JP3875066B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
安全衛生上の観点から、カーボンブラックに変わる黒色着色剤として各種の金属酸化物が提案されている(特開2000−10344号公報、特開平9−25126号公報等)。ところがこのような金属酸化物をトナーに添加した場合、金属酸化物の分散性が悪く、トナー中に凝集物として存在するために黒色度が低くなるという欠点を有する。また、帯電量の分布が広くなるために感光体カブリも生じやすい。特に、フルカラー装置に用いられる黒トナーは用いる樹脂の軟化点が低く、さらに溶融粘度も低いため、より一層分散性が低下し、画質に悪影響を及ぼす。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金属酸化物の分散性に優れ、かつ感光体カブリのない優れた画像が得られるトナーを効率よく製造し得る方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及び2種以上の金属の複合酸化物である金属酸化物を含む原料(ただし、カーボンブラックを除く)を溶融混練する工程を有するトナーの製造方法であって、該工程が連続式2本オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程であり、前記結着樹脂が、軟化点が90〜160℃のポリエステルであり、前記金属酸化物の吸油量が0.07ml/m 2 以下であり、前記金属酸化物を構成する金属の少なくとも1種が、元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属である、非磁性トナーの製造方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、連続式2本ロール型混練機を用いて、少なくとも結着樹脂及び金属酸化物を含む原料を溶融混練する工程を有する点に1つの特徴を有する。連続式2本ロール型混練機を用いて原料を溶融混練することにより、金属酸化物の分散性に優れたトナーを得ることができる。
【0006】
本発明で用いる連続式2本ロール型混練機は、加熱ロールと冷却ロールを有し、2本のロールが並行に近接して配設された混練機が好ましい。
【0007】
加熱ロールと冷却ロールは、熱媒体を通すことにより加熱又は冷却を行うことができる。加熱媒体の温度は、好ましくは80〜170℃、より好ましくは90〜150℃であり、冷却媒体温度は、好ましくは0〜70℃、より好ましくは10〜50℃である。
【0008】
2本のロールの間隙は、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.05〜3mmである。また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はなく、ロール表面は、平滑であってもよく、波型、凸凹型等であってもよい。
【0009】
また、ロールの回転数は周速度2〜100m/minが好ましく、2本のロールの回転数比は1/10〜9/10(冷却ロール/加熱ロール)が好ましい。
【0010】
さらに、溶融混練部分がオープン型であると、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができ、より低温かつ高剪断力下で混練でき、好ましい。
【0011】
本発明に用いる金属酸化物は、いずれの金属の酸化物でもよいが、トナーの黒色度の観点から、元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属の酸化物により構成されているのが好ましい。元素周期表の第4周期の3〜11族には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)が属しており、これらの中では、Ti、Mn、Fe及びCuが好ましく、Ti、Mn及びFeが特に好ましい。さらに、金属酸化物は、2種以上の金属により構成された複合酸化物が好ましく、特にその少なくとも1種、好ましくは2種以上が前記元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属であるのが好ましい。金属酸化物における金属の組成比は特に限定されない。
【0012】
金属酸化物と結着樹脂との親和性が調整され、金属酸化物の分散性が高まることから、本発明における金属酸化物の単位面積当たりの吸油量は、0.07ml/m2 以下が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.05ml/m2 、特に好ましくは0.001〜0.02ml/m2 である。なお、本発明において、前記吸油量(ml/m2 )は、JIS K5101の方法により測定される吸油量(ml/100g)と、比表面積(m2 /100g)との値を用い、次式より求める。
【0013】
【数1】
【0014】
金属酸化物の平均粒径は、吸油量及び隠蔽力の観点から、5nm〜1μmが好ましく、5〜500nmがより好ましく、5〜300nmが特に好ましい。
【0015】
金属酸化物の製造方法としては、主酸化物を芯粒子とし、その表面に他の酸化物を付着させる方法(特開2000−10344号公報)、数種の酸化物を焼成して金属酸化物にする方法(特開平9−25126号公報) 等が挙げられるが、特に限定されない。
【0016】
本発明において好適な金属酸化物の市販品としては、「ダイピロキサイドブラックNo.1」(大日精化工業社製、主要含有金属:Cu,Mn,Fe)、「ダイピロキサイドブラックNo.2」(大日精化工業社製、主要含有金属:Fe,Mn,Cu)、「HSB−603Rx」(戸田工業社製、主要含有金属:Mn,Fe)、「HSB−605」(戸田工業社製、主要含有金属:Fe,Mn)、「ETB−100」(チタン工業社製、主要含有金属:Ti,Fe)、「MC−3」(三井金属鉱業製、主要含有金属:Fe,Mn,Cn)、「MC−6」(三井金属鉱業製、主要含有金属:Fe,Mn)が挙げられる。
【0017】
