JP3879619B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなるレーザ素子に関し、特に出射されるレーザ光の単一モード化された集光性のよいレーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体レーザ素子には、活性層を含む窒化物半導体層を劈開又はエッチングしてその劈開面又はエッチング面を共振面とし、活性層内で増幅された大きな出力のコヒーレント光を共振面から放射するものがある。
【0003】
本発明者等は共振面を有する窒化物半導体レーザ素子として、波長が410nmの短波長のレーザ光の連続発振の可能な窒化物半導体レーザ素子を提案している。例えば、Appl.Lett.69(1996)3034、Appl.Phys.Lett.69(1996)4056などに記載されている。
レーザ光は、自然発光で生じた光が活性層内で反射/往復して増幅され、誘導放出光として共振面中の活性層端面から外へ放出される。ここで、光は、増幅し活性層中を導波しているとき、散乱し活性層以外の窒化物半導体層を導波するものがある。
このような光の散乱を防止し発光効率を向上させるため、上記の半導体レーザ素子は、活性層内で発生し誘導された光を閉じ込めるための層、光閉じ込め層(クラッド層)を活性層を挟むようにn側とp側に設けている。クラッド層は、その層を構成する物質の光屈折率が活性層物質のそれより小さく設計され、それによって光を閉じ込める作用を示す。
上記クラッド層を有する本発明者等が提案した窒化物半導体レーザ素子は、短波長のレーザ光を放射することができるので、光メモリーの高密度化や大容量化にとって大変有用である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、共振面から出射されるレーザ光は、そのファーフィールドパターンが十分に良好な単一のスポットとして得られにくい。その原因として活性層で発生した光の一部がクラッド層を通過し、クラッド層と基板との間に積層されている屈折率が中間の値を示す材料、例えばGaNからなるn側窒化物半導体層(n側層)で導波され、n側層端面から放射される。
ちなみに窒化物半導体レーザ素子を構成する窒化物半導体層の屈折率は、大きい方から順に、活性層、中間層(GaN等)、クラッド層、基板(サファイア、スピネル等)である。つまり、クラッド層と基板の間に比較的屈折率の大きい中間層があると散乱した光は中間層で導波され、また、サファイア基板面で反射され、n側層端面から放射される。このように散乱した光は、基板があるとn側層を通過して基板から外部に放散されることが少なく、n側層端面から放射されファーフィールドパターンを乱す。
一方、p側窒化物半導体層(p側層)に散乱した光は、p側層の最上層に形成された電極とクラッド層の間に積層されている屈折率の値が中間の値を示す材料からなる層等を導波しp側層端面から放射される。しかし、p側層は、n側層に比べてかなり薄い膜であるので、p側層端面から放射される光はファーフィールドパターンをほとんど乱さない。従って、n側層端面からの不要な光を極力制御する必要がある。
【0005】
光がクラッド層を通過しないようにするには、クラッド層の屈折率を更に小さくすることが考えられるが、クラッド層物質の物性の点から屈折率の調整には限界がある。また、クラッド層を厚く積層すれば、クラッド層を通過する光がクラッド層内で減衰し不要な光が出射されなくなるが、クラッド層は厚く積層されるとクラックが入り易く、厚く積層させることができない。
このように活性層内の光を十分に閉じ込めることができなければ、ファーフィールドパターンを十分に良好な単一モードとすることができず、レーザビーム径を小さくすることを必要とするDVD光源や、単一モードの光を必要とする光通信分野への適用を十分満足させることができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、レーザ光のファーフィールドパターンが良好で、単一モードのレーザ光が得られる窒化物半導体レーザ素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の目的は以下の構成によって達成することができる。
(1) 互いに対向する活性層端面を共振面とする窒化物半導体レーザ素子において、少なくとも一方の共振面の活性層端面以外の端面に不透光膜が形成されてなることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
(2) 前記共振面の活性層端面以外の端面がn側層端面であることを特徴とする前記(1)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0008】
つまり、本発明は、上記の如く活性層端面以外の共振面に不透光膜を形成することで、散乱した光の放出を防止し、共振面の活性層端面のみから増幅された光を放射することができ、それによってレーザ光のファーフィールドパターンを良好にし単一モード化を可能にすることができる。
【0009】
従来の不透光膜を有してない窒化物半導体レーザ素子として図1を例にとって示した。図1は、サファイア基板1上に、n側GaN層2、n側クラッド層3、活性層4、p側クラッド層5、及びp側コンタクト層6を順に積層し、共振面101を有する窒化物半導体レーザ素子の模式的断面図である。活性層4内で増幅した光cは活性層端面104から放出されるが、活性層4内で一部の光が活性層4以外の窒化物半導体層へ散乱する。そしてn側GaN層2を導波する光a及びn側クラッド層3を導波する光bがn側層端面102から放出し、更にp側クラッド層5を導波する光d及びp側コンタクト層6を導波する光eがn側層に比べてごくわずかであるがp側層端面103から放射される。このような光a、b、d及びeの放出を防止するのに、クラッド層の屈折率を更に小さくする又はクラッド層を光が減衰するほどに厚く形成することが困難である。
【0010】
これに対して、本発明は、従来難しいとされている窒化物半導体層内の物質の調整や膜厚等の調整を行わず、活性層端面104以外の共振面の端面に不透光膜を形成するといった本発明の意外な発想により、不要な光の放射を防止し従来の問題点を解決するものである。
