JP3876694B2 - コモンレール式燃料噴射システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧供給ポンプからコモンレールを経てインジェクタまでの高圧配管経路内の燃料圧が限界設定圧を超えた際に開弁するプレッシャリミッタを備えたコモンレール式燃料噴射システムに関するもので、特にコモンレール式燃料噴射システムの信頼性および安全性の向上に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高圧供給ポンプによってコモンレールに高圧燃料を加圧圧送して蓄圧すると共に、そのコモンレール内に蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒毎に取り付けられたインジェクタに分配し、インジェクタからエンジンの各気筒の燃焼室内へ高圧燃料を噴射供給するコモンレール式燃料噴射システムが公知である。なお、高圧供給ポンプには、高圧供給ポンプの入り口に吸入される燃料の吸入量を調整することで、高圧供給ポンプからコモンレールへの燃料の圧送量を変更する入り口調量弁が設けられている。
【0003】
ここで、ノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁弁よりなる入り口調量弁を採用した場合には、入り口調量弁に電子制御ユニット(ECU)からポンプ駆動信号を送るワイヤリングハーネス(W/H)の断線やECUの制御異常等により入り口調量弁が全開異常となったり、あるいは入り口調量弁の弁体と弁座との間に異物が噛み込んで入り口調量弁が全開異常となったりすると、図7および図8のタイミングチャートに示したように、高圧供給ポンプが燃料を過剰圧送(全量圧送)することになる。
【0004】
そして、高圧供給ポンプの過剰圧送状態が長時間継続すると、高圧供給ポンプの異常故障が生じたり、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト)が生じたりするので、このような高圧供給ポンプの過剰圧送(全量圧送)時に備えて、コモンレール式燃料噴射システムには、コモンレール内の燃料圧が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるためのプレッシャリミッタを搭載し、コモンレール式燃料噴射システムの信頼性を保証している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、プレッシャリミッタの作動(開弁)による燃料抜けと高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)による燃料漏れとの識別ができず、プレッシャリミッタの開弁による燃料抜けも、図7および図8のタイミングチャートに示したように、漏れ検出ロジックにおいて燃料漏れとして検出してしまい、エンジン停止等のフェイルセーフを実施しているが、運転者(ドライバー)には余分な不安感を与えるという問題が生じている。例えば高圧供給ポンプの過剰圧送によってプレッシャリミッタが開弁した場合には、車両の退避走行(リンプホーム)を実現させることができるように、車両の継続走行を実施できるようにすることが望ましい。
【0006】
【発明の目的】
本発明の目的は、リンプホームを実現させるために車両を継続走行させることのできるコモンレール式燃料噴射システムを提供することにある。また、圧力安全弁の作動による圧力低下または高圧供給ポンプの過剰圧送状態を圧力レベルの挙動から判別して漏れ判定項目から分離すると共に、フェイルセーフの制御内容を異なった内容とすることで、信頼性および安全性を向上させることのできるコモンレール式燃料噴射システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、漏れ量決定手段においては、運転条件検出手段によって検出されるエンジンの運転条件、運転状態検出手段によって検出される高圧供給ポンプの運転状態、または燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧のうちの少なくとも1つ以上のパラメータに基づいて、高圧配管経路からの燃料の漏れ量が算出される。
【0011】
そして、漏れ量決定手段によって算出された燃料の漏れ量が所定値よりも多いと判定れた時に、燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧が所定圧力値を超えていたと判定された場合には、圧力安全弁の開弁による圧力低下または高圧供給ポンプの過剰圧送状態であると判断して、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施する。
【0012】
それによって、高圧供給ポンプの過剰圧送によって圧力安全弁が開弁した場合、または圧力安全弁の開弁により高圧配管経路内の燃料圧が低下した場合、つまり圧力安全弁の開弁による燃料抜けの場合には、エンジンを停止するのではなく、エンジン出力を制限することにより、リンプホームを実現させるために車両を継続走行させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、漏れ量決定手段によって算出された燃料の漏れ量が所定値よりも多く、且つ燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧が所定圧力値以下の場合には、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常が生じていると判断して、エンジンを停止する等のフェイルセーフを実施する。これにより、コモンレール式燃料噴射システムの信頼性および安全性を更に向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、所定圧力値は、コモンレール式燃料噴射システムにおいて通常使用する範囲の最大値よりも大きく、且つ限界設定圧に相当する圧力安全弁の開弁圧よりも小さい圧力値であることを特徴としている。