JP3877542B2 - 金属製品への金属被覆方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属製品への金属被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に鉄線その他の金属線は、耐食性を高めるために、その表面にめっき処理を施して、あるいはさらに液体塗料又は粉体塗料による塗装を施して種々の用途に供されている。例えば、特公平6−49173号公報には、鋼線に亜鉛めっき処理を施した後、そのめっき表面が冷却する前(表面温度が350〜400℃の時)に飽和ポリエステル粉末と接触させることにより、めっき処理時の余熱で当該飽和ポリエステル粉末を亜鉛めっき面に焼き付けて樹脂被覆層を形成し、しかる後、速やかに冷却する方法が記載されている。また、同公報には、そのような方法が鋼線以外の他の金属製品にも適用し得ること、並びに金属製品に亜鉛めっき処理を施した場合、金属製品とめっき層との境界にもろい金属層(合金層)が形成されることが記載されている。
【0003】
また、金属線の表面に化成処理を施してりん酸塩皮膜を形成することにより、塗膜その他の樹脂被覆層の密着性を高めること、さらには金属線の表面に機械的又は化学的に梨地処理を施して樹脂被覆層の密着性を高めることも一般に行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鉄線、鋼線等の金属線に亜鉛めっき処理を施すとその耐食性が向上するのは、それが腐食性雰囲気に置かれたときに、電気的に卑な金属である亜鉛が陽極となって溶け、鉄に電子を与えてこれを保護するためである。従って、めっき層が厚いほど耐食性は高くなる。溶融めっき処理によって厚いめっき層を形成するには金属線の送り速度(以下、線速という。)を高くすればよい。
【0005】
しかし、線速を高めると、溶融めっき浴からその上方のターンローラに至るまでに金属線のめっき層を充分に冷却硬化させることができず、ターンローラを捲回するときにめっき層に傷が付くという問題があり、線速を高めることはめっき設備の点から難しい。また、線速を高めることができたとしても、線速が高くなるほど金属線に対するめっき用金属の付着量が不安定になり、すなわち、金属付着量が不均一になり、得られるめっき線の外観が悪くなる。
【0006】
一方、金属線のめっき層の上にさらに塗膜その他の樹脂被覆層を形成すると、耐食性が高まるだけでなく、所望の色にすることが可能になるが、めっき層と樹脂被覆層とは強固に密着させる必要がある。また、樹脂被覆線はその表面が平滑であるのが通常であり、高い摩擦係数が要求される用途には向かず、また、異物によって樹脂被覆層が傷付きやすいのが通常である。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、金属線等の金属製品の表面に大きな摩擦抵抗が得られる金属被覆層を形成できるようにすることにある。
【0008】
本発明の別の課題は、耐食性が高く且つ加工性が良好な金属被覆線を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような課題に対して、金属線その他の金属製品の表面に金属被覆層を形成するにあたり、溶融めっきと金属粉末の吹付けとを併用すれば、その解決を図ることができることを見出し、以下の各発明を完成したものである。
【0010】
請求項1に係る発明は、金属製品の表面に溶融めっき処理を施すことによってめっき層を形成する工程と、
上記めっき層が硬化する前に該めっき層に多数の金属粒子を吹き付けて付着させ、該金属粒子によって表面に微小凹凸を形成する工程とを備えていることを特徴とする金属製品の金属被覆方法である。
【0011】
上記「めっき層が硬化する前」とは、めっき層が実質的に溶融した状態にあること又は半溶融状態にあるこを意味する。この点は次の請求項5に係る発明も同じである。
【0012】
従って、この発明によれば、金属粒子は溶融状態又は半溶融状態にあるめっき層にめり込んで付着することになり、当該付着のために新たにめっき層や金属粒子を加熱溶融させたり、接着剤を用いたりすることなく、表面に微小凹凸を有する層厚な金属被覆層を形成することができる。特に、金属粒子はめっき層に溶着することになるから、高い結合力が得られる。めっき層と金属粒子とが異なる金属材料によるものであれば、両者の合金層が形成されることになる。金属粒子としては常温のものであってもよいが、これを予熱すると、めっき層との間で合金化し易くなる。
【0013】
金属製品としては、金属線に限らず、金属板等の押出し成形品、鋳物、プレス成形品等であってもよい。
【0014】
この発明によれば、溶融めっきによるめっき層に多数の金属粒子を付着させているから、めっき層だけで金属被覆層を形成する場合に比べて、金属粒子が加わる分、金属被覆層を厚くすること、換言すれば金属被覆層のボリュームを大きくすることが容易になる。本発明において特に重要な点は、層厚な金属被覆層を形成するために、めっき層自体を厚くする必要がないということである。従って、金属製品が金属線である場合において、溶融めっき処理において線速を過度に高める必要がなく、それにも拘わらず、金属線全体にわたって均質で且つ層厚な金属被覆層を形成することができる。
