JP3875306B2 - 光学素子の成形用型の製造方法及び光学素子の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子の成形用型の製造方法及び光学素子の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高精度の光学ガラス素子を加圧成形して製造するための金型材料としては高温でもガラスに対して化学的に不活性であり、ガラスの成形面となる部分が充分硬く、損傷を受けにくく、高温での成形により成形面が塑性変形や粒成長を起こさずに、繰り返し成形が行えるように耐熱衝撃性に優れ、さらに、超精密加工が行えるように加工性に優れていることが必要である。
【0003】
これらの条件をある程度満足する金型材料として、例えば、特開昭60−176928号公報や特開昭60−195026号公報では超硬合金やSiCを母材に用いることが開示されている。
【0004】
一方、表面層に関しては、特開昭63−23822号公報において、窒化クロムや炭化クロム等のクロム化合物を用いることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の光学ガラス素子の成形用型は母材を焼結により形成した後、外形を研削加工して所定の形状に仕上げ、成形面の研削及び研磨加工を行い、型表面に成膜する必要があり、型が完成するまでの工数が多い。
【0006】
また、型の母材となる超硬合金及びセラミック材は結晶化されているため、格子欠陥及び粒界等があり、研磨加工により満足な面精度を得るためには困難を要する。
【0007】
上記に示す通り、型加工は難しく、長時間かかるため、コスト高になり、成形された光学素子も高価になるという課題があった。
【0008】
請求項1記載の発明は、一つの成形用型で多種の光学素子を安価に成形可能な成形用型の製造方法を提供することを目的とする。請求項2記載の発明は、ガラス遷移挙動を示す非晶質材を用いて成形される光学素子の成形方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明に係る光学素子の成形用型はの製造方法は、加熱軟化したガラス素材を、一対の成形用型で押圧することにより、所望の光学素子とする光学素子の成形用型の製造方法において、ガラス遷移挙動を示す非晶質材を、前記非晶質材のガラス転移温度Tgよりも高く前記非晶質材の結晶化開始温度Txよりも低い温度Tに加熱する工程と、加熱された前記非晶質材を成形し、粗成形型とする工程と、前記光学素子と同形状のブランクを前記粗成形型で押圧することにより、前記粗成形型を所望の成形面が形成された成形用型とする工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明に係る光学素子の成形方法は、加熱軟化したガラス素材を、一対の成形用型で押圧することにより、所望の光学素子とする光学素子の成形方法において、前記成形用型は、ガラス遷移挙動を示す非晶質材からなり、前記ガラス素材のガラス転移温度をGTg、成形面を形成するためのブランクの融点をBTm、前記非晶質材の結晶化開始温度をTxとすると、前記非晶質材のガラス転移温度Tgが、GTg<Tg<BTm、Tg<Txで示す範囲であり、前記光学素子と同形状の前記ブランクを押圧することにより得られた前記成形用型を温度T’(GTg≦T’<Tg)に加熱して前記光学素子を成形することを特徴とする。
【0019】
請求項1記載の発明に係る光学素子の成形用型の製造方法によれば、ブランクを成形用型で押圧する度に、成形用型の成形面を所望の形状に変化させることができ、ブランクを多種用意することで一つの成形用型で多種の光学素子を成形することが可能となる。
【0021】
請求項2記載の光学素子の成形方法は、上記成形用型でガラス素材を押圧する際、上記成形用型を上記成形用型のガラス転移温度Tgより低い温度で加熱することにより、成形用型が変形することを防止し、上記成形用型をガラス素材のガラス転移温度GTgより高い温度で加熱することにより、上記成形用型でガラス素材を押圧し、所望の光学素子を成形することを可能とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
(構成)
Zrが55%、Cuが30%、Alが10%、Niが5%(数値は原子%)の組成を有する、溶融合金を作り、図1に示すように、この溶融合金を鋳造装置1の湯口2より銅製鋳型3に鋳込み急冷させて非晶質成形素材4を得た。冷却終了後、図2に示すように、得ようとするガラス成形用金型7に対応する形状の成形用金型5内に非晶質成形素材4を移し、再度その非晶質成形素材4のガラス転移温度Tgと結晶化温度Tx間の温度に加熱(本実施の形態1では470℃)する。尚、図1、図2中、16はヒータである。
【0024】
