JP2004263268A - 耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Al:35〜85%、Mn:0.5〜10%、Si:Alの含有量の0.5〜10%を含有し、残部はZn及び不可避的不純物からなるめっき層を表面に有することを特徴とする耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系めっき鋼材である。前記めっき層が、さらにMg:0.1〜5質量%、Cr:0.05〜5質量%を含有することが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材、自動車、家電用途に使用される溶融めっき鋼材に関するものである。特に、主として建材用途分野で要求される高耐食性能を有する耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鋼材の表面にZnめっきを施して鋼材の耐食性を改善することは、広く知られており、現在もZnめっきが施された鋼材は、大量に生産されている。しかしながら、多くの用途に対して、Znめっきのみでは、耐食性が不充分な場合がある。そこで、近年、Znよりも鋼材の耐食性を一層向上させるものとして、溶融Zn−Al合金めっき鋼板が使用されている。例えば、特公平2−46442号公報(特許文献1)に開示されている溶融Zn−Al合金めっきは、35〜85質量%のAlと、Al含有量の0.5%以上のSi、及び残部は本質的にZnより成る合金めっきを施すことが開示されており、実際にも耐食性が優れると共に、鋼材への密着性が良好で、かつ、外観の美麗な溶融Zn−Al合金めっき層が得られるものである。溶融Zn−Al合金めっきを施した鋼材は、従来のZn系めっきを施した鋼材に対して、各段に優れた耐食性を示すものであったが、近年の主として建材用途分野での更なる耐食性向上要求に応えるには不充分である。
【0003】
【引用文献】
(1)特許文献1(特公平2−46442号公報)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決し、従来技術を大幅に上回る高耐食性を有する溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、Zn−55%Alのめっき組成を中心とするめっきに種々の合金元素を添加し、その添加可能な量や添加による耐食性向上効果を検討してきた。その結果、Al:35〜85質量%含有するZnめっき層にMnを添加することにより、耐食性が向上できることを見出し、最適なめっき組成を限定するに至って、本発明を完成させたもので、その要旨とするところは、以下の通りである。
【0006】
(1)質量%で、Al:35〜85%、Mn:0.1〜10%、Si:Alの含有量の0.5〜10%を含有し、残部はZn及び不可避的不純物からなるめっき層を表面に有することを特徴とする耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材。
(2)前記めっき層が、Mg:0.1〜5質量%を、さらに含有することを特徴とする(1)に記載の耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材。
(3)前記めっき層が、さらにCr:0.05〜5質量%を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材は、めっき層の組成として、Al:35〜85質量%、Mn:0.1〜10質量%、Si:Alの含有量の0.5〜10質量%を含有し、残部はZn及び不可避的不純物であることを特徴とし、Mg:0.1〜5質量%、Cr:0.05〜5質量%の何れか、もしくは両方を、さらに含有することが好ましい。ここで、鋼材とは、鋼板、鋼管及び鋼線等の鉄鋼材料である。
【0008】
めっき層の組成として、Alは35〜85質量%とする。Alが35質量%未満の場合は裸耐食性が低下し、一方、35質量%を超えると切断端面の耐食性が低下する。また、合金めっき浴の温度を高く維持する必要が生じ、製造コストが高くなる等の問題が生じる。
めっき層の組成として、Mnは0.1〜10質量%とする。Mnが0.1質量%未満の場合は耐食性向上効果が不充分であり、10質量%を超えるとめっき浴のドロス発生量が増大する等の問題が生じる。耐食性の観点からは、1質量%を超えて含有されることが好ましい。
【0009】
Mn添加による耐食性向上機構は、現時点で必ずしも明らかとなっていないが、以下の理由が考えられる。Mnは、Znに比較して、より卑な腐食電位を有し、Mnをめっき層に添加することで、Mnの犠牲防食効果によるZnの腐食抑制が働く。また、さらには、Mn添加による腐食生成物の安定化による腐食抑制効果が働くものと考えられる。
