JP3654520B2 - 加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 - Google Patents

加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする表面処理鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
めっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板は、特公昭46−7161号に示されるように溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示すことから、近年、建材分野を中心に需要が伸びている。
このめっき鋼板は、酸洗脱スケールした熱延鋼板又はこれをさらに冷間圧延して得られた冷延鋼板を下地鋼板とし、連続式溶融めっき設備において以下のようにして製造される。
【0003】
連続式溶融めっき設備では、下地鋼板は還元性雰囲気に保持された焼鈍炉内で所定温度に加熱され、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に浸漬されたスナウト内を通って所定濃度のAlを含有した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬される。めっき浴に浸漬された鋼板はシンクロールを経由してめっき浴の上方に引き上げられた後、めっき浴上に配置されたガスワイピングノズルから鋼板の表面に向けて加圧した気体を噴射することによりめっき付着量が調整され、次いで冷却装置により冷却され、所定のめっき皮膜が形成された溶融Al−Zn系めっき鋼板が得られる。
【0004】
連続式溶融めっき設備における焼鈍炉の熱処理条件及び雰囲気条件、めっき浴組成やめっき後の冷却速度等の操業条件は、所望のめっき品質や材質を確保するために所定の管理範囲で精度よく管理される。
上記のようにして製造されためっき鋼板のめっき皮膜は、主としてZnを過飽和に含有したAlがデンドライト凝固した部分と、残りのデンドライト間隙の部分からなっており、デンドライトはめっき皮膜の膜厚方向に積層している。このような特徴的な皮膜構造により、溶融Al−Zn系めっき鋼板は優れた耐食性を示す。
【0005】
また、めっき浴には通常1.5mass%程度のSiが添加されているが、このSiの働きにより、溶融Al−Zn系めっき鋼板はめっき皮膜/下地鋼板界面の合金相成長が抑えられ、合金相厚さは約1〜2μm程度である。この合金相が薄ければ薄いほど優れた耐食性を示す特徴的な皮膜構造の部分が多くなるので、合金相の成長抑制は耐食性の向上に寄与する。また、合金相はめっき皮膜よりも固く加工時にクラックの起点として作用するので、合金相の成長抑制はクラックの発生を減少させ、加工性の向上効果をもたらす。また、クラック部は下地鋼板が露出していて耐食性に劣るので、クラックの発生を減じることは加工部耐食性をも向上させる。
【0006】
通常、めっき浴には不可避的不純物、鋼板やめっき浴中の機器等から溶出するFe、合金相抑制のためのSiが含まれるが、それら以外にも何らかの元素が添加されている場合もあり、合金相やめっき皮膜中にはそれら元素が合金或いは単体の形で存在している。
また、溶融Al−Zn系めっき鋼板は実用に供されるに当たって溶融めっきままで使用されることは極く稀であり、通常はめっき鋼板表面に化成処理や塗装を施した表面処理鋼板として使用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
溶融Al−Zn系めっき鋼板は、折り曲げ等の加工を施すと加工の程度によって被加工部のめっき皮膜にクラックが生じる。このめっき鋼板では、めっき皮膜/下地鋼板界面に存在する約1〜2μm厚の合金相がクラックの起点となり、まためっき皮膜のデンドライト間隙部がクラックの伝播経路になることから、同程度の加工を行った場合でも、同一めっき皮膜厚の溶融亜鉛めっき鋼板に比べてクラックが比較的大きく開口する傾向がある。そのため加工の程度によってはクラックが肉眼で視認され、外観を損ねるという問題がある。さらに、上述のように溶融Al−Zn系めっき鋼板は、同一めっき皮膜厚の溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れた耐食性を発揮するが、下地鋼板の露出したクラック部はクラックのない部分と比較して耐食性が顕著に低下するという問題もある。
【0008】
このような問題に対して、例えば特公昭61−28748号公報には、溶融Al−Zn系めっき鋼板に所定の熱処理を施すことによって、めっき鋼板の延性を改善する方法が示されている。しかし、このような従来技術の熱処理だけではめっき皮膜の延性を十分に改善することは難い。
また、上述したように溶融Al−Zn系めっき鋼板は表面に化成処理を施した化成処理鋼板や塗装を施した塗装鋼板として使用されるのが通常である。そして、単に折り曲げ等の加工による加工部でのクラック発生抑止の観点から、上記従来技術のようにめっき皮膜の延性をある程度改善したとしても、必ずしも実用に供される製品としての性能、すなわち化成処理や塗装を行った表面処理鋼板としての加工性や加工部の耐食性が直ちに改善されるものではない。
【0009】
したがって本発明の目的は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とし、従来にない優れた加工性及び加工部耐食性が得られる表面処理鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題の解決のために本発明者らは、実用製品すなわち溶融Al−Zn系めっき鋼板に化成処理を施した表面処理鋼板としての性能に視点を定め、加工性や加工部耐食性を向上させるために最適なめっき皮膜と化成処理皮膜の構成について鋭意検討を行った。その結果、溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜を特定の熱履歴を経たものとし、且つこのめっき皮膜面に特定の化成処理皮膜を形成することにより、従来では達成できなかった極めて優れた加工性と加工部耐食性が得られることを見い出した。
