜18のカルボン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、マロン酸ニッケル、ニッケルのビスアセチルアセトナートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルなどのニッケル錯体、ハロゲン化ニッケルのトリアリールホスフィン錯体、トリアルキルホスフィン錯体、ピリジン錯体やピコリン錯体等の有機塩基錯体、もしくはエチルアルコール錯体などの各種錯体が挙げられる。
【0020】
コバルト系触媒組成物を用いる場合のハロゲン含有有機アルミニウム化合物としては、R3-nAlXn(式中、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、nは1〜2の整数である。)で表されるハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物を挙げることができる。その例としては、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド等のジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイド等のアルキルアルミニウムジハライド等が挙げられる。具体的化合物としては、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジシクロヘキシルアルミニウムモノクロライド、ジフェニルアルミニウムモノクロライド等が挙げられる。
【0021】
ニッケル系触媒組成物を用いる場合の有機アルミニウム化合物としては、AlR3(Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す)で表わされるトリアルキルアルミニウムも好ましく使用することができる。そのようなトリアルキルアルミニウムの例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、そしてトリベンジルアルミニウムを挙げることができる。トリアルキルアルミニウムの内の三個のアルキル基は互いに同一でも、あるいは異なっていてもよい。
【0022】
ニッケル系触媒組成物を用いる場合のフッ素化合物としては、三フッ化ホウ素のエーテル、アルコール、またはこれらの混合物の錯体、あるいはフッ化水素のエーテル、アルコール、またはこれらの錯体の混合物が用いられる。特に好ましいフッ素化合物としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテレート、フッ化水素ジエチルエーテレート、そしてフッ化水素ジブチルエーテレートを挙げることができる。
【0023】
本発明の変性対象のポリブタジエンの製造方法に用いる触媒組成物としては、コバルト系触媒組成物が好ましい。そして、コバルト化合物の使用量は、原料モノマーの1,3−ブタジエン1モルに対してコバルト化合物が1×10-7〜1×10-3モルの範囲にあることが好ましい。また、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物の使用量がコバルト化合物1モルに対して1×10-5〜1×10-1モルの範囲にあり、かつ水の使用量がコバルト化合物1モルに対して1×10-5〜1×10-1モルの範囲にあることが好ましい。
【0024】
反応系への触媒成分の添加順序に制限はない。各触媒成分を同時に、あるいは任意の順序で添加することができる。
【0025】
重合方法についても、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合等の1,3−ブタジエンについて一般的に利用されている重合方法を利用できる。溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等を用いることができる。また、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒として用いてもよい。これらの中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、あるいはシス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物等が溶液重合の溶媒として好適に用いられる。
【0026】
本発明のポリブタジエンの製造方法においては、重合反応の実施の際に、公知の分子量調節剤、例えば、シクロオクタジエン、アレン等の非共役ジエン類、またはエチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン類を使用することができる。
【0027】
重合温度は−30〜100℃の範囲が好ましく、30〜80度の範囲が特に好ましい。重合時間は10分〜12時間の範囲が好ましく、30分〜6時間が特に好ましい。また、重合圧力は常圧、あるいは10気圧(ゲージ圧)程度までの加圧下に行われる。本発明の変性ポリブタジエンの製造に際しては、所定温度で所定時間、1,3−ブタジエンを重合した後、直ちに、変性剤として、少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物を添加することによって、変性反応を行なう。
【0028】
本発明の変性ポリブタジエンの製造方法では、変性剤として、少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物を用いる。具体的な化合物の例としては、2,3−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、そして3,5−ジアミノ安息香酸を挙げることができる。特に好ましいのは、3,4−ジアミノ安息香酸と3,5−ジアミノ安息香酸である。
【0029】
これらの変性剤は、単独で用いてもよく、あるいは複数組み合わせて用いてもよい。
【0030】
変性剤の使用量は、生成したポリブタジエン(ポリブタジエンゴム)100gに対して0.01〜150ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、更に好ましくは3〜50ミリモルである。変性剤の使用量が少ないと、変性効果が現れにくい。また、使用量が多すぎると、ポリブタジエン中に未反応変性剤が残存しやすくなり、その除去に手間がかかるので、好ましくない。なお、変性物のムーニー粘度が変性前と比較して1以上増加していることが好ましい。
【0031】
