JP4211202B2 - 粉体塗装ワイヤの製造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粉体塗装ワイヤの製造方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金網、フェンス、ネット、籠マットなどのワイヤ製品の材料として使用される鉄製または鋼製のワイヤ(以下ワイヤという)は耐食性が要求されることが多い。たとえば、ワイヤやこれを加工した製品が海水や潮風にさらされる場所に使用されたり、塩水流入河川や酸性水河川といった厳しい腐食環境で使用された場合、たとえば、護岸のための岩石を充填した籠マットや蛇籠類であるような場合には、耐食性が不十分で、耐用年数が短くなるからである。
【0003】
この対策としてワイヤのの表面にZnめっきを施したり、Znよりも耐食性を増すためにZn−Al合金めっきを施しすことが行われ、あるいは、めっきなしまたはめっきしたうえでその表面に熱可塑性樹脂を粉体塗装することが行われている。
【0004】
ワイヤの表面に熱可塑性樹脂を粉体塗装するには、次の方法が考えられる。
1)ワイヤを洗浄ないし研摩し、静電吹付け塗装を行い、ついで高周波加熱またはこれと雰囲気加熱を行い、水冷する方法。
2)ワイヤを洗浄ないし研摩し、高周波加熱し、ついで静電吹付け塗装を行い、雰囲気加熱し、水冷する方法。
【0005】
しかし、1)の方法は、高周波加熱が急加熱であるため、ワイヤの表面に付着した樹脂粉末間の空気が膨張し外部に放出される前に樹脂が溶融して塗膜が形成され、その塗膜内に空気が包まれてしまったり、空気が放出されてもその箇所がピンホールの原因となる。しかも、空気の塗膜内への内包は、製造ライン速度を上げるべく急加熱にすると顕著となり、したがつて、1)の方法では、耐食性性能と外観がよいものが得られない問題がある。
【0006】
2)の方法は、樹脂塗料が加熱溶融される際にすでにワイヤが予熱されているため、塗膜内への空気の混入はほとんど起こらない。しかし、被塗装物としてのワイヤが前段で加熱されているため、吹き付けられてワイヤに接触した樹脂粉末が円周方向にスムーズに回り込まず、吹付け部位で溶着してしまいやすい。このため、ワイヤ表面への塗料の付着調整が難しく、円周方向での塗膜の均一性が得られないという問題がある。
【0007】
また、1)、2)の方法においては、塗膜の良否はワイヤに付着した粉体の溶融−自然流動に依存している。したがって、平滑な塗膜を形成するためには、所定温度に加熱保持することが一般的である。これを能率化するには加熱温度を高くすることが1つの方法であるが、温度を高くしすぎると粉体塗料が熱分解あるいは劣化するため、これらが生じない温度を設定し保持することが必要である。
【0008】
しかし、これは塗料樹脂の物性により決定されるため、製造速度を上げるには加熱保持時間に比例してラインでの加熱炉長を長くする必要がある。また加熱領域ではワイヤ表面は他物と非接触でなければならないから、加熱炉長が長くなれば管理が困難になる。したがって、1)、2)の方法で製造速度を上げるためには、保持時間に合わせてラインを設計するか、ラインに合わせて製造速度を決定するほかなく、自由度が乏しく、調整が困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、ピンホールや塗膜内の空気混入がなく、表面が平滑で長手方向での径差および円周方向での塗膜厚さのバラツキの少ない塗装ワイヤを高い製造速度で製造することができる方法と装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、ワイヤの表面を粗面状にした後、そのワイヤを加熱し、該加熱ワイヤに熱可塑性樹脂を付着させ溶融しはじめた状態で上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05、かつ第2ダイスのダイス穴径d2と塗装製品ワイヤ径Dの比(d 2 /D)が1.02〜1.22である2段のダイスを通過させ、ワイヤ外径とダイス穴の間隙に充填された塗装樹脂を圧着しごきすることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、ワイヤの供給側から巻取り側の走行ラインに、エアショットブラストと高周波加熱炉と熱可塑性樹脂粉末槽と圧着しごき装置および冷却装置を順次に配してなり、前記圧着しごき装置が、筒状ホルダ内に、熱可塑性樹脂粉末槽を通過する間に付着し溶融を開始した樹脂層をワイヤに圧着しつつしごくための2段ダイスを配してなり、2段ダイスは、上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05である。ことにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明による粉体塗装ワイヤの製造方法と装置の概要を示しており、4はサプライヤー、5はキャプスタン、6は表面処理装置、7は加熱装置、8は熱可塑性樹脂粉末槽、9は圧着しごき装置、10は冷却装置、11は引取りキャプスタン、12は巻取り機であり、これら装置が直列に配置されている。
【0014】
1は塗装対象のワイヤであり、所望の径たとえば1.0〜10.0mmの範囲から選択される鉄線あるいは鋼線が用いられる。ワイヤ1は表面にめっき層を有しているものを含んでいる。そのめっき層はたとえばZnめっき層、Zn−Al合金めっき層などが挙げられる。
【0015】
Zn−Al合金めっき層の場合、好適には、Al濃度6.0〜12.0%を有している。それは、めっきの耐食性と、加工性すなわち、樹脂被覆した後に編網にしたり撚り合わせたりする加工の際のめっき層の剥離や亀裂の発生を防止するためであり、Al濃度は6.0%が最低限必要であるからである。上限を12.0%としたのは、これ以上の濃度では耐食性は良好であるものの、加工性が低下するからである。Zn−Al合金めっき層の厚みは、一般に30〜90μmが好ましい。
【0016】
本発明は、まず、前記ワイヤ1を走行させながら表面処理装置6によりワイヤ表面(めっき表面)を粗面化し、図2のように細かい凹凸の梨子地状面aを得るもので、表面処理装置6はエアショットブラスト装置が好適である。
この粗面化は、ワイヤ表面(めっき表面)と塗装樹脂との強固な密着性を得るためであり、エアショットブラストを用いた理由は、表面を研摩することと凹凸をつけるためである。かかるエアショットブラストは、具体的には、アルミナ粉など硬質セラミック製の研削材を圧縮エアを媒体として噴射しワイヤ表面(めっき表面)に衝突させることにより行われる。
【0017】
より具体的には、ワイヤ(めっきワイヤを含む以下同じ)1を閉鎖断面の通路を挿通して移動させながら、閉鎖断面の通路壁に円周を3等分ないし5等分した位置に装着したノズル60により3方向ないし5方向から硬質セラミック製の研削材61をブラストすればよい。エアブラスト条件は、たとえば、エア圧0.4MPa、流量2.5Nm3/min、研摩材粒度#80〜120などとすればよい。
【0018】
図3は表面処理装置6を通過した状態を示しており、(a)はめっきなしワイヤの場合、(b)はめっきワイヤの場合を示している。ここではめっきはZn−Al合金めっきであり、合金めっき層2と、これとワイヤ母地表面間のFe−Zn−Al合金層2’からなっている。
【0019】
以上のようにエアショットブラストによりワイヤ表面(めっき表面)に梨子地状面aを施したワイヤ1は、続いて加熱装置7により加熱される。
この加熱工程は、雰囲気加熱では熱媒体が雰囲気であるため加熱時間が長くなるので、効率のよい高周波加熱が好適である。
【0020】
具体的には、高周波加熱炉中を前記ワイヤ1を走行させながら、ワイヤ表面温度が280〜300℃の範囲内となるように高周波を印加する。表面温度が280℃以下では次工程で樹脂を塗布しても効率よく溶融しないため不可であり、300℃以上では樹脂が熱分解を起こして劣化するため適当でない。こうした高周波加熱を行なうことにより、ワイヤ1は表層が加熱され、それが内部に熱拡散して均一な加熱状態となる。
【0021】
ついで、加熱されたワイヤ1は、熱可塑性樹脂粉末槽8と圧着しごき装置9を通過し、表面が平滑で塗膜にピンホールがなく空気を含まない塗装が行われる。
熱可塑性樹脂粉末槽8はボックス80に熱可塑性樹脂粉30を収容したもので、圧着しごき装置9は、ボックス80の出口側に直結あるいは樹脂の溶融時間をとるために適度の距離をおいて配した筒状のホルダ90内に、2段のダイス9a,9bを相互に適度の距離をおいて並べたものである。