【0011】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1] めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、
前記めっき皮膜が少なくとも下記(a)及び(b)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であり、前記化成処理皮膜がクロメート処理によるCrを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含むことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
(a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
(b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
【0012】
[2] 上記[1]の表面処理鋼板において、(b)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
[3] 上記[1]又は[2]の表面処理鋼板において、めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass%含有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板について、化成処理皮膜が、めっき皮膜面に水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜であり、且つ該皮膜中に含まれる有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
【0013】
[5] 上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、化成処理皮膜が、めっき皮膜面に形成されるクロメート処理皮膜と、その上層に形成される皮膜であって、水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜とからなることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
[6] 上記[5]の表面処理鋼板において、化成処理皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。 [7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の表面処理鋼板の表面に単層又は複層の塗膜を形成したことを特徴とする塗装鋼板。
【0014】
[8] めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を有する表面処理鋼板の製造方法であって、
溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)及び(b)の熱履歴を付与する工程と、
(a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
(b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
めっき鋼板の表面にクロメート処理によるCrを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含む化成処理皮膜を形成させる工程とを有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0015】
[9] 上記[8]の製造方法において、(b)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
[10] 上記[8]又は[9]の製造方法において、めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass含有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
[11] 上記[8]〜[10]のいずれかの製造方法において、めっき皮膜に対する(b)の熱履歴の付与を、下記(1)〜(4)のうちの少なくとも1つの段階で行うことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
(1) 化成処理皮膜の形成前
(2) 化成処理皮膜の乾燥工程中
(3) 化成処理皮膜の形成後
(4) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
【0016】
[12] 上記[8]〜[11]のいずれかの製造方法において、化成処理皮膜を形成する工程において、めっき皮膜面に水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥することにより、皮膜中の有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜を形成することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0017】
[13] 上記[8]〜[11]のいずれかの製造方法において、めっき皮膜面に、クロメート処理を施し、次いで水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥することにより化成処理皮膜を形成することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
[14] 上記[13]の製造方法において、めっき皮膜面に、皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜を形成することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
