JP4688696B2 - 鉄道車両用集電舟装置 - Google Patents

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Description

この発明は、架線から電力を取り入れる為、新幹線等、高速で運転する鉄道車両の屋根上に設置した状態で使用する鉄道車両用集電舟装置の改良に関する。具体的には、摺り板の架線への追従性の向上を図り、これら架線と摺り板との接触性(適切な接触状態を保ち続ける性能)を確保される構造の低コスト化を図るものである。
鉄道車両の屋根の上方にはパンタグラフを介して集電舟を支持し、架線から電力を取り入れる様にしている。即ち、この集電舟の上面に支持した、燒結金属等の導電材製の摺り板を架線の下縁に向け弾性的に押し付け、この架線から車両に電力を取り入れる様にしている。この様なパンタグラフ及び集電舟装置のうち、新幹線等の高速車両に使用するものは、運転時に発生する気流騒音の低減並びに架線への追従性を考慮して、在来線に使用していたものとは異なる構造のものを使用している。
図2は、この様な点を考慮して高速車両用に開発された集電舟装置のうち、特許文献1に記載されたものを示している。この従来構造の場合には、パンタグラフを構成する上枠1の上端部に、天井管2の中間部を支持し、この天井管2の周囲に中空の舟体3を、この天井管2に対する若干の昇降自在に弾性支持している。この為にこの舟体3内に、リニアシャフト4、4及びばね5、5、並びに通電の為の導線6、6を設けている。摺り板7は、上記舟体3の上面に設置している。
この様な構造であるから、高速運転時にも、天井管2、リニアシャフト4、4、ばね5、5、導線6、6の周囲を空気が流れず、その分、気流騒音の低減を図れる。又、架線の上下位置が細かく変化した場合に、上記舟体3が上記天井管2に対し変位する事で、この変化に追従する。言い換えれば、この天井管2が上下方向に変位する必要がない。従って、上記架線に追従する為に上下方向に変位する部分の慣性質量を少なく抑えて、この架線への追従性を良好にできる。架線の上下位置が大きく変化した場合には、上記上枠1を昇降させて、上記摺り板7をこの架線に追従させる。尚、鉄道車両用集電舟装置の分野で言う天井管とは、パンタグラフの上端部に車両の幅方向に配設する支持枠状の部材の事を言う。以前(在来線で使用されていた菱形のパンタグラフの場合)は実際に管状に構成されていたが、現在は(特に高速鉄道用の場合には)管状とは限らない。
上述の様な特許文献1に記載された従来構造の場合には、従前の構造に比べれば、気流騒音の低減と架線への追従性向上とを図れるが、架線への追従性向上の点に関しては、未だ改良の余地がある。即ち、上記従来構造では、上記架線の上下位置が細かく変動した場合には、上記舟体3と、この舟体3に固定された左右1対の枠棒8、8とが、上記摺り板7全体と一緒に昇降する。従って、上記天井管2及び前記上枠1が含まれないとは言え、慣性質量がかなり大きくなる事は避けられない。この為、鉄道車両をより高速化する場合に、上記摺り板7の上面と上記架線との接触性(適切な接触状態を保ち続ける性能)が悪化する可能性がある。上記上枠1に起立方向の弾性を付与する為にパンタグラフに組み込んだばね、並びに、上記天井管2に上記舟体3に対する上昇方向の弾力を付与する上記各ばね5、5の弾力を大きくすれば、上記追従性を向上させる事はできる。但し、この場合には、上記摺り板7の上面と上記架線との接触面圧が高くなり、これら摺り板7及び架線の摩耗が著しくなる為、好ましくない。
一方、架線への追従性向上を図るべく、図3に略示する様な構造が考えられる。この図3に示した構造では、可撓性を有する撓み板9の両端部を舟体3(図2参照)に対し、1対の支点10、10を中心とする揺動変位を可能に支持する。この状態で上記撓み板9の長さ方向が、鉄道車両の幅方向に一致する。そして、この撓み板9の上面に複数枚の摺り板11、11を、この撓み板9の長さ方向に直列に支持固定する。この長さ方向に隣り合う摺り板11、11同士の間には隙間を介在させる。この様な構造によれば、上記撓み板9の上方に存在する架線12の上下位置が細かく変動した場合に、この架線12の細かい上下動に合わせて上記撓み板9が弾性変形する事で、この架線12と、この架線12の下縁に対向している、何れかの摺り板11との接触性を良好に保てる。
