JP3877500B2 - 封着材料用ガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低温で作業可能なSnO及びP2O5を主成分とするリン酸スズガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、低温の封着材料については、環境問題の観点から鉛を含まない組成のものが求められており、特に、SnO及びP2O5を含む低融点ガラスは電子・電気部品間の溶融シールに適したガラスである。この低融点ガラスのP2O5の原料はコスト面などからリン酸水溶液を使用している。しかし、原料中に多量の水分が含まれたまま加熱溶融を行うと、原料中に含まれる水分が発泡し、溶融雰囲気が酸化雰囲気となってしまう。このように、溶融条件が酸化雰囲気となると、低融点ガラスに含まれるSnOが酸化されSnO2となり、低融点ガラス中に結晶が析出してしまうため、電子・電気部品間の溶融シール用の低融点ガラスとしては、強度の低下などの点から使用できないものとなってしまう。
【0003】
そこで、リン酸水溶液を原料として使用し、溶融時の発泡及びSnOの酸化を防止した方法が種々検討され、特開2000−44253号が開発された。
【0004】
特開2000−44253号に開示の技術は、SnO−P2O5系ガラスやSnO−B2O3−P2O5系ガラスなどのSnOを主成分とするガラスの製造方法において、石英ガラス製ルツボに正リン酸(液体)を入れ、これに粉末原料を加えて混合した後、120℃で乾燥させ、次にこの空気中で600℃までゆっくりと加熱し粘稠な液となったところで良く撹拌して予備溶融物を生成する。そして、この予備溶融物の入ったルツボに蓋をし、ルツボ内に窒素ガスを導入しながら溶融するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術では、原料を溶融する際に120℃での乾燥処理と600℃での加熱処理(空気中)を行い、原料中の水分を取り除いた予備溶融物を生成してから、窒素ガス雰囲気で予備溶融物を溶融しており、SnO含有ガラスの製造方法が複雑となっていた。また、溶融雰囲気を不活性化するために窒素ガスをルツボ内に供給しながら行っていたため、溶融設備も複雑にならざるを得なかった。
【0006】
したがって、本発明はP2O5の原料としてリン酸水溶液を使用した場合の溶融時の発泡を容易に抑え、かつガラス中に含まれるSn2+の酸化を容易に防ぐリン酸スズガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、SnOとP2O5の組成を有する封着材料用ガラスの製造方法において、粉末原料と還元剤とリン酸水溶液とを混合しスラリーとする工程と、このスラリーに含まれる水分を乾燥し粒径2〜30mmの顆粒を形成する工程と、この顆粒を溶融する工程を具備したものである。
【0008】
封着材料用ガラスの原料に液体のリン酸水溶液を使用したことにより、原料をスラリー状として均質化することが容易となり、このスラリー状の原料を溶融前に乾燥させ顆粒状の原料とし、原料中の水分量を低減させ原料を溶融するときの初期に生じていた発泡を抑制することができ、溶融雰囲気を酸化雰囲気となることを防止することができる。また、原料を顆粒状としたことにより、以後の取扱い時に粉塵などの発生を防ぐことができるので、取扱いが容易となる。さらに、原料中に還元剤を含有するようにしたので、原料を溶融する雰囲気を還元雰囲気に維持することができる。
【0009】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明において、還元剤を有機系のものとしたものである。このように、還元剤を有機系とすることにより、顆粒原料を溶融するときに、還元剤は完全に燃焼されガラス中に残存しないので、得られる封着材料用ガラスの組成に悪影響を及ぼすことがない。
【0010】
請求項3及び4に対応する発明は、請求項2に対応する発明において、還元剤の含有量をSnOの質量に対して0.2質量%以上3.5質量%未満、又はSnO 1molに対して炭素数で0.01mol以上0.15mol未満としたものである。このように封着材料用ガラス原料に投入する還元剤の量を制限することにより、顆粒状の原料を溶融するときにガラス中に含まれるSn2+の酸化又は還元を防ぐことが可能となる。
【0011】