[15] 上記[8]〜[14]のいずれかに記載の製造方法の工程に加えて、さらに、化成処理皮膜面に1コート又は2コート以上の塗装を施す工程を有することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の表面処理鋼板は、めっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする。また耐食性等の観点から、めっき皮膜中のAl量より好ましい範囲は45〜65mass%である。また、めっき皮膜の特に好ましい成分組成は、Al:45〜65mass%、Si:0.7〜2.0mass%、Fe:10mass%未満、残部が不可避的不純物を含む実質的なZnであり、このような組成の場合に特に優れた耐食性を発揮する。
【0019】
さらに、めっき皮膜中にMg、V、Mnの中から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜10mass%含有させることによって、耐食性や加工性をより向上させることができる。これら元素の含有量の合計が0.01mass%未満では十分な効果が得られず、一方、10mass%を超えると耐食性向上効果が飽和するとともに、皮膜が硬くなるので加工性が低下する。
【0020】
但し、この溶融Al−Zn系めっき鋼板は、そのめっき組成だけで高い加工部耐食性を得ることは難しく、後述する熱履歴を経ること及び上層の化成処理皮膜と組み合せることによってはじめて優れた加工部耐食性が得られる。
また、この溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき付着量に特に制限はないが、一般には片面当たり30〜200g/m程度とすることが適当である。
【0021】
さらに、この溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜は、少なくとも下記(a)及び(b)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であることが必要である。
(a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
(b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
また、上記(b)の熱履歴において、温度T(℃)のより好ましい範囲は130〜200℃である。
ここで、上記(1)式は本発明者らがめっき皮膜の昇温加熱及びその後の冷却条件や溶融めっきされためっき金属凝固後の冷却条件がめっき皮膜に与える影響を実験に基づき詳細に検討し、その結果導かれた実験式である。
【0022】
めっき皮膜を上記(a)及び(b)の熱履歴を経たものとすることにより、溶融Al−Zn系めっき皮膜でありながら、その加工性(耐クラック性など)は顕著に向上する。上記(a)及び(b)の熱履歴を経ることによりめっき皮膜の加工性が顕著に改善されるのは、以下のような理由によるものと考えられる。まず、鋼板が溶融めっき浴を出た直後に上記(a)の熱履歴、すなわち溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度を十分に遅くした熱履歴を経ることにより、溶融めっき皮膜の凝固が通常の冷却過程による凝固よりも平衡状態に近いものとなるため、半溶融状態での拡散によってAlとZnの二相分離が促進され、この結果、めっき皮膜が軟質化する。そして、このような熱履歴を経ためっき皮膜がさらに上記(b)の熱履歴、すなわち130〜300℃(好ましくは130〜200℃)の温度範囲に昇温加熱された後に特定の条件で徐冷される熱履歴、又は/及びめっき皮膜凝固後の130〜300℃(好ましくは130〜200℃)の温度範囲から特定の条件で徐冷される熱履歴を経ることにより、凝固時点でめっき皮膜に蓄積された歪が開放されるとともに、めっき皮膜中で固体拡散が生じ、上記(a)の熱履歴によって生じためっき皮膜中のAlとZnの二相分離がさらに効果的に促進される。これらの結果、めっき皮膜が著しく軟質化してその加工性が顕著に改善されるものと考えられる。
【0023】
したがって、このようなめっき皮膜の軟質化とこれに伴う加工性の顕著な改善は、上記(a)及び(b)の熱履歴の複合的な作用によるものであり、いずれか一方の熱履歴だけで達成するのは困難である。
【0024】
以下、上記(a)及び(b)の熱履歴の詳細について説明する。
まず、上記(a)の熱履歴については、鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間のめっき皮膜の平均冷却速度を11℃/sec未満とすることにより、上述したように溶融めっき皮膜の凝固が通常の冷却過程による凝固よりも平衡状態に近いものとなるため、半溶融状態での拡散によってAlとZnの二相分離が促進されることによりめっき皮膜が軟質化する。鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間での平均冷却速度が11℃/sec以上では、凝固速度が速すぎるため溶融めっき皮膜の凝固が非平衡状態で進行し、半溶融状態である時間が短いためAlとZnの二相分離が十分に促進されず、上記(b)の熱履歴との複合化によるめっき皮膜の軟質化が十分に達成できない。
【0025】
図1は、鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間のめっき皮膜の平均冷却速度が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を調べたもので、この結果が得られた供試材は、いずれもめっき皮膜が上記(b)の熱履歴を経て製造されためっき鋼板に本発明条件を満足する化成処理皮膜を形成した表面処理鋼板である。なお、この試験における加工性の評価は、後述する実施例の加工性の評価に準じて行った。
図1に示されるように、鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間でのめっき皮膜の平均冷却速度が11℃/sec以上では、0T曲げでの加工性の評点は2点以下である。これに対して、めっき皮膜の平均冷却速度が11℃/sec未満では加工性の評点は4点以上となり、加工性が格段に改善されていることが判る。
