JP3875185B2 - 集電装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電車や電気機関車などの鉄道車両の主に屋根上に装備され架線(電車線)から電力の供給を受けるための集電装置(パンタグラフともいわれる)に関し、とくに新幹線等の高速鉄道車両に好適な集電装置の、架線と接触する摺り板を含む集電部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の集電装置における集電部の構造は、舟体の上方にばねを介して摺り板取付板を支持し、その摺り板取付板上に摺り板を取り付けたものが一般的である(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
上記の集電部は、パンタグラフ本体の上端部に車幅方向に配置されて固定される天井管と、この天井管の両端部近傍部分に、それぞれ上下方向に変位自在に支持された複数本のリニアシャフトと、これらの各リニアシャフトの上端部にその両端部を支持された状態で車幅方向に配設された舟体と、この舟体の上面に支持された状態で架線と摺接する複数枚の摺り板と、天井管の両端部近傍部分と舟体の両端部近傍部分との間に設けられ、舟体に上向きの弾力を付与する複数のばねと、各摺り板が架線から供給される電流を舟体へ導くための導線とを備えている。
【0004】
そのほか、天井管を省いて舟体上に板ばね体を直接固定し、板ばね体上に多数の摺り板小片を列状に固着した構造の集電部が提案されている(たとえば特許文献2参照)。この集電部構造の場合、板ばね体は架線に沿った方向の断面において前部と後部がそれぞれ相対向するU字状に屈曲され、それらの前後部の摺り板固定部上に多数の摺り板小片が列状に並べて固着されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3297355号(図1および請求項1)
【特許文献2】
実公平3−26725号公報(第1図および第3図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の集電装置では、次のような点で改良すべき余地がある。すなわち、
▲1▼ 2件の上記公報のうち前者は、舟体内にばねを配設し天井管を介して摺り板取付板上に取り付けた摺り板を、架線に対し弾力支持して押し付ける構造で、摺り板の交換ができるように配慮されている。が、摺り板取付板の長手方向に沿って複数の摺り板を列状に前後2列並べており、2列の各摺り板は端部の位置を合わせて整然と並んでおり、また各摺り板は取付板上にビス等で固定され、取付板自体が柔軟性を持たないため、各列の摺り板はほとんど自由度を持たない。
【0007】
このため、架線から摺り板が離間する、いわゆる離線が起こりやすく、離線が起こるとアークを発生し、架線および摺り板が損傷して寿命が短く、しかも集電性能が低い。また、天井管を備えており、集電部の構造が複雑である。
【0008】
▲2▼ 後者は、摺り板の小片を多数用いているために、製造に手間がかかり、コストアップの要因になる。しかも摺り板小片を板ばね体上にロウ付けや溶接などにより固着しているので、摺り板小片が摩耗した場合に、摩耗したものだけを交換するとしても作業能率が悪く本来の性能も出せないことから、全ての摺り板小片を板ばね体ごと交換する必要があり、不経済である。また、板ばね体の前後方向中央位置で長手方向に完全に分離開放されているために、耐久性を欠く。
【0009】
ところで、本願の発明者は、この種の集電装置における摺り板の主に離線による損傷が、列状に並べて配置されている摺り板の端部ではなく、長手方向の中央部で起こりやすいことを見出した。つまり、摺り板とこの摺り板を弾性支持するばね系は、図10に示すように摺り板5の長手方向の両端を一対のばねkがそれぞれ上向きに付勢し、摺り板5を押し上げている。
【0010】
この状態で、▲1▼摺り板5の長手方向の中央に架線40が接触している場合(図10(a)参照)には、その接触位置での摺り板5のたわみδ1=P/(2×k)となる。
