JP3882496B2 - インバータ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、モータを駆動制御するインバータ装置に関するもので、特に停電が発生した場合に制御電源の維持期間を延ばすことができるインバータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は従来のインバータ装置の構成を示す図である。図において、31は3相交流電源、32はダイオード6個をカスケード接続し、3相交流電源31より供給される3相交流電力を直流電力に変換するコンバータ部、33はコンバータ部32により変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサ、34はトランジスタとダイオードにより構成され平滑コンデンサ33により平滑された直流電圧を可変周波数、可変電圧の交流電力に変換するインバータ部、35はインバータ部34から出力される交流電力により駆動制御される誘導電動機などのモータである。また、36は直流母線電圧を検出する電圧検出器である。
【0003】
また、37はインバータ部34のトランジスタをオン/オフ制御する制御部である。制御部37は、高キャリア周波数正弦PWM制御により出力平均電圧が正弦波となるように、インバータ部34にトランジスタ制御信号40を出力し、トランジスタをオン/オフするスイッチングパルス幅を可変とし、任意の周波数および電圧を出力する。
また、38は入力された速度指令としての周波数設定と予め設定されている基本加速時間および基本減速時間に基づき、加減速時間を設定する加減速時間設定部である。また、39はあらかじめ設定されているV/Fパターン、加減速時間設定部38で設定された加減速時間を基に、出力周波数および出力電圧を演算して、インバータ部34のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号40を出力するV/F制御部である。
【0004】
図11は電圧と電圧位相角との関連を示す図である。また、図12は従来のインバータ装置における制御部において出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。図において、ωは角速度、Δtは制御周期であるインタラプト時間、θは電圧位相角、Δθは電圧位相進み角である。
【0005】
図10〜図12により、従来のインバータ装置における電圧制御の動作について説明する。制御部においては、制御周期であるインタラプト時間Δt毎のインタラプト処理にて電圧位相角θを算出する。
ステップS20で、前回のインタラプト時間から今回のインタラプト時間の間に進んだ電圧位相角θを、電圧位相進み角Δθとして算出する。
Δθ = ω*Δt・・・・・式(1)
ステップS21で、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0006】
従来のインバータ装置においては、今回の電圧位相角θを、インタラプト時間Δt間隔毎に前回の電圧位相角θに今回の電圧位相進み角Δθを足し込んで計算しているので、角速度ωおよびインタラプト時間Δtが一定であれば、今回の電圧位相進み角Δθは一定となるため、図11に示すように電圧位相角θを一定間隔にて進めることができる。
【0007】
図13は従来のインバータ装置における停電減速動作を示す図で、(a)はインバータ装置の入力電圧VAC、(b)は直流母線電圧VPN、(c)は出力周波数fo、(d)はモータ回転数Nである。図において、Aはインバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点、Bは制御電源を維持できる下限電圧以下となった時点、Cは制御電源が維持されていた場合に、出力周波数foを0Hzに減速停止制御する時点である。
入力電圧VACが正常な場合には、直流母線電圧VPNが300Vに維持されており、出力周波数fo、モータ回転数Nも指令どおり制御されている。ところが、停電が発生し、インバータ入力電圧VACが供給されなくなった場合には、直流母線電圧VPNが低下して制御電源維持下限電圧以下となり、モータはフリーラン停止することになる。
【0008】
また、インバータ装置には、インバータ装置への電源が供給されない停電が発生した時、モータからの回生エネルギーを利用することにより直流母線電圧を保ち、停電が発生した場合でも、モータをフリーランさせないで安全にモータを減速停止させる停電減速停止機能がある。
ところが、力行負荷時などモータからの回生エネルギーが十分でない場合には、停電減速停止機能があっても、モータからの回生エネルギーが利用できないので、モータを減速停止させる前にインバータ装置の直流母線電圧VPNが制御電源維持下限電圧以下となる。
【0009】
図14は、例えば特開平6−165582号公報に示された従来のインバータ装置の主回路の概略構成を示す図である。この従来のインバータ装置は、高速回転中の誘導電動機を緊急停止させる必要が生じた場合に、インバータ出力アームを還流状態へ切り換えると同時に電圧位相の積算を停止することにより、誘導電動機内部の磁束を一定に保ったまま減速トルクを急峻に増加させることができ、かつインバータが過電流にならない限界電流を安定に流し続けることで、誘導電動機の一次銅損および二次銅損を最大にでき、これにより回転エネルギーを有効に消費させることが可能となり、大きな減速トルクを発生できるようにしたものである。
【0010】
図において、51は正側直流母線Pであり、52は負側直流母線N、53は直流母線PN間に配置され、直流母線PN間の電圧を保持する主回路コンデンサである。また、54はU相正側主スイッチング素子、55はU相負側主スイッチング素子、56はV相正側主スイッチング素子、57はV相負側主スイッチング素子、58はW相正側主スイッチング素子、59はW相負側主スイッチング素子である。U相正側主スイッチング素子54とU相負側主スイッチング素子55、V相正側主スイッチング素子56とV相負側主スイッチング素子57、W相正側主スイッチング素子58とW相負側主スイッチング素子59は、相補的に動作し、片方がオンの時はもう片方がオフとなる。