温度安定後、移動型6を下動させ50MPaの圧力で成形し、この非晶質成形素材4のガラス転移温度Tg以下まで冷却させ、この後、成形用金型5内から取り出しガラス成形用金型7とする。成形により得られたガラス成形用金型7は、前記成形用金型5の形状を正確に再現しており、形状精度0.5μmの形状精度であった。このガラス成形用金型7の成形面7aを研磨加工により形状精度0.1μmに仕上げ、ガラス成形用金型7を完成させた。
【0025】
図3は、上述の工程で得られたガラス成形用金型7を用いたガラス成形装置を示すものであり、加熱炉8、上型9、下型10、上型用ヒータ11、下型用ヒータ12、搬送用アーム13、搬送皿14を備えて構成されている。
【0026】
(作用)
上記構成のガラス成形装置により、直径10mmで両平面を有するSF系のガラス素材15を搬送皿14に載置して搬送アーム13に保持させ、加熱炉8内で450℃まで加熱する。この後、非酸化性雰囲気にされた成形室17の上型9、下型10間に搬送用アーム13の動作でガラス素材15を搬送する。
【0027】
搬送終了後、型温400℃に設定された上型9、下型10の可動により、80MPaの圧力で成形される。その後、成形室外に搬出され搬送皿14から成形された光学素子が取り出される。以上の工程により、成形された光学素子の面精度は高精度であり、微小焼き付きによるガラスの欠落などなく良好であった。ガラス成形用金型7においても損傷、劣化がなかった。
【0028】
(効果)
本実施の形態1のガラス成形用金型7によれば、金型形状を成形によって高精度に製作することができるので、焼結、研削工程が不要になる。尚、本実施の形態1ではZr55Cu30Al10Ni5 をガラス成形用金型の材科として使用したが、ガラス遷移挙動を示す非晶質材であれば他の材料でも良い。また、本実施の形態1では成形面に表面層を施さなかったが必要に応じて成形面に膜付けをしても良い。
【0029】
(実施の形態2)
(構成)
Zrが55%、Cuが30%、Alが10%、Niが5%(数値は原子%)の組成を有する、溶融合金を作り、図1に示すように、この溶融合金を鋳造装置1の湯口2より銅製鋳型3に鋳込み急冷させて非晶質成形素材4を得た。冷却終了後、図2に示すように、得ようとするガラス成形用金型7に対応する形状の成形用金型5内に非晶質成形素材4を移し、再度その非晶質成形素材4のガラス転移温度Tgと結晶化温度Tx間の温度に加熱(本実施の形態2では470℃)する。
【0030】
温度安定後、移動型6を下動させ50MPaの圧力で成形し、この非晶質成形素材4のガラス転移温度Tg以下まで冷却させ、この後、成形用金型5内から取り出しガラス成形用金型7とする。成形により得られたガラス成形用金型7は、前記成形用金型5の形状を正確に再現しており、形状精度0.5μmの形状精度であった。このガラス成形用金型7の成形面7aを加工により形状精度0.1μmに仕上げ、ガラス成形用金型7を完成させた。
【0031】
このガラス成形用金型7を非酸化性雰囲気中で600℃で2時間熱処理を行い非晶質材を結晶化させた。
【0032】
(作用)
図3に示す実施の形態1と同様構成のガラス成形装置により、直径10mmで両平面を有するLa系のガラス素材15を搬送皿14に載置して搬送アーム13に保持させ、加熱炉8内で700℃まで加熱する。この後、非酸化性雰囲気にされた成形室17の上型9、下型10間に搬送用アーム13の動作で、ガラス素材15を搬送する。
【0033】
搬送終了後、型温610℃に設定された上型9、下型10の可動により、80MPaの圧力で成形される。その後、成形室外に搬出され搬送皿14から成形された光学素子が取り出される。以上の工程により、成形された光学素子の面精度は高精度であり、微小焼き付きによるガラスの欠落などなく良好であった。ガラス成形用金型7においても損傷、劣化がなかった。
【0034】
(効果)
本実施の形態2のガラス成形用金型7によれば、金型形状を成形によって高精度に製作することができるので、焼結、研削工程が不要になる。尚、本実施の形態2では非晶質材を結晶化させることにより、金型材質のガラス転移温度以上の転移点をもつガラスにおいても金型を変形させずに成形を行うことができる。
【0035】
本実施の形態2では、Zr55Cu30Al10Ni5 をガラス成形用金型の材科として使用したが、ガラス遷移挙動を示す非晶質材であれば他の材料でも良い。また、本実施の形態1では成形面に表面層を施さなかったが必要に応じて成形面に膜付けをしても良い。
【0036】
(実施の形態3)
(構成)
Zrが55%、Cuが30%、Alが10%、Niが5%(数値は原子%)の組成を有する、溶融合金を作り、図4に示すように、この溶融合金を鋳造装置1の湯口2よりガラス成形用金型27の成形面上の非球面形状の近似形状部23aを有する銅製鋳型23に鋳込み急冷させて非晶質成形素材24を得た。
【0037】