【0022】
熱可塑性樹脂は種々のものを使用することができるが、好適には熱可塑性ポリエステル樹脂である。これは本発明者の知見した結果である。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニール、ナイロン、ポリエチレンなどの樹脂について、屋外耐久性、絶縁耐力、耐衝撃性、耐寒性、接着力、耐酸性、耐水性、ガスバリア性を実験した。その結果、熱可塑性ポリエステル樹脂は最も上記特性が優秀であり、特に耐侯性にすぐれ、長期の屋外使用での劣化がなく、まためっき層との密着性が高く、傷がついてもその箇所からの腐食の拡がりが小さいため、すぐれた耐食性を持っていることがわかったからである。
【0023】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、代表的には飽和ポリエステル樹脂、すなわち、イソフタレル酸成分が8〜20モル%を含み、固有粘度0.7〜1.0の結晶性の熱可塑性ポリエチレンイソフタレート共重合体からなるものが用いられる。
イソフタレル酸成分が8%未満では密着性が損なわれ、20%を越えると結晶性が低下する。粘度を限定したのは、結晶性の進行を抑制しつつ良好な流動性によってめっき層の表面を被覆するには高い分子量の重合体であることが必要だからである。
【0024】
熱可塑性樹脂粉30中を加熱直後のワイヤ1が通過することにより、熱可塑性樹脂粉30はエアショットブラストによる梨子地面aの上に付着し、これに接する樹脂粉末が加熱により溶融され、さらにその熱が外層の樹脂粉末に伝播して半溶融状態となる。そして、第1段ダイス9aに至る間に樹脂の溶融が進行し、第1段ダイス9aと第2段ダイス9bを順次通過することにより2段階で圧着しごきされる。したがって、前記高周波加熱炉は、第1段のダイス9aに達するまでに熱可塑性樹脂粉30が溶融し始めるように出力を設定、調整する。
【0025】
前記2段のダイス9a,9bは鋼製、焼結合金製など任意であるが、図4のように下流方向にテーパー状にすぼまった導入部90と、主部(ダイス穴部)91と、下流方向に拡大した出口部92とを有している。
【0026】
いずれも、主部91の寸法すなわち、第1段ダイス(上流側)9aのダイス穴径d1と第2ダイス(下流側)9bのダイス穴径d2は、いずれもワイヤ径dおよび製品としての塗装ワイヤ径Dよりも適度に大きくなければならない。
その理由は、本発明は、ダイス穴径d1,d2を塗装ワイヤ径Dよりも適度に大きくすることにより、ワイヤ1と主部91との間に溶融樹脂を入りませ、樹脂同士での圧着しごき効果を発揮させるからである。
【0027】
基本的には、ワイヤ1の線径と塗膜厚さにより第2段ダイス9bのダイス穴径d2を選定し、それにより塗装ワイヤの線径が決定される。そして、第2段ダイス9bのダイス穴径d2に対して第1段ダイス9aのダイス穴径d1を設定する。 ダイス穴径d2と塗装ワイヤ径Dの関係は、d2/D=1.02〜1.22とし、ワイヤ径が細いほどd2/Dの値を大きくすることが好ましい。ダイス穴径d1と塗装ワイヤ径Dの関係は、ワイヤ径が3.0〜6.0mm、塗膜厚みが80〜90μmの場合、d1/D=1.05〜1.28とし、ワイヤ径が細いほどd1/Dの値を大きくすることが好ましい。
【0028】
ダイス穴径d1はダイス穴径d2よりも相対的に大きく、d2/d1は1.02〜1.05とすることが好ましい。
【0029】
塗膜厚みが80〜90μmの場合の、ワイヤ径dと塗装ワイヤ径Dとダイス穴径d1,d2の具体例を示すと表1のとおりである。この例ではダイス穴径d1をダイス穴径d2より0.2mmφ程度大きくしている。
【0030】
【表1】
【0031】
上記のような条件にて2段のダイス9a,9bを配し、熱可塑性樹脂粉30中を通過したワイヤ1を通過させれば、図4のように、溶融をはじめた(また平滑になっていない)樹脂3’がワイヤ1の移動に伴ってワイヤ1の外周と第1段ダイス9aのすき間すなわち導入部90から主部91にかけて充填され、樹脂同士でワイヤ1の表面の塗膜をしごいて平滑にする。そして、導入部90が次第に細くなっているため、前記主部91内周の樹脂3’がワイヤ中心方向に圧力をかけ、塗膜がワイヤ1に圧着される。また、ワイヤ1は充填される樹脂3’による調心作用で主部91の中心に位置される。図5(a)は第1段ダイス9aを通過したワイヤの状態を示している。