金属酸化物の配合量は、トナーの黒色度及び比重の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0018】
本発明に用いる結着樹脂としては、ポリエステル、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられ、特に限定されないが、これらの中では、金属酸化物の分散性及び転写性の観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0019】
ポリエステルの原料モノマーとしては、2価以上の多価アルコールと2価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。
【0020】
2価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0021】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0022】
また、2価のカルボン酸化合物としては、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、テトラプロペニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0023】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば1,2,4 −ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7 −ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0024】
ポリエステルは、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸化合物とを成分等を不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
【0025】
ポリエステルの酸価は、金属酸化物の分散性及び転写性の観点から、0.5〜60mgKOH/gが好ましく、水酸基価は、1〜60mgKOH/gが好ましい。
【0026】
結着樹脂の軟化点は、定着性と耐久性の観点から、90〜160℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。また、ガラス転移点は50〜85℃が好ましい。
【0027】
本発明では、トナーの原料として、結着樹脂及び金属酸化物以外に、荷電制御剤、離型剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜用いてもよい。
【0028】
連続式2本ロール型混練機を用いた溶融混練工程により得られた混練物は、連続式2本ロール型混練機から連続的に取り出すことができる。得られた混練物を、冷却固化した後、粉砕、分級等の公知の工程でさらに処理することにより、トナーを製造することができる。なお、トナーの表面には、疎水性シリカ等の流動性向上剤等を外添剤として添加してもよい。
【0029】
このようにして得られたトナーの体積平均粒子径は、3〜15μmが好ましい。
【0030】
本発明により得られたトナーは、帯電量を安定に維持することができるため、非磁性トナーとしての使用が好ましく、単独で非磁性一成分現像用トナーとして、またキャリアと混合して二成分現像剤として用いることできるが、非磁性一成分現像用トナーとしての使用が特に好ましい。なお、本発明において、非磁性トナーとは、反磁性体、又は飽和磁化が2.5Am2 /kg以下の磁性体をいう。
【0031】
さらに、着色剤として用いた金属酸化物は、イエロー、シアン、マゼンタ等の着色剤の抵抗と類似しているために、本発明により得られたトナーはフルカラー画像の形成にも好適に用いられる。
【0032】
【実施例】
〔金属酸化物の平均粒径〕
電子顕微鏡写真より実測し、数平均の粒子径を求める。
【0033】
〔樹脂の軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0034】
〔樹脂の酸価及び水酸基価〕
JIS K0070の方法により測定する。
【0035】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて昇温速度10℃/分で測定する。
【0036】
〔樹脂の重量平均分子量〕
GPC法(カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)、標準試料:単分散ポリスチレン)により測定する。
【0037】
樹脂製造例1
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)714g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)663g、イソフタル酸518g、イソオクテニルコハク酸70g、トリメリット酸80g及び酸化ジブチル錫2gを、窒素気流下、210℃にて攪拌しつつ反応させた。得られた樹脂を樹脂Aとする。樹脂Aは淡黄色の固体であり、軟化点は115℃、ガラス転移点は62℃、酸価は23mgKOH/g、水酸基価は40mgKOH/gであった。
【0038】
実施例1
樹脂A7000g、金属酸化物「MC−6」(三井金属鉱業社製、主要含有金属:Fe,Mn、平均粒径:0.02μm、吸油量:0.0134ml/m2 )700g、ポリプロピレンワックス「NP−055」(三井化学社製)70g及び荷電制御剤「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)70gをヘンシェルミキサーに投入し、槽内温度40℃で3分間攪拌混合して混合物を得た。得られた混合物を連続式2本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山(株)製)により溶融混練し、得られた混練物を空気中で冷却、粗粉砕、微粉砕した後、分級し、体積平均粒子径が8.5μmの黒色粉体を得た。