【0011】
▲2▼架線40の接触位置が摺り板5の長手方向の中央から一方(図10(b)では左側)へ距離aだけずれた場合(図10(b)参照)には、M(モーメント)=P×aが生じ、このばね系の回転剛性kφ=2×k×b2 となる。したがって、摺り板5のたわみδ2=P/(2×k)+M/kφとなる。
【0012】
▲3▼架線40の接触位置が摺り板5の長手方向の中央からさらに一方(図10(c)では左側)へ距離bずれて一方のばね8上まで移動した場合(図10(c)参照)には、M(モーメント)=P×bが生じる。したがって、摺り板5のたわみδ3=P/(2×k)+M/kφとなる。δ3=P/(2×k)+p×b/(2×k×b2)≒P/k p≒0
よって、たわみδ3=δ1×2となって、摺り板5の端部のたわみ量は中央位置におけるたわみ量の2倍となり、追従性が向上していることが確認される。
【0013】
このような理由で、摺り板5の中央位置付近では離線しやすい。なお、上記した図10はばね系を静的に捉えて表しているが、実際には動的な動きをする。しかし、基本的には変わらないので、十分に理解されるものと思われる。
【0014】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、構造が簡単で、摺り板の交換が容易であり、架線に対する摺り板の追従性を高めて集電特性を向上できる、集電装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明にかかる集電装置は、一つの舟体の上方に複数本の押上ばねを介して摺り板取付板(摺り板受け板)を弾性支持し、架線摺動範囲の有効幅を、3枚〜5枚でカバー可能な長さに分割した摺り板を、前記摺り板取付板上に着脱可能に取り付けた集電装置において、前記各摺り板の長手方向における端部を平面視で傾斜させ、前記摺り板を長手方向に長い平行四辺形状に形成し、前記摺り板取付板の幅方向中央位置付近にスリットを両端部を除いて長手方向に入れるとともに、前記摺り板取付板上に前記スリットを挟んで複数枚の前記摺り板をそれぞれ隣接する摺り板同士の端部を僅かに隙間をあけ且つ長手方向に列状に並べて取り付けるとともに、それらの各列の摺り板の端部位置を前後で摺り板の長さの略1/2ずらせて千鳥に取り付け、前列又は後列の前記摺り板のたわみやすい端部を架線に対し接触させて使用することを特徴としている。
【0016】
上記の構成からなる本発明の集電装置によれば、摺り板取付板にスリットを長手方向に入れ、そのスリットを挟んで隣接する複数の摺り板を僅かに隙間をあけ列状に並べて取り付けているため、各摺り板は、架線の車幅方向への移動や上下方向の起伏などに応じて長手方向(車幅方向)に傾斜したりスリットの前後で上下に変位したりすることにより架線に対し的確に追従する。このため、摺り板の一枚当たりの長さを短くしなくても集電特性が向上するので、摺り板の枚数を増やさなくて済み、メンテナンス上有利である。また、摺り板取付板は、スリットを有するが、その両端部は連続して、つまり一体に繋がっているために、耐久性に優れている。
【0018】
上記の構成からなる本発明の集電装置によれば、前後に列状に並べた複数の摺り板の端部を平面視で平行四辺形状に傾斜させているので、架線と摺り板との相対的な車幅方向への移動が円滑に行われる。また、前列と後列とで摺り板の端の位置が摺り板の長さの1/2ほどずれているために、架線に対し前後の一方の摺り板の端部が接触している場合には他方の摺り板は長さ方向のほぼ真ん中が接触し、常に前後列の少なくとも一方の摺り板は確実に架線に接触するから、集電性能が優れている。
【0020】
請求項1記載のように構成することにより、各摺り板は、架線の車幅方向への移動や上下方向の起伏などに応じて長手方向(車幅方向)に湾曲したりスリットの前後で上下に変位したりすることにより架線に対し確実に追従するため、摺り板の一枚当たりの長さを短くしなくても集電特性が向上するので、摺り板の枚数を増やさなくて済み、メンテナンス上有利であり、また摺り板取付板はスリットを有するが、その両端部は連続しているために、耐久性に優れている。
