JP3873561B2 - 単結晶育成装置及びそれを用いたシリコンの融解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という。)によりシリコン単結晶を育成する装置及びそれを用いたシリコンの融解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶の育成方法としてルツボ内のシリコン融液から半導体用の高純度シリコン単結晶を成長させるCZ法が知られている。この方法は、ルツボを内部に有する炉体の上部に設けられた回転・引上げ機構からワイヤを介してルツボの上方の炉体内部に吊り下げられた種結晶用ホルダに種結晶を取付け、ワイヤを繰り出してその種結晶をシリコン融液に接触させ、種結晶を引上げてシリコン融液から種絞り部分を作製し、その後目的とするシリコン棒の直径まで結晶を徐々に太らせて成長させることにより、必要な面方向を有する無転位の単結晶インゴットを得ることができるものである。シリコン融液はルツボ内に融解されており、ルツボはカーボンヒータにより加熱される。
【0003】
しかし多結晶シリコンの融解温度は約1400℃であり、シリコン単結晶を育成させるため、ルツボ内に当初充填された塊状物又は粒状物を完全に融解するには比較的多くの時間を必要とする。特に今日の育成する単結晶の大口径化と長尺化に伴い比較的多量のシリコン融液を必要とし、このシリコンを融解する時間はシリコン単結晶インゴット育成工程における効率低下という不具合を招いていた。
この点を解消するために、育成されるシリコン単結晶インゴットの通過部分を除いたルツボの上方部分に赤外線反射板を設けた装置が提案されている(例えば特公昭57−40119,特公平6−33218)。これらの装置では赤外線反射板で囲まれたルツボをカーボンヒータにより効率よく加熱することができ、ルツボに入れられたシリコンからなる塊状物又は粒状物の融解を短時間で簡便に行うことができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した装置では、育成される単結晶インゴットの通過部分には反射板が設けられないため、その通過部分から熱が炉体上方に放散し、塊状物又は粒状物を融解する時間の短縮を十分に図ることができない不具合があった。また、反射板をルツボ上方の全部分にまで設けた場合には、反射板が単結晶インゴットの育成の障害になるために、塊状物又は粒状物が融解した後にその反射板を取外して炉体から取出す必要が生じ、反射板を取出すことの手間が増加する未だ解決しなければならない問題点が残存していた。
本発明の目的は、シリコンからなる塊状物又は粒状物の融解を短時間で簡便に行うことができる単結晶育成装置及びそれを用いたシリコンの融解方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、ルツボ17と断熱材12を内部に有する炉体11の上部に設けられた回転・引上げ機構18と、回転・引上げ機構18からワイヤ19を介してルツボ17の上方の炉体内部に吊り下げられた種結晶用ホルダ21とを備えた単結晶育成装置の改良である。
その特徴ある構成は、断熱材12の上縁にルツボ17の上部を取り囲むように内方に向って配置され育成される単結晶インゴットの外径より僅かに大きい孔23aが中央に形成された円板状の赤外線反射板23と、赤外線反射板23の孔23aより僅かに小さな外径を有し下面が鏡面仕上げされたシリコンの融点以上の融点を有する円板27と、円板27の中央に立設され上部が種結晶用ホルダ21に離脱可能に取付けられるロッド28とを備えたところにある。
請求項2に係る発明は、シリコンからなる塊状物又は粒状物29を炉体11内部に設けられたルツボ17に入れ、育成される単結晶インゴットの外径より僅かに大きい孔23aが中央に形成された円板状の赤外線反射板23を炉体11内部に設けられた断熱材12の上縁にルツボ17の上部を取り囲むように内方に向って配置し、炉体11の上部に設けられた回転・引上げ機構18からワイヤ19を介して吊り下げられた種結晶用ホルダ21に赤外線反射板23の孔23aより僅かに小さな外径を有しシリコンの融点以上の融点を有する円板27の中央に立設されたロッド28を取付け、ワイヤ19を繰り出して断熱材12の上縁に配置された赤外線反射板23の中央に形成された孔23aに円板27を通過させるように円板27を下降させ、円板27がルツボ17の上方に達した時点でワイヤ19の繰り出しを停止してルツボ17の開口部の一部を覆うように円板27を水平に保持し、ルツボ17を加熱して塊状物又は粒状物29を融解するシリコンの融解方法である。