【0032】
こうして第1段ダイス9aを通過した粗塗装ワイヤ1’は、続いて第2段ダイス9bを通過し、このときにも塗膜樹脂3”がワイヤ1の移動に伴ってワイヤ1の外周と導入部90から主部91にかけて充填され、樹脂同士でワイヤ1の表面の塗膜をしごいて平滑にするとともに、主部91内周の樹脂がワイヤ中心方向に圧力をかけ、塗膜がワイヤ1に圧着され、そのため、樹脂の下層部分は梨子地状面aにくさびのように強固に密着する。
【0033】
この第2段ダイス9bでの圧着しごきにより塗膜は所定の厚さに仕上げられ、したがって、図5(b)のように円周方向の塗膜厚みが均一になり、偏肉比すなわち最大厚みと最小厚みの比が2.0以内でかつ長手方向での線径(塗膜を含めた径)のバラツキの少ない樹脂塗膜3を有する塗装ワイヤとなり、下流のオーバーフロー式の水冷槽からなる冷却装置10で冷却されて製品となる。
【0034】
ダイスとして1段だけを用いた場合には、圧着しごき効果はあるものの、下流側への余剰樹脂の持出しを防止することができず、その結果、長手方向で節のように部分的に太い領域が発生する不都合が生じたり、塗膜厚が仕様よりも太くなってしまう不具合が生ずる。そこで本発明は、2段ダイス9a,9bとし、第1段ダイス9aで下流への余剰樹脂の持出しを許容しつつ、軽く圧着しごきを行い、第2段ダイス9bで仕上げの圧着しごきを行なうのである。
【0035】
第2段ダイス9aのダイス穴径d2を前記範囲よりも小さくすると、ワイヤ表面の樹脂が削られすぎ、ワイヤ表面が露出してしまうため不可である。逆に前記範囲より大きくすると、圧着しごき効果がなく樹脂がそのまま素通りしてしまうか、主部91と塗装されたワイヤとのすき間にある樹脂が第2段ダイス9aの下流へと持ち出されてしまい、前記したように不良が発生する。
【0036】
また、第1段ダイス9aのダイス穴径d1を第2段ダイス9aのダイス穴径d2に対して前記範囲にするのは、d2/d1を1.05より大きくすると、圧着しごき効果がなくなり、1.02より小さくすると、第1段ダイス9aでの圧着しごきが強すぎるため、第2段ダイス9aにおいて前記したワイヤ1とダイス穴91間への樹脂の充填ができず、塗装樹脂の表面が削りとられてワイヤが露出するからである。
【0037】
前記2段のダイス9a,9bの温度は、樹脂の融点よりも約40〜80℃低い温度に保持することが好ましい。その理由は、ダイス温度が常温であった場合には、これに前記のようにダイス内に充填されている樹脂3’,3”が固まってしまい、圧着しごき効果が高くなりすぎるためである。逆にダイス温度が融点付近であると、ダイス内に充填されている樹脂3’,3”の粘性が低下し、圧着しごき効果が低下するからである。
【0038】
ワイヤ1が持ちこむ熱量は加熱装置の加熱温度と線速により決定され、持ちこむ熱量がダイスおよびホルダ90を通しての放熱による冷却と等しい場合には2段のダイス9a,9bの配置位置を適切に設定すればよいが、等しくない場合もあるので、好ましくはダイス9a,9bを外部の温度制御手段92により操業中樹脂の融点よりも約40〜80℃低い温度に保たれるように加熱あるいは冷却する。
【0039】
温度制御手段92は任意であり、たとえばホルダ90にパイプを巻き付け、それに冷却水または温水を選択的に通水させることが挙げられる。持込み熱量が少ない場合には、ホルダ90を断熱材で覆って放熱を減少させたり、ヒータを装着して100〜150℃程度に保温したりすればよい。
【0040】
なお、ワイヤがめっきワイヤとりわけZn−Al合金めっきである場合、この慣用の溶融めっき方式で行なえばよい。すなわち、Znめっき浴とAlめっき浴を直列状に配して線条体本体1を順次それらの浴中を通し、その後合金化処理を行なう2槽式、あるいは、ZnとAlを混合した浴中にワイヤを通したのち合金化処理する1槽式のいずれでもよい。めっき条件は通常のものでよく、たとえば、浴温435〜460℃、線速20〜30m/minなどに設定して行なえばよいが、耐食性と加工性の双方の特性を満たすために浴中のAl濃度は5〜12%とすることが好ましい。
【0041】