又、未公開ではあるが、特願2005−112400号には、図4〜21に示す様な集電舟装置が開示されている。この先発明に係る集電舟装置は、撓み板の両端部の、弾性変形に基づく上下方向の変位量(ストローク)を確保して、架線の上下方向変位に対する摺り板の追従性向上を図るべく発明したもので、舟体3aと、摺り板支持体13と、複数枚の摺り板11a、11bとを備える。
このうちの舟体3aは、アルミニウム合金等の軽金属により、船状に形成し、図示しないパンタグラフ枠の上端部に、鉄道車両の幅方向に亙って(舟体3aの長さ方向をこの軸方向に一致させた状態で)支持される。
又、上記摺り板支持体13は、上記舟体3a内に、アルミニウム合金等の軽金属製の支持フレーム14を介して収納される。この様に舟体3a内に収納された状態で上記摺り板支持体13は、上記支持フレーム14と共に、この舟体3aの底板部15の上方に、この舟体3aに沿って上記鉄道車両の幅方向に配置される。この様な摺り板支持体13は、この幅方向中央部に配置された1枚の撓み板9aと、1対の端部支持板16、16とから成る。このうちの撓み板9aは、ばね鋼板等の弾性を有する金属板により造られたもので、上記車両の幅方向に長いばね板(撓み板)状のものとしている。従って、図6に模式的に示す様に、上下方向に加わる荷重に基づき、長さ方向に亙り下方に向けて凹状に(或は上方への凸状の突出量が少なくなる様に)弾性変形する(撓む)。
又、上記各端部支持板16、16は、アルミニウム合金等の軽金属により造られたもので、上記撓み板9aの長さ方向両端部に配置されている。そして、上記撓み板9aの両端部を、上記舟体3aの底板部15に支持固定した上記支持フレーム14に、上記各端部支持板16、16を介して揺動自在に支持する事により、上記撓み板9aを上記舟体3aに対し昇降自在としている。
この為に、上記撓み板9aの両端部と、車両の幅方向に関して上記各端部支持板16、16の内端部とを、この車両の進行方向に配置された第一の連結軸17、17により、揺動変位自在に連結している。図示の例の場合、上記撓み板9aの両端部に1対の支持片18a、18aを固定し、これら各支持片18a、18aに上記第一の連結軸17、17を支持している。この様な支持片18a、18aは、図12、14、20に示す様に、上記撓み板9aの両端部を固定する平板状の支持板部19と、車両の進行方向に関してこの支持板部19の両端縁から下方に折れ曲がった1対の垂下壁部20、20と、車両の幅方向に関してこれら両垂下壁部20、20の外端縁から上記各端部支持板16、16に向けて延出した1対の腕部21、21とを備える。そして、このうちの各腕部21、21に上記第一の連結軸17、17の中間部を、それぞれ支持している。
一方、上記車両の幅方向に関して上記各端部支持板16、16の内端部に、図11、12に示す様に、この車両の進行方向に関して上記各腕部21、21と重畳する状態(各腕部21、21を挟む状態)で、それぞれ舌片22、22を設けている。これら各舌片22、22は、上記第一の連結軸17、17と整合する位置に支持孔23、23を設けている。そして、これら各支持孔23、23に上記第一の連結軸17、17の両端部を遊合(緩く挿入)する事により、上記撓み板9aと上記各端部支持板16、16とを揺動変位自在に連結している。又、上記車両の幅方向に関して上記各端部支持板16、16の外端部(車両の幅方向に関して撓み板9aと反対側の端部)と、上記舟体3aに支持された前記支持フレーム14の両端部とを、上記車両の進行方向に配置された第二の連結軸24、24により揺動変位自在に連結している。
図示の例の場合、上記支持フレーム14の両端部に、この支持フレーム14を構成する底板部25から上方に突出する状態で、支持壁部26、26を設けている。そして、上記車両の幅方向に関してこれら各支持壁部26、26の内側面に、図11〜14に示す様に、上記各端部支持板16、16の外端部に向けて延出する状態で1対の腕部27、27を設け、これら各腕部27、27に上記第二の連結軸24、24の中間部を、それぞれ支持している。又、上記各端部支持板16、16の外端部に、上記車両の進行方向に関して上記各腕部27、27と重畳する状態(各腕部27、27を挟む状態)で、それぞれ舌片28、28を設けている。これら各舌片28、28は、上記第二の連結軸24、24と整合する位置に支持孔29、29を設けている。そして、これら各支持孔29、29に上記第二の連結軸24、24の両端部を遊合(緩く挿入)する事により、上記各端部支持板16、16を上記支持フレーム14に対し揺動変位自在に連結している。