【0026】
めっき皮膜を上記(a)の熱履歴を経たものとするには、連続式溶融めっき設備の溶融めっき浴面から溶融めっき浴を出た鋼板が最初に接触するロールまでの間に温度調整装置を設け、この温度調整装置によりめっき皮膜の冷却速度を制御する必要がある。温度調整装置としては加熱又は保熱手段を備えるとともに、必要に応じて冷却手段を備えたものが好ましい。なお、この冷却手段は、前記加熱又は保熱手段によってめっき皮膜の冷却速度が制御されためっき鋼板が最初のロール(トップロールなど)に接触する前にこれを冷却し、ロール表面でのピックアップ発生を防止することなどを目的とするものである。温度調整装置の加熱又は保熱手段としては、例えばインダクションヒータやガス加熱炉などを用いることができ、また冷却手段としてはガス吹付装置などを用いることができる。但し、温度調整装置が有する加熱又は保熱手段や冷却手段の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(a)の熱履歴を付与し得るものであればよい。
【0027】
次に、上記(b)の熱履歴については、上記(a)の熱履歴を経ためっき皮膜(溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜)を130〜300℃、好ましくは130〜200℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱し、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が上記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足するように冷却することにより、或いは溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜をその冷却過程である130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が上記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足するように冷却することにより、上述したようにめっき皮膜に蓄積された歪が開放されるとともに、めっき皮膜中で固体拡散が生じ、上記(a)の熱履歴によって生じためっき皮膜中のAlとZnの二相分離がさらに効果的に促進される。そして、このような熱履歴と上記(a)の熱履歴の複合的な作用によりめっき皮膜が著しく軟質化し、その加工性が顕著に改善される。
【0028】
ここで、上記(b)の熱履歴におけるめっき皮膜の昇温加熱温度Tが130℃未満では上記のような作用が十分に得られず、一方、昇温加熱温度Tが300℃超では下地鋼板とめっき皮膜との界面での合金相の成長を促進させるため、却って加工性に悪影響を及ぼす。またこのような観点から、加工性の改善にとってより好ましい昇温加熱温度Tの上限は200℃である。
また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程である130〜300℃の範囲の温度T(℃)から上記(b)の熱履歴が付与される条件で冷却を行う場合についても、温度Tが130℃未満では上記のような作用が十分に得られない。
【0029】
図2(a)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した際の、めっき皮膜の昇温加熱温度が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を調べたもので、この結果が得られた供試材は、いずれも昇温加熱温度から100℃までのめっき皮膜の平均冷却速度が上記(b)の熱履歴の条件内であり、且つめっき皮膜が上記(a)の熱履歴を経て製造されためっき鋼板に、本発明条件を満足する化成処理皮膜を形成した表面処理鋼板である。なお、この試験における加工性の評価は、後述する実施例の加工性の評価に準じて行った。
【0030】
また図2(b)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した際の、めっき皮膜の平均冷却速度(昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度)が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を調べたもので、この結果が得られた供試材は、いずれもめっき皮膜の昇温加熱温度が上記(b)の熱履歴の条件内であり、且つめっき皮膜が上記(a)の熱履歴を経て製造されためっき鋼板に化成処理皮膜を形成した表面処理鋼板である。なお、この試験における加工性の評価は、後述する実施例の加工性の評価に準じて行った。
【0031】
図2(a),(b)に示されるように、めっき皮膜の昇温加熱温度が130〜300℃の範囲では0T曲げの加工性の評点が4点以上であり、また好ましい条件である130〜200℃の範囲では加工性の評点は4点〜5点となっている。これに対して昇温加熱温度が130〜300℃の範囲外では加工性の評点は3点しか得られていない。また、昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度と上記(1)式の“C”との差が零〜マイナス(本発明範囲内)の場合には0T曲げの加工性の評点は4〜5点であるのに対し、その差がプラス(本発明範囲外)の場合には加工性の評点は3点しか得られていない。
【0032】
めっき皮膜を上記(b)の熱履歴を経たものとするには、連続式溶融めっき設備内に或いは同設備外にめっき皮膜を熱処理又は保熱するための加熱又は保熱装置を設け、所定の熱処理又は保熱を行う。例えば、連続式溶融めっき設備内に加熱機構(例えば、インダクションヒーター、ガス加熱炉、熱風炉など)を設けてインラインで連続加熱して行ってもよいし、また、コイルに巻取った後にオフラインでバッチ加熱して行ってもよい。また、めっきライン外の連続処理設備において加熱機構(例えば、インダクションヒーター、ガス加熱炉、熱風炉など)により連続加熱して行ってもよい。さらには、めっきライン内や上記連続処理設備で連続加熱されためっき鋼板をコイルに巻き取った後に適当な保熱又は加熱保持を行ってもよい。また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程においてめっき皮膜を保熱して徐冷できるような保熱装置を設けてもよい。