変性温度は0〜100℃の範囲の温度が好ましく、特に室温〜70℃の範囲がより好ましい。温度が低すぎると変性反応の進行が遅く、温度が高すぎると重合体がゲル化するので好ましくない。通常は、重合温度と同じ温度で変性反応を行うのが好ましい。変性時間は特に制限はないが、通常は0.5〜6時間の範囲が好ましい。変性時間が短すぎると反応が充分進行せず、変性時間が長すぎると重合体がゲル化する恐れがあるので好ましくない。
【0032】
また、1,3−ブタジエンの重合直後に、変性剤の添加に先立ち、変性反応の進行を速めるために、ハロゲン化アルミニウムやハロゲン化アルキル(アルキル基の炭素原子数は1〜6)などを触媒として添加することもできる。ハロゲン化アルミニウムの例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、及びヨウ化アルミニウムが挙げられる。ハロゲン化アルキルの例としては、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化ブチル、臭化ブチル、ヨウ化ブチルが挙げられる。この触媒の使用量は、ポリブタジエン100gに対して0.01〜50ミリモル、好ましくは0.05〜30ミリモル、更に好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0033】
上記の製造方法により得られる本発明の変性ポリブタジエン(変性ポリブタジエンゴム)は、その繰り返し単位の80%以上がシス−1,4構造を持ち、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20〜80の範囲にあり、ゲルパーミエーション法による重量平均分子量が200,000〜1,000,000の範囲にあり、窒素含有量が10〜5000ppmの範囲にあることが望ましい。
【0034】
本発明により得られる変性ポリブタジエンは、単独で、または他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要ならばプロセス油で油展し、次いでカーボンブラック等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤その他の通常の配合剤を加えて加硫し、タイヤ、ホース、ベルトその他の各種工業用品等の機械的特性及び耐摩耗性が要求されるゴム用途に使用される。また、プラスチックの改質剤として使用することもできる。
【0035】
本発明により得られる変性ポリブタジエンを自動車のタイヤトレッド用ゴム材料として用いる場合には、ゴム成分および配合剤から構成されるゴム組成物において、ゴム成分中に少なくとも本発明の変性ポリブタジエンを10重量%含有するように配合することが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、下記の実施例および比較例において得られたゴム状ポリマーのムーニー粘度(ML1+4、100℃)、シス−1,4−含量、窒素含有量、重量平均分子量、分子量分布及びゲル分率は下記の方法により測定した。
【0037】
(1)ムーニー粘度(ML1+4、100℃):JIS−K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計(SMV−200)を使用して、100℃で1分予熱したのち、4分間測定してゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)として表示した。
(2)シス−1,4−含量(%):赤外吸収スペクトル分析法により、0.4重量%の二硫化炭素溶液を用いてポリマーのミクロ構造を測定することによってシス−1,4−含量を算出した。
(3)窒素含有量(ppm):JIS−K0102に従い、ケルダール法により定量した。
【0038】
(4)重量平均分子量及び分子量分布:ポリスチレンを標準物質としてテトラヒドロフランを溶媒として温度40℃で、ゲルパーミエーション(透過)クロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製)を行ない、得られた分子量分布曲線から求めた検量線を用いて計算し、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、重量平均平均分子量、そして分子量分布(Mw/Mn)を表示した。
(5)ゲル分率の測定方法:未加硫ゴム試料を約0.5g採り、細かく切断し、正確に重量を測定する(Rg)。別に用意した100メッシュのステンレス製かごの重量を精秤し(Kg)、秤量した試料をかごに全量移し、重量を測定する(Rg+Kg)。これをトルエン100mLの入った栓付きびんの中に浸漬し、23℃で24時間放置する。次いで、かごを引き上げ、23℃で24時間乾燥した後、さらに70℃で恒量になるように24時間減圧乾燥を行ない、トルエン不溶分をかごと一緒に正確に秤量し(Gg+Kg)、次式によってゲル分率を求めた。
【0039】
ゲル分率(%)=100×[G−(R×(フィラー重量部÷ゴム組成物全重量部)]÷[(R×(ゴム重量部÷ゴム組成物全重量部)]
ただし、
フィラー重量部:第1表のカーボンブラックの重量部
ゴム組成物全重量部:第1表の全組成分の合計重量部
ゴム重量部:第1表のゴム成分(NR+BR又は変性BR)の合計重量部
【0040】
また、300%弾性率、転がり抵抗指数、引張強度、およびウエットスキッド抵抗指数を下記の方法により測定した。
(1)300%弾性率(M300):JIS−K6301に規定の方法で測定して300%でのモジュラスで示した。
(2)転がり抵抗指数:(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用い、温度70℃、初期ゆがみ10%、動歪み2%の条件で、tanδを測定し、下記の式により転がり抵抗指数を求めた。指数の値が大きい方が、転がり抵抗が低いことを意味し、転がり抵抗は100以上であればよい。
【0041】
転がり抵抗指数=100×[(比較例(未変性品)の値)/(実施例(変性品)の値)]
【0042】
(3)引張強度:JIS−K−6301に従って測定した。
(4)ウエットスキッド抵抗指数:スタンレー社製のポータブルスキッド抵抗計を用いてASTM−E303−83の方法に従って測定した。濡れた路面でのグリップ特性(駆動性能、制動性能及び操縦性能)の指標で数値が大きい程良好であることを示す。
【0043】
[実施例1]