【0006】
この請求項1に係る単結晶育成装置及び請求項2に係る融解方法では、ルツボ17を加熱してシリコンの融解が開始すると、図1及び図3の実線矢印で示すように、融解が開始したシリコンのルツボ17上面から放出する熱の放散を反射部材26の円板27が防止するとともにこの熱をシリコン24からなる塊状物又は粒状物に向けて反射する。円板27により反射した熱が加わることにより、シリコンからなる塊状物又は粒状物の融解時間は従来より短縮する。
円板27の下面を鏡面仕上げするのは、円板27の下面が反射する熱量を大きくするためであり、鏡面仕上げにはミラーポリッシュ又はミラーエッチングが挙げられる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2に示すように、CZ法によるシリコン融液から単結晶を育成する装置では、炉体11の内部に炉体11と同心円状に断熱材12とカーボンヒータ13が配置され、炉体11中央の回転軸14の上端に固定された黒鉛サセプタ16に有底円筒状の石英ルツボ17が嵌合される。炉体11の上部には円筒状のチャンバ15を介して回転・引上げ機構18が設けられ、ルツボ17の上方にはこの回転・引上げ機構18からワイヤ19を介して種結晶用ホルダ21が吊り下げられる。シリコン単結晶を育成させる際には、この種結晶用ホルダ21に図示しない種結晶を取付け、回転・引上げ機構18はその種結晶から成長した高純度のシリコン単結晶インゴットを回転しつつ引上げて種結晶の下端に高純度のシリコン単結晶インゴットを成長させるようになっている。
【0008】
一方、炉体11とチャンバ15はヒンジ15aを介して取付けられ、チャンバ15が取付けられる炉体11の上部には、その部分における開口部11aを閉止可能な遮蔽板22が設けられる。遮蔽板22は炉体11に設けられた収容部11bに収納状態でその開口部11aを開放し、収容部11bから突出すると開口部11aを閉止するように構成される。また、断熱材12上縁にはルツボ17及びカーボンヒータ13の上部を取り囲むように内方に向って、円板状の赤外線反射板23が配置され、その赤外線反射板23は育成される単結晶インゴットに当接しないようにその中央に育成される単結晶インゴットの外形より僅かに大きい孔23aが設けられる。
図4に示すように、種結晶用ホルダ21は、チャック本体21dの底部に種結晶挿入穴21aが中心軸に沿って形成され、この挿入穴21aに直交しかつ挿入穴21aの軸心に対して偏倚してピン孔21bが形成される。ピン孔21bはピン孔21bの中央部分における断面積が約半分程度挿入穴21aに重なるように形成される。シリコン単結晶を育成させる際の種結晶の取付けは、図示しない種結晶を挿入穴21aに挿入して、種結晶用ホルダ21のピン孔21bに係止ピン24を挿入することにより行うようになっている。
【0009】
本発明の反射部材26は、この種結晶用ホルダ21に離脱可能に取付けられるものであって、円板27と上部がそのホルダ21に取付け可能に構成されたロッド28とを備える。円板27はシリコンの融点以上の融点を有するモリブデンにより作られ、赤外線反射板23の孔23aより僅かに小さな外径を有する板材である。この円板27の下面はミラーポリッシュ又はミラーエッチング等の鏡面仕上げがなされる。ロッド28はモリブデンからなる断面円形の棒材であって、円板27の中央に形成された図示しない装着孔に下端を圧入することによりその円板27の中央に立設される。ロッド28は図示しない種結晶と類似の形状に作られる。即ち、ロッド28は種結晶用ホルダ21の挿入穴21aに挿入可能な外径を有し、ロッド28上部の側部には下方に向かって深く切欠かれた切欠き面28aが形成される。
【0010】