これにより、所定圧力値が、コモンレール式燃料噴射システムにおいて通常使用する範囲内の圧力値であったり、また、限界設定圧に相当する圧力安全弁の開弁圧以上の圧力値であったりすることはなく、更に、燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧が所定圧力値を超えた時には、高圧配管経路内の燃料圧が必ず異常高圧であると判断できるので、燃料圧センサの検出精度に係わらず、コモンレール式燃料噴射システムの制御精度を向上することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、所定圧力値は、燃料圧センサの出力特性のバラツキまたは圧力安全弁の開弁特性のバラツキに応じて各車両毎または各エンジン毎に設定される圧力値であることを特徴としている。これにより、燃料圧センサの単品独自の出力特性または圧力安全弁の単品独自の開弁特性を考慮した所定圧力値を設定できるので、燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧が所定圧力値を超えた時には、高圧配管経路内の燃料圧が必ず異常高圧であると判断できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、噴射量決定手段においては、運転条件検出手段によって検出されるエンジンの運転条件に基づいて、各気筒のインジェクタからエンジンに噴射する燃料の噴射量が算出される。そして、リーク量決定手段においては、運転条件検出手段によって検出されるエンジンの運転条件、噴射量決定手段によって算出された燃料の噴射量、および燃料圧センサによって検出される高圧配管経路内の燃料圧に基づいて、高圧配管経路からの燃料のリーク量が算出される。これにより、高圧配管経路からの燃料のリーク量を精度良く算出することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、漏れ量決定手段においては、運転条件検出手段によって検出されるエンジンの運転条件、噴射量決定手段によって算出された燃料の噴射量、圧送量決定手段によって算出された燃料の圧送量、およびリーク量決定手段によって算出された燃料のリーク量に基づいて、高圧配管経路からの燃料の漏れ量が算出される。これにより、高圧配管経路からの燃料の漏れ量を精度良く算出することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[実施例の構成]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。ここで、図1はコモンレール式燃料噴射システムの全体構成を示した図である。
【0019】
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムは、多気筒ディーゼルエンジン等の多気筒内燃機関(以下エンジンと言う)1の各気筒毎に搭載された複数個(本例では4個)のインジェクタ2と、エンジン1により回転駆動されるサプライポンプ3と、このサプライポンプ3より吐出された高圧燃料を蓄圧する蓄圧室を形成するコモンレール5と、各気筒のインジェクタ2およびサプライポンプ3を電子制御する電子制御ユニット(本発明のエンジン制御手段に相当する:以下ECUと呼ぶ)10とを備えている。なお、サプライポンプ3からコモンレール5を経て各気筒のインジェクタ2までの高圧配管内の燃料通路は、本発明の高圧配管経路に相当する。
【0020】
各気筒のインジェクタ2は、コモンレール5より分岐する複数の分岐管(高圧配管経路)16の下流端に連結された高圧パイプ(図示せず)に接続され、コモンレール5に蓄圧された高圧燃料をエンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給する燃料噴射ノズルである。これらのインジェクタ2からエンジン1への燃料の噴射は、インジェクタ2内の燃料通路の途中に設けられた電磁式アクチュエータとしての噴射制御用電磁弁(図示せず)への通電および通電停止(ON/OFF)により電子制御される。つまり、各気筒のインジェクタ2の噴射制御用電磁弁が開弁している間、コモンレール5に蓄圧された高圧燃料がエンジン1の各気筒の燃焼室内に噴射供給される。
【0021】
サプライポンプ3は、エンジン1のクランク軸(クランクシャフト)11の回転に伴ってポンプ駆動軸12が回転することで燃料タンク9内の燃料を汲み上げる周知のフィードポンプ(低圧供給ポンプ:図示せず)と、ポンプ駆動軸12により駆動されるプランジャ(図示せず)と、このプランジャの往復運動により燃料を加圧する加圧室(プランジャ室:図示せず)とを有している。そして、サプライポンプ3は、フィードポンプにより吸い出された燃料を加圧して吐出口からコモンレール5へ高圧燃料を吐出する高圧供給ポンプである。このサプライポンプ3の加圧室への燃料流路の入口側には、その燃料流路を開閉することで、サプライポンプ3からコモンレール5への燃料の吐出量を変更する電磁式アクチュエータとしての入り口調量弁4が取り付けられている。
【0022】
入り口調量弁4は、図示しないポンプ駆動回路(EDU)を介してECU10からの制御信号(ポンプ駆動信号)によって電子制御されることにより、サプライポンプ3の加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整する吸入量調整用電磁弁(ポンプ吸入弁)で、各インジェクタ2からエンジン1へ噴射供給する噴射圧力(燃料圧)に相当するコモンレール5内の圧力(以下コモンレール圧と言う)を変更する。その入り口調量弁4は、通電が停止されると弁状態が全開状態となるノーマリオープンタイプのポンプ流量制御弁(電磁弁)である。
【0023】