又、上記撓み板9aに上記第一、第二各連結軸17、24と平行に昇降軸30、30を設け、これら各昇降軸30、30を、上記支持フレーム14に設けたガイド孔31、31に、それぞれ昇降自在に遊合している。図示の例の場合、上記支持フレーム14の底板部25の上面の長さ方向5個所位置に、互いにほぼ等間隔に離隔した状態で、上記各ガイド孔31、31を設けている。又、これと共に、上記撓み板9aの両端部に固定した前記支持片18a、18a、並びに、この撓み板9aの下面で上記各ガイド孔31、31と整合する位置に固定した別の支持片18b、18bに、上記各昇降軸30、30の両端部を支持固定している。
上記各支持片18a、18bのうちで、上記撓み板9aの下面に支持固定した上記別の支持片18b、18bは、例えば図14、21に示す様に、矩形枠状の支持枠部32と、車両の進行方向に関してこの支持枠部32の両端縁から下方に折れ曲がった1対の垂下壁部33、33とを備える。この様な別の支持片18b、18bの垂下壁部33、33、並びに、上記撓み板9aの両端部に固定した上記各支持片18a、18aの垂下壁部20、20に、上記昇降軸30、30の両端部を、それぞれ支持固定している。そして、これら各昇降軸30、30の中間部を上記各ガイド孔31、31に緩く挿通した状態で、上記撓み板9aを上記舟体3aに対し昇降自在とすると共に、前記各端部支持板16、16を前記第二の連結軸24、24を中心に揺動自在としている。尚、上記各ガイド孔31、31の内径は、上記撓み板9aの昇降を許容すべき範囲で、上記各昇降軸30、30の外径よりも大きくしている。即ち、上記各ガイド孔31、31の内径のうちの上下方向に関する大きさを規制する事で、上記撓み板9aの昇降量を適正値に規制している。
又、上記撓み板9a並びに上記各端部支持板16、16の下面と、上記舟体3aに支持固定された上記支持フレーム14の底板部25の上面との間に、圧縮コイルばね34、34等の弾性部材を、それぞれ設けている。図示の例の場合、上記支持フレーム14の底板部25の上面の一部に、上記各圧縮コイルばね34、34の下端部を係止する為の、円形若しくは円環状の凹部35、35を設けている。又、これと共に、上記撓み板9a並びに各端部支持板16、16の下面に、上記各圧縮コイルばね34、34の上端開口部を外嵌する為の、円形若しくは円環状の凸部36、36を設けている(ねじ止め固定している)。
そして、この様に各凹部35、35と各凸部36、36との間に上記各圧縮コイルばね34、34を設置した状態で、上記撓み板9a並びに各端部支持板16、16に、上方に向かう方向の弾力を付与している。尚、この弾力に基づき、これら撓み板9a並びに各端部支持板16、16が過度に上方に変位するのを防止する為に、前述の様に、上記各昇降軸30、30を上記各ガイド孔31、31に遊合させている。そして、この様な構成により、上記各撓み板9a並びに各端部支持板16、16に、上方に向かう弾力を付与した状態で、若干の(例えば中立位置に対して、端部支持板16、16の内端部で±3mm程度、撓み板9aの中央部で±5mm程度の)昇降を自在に支持している。
上述の様にして、上記舟体3aの上面に支持フレーム14を介して設置した、上記摺り板支持体13の上面に、前記各摺り板11a、11bを設置している。図示の例では、これら各摺り板11a、11bは、後述する通電板37を介して、上記支持フレーム14の両端部に設けた支持壁部26、26の上面に1個ずつ、上記各端部支持板16、16の上面に1個ずつ、上記撓み板9aの上面に8個、それぞれ載置された状態で、下方から挿通したねじ38、38により支持固定されている。この為に、上記各摺り板11a、11bには、これら各ねじ38、38を螺合させる為のねじ孔を設けている。上記各摺り板11a、11bのうちで、上記撓み板9a並びに上記各端部支持板16、16の上面に支持固定された各摺り板11b、11bはそれぞれ、これら撓み板9a並びに各端部支持板16、16と共に、若干の昇降並びに揺動自在である。
この様な各摺り板11a、11bの上面は、鉄道車両が平坦部に存在し、且つ、上記各撓み板9a並びに各端部支持板16、16が中立位置に存在する場合に、同一の水平面上に位置する。尚、上記車両の幅方向に関するこれら各摺り板11a、11bの端縁は、この車両の進行方向に対し傾斜し、且つ、微小隙間を介して近接対向している。この様に構成する理由は、架線が隣り合う摺り板11a、11bの不連続部に位置した場合でも、この架線が不連続部に沈入する事を防止し、これら摺り板11a、11bと架線との擦れ合い部分に、過大な面圧が作用しない様にして、これら摺り板11a、11bや架線が損傷を受ける事を防止する為である。