請求項5に対応する発明は、請求項2ないし4のいずれかに対応する発明において、スラリーを乾燥させる温度を150℃未満としたものである。このように乾燥温度を制限することにより、有機系還元剤を乾燥処理時に燃焼させることがないので、顆粒原料溶融時に還元剤の効果を有効に発揮することができる。
【0012】
請求項6に対応する発明は、請求項1ないし5のいずれかに対応する発明において、顆粒中の含水率を5質量%以下としたものである。このように含水率を5質量%以下としたことにより、顆粒原料溶融初期の発泡をより確実に抑えることが可能となる。
【0013】
なお、以上の説明では主成分であるSnOとP2O5との合量について記載しなかったが、SnOとP2O5の合量が50mol%以上となると、溶融初期の発泡および発泡によるSn2+の酸化が顕著となる。したがって、本発明の封着材料用ガラスの製造方法は、SnOとP2O5の合量が50mol%以上となるときに特に有効である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明においてP2O5の原料にはリン酸水溶液を使用する。リン酸水溶液は粉末のピロリン酸スズやリン酸ホウ素などと比べ安価であり、また、液相を含む調合となるためバッチの均質度が向上するという利点がある。リン酸水溶液の濃度は特に限定しないが、汎用性や水分除去の負荷などを勘案して、JIS K1449規格に定める75%、85%及び89%のものから選定すれば良い。SnOの原料としては酸化第一スズ(SnO)などの2価の状態のものを使用する。
【0015】
バッチの調整は、封着材料用ガラスの主成分であるP2O5とSnOを所定量となるように原料を調整し、任意成分として含有できるZnO、B2O3及びAl2O3などを所定量となるように原料を調整する。次に、リン酸水溶液以外の粉末原料に有機系還元剤を加えて混合した後、リン酸水溶液を加えて撹拌してスラリー原料を形成する。このスラリー状のまま溶融すると上記したように水分の影響で溶融初期にガラスが激しく発泡しルツボから原料が噴き出して炉材を劣化させたり、溶融中にSnOの酸化が促進されSnO2を形成されてしまう。本発明のような、P2O5−SnO系の封着材料用ガラスにSnO2が含まれていると、封着材料の結晶化の原因となるため、良好な封着を行えなくなるので好ましくない。
【0016】
そこで、スラリー原料を乾燥させるが、スラリー原料には有機系の還元剤が含まれているので、乾燥温度が高くなりすぎるとスラリー原料の乾燥段階で還元剤が燃焼し、溶融時に還元剤としての効果が得られなくなるので、乾燥温度は150℃未満とする。しかし、乾燥温度が100℃未満であると水分の蒸発速度は極端に低下し工業的な操業は困難となるため好ましくない。また、乾燥温度が100℃以上150℃未満であっても、大気中で乾燥処理を行った場合、蒸発速度が遅いため、減圧環境下で乾燥処理することが好ましい。さらに、乾燥処理のときにスラリー原料を撹拌することで、乾燥面積が大きくなるので乾燥時間を短縮することができる。
【0017】
この乾燥処理によりスラリー原料から顆粒原料を形成する。この顆粒原料の含水率は0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。含水率が5質量%を越えてしまうと、上記した溶融中の発泡が盛んに生じるようになり、含水率が0.1質量%未満でも溶融中に何の問題も生じないが、経済性を考慮すると含水率は0.1質量%以上が好ましい。この結果、得られる顆粒原料はスラリー原料を乾燥するときに撹拌しているので、2mm〜30mm程度の粒径を有するようになる。このように原料を顆粒状としたことにより、溶融ルツボへの原料を投入するときの粉塵の発生を低減することができ、また、顆粒原料なのでルツボ内に原料を投入しても顆粒原料間に間隙が形成されることにより、溶融初期の発泡をさらに抑えることができる。
【0018】
また、顆粒原料中には有機系還元剤が含まれているので、溶融中にこの有機系還元剤が燃焼するときに、ルツボ中雰囲気やルツボを収容する炉内雰囲気に余剰に存在する酸素と反応して炭酸ガスとして気化したり、未反応のまま気化したりして溶融中のルツボ内及びその周辺に不活性雰囲気が形成されSnOの酸化を抑制することができる。また、還元剤としては溶融後の封着材料用ガラスの組成に悪影響を及ぼさない成分であることが必要であり、本発明者による試験では有機系の還元剤の中で、特に、グルコース、キシロース、キシリトール、サッカロース、ソルビトールなどの糖類が良好な結果が得られた。この還元剤の配合比はガラス中のSnOの質量に対して、0.1質量%以上5質量%未満、又は、ガラス中のSnO 1molに対して炭素数で0.01mol以上0.15mol未満である。