【0015】
そうして、上述の如く層厚な金属被覆層を形成することができるから、この金属被覆層を金属線よりも卑な金属で構成すれば、高い耐食性が得られることになる。また、本発明によって得られる金属被覆線は金属粒子によって表面に多数の微小凹凸が形成されているから、物と接触したときの摩擦係数が大きくなり、大きな摩擦抵抗が得られる、つまり、滑り止め効果が得られる。また、表面の金属粒子が金属線を異物との接触から保護し、該異物との接触による摩耗・損傷を防ぐことになる。
【0016】
また、めっき層を溶融めっきで形成するから、比較的厚いめっき層を形成する上で有利になる。また、めっき層が硬化する前に金属粒子を吹き付けることにより、該めっき層に金属粒子を簡単に付着させることができる。
【0017】
また、上記金属粒子の粒径及びめっき層に対する付着量ないしは付着密度をコントロールすることにより、めっき層の厚さを大きく変更することなく、金属被覆層全体の厚さないしはボリュームを簡単に変えることができ、また、表面粗度ないしは摩擦係数を簡単に変えることができる。
【0018】
本発明は、軟鋼線や硬鋼線のような比較的腐食し易い金属線に適用した場合にその耐食性を高めることができるという格別な効果が得られるが、金属線の種類を特に限定する必要はなく、アルミニウム、銅、その他の金属線を採用することもできる。
【0019】
溶融めっき用の金属としては、金属単体であっても、合金であってもよく、例えば亜鉛、アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金等がある。
【0020】
金属粒子に関しても、金属単体、合金のいずれでもよく、例えば亜鉛、アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金等を採用することができる。金属粒子は、溶融めっき用の金属と同種の金属であっても異種の金属であってもよい。
【0021】
また、金属製品が金属線である場合において、金属線の表面に溶融めっき層を形成した場合、金属線とめっき層との境界に化合物が形成されるが、その化合物がもろい性質を有すると、得られるめっき線の曲げ加工性が低下する。従って、上記境界に生ずる化合物がもろいものにならない、加工性が高いめっき用金属を選ぶ必要がある。しかし、一般にはそのような加工性の高いめっき用金属は金属線の防錆効果が低い。
【0022】
これに対しては、金属粒子として、めっき層よりも防錆力が高い金属材料を採用することが好ましい。例えば、上記めっき層を、めっき用金属としてZnを用いて形成するときは、上記金属粒子は、上記めっき層よりも防錆力が高いZn−Al合金又はZn−Al−Mg合金とし、或いは上記めっき層を、めっき用金属としてZn−Al合金を用いて形成するときは、上記金属粒子は、上記めっき層よりも防錆力が高いZn−Al−Mg合金とすることが好ましい。
【0023】
従って、めっき用金属として加工性の高いものを採用すれば、当該めっき層による防錆効果が低くなっても、金属粒子によって高い防錆力を得ることができるから、加工性と耐食性との両立が図れることになる。
【0024】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の金属製品への金属被覆方法において、
上記金属製品は金属線であり、
上記硬化前のめっき層の余熱によって上記金属粒子の一部分を溶融させることを特徴とする。
【0025】
従って、この発明によれば、表面に微小凹凸が形成された層厚な金属被覆層を有する金属線が得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように請求項1に係る発明によれば、金属製品の表面に溶融めっき処理を施すことによってめっき層を形成し、該めっき層が硬化する前に該めっき層に金属粒子を吹き付けて付着させるようにしたから、めっき層や金属粒子を新たに加熱溶融させたり、接着剤を用いたりすることなく、金属粒子をめっき層に溶着させて表面に微小凹凸を有する層厚な金属被覆層を形成することができ、生産性の向上が図れる。
【0027】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の金属製品への金属被覆方法において、上記金属製品として金属線を採用し、硬化前のめっき層の余熱によって金属粒子の一部分を溶融させるようにしたから、表面に微小凹凸が形成された層厚な金属被覆層を有する金属線を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
<実施形態1>