又、上記各摺り板11a、11bの下面と、上記撓み板9a、各端部支持板16、16の上面、並びに、上記支持フレーム14の両端部に設けた支持壁部26、26の上面との間に、通電板37を挟持している。この通電板37は、銅又は銅系合金製の薄板で、1個の集電舟装置に就いて1枚だけ設けている。又、この通電板37のうちで上記撓み板9aと各端部支持板16、16とを跨ぐ部分、並びに、これら各端部支持板16、16と上記支持フレーム14の支持壁部26、26とを跨ぐ部分を、下方に突出する状態で湾曲させている。そして、この様に湾曲させる事により、この部分の曲げ剛性を小さく、且つ、伸縮を可能とし、上記撓み板9a並びに各端部支持板16、16が上下方向に相対変位する際に要する力を小さくしている。尚、上記通電板37の一部には、架線から取り入れた電力を、車両側に取り入れる為の、図示しないケーブルの端部を接続する。
又、車両の幅方向に関して、前記舟体3aの両端部には、1対の枠棒8の基端部を固定している。これら各枠棒8は、鉄道車両がポイントを通過する際等に、稀に架線が舟体3aの上方から側方に外れる可能性があるので、外れた場合に、鉄道車両の進行に伴って上記架線を、再度上記舟体3aの上方にすくい上げる為に設けている。
上述の様な先発明に係る集電舟装置は、上記舟体3aの下面中央部を、図示しないパンタグラフ枠の上端部に支持し、摺り板11a、11bの上面に架線を摺接させる状態で使用する。通常走行時にこの架線は、これら各摺り板11a、11bのうちで、撓み板9a並びに端部支持板16、16の上面に支持固定されたものの何れかの上面と擦れ合う。上記架線が支持フレーム14の支持壁部26、26の上面に支持固定された、両端の摺り板11a、11aの上面と擦れ合うのは、ポイント通過時等、低速走行時に限られる。そして、通常(高速)走行時に上記架線と擦れ合うのは、上記撓み板9a並びに各端部支持板16、16の上面に支持固定された上記各摺り板11b、11bのうち、1枚乃至2枚の摺り板11bのみである。即ち、多くの場合に上記架線は、何れか1個乃至2個の摺り板11bの上面と擦れ合う。
この状態でこの架線の上下位置が細かく変化した場合、この架線と擦れ合う当該摺り板11bが、上記撓み板9aの弾力、並びに、この撓み板9a及び各端部支持板16、16の下面と上記支持フレーム14の上面との間に設けた各圧縮コイルばね34、34の弾力に基づいて上昇したり、或いは、これら撓み板9aの弾力並びに圧縮コイルばね34、34の弾力に抗して下降する。即ち、上記架線の変動に合わせて上記各摺り板11b、11bの上面が、摺り板支持体13を構成する上記撓み板9aの弾性変形並びに上記各圧縮コイルばね34、34の弾性変形に基づき、上下方向に変位する。又、この際、上記端部支持板16、16が必要に応じて、上記舟体3aに固定された支持フレーム14との間に設けた第二の連結軸24、24を中心として揺動する事により、上記撓み板9a全体を、上記舟体3aに対し昇降させる。
この様な先発明の構造の場合、前述の図3に示した構造の様に、上記架線が撓み板9aの両端部近傍に位置する場合に追従性が悪化する事はない。即ち、上記架線が上記各摺り板11b、11bのうちで、車両の幅方向中央部に存在する摺り板11bに対向する場合だけでなく、幅方向両端部近くの摺り板11bに対向する場合でも、上記撓み板9aの弾性変形、並びに、この撓み板9aの上記舟体3aに対する昇降に基づいて、当該摺り板11bを上記架線の変動に追従させる事ができる。又、この様に摺り板11b、11bが架線の変動に追従する際、これら各摺り板11b、11bと共に上記舟体3a、延いてはこの舟体3aを支持するパンタグラフの上枠が一緒に昇降する必要はない為、慣性質量が大きくなる事もない。
即ち、上記架線との接触に基づいてこの架線と擦れ合う何れかの摺り板11bが上下方向に変位する場合に、上記撓み板9a(必要に応じて各端部支持板16、16)並びにこの撓み板9a(必要に応じて各端部支持板16、16)の上面に支持固定された別の摺り板11b、11bも多少これにつられて昇降するが、この様な場合でも、昇降する部分の慣性質量は、摺り板11a、11b全体と舟体3aとを合わせた慣性質量に比べて遥かに小さい。この為、上記各摺り板11b、11bの上記架線への追従性の向上を図れ、これら架線と摺り板11b、11bとの接触性を良好に保てる。