【0019】
還元剤の配合比がSnOの質量に対して0.1質量%未満またはSnO 1molに対して0.01mol未満では十分な還元作用が得られず、SnOの一部がSnO2に酸化され、封着材料として使用するときに結晶が析出するので好ましくない。また、SnOの質量に対して5質量%以上またはSnO 1molに対して炭素数が0.15mol以上ではSnOが還元されて金属スズが生成しやすくなるため好ましくない。金属スズが生成された封着材料用ガラスを用いて封着材料を形成し使用すると、封着後に金属スズの部位が強度的に弱くなり、外部からの衝撃を受けた際に封着層が破損しやすくなる。また、電気的な絶縁性が損なわれるという問題も生じてしまう。したがって、SnOの質量に対しては0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、SnO 1molに対する炭素数としては0.03mol以上0.10mol以下が好ましい。
【0020】
(実施例1)モル%でSnO 58.9%、P2O5 31.6%、ZnO 3.7%、Al2O3 2.3%、B2O3 3.5%の割合で酸化物換算で10kgとなるように、89%正リン酸及び粉末原料を秤量し、表1に示す還元剤をSnO 1molに対して添加する。
【0021】
まず、粉末原料と還元剤とを内容積12リットル・(有効容積6リットル)で撹拌機能を有する減圧可能な容器に入れ3分間撹拌する。その後、この容器内に89%正リン酸を加え10分間撹拌し、次いで、撹拌したままこの容器内を30℃/分の加熱スピードで表1に示した乾燥温度まで昇温し、乾燥温度を維持しながら10秒程度で550hPaに減圧し、減圧開始から35分から45分間乾燥処理を行い含水率2.2質量%から4.9質量%の灰白色で粒径2mm〜30mmの顆粒原料を得た。この顆粒原料の含水率は赤外線加熱での乾燥による減量によって測定したものである。
【0022】
そして、この顆粒原料を石英製ルツボに入れて1100℃×1時間溶融し、急冷して封着材料用ガラスを成形し、このガラスを粉砕し105μm以下の粒径のガラス粉末とし、このガラス粉末80体積%と45μm以下のコージェライト粉末20体積%とを配合し封着材料を得た。この材料3.4gを金型で直径10mmの円柱(円柱サンプル)を成形してアルミナ基板上に乗せ450℃で10分間加熱した。本発明のSnO−P2O5系の封着物としては、この加熱により封着材料用ガラスが流動しその直径が20mm以上であり、かつこの流動物の表面に光沢があれば良好な封着が可能である。
【0023】
【表1】
【0024】
この表1からわかるように、実施例1−1ないし実施例1−9については、顆粒原料の含水率が2.2質量%から4.9質量%であり、溶融初期の発泡もあまりみられず良好に溶融することができた。また、SnO 1molに対して、炭素数で0.01mol〜0.15molを、又はSnOの質量に対して0.23質量%〜3.38質量%をガラス原料に添加すれば、還元剤の種類(ソルビトール、グルコース、キシロース、キシリトール、サッカロース)に関係なく、溶融ガラスの表面には未溶融物が発生せず、Sn2+が酸化も還元もされていなかった。さらに、乾燥温度を105℃〜140℃とし、乾燥時間を35分〜45分とすれば、得られた顆粒原料に黒く着色した部分もみられず、還元剤も燃焼していなかった。
【0025】
なお、これらの封着材料の熱膨張係数(30〜250℃)を測定したところ、いずれも70〜73×10-7/℃となり熱膨張係数の点からもアルミナ基板の接着に好適な材料であった。
【0026】
これらの条件で溶融した封着材料用ガラスから円柱サンプル作成したところ、流動径及び表面状態も優れたものが得られ、封着材料用ガラスとして良好な封着が可能であることも確認できた。
【0027】