【0011】
また、60は誘導電動機である。61はインバータの出力側即ち誘導電動機60に流れる電動機電流の各相電流を2相または3相で検出して、このうちの絶対値が最大なものを抽出し、これを電流検出値Iとして出力する絶対値整流回路である。
62は、電流制限レベルOcと電流検出値Iを比較し、電流検出値Iが電流制限レベルOcを越えない場合には、電流低下信号S1を出力する比較器である。なお、電流制限レベルOcはインバータの過電流保護レベルよりいく分低い値に設定する。また、63は直流母線電圧検出値Vdcを出力する直流母線電圧検出器である。また、64は直流母線電圧検出値Vdcと直流母線電圧制限レベルOvを比較し、直流母線電圧検出値Vdcが直流母線電圧制限レベルOvを越えない場合に電圧低下信号S2を出力する比較器である。また、65は、電流低下信号S1と電圧低下信号S2がともに出力されている場合に還流状態切換信号S3を出力するAND回路である。
【0012】
また、66は制御回路である。制御回路66は還流状態切換信号S3が入力されない場合にはPWM信号を発生させて主回路スイッチング素子54〜59を駆動している。還流状態切換信号S3が入力されると、主回路スイッチング素子54〜59のうち、正側のU相正側主スイッチング素子54、V相正側主スイッチング素子56、W相正側主スイッチング素子58をオン、U相負側主スイッチング素子55、V相負側主スイッチング素子57、W相負側主スイッチング素子59をオフして誘導電動機60の端子間を短絡させ、これと同時にPWM信号を発生するための位相角の進行を停止させる。これにより、誘導電動機60は零周波数でかつ、零電圧の状態となり、急速に減速トルクが発生する。
【0013】
図14に示した従来のインバータ装置は、高速回転中の誘導電動機60を緊急停止させる必要が生じた場合に、絶対値整流回路61の出力する電流検出値Iが電流制限レベルOcを越えずに、かつ、直流母線電圧検出器63の出力する直流母線電圧制限レベルOvを越えない場合には、インバータ出力アームを還流状態へ切り換えると同時に電圧位相の積算を停止する。そのため、誘導電動機60内部の磁束を一定に保ったまま減速トルクを急峻に増加させることができ、かつインバータが過電流にならない限界電流を安定に流し続けることができる。
【0014】
図14に示した従来のインバータ装置は、高速回転中の誘導電動機を緊急停止させる必要が生じた場合に、電源回生機能やコンデンサの電荷を放電させる回路を用いることなく、速やかに誘導電動機を減速停止させることを目的としたもので、直流母線電圧が過大でなく、電動機電流が過大でない時は、インバータ出力を還流状態にし、PWM波形制御をその時点で停止させることによって、誘導電動機内部の磁束を一定に保ったままで、減速トルクを急峻に増加させることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
図10〜図13に示した従来のインバータ装置では、停電が発生した時、モータを減速停止させる前にインバータ装置の直流母線電圧VPNが制御電源維持下限電圧以下となってしまい(図13(b)のB点)、モータがフリーランしてしまうという問題点があった。
また、図14に示した従来のインバータ装置は、電圧位相の積算を停止して直流母線電圧VPNを上昇させるものであるが、電源電圧が正常時において、誘導電動機を緊急停止させる必要が生じた場合に、インバータが過電流にならない限界電流を安定に流し続けることにより、回生エネルギーを効率よく利用して、減速トルクを急峻に増加させるものであって、停電が発生した時、必ずしも制御電源を維持できないという問題点があった。
【0016】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、停電が発生した時、運転状態にかかわらずモータを減速停止することができるインバータ装置を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
3相交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、このコンバータ部により変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、直流母線電圧を検出する電圧検出器と、トランジスタとダイオードにより構成され、直流電力を可変周波数、可変電圧の交流電力に変換するインバータ部と、入力された周波数設定に基づき、出力周波数および出力電圧を演算して、このインバータ部のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号を出力する制御部と、を有するインバータ装置において、出力周波数に乗算する位相係数および出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたものである。
【0020】
また、前記記憶部は出力周波数に乗算する第1の位相係数と第2の位相係数、出力周波数を強制低減する第1の出力周波数低減処理回数、第2の出力周波数低減処理回数、制御電源の維持可/不可を判定するための直流母線電圧チェック値を記憶し、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記第1の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第1の出力周波数低減処理回数だけ実施するとともに、停電時の直流母線電圧が前記直流母線電圧チェック値以下となった場合に、直流母線電圧が直流母線電圧チェック値以下となった時点における出力周波数に前記第2の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第2の出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るインバータ装置の構成を示す図である。図において、31〜36、38、39、40は従来例としての図10と同様であり、その説明を省略する。また、1aはインバータ部34のトランジスタをオン/オフ制御する制御部、2は停電を検知する停電検知部である。