本発明において、活性層端面以外の端面とは、活性層端面以外であればいずれでもよく、具体的には、図1の端面102及び103を示す。不透光膜を形成するのに好ましくは、少なくともn側層端面102(但し、本発明においては光ガイド層は含まれず、n側クラッド層を含んで基板に接して形成されている窒化物半導体層までを示す。)である。なぜならば、n側層端面102からファーフィールドパターンを乱す不要な光が多量に放射されるので、n側層端面102に不透光膜を形成することでファーフィールドパターンを良好にすることができる。また、不透光膜を形成する工程の簡便化及び操作性の点から、n側層端面102に形成する際基板端面105にも形成することが好ましい。またp側層端面103(但し、本発明においてはキャップ層や光ガイド層は含まれず、p側クラッド層を含んで活性層とは反対側のすべての窒化物半導体層を示す。)からも不必要な光が放射されるので不透光膜を形成することが好ましいが、その光の量はレーザ光の実用を阻害する程度にファーフィールドパターンを乱すものではなく、更にp側層が非常に薄膜に形成されているため、p側層端面103に不透光膜を形成しなくてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、不透光膜とは、光を吸収するか光を全反射させるような、光を透過させない膜を示す。本発明で用いることのできる不透光膜としては、例えば金属膜、黒色膜等である。具体的な不透光膜としては、例えばCr、Ni、Al、Ag、Pd等を挙げることができる。好ましい不透光膜としては、Cr、Ni、Al等である。不透光膜は、窒化物半導体の共振面に接して形成してもよく、また絶縁体の膜(例えば絶縁体の反射鏡等)を形成した後に絶縁体膜上に形成してもよい。
【0012】
本発明において、不透光膜の形成される位置は、窒化物半導体層の共振面であり、レーザ光放射口以外、つまり活性層端面以外の端面である。また、不透光膜は2面以上の共振面に形成されてもよく、少なくともレーザ光放出方向の共振面に形成されるのが好ましい。活性層端面以外の端面とは、図1に示されるように、共振面101中、活性層端面104以外の端面であるn側GaN層2及びn側クラッド層3等のn側窒化物半導体層(n側層)端面102並びにp側クラッド層5及びp側コンタクト層6等のp側窒化物半導体層(p側層)端面103である。不透光膜の形成される位置の好ましくは、n側層端面102である。またn側層端面102及びp側層端面103に不透光膜を形成することがファーフィールドパターンをより良好とするのに好ましが、前記したようにp側層端面103に不透光膜を形成するのが困難であり、更にp側層端面103からの不要な光がわずかであるので、p側層端面103には不透光膜を形成しなくてもよい。
散乱し活性層以外の層を導波して活性層端面104以外の共振面から放出される光は、n側層端面102から放出されるのが多く、n側層端面102からの不要な光の放出を防止できればほぼ良好なファーフィールドパターンが得られ、光を単一のモードにし易くなる。更に、n側層端面102に加えて、p側層端面103にも不透光膜を形成すると、より良好に光を制御できる。
また共振面を有してないレーザ素子であっても、光が散乱するのを防止するために、レーザ光放出部分以外の部分であれば不透光膜を形成することができる。
【0013】
不透光膜の膜厚は、特に限定されず、光りを透過しない範囲の膜厚であればよい。具体的には200・以上、好ましくは500〜10000・、より好ましくは500〜2000・である。この範囲であると光を完全に遮断でき出射ビームを妨げないので好ましい。
【0014】
本発明においてレーザ素子の共振面は、窒化物半導体をエッチングあるいは劈開して形成される。エッチング方法及び劈開の方法は、いずれの方法を用いてもよく、特に限定されない。
【0015】
本発明において、用いることのできる窒化物半導体をエッチングする方法には、ウエットエッチング、ドライエッチング等の方法があり、共振面となるような平滑な面を形成するには、好ましくはドライエッチングを用いる。ドライエッチングには、例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIBE)、電子サイクロトロンエッチング(ECR)、イオンビームエッチング等の装置があり、いずれもエッチングガスを適宜選択することにより、窒化物半導体をエッチングして共振面を形成することができる。例えば、本出願人が先に出願した特開平8−17803号公報記載の窒化物半導体の具体的なエッチング手段を用いることができる。
【0016】
上記のように形成された共振面に不透光膜を形成する方法としては、スパッタリング、蒸着により不透光膜を形成する。
【0017】
また本発明において、共振面の一方又は両方の、活性層端面あるいは共振面の全面に反射鏡を形成してもよい。反射鏡は窒化物半導体端面に接して形成されることが好ましく、また接して形成される場合は絶縁体の反射鏡が好ましい。反射鏡を形成すると、光損失が少なく、活性層内で光が増幅するための反射/往復が良好に起こり、発光効率が向上するので好ましい。
本発明に用いることのできる反射鏡は、例えば誘電体多層膜が挙げられ、その具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0018】
誘電体多層膜は基本的に互いに反射率の異なる無機材料を交互に積層してなり、例えばλ/4n(λ:波長、n:屈折率)の厚さで交互に積層することにより反射率を変化させることができる。誘電体多層膜の各薄膜の種類、厚さ等は発振させようとするレーザ素子の波長に応じてそれらの無機材料を適宜選択することにより設計可能である。例えばその無機材料には、高屈折率側の薄膜材料としてTiO2、ZrO2、HfO2、Sc2O3、Y2O3、MgO、Al2O3、Si3N4、ThO2の内の少なくとも一種類が選択でき、低屈折率側の薄膜材料としてSiO2、ThF4、LaF3、MgF2、LiF、NaF、Na3AlF6の内の少なくとも一種類が選択でき、これら高屈折率側の薄膜材料と、低屈折率側の薄膜材料とを適宜組み合わせ、発振する波長に応じて数十オングストローム〜数μmの厚さで数層〜数十層積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
【0019】
また、窒化物半導体で360nm〜460nmに発振するレーザ素子である場合、その光共振面に形成する誘電体多層膜は、特にSiO2、TiO2、ZrO2より選択された少なくとも2種類以上が最も適している。なぜなら前記3種類の酸化物は360nm〜460nmの範囲で光吸収が少なく、窒化物半導体と非常に良く密着して剥がれることもない。さらに前記波長の光が連続的に長時間照射されても劣化することがなく、さらに好ましいことにレーザ素子の発熱に対して非常に耐熱性に優れているからである。
【0020】