(比較例1)この実施例1の比較例として、還元剤の配合量を本発明の範囲以外としたもの、乾燥温度を本発明の範囲以外としたもの容器内圧力を大気圧としたものについて評価した結果を表2に示す。なお、封着材料用ガラスの原料は実施例1と同じものを使用した。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、比較例1−1のように、還元剤の配合量を0.01molよりも少なくする、又は0.2質量%よりも少なくすると、溶融ガラス表面に4価のピロリン酸スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、流動したガラスには一部結晶が析出していたので、表面状態も光沢のないものとなっていた。これとは逆に、比較例1−2のように還元剤の配合量を0.15mol以上とする、又は3.5質量%以上とすると、溶融ガラス表面に金属スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、表面状態も凹凸の生じたものとなっていた。
【0030】
次に、比較例1−3のように乾燥温度を150℃を越える160℃とした場合、スラリーの乾燥中に還元剤の一部が燃焼し顆粒原料が黒色に着色し、この顆粒原料を溶融しても溶融中に必要な還元効果が得られず、溶融ガラス表面には4価のピロリン酸スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、表面状態も光沢のないものとなっていた。これとは逆に、比較例1−5のように乾燥温度を100℃より低くした場合、乾燥時間を300分としても顆粒原料の含水率を5質量%以下とすることができず、溶融初期に発泡が生じルツボから原料が噴き出すのが確認された。この発泡のためルツボ周辺の雰囲気が酸化雰囲気となり、溶融ガラス表面に4価のピロリン酸スズが生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、比較例1−5よりも結晶の析出が多く表面状態も凹凸の生じたものとなっていた。
【0031】
また、比較例1−4のように乾燥温度を本発明と同じ温度範囲としても、減圧をせず大気圧で処理した場合、乾燥時間を300分としても顆粒原料の含水率を5質量%以下とすることができず、比較例1−5と同じく封着材料としては使用できないものが得られてしまった。
【0032】
(実施例2)モル%でSnO 50.3%、P2O5 22.0%、ZnO 4.6%、、B2O3 23.1%の割合で酸化物換算で10kgとなるように、85%正リン酸及び粉末原料を秤量し、表3に示す還元剤をSnO 1molに対して添加する。
【0033】
まず、粉末原料と還元剤とを実施例1と同様に撹拌機能を有する減圧可能な容器に入れ3分間撹拌する。その後、この容器内に85%正リン酸を加え10分間撹拌し、次いで、実施例1と同様に乾燥温度に維持しながら10秒程度で500hPaに減圧し、減圧開始から25分から45分間乾燥処理を行い含水率2.4質量%から4.9質量%の灰白色で粒径2mm〜30mmの顆粒原料を得た。
【0034】
そして、この顆粒原料を石英製ルツボに入れて950℃×1.5時間溶融し、急冷して封着材料用ガラスを成形し、このガラスを粉砕し105μm以下の粒径のガラス粉末とし、このガラス粉末75体積%と45μm以下のコージェライト粉末25体積%とを配合し封着材料を得た。
【0035】
【表3】
【0036】
この表3からわかるように、実施例2−1ないし実施例2−9については、顆粒原料の含水率が2.4質量%から4.9質量%であり、溶融初期の発泡もあまりみられず良好に溶融することができた。また、SnOとP2 O5の合量を変化させても、SnO 1molに対して、炭素数で0.01mol〜0.15molを、又はSnOの質量に対して0.23質量%〜3.38質量%をガラス原料に添加しすれば、還元剤の種類(ソルビトール、グルコース、キシロース、キシリトール、サッカロース)に関係なく、溶融ガラスの表面には未溶融物が発生せず、Sn2+が酸化も還元もされていなっかた。さらに、乾燥温度を110℃〜140℃とし、乾燥時間を25分〜45分とすれば、得られた顆粒原料に黒く着色した部分もみられず、還元剤が燃焼していなかった。
【0037】
なお、これらの封着材料の熱膨張係数(30〜250℃)を測定したところ、いずれも70〜73×10-7/℃となり熱膨張係数の点からもアルミナ基板の接着に好適な材料であった。
【0038】
これらの条件で溶融した封着材料用ガラスから円柱サンプル作成したところ、流動径及び表面状態も優れたものが得られ、封着材料用ガラスとして良好な封着が可能であることも確認できた。
【0039】
(比較例2)この実施例2の比較例として、還元剤の配合量を本発明の範囲以外としたもの、乾燥温度を本発明の範囲以外としたもの容器内圧力を大気圧としたものについて評価した結果を表4に示す。なお、封着材料用ガラスの原料は実施例2と同じものを使用した。
【0040】
【表4】