コモンレール5には、連続的に噴射圧力に相当する高い圧力が蓄圧される必要があり、そのために燃料配管(高圧配管経路)13を介して高圧燃料を吐出するサプライポンプ3の吐出口と接続されている。なお、インジェクタ2からのリーク燃料およびサプライポンプ3からのリーク燃料は、リーク配管(低圧通路)14を経て燃料タンク9にリターンされる。また、コモンレール5から燃料タンク9へ燃料をリリーフするリリーフ配管(低圧通路)15には、コモンレール圧が限界蓄圧圧力(限界設定圧)を超えることがないように圧力を逃がすためのプレッシャリミッタ6が取り付けられている。
【0024】
プレッシャリミッタ6は、高圧配管経路内の燃料圧、すなわち、実コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁である。このプレッシャリミッタ6は、バルブボディ(弁本体)、このバルブボディに形成された弁孔を開閉するボールバルブ(弁体)、このボールバルブと一体的に動作するピストン、ボールバルブおよびピストンが弁座に着座する側(閉弁方向)に所定の付勢力で付勢するスプリング等から構成されている。そして、ボールバルブのシート径とスプリングのセット荷重とでプレッシャリミッタ6の開弁圧が決定されている。
【0025】
ECU10には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存するROM、RAM、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路およびポンプ駆動回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、各種センサからのセンサ信号は、A/D変換器でA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0026】
そして、ECU10は、エンジン1の運転条件に応じた最適な目標噴射時期(噴射開始時期:T)、各気筒のインジェクタ2からエンジン1に噴射する燃料の目標噴射量(=噴射期間:Q)を決定する噴射量、噴射時期決定手段と、エンジン1の運転条件および目標噴射量に応じた噴射パルス時間(噴射パルス幅:Tq)のインジェクタ噴射パルスを演算する噴射パルス幅決定手段と、インジェクタ駆動回路(EDU)を介して各インジェクタ2の噴射制御用電磁弁にインジェクタ噴射パルスを印加するインジェクタ駆動手段とを備えている。
【0027】
すなわち、ECU10は、回転速度センサ21によって検出されたエンジン回転速度(以下エンジン回転数と言う:NE)およびアクセル開度センサ22によって検出されたアクセル開度(ACCP)等のエンジン運転情報に基づいて目標噴射量を算出し、エンジン1の運転条件および目標噴射量(Q)から算出された噴射パルス幅(Tq)に応じて各気筒のインジェクタ2の噴射制御用電磁弁にインジェクタ噴射パルスを印加するように構成されている。これにより、エンジン1が運転される。
【0028】
また、ECU10は、エンジン1の運転条件に応じた最適な燃料噴射圧力に相当する目標コモンレール圧(Pt)を演算し、ポンプ駆動回路(EDU)を介してサプライポンプ3の入り口調量弁4を駆動する吐出量制御手段でもある。すなわち、ECU10は、回転速度センサ21によって検出されたエンジン回転数(NE)およびアクセル開度センサ22によって検出されたアクセル開度(ACCP)等のエンジン運転情報、更には冷却水温センサ23によって検出されたエンジン冷却水温(THW)の補正を加味して目標コモンレール圧(Pt)を算出し、この目標コモンレール圧(Pt)を達成するために、サプライポンプ3の入り口調量弁4に制御信号を出力するように構成されている。
【0029】
ここで、本実施例では、エンジン1の運転条件を検出する運転条件検出手段として回転速度センサ21、アクセル開度センサ22および冷却水温センサ23を用いて目標噴射量(Q)、噴射時期(T)、目標コモンレール圧(Pt)を演算するようにしているが、運転条件検出手段としてのその他のセンサ類(例えば吸気温センサ、燃料温度センサ24、吸気圧センサ、気筒判別センサ、噴射時期センサ等)からの検出信号(エンジン運転情報)を加味して目標噴射量(Q)、噴射時期(T)、目標コモンレール圧(Pt)を補正するようにしても良い。
【0030】
さらに、より好ましくは、各気筒のインジェクタ2からエンジン1へ噴射供給する実際の燃料噴射圧力に相当する実コモンレール圧(Pc)を検出する燃料圧センサとしてのコモンレール圧センサ25をコモンレール5に取り付けて、そのコモンレール圧センサ25によって検出される実コモンレール圧(Pc)がエンジン1の運転条件によって決定される目標コモンレール圧(Pt)と略一致するようにサプライポンプ3の圧送量、つまり入り口調量弁4の弁開度(SCVK)をフィードバック制御することが望ましい。
【0031】
そして、本実施例のECU10は、サプライポンプ3の運転状態を検出する運転状態検出手段を有し、この運転状態検出手段は、エンジン1の運転条件(例えばエンジン回転数:NE)、入り口調量弁4の弁開度(SCVK)および実コモンレール圧(Pc)から、サプライポンプ3よりコモンレール5に吐出される燃料の圧送量(ポンプ圧送量:Qp)を算出する圧送量決定手段でもある。
【0032】
また、本実施例のECU10は、エンジン1の運転条件(例えばエンジン回転数:NE)、目標噴射量(Q)および実コモンレール圧(Pc)から、サプライポンプ3からコモンレール5を経て各気筒のインジェクタ2までの高圧配管経路からの燃料リーク量(QL)を算出するリーク量決定手段を有している。さらに、本実施例のECU10は、エンジン1の運転条件(例えばエンジン回転数:NE)、目標噴射量(Q)、ポンプ圧送量(Qp)および燃料リーク量(QL)から、サプライポンプ3からコモンレール5を経て各気筒のインジェクタ2までの高圧配管経路からの燃料漏れ量(Qo)を算出する漏れ量決定手段を有している。
【0033】
そして、本実施例のECU10は、燃料漏れレベルに応じてエンジン出力を制限したり、エンジン1を停止したりする等のフェイルセーフを実施するエンジン制御手段を有している。このエンジン制御手段は、燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)以下の時に、高圧配管経路からの正常な燃料漏れを検出する第1燃料漏れ検出手段を有し、この第1燃料漏れ検出手段によって正常な燃料漏れを検出した際には、エンジン1を通常制御する。