誘電体多層膜は例えば、蒸着、スパッタ等の気相製膜技術を用いて形成することができる。またその他、上記化合物を含む溶媒にレーザ素子を浸漬(ディッピング)した後、乾燥するという操作を繰り返して形成することも可能である。例えばSiO2とZrO2よりなる誘電体多層膜を形成する場合、SiO2、ZrO2を蒸着、スパッタ等の気相製膜技術で形成する他、Siを含む有機金属化合物の溶媒にレーザ素子を浸漬した後、乾燥し、酸素雰囲気でベーキングして酸化物とし、次にZrを含む有機金属化合物の溶媒にレーザ素子を浸漬し、乾燥した後、ベーキングして酸化物とする操作を繰り返すことにより誘電体多層膜を製膜することが可能である。但し、好ましく膜厚制御の面で気相製膜技術を用いる方がよい。
【0021】
本発明の一実施の形態である不透光膜を共振面に形成した窒化物半導体の模式的断面図である図2を用いて本発明に係る不透光膜の形成された窒化物半導体レーザ素子の具体例を示す。
図2は、基板1上に、n側層201(n側コンタクト層、n側クラッド層等)、活性層4、p側層202(p側コンタクト層、p側クラッド層等)を順に積層され、劈開又はエッチングにより形成された共振面全体に反射鏡203が形成され、更にこの反射鏡203に接してn側層端面及び基板端面に不透光膜204が形成されている。活性層端面113には不透光膜を形成せず、活性層内で増幅し誘導されたレーザ光がこの活性層端面113から放射される。また、p側層端面には、前記した理由でこの図においては形成していない。
【0022】
また、図2のように共振面全面に反射鏡203を形成すると、反射鏡203により活性層内の光が良好に共振できる。また反射鏡は少なくともレーザ光の放射側に形成されていることが好ましく、レーザ光の放射側の反対に形成されてもよい。
反射鏡の膜厚は、出射側に形成されるので、出射パワーやしきい値の制御によって異なるが、レーザ光の波長(λ)と反射鏡を形成する各物質の屈折率(η)、λ/4η、で表される。例えばSiO2/TiO2より形成される場合、SiO2の屈折率をη1、TiO2の屈折率をη2とすると、反射鏡の膜厚は、λ/4η1+λ/4η2、となる。また、反射鏡は、SiO2/TiO2のように1ペアとすることが好ましい。
図2の反射鏡及び不透光膜の形成方法は、スパッタ、蒸着などによって形成する。
【0023】
本発明において、窒化物半導体の層構成は特に限定されず、いずれの層構成及び形状を有していてもよい。またその他のレーザ素子を形成するための構成も限定されない。
以下に本発明に用いることのできる好ましい窒化物半導体素子の構成要素の一実施形態を記載する。
【0024】
図3は、本発明に用いることのできる好ましい窒化物半導体素子の構造をす模式的な断面図(レーザ光の共振方向に垂直な断面)であり、該窒化物半導体素子は、例えば、C面を主面とするサファイア等の基板1上に、n型窒化物半導体層領域(n側コンタクト層12、クラッド防止層13、n側クラッド層14及びn側光ガイド層15からなる。)とp型窒化物半導体領域(キャップ層17、p側光ガイド層18、p側クラッド層19及びp側コンタクト層20からなる。)とによって挟設された窒化物半導体からなる活性層16を備えた窒化物半導体レーザダイオード素子である。但し、図3には、不透光膜を図示していない。
【0025】
ここで、本実施形態の窒化物半導体素子は、n型窒化物半導体層領域におけるn側クラッド層14を超格子層で形成し、かつp型窒化物半導体領域におけるp側クラッド層19を超格子層で形成することにより、LD素子である窒化物半導体素子のしきい値電圧を低く設定している。
超格子層とは、組成の異なる極めて薄い層が積層されたものであって、各層の厚さが十分薄いために、格子不整に伴う欠陥が発生することなく積層された層のことをいい、量子井戸構造を含む広い概念である。また、この超格子層は、内部に欠陥は有しないが、通常、格子不整に伴う歪みを有するので超格子とも呼ばれる。
【0026】
この実施形態の窒化物半導体素子においては、まず、基板10上にバッファ層11と第2のバッファ層112を介してn側コンタクト層12が形成され、さらにn側コンタクト層12上に、クラック防止層13、n側クラッド層14及びn側光ガイド層15が積層されて、n型窒化物半導体層領域が形成される。なお、クラック防止層13の両側に露出されたn側コンタクト層12の表面にはそれぞれ、n側コンタクト層12とオーミック接触するn側電極23が形成され、該n側電極23上には、例えば、ワイヤーボンディング用のn側パッド電極が形成される。そして、n側光ガイド層15上に窒化物半導体からなる活性層16が形成され、さらに該活性層16上に、キャップ層17、p側光ガイド層18、p側クラッド層19及びp側コンタクト層20が積層されてp側窒化物半導体層領域が形成される。さらに、p側コンタクト層20上に該p側コンタクト層20とオーミック接触するp側電極21が形成され、該p側電極21上には、例えば、ワイヤーボンディング用のp側パッド電極が形成される。なお、p側コンタクト層20とp側クラッド層19の上部とによって、共振方向に長く伸びた峰状のリッジ部が構成された該リッジ部を形成することによって、活性層16において、光を幅方向(共振方向に直交する方向)に閉じ込め、リッジ部(ストライプ状の電極)に垂直な方向で劈開された劈開面を用いて、リッジ部の長手方向に共振する共振器を作製してレーザ発振させる。
【0027】
(基板10)
基板10にはC面を主面とするサファイアの他、R面、A面を主面とするサファイア、その他、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性の基板の他、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、GaN等の半導体基板を用いることができる。
【0028】
(バッファ層11)
バッファ層11は、例えばAlN、GaN、AlGaN、InGaN等が900℃以下の温度で成長させて、膜厚数十オングストローム〜数百オングストロームに形成される。このバッファ層11は、基板と窒化物半導体との格子定数不正を緩和するために形成されるが、窒化物半導体の成長方法、基板の種類等によってはバッファ層11を省略することも可能である。
【0029】
(第2のバッファ層112)