【0021】
請求項1に記載のように、各列の前記摺り板群は、3枚〜5枚の摺り板により摺り板摺動範囲の有効幅を構成することが望ましい。いいかえれば、1枚の摺り板の長さを135mm前後とすることである。
【0022】
さらに、請求項1に記載のように架線摺動範囲の有効幅を、3枚〜5枚でカバー可能な長さに分割した摺り板にする、いいかえれば1枚の摺り板の長さを135mm前後とすることにより、各列の摺り板群の枚数が少なくて済み、摺り板取付板に対する摺り板のビス等による取付に手間がかからず、また一部の摺り板が損傷した場合には、損傷した摺り板だけを交換すればよいので、交換が容易で経済的である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる集電装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は集電装置(以下、パンタグラフともいう)の全体概要を示す側面図、図2は図1の正面図、図3は図1の平面図である。
【0025】
図1〜図3に示すように、パンタグラフ1は、鉄道車両Tの屋根上に複数(合計4個)のガイシ23を介して固定されている。パンタグラフ1は、方形の固定板24、支持部材25、舟体支持部材26および舟体3を含む集電部材(集電部)2から構成されている。固定板24上には、集電部材2を昇降させるために、ばね28を含む昇降機構27が固設されている。支持部材25は、「く」の字状に屈曲自在に連結部材33にて連結された上部支持部材29と下部支持部材30とを備え、上部支持部材29および下部支持部材30には、集電部材2を昇降させる際に所定の姿勢を維持するための補助リンク31,32が介設されている。
【0026】
支持部材25の下端部は、固定板24上に設けられた固定部材34に角変位自在に取り付けられており、支持部材25の上端部の舟体支持部材26が舟体3を車両の進行方向に直角で水平を保ち、かつ上下方向に可動可能にしている。舟体支持部材26にばね(図示せず)を内蔵し、舟体3を上方へ付勢している。さらに、底板3aと摺り板取付板6との間に設けた後述のばね7・8によって摺り板5を付勢し、集電部材2は上方の架線(電車線)40に接触して電力を鉄道車両2に供給する。パンタグラフ1は、図1の2点鎖線で表した支持部材25を折りたたんだ状態から、昇降機構27のばね28による付勢力で実線で示す状態まで支持部材25を押し上げることによって集電部材2を上昇させ、そのばね28の付勢力を保持することによって架線40に対し集電部材2を押し付けて集電する。なお、舟体3と支持部材25など導通を図る必要があるところには、各部材間ごとに可撓導線等で導通を図っており、上記目的に適したものとしている。
【0027】
上記した構成については従来の集電装置と変わるものではないが、集電部材(集電部)2の構造に本発明の特徴部分があるので、以下に詳しく説明する。
【0028】
図4は本発明の集電装置に備えられる集電部材の実施例を示す平面図で、一部を省略した図面、図5は図4の集電部材の中心線における縦断面図と、その一部を拡大した縦断面図、図6は図4の集電部材におけるばねの配置を示す平面図および正面図と右側面図である。
【0029】
図4および図5に示すように、集電部材2は、主として、舟体3、ホーン4、摺り板5、摺り板取付板(摺り板受け板)6およびばね7・8から構成されている。
【0030】
舟体3は、アルミ合金などの軽合金により一体成形され、上方が開口した船形からなっている。舟体3は、底板3aと鉄道車両T(図1)の走行方向において前後両側縁から上方に折れ曲がって立設された一対の側板3bとを備えており、その長さ方向の両端部3dは上方に突出して取付溝3eが形成され、ホーン4の基端部がねじ止めにて取付溝3eに固設されている。両側の各ホーン4は、図5のように先端部分が水平状態からやや下向けに屈曲されて傾斜している。舟体3の底板3aが、上記した支持部材25上端の舟体支持部材26に連結されて支持されている。