このようなめっきワイヤを使用することにより、Zn−AL合金めっき層によるすぐれた耐食性と、めっき層と密着性のよい外層の熱可塑性ポリエステル樹脂層の耐食性との相乗効果により、きわめて良好な耐食性を有する。すなわち、ワイヤは表面にアルミ濃度が6.0〜12.0%のZn−Al合金めっき層を有しているため耐食性にすぐれ、さらにこのZn−Al合金めっき層の上の熱可塑性ポリエステル樹脂層が2段ダイスによる圧着しごきを用いた粉体塗装法で施されているので、平滑で均一な厚さとなり、強固な密着性によりZn−Al合金めっき層と一体化し、すぐれた耐侯性と強固な密着性の劣化が少ない。したがって、傷がついてもその箇所からの腐食の拡がりを抑止することができるものである。
【0042】
なお、実施例は1本のワイヤを塗装する場合に限られず、複数本のワイヤを並列上に送って塗装する場合を含んでいる。この場合、表面処理装置6と圧着しごき装置9は各ワイヤの走行経路ごとに設ける。
【0043】
【実施例】
鉄線に1槽式によりZn−Al合金めっきを施し、3.2mm、4.0mm、5.0mmおよび6.0mmの4種類のワイヤを得た。Zn−Al合金めっきの条件は、Al濃度10%、浴温440℃、線速25m/minとした。
次に、上記Zn−Al合金めっきワイヤに塗膜厚み80μmの飽和ポリエステル樹脂塗装をインラインで連続的に施した。
【0044】
第1工程として、粒度#120のアルミナ粉を使用してエアショットブラストを行なった。エアブラスト条件は、エア圧:0.4MPa、流量:25Nm3/min、3方向とした。これにより表面粗度15μmの梨子地状面を得た。
【0045】
加熱装置として高周波加熱炉を使用し、出口温度(ワイヤ表面温度)が290℃となるように温度を設定した。
飽和ポリエステル樹脂としては、イソフタレル酸成分が15モル%共重合した固有粘度0.9のポリエチレンイソテレフタレート重合体(平均粒径130μm)の粉末(融点240℃)を使用した。これを長さ0.3mの槽に収容し、槽の出口側から樹脂の溶融に十分な距離をおいて直径50mmの筒状ホルダを配し、この中に第1段ダイスと第2段ダイスを相互に40mmの間隔をおいて配した。第1段ダイスと第2段ダイスは表2の仕様とした。線速は40m/minとした。
【0046】
筒状ホルダにパイプを巻き付けた温度制御手段により、操業中、第1段ダイスと第2段ダイスが樹脂の融点より60℃低い温度となるように制御した。
筒状ホルダの下流に20℃の水を満たした水槽を設け、これに塗装ワイヤを通過させ、巻き取った。
【0047】
【表2】
【0048】
以上の工程により得られた塗装ワイヤは、各ワイヤ径とも、表面粗さ5.1μm(JIS B0651 触診式表面粗さ測定器による)以下、長手方向の径差が0.03mm以下、塗膜偏肉比が1.6以下であった。塗膜を目視したところピンホールは皆無(0/10m)であり、クロス断面観察を行なった結果、塗膜の空隙は0か所であった。しかも、製造速度は40m/minである。
【0049】
比較のため、直径5.0mmのワイヤにつついて、ダイスをダイス穴径5.4mmの1段ダイスのみとし、前記条件にて塗装ワイヤを製造した。その結果、表面粗さ1.9μm、長手方向の径差が0.15mm、塗膜偏肉比が1.9で、本発明よりも大幅に劣っていた。
【0050】
得られた塗装ワイヤ(ワイヤ径5.0mm)を性能試験した。
塩水噴霧試験:
試験期間3000時間とした。その結果、白錆および膨れはまったくなく健全な状態であった。
野外暴露試験:
サンプルについて試験前に被覆にクロスカットの傷を入れ、それらを海岸から20mの位置にサンプルを配し、1年間暴露した。
その結果、サンプルは外観は光沢を維持し、めっきとの密着性が保持され、Zn−Al合金めっきには異常が生じていなかった。
以上の点から、本発明の塗装ワイヤは高い耐侯性と良好な密着性によりすくれた耐食性が得られることがわかる。
【0051】
加工性を見るため、被覆を削らないサンプルにつき、ワイヤ径にて曲げを施し、ついで、曲げ部分を樹脂に埋込み、長手方向に沿って半割し、断面観察を行なった。その結果、サンプルは曲げ部の外側のめっき表面にもまったく亀裂が入っていなかった。
これはZn−Al合金めっきであること、樹脂の溶融加熱のための熱処理が適切であること、樹脂の密着性が良好であることによることは明らかである。