第2のバッファ層112は、前記バッファ層11の上に、前記バッファ層よりも高温で成長させた単結晶の窒化物半導体よりなる層であり、バッファ層11よりも厚膜を有する。この第2のバッファ層112は次に成長させるn側コンタクト層12よりもn型不純物濃度が少ない層とするか、若しくはn型不純物をドープしない窒化物半導体層、好ましくはGaN層とすると、第2のバッファ層112の結晶性が良くなる。最も好ましくはn型不純物をアンドープのGaNとすると最も結晶性が良い窒化物半導体が得られる。従来のように負電極を形成するn側コンタクト層を数μm以上の膜厚で、高キャリア濃度の単一の窒化物半導体層で構成しようとすると、n型不純物濃度の大きい層を成長させる必要がある。不純物濃度の大きい厚膜の層は結晶性が悪くなる傾向にある。このため結晶性の悪い層の上に、活性層等の他の窒化物半導体を成長させても、結晶欠陥を他の層が引き継ぐことになって結晶性の向上が望めない。そこで、n側コンタクト層12層を成長させる前に、不純物濃度が小さい、結晶性の良い第2のバッファ層112を成長させることにより、キャリア濃度が大きく結晶性の良いn側コンタクト層12を成長させることができる。この第2のバッファ層112の膜厚は、0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは1μm以上、20μm以下に調整することが望ましい。第2のバッファ層112が0.1μmよりも薄いと、不純物濃度の大きいn型コンタクト層12を厚く成長させなければならず、n側コンタクト層12の結晶性の向上があまり望めない傾向にある。また20μmよりも厚いと、第2のバッファ層112自体に結晶欠陥が多くなりやすい傾向にある。また第2のバッファ層112を厚く成長させる利点として、放熱性の向上が挙げられる。つまりレーザ素子を作製した場合に、第2のバッファ層112で熱が広がりやすくレーザ素子の寿命が向上する。さらにレーザ光の漏れ光が第2のバッファ層112内で広がって、楕円形に近いレーザ光が得やすくなる。なお、第2のバッファ層112は、基板にGaN、SiC、ZnO等の導電性基板を使用した場合には省略してもよい。
【0030】
(n側コンタクト層12)
n側コンタクト層12は負電極を形成するコンタクト層として作用する層であり、0.2μm以上、4μm以下に調整することが望ましい。0.2μmよりも薄いと、後で負電極を形成する際にこの層を露出させるようにエッチングレートを制御するのが難しく、一方、4μm以上にすると不純物の影響で結晶性が悪くなる傾向にある。このn側コンタクト層12の窒化物半導体にドープするn型不純物の範囲は1×1017/cm3〜1×1021/cm3の範囲、さらに好ましくは、1×1018/cm3〜1×1019/cm3に調整することが望ましい。1×1017/cm3よりも小さいとn電極の材料と好ましいオーミックが得られにくくなるので、レーザ素子ではしきい値電流、電圧の低下が望めず、1×1021/cm3よりも大きいと、素子自体のリーク電流が多くなったり、また結晶性も悪くなるため、素子の寿命が短くなる傾向にある。なおn側コンタクト層12においては、n電極23とのオーミック接触抵抗を小さくするために、該n側コンタクト層12のキャリア濃度を上げる不純物の濃度を、n側クラッド層14よりも大きくすることが望ましい。なお、n側コンタクト層12は基板にGaN、SiC、ZnO等の導電性基板を使用し基板裏面側に負電極を設ける場合にはコンタクト層としてではなくバッファ層として作用する。
【0031】
また、第2のバッファ層112、及びn側コンタクト層12の内の少なくとも一方の層を、超格子層とすることもできる。超格子層とすると、この層の結晶性が飛躍的に良くなり、しきい値電流が低下する。好ましくは第2のバッファ層112よりも膜厚が薄いn側コンタクト層12の方を超格子層とする。n側コンタクト層12を互いにバンドギャップエネルギーが異なる第1の層と第2の層とが積層されてなる超格子構造とした場合においては、好ましくはバンドギャップエネルギーの小さな層を露出させてn電極23を形成することにより、n電極23との接触抵抗が低くできしきい値を低下させることができる。なおn型窒化物半導体と好ましいオーミックが得られるn電極23の材料としてはAl、Ti、W、Si、Zn、Sn、In等の金属若しくは合金が挙げられる。
【0032】
また、n側コンタクト層12を不純物濃度が異なる超格子層とすることにより、横方向の抵抗値を低くでき、LD素子のしきい値電圧、電流を低くすることができる。
これは、バンドギャップエネルギーの大きな層の方に、多くn型不純物をドープした超格子層をn層側のコンタクト層として形成した場合について、以下のようなHEMT(High−Electoron−Mobility−Transistor)に類似した作用が出現した効果が推察される。n型不純物がドープされたバンドギャップの大きい第1の層(第2の層)と、バンドギャップが小さいアンドープ{(undope);以下、不純物がドープされてない状態をアンドープという}の第2の層(第1の層)とを積層した超格子層では、n型不純物を添加した層と、アンドープの層とのヘテロ接合界面で、バンドギャップエネルギーの大きな層側が空乏化し、バンドギャップエネルギーの小さな層側の厚さ(100オングストローム)前後の界面に電子(二次元電子ガス)が蓄積する。この二次元電子ガスがバンドギャップエネルギーの小さな層側にできるので、電子が走行するときに不純物による散乱を受けないため、超格子層の電子の移動度が高くなり、抵抗率が低下すると推察される。
【0033】
(クラック防止層13)
クラック防止層13は、例えば、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.1Ga0.9Nからなり、例えば、500オングストロームの膜厚を有する。このクラック防止層13はInを含むn型の窒化物半導体、好ましくはInGaNを成長させて形成することにより、その上に形成されるAlを含む窒化物半導体層中にクラックが入るのを防止することができる。なお、このクラック防止層13は100オングストローム以上、0.5μm以下の膜厚で成長させることが好ましい。100オングストロームよりも薄いと前記のようにクラック防止として作用しにくく、0.5μmよりも厚いと、結晶自体が黒変する傾向にある。なお、このクラック防止層13は、n型コンタクト層12を超格子とする場合、または次に成長させるn型クラッド層14を超格子層とする場合には省略してもよい。
【0034】
(n型超格子からなるn側クラッド層14)
n側クラッド層は、例えばSiを5×1018/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nからなり、20オングストロームの膜厚を有する第1の層、及びアンドープのGaNよりなり、20オングストロームの膜厚を有する第2の層とが交互に積層された超格子層よりなり、全体で例えば0.5μmの膜厚を有する。このn型クラッド層14はキャリア閉じ込め層、及び光閉じ込め層として作用し、超格子層とした場合にはいずれか一方の層をAlを含む窒化物半導体、好ましくはAlGaNを成長させることが望ましく、100オングストローム以上、2μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以上、1μm以下で成長させることにより良好なキャリア閉じ込め層が成長できる。このn型クラッド層14は単一の窒化物半導体で成長させることもできるが、超格子層とすることがクラックのない結晶性のよいキャリア閉じ込め層が形成できる。
