JPH09182202A - 鉄道車両用集電装置の集電舟 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】高速走行時の空力騒音が少なく、簡単な構造で
追従性が良好な集電舟を提供することにある。 【解決手段】空力騒音の低い流線型等の形状を持つ舟体
内に帯板状のカーボン繊維強化プラスチック製の弾性を
有する高強度材のすり板体を両端を回転可能に支持して
組み込み、すり板は直接すり板体に取り付けたものであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は主に新幹線などの高
速鉄道に使用する車両用集電装置（以下パンタグラフと
称する。）の集電舟に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】新幹線等の高速鉄道車両の速度向上に伴
い、パンタグラフから発生する空力騒音が車両全体の騒
音にしめる割合が大きいため問題視されてきている。空
力騒音のエネルギーは速度の６乗に比例するとされ、速
度向上のためには空力騒音の低減が必須である。パンタ
グラフの空力騒音では集電舟に起因する騒音の寄与率が
最も大きいことが確かめられており、最近は集電舟の形
状を空力騒音の発生を少なくするため流線型や翼型に近
い形状にしたものが考案されている。図３に、このよう
な集電舟の一例を示す。図４は図３のＡ−Ａ線矢視図で
あり、図３，４において、23は舟体、21はすり板、22は
補助すり板、25は底板である。一般的に空力騒音を考慮
して形状を整えるために集電舟全体が大きく質量も大き
くなり、高速走行時にトロリー線への追従性が低下す
る。このため、トロリー線と接触するすり板を集電舟の
内部でコイルバネや板バネ等で弾性支持し、追従性の維
持向上を図った可動すり板方式が採用されているものも
ある。このような方式の集電舟を図５（ａ）．（ｂ）に
示す。図５（ｂ）は図５（ａ）のＢ−Ｂ線方向矢視図で
あり、図５において、31はすり板、34は可動舟、40は板
バネ、38はシャント、35は継ぎ手部材である。すなわ
ち、すり板31が取り付けられた可動舟34がバネ40を介し
て舟体33に固定され、それぞれの可動舟はトロリー線が
変位しても各可動舟の継ぎ目をなめらかに移動するよう
にゴム35ａによってつながっている。図５（ｂ）に示す
ように可動舟34が上下になめらかに動くように舟体33に
はガイド39が固定され、可動舟の内側がガイドによって
案内される構造になっている。このような集電舟では、
各すり板がバネ支持された形となり、トロリー線と直接
接触するバネ上の質量が小さいことから、良好な追従性
を得ることができる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図３に
示す集電舟では集電舟全体の質量が大きくなるため、高
速でのトロリー線への追従性能が低下する。また、図５
に示す集電舟では追従性は良好であるが、可動すり板部
の構造が複雑で部品点数も多いため、製造コストが高く
故障の要因も多いという難点があり、さらに集電舟全体
の質量もさらに大きくなると言う問題があった。本発明
は上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的とす
るところは、これらの欠点を解決する鉄道車両用集電装
置の集電舟を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】つまり、その目的を達成
するための手段は、空力騒音の低い形状を持つ舟体の内
部に、カーボン繊維強化プラスチック（以下ＣＦＲＰと
称する）またはバネ綱等の弾性を有する高強度材料の帯
板で構成されるすり板体を、両端を回転可能に軸支して
組み込み、すり板は直接すり板体に取り付ける構造とし
てなるものである。かかる構成により、すり板体自体が
両端の支え部分を回転支持点とした板バネとして作用
し、上下方向にバネ作用を持つことができるため、主す
り板部分は実質的にバネ支持されたと同様の上下方向の
振動特性を持ち、構造としては単純でありながら良好な
追従特性を有することができる。以下、本発明の実施例
を図面に基づいて詳述する。

【０００５】

【発明の実施の形態】図１は本発明の１実施例を示す車
両進行方向より見た一部切り欠き構成図、図２は図１の
Ｃ−Ｃ線方向矢視図であり、図１，２において、８は舟
体、４はＣＦＲＰ製のすり板体、３は導電性の敷板、１
はすり板、２は補助すり板である。ここに、すり板体４
にはブラケット９が固定され、ピン11を介して舟体８に
取り付けたブラケット９に回転可能に固定されている。
すり板体４と舟体８の間には電流を流すためのシャント
７が取り付けられている。また、すり板体４は自重及び
押上力の反力により下方にたわむので、停車時にすり板
１の上面が水平になるように中央部には、たわみを補正
するためのコイルバネ６が舟体８に装着されてすり板体
４を押し上げている。ＣＦＲＰ製のすり板体４は単純な
帯板状をなし、その断面の厚さ及び幅は要求される強度
と上下振動特性により適宜決定し得る。新幹線用パンタ
グラフとしての一例を挙げると、幅約１００ミリ、厚さ
約３ミリである。

【０００６】かくの如き構成により、その作用を説明す
ると次の通りである。すり板体４はピン11で舟体８に対
して回転可能に支持される。そのすり板体４が帯び板状
のＣＦＲＰであるため、前後方向には断面２次モーメン
ト、断面係数とも大きいが、上下方向には小さい値とな
る。このため、ＣＦＲＰの弾性係数が小さいことと相ま
ってすり板体が上下によくしなうバネ作用をなす。この
ため、すり板体４に取り付けられたすり板１は実質的に
バネ支持されたと同様な形となり、トロリー線へよく追
従性する事ができる。このように空力音の低い形状の舟
体内に単純な構造で可動すり板方式を組み込むことがで
きる。なお、本実施例はすり板体がＣＦＲＰの帯板によ
るものであるが、これに変えて燐青銅や、バネ綱等の弾
性に富む高強度金属材料を用いた物であってもよく、質
量はやや大きくなるが同様な効果を得ることは言うまで
もない。

【０００７】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、 １）すり板体の弾性を利用することにより、簡単な構造
で可動すり板の効果が得られ、高い追従性を持ちながら
空力騒音の低い集電舟を構成できる。 ２）構造が簡単で、軽量であり、保守が容易である。 ３）部品点数が少なく製作容易である。 ４）コンパクトな設計が可能で小さい舟体内にも納める
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の１実施例を示す一部切り欠き断
面図である。

【図２】図２は図１のＣ−Ｃ線方向矢視図である。

【図３】図３は従来の集電舟の一例を示す正面図であ
る。

【図４】図４は図１のＡ−Ａ線方向矢視図である。

【図５】図５は同じく従来の集電舟の他の一例を示す構
成図である。

【符号の説明】

１ すり板 ２ 補助すり板 ３ 式板 ４ すり板体 ６ コイルバネ ７ シャント ８ 舟体 ９ ブラケット 10 ブラケット 11 ピン

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 集電時に、舟支え装置を介してリンク等
   の昇降機構上に取り付けられてトロリー線に押しつけら
   れる鉄道車両用集電装置の集電舟において、空力騒音の
   低い形状を持つ舟体の内部に、帯板状のカーボン繊維強
   化プラスチックのすり板体の両端を回転可能に軸支して
   構成したことを特徴とする鉄道車両用集電装置の集電
   舟。
2. 【請求項２】 前記帯板状のカーボン繊維強化プラスチ
   ックに代えて、帯板状の、燐青銅またはバネ綱などの弾
   性を有する金属体を使用した請求項１記載の鉄道車両用
   集電装置の集電舟。