また、3aはあらかじめ設定されているV/Fパターン、加減速時間設定部38で設定された加減速時間を基に、出力周波数および出力電圧を演算して、インバータ部34のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号40を出力するV/F制御部、4aは位相係数α1(100%>α1≧1%)、出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数n1(n1≧1)を記憶する記憶部である。V/F制御部3aは、停電が発生してインバータ入力電圧VACが供給されなくなった場合に、出力周波数を操作して、停電後の制御電源維持時間を延ばす制御を行う。
【0024】
図2はこの発明の実施の形態1に係るインバータ装置の制御部1aにおける停電が発生した場合の出力周波数の制御を示す図である。図において、foは出力周波数、fo1は停電発生時の出力周波数、α1は位相係数(100%>α≧1%)、Δtは制御周期であるインタラプト時間、n1は出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数(n1≧1)である。
停電が発生した場合には、Δt×n1時間だけ出力周波数をfo1×α1とするようにしたものである。
【0025】
図3はこの発明の実施の形態1に係るインバータ装置における電圧と電圧位相角との関連を示す図である。図において、ωは角速度、Δtは制御周期であるインタラプト時間、θは電圧位相角、Δθは電圧位相進み角、α1は位相係数(100%>α≧1%)である。
停電が発生した場合には、Δt×n1時間だけ電圧位相進み角ΔθをΔθ×α1とするようにしたものである(図では、n1=1として1インタラプト時間Δtだけ出力周波数をfo1×α1とした例を示した)。
電圧位相進み角Δθは、式(1)は式(3)と置き換えることができ、
Δθ=ω*Δt ・・・・・式(1)
Δθ=2πf*Δt・・・・・式(3)
出力周波数fo1に位相係数α1を掛けることは、電圧位相進み角Δθに位相係数α1を掛けることと等価となる。
【0026】
図4はこの発明の実施の形態1に係るインバータ装置の制御部において、インバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点における出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。
【0027】
図5はこの発明の実施の形態1に係るインバータ装置における停電減速動作を示す図で、(a)はインバータ装置の入力電圧VAC、(b)は直流母線電圧VPN、(c)は出力周波数fo、(d)はモータ回転数Nである。図において、Aはインバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点である。
【0028】
図5(b)において、B1は位相係数α1を小さい値に設定して、直流母線電圧VPNの上昇を大きくした場合の曲線、またB2は位相係数α1を大きい値に設定して、直流母線電圧VPNの上昇を少なくした場合の曲線である。また、出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1を増やすことにより、直流母線電圧VPNの上昇を大きくすることができる。
直流母線電圧VPNの上昇が少ない場合には、曲線B2に示すように、モータを減速停止する前に、直流母線電圧VPNが制御電源維持下限電圧以下となり、フリーランになってしまうので、位相係数α1および出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1を、運転仕様に合わせて設定することが必要である。
【0029】
図1から図5により、実施の形態1に係るインバータ装置における停電減速動作を説明する。制御部1aは、制御周期であるインタラプト時間Δt毎のインタラプト処理にて電圧位相角θを算出する。
【0030】
ステップS20で、前回のインタラプト時間から今回のインタラプト時間の間に進んだ電圧位相角θを、電圧位相進み角Δθとして算出する。
Δθ = ω*Δt・・・・・式(1)
【0031】
ステップS1で、電源電圧正常か停電かを判定し、電源電圧正常の場合には、ステップS21で、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0032】
ステップS1で停電と判定した場合には、続いてステップS2で停電時初回処理か否かを判別し、停電時初回処理でない場合にはステップS4へ進む。また、停電時初回処理の場合には、続いてステップS3で記憶部4aから出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1(n1≧1)を取り込み、出力周波数低減処理回数n1との比較に使用するカウンタをリセットして、ステップS4へ進む。
【0033】
ステップS4で、出力周波数低減処理回数n1との比較に使用するカウンタのカウント値と出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1との大小比較をし、カウント値が出力周波数低減処理回数n1を越えた場合は、ステップS21へ進み、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する(電圧正常時と同様の処理)。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0034】