但し、加熱又は保熱装置の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(b)の熱履歴を与え得るものであればよい。
【0033】
以上のような(a)及び(b)の熱履歴を経ためっき皮膜の表面に特定の化成処理皮膜を形成することにより、この表面処理鋼板は極めて優れた加工性と加工部耐食性を示す。
【0034】
めっき皮膜面に形成される化成処理皮膜は、クロメート処理によるCrを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含むものとする。上記のようなクラックを生じにくい特定のめっき皮膜の表面に、このような化成処理皮膜を形成することにより加工部耐食性が著しく向上する。なお、この化成処理皮膜は複層皮膜により構成されていてもよく、この場合には皮膜全体として上記Crを含んでいればよい。したがって、上記Crは複層皮膜のうちの1層のみに含まれるものであってもよいし、2層以上の皮膜に含まれるものであってもよい。
化成処理皮膜中の金属クロム換算のCr量が0.1mg/m未満では加工部耐食性が十分に向上せず、一方、Cr量が100mg/m以上では加工部耐食性の向上効果が飽和する一方で、Cr量増加によるCr固定率低下により環境調和性を損う。
【0035】
また、より好ましい化成処理皮膜としては、水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜であって、且つ皮膜中に含まれる有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の重量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜である。
このように化成処理皮膜がCrとともに有機樹脂を含むことにより、加工部耐食性がさらに良好になる。
【0036】
また、このような化成処理皮膜において、有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の質量比(A)/(B)が1未満では、有機樹脂が加工部耐食性を向上させる効果が十分に発揮されない。一方、質量比(A)/(B)200以上では、Crによる加工部耐食性の向上効果が十分に得られない。
また、化成処理皮膜を形成する際にクロメート処理液を塗布した後の乾燥温度が板温で80℃未満では、温度が低いため適正な化成処理皮膜が形成されず、一方300℃を超えるとめっき皮膜にさらなる熱が加わるために合金化反応が促進され、却って加工性が低下するおそれがある。
【0037】
さらに、化成処理皮膜は、クロメート処理皮膜とその上層に形成される特定の皮膜からなることが好ましい。この上層皮膜は、水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜であり、化成処理皮膜をクロメート処理皮膜とその上層の上記皮膜から構成することにより、より優れた加工部耐食性が得られる。
上層皮膜を形成する際に処理液を塗布した後の乾燥温度が板温で80℃未満では、温度が低いため適正な化成処理皮膜が形成されず、一方、300℃を超えるとめっき皮膜にさらなる熱が加わるために合金化反応が促進され、却って加工性が低下するおそれがある。
【0038】
この化成処理皮膜(クロメート処理皮膜+上層皮膜)中に含まれる金属クロム換算での全Cr量は0.1mg/m以上100mg/m未満であり、その限定理由は上述した通りである。上層皮膜中にCrを含有させるか否かは任意であるが、Crを含む場合には耐食性がより向上する。上層皮膜の膜厚は0.1〜5μm程度が好ましく、膜厚が0.1μm未満では加工部耐食性の改善効果が十分でなく、一方、5μmを超えると表面処理鋼板のロールフォーミング時にロールにピックアップを生じるおそれがある。
【0039】
さらに、この化成処理皮膜は、皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることが好ましい。全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1未満では、有機樹脂が加工部耐食性を向上させる効果が小さく、一方、質量比(A)/(B)200以上ではCrによる加工部耐食性の向上効果が小さい。
【0040】
次に、本発明による上記表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、連続式溶融めっき設備などで製造されるめっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とし、その表面に化成処理皮膜を形成した表面処理鋼板の製造方法であり、溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)及び(b)の熱履歴を付与する工程と、めっき鋼板の表面に特定の化成処理皮膜を形成させる工程とを有する。
(a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
(b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
【0041】
めっき皮膜に付与される上記(a)及び(b)の熱履歴のうち、(a)の熱履歴の付与は、めっき直後のめっき皮膜の冷却条件を制御することによりなされる。
この(a)の熱履歴をめっき皮膜に付与するには、上述したように連続式溶融めっき設備の溶融めっき浴面から溶融めっき浴を出た鋼板が最初に接触するロールまでの間に温度調整装置を設け、この温度調整装置によりめっき皮膜の冷却速度を制御する必要がある。上述したように温度調整装置としては加熱又は保熱手段を備えるとともに、必要に応じて冷却手段を備えたものが好ましいが、加熱又は保熱手段や冷却手段の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(a)の熱履歴を与え得るものであればよい。温度調整装置の加熱又は保熱手段としては、例えばインダクションヒータやガス加熱炉などを用いることができ、また冷却手段としてはガス吹付装置などを用いることができる。