【0052】
【発明の効果】
以上説明した本発明の請求項1によるときには、ワイヤの表面を粗面状にした後、そのワイヤを加熱し、該加熱ワイヤに熱可塑性樹脂を付着させ溶融しはじめた状態で塗装製品ワイヤ径よりも適度に大きなダイス径を有する2段のダイスを通過させ、ワイヤ外径とダイス穴の間隙に充填された塗装樹脂を圧着しごきするので、かかる2段階圧着しごきにより、表面が平滑で、塗膜にピンホールや空気を含まず、長手方向での径が均一でかつまた偏肉比の小さい高品質の塗装ワイヤを高い製造速度で製造することができ、また設備長も短くすることができるというすぐれた効果が得られる。
特に、上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05であるため、下流側の第2ダイスにほど好い量の樹脂を供給してワイヤとダイス間に充填させ、上流側の軽い圧着しごきと下流側の仕上げ圧着しごきとによって、密着性がよく、長手方向での径が均一でかつまた偏肉比の小さい塗膜を形成できるというすぐれた効果が得られる。
【0056】
請求項2によれば、ワイヤの供給側から巻取り側の走行ラインに、エアショットブラストと高周波加熱炉と熱可塑性樹脂粉末槽と圧着しごき装置および冷却装置を順次に配してなり、前記圧着しごき装置が、筒状ホルダ内に、熱可塑性樹脂粉末槽を通過する間に付着し溶融を開始した樹脂層をワイヤに圧着しつつしごくための2段ダイスを配してなり、2段ダイスは、上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05であるので、表面が平滑で、塗膜にピンホールや空気を含まず、長手方向での径が均一でかつまた偏肉比の小さい高品質の塗装ワイヤを高い製造速度で製造することができる構造が簡単で設備長も短い装置を提供できるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による粉体塗装ワイヤの製造方法と装置を模式的に示す断面図である。
【図2】表面処理工程を終えたワイヤの状態を示す側面図である。
【図3】(a)は表面処理工程を終えためっきなしワイヤの拡大断面図、(b)は表面処理工程を終えためっき付きワイヤの拡大断面図である。
【図4】圧着しごき装置とこれによる圧着しごき状態を示す断面図である。
【図5】(a)は第1段ダイスの通過直後の状態を示す断面図、(b)は第2段ダイスの通過直後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ
2 耐食めっき層
3 熱可塑性樹脂塗膜
6 表面処理装置
7 加熱装置
8 熱可塑性樹脂粉末槽
9 圧着しごき装置
9a 第1段ダイス
9b 第2段ダイス
90 ホルダ
Claims (2)
- ワイヤの表面を粗面状にした後、そのワイヤを加熱し、該加熱ワイヤに熱可塑性樹脂を付着させ溶融しはじめた状態で上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05、かつ第2ダイスのダイス穴径d2と塗装製品ワイヤ径Dの比(d 2 /D)が1.02〜1.22である2段のダイスを通過させ、ワイヤ外径とダイス穴の間隙に充填された塗装樹脂を圧着しごきすることを特徴とする粉体塗装ワイヤの製造方法。
- ワイヤの供給側から巻取り側の走行ラインに、エアショットブラストと高周波加熱炉と熱可塑性樹脂粉末槽と圧着しごき装置および冷却装置を順次に配してなり、前記圧着しごき装置が、筒状ホルダ内に、熱可塑性樹脂粉末槽を通過する間に付着し溶融を開始した樹脂層をワイヤに圧着しつつしごくための2段ダイスを配してなり、2段ダイスは、上流側の第1ダイスのダイス穴径d1と下流側の第2ダイスのダイス穴径d2の比(d1/d2)が1.02〜1.05であることを特徴とする粉体塗装ワイヤの製造装置。
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JP2000183415A JP4211202B2 (ja) | 2000-06-19 | 2000-06-19 | 粉体塗装ワイヤの製造方法および装置 |
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