【0035】
(n側光ガイド層15)
n側光ガイド層15は、アンドープGaNからなり、0.1μmの膜厚を有する。このn側光ガイド層6は、活性層の光ガイド層として作用し、GaN、InGaNを成長させて形成することが望ましく、通常100オングストローム〜5μm、さらに好ましくは200オングストローム〜1μmの膜厚で成長させることが望ましい。なお、この光ガイド層15も超格子層にすることができる。n側光ガイド層15、n側クラッド層14を超格子層にする場合、超格子層を構成する窒化物半導体層の平均的なバンドギャップエネルギーは活性層よりも大きくする。超格子層とする場合には、第1の層及び第2の層の少なくとも一方にn型不純物をドープしてもよいし、またアンドープでも良い。
【0036】
(活性層16)
活性層16は、例えば、Siを8×1018/cm3でドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなり、25オングストロームの膜厚を有する井戸層と、Siを8×1018/cm3ドープしたIn0.05Ga0.95Nよりなり、50オングストロームの膜厚を有する障壁層とを交互に積層することにより、所定の膜厚を有する多重量子井戸構造(MQW)で構成する。活性層16においては、井戸層、障壁層両方に不純物をドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。なおn型不純物をドープすると閾値が低下する傾向にある。また、このように活性層16を多重量子井戸構造とする場合には必ずバンドギャップエネルギーの小さい井戸層と、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さい障壁層とを積層するため、超格子層とは区別される。井戸層の厚さは、100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは、50オングストローム以下にする。障壁層の厚さは150オングストローム以下、好ましくは100オングストローム以下、最も好ましくは70オングストローム以下にする。
【0037】
(p側キャップ層17)
p側キャップ層17は、活性層16よりもバンドギャップエネルギーが大きい、例えば、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなり、例えば、200オングストロームの膜厚を有する。本実施形態では、このように、キャップ層17を用いることが好ましいが、このキャップ層は、薄い膜厚に形成されるので、本発明では、n型不純物をドープしてキャリアが補償されたi型としてもよい。p側キャップ層17の膜厚は0.1μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以下、最も好ましくは300オングストローム以下に調整する。0.1μmより厚い膜厚で成長させると、p側キャップ層17中にクラックが入りやすくなり、結晶性の良い窒化物半導体層が成長しにくいからである。また、p側キャップ層17の膜厚が、0.1μmより大きいと、キャリアがこのエネルギーバリアとなるp型キャップ層17をトンネル効果により通過できなくなるからであり、該トンネル効果によるキャリアの通過を考慮すると、上述のように500オングストローム以下、さらには300オングストローム以下に設定することが好ましい
【0038】
また、p側キャップ層17には、LD素子を発振しやすくするために、Alの組成比が大きいAlGaNを用いて形成することが好ましく、該AlGaNを薄く形成する程、LD素子は発振しやすくなる。例えば、Y値が0.2以上のAlYGa1-YNであれば500オングストローム以下に調整することが望ましい。p型キャップ層17の膜厚の下限は特に限定しないが、10オングストローム以上の膜厚で形成することが望ましい。
【0039】
(p側光ガイド層18)
p側光ガイド層18は、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層17よりも小さい、例えば、アンドープGaNよりなり、0.1μmの膜厚を有する。このp側光ガイド層18は、活性層16の光ガイド層として作用し、n側光ガイド層15と同じくGaN、InGaNで成長させて形成することが望ましい。また、この層はp型クラッド層19を成長させる際のバッファ層としても作用し、100オングストローム〜5μm、さらに好ましくは200オングストローム〜1μmの膜厚で成長させることにより、好ましい光ガイド層として作用する。このp側光ガイド層はMg等のp型不純物をドープしてp型の導電型としても良い。なお、このp側光ガイド層を超格子層とすることもできる。超格子層とする場合には第1の層及び第2の層の少なくとも一方にp型不純物をドープしてもよいし、またアンドープでも良い。
【0040】
(p側クラッド層19=超格子層)
p側クラッド層19は、例えば、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなり、例えば、20オングストロームの膜厚を有する第1の層と、例えばMgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなり、20オングストロームの膜厚を有する第2の層とが交互に積層された超格子層からなる。このp側クラッド層19は、n側クラッド層14と同じくキャリア閉じ込め層として作用し、特にp型層の抵抗率を低下させるための層として作用する。このp側クラッド層19の膜厚も特に限定しないが、100オングストローム以上、2μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以上、1μm以下で形成することが望ましい。
【0041】
(p側コンタクト層20)
p側コンタクト層20は、p側クラッド層19の上に、例えば、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなり、例えば、150オングストロームの膜厚を有する。このp側コンタクト層20はp型のInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくは、上述のようにMgをドープしたGaNとすれば、p電極21と最も好ましいオーミック接触が得られる。さらにp側コンタクト層の膜厚を500オングストローム以下、さらに好ましくは300オングストローム以下、最も好ましくは200オングストローム以下に調整することが望ましい。なぜなら、上述したように抵抗率が数Ω・cm以上もあるp型窒化物半導体層の膜厚を500オングストローム以下に調整することにより、さらに抵抗率を低下させることができるため、しきい値での電流、電圧が低下する。またp型層から除去される水素の量を多くすることができ、さらに抵抗率を低下させることができる。