ロッド28上部のホルダ21への取付けは、図示しない種結晶の取付けと同様にロッド28の上部を挿入穴21aに挿入した後、種結晶用ホルダ21のピン孔21bに係止ピン24を挿入することにより行われる。ピン孔21bに挿入された係止ピン24の胴部はロッド27に形成された切欠き面28aに当接し、ロッド28の挿入穴21aに対する移動が禁止され、係止ピン24は反射部材26を種結晶用ホルダ21に取付けるように構成される。一方、ピン孔21bから係止ピン24を抜くと、ロッド28の挿入穴21aに対する移動が許容され、反射部材26は種結晶用ホルダ21から取り外すことができるように構成される。
【0011】
次に、このような構成の反射部材を用いたシリコンの融解方法を説明する。
図2に示すように、先ずシリコンからなる塊状物又は粒状物29を炉体内部に設けられたルツボ17に入れる。この実施の形態におけるシリコンは粒状物からなる新規の多結晶シリコンであるが、シリコンは育成に失敗した単結晶を砕いたものであっても良く、またシリコンは塊状物であってもよい。その後、炉体11の上部に設けられた回転・引上げ機構18からワイヤ19を介して吊り下げられた種結晶用ホルダ21に、係止ピン24を用いて反射部材26のロッド28を取付ける。図2に示すように、反射部材26の取付けは、炉体11に対してチャンバ15を傾動させてチャンバ15の下端から種結晶用ホルダ21を引出した状態で行われる。ロッド27を種結晶用ホルダ21に取付けた後には、このチャンバ15を再び戻してその反射部材26をルツボ17の上方に位置させる。
【0012】
次に、ワイヤ19を繰り出してルツボ17の上方でルツボ17の開口部の一部を覆うように反射部材26の円板27を水平に保持させる。円板27は赤外線反射板23の孔23aより小さな外径を有するので、ワイヤ19を繰り出すと、反射部材26はその孔23aを通過して下降する。反射部材26がルツボ17の近傍に達した時点でワイヤ19の繰り出しを停止することにより、図3に示すように、ルツボ17の開口部の一部を覆うように反射部材26の円板27は水平に保持される。その後、カーボンヒータ13によりそのルツボ17を加熱してそのルツボ17に入れられた塊状物又は粒状物29を融解する。
【0013】
ルツボ17の周囲に配置されたカーボンヒータ13の熱により周囲からルツボ17に入れられた多結晶シリコンからなる塊状物又は粒状物24の融解が開始する。図1及び図3の実線矢印で示すように、融解が開始した多結晶シリコンのルツボ17上面から放出する熱の放散はこの反射部材26の円板27が防止するとともに、円板27はこの熱を塊状物又は粒状物24に向けて反射する。特に鏡面仕上げした円板27下面の反射率は鏡面仕上げしない場合と比較して向上しているので、ルツボ17上面から放出する熱を有効に反射して、この熱により多結晶シリコンの融解は更に速くなる。
また、育成されるシリコン単結晶インゴットの通過部分を除いたルツボ17上方部分に赤外線反射板23を設けたこの実施の形態では、図1に示すように、融解が開始したルツボ17上面からの熱の放散を、本発明の反射部材26が赤外線反射板23がとともにより有効に防止する。これにより、シリコンからなる塊状物又は粒状物の融解時間はより一層短縮する。
【0014】
シリコンからなる塊状物又は粒状物が融解した後、このシリコン融液31から半導体用の高純度シリコン単結晶を成長させる。この成長に際して、反射部材26に代えて図示しない種結晶を種結晶用ホルダ21に取付ける。反射部材26の取り外し及び種結晶の取付けは、炉体11に対してチャンバ15を傾動させてチャンバ15の下端から種結晶用ホルダ21を引出して行われる。この際、図2に示すように、遮蔽板22を収容部11bから突出させて炉体11の開口部11aを閉止することにより炉体11内部が冷却されることを防止する。ロッド27を種結晶に代えた後、このチャンバ15を再び戻すとともに、遮蔽板22を収容部11bに収納して開口部11aを再び開放する。その後、種結晶をシリコン融液31に接触させ、回転・引上げ機構18はその種結晶から成長した高純度のシリコン単結晶インゴットを回転しつつ引上げて種結晶の下端に高純度のシリコン単結晶インゴットを成長させる。
【0015】