ステップS4で、カウント値が出力周波数低減処理回数n1未満と判定した場合は、ステップS5へ進む。ステップS5で、電圧位相進み角Δθに位相係数α1(100%>α1≧1%)を乗算した値を前回インタラプト時間における電圧位相角θに加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + α1*Δθ ・・・・・式(4)
ステップS6で、カウント値を更新する。
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0035】
実施の形態1では、停電が発生した(図5(a)のA点)場合、出力周波数をfo1×α1(100%>α1≧1%)として(fo1は停電発生時の出力周波数)、出力周波数が実回転数を下回るようにしたので、回生エネルギーが帰り易くなり、直流母線電圧VPNを上昇させることができる(図5(b))。
また、位相係数α1の値を変更することにより、図5(b)に示すように直流母線電圧VPNの上昇させる割合を調整することができる。例えば、モータからの回生エネルギーが多くて、直流母線電圧VPNが急激に跳ね上がってしまうような運転仕様においては、位相係数α1の値を大きく設定することにより、直流母線電圧VPNの上昇を少なくさせて、過電圧エラーによりインバータ装置がトリップすることなく安全にモータを減速停止させることが可能となる。
【0036】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係るインバータ装置の構成を示す図である。図において、31〜36、38、39、40は従来例としての図10と同様であり、その説明を省略する。また、1bはインバータ部34のトランジスタをオン/オフ制御する制御部、2は停電を検知する停電検知部である。
また、3bはあらかじめ設定されているV/Fパターン、加減速時間設定部38で設定された加減速時間を基に、出力周波数および出力電圧を演算して、インバータ部34のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号40を出力するV/F制御部、4bは位相係数α1,α2(100%>α1,α2≧1%)、出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数n1,n2(n1,n2≧1)、直流母線電圧チェック値VPN2を記憶する記憶部である。V/F制御部3bは、停電が発生してインバータ入力電圧VACが供給されなくなった場合に、出力周波数を操作して、停電後の制御電源維持時間を延ばす制御を行うとともに、直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下となった時点で出力周波数foが0Hzでない場合には、再度制御電源維持時間を延ばす制御を行う。
【0037】
図7はこの発明の実施の形態2に係るインバータ装置の制御部1bにおける停電が発生した場合の出力周波数の制御を示す図である。図において、foは出力周波数、fo1は停電発生時の出力周波数、fo2は直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下となった時点における出力周波数、α1,α2は位相係数(100%>α1,α2≧1%)、Δtは制御周期であるインタラプト時間、n1,n2は出力周波数をfo1×α1,fo2×α2とする出力周波数低減処理回数(n1,n2≧1)である。停電が発生した場合には、Δt×n1時間だけ出力周波数をfo1×α1とするとともに、直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下となった時点で出力周波数foが0Hzでない場合には、Δt×n2時間だけ出力周波数をfo2×α2とするようにしたものである。
【0038】
図8はこの発明の実施の形態2に係るインバータ装置の制御部において、インバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点における出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。
【0039】
図9はこの発明の実施の形態2に係るインバータ装置における停電減速動作を示す図で、(a)はインバータ装置の入力電圧VAC、(b)は直流母線電圧VPN、(c)は出力周波数fo、(d)はモータ回転数Nである。図において、Aはインバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点である。
【0040】
図6から図9により、実施の形態2に係るインバータ装置における停電減速動作を説明する。制御部1bは、制御周期であるインタラプト時間Δt毎のインタラプト処理にて電圧位相角θを算出する。
【0041】
ステップS20で、前回のインタラプト時間から今回のインタラプト時間の間に進んだ電圧位相角θを、電圧位相進み角Δθとして算出する。
Δθ = ω*Δt・・・・・式(1)
【0042】
ステップS1で、電源電圧正常か停電かを判定し、電源電圧正常の場合には、ステップS21で、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0043】
ステップS1で停電と判定した場合には、続いてステップS2で停電時初回処理か否かを判別し、停電時初回処理でない場合にはステップS4へ進む。また、停電時初回処理の場合には、続いてステップS3で記憶部4bから出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1(n1≧1)を取り込み、出力周波数低減処理回数n1との比較に使用するカウンタをリセットして、ステップS4へ進む。
【0044】
ステップS4で、出力周波数低減処理回数nとの比較に使用するカウンタのカウント値と出力周波数をfo1×α1とする出力周波数低減処理回数n1との大小比較をし、カウント値が出力周波数低減処理回数n1未満の場合は、ステップS5へ進み、電圧位相進み角Δθに位相係数α1(100%>α1≧1%)を乗算した値を前回インタラプト時間における電圧位相角θに加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + α1*Δθ ・・・・・式(4)