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを27.9重量%含有するベンゼン−C4 留分混合溶液1リットル(ベンゼン26.9重量%と、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を45.2重量%含有)とを仕込み、次に水2ミリモル、ジエチルアルミニウムモノクロライド2.9ミリモルを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.24ミリモルを添加した。オートクレーブを昇温し、58.5℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.0087ミリモルを加えて、60℃で30分間重合反応を行なった。次に、直ちに60℃で、変性剤として3,4−ジアミノ安息香酸1.0ミリモルを添加し、同温度で120分間、変性反応を行なった。
【0044】
反応終了後、未反応ガスを系外に排出し、トルエン500ミリリットルを添加し、変性ポリブタジエンのトルエン溶液にしてから、更にメタノール500ミリリットルを加えて、10分間攪拌後、攪拌を停止し、オートクレーブの内容物を容積2リットルの別容器に移し、ポリマー(変性ポリブタジエン)を濾過分離した。次に、ポリマーを800ミリリットルのトルエンで溶解した後、800ミリリットルのメタノールを加えてポリマーを析出させ、濾過分離する操作を3回繰り返した後、酸化防止剤としてIrganox−1010[テトラキス−(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン]を変性ポリブタジエンに対して0.11phr、老化防止剤として、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトを0.45phrを添加して練り込み、100℃で1.5時間、真空乾燥させ、変性ポリブタジエンを得た。
【0045】
[実施例2]
変性剤を3,5−ジアミノ安息香酸に変えた以外は実施例1と全く同じ操作を行ない、変性ポリブタジエンを得た。
【0046】
[実施例3]
変性剤の3,4−ジアミノ安息香酸の使用量を、1.8ミリモルに変えた以外は、実施例1と全く同様にして、変性ポリブタジエンを製造した。
【0047】
[実施例4]
変性剤の3,5−ジアミノ安息香酸の使用量を、1.5ミリモルに変えた以外は、実施例2と全く同様にして、変性ポリブタジエンを製造した。
【0048】
[比較例1]
実施例1と全く同じ操作を行ない、60℃で30分間、1,3−ブタジエンの重合を行った後、変性剤を添加しないで、直ちに未反応ガスを排出し、その後は実施例1と同様の後処理を行なって、未変性ポリブタジエンを製造した。
【0049】
[加硫物性]
実施例1〜4及び比較例1で得られたポリブタジエン(変性BRまたは未変性BR)のそれぞれを第1表に記載のように配合してゴム組成物を調製した。次いで、得られた配合物を150℃で30分間プレス加硫して、加硫物の物性として、前記の方法で、300%弾性率、転がり抵抗指数、引張強度、及びウエットスキッド抵抗を測定して第2表に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】
本発明に従って、1,3−ブタジエンを、コバルト化合物、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、及び水からなるコバルト系触媒組成物、もしくはニッケル化合物、有機アルミニウム化合物、及びフッ素化合物からなるニッケル系触媒組成物の存在下で重合させてポリブタジエンとした後、このポリブタジエンを少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物により変性する方法により製造した変性ポリブタジエン(変性ポリブタジエンゴム)は、ムーニー粘度の増加、ゲル分率の増加、引張強度の増加、反発弾性率(転がり抵抗指数)の向上、そしてウエットスキッド抵抗の向上が実現しており、特に自動車タイヤ材料として有用性が高い。
Claims (7)
- 1,3−ブタジエンを、コバルト化合物、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、及び水からなるコバルト系触媒組成物、もしくはニッケル化合物、有機アルミニウム化合物、及びフッ素化合物からなるニッケル系触媒組成物の存在下で重合させてポリブタジエンとした後、直ちにこのポリブタジエンを、少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物により変性することを特徴とする変性ポリブタジエンの製造方法。
- 使用する触媒組成物がコバルト系触媒組成物であって、その触媒成分の使用量が、それぞれ1,3−ブタジエン1モルに対して、コバルト化合物については1×10-7〜1×10-3モルであり、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物については1×10-5〜1×10-1モルであり、かつ水については1×10-5〜1×10-1モルであることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
- コバルト化合物が、炭素原子数1〜18のカルボン酸のコバルト塩であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
- ハロゲン含有有機アルミニウム化合物が、合計炭素原子数2〜10のジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、もしくはアルキルアルミニウムセスキハライドであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
- 少なくとも二個のアミノ基と一個のカルボキシル基とを有する芳香族化合物が、3,4−ジアミノ安息香酸もしくは3,5−ジアミノ安息香酸であることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリブタジエンの製造方法。
- 請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の製造方法により得られた変性ポリブタジエンであって、その繰り返し単位の80%以上がシス−1,4構造を持ち、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20〜80の範囲にあり、ゲルパーミエーション法による重量平均分子量が200,000〜1,000,000の範囲にあり、窒素含有量が10〜5000ppmの範囲にあることを特徴とする変性ポリブタジエン。
- 請求項6に記載の変性ポリブタジエンをゴム成分中に少なくとも10重量%含むことを特徴とするゴム組成物。
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