【0031】
図4のように舟体3の前後の側板3bは、平面より見て前後に三角形に凹凸状に出入りし長手方向に連続した波形3cに形成され、また横断面視では舟体3の前後先端を頂点とする頂点に丸みをもった三角形の形で上記切欠きを形成している。また、ホーン4の前後両側面も、前後に凹凸状に出入りし長手方向に連続した波形4cに形成されている。舟板3の波形3cおよびホーン4の波形4cは、いずれも鉄道車両T(図1)の高速走行時における空力騒音を低減する目的で設けられている。
【0032】
図5に示すように、舟体3の開口部3’の上方にこの開口部3’に対応する平面視舟形の摺り板取付板6が、合計4本の押上コイルばね7・8により弾力的に支持されて上下動自在に配設されている。長手方向の中央部における前後の各コイルばね7は、摺り板取付板6の底面から下向きに突設したばね受け座6cと、舟体底板3aから上向きに突設したばね受け座3fとの間に縮装して介設され、摺り板取付板6を押し上げている。しかし、両側の各コイルばね8は、摺り板取付板6の底面から下向きに突設したばね支持筒6dの下端部を舟体底板3aに設けた開口3gから突出させ、下端に円板状のストッパー6eを固着し、ばね支持筒6dの周囲に巻装して摺り板取付板6と舟体底板3aのばね受け座3fとの間に介設されている。なお、図示は省略するが開口3gにはブッシュ等を嵌着して耐久性を確保している。このため、摺り板取付板6は単に押し上げられるだけでなく、摺り板取付板6が舟板3の上面位置よりも上へは押し上げられないように上限位置が規制されている。
【0033】
上記の摺り板取付板6は本例ではステンレス板と銅板とを重ね合わせた構造からなり、図4に示すように両端部の補助摺り板5a・5bを除いて、摺り板取付板6上に複数枚の摺り板5が前後2列に取り付けられている。摺り板5の概略の形状は平面視で舟体3の長手方向に長い平行四辺形をしている。また、舟体3の横断面では前後列の摺り板5・5を合わせると略台形(図9参照)をなし、それぞれの摺り板5が上面が水平な平行部を持ち、この平行部で主に集電し、前列の摺り板5は平行部より前部側が前端から30%程度の幅が前方に向けて、後列の摺り板5は後部側が後端から30%程度の幅が後方へ向けてそれぞれ厚みが漸次薄くなるように傾斜し、この傾斜部は空気抵抗の減少と騒音低減ならびに架線40の乗り上がりをスムーズにするために設けている。摺り板5の厚み〔最大平行部〕は本例では約10mmにしている。詳しくは、図4のように補助摺り板5a・5bは一体に構成され、架線40がホーン4から摺り板5上に滑らかに上がってこれるように摺り板5とホーン4との間に、補助摺り板5a・5bを設けている。とくにホーン側の補助摺り板5bは、この補助摺り板5bが振動してもその上面がホーン4の上面よりも上がらないように配慮して取り付けられている。なお、ホーン側補助摺り板5bおよびその近傍の舟体3は、摺り板5と補助摺り板5a・5bとの間における架線40の移行に支障がでないように、多角錐体の一部で形態を構成している。
【0034】
補助摺り板5a、5b部とも摺り板5を含む舟体3の基本形状は、摺り板5の本体部分と同一で、補助摺り板5bの部分で形状が縮小し、ホーン4との干渉部を逃げた形状になっている。これらの摺り板5・5a・5bは、図4に示すように隣接する摺り板5・5間と5・5aと5a・5b間とにそれぞれ僅かな隙間(架線40の移動に支障のない程度の最小限の隙間)をあけて前後にそれぞれ列状に配置され、摺り板取付板6の底面側から上向きに貫通する複数本の銅製取付ビス9にてねじ止めされている。このため、損傷した摺り板5、損傷した補助摺り板5a・5bだけを交換することができ、また、架線40との接触により摺り板5・補助摺り板5a・5bが摩耗する際に、取付ビス9も摺り板5・補助摺り板5a・5bの摩耗に伴って摩耗する。なお、摺り板取付板6は、重ね合わす2枚の薄板の間にCFRP板を挟んだり、ステンレス板の代わりにカーボン入りFRP板を使ったりして摺り板5の取付板として必要なばね剛性を確保する。