ところで、これら各摺り板11b、11bの上記架線への追従性を良好にする為には、これら各摺り板11b、11bを上記撓み板9aの上面に固定した状態で、この撓み板9aを撓み易くしておく必要がある。この状態でこの撓み板9aを撓み易くする為には、隣り合う摺り板11b、11b同士の間に隙間を介在させる事は勿論、これら各摺り板11b、11bの下面と上記撓み板9aの上面との接触面積を狭くする必要がある。具体的には、この撓み板9aの長さ方向(鉄道車両の幅方向)に関して、上記各摺り板11b、11bの下面とこの撓み板9aの上面とが当接している部分の幅を狭くする必要がある。逆に言えば、この撓み板9aの上面と上記各摺り板11b、11bの下面とが、これら各摺り板11b、11bの下面全体で当接していると、上記撓み板9aが(特に上面が凹面となる方向に)撓みにくくなる。この結果、上記各摺り板11b、11bの上記架線への追従性が悪化する。
この為、撓み板9、9aの上面に複数枚の摺り板11、11bを配置した構造を有する集電舟装置を構成する場合には、これら各摺り板11、11bとして、図22〜24に示す様な形状を有するものを使用して、これら各摺り板11、11bの下面と上記撓み板9、9aの上面とが当接している部分の幅を狭くする事が考えられている。図22〜24に示した摺り板11(11b)は、鉄系の燒結金属製で、下面の一部を残部よりも下方に突出させる事で、この一部に凸部39を形成している。この凸部39は、上記摺り板11(11b)を上記撓み板9(9a)の上面にねじ止め固定して集電舟装置を構成し、更にこの集電舟装置をパンタグラフ枠の上端部に装着した状態で、鉄道車両の走行方向に配置される。上記摺り板11(11b)の下面と上記撓み板9(9a)の上面とは、上記凸部39の下面部分でのみ当接するので、これら両面同士が当接している部分の、上記撓み板9(9a)の長さ方向(鉄道車両の幅方向)に関する幅wは、上記摺り板11(11b)全体の幅Wよりも十分に小さく(w≪W)抑えられる。この為、この摺り板11(11b)の上記架線への追従性を良好にできる。
ところが、図22〜24に示す様な摺り板11(11b)は、製造コストが嵩む為、改良が望まれている。製造コストが嵩む原因は、上記凸部39を有する結果、上記摺り板11(11b)の厚さ寸法が部分的に異なる為である。即ち、この様な摺り板11(11b)を燒結のみで成形すると、成形品の密度が部分的に異なる等、当該摺り板11(11b)の品質が悪化する。この為、燒結のみの製造方法は採用できず、燒結と削り加工とを組み合わせざるを得ない為、上述の様に製造コストが嵩む。即ち、燒結の場合、粉末を成形品の厚さ方向に加圧しつつ加熱して固める為、部分的に厚さ寸法が異なる成形品を得ようとしても、部分的に加圧程度が異なる様になり、良質の燒結品を得る事はできない。この為、図22〜24に示す様な摺り板11(11b)を燒結金属により造る場合、厚さが均一な中間成形品を造った後、この中間成形品に削り加工を施す。
具体的には、全面に亙って厚さ寸法が均一な中間成形品を造った後、この中間成形品の下面を、この下面のうちで上記凸部39となるべき長さ方向(図22〜23の左右方向)中間部を除いて削り取り、この凸部39を形成する。又、上記中間成形品の幅方向(図22の上下方向、図23〜24の左右方向)両端部を斜めに削り取って面取り部40、40を形成する。合わせて、上記摺り板11(11b)を上記撓み板9(9a)の上面に支持固定する為のねじ38、38(図15〜18参照)を螺合させる為のねじ孔41、41を、上記凸部39に整合する部分に形成する。
上記摺り板11(11b)を構成する鉄系の燒結金属は硬く、上述の様な、中間成形品の削り取り作業は面倒で時間を要する。又、削り取りの為に使用する工具の寿命も短くなる。特に、下面の一部に上記凸部39を形成する為、上記中間成形品の下面の残部を削り取る作業は面倒で、製造コストを上昇させる程度が著しい。
特許第3297355号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、撓み板の上面に、それぞれが燒結金属製である複数枚の摺り板を結合固定した鉄道車両用集電舟装置を改良し、構成部材の加工を容易にして、低コスト化を図れる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の鉄道車両用集電舟装置は、可撓性を有する撓み板と、複数枚の摺り板とを備える。