図1に、本発明のMn添加Zn−Alめっき鋼板を0.5%NaCl液中に浸漬し、腐食電位を測定した結果を示す。浸漬初期において、従来Zn−Alめっき鋼板と比較して、腐食電位が卑であることが分る。これは、MnのZnに対する犠牲防食効果が働くためであると考えられる。
【0010】
めっき層の組成として、Siは、Al含有量の0.5質量%以上添加する。鋼板にめっき層を形成するにあたり、鋼板表面とめっき層との界面におけるFe−Al系合金層が過剰に厚く形成されることを抑制して、鋼板表面とめっき層の密着性を向上することができる。また、Al含有量の10質量%を超えて含有すると、Fe−Al系合金層の形成を抑制する効果が飽和すると共に、めっき層の加工性の低下を招く恐れがあるので、Al含有量の10質量%を上限とする。めっき層の加工性を重視する場合は、Al含有量の5質量%を上限とすることが好ましい。
【0011】
めっき層の組成として、Mgを0.1〜5質量%含有させることにより、さらに高い耐食性を得ることができる。0.1質量%未満の添加では、耐食性向上効果が見られない。一方、添加量が5質量%を超える場合は、耐食性向上効果が飽和するばかりでなく、めっき浴のドロス発生量が増大する等の問題を生じる可能性がある。
【0012】
めっき層の組成として、Crを0.05〜5質量%含有させることにより、さらに高い耐食性を得ることができる。ここで、Crによる耐食性向上機構は、現時点で必ずしも明らかとなってはいないが、Crは、めっき層と素地鋼板界面に濃化層を形成する。めっき層の腐食が進行し、めっき層の素地鋼板に対する犠牲防食効果が損なわれ、素地鋼板自体の腐食、即ち、赤錆腐食が発生する段階において、Cr濃化層は、この赤錆腐食発生を抑制する効果を有すると考えられる。0.05質量%未満の添加では、耐食性向上効果が見られない。一方、添加量が5質量%を超える場合は、耐食性向上効果が飽和するばかりでなく、めっき浴のドロス発生量が増大する等の問題を生じる可能性がある。
【0013】
めっき層の組成として、Al、Mn、Si、Mg、Crを除く残部は、Zn及び不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物とは、Pb、Sb、Sn、Cd、Fe、Ni、Cu、Ti等のめっき合金原料の製造過程で不可避的に混入する元素、及び、めっき鋼材製造過程で鋼材又はめっき釜材料よりめっき浴中に溶解混入する元素を意味し、特に限定するものではないが、これら不可避的不純物の含有量が合計で1質量%まで含まれても良い。めっき付着量は、特に限定するものではないが、薄すぎるとめっき層による耐食性向上効果が不足し、一方で、厚すぎるとめっき層の折り曲げ加工性が低下し、クラック発生等の問題が生じやすくなることから、鋼材の表裏両面合わせて40〜250g/m2 とすることが好ましい。
【0014】
本発明の合金めっき鋼材を製造するにあたっては、Zn、Al、Mn、Si、Mg及びCrを所望のめっき層の組成と同一の配合割合で含む溶融金属浴に、基材となる鋼材を浸漬させる等の公知の手段を用いることができる。鋼材をめっき浴に浸漬する前に、鋼材のめっき濡れ性、めっき密着性を改善する等の目的で、アルカリ脱脂処理、酸洗処理を施しても良い。また、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、他の薬剤を用いたフラックス処理を施しても良い。鋼材をめっきする方法して、無酸化炉−還元炉もしくは全還元炉を用いて、鋼材を加熱還元焼鈍した後、めっき浴に浸漬引き上げを行う。続いて、ガスワイピング方式で所定のめっき付着量制御を行い、その後、冷却する工程を連続的適用する方法を用いることができる。
【0015】
めっき浴の調合方法として、本発明に示される範囲の組成に予め調合された合金を加熱溶解しても良いし、各金属単体もしくは2種以上の合金を組み合わせて加熱溶解し、所定の組成にする方法を適用しても良い。加熱溶解方法として、めっき槽に直接溶解する方法を用いても良いし、また、予備溶解炉で事前に溶解した後、めっき槽に移送する方法を用いても良い。予備溶解炉を用いる方法は、設備設置費用が高くなるものの、めっき合金溶解時に発生するドロス等の不純物除去がし易い、めっき浴の温度管理がし易い等の利点がある。めっき浴の表面が大気と接することで発生する酸化物系のドロス発生量を低減させる目的で、めっき浴表面をセラミックス、ガラスウール等の耐熱物で覆っても良い。
【0016】