【0035】
各摺り板5の長さは本例では135mm前後と比較的長くし、架線40が摺動する有効幅(本例では600mm前後)の範囲を5枚の摺り板5にて担っている。このため、製作が容易でありメンテナンスも楽になる。また、摺り板取付板6の幅方向(前後方向)の中央位置において、両端部を除いて長手方向にかつ厚み方向に貫通するスリット10を設けている。このスリット10は、図6のようにその両端を丸穴10aにして応力集中による裂け目の発生を防止することが好ましい。また、スリット10は連続した1本のスリットに代えて、複数のスリットを断続的に一直線状に並べて構成してもよい(図8(a)参照)。なお、各部寸法は限定するものではないが、本例の場合は、摺り板5の長さは、架線40が摺動する有効幅(500〜600mm)の22〜27%とし、スリット10の幅(約1mm)は摺り板5の厚み(約10mm)の略1/10とし、隣接する摺り板5の隙間(約1mm)は摺り板5の厚みの略1/10とするのが好ましい。
【0036】
さらに、摺り板取付板6と舟体3の底板3aとの間に、略U状の導線11を接続し、架線40からの電流が摺り板5・摺り板取付板6・導線11へ流れ、舟板3内の導線11から支持部材25(図1)に沿った電力ケーブル(図示せず)により鉄道車両T(図1)の駆動モータや電力機器へ必要な電力が供給される。
【0037】
さて、上記した本発明の実施例にかかる集電部材2を備えたパンタグラフ1によれば、鉄道車両Tの運行時には、パンタグラフ1の上端部に支持した上述の集電部材2を構成する各摺り板5の上面を、パンタグラフ1に組み込んだ昇降機構27のばね28による付勢力と舟体支持部材26に内蔵のばねによる付勢力と上記集電部材2に組み込んだばね7・8との付勢力により弾性支持することによって、架線40の下面に押圧する。架線40の上下位置は微妙に変化するので、鉄道車両Tの走行に伴って集電部材2が上下移動し、各摺り板5の上面と架線40の下面との接触圧の変動を抑える。この場合に、架線40の大きなうねり(上下方向の比較的大きな変位)に対しては、パンタグラフ1を構成する上部支持部材29と下部支持部材30とがばね28に抗して変位することにより集電部材2を上下動させて、各摺り板5を架線40に追従させる。また、架線40の小さなうねり(上下方向の比較的小さな変位)に対しては舟体支持部材26内のばね、および舟体3に対して摺り板5がその取付板6とともにばね7・8に抗して上下動することにより架線40に追従させる。同時に、摺り板取付板6上にスリット10を挟んで前後の列状に並んだ摺り板5群が、相互に上下方向に変位するとともに架線40に接触する摺り板5が長手方向に湾曲して変形を許容することにより、架線40に対し的確に追従する。
【0038】
図7は摺り板取付板6の中央にスリット10を入れる図4の実施例の場合(図7(b))と、スリット10を入れない従来例の場合(図7(a))とにおける各振動系を示すもので、図7(a)では従来の3元系パンタグラフにおいてm3からの架線40の離線がすぐに離線にむすびつくことを表し、図7(b)ではm2・k2 の振動系が2分割されているので、いずれか一方の摺り板5に架線40が接触していれば、電力供給が継続され、離線を生じることがないことを表している。図7において、m1 は支持部材25の質量、m2は舟体3の質量、k1 は舟体支持部材26内に組み込まれたばね(図示せず)、m3・m3’は振動によって局部的に動いている摺り板5などの質量、k2・k2’はばね7・8および振動によって局部的にばね作用している摺り板取付板6の剛性、P0は基準押付力をそれぞれ表している。
【0039】
