JP3879224B2 - 雨水等の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨水、池水又は下水(以下、これらを雨水等ということがある。)をスパイラル型膜モジュールによって処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
雨水、池水又は下水をポリプロピレン濾過膜によって濾過することは特開平9−234496号公報に記載されている。また、特開平9−99203号公報には通水孔を有するプラスチックシートによって、沈殿池に流れ込んだ雨水や家庭、工場等の排水を濾過することが記載されている。
【0003】
これらの公開公報には、濾過膜や通水孔を有するプラスチックシートの具体的な構成についての記載はない。
【0004】
ところで、本発明は雨水、池水又は下水を改良されたスパイラル型膜モジュールによって処理するものであるが、従来のスパイラル型膜モジュールの構成について次に図面を参照して説明する。
【0005】
図5は従来のスパイラル型膜モジュールの構造を示す一部分解斜視図であり、集水管1の外周に複数の袋状の分離膜2がメッシュスペーサ3を介して巻回されている。
【0006】
集水管1には管内外を連通するスリット状開口が穿設されている。分離膜2は袋状のものであり、その中央部が集水管1をくるんでいる。この袋状分離膜2の内部にはメッシュスペーサ等よりなる流路材4が挿入されており、この袋状分離膜(袋状膜)2の内部が透過水流路となっている。
【0007】
袋状膜2の巻回体5の両端にトップリング6とエンドリング7とが設けられ、その外周にブラインシール8が周設されている。
【0008】
原水は、巻回体5の前端面から袋状膜2同士の間の原水流路に流入し、そのまま巻回体5の長手方向に流れ、巻回体5の後端面から濃縮水として流出する。この原水流路を流れる間に水が袋状膜2を透過してその内部に入り、集水管1内に流入し、該集水管1の後端側からモジュール外に取り出される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図5の従来のスパイラル型膜モジュールには、次のような解決すべき課題があった。
【0010】
▲1▼ 集水管1内の透過水流量を多くするためには該集水管1を大径化する必要があるが、そのようにするとスパイラル型膜モジュールの径も大きくなってしまう。
▲2▼ 袋状膜2内に透過してきた透過水は、該袋状膜2内をスパイラル状に回りながら集水管1まで流れるため、袋状膜2内の流通抵抗が大きい。しかも、袋状膜2内から集水管1に流れ込む集水管スリット部付近での流通抵抗も大きい。
▲3▼ 原水流路を流れる原水流量は、下流側になるほど減少する。(原水が濃縮される分だけ原水流量が減る。)このため、原水流路下流域では原水流速が小さくなり、汚れが付着し易くなる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、集水管が不要であり、透過水流通抵抗が小さいスパイラル型膜モジュールにより雨水等を効率良く処理することができる雨水等の処理方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の雨水等の処理方法は、雨水、池水又は下水をスパイラル型膜モジュールによって処理する方法であって、該スパイラル型膜モジュールは、膜をシャフトに巻回して巻回体とし、該巻回体の一端面から原水が供給され、透過水が巻回体の他端面から取り出されることを特徴とするものである。なお、この膜は限外濾過膜又は精密濾過膜が好ましい。
【0013】
本発明で採用するスパイラル型膜モジュールは、袋状膜の内部に透過水流路材が配置され、袋状膜同士の間には原水流路材が配置されているスパイラル型膜モジュールであって、該袋状膜は第1、第2、第3及び第4の辺部を有した略方形であり、該第1、第2及び第3の辺部は封じられ、該第4の辺部は一部が開放部となり残部が閉鎖部となっており、前記第4の辺部と直交する第1の辺部をシャフトに当てて袋状膜を巻回して巻回体とし、前記第4の辺部を該巻回体の後端面に臨ませ、該第4の辺部に対向する第2の辺部を該巻回体の前端面に臨ませ、該袋状膜同士の間の原水流路は、該第3の辺部の全体が封じられると共に、第4の辺部にあっては前記袋状膜の開放部と重なる箇所が閉鎖部となっており、且つ前記袋状膜の閉鎖部と重なる箇所が開放部となっている。