冷却終了後、図5に示すように、得ようとするガラス成形用金型27に対応する形状の成形用金型25内に非晶質成形素材24を移し、再度その非晶質素材24のガラス転移温度Tgと結晶化温度Tx間の温度に加熱(本実施の形態3では470℃)する。
【0038】
温度安定後、所望の非球面形状26aを有する移動型26を下動させ、40MPaの圧力で押圧成形した後、その非晶質成形素材のガラス転移温度Tg以下まで冷却させ成形形用金型25から取り出す。成形により得られたガラス成形用金型27は、成形用金型25、移動型26の形状を正確に再現しており、非球面の形状精度は0.2μmの形状精度であった。
【0039】
(作用)
このようにして得られたガラス成形用金型27を用いて、実施の形態1と同様の成形方法により成形を行った結果、得られた光学素子の面精度は高精度であり、微小焼き付きによるガラスの欠落等なく良好であった。また、ガラス成形用27においても損傷、劣化がなかった。
【0040】
(効果)
本実施の形態3のガラス成形用金型27によれば、金型形状を成形によって高精度に作製することができるので、焼結、研削工程が不要になる。また、成形面も成形により製作することができるので、移動型26の成形面26aを一度加工すれば成形面の研削、研磨加工なしで同形状のガラス成形用金型を繰り返しを製造することが可能となり、金型コストを低減することができる。
【0041】
尚、本実施の形態3ではZr55.5Cu30Al10Ni5 をガラス成形用金型の材料として使用したが、ガラス遷移挙動を示す非晶質材であれば他の材料でも良い。また、本実施の形態3では成形面に表面層を施さなつかたが必要に応じて成形面に膜付けをしても良い。さらに、実施の形態3では成形面を非球面形状としたが、アナモフィック、回折格子等の加工性の悪い形状を成形面形状とでする場合、更に効果が期待できる。
【0042】
(実施の形態4)
(構成)
図6、図7は溶融合金101から粗成形型(以下、原形成形用型116及び117と称する)を鋳造する鋳造装置の断面図を示す。図8乃至図10及び図11乃至図13は成形用型及び光学素子の成形装置の断面図を示す。図6において、Co68.8Fe4.2Si15B12(数値は原子%)の組成を有する溶融合金101は中空円筒形であり、外周にヒーター102を備えたプランジャースリーブ103の内部に挿入される。
【0043】
プランジャー104は、プランジャースリーブ103の内径に嵌合する形状であり、図示しないエアーシリンダによりプランジャースリーブ103内部を上下動する。鋳型105は銅製であり、上部に排気口106が設けられ、下部はプランジャースリーブ103の上部に接合されている。上述した鋳造により得られた原形成形用型116及び117は、図8乃至図10に示されるブランク115を押圧することにより、成形面112a及び113aを有する上型112及び下型113になる。
【0044】
従って、原形成形用型116及び117のブランク成形により、将来成形面となる部分(押圧面)116a及び117aは平面もしくは球面でよい。
【0045】
本実施の形態4では、所望の光学素子が凸型両面非球面レンズであるため、将来成形面となる部分116a及び117aは上記非球面の近似球面とした。図8乃至図10において、ブランク115は保持部材108に載置され、搬送装置109により、加熱炉110から成形室111の内部まで移動可能である。
【0046】
二つの原形成形用型116及び117は、成形室111の内部で対向配置されており、各々の外周に上型ヒーター114及び下型ヒーター119を備えている。原形成形用型117は、図示してないエアーシリンダにより上下動力可能となっている。また、成形室111の内部は、非酸化性雰囲気で満たされている。
【0047】
ブランク115は、ニオブ(Nb)からなりその融点BTmは2520℃である。
また、ブランク115の原形成形用型116及び117の押圧面116a及び117aに当接する部分115a及び115bの形状は所望の光学素子118の光学機能面と同形状であり、また、上記ブランク115の上記原形成形用型116及び117の押圧面116a及び117aに当接する部分115a及び115bは研磨されている。
【0048】
図11乃至図13において、ガラス素材107は保持部材108に載置され搬送装置109により、加熱炉110から成形室111内部まで移動可能となっている。
【0049】
上型112及び下型113は成形室111の内部で対向配置されており、各々外周に上型ヒーター114及び下型ヒーター119を備えている。下型113は図示しないエアーシリンダにより上下動が可能である。また、成形室111の内部は非酸化性雰囲気で満たされている。ガラス素材107は、重フリント系ガラスであり、そのガラス転移温度GTgは393℃、軟化温度は449℃である。
【0050】
なお、図8乃至図10及び図11乃至図13に示される成形装置は、ブランク115とガラス素材107、原形成形用型116及び117と上型112及び下型113との差異以外は同一の構成となっている。