摺り板5群は車両の進行方向に関して前後2列に配置されているため、前後の摺り板5・5の上面と架線40の下面との接触面積が十分に確保され、大きな電力の供給を可能にしている。また、前後2列の摺り板5群は、1枚の摺り板5の長さの1/2ほど長手方向に位置をずらせて千鳥状に配置しているため、前後の少なくとも一方の摺り板5が架線40に接触し、電力を確実に取り入れることができる。上述のとおり、とくに前後の一方の摺り板5の長手方向の中央位置が架線40に接触した場合に比べて、他方の摺り板5はたわみやすい端部が架線40に接触している方が優れた追従性能を有するので、集電性能が良好な状態に保持される。さらに、摺り板5の両端部はそれぞれ一方へ傾斜させているので、架線40が摺り板5から相対的に車幅方向(進行方向に直交した方向)へ移動する場合に、隣接する他方の摺り板5へスムーズに乗り移ることができる。なお、舟体3の両端から車両の幅方向両側下方に延びた丸棒状のホーン4が、ポイントの通過時や架線40の渡り部分の通過時などで架線40の位置が鉄道車両Tの中心部から大きくずれて舟体3の上方から離れている場合に、架線40を舟体3の上方にすくい上げる。
【0040】
以上の理由により、本発明にかかる集電装置1は摺り板5の長さをとくに短縮せず、長く保っているにも拘わらず集電特性が非常に優れている。したがって、架線40の有効摺動幅である、通常500〜600mmの範囲を3〜5枚程度の少ない枚数の摺り板5で担うことができ、製作が容易で安価に製造可能で、メンテナンスが簡単になるなどの利点がある。
【0041】
上記に本発明にかかる集電装置1のとくに集電部材(集電部)2の構造について実施形態の一つを説明したが、下記のように実施することができる。
【0042】
▲1▼ 図8は他の実施例にかかる集電部材を示す、図6に対応する図面である。本例の集電部材2では 図8に示すように中心線上の両端部にばね12・12を配置するとともに、前後列の摺り板5と摺り板5の隙間にばね13をそれぞれ配置している。その他の構成については上記の実施例と共通するので、共通する部材には同一の符号を用いて図面上に表し、説明を省略する。本例の場合には、ばね12・13の付勢力を弱くし、多数のばね12・13を全体に均等に配置している。
【0043】
▲2▼ 図9は舟体3上方に摺り板取付板6を弾力支持するばね構造を示すもので、図9(a)はスリット10を挟んで前後の摺り板取付板6を個々に独立したばね14で支持する構造の断面図、図9(b)はスリット10間に跨って前後の摺り板取付板6部分を共通のばね15で支持する構造の断面図である。図9(b)ではばね15の上端にイコライザー16を装着し、前後の摺り板取付板6部分にばね力を均等に分配している。その他の構成については上記の実施例と共通するので、共通する部材には同一の符号を用いて図面上に表し、説明を省略する。なお、図9においてスリット10の幅(隙間)を図面上ではわかりやすくするために拡大して幅広く表現しているが、実際には1mm程度の隙間である。また、本例の場合には、前後の摺り板取付板6部分がそれぞれイコライザー16の突起部16a・16b上に揺動自在に支持されている。ばね15の本数を最小限に抑えられるので、構造が簡素化される。たとえば図6の中央部の2つのばね7・7を図9(b)の1つのばね15に代えてばねの本数を減らすことによって、構造を簡略化できる。
【0044】
▲3▼ 図示は省略するが、摺り板取付板6を舟体3の左右両端で固定することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明の集電装置には、次のような優れた効果がある。
【0046】
(1)請求項1の発明では、摺り板は、架線の車幅方向への移動や上下方向の起伏などに応じて長手方向(車幅方向)に湾曲したりスリットの前後で上下に変位したりすることにより架線に対し的確に追従するので、摺り板の一枚当たりの長さを短縮しなくても集電特性が向上するから、摺り板の枚数を増やさなくて済み、メンテナンス上有利である。また摺り板取付板は、スリットを有するが、その両端部は一体に繋がっているために、耐久性に優れている。
【0047】