なお、上述した実施の形態では、円板27としてシリコンの融点以上の融点を有するモリブデンを使用したが、円板27は、タングステンやシリコンウエーハであってもよい。反射部材26をシリコンウエーハで作った場合には、るつぼ17に入れたシリコンが全て融解した後、反射部材26をシリコンからなる塊状物又は粒状物が融解したシリコン融液中に融解させることができ、反射部材26をシリコン融液に融解させれば、後工程でこの反射部材26を炉体11から取出す作業を不要にすることができる。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、下面が鏡面仕上げされたシリコンの融点以上の融点を有する円板と、円板の中央に立設され上部がホルダに取付け可能に構成されたロッドとを備えた単結晶育成装置の反射部材を用い、シリコンからなる塊状物又は粒状物を炉体内部に設けられたルツボに入れ、炉体の上部に設けられた回転・引上げ機構からワイヤを介して吊り下げられた種結晶用ホルダにそのロッドを取付け、ワイヤを繰り出してルツボの上方でルツボの開口部の一部を覆うように円板を水平に保持し、ルツボを加熱して塊状物又は粒状物を融解するので、ルツボを加熱してシリコンの融解が開始すると、ルツボ上面から放出する熱の放散を円板が防止するとともにこの熱を反射する。円板により反射した熱によりシリコンからなる塊状物又は粒状物の融解時間を従来より短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射部材を含む単結晶育成装置の概略断面図。
【図2】そのチャンバが傾動した状態を示す図1に対応する概略断面図。
【図3】反射部材をルツボの上方に配置させた状態を示す断面図。
【図4】その反射部材をホルダに取付ける状態を示す斜視図。
【符号の説明】
11 炉体
17 ルツボ
18 回転・引上げ機構
19 ワイヤ
21 種結晶用ホルダ
26 反射部材
27 円板
28 ロッド
29 シリコンからなる塊状物又は粒状物
Claims (2)
- ルツボ(17)と断熱材(12)を内部に有する炉体(11)の上部に設けられた回転・引上げ機構(18)と、前記回転・引上げ機構(18)からワイヤ(19)を介して前記ルツボ(17)の上方の炉体内部に吊り下げられた種結晶用ホルダ(21)とを備えた単結晶育成装置において、
前記断熱材(12)の上縁に前記ルツボ(17)の上部を取り囲むように内方に向って配置され育成される単結晶インゴットの外径より僅かに大きい孔(23a)が中央に形成された円板状の赤外線反射板(23)と、
前記赤外線反射板(23)の孔(23a)より僅かに小さな外径を有し下面が鏡面仕上げされたシリコンの融点以上の融点を有する円板(27)と、
前記円板(27)の中央に立設され上部が前記種結晶用ホルダ(21)に離脱可能に取付けられるロッド(28)と
を備えたことを特徴とする単結晶育成装置。 - シリコンからなる塊状物又は粒状物(29)を炉体(11)内部に設けられたルツボ(17)に入れ、
育成される単結晶インゴットの外径より僅かに大きい孔 (23a) が中央に形成された円板状の赤外線反射板 (23) を前記炉体 (11) 内部に設けられた断熱材 (12) の上縁に前記ルツボ (17) の上部を取り囲むように内方に向って配置し、
前記炉体(11)の上部に設けられた回転・引上げ機構(18)からワイヤ(19)を介して吊り下げられた種結晶用ホルダ(21)に前記赤外線反射板(23)の孔(23a)より僅かに小さな外径を有しシリコンの融点以上の融点を有する円板(27)の中央に立設されたロッド(28)を取付け、
前記ワイヤ(19)を繰り出して断熱材(12)の上縁に配置された前記赤外線反射板(23)の中央に形成された前記孔(23a)に前記円板(27)を通過させるように前記円板(27)を下降させ、
前記円板(27)が前記ルツボ(17)の上方に達した時点で前記ワイヤ(19)の繰り出しを停止して前記ルツボ(17)の開口部の一部を覆うように前記円板(27)を水平に保持し、
前記ルツボ(17)を加熱して前記塊状物又は粒状物(29)を融解するシリコンの融解方法。
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