【0034】
また、エンジン制御手段は、燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)よりも多く、且つ第2所定値(β)以下の時に、高圧配管経路からの少量の燃料漏れを検出する第2燃料漏れ検出手段を有し、この第2燃料漏れ検出手段によって少量の燃料漏れを検出した際には、リンプホームを実現させる目的で車両を継続走行させるために、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施するようにしている。
【0035】
また、エンジン制御手段は、燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)よりも大きい時に、高圧配管経路からの多量の燃料漏れを検出する第3燃料漏れ検出手段を有し、この第3燃料漏れ検出手段によって多量の燃料漏れを検出した際には、車両の安全性を高めるために、エンジン1を停止する等のフェイルセーフを実施するようにしている。なお、本実施例では、第3燃料漏れ検出手段によって多量の燃料漏れを検出した場合でも、下述するように、実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)を超えた場合には、リンプホームを実現させる目的で車両を継続走行させるために、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施するようにしている。
【0036】
また、エンジン制御手段は、燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)よりも多く、且つ実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)を超えた時に、プレッシャリミッタ6の開弁による圧力低下またはサプライポンプ3の過剰圧送状態を検出する圧力低下または過剰圧送検出手段を有し、この圧力低下または過剰圧送検出手段によってプレッシャリミッタ6の開弁による圧力低下またはサプライポンプ3の過剰圧送状態を検出した際に、リンプホームを実現させる目的で車両を継続走行させるために、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施するようにしている。
【0037】
また、エンジン制御手段は、燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)よりも多く、且つ実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)以下の時に、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常を検出するシステム異常検出手段を有し、このシステム異常検出手段によってシステムの異常状態を検出した際には、車両の安全性を高めるために、エンジン1を停止する等のフェイルセーフを実施するようにしている。
【0038】
[実施例の制御方法]
次に、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムの制御方法を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図2は異常高圧履歴記憶フラグを設定するためのサブルーチンを示したフローチャートで、図3および図4は本発明のコモンレール式燃料噴射システムの制御方法を示したフローチャートである。
【0039】
イグニッションキーをONすると、図2のサブルーチンが起動する。この図2のサブルーチンは、所定時間(例えば10〜40°CA(クランクアングル))毎に実施される。なお、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)は、イグニッションキーをOFF→ON時に0にリセット(初期設定)される。なお、エンジン停止時や所定時間(例えば10秒間)経過時に実施しても良い。先ず、コモンレール圧センサ25の出力信号(検出値)である実コモンレール圧(Pc)を取り込む(ステップS1)。次に、実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(例えば150〜155MPa:Pm)を超えているか否かを判定する(ステップS2)。この判定結果がNOの場合、つまり実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)以下の場合には、ステップS1以下の処理を所定時間毎に繰り返す。
【0040】
また、ステップS2の判定結果がYESの場合、つまり実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)を超えている場合には、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)を1にセットする(ステップS3)。その後に、ステップS1以下の処理を所定時間毎に繰り返す。なお、ステップS3で異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)を1にセットする時には、入り口調量弁4の開弁異常によるサプライポンプ3の過剰圧送(全量圧送)またはプレッシャリミッタ6の開弁による燃料抜け(圧力低下)等の可能性があるため、リンプホームを実現させる目的で車両を継続走行させるために、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを直ちに実施するようにしても良い。
【0041】