【0014】
かかるスパイラル型膜モジュールにおいては、巻回体の前端面から原水が原水流路に流入する。この原水は、原水流路を巻回体軸心線と略平行方向に流れ、次いで巻回体後端面の原水流路開放部から濃縮水として流出する。
【0015】
袋状膜を透過した水は、袋状膜内を巻回体軸心線と略平行方向に流れ、巻回体の後端面の袋状膜開放部から流出する。
【0016】
このように、透過水が袋状膜内を巻回体の軸心線と平行方向に流れるため、従来のスパイラル型膜モジュールに用いられていた集水管が不要となる。そして、袋状膜内から該集水管内に流れ込む際の流通抵抗が無くなり、透過水流通抵抗が小さくなる。
【0017】
なお、集水管を無くしているため、その分だけ袋状膜の巻回方向の長さを大きくとることができ、膜面積を拡張できる。そして、このように袋状膜の巻回方向長さを大きくしても透過水の流通抵抗は増大せず、透過水量を多くすることができる。
【0018】
また、巻回体の後端面の一部においてのみ原水流路を開放させるようにしているため、原水流路の下流側での原水(濃縮水)流速を従来よりも高めることができ、原水流路下流域における汚れの付着を防止できる。
【0019】
本発明では、膜としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂膜が好適である。このフッ素樹脂膜は耐薬品性が高く、原水が著しい酸性やアルカリ性を呈していたり、塩素オゾン、その他の薬品が原水に含まれていても十分に長期にわたって処理できると共に、撥水性であり、汚れが付きにくい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態に用いられるスパイラル型膜モジュールについて説明する。図1(a)はこのスパイラル型膜モジュールの袋状膜及び該袋状膜が巻き付けられるシャフトの斜視図である。図1(b),(c)はそれぞれ図1(a)のB−B線、C−C線に沿う断面図である。図2はシャフトの周りに袋状膜を巻き付ける方法を示す断面図、図3は巻回体とソケットとの係合関係を示す斜視図、図4はスパイラル型膜モジュールの側面図である。
【0021】
図1に示すように、この袋状膜10は、正方形又は長方形状のものであり、第1の辺部11、第2の辺部12、第3の辺部13及び第4の辺部14を有している。第1の辺部11、第2の辺部12及び第3の辺部13において分離膜フィルム同士が接着剤等によって接着され、第4の辺部14については一部だけを接着している。なお、袋状膜10としては、長い一枚のフィルムを第2の辺部12部分で二つに折り返し、第1の辺部11、第3の辺部13及び第4の辺部14の一部を接着するようにしたものであっても良い。
【0022】
第4の辺部14の途中から第3の辺部13にかけて袋状膜10の分離膜フィルム同士が接着されておらず、透過水流出用の開放部30となっている。また、この第4の辺部14の該途中から第1の辺部11にかけては、袋状膜10の分離膜フィルム同士が接着されており、透過水の流出を阻止する閉鎖部31となっている。
【0023】
この袋状膜10内に透過水流路材(例えばメッシュスペーサ等よりなる。)15が挿入配置されている。
【0024】
この袋状膜10の一方の面には、接着剤16が付着されると共に他方の面には接着剤17,18が付着され、この袋状膜10がシャフト20の周りに巻き付けられる。接着剤16は第1の辺部11に沿って付着され、接着剤17は第3の辺部13に沿って付着されている。接着剤18は第4の辺部14の長手方向の前記途中箇所から第3の辺部13にかけて、透過水流出用の開放部30に沿って付着されている。
【0025】
複数枚の袋状膜10をシャフト20の周囲に巻き付けることにより、重なり合った袋状膜10同士は接着剤17,18の部分において水密的に接合される。これにより、袋状膜10同士の間には原水(及び濃縮水)が流れる原水流路が構成される。接着剤18が硬化することにより、巻回体の後端面には、内周側に原水(濃縮水)の流出用の開放部が形成され、外周側に原水流出阻止用の閉鎖部が形成される。
【0026】