【0051】
(作用)
図6において、Co68.8Fe4.2 Si15B12(数値は原子%)の組成を有する溶融合金101は、プランジャースリーブ103の内部に挿入され、プランジャースリーブ103の外周に設けられたヒーター102により780℃に加熱される。加熱された溶融合金101はプランジャー104により鋳型105の内部へ圧力60MPa、最大射出速度2.0m/sで押し出される。圧力保持を0.05秒程行い、鋳型105は常温なので溶融合金101は急冷される。その後プランジャー104の圧力を0Paにして30分程放置した。
【0052】
このような鋳造により得られた原形成形用型116及び117はガラス遷移挙動を示す非晶質材であり、ガラス転移温度Tgは450℃、結晶化開始温度Txは512℃である。図8において、鋳造により得られた原形成形用型116及び117を成形室111の内部に対向配置する。一方、ブランク115は保持部材108に載置し加熱炉110により510℃まで加熱される。
【0053】
次に、図9に示すように、加熱された上記ブランク115を対向配置の二つの原形成形用型116及び117との間に搬送装置109により移動する。上型ヒーター114及び下型ヒーター119により原形成形用型116及び117は各々予め原形成形用型116及び117が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度Tg450℃と結晶化開始温度Tx512℃との間の温度)490℃に加熱されている。搬送終了後、原形成形用型117が図示されていないエアーシリンダにより上方に移動し、ブランク115を上記原形成形用型116及び117とで圧力10MPaで押圧する。
【0054】
次に、図10に示すように、上記圧力を40秒間保持し、その後に原形成形用型117を図示しないエアーシリンダにより下方に移動しブランク115から離型する。すると、原形成形用型116及び117はブランク115の研磨面115a及び115b、即ち、光学素子118の光学機能面118a及び118bの反転した形状が転写した成形面112a及び113aを有する成形用型112及び113になる。接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.1μm以下であった。
【0055】
次に、図11に示すように、上記ブランク成形により得られた上型112及び下型113を成形室111の内部に対向配置する。一方、ガラス素材107は保持部材108に載置し加熱炉110により445℃まで加熱される。そして、図12に示すように、加熱された上記ガラス素材107を対向配置する上型112及び下型113との間に搬送装置9により移動する。
【0056】
上型ヒーター114及び下型ヒーター119により上型112及び下型113は各々予めガラス素材107が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度GTg393℃以上の温度)400℃に加熱されている。搬送終了後、下型113が図示しないエアーシリンダにより上方に移動し、ガラス素材107を上型112及び下型113とで圧力65MPaで押圧する。図13において、上記圧力を10秒間保持し、その後に下型113を図示しないエアーシリンダにより下方に移動しガラス素材107から離型する。すると、ガラス素材107を基に、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの反転した形状の、即ち、所望の形状の光学素子118が得られる。
【0057】
接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.2μm以下であった。また、原形成形用型116及び117が上型112及び下型113になる際、原形成形用型116及び117をブランク115により成形するため、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの周辺に若干の駄肉ができるがガラス素材107の成形には支障がない。
【0058】
(効果)
本実施の形態4によれば、原形成形用型116及び117がガラス遷移挙動を示す非晶材であるため、上記原形成形用型116及び117でブランク115を押圧することでその成形面を形成すること可能であり、よって、一つの成形用型で多種の光学素子が成形可能となり、型の加工が短時間ですみ、かつ、型材料が効率よく用いられるため、成形用型が安価になるという効果がある。また、型加工コストの安い上記成形用型116及び117を用いて成形することで、光学素子118を安価に製造できる。
【0059】
(実施の形態5)
(構成)