また、イグニッションキーをONすると、図3および図4のメインルーチンが起動する。この図3および図4のメインルーチンは、所定時間毎に随時実施される。先ず、エンジンパラメータ(エンジン1の運転条件)であるエンジン回転数(NE)、アクセル開度(ACCP)、エンジン冷却水温(THW)および燃料温度(Qt)等を取り込む。また、サプライポンプ3の圧送量、つまり入り口調量弁4の弁開度(SCVK)をフィードバック制御することにより、入り口調量弁4の弁開度(SCVK)を取り込む。また、コモンレール圧センサ25から実コモンレール圧(Pc)を取り込む(ステップS11)。
【0042】
次に、エンジンパラメータをベースにエンジン制御指令値を演算する。具体的には、前述のエンジン回転数(NE)および前述のアクセル開度(ACCP)から目標噴射量(Q)を求める。また、前述のエンジン回転数(NE)および前述の目標噴射量(Q)から目標コモンレール圧(Pt)を求める。また、前述のエンジン回転数(NE)および前述の目標噴射量(Q)から噴射時期(T)を求める(ステップS12)。
【0043】
次に、エンジンパラメータ等をベースにサプライポンプ3よりコモンレール5に吐出される燃料の圧送量(ポンプ圧送量:Qp)を演算する。具体的には、前述のエンジン回転数(NE)、前述の入り口調量弁4の弁開度(ポンプ吸入弁開度:SCVK)および前述の実コモンレール圧(Pc)からポンプ圧送量(Qp)を求める(ステップS13)。
【0044】
次に、エンジンパラメータ等をベースに高圧配管経路からの燃料リーク量(QL)を演算する。具体的には、前述のエンジン回転数(NE)、前述の目標噴射量(Q)、前述の実コモンレール圧(Pc)および前述の燃料温度(Qt)から燃料リーク量(QL)を求める(ステップS14)。次に、エンジンパラメータ等をベースに高圧配管経路からの燃料漏れ量(Qo)を演算する。具体的には、前述のポンプ圧送量(Qp)、前述の目標噴射量(Q)および前述の燃料リーク量(QL)から燃料漏れ量(Qo)を求める(ステップS15)。
【0045】
次に、ステップS15で算出した燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(例えば20mm3 /st:α)よりも多いか否かを判定する(ステップS16)。この判定結果がNOの場合、つまり燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)以下の場合には、高圧配管経路からの正常な燃料漏れ(例えば軽微な燃料漏れ)であると判断して、サプライポンプ3の過剰圧送(全量圧送)状態を検出するためのPL開弁異常判定フラグ(fPL)を0にリセットする(ステップS17)。次に、高圧配管経路からの少量の燃料漏れを検出するための燃料漏れ(少)異常判定フラグ(fLS)、および高圧配管経路からの多量の燃料漏れを検出するための燃料漏れ(多)異常判定フラグ(fLB)を0にリセットする(ステップS18)。
【0046】
次に、サプライポンプ3の入り口調量弁4の制御指令値(ポンプ制御指令値)を演算する。具体的には、前述の実コモンレール圧(Pc)と前述の目標コモンレール圧(Pt)との圧力偏差(Pc−Pt)からサプライポンプ3の入り口調量弁4の制御指令値(ポンプ制御指令値(デューティ比):dDuty)を求める。また、前回のポンプ制御指令値(ΣD)に今回のポンプ制御指令値(dDuty)を積算して今回のポンプ制御指令値(ΣD)を求める(ステップS19)。
【0047】
次に、インジェクタ2に印加するインジェクタ(INJ)噴射パルスの噴射パルス時間(噴射パルス幅:Tq)を演算する。具体的には、前述のエンジン回転数(NE)および前述の目標噴射量(Q)または後述する補正噴射量(最終噴射量:Q)から噴射パルス幅(Tq)を求める(ステップS20)。次に、前述のステップS20で設定された噴射パルス幅(Tq)のインジェクタ(INJ)噴射パルスをECU10の出力段にセットする(ステップS21)。次に、前述のステップS19で設定されたポンプ制御指令値(ΣD)をECU10の出力段にセットする(ステップS22)。以降、上記制御を繰り返す。
【0048】
また、ステップS16の判定結果がYESの場合、つまり燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)よりも多い場合には、燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(例えば40mm3 /st:β)よりも多いか否かを判定する(ステップS23)。この判定結果がNOの場合、つまり燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)よりも多く、且つ第2所定値(β)以下の場合には、プレッシャリミッタ6の開弁による燃料抜けではなく、高圧配管経路から少量の燃料漏れが発生していると判断して、燃料漏れ(少)異常判定フラグ(fLS)を1にセットする(ステップS24)。
【0049】
次に、エンジンパラメータをベースにエンジン出力を制限するためのエンジン制限指令値(出力制限値)を演算する。具体的には、前述のエンジン回転数(NE)から補正噴射量(QPL)を求める。また、前述のエンジン回転数(NE)から補正コモンレール圧(PtPL)を求める。また、前述のエンジン回転数(NE)から補正噴射時期(TPL)を求める(ステップS25)。次に、前記ステップS12で算出したベースの値とステップS25で算出した補正値とで小さい方の値(min値)を、最終指令値(補正噴射量:Q、補正コモンレール圧:Pt、補正噴射時期:T)として選択する(ステップS26)。その後に、ステップS19に進む。
【0050】
また、ステップS23の判定結果がYESの場合、つまり燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)よりも多い場合には、サプライポンプ3の過剰圧送によるプレッシャリミッタ6の開弁(作動)時の燃料抜け、あるいは高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常によって高圧配管経路から多量の燃料漏れが発生していると判断できる。
【0051】