【0041】
表4から、比較例2−1のように、還元剤の配合量を0.01molよりも少なくする、又は0.2質量%よりも少なくすると、溶融ガラス表面に4価のピロリン酸スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、表面状態も光沢のないものとなっていた。これとは逆に、比較例2−2のように還元剤の配合量を0.15mol以上とする、又は3.5質量%以上とすると、溶融ガラス表面に金属スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、表面状態も凹凸の生じたものとなっていた。
【0042】
次に、比較例2−3のように乾燥温度を150℃を越える160℃とした場合、スラリーの乾燥中に還元剤の一部が燃焼し顆粒原料が黒色に着色し、この顆粒原料を溶融しても溶融中に必要な還元効果が得られず、溶融ガラス表面には4価のピロリン酸スズが未溶融物として生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、表面状態も光沢のないものとなっていた。これとは逆に、比較例2−5のように乾燥温度を100℃より低くした場合、乾燥時間を300分としても顆粒原料の含水率を5質量%以下とすることができず、溶融初期に発泡が生じルツボから原料が噴き出すのが確認された。この発泡のためルツボ周辺の雰囲気が酸化雰囲気となり、溶融ガラス表面に4価のピロリン酸スズが生じ、円柱サンプルを加熱しても、その流動径が20mmを越えず、比較例2−5よりも結晶の析出が多く表面状態も凹凸の生じたものとなっていた。
【0043】
また、比較例2−4のように乾燥温度を本発明と同じ温度範囲としても、減圧をせず大気圧で処理した場合、乾燥時間を300分としても顆粒原料の含水率を5質量%以下とすることができず、比較例2−5と同じく封着材料としては使用できないものが得られてしまった。
【0044】
【発明の効果】
本発明では、原料にリン酸水溶液を使用しても150℃未満で乾燥処理を行い含水率5質量%以下の顆粒原料としてから原料を溶融するので、溶融初期の原料からの発泡を抑制することができ、かつ原料中に還元剤を含有するようにしたので、溶融雰囲気を還元雰囲気に維持することができる。したがって、封着材料用ガラス中に含まれるSn2+が酸化されずにガラス中に存在するようになるので、良好な封着材料用ガラスを得ることができる。
【0045】
また、封着材料用ガラスへの還元剤の添加量を規定したことにより、原料を溶融するときにガラス中に含まれるSn2+の酸化又は還元を防ぐことができ、良好な封着材料用ガラスを得ることができる。
【0046】
すなわち、本発明の製造方法を使用することにより、SnO及びP2O5を主成分とするガラス、特に低温で作業可能な封着材料に配合するガラスを工業規模で安価に生産することが可能となる。また、本発明で製造されるガラスは低温での封着が可能であるので、各種フィラーを配合することによりIC、蛍光表示管、プラズマディスプレー、磁気ヘッドなどの電子部品の封着用に好適である。
Claims (6)
- SnOとP2O5の組成を有する封着材料用ガラスの製造方法において、粉末原料と還元剤とリン酸水溶液とを混合しスラリーとする工程と、このスラリーに含まれる水分を乾燥し粒径2〜30mmの顆粒を形成する工程と、この顆粒を溶融する工程とを具備したことを特徴とする封着材料用ガラスの製造方法。
- 前記還元剤が有機系のものであることを特徴とする請求項1記載の封着材料用ガラスの製造方法。
- 前記有機系の還元剤が封着材料用ガラスに含まれるSnOの質量に対して0.2質量%以上3.5質量%未満であることを特徴とする請求項2記載の封着材料用ガラスの製造方法。
- 前記有機系の還元剤が封着材料用ガラスに含まれるSnO 1molに対して炭素数で0.01mol以上0.15mol未満であることを特徴とする請求項2記載の封着材料用ガラスの製造方法。
- 前記スラリーを乾燥させる温度を150℃未満としたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の封着材料用ガラスの製造方法。
- 前記顆粒中の含水率が5質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の封着材料用ガラスの製造方法。
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