図1には本発明に係る金属被覆線1が示されている。この金属被覆線1において、2は金属線であり、その表面に金属被覆層5が形成されている。この金属被覆層5は、溶融めっきによって金属線2の表面に形成されためっき層3と、該めっき層3の表面全体にわたって略均等に分散して付着した多数の金属粒子4とによって形成されている。各金属粒子4はその一部がめっき層3に埋まることによって該めっき層3に溶着している。従って、当該金属被覆線1には、上記金属粒子4によって表面全体にわたって微小凹凸が形成されている。
【0030】
金属線2は直径2〜20mm程度、めっき層3の厚さは5〜200μm程度、好ましくは10〜100μm程度、金属粒子4の平均粒径は5〜500μm程度、好ましくは10〜300μm程度、めっき層3と金属粒子4とを合わせた付着量は例えば50〜1000g/m2 程度とすることができ、当該金属被覆線1の表面において金属粒子4の占める面積の割合は例えば5〜100%とすることができる。
【0031】
次に上記金属被覆線1の製造方法を説明する。
【0032】
図2は製造設備の概略を示すものであり、同図において、15は金属線コイルであって、酸洗後、伸線機にかけて所定の線径にしてなる金属線2がコイル状に巻かれている。16は金属線2の焼鈍炉、17は酸洗槽、18は溶融亜鉛メッキ浴、19は粒子ブースである。この粒子ブース19はメッキ浴18の直上に配置されていて、その内部に粒子吹付けノズル20が設けられている。
【0033】
コイル15より繰り出された金属線2は、焼鈍炉16による焼鈍、酸洗槽17での酸洗を経てめっき浴18に浸漬されて引き上げられる。金属線2は表面のめっき層3が硬化する前の溶融状態にあるときに金属粉末ブース19に送られる。この金属粉末ブース19では金属粉ノズル20から金属線2に向かって金属粒子4が吹き付けられる。これにより、金属線2に当たった金属粒子4は溶融状態にあるめっき層3にめり込んで溶着する。しかる後、金属線2はめっき層3が固化するように水の噴霧による冷却、並びに冷却水槽による冷却を経てコイルに巻き取られる。
【0034】
図3は上記金属被覆線1を製造するための設備の要部を示す。同図において、21はめっき浴18の中に設けられたターンローラである。金属線2はこのターンローラ21に巻き掛けられて立ち上げられる。22はめっき付着量を調節する筒状の絞りであって、その下端がめっき浴18に差し込まれている。
【0035】
絞り22の上方に配置された金属粉ノズル20には金属粉末を貯留するホッパ23がバルブ24を介して接続されている。金属粉ノズル20にはコンプレッサから加圧エアが送られ、バルブ24で調節された量の金属粉末、すなわち、金属粒子4が加圧エアによって金属線2の溶融状態にあるめっき層3に吹き付けられる。金属粉ノズル20の上方に冷却水を金属線2のめっき層3に吹き付けるための冷却水ノズル25が配置されている。上記金属粉ノズル20及び冷却水ノズル25は金属線2の通過経路の周囲に等間隔をおいてそれぞれ複数個配設されている。
【0036】
なお、上記金属線2としては、軟鋼線に限らず、例えば硬鋼線を用いることができ、あるいはアルミニウム、銅その他の金属線を採用することができる。また、金属線2としては、図4(a)に示すような表面に多数のリブ2aを有するリブ線2,図4(b)に示すような表面に多数のインデント2bを有するインデント線2、図4(c)に示すような表面に突起2cを有する異形棒鋼2等のように、表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0037】
−実施例1−
金属線2としての軟鋼線に対して図2及び図3に示す設備により金属被覆処理を行なった。軟鋼線の直径は4mm、めっき用金属は表1に記載のZn−Al−Mg合金、金属粉末は表1の記載の組成及び粒度分布のZn粉末である。軟鋼線の線速は10m/min.及び20m/min.の2種類、めっき浴温度は450℃、冷却水ノズル及び水槽の冷却水温度は20℃とした。
【0038】
【表1】
【0039】
得られた金属被覆線の表層部の断面を図5に示す。金属粒子4は一部分が溶融してめっき層3に付着しており、両者が合金化することによってZn濃度の高い合金層7が両者の境界部分に形成されている。また、金属線2とめっき層3との境界には厚さ10〜15μm程度の薄い合金層6が形成されている。当該金属被覆線は、金属粒子4がめっき層3の表面から突出することによって表面に凹凸が形成されているから、摩擦係数が高いものになり、しかも、個々の金属粒子4が異形である(球形でなく角がある)から、さらに摩擦係数が高いものになる。
【0040】
そうして、得られた実施例1-1,1-2の金属被覆線の外観、軟鋼線に対する金属付着量、加工性(巻付試験)を調べ、比較例1-1,1-2と比較した。比較例1-1,1-2は金属粉末の吹付けを行なわないことを除いて実施例と同じ条件で溶融めっき処理を施したものである。結果は表2に示されている。なお、実施例1-1,1-2の金属付着量はめっき付着量と金属粒子付着量とを合わせたものである。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示すように、比較例1-1,1-2のめっき線は表面が平滑であったが、実施例1-1,1-2の金属被覆線では表面全体にわたって金属粒子による多数の凹凸が略均等に形成されていた。金属付着量は、線速10m/minでは実施例の方が35g/m2 、線速20m/minでは55g/m2 多い。この差が金属粒子の付着量に相当する。また、巻付試験は直径4mmの丸棒に金属被覆線を巻き付けてめっき層の剥離、亀裂の有無をみるというものであるが、実施例及び比較例のいずれもめっき層の剥離や亀裂は見られず、試験結果は良好であった。