次に、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)が1にセットされているか否かを判定する。すなわち、実コモンレール圧(Pc)が所定圧力値(Pm)を超えているか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果がYESの場合、つまりXPCMEMが1にセットされている場合には、サプライポンプ3の過剰圧送状態によってプレッシャリミッタ6の開弁による燃料抜けが発生していると判断して、PL開弁異常判定フラグ(fPL)を1にセットし(ステップS28)、リンプホームを実現させる目的でエンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施するために、ステップS25に進む。
【0052】
また、ステップS27の判定結果がNOの場合、つまりXPCMEMが0にリセットされた状態を継続している場合には、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常が発生していると判断して、燃料漏れ(多)異常判定フラグ(fLB)を1にセットし(ステップS29)、車両の安全性を高める目的でエンジンを停止する等のフェイルセーフを実施するために、エンジン・ストップ制御値を演算する。具体的には、目標噴射量(Q)を0にセットし、また、ポンプ制御指令値(デューティ比:ΣD)を100%にセットし、つまり入り口調量弁4を全閉する制御指令値をセットする(ステップS30)。その後に、ステップS20で噴射パルス幅(Tq)を0にセットし、ステップS21に進む。
【0053】
なお、ステップS24の燃料漏れ(少)異常判定フラグ(fLS)で高圧配管経路からの少量の燃料漏れを、ステップS28のPL開弁異常判定フラグ(fPL)でプレッシャリミッタ6の開弁異常およびサプライポンプ3の過剰圧送(全量圧送)状態を、ステップS29の燃料漏れ(多)異常判定フラグ(fLB)で高圧配管経路からの多量の燃料漏れ、例えば高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常を、インジケータランプや音声ガイド等の表示手段により別々に表示するようにしても良い。
【0054】
[実施例の特徴]
ここで、サプライポンプ3の入口側に設置される入り口調量弁にノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁弁を採用した場合には、ポンプ駆動回路(EDU)と入り口調量弁4とを結ぶワイヤリングハーネス(W/H)の断線により無吐出となり、エンジン1を作動させるために必要なコモンレール圧を維持することができず、エンストしてしまう。
【0055】
また、ノーマリクローズタイプの入り口調量弁4であっても、入り口調量弁4の弁体と弁座との間に異物が噛み込んで入り口調量弁4が機械的に全開異常となったり、本実施例のように、ノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁弁よりなる入り口調量弁4を採用した場合には、ポンプ駆動回路(EDU)と入り口調量弁4とを結ぶワイヤリングハーネス(W/H)の断線やECU10の制御異常等により入り口調量弁4が電気的に全開異常となったり、あるいは入り口調量弁4の弁体と弁座との間に異物が噛み込んで入り口調量弁4が機械的に全開異常となったりすると、図5および図6のタイミングチャートに示したように、サプライポンプ3が過剰圧送(全量圧送)となる。
【0056】
そして、サプライポンプ3が過剰圧送(全量圧送)となって、コモンレール圧が上昇し、実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ検出レベル(所定圧力値:Pm)を超えると、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)が1にセットされ、更に、実コモンレール圧(Pc)が限界設定圧(プレッシャリミッタ開弁圧)を超えると、プレッシャリミッタ6が開弁して、コモンレール5内の高圧燃料をリーク配管(低圧通路)14を経て燃料タンク(低圧側)9に逃がし、コモンレール5および燃料配管13等の高圧配管経路内の燃料圧を限界設定圧以下に抑えられる。
【0057】
なお、サプライポンプ3からコモンレール5へ吐出される燃料の吐出量(燃料供給流量)が少ないエンジン回転数が低速時では、図6のタイミングチャートに示したように、プレッシャリミッタ6は開弁状態を維持することができず、実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ閉弁圧まで低下するためプレッシャリミッタ6は閉弁する。つまり、プレッシャリミッタ6が閉弁し、その後にサプライポンプ3からコモンレール5への燃料の吐出によって燃料がコモンレール5内に蓄積されてくると、実コモンレール圧(Pc)は再度限界設定圧を超えるため、プレッシャリミッタ6が開弁状態となる。以降、この状態を繰り返す。
【0058】
そして、ECU10では、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)が1にセットされている場合、つまり実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ検出圧レベル(Pm)よりも大きい場合には、漏れ検出ロジックによってプレッシャリミッタ6の開弁(作動)時の燃料抜けを検出(PL作動検出)していると判断できる。また、ECU10では、異常高圧履歴記憶フラグ(XPCMEM)が0のままの場合、つまり実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ検出圧レベル(Pm)以下の場合には、燃料漏れのレベルに応じて微量(正常)な燃料漏れ、少量の燃料漏れ、多量の燃料漏れのいずれかであると判断できる。
【0059】
これにより、入り口調量弁4が機械的または電気的に全開異常となってサプライポンプ3が過剰圧送(全量圧送)となり、高圧配管経路内の燃料圧が限界設定圧を超えてプレッシャリミッタ6が開弁し大量に燃料抜けが生じていると判断した場合には、エンストを回避して、車両の退避走行(リンプホーム)を実現させるために、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施することで、車両の継続走行を実施できる。