【0042】
なお、本発明では、p側コンタクト層20も超格子層とすることもできる。超格子層とする場合には、特にバンドギャップエネルギーが異なる第1の層と第2の層とを積層し、第1+第2+第1+第2+・・・というように積層していき、最後にバンドギャップエネルギーが小さい方の層が露出するようにすると、p電極21と好ましいオーミック接触が得られる。p電極21の材料としては、例えばNi、Pd、Ni/Au等を挙げることができる。
【0043】
次に、図3に示すようにp電極21と、n電極23との間に露出した窒化物半導体層の表面にSiO2よりなる絶縁膜25が形成され、この絶縁膜25に形成された開口部を介してp電極21と電気的に接続されたpパッド電極22、及びn電極23と接続されたnパッド電極24が形成される。このpパッド電極22は実質的なp電極21の表面積を広げて、p電極側をワイヤーボンディング、ダイボンディングできるようにし、一方nパッド電極24はn電極23の剥がれを防止する。
【0044】
以上の窒化物半導体素子は、第1の層、及び第2の層を弾性歪み限界以下の膜厚にして積層された超格子層である、結晶性のよいp型クラッド層19を備えている。これによって、本実施形態の窒化物半導体素子は、p側クラッド層19の抵抗値を、超格子構造を有しないp側クラッド層に比較して1桁以上低くすることができるので、しきい値電圧、電流を低くすることができる。
【0045】
また、本実施形態の窒化物半導体素子ではp型AlYGa1-YNを含むp側クラッド層19に接して、バンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体をp側コンタクト層20として、その膜厚を500オングストローム以下と薄く形成することにより、実質的にp側コンタクト層20のキャリア濃度が高くなりp電極と好ましいオーミックが得られて、素子のしきい値電流、電圧を低くすることができる。さらに、n側コンタクト層を成長させる前に、第2のバッファ層112を備えているので、第2のバッファ層112の上に成長させる窒化物半導体層の結晶性が良くなり、長寿命の素子を実現できる。好ましくは、第2のバッファ層112の上に成長させるn側コンタクト層を超格子とすると、横方向の抵抗値が低くなり、しきい値電圧・しきい値電流の低い素子が実現できる。
【0046】
なお、本実施形態のLD素子ではInGaNのような、少なくともインジウムを含む窒化物半導体を活性層16に備える場合には、InXGa1-XNと、AlYGa1-YNとが交互に積層された超格子層を、活性層16を挟設する層(n側クラッド層14及びp側クラッド層19)として用いることが好ましい。これによって、活性層16と該超格子層とのバンドギャップエネルギー差、屈折率差を大きくできるため、該超格子層をレーザ素子を実現する際に非常に優れた光閉じ込め層として動作させることができる。さらにInGaNは結晶の性質が他のAlGaNのようなAlを含む窒化物半導体に比べて柔らかいので、InGaNを活性層とすると、積層した各窒化物層全体にクラックが入りにくくなる。これによって、LD素子の寿命を長くすることができる。
【0047】
本実施形態のように量子井戸構造を有する活性層16を有するダブルヘテロ構造の半導体素子の場合、その活性層16に接して、活性層16よりもバンドギャップエネルギーが大きい膜厚0.1μm以下の窒化物半導体よりなるp側キャップ層17、好ましくはAlを含む窒化物半導体よりなるp側キャップ層17を設け、そのp側キャップ層17よりも活性層から離れた位置に、p側キャップ層17よりもバンドギャップエネルギーが小さいp側光ガイド層18を設け、そのp側光ガイド層18よりも活性層から離れた位置に、p側光ガイド層18よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体、好ましくはAlを含む窒化物半導体を含む超格子構造を有するp側クラッド層19を設けることは非常に好ましい。しかもp側キャップ層17のバンドギャップエネルギーを大きくしてあるため、n層から注入された電子が、このp側キャップ層17で阻止されて閉じ込められ、電子が活性層をオーバーフローしないために、素子のリーク電流が少なくなる。
【0048】
以上の本実施形態の窒化物半導体素子では、レーザ素子の構造として好ましい構造を示したが、本実施形態ではn型の超格子層は活性層16から下のn型窒化物半導体層領域(n型層側)に少なくとも1層有していれば良く、またp型の超格子層も活性層16から上のp型窒化物半導体層領域(p型層側)に少なくとも1層有していれば良く、素子構成は特に規定するものではない。但し、前記超格子層はp層側に形成する場合はキャリア閉じ込め層としてのp側クラッド層19に形成し、n層側に形成する場合はn電極23が接した電流注入層としてのnコンタクト層12、またはキャリア閉じ込めとしてのn側クラッド層14として形成することが素子のVf、しきい値を低下させる上で最も好ましい傾向にある。
【0049】
以上のように構成された実施形態2の窒化物半導体素子では、各層が形成された後、水素を含まない雰囲気、例えば、窒素雰囲気中で、400℃以上、例えば700℃でアニーリングを行うことが好ましく、これによって、p型窒化物半導体層領域の各層をさらに低抵抗化することができるので、これによって、さらにしきい値電圧を低くすることができる。
【0050】
また、実施形態の窒化物半導体素子では、p側コンタクト層12の表面にNiとAuよりなるp電極21がストライプ状に形成され、このp電極21に対して左右対称にn側コンタクト層を露出させて、そのn側コンタクト層表面のほぼ全面にn電極23を設けている。このように、絶縁性基板を用いた場合p電極21の両側に左右対称にn電極23を設ける構造は、しきい値電圧を低くする上で非常に有利である。
【0051】
なお、本実施形態では、リッジ部(ストライプ状の電極)に垂直な方向で劈開した劈開面(共振器面)にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成してもよい。
【0052】