【0043】
従って、金属粉末の吹付けにより、金属付着量を増大させることができること、そして、金属粉末を吹き付けても、得られる金属被覆線の加工性は従来のめっきのみを施したものと変わらないことがわかる。
【0044】
−実施例2−
めっき用金属として、Al含有量10%のZn−Al合金を用い、軟鋼線の線速を10m/min.、20m/min.及び30m/min.の3種類とする他は実施例1と同じ条件・方法によって実施例2-1〜2-3及び比較例2-1〜2-3の各金属被覆線を製造し、比較した。また、実施例2-1〜2-3の金属被覆線については、ひし形金網を製造する際の加工性についても調べた。結果を表3及び図6に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示すように、外観及び巻付試験については実施例1と同様の結果となった。また、実施例2-1〜2-3の金属被覆線の金網加工性についても良好であり問題はなかった。金属付着量は、いずれの線速の場合も実施例の方が約100g/m2 多いという結果になった。この付着量差が金属粒子の付着量に相当する。
【0047】
−実施例3−
めっき用金属をZn単体とし、軟鋼線の線速を20m/min.、27.5m/min.及び35m/min.の3種類とする他は実施例1と同じ条件・方法によって実施例3-1〜3-3及び比較例3-1〜3-3の各金属被覆線を製造し、比較した。また、実施例3-1〜3-3の金属被覆線については、ひし形金網を製造する際の加工性についても調べた。結果を表4及び図7に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
表4に示すように、外観及び巻付試験については実施例1と同様の結果となった。また、実施例3-1〜3-3の金属被覆線の金網加工性についても良好であり問題はなかった。金属付着量は、線速20m/min.では実施例の方が65g/m2 、線速27.5m/min.では45g/m2 、35m/min.では35g/m2 多いという結果になった。この付着量差が金属粒子の付着量に相当する。
【0050】
−実施例4−
金属粉末として、先の表1に示す組成及び粒度分布のZn粉末(以下、A粉末という。)と、次の表5に示す粒度分布のZn粉末(以下、B粉末という。)との2種類を準備し、金属粉末の粒度が表面性状や加工性に及ぼす影響を調べた。すなわち、めっき用金属としてAl含有量10%のZn−Al合金を用い、軟鋼線の直径を5mmとし、線速を10m/min.及び20m/min.の2種類として、A粉末のみを使用した場合、B粉末のみを使用した場合、A粉末とB粉末とを1:1の質量比率で混合した場合、並びに金属粉末の吹付けを行なわない場合の各々について、実施例1と同様にして金属被覆線を製造した。但し、絞りに関しては、めっき付着量が多くなるように調整した。結果を表6に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
表6に示すように、いずれも加工性(巻付試験及び金網加工性)は良好であった。線速10m/min.において、A粉末を用いた実施例4-3 では表面に凹凸が認められたが、粒径の小さなB粉末を用いた実施例4-1 では表面の凹凸が極めて小さいものになった。A粉末とB粉末とを混合した実施例4-2 では表面に凹凸が認められた。線速20m/min.では、A粉末とB粉末とを混合した実施例4-4でも実施例4-1と同様に表面の凹凸は極めて小さいものであった。実施例4-4 の表面凹凸が極めて小さくなったのは、線速が高く、金属粉末の吹付け量が少なくなったためと考えられる。
【0054】
図8は実施例4-1 の金属被覆層の金属組織を示す横断面の走査型電子顕微鏡写真、図9は図8の走査型電子顕微鏡写真を図10〜図12の元素分布写真に対応するように加工した参考顕微鏡写真、図10〜図12はエネルギー分散型X線分析装置によるFe、Zn及びAlの各元素の分布を示す写真である。図8に記載したように、Fe地の上にAlリッチのFe−Al−Zn合金層が形成され、その上にAl量の少ないAl−Zn層が形成され、その上に粒子が溶着している。
【0055】
Al−Zn層中に楕円形に表れている結晶粒はAlリッチの初晶粒である。溶着粒子中にも同様の初晶粒が認められるが、これは、該溶着粒子内にめっき金属であるAl−Zn合金のAlが移動していることを意味する。図12のAl元素の分布を示す写真からも溶着粒子内にAl元素が存在することが認められる。このことから、めっき層に吹き付けられたZn粒子は、硬化前のめっき層の余熱によって粒子全体が一旦溶融していることがわかる。