【0060】
したがって、プレッシャリミッタ6の作動(開弁)による燃料抜けと高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)による燃料漏れとを識別でき、また、プレッシャリミッタ6の作動(開弁)による圧力低下を圧力レベルの挙動から判別して漏れ判定項目から分離すると共に、フェイルセーフの内容を、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)による燃料漏れとは異なった内容とすることで、コモンレール式燃料噴射システムの信頼性および安全性を飛躍的に向上させることができる。
【0061】
また、ECU10では、ポンプ圧送量(Qp)、目標噴射量(Q)および燃料リーク量(QL)に基づいて算出される燃料漏れ量(Qo)が第1所定値(α)よりも多く、且つ燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)以下の場合には、プレッシャリミッタ6の開弁による燃料抜けではなく、高圧配管経路から少量の燃料漏れが発生していると判断して、エンジン出力を制限する等のフェイルセーフを実施するようにしている。
【0062】
また、ポンプ圧送量(Qp)、目標噴射量(Q)および燃料リーク量(QL)に基づいて算出される燃料漏れ量(Qo)が第2所定値(β)よりも多くても、実コモンレール圧(Pc)がプレッシャリミッタ検出圧レベル(Pm)以下の場合には、高圧配管経路の異常故障(例えば高圧パイプのバースト等)を含んだシステム異常によって高圧配管経路から多量の燃料漏れが発生していると判断して、危険回避のために、エンジン1を停止する等のフェイルセーフを実施するようにしている。したがって、燃料漏れ量(Qo)のレベルに応じてエンジン1の制御状態をリンプホームが可能なエンジン出力制限等のフェイルセーフとエンジン1を停止する等のフェイルセーフとで切り分けて制御することによって、コモンレール式燃料噴射システムの信頼性および安全性の向上を図ることもできる。
【0063】
[変形例]
本実施例では、コモンレール圧センサ25をコモンレール5に直接取り付けて、コモンレール5内に蓄圧される燃料圧力(実コモンレール圧)を検出するようにしているが、燃料圧力検出手段をサプライポンプ3のプランジャ室(加圧室)からインジェクタ2内の燃料通路までの間の燃料配管等に取り付けて、サプライポンプ3の加圧室より吐出された燃料圧力を検出するようにしても良い。
【0064】
本実施例では、サプライポンプ3のプランジャ室(加圧室)内に吸入される燃料の吸入量を変更(調整)する入り口調量弁(吸入量調整用電磁弁)4を設けた例を説明したが、サプライポンプ3のプランジャ室(加圧室)からコモンレール5への燃料の吐出量を変更(調整)する吐出量調整用電磁弁を設けても良い。
【0065】
本実施例では、吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の弁開度がその電磁弁への通電を停止した時に全開となるノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁弁を用いたが、吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の弁開度がその電磁弁を通電した時に全開となるノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁弁を用いても良い。この場合の吐出量調整用電磁弁または吸入量調整用電磁弁の全開異常時、つまりサプライポンプ3が高圧燃料をコモンレール5の蓄圧室内に過剰圧送する時、あるいはコモンレール5の蓄圧室内の圧力の異常上昇を検出した時とは、ECU10またはポンプ駆動回路(EDU)からの制御電圧の過大異常時が考えられる。
【0066】
本実施例では、高圧配管経路内の燃料圧が閉弁圧以下に下がると閉弁するプレッシャリミッタ6を用いているが、安定して車両を継続走行させることが可能な圧力レギュレート機能を備えたプレッシャリミッタを採用して、エンジン回転数が低速時であっても、一旦プレッシャリミッタが開弁したら、高圧配管経路内の燃料圧をレギュレート圧力(例えばインジェクタ2の作動圧力以上で、且つエンジン振動や車両挙動が発生しない圧力以下の圧力)に維持できるようにしても良い。
【0067】
本実施例では、高圧配管経路内の異常高圧を判定する所定圧力値(Pm)を、コモンレール式燃料噴射システムにおいて通常使用する範囲の最大値(例えば145MPa)よりも大きく、且つ限界設定圧に相当するプレッシャリミッタ6の開弁圧(例えば160MPa)よりも小さい圧力値(例えば150〜155MPa)に設定しているが、高圧配管経路内の異常高圧を判定する所定圧力値(Pm)を、コモンレール圧センサ25の出力特性のバラツキ(例えば±5MPa)またはプレッシャリミッタ6の開弁特性のバラツキ(例えば±5MPa)に応じて各車両毎または各エンジン毎に設定するようにしても良い。この場合には、155MPaが最も望ましい所定圧力値(Pm)となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コモンレール式燃料噴射システムの全体構造を示した概略図である(実施例)。
【図2】異常高圧履歴記憶フラグを設定するためのサブルーチンを示したフローチャートである(実施例)。
【図3】コモンレール式燃料噴射システムの制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図4】コモンレール式燃料噴射システムの制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図5】高速時のポンプ圧送状態、実コモンレール圧、異常高圧履歴記憶フラグ、プレッシャリミッタ状態、漏れ検出ロジック、エンジン状態の各推移を示したタイミングチャートである(実施例)。