【0042】
また、上記(b)の熱履歴の付与は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板に対して特定の熱処理を施すか、或いは溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜の冷却を保熱などによって制御することによりなされる。本発明の製造方法ではめっき鋼板のめっき皮膜面に特定の化成処理皮膜を形成させるが、めっき皮膜に上記(b)の熱履歴を付与するための熱処理は、▲1▼化成処理皮膜の形成前、▲2▼化成処理皮膜の乾燥工程中、▲3▼化成処理皮膜の形成後(処理液の塗布及びその乾燥工程による皮膜の形成後)、のいずれの段階で行ってもよい。また、これらのうちの2つ以上の段階で行ってもよい。
【0043】
したがって、めっき皮膜に対する(b)の熱履歴の付与は、下記(1)〜(4)のうちの少なくとも1つの段階で行うことができる。
(1) 化成処理皮膜の形成前
(2) 化成処理皮膜の乾燥工程中
(3) 化成処理皮膜の形成後
(4) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
なお、熱処理を行う上記方式うち、▲1▼の方式は熱処理工程と化成処理工程の各条件をそれぞれ独立に最適化できるという利点があり、また、▲2▼,▲3▼の方式は連続式溶融めっき設備内で全ての処理を行うのに適している。また、▲2▼の方式は化成処理の乾燥工程における加熱を利用して熱処理を行うので、特に経済性に優れている。
【0044】
上記(b)の熱履歴を付与するための熱処理又は保熱は、連続式溶融めっき設備内に或いは同設備外に設けられた加熱又は保熱装置などにより行う。連続式溶融めっき設備内に加熱機構(例えば、インダクションヒーター、熱風炉など)を設けてインラインで連続加熱して行ってもよいし、また、コイルに巻取った後にオフラインでバッチ加熱して行ってもよい。また、めっきライン外の連続処理設備において加熱機構(例えば、インダクションヒーター、熱風炉など)により連続加熱して行ってもよい。さらには、めっきライン内や上記連続処理設備で連続加熱されためっき鋼板をコイルに巻き取った後に適当な保熱又は加熱保持を行ってもよい。また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程においてめっき皮膜を保熱して徐冷できるような保熱装置を設けてもよい。但し、加熱又は保熱装置の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(b)の熱履歴を与え得るものであればよい。
なお、製造される溶融Al−Zn系めっき鋼板の好ましいめっき組成、めっき付着量、上記(a)及び(b)の熱履歴の限定理由及び得られる作用効果などは先に述べた通りである。
【0045】
本発明の製造方法では、めっき鋼板のめっき皮膜面に、少なくともクロメート処理を含む1又は2以上の処理を行い、Crを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含む化成処理皮膜を形成させる。この化成処理皮膜を形成する工程と上記(b)の熱履歴を付与する工程との前後関係は上述した通りである。
上記クロメート処理では、クロメート処理液をめっき鋼板面に塗布し、通常、水洗することなく80〜300℃で乾燥処理する。
先に述べたように、この化成処理皮膜は複層皮膜により構成されていてもよく、この場合には複数の処理が順次行われる。また複層皮膜の場合には皮膜全体として上記Crを含んでいればよく、したがって、このCrは複層皮膜のうちの1層のみに含まれるものであってもよいし、2層以上の皮膜に含まれるものであってもよい。
【0046】
また、化成処理皮膜の好ましい組成及び処理条件は先に述べた通りである。すなわち、特に好ましい化成処理皮膜は、水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜であって、且つ皮膜中に含まれる有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の重量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜である。この場合の限定理由及び作用効果は、先に述べた通りである。
【0047】
また、上述したようなクロメート処理後、その上層に特定の上層皮膜を形成してもよく、この場合には化成処理皮膜はクロメート処理と上層皮膜との複合皮膜となる。この化成処理皮膜(クロメート処理皮膜+上層皮膜)中に含まれる金属クロム換算での全Cr量は0.1mg/m以上100mg/m未満である。上層皮膜中にCrを含有させるか否かは任意であるが、Crを含む場合には耐食性がより向上する。上層皮膜の膜厚は0.1〜5μm程度が好ましい。また、この化成処理皮膜は、皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることが好ましい。上層皮膜は、例えば水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥して形成させる。なお、以上の各構成の限定理由及び作用効果は、先に述べた通りである。
【0048】
以上述べた本発明の表面処理鋼板の表面には単層又は複層の塗膜を形成し、塗装鋼板とすることができる。この塗膜としては、例えば、ポリエステル樹脂系塗膜、エポキシ樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、ウレタン樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜等が挙げられる。また、上記樹脂の一部を他の樹脂で変性した、例えばエポキシ樹脂変性ポリエステル樹脂系塗膜等も適用できる。さらに上記樹脂には必要に応じて硬化剤、硬化触媒、顔料、添加剤等を添加することができる。