このうちの撓み板は、鉄道車両の幅方向に長さ方向を一致させた状態で配置されて、パンタグラフ枠の上端部に支持された舟体等に両端部を支持される。
又、上記各摺り板は、上記撓み板の長さ方向に直列に、互いの間に隙間を介在させて配置された状態で、この撓み板の上面に結合固定されている。
特に、本発明の鉄道車両用集電舟装置に於いては、上記各摺り板は、燒結金属製の摺り板本体と、非燒結金属製の補助板とから成る。
このうちの摺り板本体は、上記撓み板の長さ方向に関して厚さ寸法が変化せず、下面を平坦面としている。
又、上記補助板は、上面を平坦面とすると共に、下面を、上記撓み板の長さ方向の一部でのみ下方に突出させた、段付面としている。
この様な補助板と上述の様な摺り板本体とは、これら補助板の上面と摺り板本体の下面とを当接させた状態で結合する。更に、この補助板の下面の一部で残部よりも下方に突出している部分を上記撓み板の上面に当接させた状態で、上記各摺り板をこの撓み板の上面に結合固定する。
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、摺り板本体を構成する燒結金属を鉄系とする。又、補助板を構成する非燒結金属をアルミニウム系合金とする。更に、撓み板の長さ方向に関するこれら摺り板本体及び補助板の端縁を、鉄道車両の進行方向に対して傾斜させる。
上述の様に構成する本発明の集電舟装置によれば、構成部材の加工が容易になり、低コスト化を図れる。即ち、燒結金属製の摺り板本体は、少なくとも撓み板の長さ方向に亙り厚さ寸法が変化しない為、この摺り板本体の下面に、前述した従来構造で必要であった、凸部39(図22〜24参照)を形成する為の切削加工が不要になる。上記摺り板本体のうち、鉄道車両の進行方向に関して前後両端縁部に面取り部を形成する場合には、この前後両端縁部を削り取る為の切削加工が必要になるが、この前後両端縁部を削り取る為の切削加工は、上記図22〜24に示した構造の場合も必要であるし、上記凸部39を形成する為に下面を削り取る作業に比べれば容易である。
一方、補助板は、架線と擦れ合う事がない為、特に耐摩耗性を要求されず、従って、加工が容易な金属、例えば、アルミニウム系合金、銅系合金等の、比較的軟質な金属により造れる。この様な軟質金属製の補助板の下面を段付面とする加工は、鍛造、一体押出、切削等、何れの加工方法を採用した場合でも、容易に行なえる。そして、上記撓み板の上面に対向する、上記補助板の下面を、この撓み板の長さ方向の一部でのみ下方に突出した段付面とすれば、架線の上下方向変位に伴う、この撓み板の上下方向の弾性変形を、円滑に行なわせて、上記各摺り板本体の上面と上記架線の下縁との擦れ合い状態を良好な状態に保てる。
又、請求項2に記載した様に、摺り板本体を構成する燒結金属を鉄系とすると共に、補助板を構成する非燒結金属をアルミニウム系合金とすれば、摺り板の耐久性確保と、架線の上下方向変位に対する摺り板の追従性向上とを図れる。即ち、架線と擦れ合う摺り板本体を構成する燒結金属を、優れた耐摩耗性を有する鉄系とする事で、この摺り板本体を含む摺り板の交換サイクルを長くできる。又、上記補助板をアルミニウム合金製とする事により、この補助板を含む摺り板、延ては摺り板を含む集電舟装置の軽量化、慣性質量の低減を図れ、上記架線の上下方向変位に対する摺り板の追従性向上を図れる。更に、撓み板の長さ方向に関するこれら摺り板本体及び補助板の端縁を、鉄道車両の進行方向に対し傾斜させれば、上記架線が、隣り合う摺り板本体同士の間に落ち込む事を防止して、これら架線と摺り板本体との擦れ合い部の面圧が過大になる事を防止できる。
図1は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、摺り板42を、鉄系燒結金属製の摺り板本体43と、アルミニウム合金製の補助板44とを組み合わせた構造として、構成部材の加工を容易にする事による低コスト化と、軽量化に基づく架線への追従性向上とを図る点にある。上記摺り板42を結合固定する撓み板9a、この撓み板9aの両端部を支持する舟体3a等の構造は、前述の図4〜21に示した先発明の構造と同様である。そこで、この先発明の構造と同様の部分に関する図示並びに説明は省略し、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