また、本発明の溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材の表面に、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、フッ素樹脂系、塩化ビニル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗料を、ロール塗装、スプレー塗装、カーテンフロー塗装、ディップ塗装、あるいはアクリル樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを積層する際のフィルムラミネート等の方法により、塗工することで塗膜を形成した場合、腐食性雰囲気下で平面部、切断端面部、及び折り曲げ加工部において、優れた耐食性が発揮させることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶融めっき金属浴に鋼材を浸漬することにより、合金めっき鋼材を製造した。ここで、本発明例No.1〜16及び比較例No.18〜20は、板厚0.8mmの冷延鋼板を、めっき前にアルカリ脱脂、N2−10%H2雰囲気中で800℃まで加熱還元焼鈍し、続いて580℃まで冷却した後、600℃の溶融めっき金属浴に2秒間浸漬した。その後30℃/秒の冷却速度で冷却、合金めっき層を表面に形成した。めっき付着量は、片面で約60g/m2 とした。本発明例No.17は、板厚2.0mmの熱延鋼板を、めっき前にアルカリ脱脂、硫酸酸洗した後、塩化亜鉛及び塩化アンモニウムを含むフラックス処理を施した後、600℃の溶融めっき金属浴に10秒間浸漬した。その後30℃/秒の冷却速度で冷却、合金めっき層を表面に形成した。めっき付着量は、片面で約60g/m2 とした。上記のようにして得られた合金めっき鋼材を、100mm×50mmの寸法に切断し、下記評価試験を行った。
【0018】
(裸耐食性評価)
合金めっきした鋼材の塩水噴霧試験を20日間行った。めっき腐食減量の測定方法は、腐食試験後めっき材をCrO3 200g/lの処理浴に温度80℃で3分間浸漬し、腐食生成物を溶解除去した。腐食に伴うめっき腐食減量を質量測定した。下記評価基準にて裸耐食性を判定した。○以上を合格とした。
◎:めっき腐食減量5g/m2 以下
○:めっき腐食減量5g/m2 超10g/m2 以下
△:めっき腐食減量10g/m2 超20g/m2 以下
×:めっき腐食減量20g/m2 超
【0019】
(塗装後耐食性評価)
合金めっきを施した鋼材の両面に、クロメート系塗装下地処理(日本パーカライジング株式会社製、品番「1300AN」)にて、クロム付着量が30〜50mg/m2 になるように付着乾燥させ、エポキシ系下塗り(日本ペイント株式会社製、品番「P−152S」)にて、5μmの塗膜を焼付塗装した後、ポリエステル系上塗り(日本ペイント株式会社製、商品名「ニッペスーパーコート300HQ」)にて、20μmの塗膜を焼付塗装して、塗装合金めっき鋼材を得た。この塗装合金めっき鋼材に切断加工を施した後、沖縄の海岸地域で1年間屋外曝露試験した後、下記評価基準にて、切断端面からの腐食状況を評価した。○以上を合格とした。
【0020】
◎:全くブリスター無し
○:端部からのブリスター幅が2mm未満
△:端部からのブリスター幅が2mm以上5mm未満
×:端部からのブリスター幅が5mm以上
これらの評価結果を表1に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から明らかなように、本発明例No.1〜17は、何れも良好な裸耐食性、塗装後耐食性を示す。これに対し、比較例No.18は、Mnを含有しない従来技術の高耐食性溶融Zn−Al系合金めっき鋼材であるが、本発明例に比較して、裸耐食性、塗装後耐食性共に劣る。また、比較例No.19は、Mgのみ添加した場合であるが、塗装後耐食性は改善したものの、裸耐食性が不十分である。比較例No.20は、Siを添加しなかった場合で、めっき後Fe−Al合金化反応が進行し、めっき層全層が合金化してしまい、耐食性が著しく低下した。
【0023】
【発明の効果】
本発明の溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材は、良好な耐食性能を示し、主として、高耐食性能が要求される建材、自動車、家電用途分野に有用である。したがって、本発明は、産業上の価値の極めて高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のめっき鋼材の腐食電位の経時変化を示す図である。
Claims (3)
- 質量%で、
Al:35〜85%、
Mn:0.1〜10%、
Si:Alの含有量の0.5〜10%
を含有し、残部はZn及び不可避的不純物からなるめっき層を表面に有することを特徴とする耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材。 - 前記めっき層が、Mg:0.1〜5質量%を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材。
- 前記めっき層が、さらにCr:0.05〜5質量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mn系合金めっき鋼材。
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