【図6】低速時のポンプ圧送状態、実コモンレール圧、異常高圧履歴記憶フラグ、プレッシャリミッタ状態、漏れ検出ロジック、エンジン状態の各推移を示したタイミングチャートである(実施例)。
【図7】高速時のポンプ圧送状態、実コモンレール圧、プレッシャリミッタ状態、漏れ検出ロジック、エンジン状態の各推移を示したタイミングチャートである(従来の技術)。
【図8】低速時のポンプ圧送状態、実コモンレール圧、プレッシャリミッタ状態、漏れ検出ロジック、エンジン状態の各推移を示したタイミングチャートである(従来の技術)。
【符号の説明】
1 エンジン
2 インジェクタ
3 サプライポンプ(高圧供給ポンプ)
4 ノーマリオープンタイプの入り口調量弁
5 コモンレール
6 プレッシャリミッタ(圧力安全弁)
10 ECU(エンジン制御手段)
13 燃料配管(高圧配管経路)
16 分岐管(高圧配管経路)
21 回転速度センサ(運転条件検出手段)
22 アクセル開度センサ(運転条件検出手段)
23 冷却水温センサ(運転条件検出手段)
24 燃料温度センサ(運転条件検出手段)
25 コモンレール圧センサ(燃料圧センサ)
Claims (6)
- エンジンにより回転駆動される高圧供給ポンプより吐出された高圧燃料をコモンレール内に蓄圧すると共に、このコモンレール内に蓄圧された高圧燃料を前記エンジンの各気筒毎に搭載されたインジェクタに分配し、前記インジェクタから前記エンジンの各気筒へ高圧燃料を噴射供給するコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
(a)前記高圧供給ポンプから前記コモンレールを経て前記インジェクタまでの高圧配管経路と、
(b)この高圧配管経路内の燃料圧が限界設定圧を超えた際に開弁して燃料圧を限界設定圧以下に抑えるための圧力安全弁と、
(c)前記エンジンの運転条件を検出する運転条件検出手段と、
(d)前記高圧供給ポンプの運転状態を検出する運転状態検出手段と、
(e)前記高圧配管経路内の燃料圧を検出する燃料圧センサと、
(f)前記運転条件検出手段によって検出される前記エンジンの運転条件、前記運転状態検出手段によって検出される前記高圧供給ポンプの運転状態、または前記燃料圧センサによって検出される前記燃料圧のうちの少なくとも1つ以上のパラメータに基づいて、前記高圧配管経路からの燃料の漏れ量を算出する漏れ量決定手段と、
(g)前記漏れ量決定手段によって算出された前記燃料の漏れ量が所定値よりも多いと判定された時に、前記燃料圧センサによって検出される前記燃料圧が所定圧力値を超えていたと判定された場合には、前記圧力安全弁の開弁による圧力低下または前記高圧供給ポンプの過剰圧送状態を検出する圧力低下または過剰圧送検出手段を有し、
前記圧力低下または過剰圧送検出手段によって前記圧力安全弁の開弁による圧力低下または前記高圧供給ポンプの過剰圧送状態を検出した際に、前記エンジン出力を制限するエンジン制御手段と
を備えたことを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。 - 請求項1に記載のコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
前記エンジン制御手段は、前記漏れ量決定手段によって算出された前記燃料の漏れ量が所定値よりも多く、且つ前記燃料圧センサによって検出される前記燃料圧が所定圧力値以下の時に、前記高圧配管経路の異常故障を含んだシステム異常を検出するシステム異常検出手段を有し、
前記システム異常検出手段によって前記コモンレール式燃料噴射システムの異常状態を検出した際に、前記エンジンを停止することを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。 - 請求項1または請求項2に記載のコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
前記所定圧力値は、前記コモンレール式燃料噴射システムにおいて通常使用する範囲の最大値よりも大きく、且つ前記限界設定圧に相当する前記圧力安全弁の開弁圧よりも小さい圧力値であることを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。 - 請求項3に記載のコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
前記所定圧力値は、前記燃料圧センサの出力特性のバラツキまたは前記圧力安全弁の開弁特性のバラツキに応じて各車両毎または各エンジン毎に設定される圧力値であることを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
前記運転条件検出手段によって検出される前記エンジンの運転条件に基づいて、前記各気筒のインジェクタから前記エンジンに噴射する燃料の噴射量を算出する噴射量決定手段と、
前記運転条件検出手段によって検出される前記エンジンの運転条件、前記噴射量決定手段によって算出された前記燃料の噴射量、および前記燃料圧センサによって検出される前記燃料圧に基づいて、前記高圧配管経路からの燃料のリーク量を算出するリーク量決定手段と
を備えたことを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。 - 請求項5に記載のコモンレール式燃料噴射システムにおいて、
前記運転状態検出手段は、前記高圧供給ポンプより前記コモンレールに吐出される燃料の圧送量を算出する圧送量決定手段を有し、
前記燃料の漏れ量は、前記運転条件検出手段によって検出される前記エンジンの運転条件、前記噴射量決定手段によって算出された前記燃料の噴射量、前記圧送量決定手段によって算出された前記燃料の圧送量、および前記リーク量決定手段によって算出された前記燃料のリーク量に基づいて算出されることを特徴とするコモンレール式燃料噴射システム。
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