実施の形態5においては、図6に示す鋳造装置において、Co75Si10B15(数値は原子%)の組成を有する溶融合金101は中空円筒形であり外周にヒーター102を備えたプランジャースリーブ103の内部に挿入される。プランジャー104はプランジャースリーブ103の内径に嵌合する形状であり、図示しないエアーシリンダによりプランジャースリーブ103の内部を上下動する。鋳型105は銅製であり上部に排気口106が設けられ、下部はプランジャースリーブ103の上部に接合されている。上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117は図8乃至図10に示されるブランク115を押圧することにより、成形面112a及び113aを有する上型112及び下型113になる。
【0060】
従って、原形成形用型116及び117のブランク成形により、将来成形面となる部分116a及び117aは平面若しくは球面でよい。実施の形態5では所望の光学素子118が光学機能面118a、118bを有する凸型両面非球面レンズであるため、将来成形面となる部分116a及び117aは上記非球面の近似球面とした。上記以外の構成は実施の形態4の場合と同様である。
【0061】
(作用)
本実施の形態5において、既述した場合と同様、Co75Si10B15の組成を有する溶融合金101は図6に示すプランジャースリーブ103の内部に挿入され、プランジャースリーブ103の外周に設けられたヒーター102により750℃に加熱される。加熱された上記溶融合金101はプランジャー104により鋳型105の内部へ圧力80MPa、最大射出速度2.0m/sで押し出される。圧力保持を0.05秒程行い、鋳型105は常温なので溶融合金101は急冷される。その後プランジャー104の圧力を0Paにして30分程放置した。上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117はガラス遷移挙動を示す非晶質材であり、ガラス転移温度Tgは440℃、結晶化開始温度Txは500℃である。
【0062】
次に、図9に示すように、上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117を成形室111の内部に対向配置する。一方、ブランク115は保持部材108に載置し加熱炉110により500℃まで加熱される。次に、図9に示すように、加熱された上記ブランク115を対向配置の二つの原形成形用型116及び117の間に搬送装置109により移動する。上型ヒーター114及び下型ヒーター119により原形成形用型116及び117は各々予め原形成形用型116及び117が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度Tg440℃と結晶化開始温度Tx500℃との間の温度)480℃に加熱されている。
【0063】
搬送終了後、原形成形用型117が図示しないエアーシリンダにより上方に移動し、ブランク115を上記原形成形用型116及び117とで圧力20MPaで押圧する。図10において、上記圧力を60秒間保持し、その後に原形成形用型117を図示しないエアーシリンダにより下方に移動し、ブランク115から離型する。すると、原形成形用型116及び117はブランク115の研磨面115a及び115b、即ち、光学素子118の光学機能面118a及び118bの反転した形状が転写した成形面112a及び113aを有する成形用型112及び113になる。接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.1μm以下であった。
【0064】
次に、図11に示すように、上記ブランク成形により得られた上型112及び下型113を成形室111の内部に対向配置する。一方、ガラス素材107は保持部材108に載置し加熱炉110により445℃まで加熱される。図12において、加熱された上記ガラス素材107を上記上型112及び下型113の間に搬送装置109により移動する。上型ヒーター114及び下型ヒーター119により、上型112及び下型113は、各々予めガラス素材107が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度GTg393℃以上の温度)400℃に加熱されている。搬送終了後、下型113が図示しないエアーシリンダにより上方に移動し、上記ガラス素材107を上型112及び下型113とで圧力65MPaで押圧する。
【0065】
次に、図13に示すように、上記圧力を10秒間保持し、その後に下型113を図示しないエアーシリンダにより下方に移動しガラス素材107から離型する。すると、ガラス素材107を基に、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの反転した形状、即ち、所望の形状の光学素子18を得ることができる。接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.2μm以下であった。また、原形成形用型116及び117が上型112及び下型113になる際、原形成形用型116及び117をブランク115により成形するため、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの周辺に若干の駄肉ができるがガラス素材7の成形には支障がない。