このように、本実施形態において、超格子層は、活性層を挟設するn型領域又はp型領域に形成されるキャリア閉じ込め層としてのクラッド層、活性層の光ガイド層、若しくは電極が接して形成される電流注入層として用いられるため、超格子層を構成する窒化物半導体の平均バンドギャップエネルギーが活性層よりも大きくなるように調整することが望ましい。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
本発明に係る実施例1は図3に示す窒化物半導体素子(LD素子)の作成例であり、以下の手順で作製される。
まず、サファイア(C面)よりなる基板10を反応容器内にセットし、容器内を水素で十分置換した後、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。
続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニア(NH3)とTMG(トリメチルガリウム)とを用い、基板10上にGaNよりなるバッファ層11を約200オングストロームの膜厚で成長させる。
【0054】
バッファ層11成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにTMG、アンモニアガスを用い、キャリア濃度1×1018/cm3アンドープGaNよりなる第2のバッファ層112を5μmの膜厚で成長させる。第2のバッファ層112はInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成でき、その組成は特に問うものではないが、好ましくはアンドープでAl(Y値)が0.1以下のAlYGa1-YN、最も好ましくはアンドープのGaNとする。
続いて、1050℃でTMG、アンモニア、不純物ガスにシランガス(SiH4)を用い、Siを1×1019/cm3ドープしたn型GaNよりなるn側コンタクト層12を1μmの膜厚で成長させる。このn側コンタクト層12は超格子で形成するとさらに好ましい。
【0055】
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニア、不純物ガスにシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層13を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0056】
そして、温度を1050℃にして、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層を20オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMA、シランを止め、アンドープGaNよりなる第2の層を20オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ100回繰り返し、総膜厚0.4μmの超格子層よりなるn側クラッド層14を成長させる。
【0057】
続いて、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層15を0.1μmの膜厚で成長させる。
次に、TMG、TMI、アンモニア、シランガスを用いて活性層16を成長させる。活性層16は温度を800℃に保持して、まずSiを8×1018/cm3でドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を25オングストロームの膜厚で成長させる。次にTMIのモル比を変化させるのみで同一温度で、Siを8×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を2回繰り返し、最後に井戸層を積層した総膜厚175オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層16を成長させる。
【0058】
次に、温度を1050℃に上げ、原料ガスにTMG、TMA、アンモニア、不純物ガスにCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、活性層よりもバンドギャップエネルギーが大きく、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層17を300オングストロームの膜厚で成長させる。
続いて、1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層17よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層18を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0059】
続いて、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mgを用い、1050℃でMgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層を20オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAのみを止め、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなる第2の層を20オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこの操作をそれぞれ100回繰り返し、総膜厚0.4μmの超格子層よりなるp側クラッド層19を形成する。
最後に、1050℃で、p側クラッド層19の上に、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層20を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0060】
反応終了後、温度を室温まで下げ、さらに窒素雰囲気中、ウェーハを反応容器内において、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。
アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図3に示すように、RIE装置により最上層のp側コンタクト層20と、p側クラッド層19とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。
【0061】
次にリッジ表面にマスクを形成し、図3に示すように、ストライプ状のリッジに対して左右対称にして、n側コンタクト層12の表面を露出させる。
【0062】