表面処理鋼板の表面に塗膜を形成するための塗装方法は特に規定しないが、塗装方法としてはロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等が挙げられる。塗料を塗装後、一般に熱風乾燥、赤外線加熱、誘導過熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成させる。
【0049】
【実施例】
[実施例1]
常法で製造した冷延鋼板(板厚0.5mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−1.5%Si−Znめっき浴(表1のNo.1〜No.11)、40%Al−1.0%Si−Znめっき浴(表1のNo.12)及び70%Al−1.8%Si−Znめっき浴(表1のNo.13)を用いて溶融めっきを行った。ラインスピードは160m/分とし、片面めっき付着量は鋼板間のバラツキが75〜90g/mの範囲に収まるようにした。
【0050】
このめっき鋼板の製造工程においてめっき皮膜に表1に示す熱履歴(I),(II)を付与するとともに、めっき皮膜面に化成処理を施した。化成処理条件は、アクリルエマルジョン樹脂とクロム酸を樹脂固形分量:Cr量=100:1(質量比)の割合となるように混合した処理液を、金属クロム換算でのCr付着量が20mg/mとなるようにめっき鋼板面に塗布し、120℃で乾燥した。但し、表1中のNo.11については化成処理の乾燥工程で本発明が規定する熱履歴を付与したため、乾燥温度を140℃とした。
このようにして製造した表面処理鋼板について、以下の方法により加工性と加工部耐食性を評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
(1) 加工性
表面処理鋼板を0T曲げしてこの0T曲げ先端部のクラックを観察し、以下の基準で評価した。
5:20倍のルーペで観察してもクラックは認められない。
4:目視で観察するとクラックは認められないが、20倍のルーペで観察するとクラックが認められる。
3:目視で観察してクラックが認められる。
2:目視で観察して大きく開口したクラックが認められる。
1:剥離を伴うクラックが生じている。
【0052】
(2) 加工部耐食性
表面処理鋼板を3T曲げした後、50℃、98%RH以上の湿潤試験機に装入して1000時間経過後の曲げ部からの錆発生状態を観察し、以下の基準で評価した。
5:異常無し
4:一部に軽度の白錆、黒錆の発生有り
3:全面に軽度の白錆、黒錆の発生有り
2:全面に著しい白錆、黒錆の発生有り
1:赤錆発生あり
【0053】
【表1】
Figure 0003654520
【0054】
[実施例2]
常法で製造した冷延鋼板(板厚0.5mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−1.5%Si−Znめっき浴を用いて溶融めっきを行った。ラインスピードは160m/分とし、片面めっき付着量は鋼板間のバラツキが75〜90g/mの範囲に収まるようにした。
【0055】
このめっき鋼板の製造工程においてめっき皮膜に表2に示す熱履歴(I),(II)を付与するとともに、めっき皮膜面に化成処理を施した。化成処理条件は、金属クロム換算でのCr付着量が20mg/mとなるようにめっき鋼板面にクロメート処理を施して80℃で乾燥し、その上層にウレタンエマルジョン樹脂を含む処理液を塗布し、120℃で乾燥した。
このようにして製造した表面処理鋼板について、実施例1と同じ方法により加工性と加工部耐食性を評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
Figure 0003654520
【0057】
[実施例3]
常法で製造した冷延鋼板(板厚0.5mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−1.5%Si−Znめっき浴に対してMg、V、Mnのうち1種又は2種以上を添加しためっき浴を用い、めっき皮膜中のMg、V、Mnの1種又は2種以上の含有量が合計で0.01〜10mass%となるように溶融めっきを行った。ラインスピードは160m/分とし、片面めっき付着量は鋼板間のバラツキが75〜90g/mの範囲に収まるようにした。
【0058】
このめっき鋼板の製造工程においてめっき皮膜に表3に示す熱履歴(I),(II)を付与するとともに、めっき皮膜面に実施例1と同じ条件で化成処理を施した。
このようにして製造した表面処理鋼板について、実施例1と同じ方法により加工性と加工部耐食性を評価した。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
Figure 0003654520
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の表面処理鋼板は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする表面処理鋼板でありながら極めて優れた加工性と加工部耐食性を有する。また、本発明の製造方法によれば、このような表面処理鋼板を安定して且つ高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板が溶融めっき浴を出た直後の最初の10秒間のめっき皮膜の平均冷却速度が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を示すグラフ
【図2】図2(a)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した場合において、めっき皮膜の昇温加熱温度が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を示すグラフ、図2(b)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した場合において、めっき皮膜の平均冷却速度(昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度)が表面処理鋼板の加工性に及ぼす影響を示すグラフ

Claims (15)

  1. めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を有する表面処理鋼板であって、