【0056】
そうして、Zn粒子は、上記Al−Zn層にめりこみ、且つ粒子全体が溶融することによって扁平に広がっており、このため、表面の凹凸が極めて小さなものになっている。
【0057】
図13は実施例4-3 の金属被覆層の金属組織を示す横断面の走査型電子顕微鏡写真、図14は図13の走査型電子顕微鏡写真を図15〜図17の元素分布写真に対応するように加工した参考顕微鏡写真、図15〜図17はエネルギー分散型X線分析装置によるFe、Zn及びAlの各元素の分布を示す写真である。図13に記載したように、Fe地の上にAlリッチのFe−Al−Zn合金層が形成され、その上にAl量の少ないAl−Zn層が形成され、その上にZn粒子が付いている。Zn粒子内には図17から明らかなようにAl元素は存在しない。従って、Zn粒子は硬化前のめっき層の余熱によってその一部分が溶融して該めっき層に付着しているということができる。このため、Zn粒子はAl−Zn層より大きく盛り上がっている。
【0058】
なお、図13及び図14の写真ではZn粒子とAl−Zn層との境界が明瞭に表れているが、これは、Zn粒子のAl−Zn層に溶着した部位ではなく、該Zn粒子が溶着部位より外側へ張り出してAl−Zn層に被さった部位で観察したためと考えられる。
【0059】
図18は上記実施例4-1,4-3及び比較例4-1の表面粗さを触針式の測定器で測定した結果を示す。粒径の大きな粉末Aを用いた実施例4-3 では表面の凹凸が大きいが、実施例4-1 では表面の凹凸が極めて小さくなっている。
【0060】
以上の結果から、金属粉末の粒度によって表面粗さが変わることがわかる。また、200メッシュ以上の金属粉末を用いると、すなわち、粒径75μm以下の金属粉末を用いると、10m/min.程度の低い線速でも表面が平滑でしかも層厚な金属被覆層が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る金属被覆線を一部断面にして示す斜視図。
【図2】 同金属被覆線の製造設備の概略構成図。
【図3】 同製造設備の要部を示す構成図。
【図4】 金属線の他の例を示す正面図。
【図5】 実施形態1に係る金属被覆線の表層部の断面図。
【図6】 実施形態1の実施例2に係る金属被覆線と比較例とについて線速と金属付着量との関係を示すグラフ図。
【図7】 実施形態1の実施例3に係る金属被覆線と比較例とについて線速と金属付着量との関係を示すグラフ図。
【図8】 実施例4-1 の金属被覆層の金属組織を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図9】 図8の走査型電子顕微鏡写真を図10〜図12の元素分布写真に対応するように加工した参考顕微鏡写真、
【図10】 実施例4-1 の金属被覆層のFe元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図11】 実施例4-1 の金属被覆層のZn元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図12】 実施例4-1 の金属被覆層のAl元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図13】 実施例4-3 の金属被覆層の金属組織を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図14】 図13の走査型電子顕微鏡写真を図15〜図17の元素分布写真に対応するように加工した参考顕微鏡写真、
【図15】 実施例4-3 の金属被覆層のFe元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図16】 実施例4-3 の金属被覆層のZn元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図17】 実施例4-3 の金属被覆層のAl元素の分布を示すエネルギー分散型X線分析装置による写真。
【図18】 実施例4-1,4-3及び比較例4-1の表面粗さを触針式の測定器で測定した結果を示す図。
【符号の説明】
1 金属被覆線
2 金属線
3 めっき層
4 金属粒子
5 金属被覆層
6 合金層
18 めっき浴
20 金属粉ノズル
Claims (2)
- 金属製品の表面に溶融めっき処理を施すことによってめっき層を形成する工程と、
上記めっき層が硬化する前に該めっき層に多数の金属粒子を吹き付けて付着させ、該金属粒子によって表面に微小凹凸を形成する工程とを備えていることを特徴とする金属製品への金属被覆方法。 - 請求項1に記載の金属製品への金属被覆方法において、
上記金属製品は金属線であり、
上記硬化前のめっき層の余熱によって上記金属粒子の一部分を溶融させることを特徴とする金属製品への金属被覆方法。
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