次にp側コンタクト層20のストライプリッジ最表面のほぼ全面にNiとAuよりなるp電極21を形成する。一方、TiとAlよりなるn電極23をストライプ状のn側コンタクト層12のほぼ全面に形成する。
【0063】
次に、図3に示すようにp電極21と、n電極23との間に露出した窒化物半導体層の表面にSiO2よりなる絶縁膜25を形成し、この絶縁膜25を介してp電極21と電気的に接続したpパッド電極22、及びnパッド電極24を形成する。
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハを研磨装置に移送し、ダイヤモンド研磨剤を用いて、窒化物半導体を形成していない側のサファイア基板1をラッピングし、基板の厚さを50μmとする。ラッピング後、さらに細かい研磨剤で1μmポリシングして基板表面を鏡面状とする。
【0064】
基板研磨後、研磨面側をスクライブして、ストライプ状の電極に垂直な方向でバー状に劈開し、劈開面に共振面を作製する。図2のように共振面等にSiO2(屈折率は1.45)とTiO2(屈折率は2.58)よりなる誘電体多層膜(反射鏡)を膜厚0.109μmで形成し、更にp側層多端面及び活性層端面にレジストでマスクをして図2のようにn側層端面(光ガイド層を除く)及び基板端面にスパッタリングにてCrよりなる不透光膜を膜厚500・で形成し、その後レジスト膜を除去し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとした。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、波長400nm、しきい値電流密度2.9kA/cm2、しきい値電圧4.4Vで、ファーフィールドパターンはレーザ光のスポットが1つであり、単一モードで集光性が良好であった。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、第2のバッファ層112を成長させず、さらにn側コンタクト層12をSiを1×1019/cm3ドープしたn型GaN単一で2μm成長させ、n側クラッド層14をSiを1×1019/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8N単一で0.4μm成長させ、p側クラッド層19をMgを1×1020/m3ドープしたp型Al0.2Ga0.8N単一で0.4μm成長させ、さらにp側コンタクト層20をMgを2×1020/cm3ドープした単一のp型GaNを300オングストローム成長させる他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得た。実施例1と同様にレーザ発振させたところ、室温において、波長400nm、しきい値電流密度3.2kA/cm2、しきい値電圧4.6Vで、ファーフィールドパターンはレーザ光のスッポトが1つであり、単一モードで集光性が良好であった。
【0066】
[実施例3]
実施例1において、不透光膜をNiからなる膜厚350・の膜とする他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得た。実施例1と同様にレーザ発振させたところ、同様に良好なファーフィールドパターンが得られた。
【0067】
[実施例4]
実施例1において、不透光膜をAlからなる膜厚1000・の膜とする他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得た。実施例1と同様にレーザ発振させたところ、同様に良好なファーフィールドパターンが得られた。
【0068】
[実施例5]
実施例1において、不透光膜の膜厚を700・とする他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得た。実施例1と同様にレーザ発振させたところ、同様に良好なファーフィールドパターンが得られた。
【0069】
[比較例1]
実施例1において、共振面のn側層及び基板の各端面に不透光膜を形成しない他は同様にして行った。その結果、ファーフィールドパターンは主ビームのスッポトの下に複数のその他の小さいにスッポトが見られ、活性層端面以外から不要な光が放射されていることが確認された。また主ビームの上にもかすかな小さいスッポトが見られたが実用するには差し支えない程度であった。
【0070】
【発明の効果】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、レーザ光のファーフィールドパターン形状が良好で、単一モードのレーザ光が得られる窒化物半導体レーザ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の共振面に不透光膜が形成されていない窒化物半導体の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態である共振面に不透光膜が形成されている窒化物半導体の模式的断面図である。
【図3】本発明に係るの一実施形態である共振面に対し垂直に切断した窒化物半導体素子の模式的断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基板
2・・・・n側GaN層
3・・・・n側クラッド層
4・・・・活性層
5・・・・p側クラッド層
6・・・・p側コンタクト層
101・・・・共振面
102・・・・n側層端面
103・・・・p側層端面
104、113・・・・活性層端面
201・・・・n側層
202・・・・p側層
203・・・・反射鏡
204、205・・・・不透光膜
10・・・・基板
11・・・・バッファ層
112・・・・第2のバッファ層
12・・・・n側コンタクト層
13・・・・クラック防止層
14・・・・n側クラッド層(超格子層)
15・・・・n側光ガイド層
16・・・・活性層
17・・・・キャップ層
18・・・・p側光ガイド層
19・・・・p側クラッド層(超格子層)
20・・・・p側コンタクト層
21・・・・p電極
22・・・・pパッド電極
23・・・・n電極
24・・・・nパッド電極
25・・・・絶縁膜

Claims (2)

  1. 互いに対向する活性層端面を共振面とする窒化物半導体レーザ素子において、少なくとも一方の共振面の活性層端面以外の端面に不透光膜が形成されてなることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記共振面の活性層端面以外の端面がn側層端面であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
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