上記摺り板43は、鉄系の燒結金属製である、上記摺り板本体43と、非燒結金属であるアルミニウム合金製の、上記補助板44とから成る。
このうちの摺り板本体43は、上記撓み板9aの長さ方向(例えば、図4、5、7の左右方向)に関して厚さ寸法が変化せず、下面を平坦面としている。又、図示の例では、鉄道車両の進行方向(例えば、図9〜12の上下方向)に関し、上記摺り板本体43の前後両端縁部に面取り部40、40を形成して、上記進行方向に関するこの摺り板本体43の幅寸法を、上面側に向かう程小さくしている。又、上記摺り板本体43の一部で幅方向両端寄り部分に、ねじ孔41a、41aを形成している。
上述の様な摺り板本体43は、鉄系の金属粉末を金型内で加圧しつつ加熱する燒結により造る。加圧燒結直後の中間成形品の厚さは、上記長さ方向だけでなく、この長さ方向に対し直角方向(幅方向)に関しても等しい。従って、上記中間成形品の密度は、全体に亙って均一であり、優れた強度を有する、均質の燒結品を得られる。この様な中間成形品の下面に関しては、切削等の加工を施す事なく、燒結により得られる平坦面のまま利用する(上記補助板44の上面と全面に亙り突き合わせる)。この様に、面積が広い、上記中間成形品の下面に、面倒な切削加工を施す必要がないので、上記摺り板本体43の加工コストは、前述の図22〜24に示した摺り板11(11b)の加工コストに比べて低く抑えられる。
尚、上記両面取り部40、40及び上記両ねじ孔41a、41aは、上記中間成形品を燒結加工した後に形成する。但し、この様な面取り部40、40及びねじ孔41a、41aの加工は、前述の図22〜24に記載した構造の場合も必要である。従って、これら面取り部40、40及びねじ孔41a、41aの加工作業が必要である事が、本例の構造を構成する為の摺り板本体43の製造コストを、上記図22〜24に記載した構造の製造コストに比べて低く抑える事に就いての妨げとはならない。
一方、上記補助板44は、アルミニウム合金製の素材に、鍛造、一体押出(及び切断)、切削等の適宜の加工を施す事により造っている。何れの加工方法を採用した場合でも、上記補助板44は、その上面を平坦面とすると共に、下面を、前記撓み板9aの長さ方向の一部でのみ下方に突出させて凸部39aとした、段付面としている。又、上記補助板44のうちの厚さ寸法が大きくなった、この凸部39aに対応する部分の幅方向両端寄り2個所位置に、それぞれ通孔45を形成している。これら両通孔45を形成する位置は、上記補助板44を上記摺り板本体43と重ね合わせた状態で、上記両ねじ孔41a、41aと整合する部分としている。又、上記両通孔45は、それぞれ上記両ねじ孔41a、41aに螺合するねじを挿通する為のもので、これら両ねじ孔41a、41aの内径よりも少しだけ大きな内径を有する。この様な補助板44は、架線と擦れ合う事がない為、特に耐摩耗性を要求されず、従って、上述の様に加工が容易なアルミニウム系合金により造れる。この為、上記凸部39aを有する、上記補助板44の加工は、鍛造、一体押出、切削等、何れの加工方法を採用した場合でも、容易に行なえる。
この様な補助板44と上述の様な摺り板本体43とは、これら補助板44の上面と摺り板本体43の下面とを当接させた状態で結合する。更に、この補助板44の下面の一部である、上記凸部39aの下面部分を、上記撓み板9aの上面に(鉄道車両の進行方向に亙り)当接させた状態で、それぞれが上記摺り板本体43と上記補助板44とから成る各摺り板42を、上記撓み板9aの上面に結合固定する。具体的には、前述の図17〜18に示す様に、撓み板9a及び通電板37を下方から挿通したねじ38、38を、更に上記補助板44の通孔45、45を下方から挿通して、上記摺り板本体43のねじ孔41a、41aに螺合し、更に緊締する。