第4の辺部14のうち透過水流出用の開放部30と透過水流出阻止用の閉鎖部31との境界部分から、巻回体の後方に向ってフィン19が延設されている。このフィン19は、例えば合成樹脂フィルム又はシートよりなり、袋状膜10に対し接着等により接合されるのが好ましい。
【0027】
袋状膜10をシャフト20の周りに図2の如く原水流路材(メッシュスペーサ)29を介して巻き付けることにより、図3に示すように巻回体24が形成される。この巻回体24の後端面からは、フィン19が延出する。各袋状膜10の第4の辺部14において同一箇所にフィン19を設けておくことにより、フィン19は巻回体24の軸心から等半径位上に位置し、フィン19が重なり合うことによりフィン19がリング状の突出部を形成することになる。このリング状の突出部内に円筒状のソケット25の後端を挿入し、該ソケット25とフィン19を接着剤等により接合する。なお、ソケット25をフィン19に外嵌めしても良い。また、フィン19に沿って巻回体24の後端面に旋盤で切込み溝を付け、該溝にソケット25の端部を埋め込むようにしても良い。
【0028】
このようにソケット25とフィン19とを接合することにより、巻回体24の後端面の外周側の透過水流出領域とソケット25の内周側の濃縮水流出領域とが区画される。
【0029】
なお、袋状膜10をシャフト20の周りに巻き付けるに際しては、図2に示すように、袋状膜10同士の間に原水流路材(メッシュスペーサ)29を介在させておく。これらのメッシュスペーサ29を介在させることにより、原水流路が構成される。
【0030】
図4に示すように、巻回体24の前縁及び後縁にそれぞれトップリング26及びエンドリング27を合成樹脂モールド等により形成し、トップリング26の外周にブラインシール28を周設する。
【0031】
本発明の雨水等の処理方法は、このように構成されたスパイラル型膜モジュールによって雨水等を処理するものである。この雨水等は、図4に示すように、巻回体24の前端面から原水として袋状膜10同士の間の原水流路に流入する。この原水は、巻回体24の軸心線と略平行方向に原水流路を流れ、巻回体24の後端のソケット25の内側の端面から取り出される。そして、このように原水が原水流路を流れる間に、水が袋状膜10内に透過し、透過水は巻回体24の後端面のうちソケット25の外周側から流出する。
【0032】
このスパイラル型膜モジュールにあっては、透過水が袋状膜10内を巻回体24の軸心線と平行方向に流れて後端面から取り出されるため、従来のスパイラル型膜モジュールに用いられていた集水管が不要である。このため、袋状膜から集水管内に流れ込む際の流通抵抗が無くなり、透過水流通抵抗が著しく小さくなる。
【0033】
なお、集水管を省略しており、その分だけ袋状膜10の巻回方向の長さを大きくとることができ、膜面積を大きくとることが可能である。袋状膜の巻回方向の長さを大きくしても、透過水流通抵抗は増大せず、透過水量を多くすることができる。
【0034】
このスパイラル型膜モジュールにあっては、原水流路の出口部分をソケット25の内側だけに設けており、原水流路の出口(最下流部)を絞った構成としているため、原水流路の下流側においても原水(濃縮水)の流速が十分に大きなものとなり、原水流路下流域における汚れの付着を防止することができる。なお、ソケット25の内側の面積と外側の面積(接着剤18の辺部14方向の長さ)は、このスパイラル型膜モジュールの水回収率に応じて決めるのが好ましい。
【0035】
上記実施の形態においては、ソケット25の外周側に透過水流出部を配置し、ソケット25の内側に濃縮水流出部を配置しているが、逆にソケット25の内側を透過水流出部とし、ソケット25の外周側を濃縮水流出部とするように構成しても良い。
【0036】
このスパイラル型膜モジュールの逆洗を行うときには、スパイラル型膜モジュールの袋状膜10内の透過水流路に気体圧をかけ、袋状膜10内の残存透過水やさらには気体を原水流路に逆流させるのが好ましい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0038】
[実施例1]
膜としてPTFE製精密濾過膜を用いた図1〜4に示す構成のスパイラル型膜モジュールを用いてSS 1.5ppmの雨水を処理した。
【0039】