ステップS6で、カウント値を更新する。
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0045】
ステップS4でカウント値が出力周波数低減処理回数n1を越えたと判定した場合は、続いてステップS7で直流母線電圧VPNをチェックし、直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2を越えている場合は、ステップS21へ進み、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する(電圧正常時と同様の処理)。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0046】
ステップS7で直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下と判定した場合は、続いてステップS8で出力周波数foが0Hzであるか否かを判定し、出力周波数foが0Hzの場合は、ステップS21、ステップS22へ進む。
【0047】
ステップS8で出力周波数foが0Hzでない場合には、ステップS9へ進み、制御電源維持時間を延ばす制御を行う。直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下と判定した時点の出力周波数をfo2とする。
ステップS9で初回処理か否かを判別し、停電時初回処理でない場合にはステップS11へ進む。また、初回処理の場合には、続いてステップS10で記憶部4bから出力周波数をfo2×α2とする出力周波数低減処理回数n2(n2≧1)を取り込み、出力周波数低減処理回数n2との比較に使用するカウンタをリセットして、ステップS11へ進む。
【0048】
ステップS11で、出力周波数低減処理回数n2との比較に使用するカウンタのカウント値と出力周波数をfo2×α2とする出力周波数低減処理回数n2との大小比較をし、カウント値が出力周波数低減処理回数n2未満の場合は、ステップS12へ進み、電圧位相進み角Δθに位相係数α2(100%>α2≧1%)を乗算した値を前回インタラプト時間における電圧位相角θに加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する。
θ = θ + α2*Δθ ・・・・・式(5)
ステップS13で、カウント値を更新する。
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0049】
ステップS11でカウント値が出力周波数低減処理回数n2を越えたと判定した場合は、ステップS21へ進み、前回インタラプト時間における電圧位相角θに電圧位相進み角Δθを加算して、今回インタラプト時間における電圧位相角θを算出する(電圧正常時と同様の処理)。
θ = θ + Δθ = θ + ω*Δt・・・・・式(2)
ステップS22で、今回インタラプト時間における電圧位相角θを出力する。
【0050】
実施の形態1においては、停電が発生した(図5(a)のA点)場合、出力周波数をfo1×α1(100%>α1≧1%)として(fo1は停電発生時の出力周波数)、直流母線電圧VPNを上昇させるようにした例を説明したが、実施の形態2においては、さらにモータを減速停止させる以前に制御電源維持が困難となる場合には、出力周波数をfo2×α2(100%>α2≧1%)として(fo2は直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下となった時点の出力周波数)、直流母線電圧VPNを上昇させることにより制御電源維持時間を延ばす制御を行うようにしたものである。
【0051】
ところで、上記説明では記憶部に、位相係数α1,α2(100%>α1,α2≧1%)、出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数n1,n2(n1,n2≧1)、直流母線電圧チェック値VPN2を記憶する例で説明したが、パラメータとして外部設定できるようにしてもよい。
【0052】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0053】
3相交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、このコンバータ部により変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、直流母線電圧を検出する電圧検出器と、トランジスタとダイオードにより構成され、直流電力を可変周波数、可変電圧の交流電力に変換するインバータ部と、入力された周波数設定に基づき、出力周波数および出力電圧を演算して、このインバータ部のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号を出力する制御部と、を有するインバータ装置において、出力周波数に乗算する位相係数および出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたので、回生エネルギーを還し易くすることができ、その結果直流母線電圧VPNを上昇させること(制御電源を保つこと)ができるようになるため、モータをフリーランさせることなく安全に減速停止させることができるとともに、直流母線電圧VPNを上昇させる割合を容易に調整できる。
【0056】