この様に、上記各摺り板42を上記撓み板9aの上面に支持固定するのに伴って、上記補助板44は、上記摺り板本体43と上記撓み板9a及び通電板37との間に挟持固定された状態となる。この状態で、上記補助板44の下面のうちで上記凸部39aから外れた部分と、上記撓み板9aの上面との間に、この凸部39aの高さ寸法分の隙間が介在する。この為、架線の上下方向変位に伴う、上記撓み板9aの上下方向の弾性変形を、円滑に行なわせて、上記各摺り板本体43の上面と上記架線の下縁との擦れ合い状態を良好な状態に保てる。又、上記補助板44は、上記摺り板本体43を構成する鉄系の燒結金属に比べて軽量なアルミニウム合金製である為、上記摺り板42の慣性質量を小さく抑えられる。この為、上記架線の上下方向の変位に対する、この摺り板42の追従性を、慣性質量の低減の面からも、良好にできる。尚、上記各ねじ38、38は、銅若しくは銅系合金の如く、上記摺り板本体43を構成する燒結金属よりも軟らかい金属材料製とする。この理由は、この摺り板本体43が架線との擦れ合いにより摩耗する過程で、上記各ねじ38、38がこの架線を傷めない様にする為である。
尚、図1に示した摺り板42は、上記撓み板9aの長さ方向両端縁を、鉄道車両の進行方向に対し平行にしている。但し、好ましくは、この両端縁を、前述の図22〜24に示した構造と同様に、上記鉄道車両の進行方向に対して傾斜させる。即ち、上記摺り板本体43と上記補助板44とを組み合わせた状態での形状を、上記図22〜24に示した摺り板11(11b)と同じとする。この様に構成すれば、上記架線が、隣り合う摺り板本体43同士の間に落ち込む事を防止して、これら架線と摺り板本体43との擦れ合い部の面圧が過大になる(架線の下縁と摺り板本体43のエッジとが擦れ合う)事を防止できる。
本発明の実施の形態の1例を示す、摺り板の分解斜視図。 従来構造の1例を、鉄道車両の進行方向から見た状態で示す略断面図。 架線への追従性向上を図るべく撓み板を使用して構成した集電舟装置の原理を示す模式図。 先発明に係る構造を、鉄道車両の進行方向から見た状態で示す部分正面図。 同略正面図。 架線から加わる荷重に基づいて摺り板支持体が弾性変形した状態を誇張して示す正面図。 舟体から取り外した状態を示す正面図。 摺り板並びに通電板を取り外した状態で示す、図7と同様の図。 摺り板のみを上方から見た図。 図7の上方から見た図。 摺り板を省略して、図10と同方向から見た図。 図11のA部拡大図。 図11の下方から見た図。 図13のB部拡大図。 図10のC−C断面図。 同D−D断面図。 本発明の構造を適用した状態で示す、同E−E断面に相当する図。 本発明の構造を適用した状態で示す、同F−F断面に相当する図。 図13のG−G断面図。 同H−H断面図。 同I−I断面図。 先に考えた摺り板の平面図。 図22の下方から見た図。 同側方から見た図。
符号の説明
1 上枠
2 天井管
3、3a 舟体
4 リニアシャフト
5 ばね
6 導線
7 摺り板
8 枠棒
9、9a 撓み板
10 支点
11、11a、11b 摺り板
12 架線
13 摺り板支持体
14 支持フレーム
15 底板部
16 端部支持板
17 第一の連結軸
18a、18b 支持片
19 支持板部
20 下壁部
21 腕部
22 舌片
23 支持孔
24 第二の連結軸
25 底板部
26 支持壁部
27 腕部
28 舌片
29 支持孔
30 昇降軸
31 ガイド孔
32 支持枠部
33 垂下壁部
34 圧縮コイルばね
35 凹部
36 凸部
37 通電板
38 ねじ
39、39a 凸部
40 面取り部
41、41a ねじ孔
42 摺り板
43 摺り板本体
44 補助板
45 通孔

Claims (2)

  1. 鉄道車両の幅方向に長さ方向を一致させた状態で配置されて両端部を支持された、可撓性を有する撓み板と、この撓み板の長さ方向に直列に、互いの間に隙間を介在させて配置された状態でこの撓み板の上面に結合固定された、複数枚の摺り板とを備えた鉄道車両用集電舟装置に於いて、これら各摺り板は、上記撓み板の長さ方向に関して厚さ寸法が変化せず、下面を平坦面とした燒結金属製の摺り板本体と、上面を平坦面とすると共に、下面を上記撓み板の長さ方向の一部でのみ下方に突出させた段付面とした非燒結金属製の補助板とを、この補助板の上面と上記摺り板本体の下面とを当接させた状態で結合すると共に、この補助板の下面の一部で残部よりも下方に突出している部分を上記撓み板の上面に当接させた状態で、上記各摺り板をこの撓み板の上面に結合固定した事を特徴とする鉄道車両用集電舟装置。
  2. 摺り板本体を構成する燒結金属が鉄系であり、補助板を構成する非燒結金属がアルミニウム系合金であり、撓み板の長さ方向に関するこれら摺り板本体及び補助板の端縁が、鉄道車両の進行方向に対し傾斜している、請求項1に記載した鉄道車両用集電舟装置。
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