【0066】
(効果)
本実施の形態5によれば、実施の形態4と同様の効果を発揮させることができる。
【0067】
(実施の形態6)
(構成)
実施の形態6においては、図6に示す鋳造装置において、Zr33Y27Al15Ni25(数値は原子%)の組成を有する溶融合金101は、溶融合金101は中空円筒形であり外周にヒーター102を備えたプランジャースリーブ103の内部に挿入される。プランジャー104はプランジャースリーブ103の内径に嵌合する形状であり、図示しないエアーシリンダによりプランジャースリーブ103の内部を上下動する。鋳型105は銅製であり上部に排気口106が設けられ、下部はプランジャースリーブ103の上部に接合されている。上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117は図8乃至図10に示されるブランク115を押圧することにより、成形面112a及び113aを有する上型112及び下型113になる。
【0068】
従って、原形成形用型116及び117のブランク成形により、将来成形面となる部分116a及び117aは平面若しくは球面でよい。実施の形態5では所望の光学素子118が光学機能面118a、118bを有する凸型両面非球面レンズであるため、将来成形面となる部分116a及び117aは上記非球面の近似球面とした。上記以外の構成は実施の形態4の場合と同様である。
【0069】
(作用)
本実施の形態6において、既述した場合と同様、Zr33Y27Al15Ni25の組成を有する溶融合金101は図6に示すプランジャースリーブ103の内部に挿入され、プランジャースリーブ103の外周に設けられたヒーター102により750℃に加熱される。加熱された上記溶融合金101はプランジャー104により鋳型105の内部へ圧力80MPa、最大射出速度2.0m/sで押し出される。圧力保持を0.05秒程行い、鋳型105は常温なので溶融合金101は急冷される。その後プランジャー104の圧力を0Paにして30分程放置した。上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117はガラス遷移挙動を示す非晶質材であり、ガラス転移湿度Tgは435℃、結晶化開始温度Txは539℃である。
【0070】
次に、図9に示すように、上記鋳造により得られた原形成形用型116及び117を成形室111の内部に対向配置する。一方、ブランク115は保持部材108に載置し加熱炉110により540℃まで加熱される。次に、図9に示すように、加熱された上記ブランク115を対向配置の二つの原形成形用型116及び117の間に搬送装置109により移動する。上型ヒーター114及び下型ヒーター119により原形成形用型116及び117は各々予め原形成形用型116及び117が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度Tg435℃と結晶化開始温度Tx539℃との間の温度)500℃に加熱されている。
【0071】
搬送終了後、原形成形用型117が図示しないエアーシリンダにより上方に移動し、ブランク115を上記原形成形用型116及び117とで圧力12MPaで押圧する。図10において、上記圧力を40秒間保持し、その後に原形成形用型117を図示しないエアーシリンダにより下方に移動し、ブランク115から離型する。すると、原形成形用型116及び117はブランク115の研磨面115a及び115b、即ち、光学素子118の光学機能面118a及び118bの反転した形状が転写した成形面112a及び113aを有する成形用型112及び113になる。接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.1μm以下であった。
【0072】
次に、図11に示すように、上記ブランク成形により得られた上型112及び下型113を成形室111の内部に対向配置する。一方、ガラス素材107は保持部材108に載置し加熱炉110により425℃まで加熱される。図12において、加熱された上記ガラス素材107を上記上型112及び下型113の間に搬送装置109により移動する。上型ヒーター114及び下型ヒーター119により、上型112及び下型113は、各々予めガラス素材107が過冷却状態にある温度(ガラス転移温度GTg393℃以上の温度)410℃に加熱されている。搬送終了後、下型113が図示しないエアーシリンダにより上方に移動し、上記ガラス素材107を上型112及び下型113とで圧力60MPaで押圧する。