また、前記記憶部は出力周波数に乗算する第1の位相係数と第2の位相係数、出力周波数を強制低減する第1の出力周波数低減処理回数、第2の出力周波数低減処理回数、制御電源の維持可/不可を判定するための直流母線電圧チェック値を記憶し、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記第1の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第1の出力周波数低減処理回数だけ実施するとともに、停電時の直流母線電圧が前記直流母線電圧チェック値以下となった場合に、直流母線電圧が直流母線電圧チェック値以下となった時点における出力周波数に前記第2の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第2の出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたので、停電発生時点および停電時の直流母線電圧が前記直流母線電圧チェック値以下となった時点とで、直流母線電圧VPNを上昇させること(制御電源を保つこと)ができるようになり、効率よく直流母線電圧VPNを上昇させることができるとともに、直流母線電圧VPNを上昇させる割合を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るインバータ装置の構成を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係るインバータ装置の制御部1aにおける停電が発生した場合の出力周波数の制御を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態1に係るインバータ装置における電圧と電圧位相角との関連を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係るインバータ装置の制御部において、インバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点における出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係るインバータ装置における停電減速動作を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態2に係るインバータ装置の構成を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態2に係るインバータ装置の制御部1bにおける停電が発生した場合の出力周波数の制御を示す図である。
【図8】 この発明の実施の形態2に係るインバータ装置の制御部において、インバータ入力電圧VACが供給されなくなった時点における出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。
【図9】 この発明の実施の形態2に係るインバータ装置における停電減速動作を示す図である。
【図10】 従来のインバータ装置の構成を示す図である。
【図11】 電圧と電圧位相角との関連を示す図である。
【図12】 従来のインバータ装置における制御部において出力電圧位相角を計算するフローチャートを示す図である。
【図13】 従来のインバータ装置における停電減速動作を示す図である。
【図14】 例えば特開平6−165582号公報に示された従来のインバータ装置の主回路の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1a,1b 制御部、 2 停電検知部、 3a,3b V/F制御部、 4a,4b 記憶部、 31 3相交流電源、 32 コンバータ部、 33 平滑コンデンサ、 34 インバータ部、 35 モータ、 36 電圧検出器、37 制御部、 38 加減速時間設定部、 39 V/F制御部、 40 トランジスタ制御信号、 ω 角速度、 Δt インタラプト時間、 θ 電圧位相角、 Δθ 電圧位相進み角、 VAC インバータ装置の入力電圧、 VPN直流母線電圧、 N モータ回転数、 fo 出力周波数、 fo1 停電発生時の出力周波数、 fo2 直流母線電圧VPNが直流母線電圧チェック値VPN2以下となった時点における出力周波数、 α1,α2 位相係数(100%>α1,α2≧1%)、 n1,n2 出力周波数低減処理回数(n1,n2≧1)、 VPN2 直流母線電圧チェック値。
Claims (2)
- 3相交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、このコンバータ部により変換された直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、直流母線電圧を検出する電圧検出器と、トランジスタとダイオードにより構成され、直流電力を可変周波数、可変電圧の交流電力に変換するインバータ部と、入力された周波数設定に基づき、出力周波数および出力電圧を演算して、このインバータ部のトランジスタをオン/オフするトランジスタ制御信号を出力する制御部と、を有するインバータ装置において、
出力周波数に乗算する位相係数および出力周波数を強制低減する出力周波数低減処理回数を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたことを特徴とするインバータ装置。 - 前記記憶部は出力周波数に乗算する第1の位相係数と第2の位相係数、出力周波数を強制低減する第1の出力周波数低減処理回数、第2の出力周波数低減処理回数、制御電源の維持可/不可を判定するための直流母線電圧チェック値を記憶し、前記制御部は、停電が発生した場合に、停電が発生した時点の出力周波数に前記第1の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第1の出力周波数低減処理回数だけ実施するとともに、停電時の直流母線電圧が前記直流母線電圧チェック値以下となった場合に、直流母線電圧が直流母線電圧チェック値以下となった時点における出力周波数に前記第2の位相係数を乗算して算出した出力周波数で前記第2の出力周波数低減処理回数だけ実施するようにしたことを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
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