    前記めっき皮膜が少なくとも下記(a)及び下記(b)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であり、前記化成処理皮膜がクロメート処理によるCrを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含むことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
    (a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
    (b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
    又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
    C=(T−100)/2 …… (1)
  2. (b)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
  3. めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
  4. 化成処理皮膜が、めっき皮膜面に水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜であり、且つ該皮膜中に含まれる有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
  5. 化成処理皮膜が、めっき皮膜面に形成されるクロメート処理皮膜と、その上層に形成される皮膜であって、水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥して得られた皮膜とからなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
  6. 化成処理皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満であることを特徴とする請求項5に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板。
  7. 請求項1、2、3、4、5又は6に記載の表面処理鋼板の表面に単層又は複層の塗膜を形成したことを特徴とする塗装鋼板。
  8. めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を有する表面処理鋼板の製造方法であって、溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)及び(b)の熱履歴を付与する工程と、
    (a) 鋼板が溶融めっき浴を出た直後の10秒間の平均冷却速度が11℃/sec未満である熱履歴
    (b) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
    又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
    C=(T−100)/2 …… (1)
    めっき鋼板の表面にクロメート処理によるCrを金属クロム換算で0.1mg/m以上100mg/m未満含む化成処理皮膜を形成させる工程とを有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  9. (b)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  10. めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass含有することを特徴とする請求項8又は9に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  11. めっき皮膜に対する(b)の熱履歴の付与を、下記(1)〜(4)のうちの少なくとも1つの段階で行うことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
    (1) 化成処理皮膜の形成前
    (2) 化成処理皮膜の乾燥工程中
    (3) 化成処理皮膜の形成後
    (4) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
  12. 化成処理皮膜を形成する工程において、めっき皮膜面に水性有機樹脂とクロム酸及び/又はクロム酸の一部を還元したクロム酸化合物を含むクロメート処理液を塗布した後、板温80〜300℃の温度で乾燥することにより、皮膜中の有機樹脂量(A)と金属クロム換算でのCr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜を形成することを特徴とする請求項8、9、10又は11に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  13. めっき皮膜面に、クロメート処理を施し、次いで水性有機樹脂を含む処理液を塗布して板温80〜300℃の温度で乾燥することにより化成処理皮膜を形成することを特徴とする請求項8、9、10又は11に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  14. めっき皮膜面に、皮膜中に含まれる全有機樹脂量(A)と金属クロム換算での全Cr量(B)の質量比(A)/(B)が1以上200未満である化成処理皮膜を形成することを特徴とする請求項13に記載の加工性と加工部耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  15. 請求項8、9、10、11、12、13又は14に記載の製造方法の工程に加えて、さらに、化成処理皮膜面に1コート又は2コート以上の塗装を施す工程を有することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
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