この膜モジュールの膜面積は0.87m2であり、直径は10cm、長さは40cmである。
【0040】
原水を22m3/m2/dayにて通水したところ、透過水流束は20m3/m2/dayであった。透過水はSS 1ppm以下であった。
【0041】
[比較例1]
図5に示す構成のスパイラル型膜モジュール(膜面積は実施例1と同じ。直径10cm、長さ100cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして同じ雨水を処理したところ、透過水流束は3m3/m2/dayと実施例1に比べかなり低いものであった。透過水はCOD 0.5ppm以下、SS 1ppm以下であった。
【0042】
[実施例2、比較例2]
原水をCOD 2ppm、SS 1ppmの池水としたほかは実施例1,比較例1と同様にして処理したところ、実施例2では透過水流束10m3/m2day、透過水のCOD 0.5ppm以下、SS 1ppm以下であった。比較例2では透過水流束1m3/m2day、透過水のCOD 0.5ppm以下、SS 1ppm以下であった。
【0043】
[実施例3、比較例3]
原水をCOD 3ppm、SS 2ppmの下水としたほかは実施例1,比較例1と同様にして処理したところ、実施例3では透過水流束7m3/m2day、透過水のCOD 0.5ppm以下、SS 1ppm以下であった。比較例3では透過水流束1m3/m2day、透過水のCOD 0.5ppm以下、SS 1ppm以下であった。
【0044】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の雨水、池水又は下水の処理方法は、雨水、池水又は下水をきわめて効率良く膜分離処理することができ、砂や粘土等を十分に分離することができる。また膜として、フッ素樹脂膜等の耐薬品性に優れたものを用いた場合には、低pH、高pHの原水や、酸化剤、各種薬品を含む原水をも長期にわたって処理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)図は実施の形態に係る雨水等の処理方法に用いられるスパイラル型膜モジュールの袋状膜の斜視図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図、(c)図は(a)図のC−C線に沿う断面図である。
【図2】図1のスパイラル型膜モジュールの袋状膜の巻き付け方法を示す断面図である。
【図3】図1の膜モジュールの巻回体とソケットとの係合関係を示す斜視図である。
【図4】図1のスパイラル型膜モジュールの側面図である。
【図5】従来のスパイラル型膜モジュールの構造を示す一部分解斜視図である。
【符号の説明】
10 袋状膜
11 第1の辺部
12 第2の辺部
13 第3の辺部
14 第4の辺部
15 流路材
16,17,18 接着剤
19 フィン
20 シャフト
24 巻回体
25 ソケット
29 メッシュスペーサ
30 透過水流出用の開放部
31 透過水流出阻止用の閉鎖部
Claims (2)
- 雨水、池水又は下水をスパイラル型膜モジュールによって処理する方法において、
該スパイラル型膜モジュールは、膜をシャフトに巻回して巻回体とし、該巻回体の一端面から原水が供給され、透過水が巻回体の他端面から取り出されるものであり、
前記膜は内部に透過水流路材が配置された袋状膜であり、該袋状膜は第1、第2、第3及び第4の辺部を有した略方形であり、該第1、第2及び第3の辺部は封じられ、該第4の辺部は一部が開放部となり残部が閉鎖部となっており、前記スパイラル型膜モジュールは、前記第4の辺部と直交する第1の辺部をシャフトに当てて袋状膜を巻回して巻回体とし、前記第4の辺部を該巻回体の後端面に臨ませ、該第4の辺部に対向する第2の辺部を該巻回体の前端面に臨ませ、該袋状膜同士の間の原水流路は、該第3の辺部の全体が封じられると共に、第4の辺部にあっては前記袋状膜の開放部と重なる箇所が閉鎖部となっており、且つ前記袋状膜の閉鎖部と重なる箇所が開放部となっているスパイラル型膜モジュールであることを特徴とする雨水等の処理方法。 - 請求項1において、前記膜はフッ素樹脂膜であることを特徴とする雨水等の処理方法。
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