【0039】
なお、溶融混練にした使用した連続式2本オープンロール型連続混練機は、ロール外径0.14〔m〕、有効ロール長0.8〔m〕のものであり、運転条件は、高回転側ロール(前ロール)回転数75回転/分、低回転側ロール(後ロール)回転数50回転/分、ロール間隙0.1〔mm〕であった。ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側温度150℃、混練物排出側温度100℃、低回転ロールの温度30℃に設定した。ロールに付着した混練物の温度は、原料投入側では126℃、混練物排出側では115℃であり、排出直後の混練物温度は111℃であった。また、原料混合物の供給速度は20kg/時、平均滞留時間は約5分間であった。
【0040】
得られた粉体1000gと疎水性シリカ「アエロジルR−972」(日本アエロジル社製)8gをヘンシェルミキサーで3分間攪拌混合して黒トナーを得た。
【0041】
実施例2
「MC−6」の使用量を1050gに変更した以外は、実施例1と同様にして、黒トナーを得た。
【0042】
実施例3
「MC−6」の代わりに「ETB−100」(チタン工業社製、主要含有金属:Ti,Fe、平均粒径0.25μm、吸油量:0.0625ml/m2 )700gを使用した以外は、実施例1と同様にして黒トナーを得た。
【0043】
実施例4(参考例)
樹脂Aの代わりに、スチレン(St)−ブチルアクリレート(BA)−メチルメタクリレート(MMA)共重合樹脂(重量平均分子量:40,000、St/BA/MMA(モル比)=82.0/16.5/1.5、軟化点:111℃)7000gを使用した以外は、実施例1と同様にして、黒トナーを得た。
【0044】
比較例1
樹脂A7000g、金属酸化物「MC−6」(三井金属鉱業社製、平均粒径0.02μm、吸油量:0.0134ml/m2 )700g、ポリプロピレンワックス「NP−055」(三井化学社製)70g及び荷電制御剤「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)70gをヘンシェルミキサーに投入し、槽内温度40℃で3分間混合して混合物を得た。得られた混合物を連続型二軸混練機により100℃で溶融混練し、得られた混練物を空気中で冷却、粗粉砕、微粉砕した後、分級し、体積平均粒子径が8.5μmの黒色粉体を得た。
【0045】
得られた粉体1000gと疎水性シリカ「アエロジルR−972」(日本アエロジル社製)8gをヘンシェルミキサーで3分間攪拌混合して黒トナーを得た。
【0046】
比較例2
「MC−6」の使用量を1050gに変更した以外は、比較例1と同様にして、黒トナーを得た。
【0047】
比較例3
「MC−6」の代わりに「ETB−100」(チタン工業社製、主要含有金属:Ti,Fe、平均粒径0.25μm、吸油量:0.0625ml/m2 )700gを使用した以外は、比較例1と同様にして黒トナーを得た。
【0048】
参考例1
金属酸化物「MC−6」の代わりにカーボンブラック「Mogul L」(キャボネット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)280gを使用した以外は、比較例1と同様にして、黒トナーを得た。
【0049】
参考例2
金属酸化物「MC−6」の代わりにカーボンブラック「Mogul L」(キャボネット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)280gを使用した以外は、実施例1と同様にして、黒トナーを得た。
【0050】
試験例
実施例、比較例及び参考例で得られた黒トナーを市販の非磁性一成分方式のプリンタに実装し、画像出しを行ない、以下に示す各項目を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(1)画像濃度
マクベス濃度計「RD914」(マクベス社製)を用いて測定する。
【0052】
(2)現像ロール上の帯電量
現像ロール上のトナーを実際に吸引し、現像ロールに残った電荷と吸引したトナーの重量により求める。
【0053】
(3)感光体カブリ
感光体上の画像をメンディングテープに写し取り、色差計「CR−221」(ミノルタ(株)製)でZ値を測定し、元のテープの値との差を求める。
【0054】
【表1】
【0055】
以上の結果より、実施例のトナーは、樹脂や金属酸化物の種類にかかわらず、画像濃度が高く、感光体カブリも少ない優れた結果が得られている。これに対して、比較例のトナーは金属酸化物の分散性が劣るために画像濃度が低く、またカブリの多い画像となっている。さらに、参考例1と参考例2では結果にほとんど差異がみられないことから、カーボンブラックでは連続式2本ロール型混練機による効果は得られないことが分かる。これは、カーボンブラックの分散性が金属酸化物に比較して容易なためと推定される。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、金属酸化物の分散性に優れ、かつ感光体カブリのない優れた画像が得られるトナーを効率よく製造することができる。
Claims (2)
- 少なくとも結着樹脂及び2種以上の金属の複合酸化物である金属酸化物を含む原料(ただし、カーボンブラックを除く)を溶融混練する工程を有するトナーの製造方法であって、該工程が連続式2本オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程であり、前記結着樹脂が、軟化点が90〜160℃のポリエステルであり、前記金属酸化物の吸油量が0.07ml/m 2 以下であり、前記金属酸化物を構成する金属の少なくとも1種が、元素周期表の第4周期の3〜11族に属する金属である、非磁性トナーの製造方法。
- 連続式2本オープンロール型混練機が加熱ロールと冷却ロールを有し、2本のロールが並行に近接して配設されたものである請求項1記載の製造方法。
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