(2)また、前後に列状に並べた摺り板の端部を平面視で平行四辺形状に傾斜させているので、架線と摺り板との相対的な車幅方向への移動が円滑に行われる。さらに、前列と後列とで摺り板の端の位置が摺り板の長さの1/2ほどずらせているので、架線に対し前後の一方の摺り板の端部が接触している場合には他方の摺り板は長さ方向のほぼ真ん中が接触し、常に前後列の少なくとも一方の摺り板は確実に架線に接触するから集電性能が優れている。
【0048】
(3)摺り板取付板の幅方向中央位置付近にスリットを長手方向に入れることにより、各摺り板が架線の車幅方向への移動や上下方向の起伏などに応じて長手方向に湾曲し易くなったりスリットの前後で上下に変位したりすることにより架線に対し的確に追従するので、摺り板の一枚当たりの長さを短縮しなくても集電特性が向上する。この結果、摺り板の枚数を増やさなくて済み、メンテナンス上有利であり、また摺り板取付板はスリットを有するが、その両端部は連続しているために耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の集電装置(以下、パンタグラフともいう)の全体概要を示す側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】本発明の集電装置に備えられる集電部材の実施例を示す平面図で、一部を省略している。
【図5】図5(a)は図4の集電部材の中心線における縦断面図、図5(b)はその一部を拡大した縦断面図で、右側はばね8の伸長時を、左側はばね8の圧縮時を表している。
【図6】図6(a)は図4の集電部材におけるばねの配置を示す平面図、図6(b)は同正面図、図6(c)は同右側面図である。
【図7】図7(a)はスリット10を入れない従来例の場合の振動系を示す模式図、図7(b)は摺り板取付板6の中央にスリット10を入れる図4の実施例の場合の振動系を示す模式図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる集電部材を示す、図6に対応する図面である。
【図9】舟体3上方に摺り板取付板6を弾力支持するばね構造を示すもので、図9(a)はスリット10を挟んで前後の摺り板取付板6を個々に独立したばね14で支持する構造の断面図、図9(b)はスリット10間に跨って前後の摺り板取付板6部分を共通のばね15で支持する構造の断面図である。
【図10】摺り板5上の中央から長手方向の端部へ接触力P(架線への反押付力に相当)が移動した場合のばね系および摺り板5の挙動を示す模式図で、図10(a)は中央位置、図10(b)は中央から一方へ距離aほどずれた位置、図10(c)は中央から一方へ距離bほどずれた端部位置の場合をそれぞれ表している。
【符号の説明】
1 パンタグラフ(集電装置)
2 集電部材(集電部)
3 舟体
4 ホーン
5 摺り板
5a・5b 補助摺り板
6 摺り板取付板(摺り板受け板)
7・8・12・13・15・28 ばね
9 取付ビス
10 スリット
11 導線
40 架線(電車線)
Claims (1)
- 一つの舟体の上方に複数本の押上ばねを介して摺り板取付板を弾性支持し、架線摺動範囲の有効幅を、3枚〜5枚でカバー可能な長さに分割した摺り板を、前記摺り板取付板上に着脱可能に取り付けた集電装置において、
前記各摺り板の長手方向における端部を平面視で傾斜させ、前記摺り板を長手方向に長い平行四辺形状に形成し、
前記摺り板取付板の幅方向中央位置付近にスリットを両端部を除いて長手方向に入れるとともに、前記摺り板取付板上に前記スリットを挟んで複数枚の前記摺り板をそれぞれ隣接する摺り板同士の端部を僅かに隙間をあけ且つ長手方向に列状に並べて取り付けるとともに、それらの各列の摺り板の端部位置を前後で摺り板の長さの略1/2ずらせて千鳥に取り付け、前列又は後列の前記摺り板のたわみやすい端部を架線に対し接触させて使用することを特徴とする集電装置。
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