【0073】
次に、図13に示すように、上記圧力を10秒間保持し、その後に下型113を図示しいないエアーシリンダにより下方に移動しガラス素材107から離型する。すると、ガラス素材107を基に、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの反転した形状、即ち、所望の形状の光学素子18を得ることができる。接触式表面形状測定機により測定された成形面112a及び113aの転写精度は0.2μm以下であった。また、原形成形用型116及び117が上型112及び下型113になる際、原形成形用型116及び117をブランク115により成形するため、上型112及び下型113の成形面112a及び113aの周辺に若干の駄肉ができるがガラス素材7の成形には支障がない。
【0074】
(効果)
本実施の形態6によれば、実施の形態4と同様の効果を発揮させることができる。
【0075】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ブランクにより成形面が形成可能な光学素子成形用型の製造方法を提供できる。
【0076】
請求項2記載の発明によれば、所望の形状の光学素子を成形し得る成形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1または2の鋳造装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1または2におけるガラス成形用金型による成形の状態を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1または2のガラス成形装置を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態3の鋳造装置を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態3におけるガラス成形用金型による成形の状態を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態4、5または6の鋳造装置を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4、5または6の鋳造装置を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置による成形工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置による成形工程を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置による成形工程を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置による成形工程を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4、5または6の光学素子の成形装置による成形工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋳造装置
5 成形用金型
6 移動型
9 上型
10 下型
15 ガラス素材
23 鋳型
24 非晶質成形素材
25 成形用金型
27 ガラス成形用金型
101 溶融合金
105 鋳型
115 ブランク
116 原形成形用型
Claims (2)
- 加熱軟化したガラス素材を、一対の成形用型で押圧することにより、所望の光学素子とする光学素子の成形用型の製造方法において、
ガラス遷移挙動を示す非晶質材を、前記非晶質材のガラス転移温度Tgよりも高く前記非晶質材の結晶化開始温度Txよりも低い温度Tに加熱する工程と、
加熱された前記非晶質材を成形し、粗成形型とする工程と、
前記光学素子と同形状のブランクを前記粗成形型で押圧することにより、前記粗成形型を所望の成形面が形成された成形用型とする工程と、
を有することを特徴とする光学素子の成形用型の製造方法。 - 加熱軟化したガラス素材を、一対の成形用型で押圧することにより、所望の光学素子とする光学素子の成形方法において、
前記成形用型は、ガラス遷移挙動を示す非晶質材からなり、前記ガラス素材のガラス転移温度をGTg、成形面を形成するためのブランクの融点をBTm、前記非晶質材の結晶化開始温度をTxとすると、前記非晶質材のガラス転移温度Tgが、GTg<Tg<BTm、Tg<Txで示す範囲であり、
前記光学素子と同形状の前記ブランクを押圧することにより得られた前記成形用型を温度T’(GTg≦T’<Tg)に加熱して前記光学素子を成形することを特徴とする光学素子の成形方法。
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